運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-25 第10回国会 衆議院 農林委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十五日(金曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 原田 雪松君    理事 小林 運美君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君       小淵 光平君    川西  清君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       平野 三郎君    八木 一郎君       大森 玉木君    吉川 久衛君       井上 良二君    横田甚太郎君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         通商産業事務官         (通商雑貨局         長)      小野儀七郎君         経済安定事務官         (産業局次長) 渡部 伍良君  委員外出席者         参議院議員   片柳 眞吉君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      小川 保男君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 五月二十五日  農林物資規格法の一部を改正する法律案(河野  謙三君外三名提出衆法第六四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国有林野法案参議院提出参法第一八号)  国有林野整備臨時措置法案参議院提出参法  第一九号)  森林資源の保護に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  国有林野法案及び国有林野整備臨時措置法案の両案を一括議題といたし、昨日に引続き質疑を行います——大体質疑も終了しておるようでございますので、これより両案を一括して討論に付したいと思いますが、これまた討論も大体各党とも御要求がないようでございますので、討論を省略し採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。これより国有林野法案及び国有林野整備臨時措置法案の両案について、一括して採決を行います。両案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  4. 千賀康治

    千賀委員長 起立総員。よつて両案は原案通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。両案に関しまして衆議院規則第八十六条による報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めま  す。さようとりはからいます。     —————————————
  6. 千賀康治

    千賀委員長 次に先般の委員会におきまして、森林資源繊維工業との関係について、平野君の質疑が保留されておりましたが、この際その質疑を許します。平野三郎君。
  7. 平野三郎

    平野委員 過般来森林法案の審議にあたりまして、農林当局通産当局との間におきましてはなはだしく意見食い違いがあり、かつまたきわめて連絡不十分であることが明白になつたのでありますが、その間におきまして、木材の諸般の施策については、経済安定本部中心として両省との間で連絡をいたしておるという御説明がありましたので、特に本日は経済安定本部における御計画についてお尋ねを申し上げるわけであります。  まず第一に伺いたいことは、木材供給は、森林法の今回の制定によりまして、今後一段ときゆうくつになつて参るわけであり、同時に日本森林に対する根本的の計画性が与えられる関係上、その供給に対する数字というものもおおむね明らかになつて来るわけでありますが、これに対する木材需要は、今後ますます増加するのではないかと考えられるのでありますが、安本といたしましては、昨年度におきます木材需要の方の実績をどの程度に見られておるのであるか。また将来、少くとも来年度における木材需要に対する計画というものは、どういうふうな数字を見込んでおられますか。これは各品目ごとにごく大ざつぱでけつこうでありますから、一応数字を御説明いただきたいと思います。
  8. 渡部伍良

    渡部政府委員 お答えいたします。大体森林法施行に伴いまする木材需給に関しましては、森林法改正が上程になりましたときに、この大部の資料林野庁から出ておりますが、これによつてごらんいただきたいと思います。私どもの方で見ております昨年度の木材消費実績は、大体八千八百万石程度に見ております。内訳を申し上げますと、問題になつているおもなものは坑木とか、パルプ用材であります。坑木につきましては千六百万石、パルプ用材が千百万石、一般用材として六千万石、そのほか電柱まくら木ベニヤ板等を合せまして約六百万石程度、さしあたり二十六年度の目標は八千万ないし九千万というふうに押えておりますが、各関係庁でいろいろ協議をいたしまして、消費節約であるとか、あるいは利用合理化等に検討を加えまして、大体八千百万石程度需要になるのではないかと考えております。そのうちパルプ用材としまして約千六十万石、坑木一千万石、造船電柱まくら木等を合せまして五百六十万石程度、それから建築用材二千五百万石、包装九百万石、その他合計して二千万石、総計八千百七十万石程度に見ております。
  9. 平野三郎

    平野委員 どうもただいまの御答弁は、今までの農林省及び通産省の御説明とは、まつたく食い違つておるところがあるのでありますが、その前に念を押したいのですけれども農林省通産省とも、安本中心として十分打合せ行つておるということでありましたので、最もその調整機関としての責任者である安本におかれては、確固たる計画のもとに、それぞれ関係各省協議をいたしておられると思うのであります。ところが今の御説明によりますと、昭和二十五年度の実績が八千八百万石、昭和二十六年度は八千百万石に見込んでおる。すなわち約七百万石需要を圧縮するということであり、パルプについては二十五年度が一千百万石、二十六年度が一千六十万石、すなわち約四十万石減るということでありますし、坑木については、二十五年度が一千六十万石、二十六年度が一千万石で、これも六十万石需要を減らすというただいまの御説明数字でありますけれども、先般の委員会における通産省の方の御説明によりますと、パルプについては二十六年度は一千三百五十万石という御説明なのであつて安本の方の数字とは非常に開きがありますが、その点はどうでございますか。
  10. 渡部伍良

    渡部政府委員 説明が不十分であつたかと思いますが、ただいまのパルプ用材千六十万石と申しましたのは、闊葉樹を含んでおりませんので、闊葉樹を含みまして、大体有効需要は千三百五十八万石程度あるとわれわれは見ております。
  11. 平野三郎

    平野委員 そういたしますと、全体の用材数量としては七百万石は減らす、但しそのうちパルプだけについては相当増加を見る、こういうことでございますか。
  12. 渡部伍良

    渡部政府委員 そのほかの項目につきましてもいろいろの策を講じまして、消費節約をはかりますとか、あるいは需要合理化をやるというふうなことを考えまして、一応先ほど申し上げましたように、九千万石余りの有効需要があるのも千二百万石足らずまでつじつまを合せて行こう、こういうふうな各省協議になつております。こまかく申し上げますといろいろありますが、たとえばパルプにつきましても、闊葉樹利用のみならず、故紙回収その他を強化するとか、あるいはまくら木等につきましても、あるいは車両等につきましても、闊葉樹をもつと使うとか、いろいろなこと織り込んで、衆知をしぼつて需給をはかつて行こう、こういうふうに考えております。
  13. 平野三郎

    平野委員 私のお尋ねをいたしたことは、今のような抽象的なお話でなしに、二十六年度の木材は二十五年度より約七百万石減らす方針のもとに進んでおる。そのかわりパルプだけは、ただいま御説明があつた通り、昨年度は一千百万石、本年は濶葉樹等利用を入れて一千三百八十万石、こういうことかどうかということを伺つておるわけです。
  14. 渡部伍良

    渡部政府委員 そのほかのものにつきましても、たとえば坑木ども、石炭の増産ということが二十六年の課題になつております。現在のいろいろな需要、それから日米協力経済というようなものからいえば、さらに二百万トン、それ以上も増産しなければいかぬというので、坑木需要がふえる。パルプは現在の計画で、ただいま申し上げましたように、千三百五十八万石の需要があるけれども、それは坑木についても、使用の合理化をはかると同時に、パルプについても、ただいま申しました闊葉樹利用とか故紙回収そのほかによつて——どうせ森林資源が十分でないことははつきりしておるのでありますから、需給を整えて行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  15. 平野三郎

    平野委員 どうも御説明が納得いたしがたいのですが、私どもの疑問に思いますことは、用材数量全体のわくは、今後非常に減つて来るわけです。現に昭和二十六年度は二十五年度より七百万石減るわけなのですが、そのうちパルプ限つては、御計画では相当増加しておるわけでありますから、必然他のものはより一層総体的に減らなければ、つじつまが合わないわけです。従つてパルプのみを非常に増加する御計画のもとに、ほかの方は非常に圧縮されるということに、りくつとしてはなるわけですが、そういうふうな御計画であるかどうかということを伺つておるのですから、その点はつきり御答弁していただきたい。
  16. 渡部伍良

    渡部政府委員 木材の全体の有効需要をとりますと、二十五年度八千八百万石の消費数に対して、さらにもつと多い需要があるわけであります。それはパルプだけではない。たとえば造船用材電柱まくら木車両、みなそれぞれ需要そのままをとつて、どれだけあつたらいいという数字は、合計いたしますと九百万石をずつと越すのであります。しかしそれは、たとえば坑木については鉄柱あるいはカツペにかえるとか、まくら木も、先ほど申しましたように闊葉樹にかえるとか、あるいは車両については外材を入れるとか、そのほか建築等においても外材を入れるとか、包装資材については段ボール等を考えるとか、そういうようなことをしていろいろくふうして、どうしても内地材で必要なものは一千百七十万石というふうに出ておるのでありまして、パルプだけの需要を圧縮してない、従つてそれはパルプ業界の力でそのものがよけい取る、そういうふうには考えておらないのであります。大体九千五、六百万石の需要になるのを、今言つたような、それぞれの用途部門において、消費合理化を考えることによつて、千百万石に国内需給を調整する、こういうふうに考えております。
  17. 千賀康治

    千賀委員長 平野君に申し上げますが、通産省雑貨局長小野儀七郎君も出席をいたしました。
  18. 平野三郎

    平野委員 どうも私、頭が悪いせいか、ただいまの御説明ではよくわかりませんが、大体想像するに、木材需要はふえる一方であるが、木材利用合理化その他の方法を講じて、実際の消費量を減らす、そうしてたとえば坑木について言えば、なるべく木材以外のものを使うようにする、あるいはパルプについても外材輸入をはかる、その他いろいろな方法で、極力木材以外のものを使つて需要にマツチする、こういうお話でありますが、そういたしますと、私ども非常に疑問に思いますことは、そうした木材以外の資源利用するという計画が別になくてはならぬ、それがはたしてあるのかどうか、これは私ども非常な疑いを持たざるを得ないのであります。早い話が、パルプについては外材輸入して需要にマツチするとお話になりましたけれども外材輸入計画はどういうふうになつておりますか。
  19. 渡部伍良

    渡部政府委員 パルプについては外材は考えておらないのであります。たとえば建築用材造船用材、そういうものについて考えております。ただいまお話のように、これは相当こまかくなるのでありますが、項目をあげますれば、パルプにつきましては、ただいま申し上げたように闊葉樹を使うとか、あるいは製材を使うとか、あるいは故紙回収をうんとやらす、こういうふうなことによつてつじつまを合せて行きたい。それからまくら木については、鉄柱とか、カツペ、古レールその他を利用する、そういうことによつてつて行こう、造船については外材を相当輸入するとか、——二十五年度も外材を相当輸入しておりますので、引続いて輸入を増加したいと考えております。それから電柱についても、鉄柱に振りかえるとか、まくら木につきましても闊葉樹利用するとか、あるいは規格改正して、もう少し利用度を広げて行くというようなことを考えております。車軸につきましても、外材輸入するとかそのほかのことを考えております。建築につきましても、いわゆる都市の不燃住宅によつて木材消費量としては効果は期待できませんけれども、一部なりともやつて行きたい。包装につきましては、ただいま言いました段ボールを考えるとか、あるいはそのほかの闊葉樹の活用を考えるとか、あれこれいろいろ考えまして、一千万石あまりの需要をほかに用途転換する、こういうことを考えております。
  20. 平野三郎

    平野委員 非常に意外なお話でございますが、そうしますと結論として、正確にいえば二十六年度は九千万石の木材需要は解決しない、しかしながらそのうち約一千万石程度木材利用合理化によつてこれを補つて行く、こういうお話でありますが、そうすると一千万石の木材需要を他の用具によつて補填する、こういうことでございますから、一千万石だけ木材需要合理化によつて消費節約するという計画がはつきりしておらなければならない。ただいまのあなたのお話によりますと、外材輸入するとか、あるいは製函用資材について段ボールを用いるとか、パルプについては潤葉樹を用いるとか何とかいうお話がありましたが、そういう御計画がはつきりできておるものであるか。私どもは常識で判断して、来年度においていかに木材需要合理化をはかつたところが、とうてい一千万石というような需要転換することは、けだし不可能だとしか思われません。それができるというお話なのですが、そういう計画がきちんとできておるかどうか、お伺いいたします。
  21. 渡部伍良

    渡部政府委員 木材消費合理化につきましては、戦争中みたいに、強制的に割当制度をやるとか何とかいうことによつてやることは考えておりません。けれども方面協力願つて、先ほど申し上げましたように、とにかく木材需給を潤沢にまかなうことはできないのでありますから、各方面の御理解と御協力願つてつて行く以外にない、そういう啓蒙、宣伝その他の運動によつてつて行こう、それから、需要の大きい部面については、具体的に業界協力しましてやつていただく、現在スタートしておりますのでは、たとえば故紙回収などは、文部省と協力いたしまして、小学校を利用して故紙回収をさらに一段と進めて行くとか、あるいは炭坑の坑木転換などについても、具体的に資金計画なり、あるいは需要の範囲というようなものの協議を進めて行きたい。それから外材につきましても、昨年は大体百五十万石程度であつたのを、さらに百万石以上を二十六年度においては増して行きたい、それからたとえばアラスカ材輸入をはかるというようなことについても、現在アメリカに行つているオーダー・ミツシヨンに事情を照会してもらうとか、いろいろな手を講じております。紙に書いたように非常に容易であるとは思つておりませんが、これはやるよりしようがないと存じております。
  22. 平野三郎

    平野委員 どうも非常に甘い考えであつてどもの見るところでは、さようなことは不可能と存じます。ただいまあなたのお話にもありました通り、各方面の御理解と御協力を得るということですが、理解をしても、協力をしなければこれはできない話であります。これはすべて利害に関係したものでありますから、たとえば木材外国から輸入するということも、石当りどのくらいにつくのか御承知になつておるかどうか。おそらくこれは補給金も何もないのですから、ただ協力を依頼されても、ただちにこれが実現できるとはなかなか考えられません。またその他のいろいろなお話がただいまありましたが、たとえば段ボールを使うというようなことも、段ボールの値段が安ければ自然に使われますけれども、私ども段ボールを大いに活用すべきであるということを考えて、これを奨励すべきだということについては異議ありませんけれども段ボールが非常に高くつけば、単なる指導奨励してみたところが、実際にはなかなかできることでない。また坑木について鉄柱を使えと言つたところが、最近の鉄鋼の値上り状況を見れば、法律で強制するというような方法をとらない限りは、なかなかできることでないと私は思います。ただ今の漠然たる理解協力のもとにやるというような制度では、一千万石という厖大な需要を、ただちに来年度から転換するというようなことは、これはとうてい安本であなた方机上の空論を唱えるだけであつて、実行は不可能である。こういう計画のもとに木材需要を考えて行かれるということになれば、いかに森林法改正してみても、これは当然森林法一大混乱が起るということしか、私どもは考えられないのですが、ほんとうに一千万石を転換し得るというだけの御確信があるのでありますかどうか、念のためにもう一度お伺いしたい。あとになれば必ず実績でわかることですから、はたしてほんとうにそれができるものであるかどうか、もしおわかりにならなければ、私は各項目についてそれの不可能なるゆえんを申し上げてもよろしいのでありますが、その御確信ほんとうにあるのかどうか、念のために伺います。
  23. 渡部伍良

    渡部政府委員 非常にむずかしい御質問でありますが、先ほど申しましたように、結局国内森林資源は足りないのでありますから、いやでも応でも消費節約して行かなければならぬ。その際に、日本経済全体から見て、各部門消費アンバランスになつては困ると考えますので、その点を是正して行くよりしかたがないのじやないか。そのためには、困難ではあるけれども、各方面に呼びかけてやつて行く以外にない。もしそれができないということになれば、先ほども申しましたように、外国木材は足りないようであります。また現在の状況では、南洋材以外は、たとえばパルプ材として昔樺太で使つたの輸入する、あるいは北米から入れるということができませんので、結局国内的に消費節約して行く以外にないと思つております。これでやつて行くよりしかたがないと思います。確信があるかというお話でありますが、われわれはこれに向かつて努力する、ぴちつと計画通りに行かぬにしても、できるだけ計画に近いものにしたいと考えております。
  24. 平野三郎

    平野委員 そういうふうにお話があれば私どももよくわかります。要するに一千万石の木材需要の圧縮、転換は不可能である、不可能であるけれども、しかしながら需要を押えることは困難だから、とにかくできてもできぬでも、それに向つて努力するよりしかたがないというお話でありますので、それならば私どももよくわかるのであります。要するに木材需要は押えるわけに行かない、しかしながら供給力は少いのだ、そうすればこれはどうしてもアンバランスを調整するためには、とにかくできてもできぬでも、なるべく木材以外の資源使つて利用合理化をはかり、それによつて極力進める以外にしかたがないという御意見であつて、これについては異議はないのであります。同時にその点の問題は明らかになつたわけであります。  そこでお尋ねいたしたいことは、それならば何ゆえにこの木材の重大なる消費者であるパルプ工業に対して、かように無計画濫設を許可されるのであるか、またパルプについては昨年は一千百万石、本年は計画によりますと千三百八十万石であります。これはほんとうに約三百万石は濶葉樹その他のものを使うという計画がはつきりしているのかどうか、これも今お話通りできない相談である、できない相談であるけれども、まあ極力そういう方針のもとにということでありますが、先般通産省の方の御答弁を拝聴して驚き入つたのでありますけれども通産省の方の二十六年度以降のパルプ新設計画に対する木材入手計画というものは、これはまつたく無謀きわまるでたらめな数字が本委員会にも報告せられているのでありますが、かくのごとき木材アンバランスが明らかであるというときに、極力木材利用合理化をしなければならぬと言いながら、一方においては、パルプ工業については無制限な増設計画をどんどん進めている。こういうことでは、私ども政府の処置というものがいかにも納得いたしがたいのであります。それで先般、本委員会に対して通産省の方から、現在建設計画中のパルプの四工場に対する計画書資料として提出をせられたのでありますが、その御計画を見ますと、濶葉樹を大いに使うとか、竹を使うとか、わらを使うとかいうようなお話がありましたけれども、それは今のあなたのお話通り、一つの希望にすぎないのであつて、実際的の計画はその中にほとんど含まれておりまん。それはもちろん多少の程度のことはあるけれども、数百万石というような木材を他の資源によつて利用して行くというようなことは、ただ説明だけだ、実際にはとうていあり得ないのであつて、少くとも農林省の方におかれては、そうした計画はまつたく林政の破壊であると言つておられるのであります。それで農林省通産省との間に、はなはだしき意見食い違いがあり、林野庁の長官も、本委員会において、最近のパルプ工場濫設についてははなはだ遺憾である、あのような計画がもしもこのまま続けられるならば、いかに森林法改正してみても、とうてい森林法は守ることができない。森林法違反のことは必然的に起るのだということの御答弁があつたのであります。そうしてみますと、安本中心となつて関係各省がよくそれを協議しておるのだというお話でありますけれども、実際には何らそうした協議は円満に行われていないということが明らかなんですが、ほんとう安本としては、農林通産両省とそれぞれ協議をせられて、的確なるところの計画のもとに進んでおられるのであるかどうか、その点がはなはだ疑いなきを得ないのであります。少くともこの森林法改正をされましても、今の通産省の方の御計画によれば当然森林法違反が起るのであります。森林法違反罰則はきわめて軽微なもので、本委員会でも問題になりました通り、無許可の伐採を行つても三万円以下の罰金に処すということになつておるのですから、三万円さえ罰金を払えば、もうどんなに森林法違反してもかまわないわけです。しかしながら、明らかに違反をすることを予想されているような計画で、ただ罰金さえ払えばよいのだというようなことは、政府のおやりになることではないと思いますけれども、三万円くらいの罰金は、おそらくあの莫大な利益のあるパルプ会社から見れば大海の一滴にもすぎないのでありますから、かような罰則なんというものはほとんどあつてもなくてもよいものだ。ですからおそらく森林法違反が起るであろうし、また農林省としては、かような計画を押し進めになることについては、必ず森林法違反することはきまつておるのだということを、言明せられておるのであるが、この両者の中間に立つて日本木材政策を立てられる安本として、さようなことで満足されるというようなことであれば、いかにも政策の怠慢と無計画ということについて、国会としては関心を持たざるを得ないのであります。  そこで通産省の方がお見えになつたのお尋ね申し上げます。先般御提出なつ資料のうちで、帰つてから御答弁をするというお話でありましたけれども、あれは何工場でしたか、各府県の木材入手計画の中で、岐阜県に限つて特に岐阜の一部ということが書いてありましたけれども、その問題は明らかになりましたか。
  25. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 パルプ工場の原木の問題につきまして、過般御質問がございました。とりあえず各社の生の資料をお出しいたしたのでありますが、一部に御不審の点もありました。特に苫小牧の工場関係岐阜の一部とございましたのはミスプリントでありまして、特に意味はないのでございますから、さよう御了承願います。
  26. 平野三郎

    平野委員 それでは次に、先般御提出の御資料は一応撤回されて新たにお出しになるのであるか、あるいはあの資料がどこまでも一つの計画として確信のあるものであるかということを伺うわけですが、その前にあの資料の中で、たとえば島根県についていえば、あの二つの工場消費量を合せると三十二万石という新しい数字があそこに出るわけですが、これらも私は、林野庁で立てられる今後の森林計画からすれば無謀な数字であると思いますし、また山口県と島根県と鳥取県ですか、あそこだけで一工場計画が五十万石にもなつているというようなことについては、どこまでもこの計画が正当なものであるということをおつしやいますかどうか、あるいはあらためてほんとう計画をお出しくださるかどうか、その辺をあわせて伺います。
  27. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 この前お出ししましたのは、先ほど申しましたように、各社が、しかもとつさの間に、従来の集荷経路等から見まして大体こんな見込みだ——それも各社ももちろん十分の検討を経ておりませんし、また今度審議中の森林法によりまして、供給面等ががらりと様子がかわつて参るわけであります。そういつた新事態に即応して、十分再検討と申しますか、見直さなければならない数字なのでございまして、撤回と申しますか、ちよつとこのまま御審議いただくわけに行かぬ事情だと思いますので、御了承願います。
  28. 平野三郎

    平野委員 それでは先般の御資料は、一応御破算にしてあらためて出されるというお話ですが、どうかそういうふうにお願いして、なるべくすみやかに、できるだけ実際の数字を出していただきたいと思います。  最後に私は大臣に申し上げて政府の善処を要望いたしたいと思いますけれども、本日大臣の御出席がありませんので、雑貨局長に申し上げますから、政府部内においてよく検討せられて、森林法にマッチした新らしい確固たる木材政策の樹立をお考えくださることをお願いしたい。  私の申し上げたいことは、パルプ会社の最近の非常な法外なるところの利潤の問題であります。ここに東洋経済新報がございます、この中で——これは雑誌というよりももう会社の考課状で明らかになつておるところでありますから、これは明らかな事実でありますけれども、従来成績の不良であつた一つの例として、東北パルプにつきまして言いましても、この会社は資本金わずかに一億七千万円の会社であるが、本年度の利益金は六億二百万円に達しておるのであります。すなわち利益率は六十九割であります。この会社は四割の配当をいたしておりますけれども、利益に対してわずかに五%、三千四百万円であつて、内部保留金だけでも二億五千余万円と、一年で資本金の倍にも達するような社内保留をいたしておる、その他の積立金の累計は三億に上つておるというふうで、わずかに一億数千万円の会社が、わずか一年間に六億円の利益をあげておるという状態であります。もちろん会社が非常に利益をあげられることはけつこうなことでありますが、まず今日、私は木材関係以外のすべての日本の産業を通観してみても、かくのごとき法外な利潤をあげる企業というものは、おそらく他にないのじやないかと思います。これらのパルプ工業が非常な利益をあげ、また外貨の獲得等に活動せられることについては、国家のために大いに慶賀すべきことでありますが、一方において最近における洪水その他の頻発を考えますときに、これは実にゆゆしき問題ではないかと思います。国家の予算をもつて見ましても、公共事業費一千億と言つておりますけれども、その半ばは災害復旧費であります。また今日中央、地方の予算を通観しても、おそらく一千億以上の災害復旧費が出ておるのであります。しかも年々発生します風水害その他の被害は何千億と計算をせられておるのであつて、その一部を国が千億円以上も出して、かろうじて災害復旧をいたしておるという現状であります。これはもちろんパルプのみの責任ではありませんけれども、最近の木材の濫伐が非常に大きな原因をなしておることは、もう疑いを入れないところと思います。そうして見ますと、これらの会社が利益をあげるということはけつこうであるけれども、一方において国が莫大な災害復旧費を出しておるということは、結局は、国の負担においてこれら一部営利会社が独占的利潤をあげておるというふうに見られるのであります。言いかえれば国がこれらの会社に対して補助をしておるということで、かくのごとき厖大な利益をあげるということは、いかにも何か非常な無理があるというふうに思わざるを得ないのであります、こうした木材の濫伐を行うということが、結局かような災害をもたらしておる。国がそれを責任をもつて復旧をいたしておりながら、一方において、一利益会社がかような濫伐をどんどんやつておるということがあつてはならぬ。私は、かような木材の使用をするというような国家的な使命を持つておる企業については、国が相当にこれを監督し、また国の責任においてある程度の指導調整をはかつて行くことが必要ではないかと思う。これは何人も議論のないところであろうと思います。会社から言えば、ただ法律の範囲内においてどんどん山を切つて、もうけさえすればよいのだということでありましようけれども、国家の方はそうは行かない。そういう観点から、今回われわれの方で立案いたしまして、森林法改正して、森林計画について根本的な調整をはかるということにいたしたのでありますけれども、いかに森林法改正いたしましても、この法律罰則等は、先ほども申し上げましたように、なかなかほんとうにそれを取締るということもできないいろいろな事情があるのでありますから、ただ森林法改正しただけで政府が知らぬ顔をしておつてはいかぬ。この法律を確立するように協力せられることでなければ、とうてい日本林政というものは確保できない。同時に、治山治水という重大な問題の根本的な解決はあり得ないと思うのであります。不幸にして通産省がこのパルプ工業を監督するお立場にありながら、農林省の方との密接なる連絡もなく、かようにただ営利会社の利潤をあげさせることにのみ協力をせられるということでは、この森林法をせつかく改正したところで、国家のために何にもならないということを、私ども憂慮するあまり申し上げるのであります。一営利会社が、かような法外なところの独占的利益をあげておるという陰には、国が莫大なるところの犠牲を払つておるのでありますから、政府はここに何らかの重大なる決意をもつて、これの調整に当つてもらわなければならぬ。これは先ほども申し上げたように、どうしても大臣が責任を持つて解決をはかつてもらわなければならぬことだと思いますけれども、まずあなた方によく申し上げまして、政府部内で御相談を要望するものでございます。特に先般来安本中心となつてよく関係各省協議して、木材政策については遺憾なきを期しておるというお話であつたが、ただいま安本の局長の御答弁を伺いますと、まことにあなたもよく内容を御存じありません。いわばただ資料をそこで読み上げられるということで、ほんとうにあなたの頭に入つておらぬように思うのであります。一々御指摘を申し上げれば、私どもは専門家でありますから、造船用材が幾らについておるとか、アラスカからどのくらい持つて来るとか、あるいは木材利用についてどうのこうのということはありますけれども、それはただ机上の計画であつて、実際上においては、そんなことはまずできることではない。パルプ会社も認可、許可をとるときには、できるだけ濶葉樹を使いますとか、クラフト・パルプによつてなるべく針葉樹を使わないようにいたしますということを言つておりますけれども、実際会社の現場に行つてみれば、どんどん付近の赤松を切つて来てたいておるという現状であつて、あなた方の計画と実際とは非常に食い違つておるということは、ここに指摘するまでもないことであります。どうかその辺をよくお考え願いたい。農林省通産省との連絡もきわめて不十分でございます。ひいてはこれは安本の責任でありますから、この際ひとつ根本的な方策の建直しをお願いしたいということを、強く要望いたしまして、ひとまず私の質疑は終ります。
  29. 横田甚太郎

    ○横田委員 パルプについて一点だけ伺つておきます。二十六年五月二十二日の産経を見ますと、「輸出は二十五年の実績では生産量の二分四厘であるが、国内価格高で輸出を必ずしも有利とせず、ことに最近は新聞用紙の輸出に反対陳情もあるが、通産当局には国内の統制撤廃に呼応して自由通商の道を選ぶ考えもある」ということが載つておりまして、輸出というものを必ずしもとめておらないということを言つておるが、輸出は新聞用紙でどのくらい出ておりますか。
  30. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 新聞用紙の最近の月の輸出高は、約百五十万ポンドと計算しております。
  31. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは朝鮮方面にどのくらい出ておりますか。朝鮮だけに行くのではないでしようが、朝鮮事変が起つてから、特にたくさん出ているのです。事変後における輸出の増勢はどのくらいあつたか。
  32. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 輸出制限の措置がとられましたのは三月の初めであるのでありますが、その前の一、二月ごろは、月にいたしまして約一千二百万ポンド程度の輸出がありました。朝鮮関係が特別に数字がふえたということもないように聞いておりますが、はつきりした数字は持つておりません。
  33. 横田甚太郎

    ○横田委員 日本国内においても、紙が足りないという問題は非常にたくさん起つております。それであるにもかかわらず、どうして新聞用紙を輸出しなければならなかつたのですか。まず日本の新聞をきれいにして、それから後に、余つたらアメリカ人の好むような輸出をしたらよいではないか。それを逆にやつておるのではありませんか。
  34. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 全般の方針といたしまして、できるだけ海外からいろいろな諸原料等をたくさん入れなければならない国柄であるわけでありますので、従つて、こちらから出しますものも、なるべく制限したくないというのが全般の建前であります。従いまして、洋紙関係につきましても、国内需要充足も大事でありますので、過般教科書用紙あるいは選挙等の関係もありまして輸出統制の措置もとつたのでありますが、その事情等もなくなりました今日、実はなるべく早い機会に輸出制限等の撤廃をいたしたい、かように存じておるわけであります。ただ、ただいまの現状といたしましては、外に出ておりますのは、新聞用紙と申しますか、新聞に使われる俗に言います色紙という関係のものが多いのでありまして、正規の新聞用紙といたしましては国内需要を優先的に確保させておるような状態であります。
  35. 平野三郎

    平野委員 もう一点だけ、ちよつと漏らしたことがあるので伺います。中国地方に最近濫設されるパルプ工場四つについては、農林省の指摘される通り森林法違反を行わなければ、とうてい工場の運営ができないということは明らかになつておるのでありますが、これは昭和二十八年度に完成するというのでありますから、今のうちならば規模の縮小をするとか、あるいは計画の変更をするということも可能であります。もしこのまま今の計画通り行くということならば、おそらく二万トンの能力のある工場でも、一万トンしか操業ができないということになつて、結局は工場自体としても意味のないことを行うことになりますが、今のうちならば何とかなるのであるから、通産省として、これに対して何らか指導をして、計画の変更を勧めることをする御意思があるかどうかということがまず一点。もう一つは、先般は四つの工場以外にはもう新設計画はない、これで一応おしまいだという御答弁でありましたけれども、われわれの聞いておるところでは、まだそのほかにも二、三あるということを聞いておるのでありますが、ほんとうにあの四つ以外にはないのであるか。もしあるとすれば、もちろんこれは計画すべきものではないのでありますが、もしかりにあつた場合には、そういうものについては、通産省としては実施しないように干渉される御意思があるかどうか。この二点を、最後にもう一ぺん伺つておきます。
  36. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 前段の、ただいま計画中の工場を縮小する要がないかというお話でありますが、先ほど来安定本部からもるる御説明がありましたように、大体経済自立計画と申しますか、それにのつとつて設備の計画も行われておるわけであります。二十八年度等の木材消費関係も、安本で調整された大体の数字にのつとつて計画が行われておるわけでありますので、今森林法が施行に相なりまして、いろいろ供給面の様子があるいはかわつて参るかとも思われますが、しかし具体的にどの県でどういう樹種が、いつどれだけという、はつきりした比率は承知いたしておらないわけでありますので、ただいまそれだけの理由で計画を練り直すということは、目下のところ考えておらないのであります。  それからこの前差上げました新工場計画でありますが、一件だけ落ちております。まだ工場敷地がはつきりしない点がありますので、資料として差上げていなかつた分で、国策パルプが、あるいは岡山といい、あるいは山口といい、ただいま立地条件を調査中のものが一件ございます。
  37. 平野三郎

    平野委員 先般の本委員会におきましては、もう四つ以外にはないと明言せられたのでありますが、今伺うともう一つあるようなお話です。それは訂正されて新しく資料をお出しになるわけでありますか。またそれ以外にはありませんか。
  38. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 それ以外に、はつきりしたものはまだ聞いておりません。たとえば四国あたりで、やはり工場誘致と申しますか、県当局が各社に工場を新設しないかという話を持ちまわつておるように聞いておりますが、これもまだはつきり計画というところまで至つていないようでございます。ただいまはつきり聞いておりますのは、国策パルプの一件であります。
  39. 平野三郎

    平野委員 私のお尋ねしたのは、そういうまだはつきりはしないけれども、さらに新しいケースが出て来る場合、そういうものについても、通産省としてはそれを認められるのかどうか。そういうものはとうてい無謀な一計画であるから、なるべく中止をするように干渉せられる御意思があるかということを、重ねてお尋ねしたのですが、その点はどうですか。
  40. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 全体のパルプ工場の能力から申しますと、ただいま行われております。増設あるいは新設の計画ができ上りましても、ようやく戦前の六〇%かあるいは六五%程度に回復するという程度でございますので、この木材等も、なるべく経済的な効率のよいものにしたいという点からいたしましても、また一方、紙の需要あるいは人絹、スフ等の需要等から見ましても、実はもう少し増強できないものかということを考えておるのでございますが、先般来の原料の供給面いかんという点ともにらみ合せて、今後の対策を考えなければいかぬと思われます。しかしさしあたりのことといたしましては、ただいま御説明した程度のところで一巡ではないかと存じておるのでありますが、根本といたしまして、これをこの点にとどめるとか、あるいは今後のものは一切制限するということも言い切れないように思われますので、御了承願いたいと思います。つまり先ほど来御説明がありました利用合理化がどの程度実効が上るものか、あるいは濶葉樹利用がどこまで具体的に実現するかというようなことは、いろいろの情勢の変化によりまして、北洋材、南洋材どもどしどし入つて来るというような要素もあるかと思いますので、一概にこの点でとめるということも言い切れないと思いますから、御了承願います。
  41. 平野三郎

    平野委員 どうも納得の行かない御説明です。この計画が完成しても戦前の約六〇%というお話がございましたけれども日本パルプ工場というものは、戦前はほとんど樺太に集中しておつた。それがなくなつて内地の方へ転換して来るのでありますけれども日本パルプ工業を戦前と同じような位置にまで発達させるということは、樺太というものがないのでありますから、貧弱な日本の内地の資源で、樺太の資源に置きかえるというようなことでありますから、そんなことはとうてい無理な話なんです。林政部長が見えたので、そこで私は農林省に伺いますが、今の通産省お話は、今の計画のものはもちろんのこと、さらに今後の計画のものも、情勢のいかんによつてはやむを得ないというように、どんどん許可される方針のように思われるのであります。ことに将来北洋材、南洋材が入つて来るというお話がありましたが、南洋材というものは、パルプに使われるものは全然ございません。また北洋材も、ソ連の協力理解を得なければこれもできない話でありまして、今日の国際情勢の関係から言つて、そういうことを予想することは、今のところとうていできませんから、北洋材、南洋材というようなことは、とうてい今日問題にするに足りないことであります。ともかく、今のような通産省方針で行けば、農林省がどれだけ日本森林を確保しようとしても、農林省が引受けて行くことはとうていできないと思いますが、農林省の方はどう思われますか。
  42. 小川保男

    ○小川説明員 ただいま平野委員のおつしやつたような情勢だと考えております。応じ切れないだろうと考えております。
  43. 平野三郎

    平野委員 今林野庁責任者からも御答弁になつているが、通産省がそういうようなお考えのもとに行かれるならば、森林の元締めである農林省も責任を持てないということを言明しているのです。かような意見食い違いがありながら、なお安本中心として一政府部内はよく打合せをして、遺憾なきを期しているというような先般来の御答弁は、この国会を無視するというか、侮辱するもはなはだしいと思うのであります。ことに、安本の立てられた計画によつて自立経済がこうなつているのだというような雑貨局長のお話でありましたけれども、先ほど私と安本との質疑応答で明らかになつたように、安本の自立経済は、一千万石の木材が他の資源によつて補填せられるという前提のもとに初めて成り立つているのであつて、一千万石の木材利用合理化ということはまつたく不可能である。ただ、そうするよりしかたがないから、できるだけそうするのだという一つの悲しい希望にすぎないのであつて、とうてい実現は期待されないのであります。そういう不可能な前提に立つた自立経済でありますから、その自立経済を基礎にしてどんどんパルプ工場を許可するというようなことでは、私はまつたく納得が行きません。この点安本とせられては、どういうふうに思われますか。
  44. 渡部伍良

    渡部政府委員 木材需給の将来は、先ほどから御説明申し上げましたように、非常にきゆうくつであるのでありますが、しかしこれも、お話のように他国から供給を仰ぐことはできないのでありますから、一方では森林供給の側と、それから需要者の各産業側との調節をとつて行くようにするよりほかないのであります。ずつと先の長い将来のことは別といたしまして、ただいまのところ、一応二十七、八年程度の見通しといたしましては、先ほどから申し上げますように、紙パルプの方もこれでいいというわけではなしに、やはり今雑貨局長からお話のあつた程度の生産は日本の自立経済から言つてもあつた方がいいのでありますから、一方の方では、森林の方で奥地林の開発とかいろいろ努力していただくと同時に、この方面では消費合理化利用合理化をはかるというふうに、つじつまを合せて行くよりほかに方法はないのではないかと思います。従いまして、ただ宣伝とか協力ということだけではいかぬということになれば、またさらに徹底したことを考えても、その需給の調整を合わす以外に方法はないのではないかというふうにわれわれとしては考えております。
  45. 平野三郎

    平野委員 かような論議を繰返しておつても、とうてい私は納得が行きませんから、委員長にお願いをいたしますが、われわれは子供ではないのだから、そういう子供だましのような説明をされてはまことに迷惑千万です。要するに安本は、つじつまを合せなければいかぬのだというようなお話でありましたけれども、そういうことまでも考えられるならば、かようなパルプ工場濫設について、何ゆえに通産省の方はもつと断固たる態度をとらないか。何らそういうお考えはない。しかも農林省の方では、とうてい日本森林の維持はできないと言う。森林が維持できないということは、結局その治山治水が脅威を受けるということであつて、先ほど来私が申し上げましたように、日本の山や川を犠牲にして、つまり国民の生活というものを犠牲にして、パルプ工場さえ発達すればよいという、要するに通産省つじつまを合せるための御議論であるが、今のパルプ工場に対する適切な対策を立てることは政府でただちにできる。そのできることもしないということであつて、この点において全然農林省通産省の見解は一致していない。安本責任者が、明らかに重大な点について、あくまでも子供だましみたいなことを言つておられて、私はあなたとお話しても果しないことですから、委員長にお願いしますが、今度大臣を呼んでいただいて、抜本的対策を立てるようにお願いして、私の質問を終ります。
  46. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 私の御答弁にも不備な点が多々あつたと思います。たとえば戦前のパルプの生産能力というものの関係でございますが、これもお話通りでございまして、実は内地だけの関係から申しますと、先ほど来問題になつております新増設計画が完成いたしますと、ほぼ戦前と一ぱいのような形に相なります。従いまして先ほどもちよつと申し上げましたように、今度計画されておりますものができ上れば、大体その程度でしばらくの間見送るという状況になるのではないか、使います方面としても、山が荒れ放題に荒れてもかまわないということではないのでありまして、やはり工場を動かしますのには、百年の計がなければならぬわけでございます。従いまして、今回森林法ができまして、いろいろな面で生産等も計画性を持ち、あわせて増植林関係計画的に促進されるということでありますので、私ども需要面を担当する者として、大いに敬意を表してこれを迎えているわけでございます。その点誤解のないようにお願いしたいと思います。また先ほどもお話がございましたように、かなりの利潤を各社があげているわけでございますので、私どもとしては、機会あるごとにこれを植林の方面に還元することを各社にも勧めております。従いまして、各社もようやく自分で山を持ち、木を植えて行く方向にも努力して参つておりますが、資源の濫用ということに全然無関心で、パルプ会社がもうかればよいという意味で主張しているわけではありませんので、念のために御了承願いたいと思います。
  47. 千賀康治

    千賀委員長 この際一つ聞いておきますが、戦前の状態になるのだということをおつしやるのですが、戦前の状態などは、日本の内地にはパルプ会社はほとんどないと思います。一体どこをつかまえて戦前の状態とおつしやるのか、樺太とかその他の方面にあつたものを加えて戦前の状態というのか、あるいは戦前におけるパルプ需要額に対して供給額が相当するというのか、私の知つている限りでは、戦前のパルプ会社のごときは、ほとんど外国製のパルプ使つていた。どこどこのレーヨンが何十トン日産するというような、その原料の大部分はノルウエー、スエーデンなどのパルプをおもに使つておつた記憶がはつきりしておりますが、戦前にはほとんど内地にはパルプ会社はなかつた。どういうことを標準にして戦前と言われるのか、それをひとつ伺つておきます。
  48. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 戦前樺太、朝鮮、台湾というものを含めまして、昭和十六、七年ごろのパルプ工場の能力が百七十三万トンくらいになつております。内地関係だけで申し上げますと、そのうち六五%が内地に能力があつたわけでございます。先ほど来申し上げましたように、ただいま行われております新増設計画が完了いたしますと、ほぼその当時の能力を持つことになるわけでございます。
  49. 千賀康治

    千賀委員長 わかりました。そうすると、戦前ということは戦前にあらずして敗戦前ということで、すなわち太平洋戦争が起り、あるいは満洲事変が起つてから、日本外国に対する原料取引関係が悪化して来て、日本の山がどうなろうと、この戦争に勝ちさえすれば先は先だということで、全資源を戦争のために集中した。そのころの生産能力と匹敵したのでは、もう日本の負担力はすでにオーバーしている、こういうことがはつきりするので、これは少しお考えにならないと、ずいぶん妙な錯誤が起きて来ると私は思います。  それからいま一つ伺いますが、各社がこれで自分のなわ張りをつくつて、大体農林委員会もやかましいし、通産省もこれに従わなければならぬということで、増産制限をやめたとしますと、今度は各水系によつて、たとえば苫小牧会社が木曽の水系の上の上の奥地まで分工場をつくつて、そこで粗製パルプをつくつて、重いものはだんだん洗い流して、比較的軽いものを本社に運んで来る、そういう余分な仕事をやり出して、そして増産になつて来る場合には、政府委員はどうお考えになりますか、そのことをひとつ御答弁願つておきます。
  50. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 前段の御質問でございますが、お話のように、戦争に入りまして急激に内地の増産も行われたことでございますので、それと見合わせるかどうかというお話でございますが、その点はまつたくお説の通りでございますので、再考させていただきたいと思いますが、後段の各水系ごとに山奥で粗材を造成するということでございますが、実は私不案内な点がございますので研究いたしまして、いずれかの機会に答弁させていただきたいと思います。
  51. 平野三郎

    平野委員 先ほどお願いした、あらためて出される資料はもちろんのこと、さらに今お話なつパルプ会社が利益の一部をもつて増林をしているという御説明があつた。非常にけつこうなことですが、また当然のことですが、今東洋経済新報を見ましても、六億円も利益がある。そのうちの一億円くらいは増林に出してもいいと思いますが、そういうことを実際にやつているか、あの考課表には記載されておりませんが、パルプ会社が増林に出したというのは、どの程度投資しているかということの資料を、あわせてお願いいたします。
  52. 千賀康治

    千賀委員長 わかりました。  ほかに御発言がなければ、今日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつて通知いたします。     午後零時二十九分散会。