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1951-05-22 第10回国会 衆議院 農林委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十二日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君       野原 正勝君    原田 雪松君       松浦 東介君    足鹿  覺君       遠藤 三郎君   小笠原八十美君       小淵 光平君    川西  清君       河野 謙三君    中馬 辰猪君       中垣 國男君    平野 三郎君       八木 一郎君    大森 玉木君       吉川 久衛君    坂口 主税君       井上 良二君    横田甚太郎君     —————————————  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 塩見友之助君         林野庁長官   横川 信夫君  委員外出席者         農 林 技 官         (林野庁林産課         長)      藤本 和平君         通商産業事務官         (通商繊維局化         学繊維課長)  田村 武敏君         通商産業事務官         (通商雑貨局紙         業課長)    矢野宏太郎君         通商産業事務官 瀬川 一郎君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  林野に関する件
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  まず林野に関する件について調査を進めます。先般の森林法案の審査に伴いまして、森林資源保護育成繊維工業との関係について、政府部内における連絡不十分と思われる点があるように考えられましたので、本日は関係当局出席を求めてこれらの点を明らかにし、政府の施策に遺憾なきを望む次第であります。質疑の通告がありますので、これを許します。平野三郎君。
  3. 平野三郎

    平野委員 ただいま委員長から御報告のありました通り、本委員会におきまして森林法案審議を行うにあたりまして、パルプの問題について重大な疑問が発生いたしましたので、特にパルプ監督官庁としての通産省当局出席をお願いいたしたわけであります。これは局長に御出席を願わなければ政治的な問題についての質問ちよつといたしかねるのでありますが、本日のところは事務的な点について、特に政府立場お尋ねして、さらにその結果によつて質疑を継続するという前提のもとにお尋ねを申し上げます。  実は先般の森林法案審議にあたりまして、われわれとしてきわめて疑問に感じましたことは、今日森林法改正して、日本林政について重大なる改革を断行し、ことに林政に対して非常な強い計画性を与えるのでありますが、この間にありまして、最近特に木材の重大な消費者としての立場をとりつつありますところのパルプ工業につきまして、もちろん自立経済立場から言つてパルプ工業が大いに発展することにつきましては、これを切望してやまないのでありますが、しかしながらパルプ工業は、輸出の面におきまして非常な働きをするといたしましても、いかにその工業が発達しても、それがために日本森林荒廃に帰して、ことに治山治水上の重大影響を与えるというようなことになりましては、国が亡びるということになるのでありますから、従つて、これは当然農林省として重大関心を持つことは言うまでもないことである。それで、このパルプ資材としての木材につきまして、農林省はいかなる考えを持つておるのであるかということを、農林省に対し質問いたしましたところが、農林省林野当局としては、全然これについては関知していない。監督官庁通産省であるから、農林省から通産省に対ししばしば要求しておるのであるけれども通産省はまつたく剣もほろろ態度で、農林省に対して何ら協力的態度をとらないのは、はなはだ遺憾であるという御答弁林野庁長官からあつたのでありますが、これは容易ならざる問題であるということから、本日急にこの審議をいたすことになつたわけであります。  いろいろお尋ねいたしたいことはたくさんありますが、まず通産省の方にお尋ねをいたしたいと思います。林野庁の方で関心を持つことは当然の話であります。従つて通産省にいろいろ連絡をせられるそうでありますけれども、それに対して、まつた通産省の方は馬耳東風であるというようなことは、いかにも奇怪しごくであると考えざるを得ないのであります。今日かような重大な森林法改正行つて私有林に対するところの施業の制限を行う、いわばこれは私有権に重大な制限を加えるという大きな法的措置をとるのであります。しかるに一方最近木材最大消費者であり、しかも今後一層消費が増大すると見込まれるところのパルプ工場等が、日本林政とまつたく無関係に、至るところに濫設されて行くということは、矛盾もはなはだしい。かような重大な法律改正をするならば、最大木材消費者であるパルプであるについても、当然何らかの措置をとるべきである。それに対しては何もしないでおいて、一方で森林法改正して行つたところで何にもならないのでありますが、かような農林省側の要望に対して、通産省は何ゆえにきわめて冷淡な態度をおとりになつているのか、まずこの点を承つて、さらに質問いたしたいと思います。
  4. 矢野宏太郎

    矢野説明員 ただいま森林法の問題に関連いたしまして、農林省通産省連絡が非常に不十分ではないかというおしかりを受けたのでございますが、私の方といたしましては、木材需要につきましては非常に大きな関心を持つておるのであります。従いまして経済安定本部を中心として、農林省ともいろいろ連絡をつけながら、森林法の運用にマッチするような木材需要供給について考えながら、仕事をしているわけであります。従いまして、決して連絡が不十分であるというようなことはないと考えているのであります。
  5. 平野三郎

    平野委員 ただいまの御答弁によりますと、通産省は極力農林省と協力してやつているというお話で、この間の林野庁の方の御説明とはまつたく食い違つているので、いずれかがうそを言つているということになりますが、ちようど林野庁長官も御出席になつておりますので、もう一度、どつちがほんとうなのか、それを林野庁の方から明らかにしていただきたい。
  6. 横川信夫

    横川政府委員 ただいまのお話は、たいへん食い違つておるように伺えたのでありますが、先般も申し上げましたように、パルプ用木材需要につきましては、私ども重大関心事でありますので、常に一応の調査はいたしておるということを一つ申し上げます。そのほかに、特に関西方面等におきましては、資材見通しもなしにパルプ工場——それも濫設という言葉を申し上げたのでありますが、濫設されておることはまことに遺憾であるから、資材工場立地ということについては、十分御検討を願いたいという申入れを私の方からいたしておつたのであります。そのことを先般も申し上げたのでありますが、お話のように、安本を通じてはいろいろ事務連絡をいただいておりますけれども、私ども先ほど申し上げました、特に中国地方パルプ工場濫設について申入れいたしましたに対しまして、かえつておしかりを受けたようなこともあるのでありまして、それを平野先生は敷衍をして、今のように修飾されてお話になつたのじやないかと思うのであります。通産省からお話のように、そう特に連絡が悪くて非常にちぐはぐになつている、そのために大きな支障を来したという事例はないのでありまして、私の先般の申し上げ方が適切でなかつたために、あるいは平野委員の誤解を受けたかとも思うのであります。その点御了承をお願いいたします。
  7. 平野三郎

    平野委員 その間の経緯はわかりましたが、いずれにいたしましても、これは日本林政上、重大な基本的な問題でありますから、当然これは林野庁会議をして、通産省監督権を行使して行くべきであるのでありまして、法的根拠がなければ、これはまたさらに考慮もいたさなければならぬということで、そういう前提のもとに、通産省の方の反省を要望した上で、さらにまたお尋ねいたしますが、このパルプ工場新設については、通産省としては認可権を持つておらるるかどうか。あるいはこれについて、少くとも行政的にはどういうような監督の処置をとつておられるか。かように一方において森林法改正が行われることになりますれば、御承知通り資材入手をする計画が確立しなければ、いかに工場建設せられても、これは何にもならないことになるのであります。どうしても全国的な林政立場から、それぞれ適当に工場の配分を行つて行くのでなければ、これは当然重大な林政の混乱を来すことになるのでありますが、特に最近、先ほど林野庁長官からもお話があつたように、中国地方においてパルプ工場濫設を見るような状況にある。特にあの方面はいわゆる赤松地帯でありまして坑木等の競合する点も多々あるのでありますが、御承知通り中国地方は大体老年期地帯であつてことに山林、林野荒廃は、はなはだしい状況になつておるのであります。そこにおいてますます集中的に、赤松を目的としたパルプ工場濫設されることになれば、治山治水上ゆゆしき問題だという点から、農林省の方でも関心を持たれるのは当然な話でありますが、かような点について、監督官庁としての通産省は、どういうような考え措置をとつておられるか、お伺いいたしたい。
  8. 矢野宏太郎

    矢野説明員 ただいま御質問の、新設工場に対する監督権は、現在では全然持つておらないのでありまして、せいぜい指導的に、政府の意図する方向へ持つて行くという以外には道がないのでございます。従いまして、最近の各工場の新増設につきましては、私どもといたしましても、最も需給の逼迫しております針葉樹はなるべく使わないで、潤葉樹を主として使いますクラフト法による機械の新増設——これは現在のパルプ需給状況から申しまして必要でございますので、極力そういうクラフト法による機械の新増設という方面だけを指導して、その面から木材需給を逼迫させないような方向に向つて指導しております。
  9. 平野三郎

    平野委員 全然監督権がないというお話ですけれども臨時物資需給調整法もあるのであるし、政府として何らか監督措置を講じようと思えば、できるわけではないですか。
  10. 矢野宏太郎

    矢野説明員 物調法では、ただいまのところちよつとむずかしいと思うのでありましてもしやるとすれば、設備制限規則というようなものを発動をして、その面から何らか法的な監督をするという以外には、ちとつとないのではないかと思います。設備制限規則は前はあつたのでございますが、昨年の三月にそれが撤廃になりましたので、現在のところは、全然法的な根拠はないという結果になつております。
  11. 平野三郎

    平野委員 かりにそうといたしましても、少くも今回の森林法改正せられることについては、もちろん御承知と思うのでありますが、これが効力を発して来ることになりますれば、重大なる紙業制限が加えられることになつて従つてこれらの工場資材獲得径路についても、おそらく非常な問題が起つて来るわけでありまして、この森林法改正いかんによつては、これらの工場がどんどん濫設されても、まつたく立ちぐされになるというようなことも起つて来るわけでありますから、従つて通産省としても、森林法については当然関心を持たれて、農林省の方ともいろいろ連絡等もせられたかと思うのでありますが、それらの点については御承知になつておるのかどうか、あるいは連絡をとられたかどうか、また森林法が有効になつて来た場合に、今計画中のこれらの工場が、この新しい法律のもとにおいてもやつて行くことができるかどうか、そういう点についての見通しはどうでございますか。
  12. 矢野宏太郎

    矢野説明員 森林法の成立につきましては十分関心は持つております。従いまして、木材需給につきましては、常時農林省または安定本部を通じまして、なるべく需給上うまくマッチするようにやつております。従いまして、今度の森林法が成立したあかつきにおきましても、木材需給計画に齟齬を来さない方向に、各工場木材需給を持つて行く方針のもとに現在作業を進めております。
  13. 平野三郎

    平野委員 資料の提出をお願いしておいて、今ようやく拝見いたしましたけれども、これは非常にずさんなもので、的確に内容を知るにはまことに不満足なものであります。ここでお尋ねしたいことは、二十六年度のパルプ木材消費数量は、この資料によりますと三千百五十万石で、安本の方から先般出された数字とは違つておりますが、安本と絶えず密接なる連絡をとつておやりになるという先ほどお話と、どうも矛盾するように思われるのですが、その点はどうか。  それから目下建設中の工場は、報告によりますと、ここに四つありますが、四つだけですか。将来計画中のものというようなものについては、全然資料が出ておりませんが、その辺はどうなつておりますか。
  14. 矢野宏太郎

    矢野説明員 資料の点につきましてちよつと申し上げます。新設工場四つございますが、これは大体二十八年度ころに完成します予定工場でございまして、そのほかの今増設中のものは、本年度の六月ごろにすべて完成いたしますので、その分の原料は、パルプ関係から、入手しましてから半年以上寝かせてから使いますので、原材料の入手径路と申しますのが、現在すでに稼働中の原料と一緒になつておりまして、はつきり区別がつきませんので、現在わかつております将来の増設、または新設工場についての一応のはつきりした数字の方だけを、ここに出したわけであります。
  15. 横川信夫

    横川政府委員 ただいまの数量お話でありますが、安本自立経済におきましては、パルプ針葉樹が一千六十万石、そのほかに潤葉樹が三百万石、計一千三百六十万石というものが計画されております。大体確保でき得るのではないかと私考えております。
  16. 平野三郎

    平野委員 数字の点ですが、今の御答弁ちよつとはつきりしなかつたのですけれども安本自立経済数字と食い違つていないのですか。
  17. 横川信夫

    横川政府委員 二十万石ほど違うようでありますが、大体合つております。
  18. 平野三郎

    平野委員 そうしますと、通産省お尋ねしますが、新設中のものは現在ここに書いてある四つだけですか、計画中のものはどうなんですか。
  19. 矢野宏太郎

    矢野説明員 新設中のものはこの四つだけでありまして、そのほかの計画中というものは、まだ具体的に私どもの方でよくわかりません。現在ここに計画中の四工場で、あとは大体ないのだろうと思います。
  20. 野原正勝

    野原委員 平野委員質問に対する通産省側の御答弁は、どうもあまりはつきりしていない点があります。私伺いたいと思いますのは、この表にあります工場は、先ほど説明では、昭和二十八年度ごろに完成する工場だというお話でございますが、そうですか、これをはつきり説明願います。
  21. 瀬川一郎

    瀬川説明員 第一の御質問の、現在操業中のパルプ工場と申しますと、まずわれわれの方で資料実績のわかつておりますものとしては、大体最近の一年間のものとして、二十五年度の実績をとつたわけであります。それで二十五年度の木材の総消費量は、大体千百七十万六千九百石でございますが、これの府県別交流計画は、私どもの方では、どこの県からどれだけ買つたかということはわかりかねますので、パルプ材協会の会員だけのものは、別箇にパルプ材協会でとつております関係上、その資料別表一としてお手元に差上げてあるわけであります。  それから第二番目の、目下建設計画のあるものと申しますと、別表の二に掲げてございますその四工場でございまして、それ以外のものは大体昨年の夏ごろから従来のアキュムレーター使つてつたものを、そのまま木がまにまわすとか、あるいは一例をとりますと、北越製紙の従来とめておつたものを動かすようにしたとか、従来休止しておつたものとか、あるいは従来アキュムレーター使つてつたものを木がまに転用した、そういう設備は、現在までに昨年の十一月ごろからかなりたくさん動いて参つておりまして、その増設費につきましては、その増設が完成された場合に、第二のところに書いてございます二十六年度の設備、これが木がまの増加によりまして二十六年度の設備能力になるわけでございます。それで二番目の御質問に当る、いわゆる目下建設中のものと申しますと、最初の予定のありましたのは、このほかにずいぶんたくさんありましてたとえば化繊会社だけが新しくつくるとか、いろいろな予定もありましたが、それは先ほど矢野課長から御説明申し上げましたように、木材需給見通しとか、あるいは特殊な需要地の方に集中するのを避けるために、いろいろ行政指導といたしまして、特に外貨資金の割当とか、そういう点のいろいろなお話もありまして、やめていただいたようなわけでございまして、別表にもございますように、現在のところ四工場だけが予定されております。  それで三番目の御質問の、将来の建設計画工場は目下のところありませんので、大体これだけが完成すれば、一応おちつくのではないかと考えております。
  22. 野原正勝

    野原委員 ただいまの説明でよくわかりましたが、そうすると、すでにもう二十六年度中において操業できるものだけであつてあとは今建設中の四工場は、これは先ほど二十八年度中に完成をするというお話でありましたが、この完成する分を含まないで、一箇年の木材需要量が約千三百五十万石であるというお話であります。先ほど林野庁長官からちよつとお話がありましたが、パルプ工場が非常に濫設されている状態に対しまして、林野庁木材供給の面からその点を心配されて、通産省に対して新設工場についての申入れをなさつたということでありましたが、それに対しては何もお返事もなかつたような様子であります。そうしますと、この四つ目下建設中の工場は、資材目当とかそういうものは全然考えないでつくつているというふうに思われますが、その点はどうですか。
  23. 瀬川一郎

    瀬川説明員 林野庁からパルプ工場濫設という問題に対しまして、昨年のたしか暮れだつたと思いますが、申入れをいただきまして、私どもの方といたしましても、今年のたしか一月だつたと思いますが、お返事を差上げております。それでその内容を申し上げますと、現在のパルプ設備状況を見ますと、化学パルプ機械パルプ品種別パルプ設備内容が非常にアンバランスになつておりますために、そういう設備の是正とかあるいは設備近代化というような形で動いているので、特に木材需給状況については非常に重大な関心を持つているので、林野行政にも十分協力いたしたいし、その点でまた林野庁の方からも、木材需給面についてのいろいろの御指導を仰ぎたいという趣旨のお返事を差上げてあります。  それから第二の御質問の、新設工場の点についてでありますが、先ほど紙業課長から申しましたように、一応この四工場が完了いたしますと、昭和二十八年度ごろの需要は大体千五百九十万石くらいになるものと推定いたしております。それで現在の木材需給状況から考えますと、従来のような針葉樹に依存して、約千六百万石に近いものを国内材に依存することがとうてい無理であるということは、私どもの方もよく承知いたしておりますので、特にパルプの方につきましては、従来の製造方法亜硫酸法とかわりました、新しいクラフト法という方法を用いるような設備にかえて行きたい。そういたしますと、同じ木材で約三割の使用節約ができますし、それから従来のような針葉樹だけでなしに、潤葉樹利用できるというような利点もあるので、今後の設備は、そういうふうな新しい製造方法に置きかえて行つて針葉樹だけに依存しないような方法をとることを考えることはもちろん、このほかに未利用資源わらパルプとか、あるいは竹パルプとかいうものの利用強化もやつて行きたいと考えておりまして、そういうものに対しましても、すでに見返り資金も出しておりますし、あるいは工業化資金補助金とか、そういういろいろな措置をとることによつて、未利用資源利用強化という点も考えております。  それからくず紙の回収は、現在紙の消費量の一四%程度しかいたしておりませんが、これを三〇%程度まで引上げることによつて木材節約をはかるという点だとか、あるいは現在まで捨てられておりましたノットかすスタリンかすというようなものの再利用をはかるという点で、針葉樹に依存するのは、大体二十五年度の千百万石程度で二十八年度ごろも済ませるようにいたしたいと、われわれの方で考えております。  それから先ほど申しましたこの二十八年度で完成する四工場と申しますと、四番目の興国人絹は別でございますが、それ以外の三つの工場は、クラフト法によるところの人絹パルプ、あるいはサルファイトパルプをつくるような方法工場であります。
  24. 野原正勝

    野原委員 ただいまの説明で大分はつきりして参りました。通産省の御方針もよくわかつたのでありますが、森林法改正等によりまして幼壯齢林保護が行われる。そのために、従来のような甘い考え方で、パルプ業界方たちが、赤松その他の針葉樹入手されるというようなお考えでありますと、その間に非常に食い違いができるという点を、私どもは心配しております。しかしまた一面において、現在の日本パルプ工業は、国内産業といたしまして最も大きな産業の一つでありますので、この産業が十分に発達し、日本の再建に大きな力となつていただくことを私どもは、望んでおるのであります。そういつた面におきましても、ただいまのお話にもありましたように、これはあくまでも従来の赤松依存考え方を、なるべく早く潤葉樹利用、その他のさまざまな新しい原料によるパルプ生産方面施設を切りかえるという面に、ひとつ特段の御努力を願いたいと思います。またそういうように通産省側では今後の指導方針はつきり定めてやつていただきたい。ただいまのお話では、大体千百万石程度針葉樹で二十八年度ごろ工場四つできましても心配はない、あと潤葉樹等によつてその少い分を埋めて行くようにしたいというお話であります。しかしその潤葉樹利用なんかも、すでにこれは御承知かと思いますけれども、おおむね奥地の未利用林地帯開発にまつわけであります。このためには非常な努力を要するのでありまして、奥地開発のためには、林道をつくるとか、さまざまな施設によつて、初めてそれらの眠れる資源が活用されるのでありますが、パルプ工業等は相当経済的に力のある方たちばかりやつておられる。そういう奥地開発等に対しましても、パルプのような力のある業界方たちが、ひとつ奥地開発に一役買うという態度行つてもらいたい。また今までは奥地潤葉樹利用等につきましても、どうもこれが徹底しなかつた関係で、木炭であるとか、あるいはまたまきにされているというようなものが非常に多いのであります。そういうものを努めて山元において、ある程度加工施設をするとか何らかの方法によつてできるだけ、従来山に末木枝条として投げ捨てられておつた部分であるとか、あるいは高度の利用ができずして、やむを得ずまきにしたりあるいは木炭にしたり、焼いておつたりしたような部分パルプ工場に搬入できるように、いろいろくふうしてもらいたい。そういうことによつて、私どもはこのパルプ工業があまりに濫立することは当然避けなければならないと思いますが、今のお話程度のことであるならば、これは何とかやつて行く道があるのではないかと考えますので、われわれとしましては、今後もその点を十分林業のいろいろな計画の中に織り込んで行くように考えたいと思いますけれども、それらのことに関しましては、今までどうもとかく林野庁の間に緊密な連絡がなかつたようです。安定本部との間にはいろいろとお話があり、自立経済の面ではいろいろと注文もあつて通産省側の御意向も盛られておるようでありますけれども、実際の面では、やはり林野庁と十分緊密な連絡を持つてそういう面をやつていただきたい。その点を特にこの際御注意申し上げる次第でございます。今のお話様子はよくわかりましたが、そのような方針で進むならば、現在のところ、私どもが最初考えておつたような心配はあまりないわけでございますので、一応安心をいたしました。どうぞ今まで申し上げましたような点を特に注意されまして、業界に呼びかけて実現していただきたいと思います。
  25. 平野三郎

    平野委員 ただいまの御説明を承つて、これまた資料を拝見すると、非常に納得の行かない点が多くあるのです。今のお話ですと、なるべく潤葉樹を使う、さらにわらや竹まで使うという指導方針非常にけつこうですけれども、今の島根県における山陽パルプが六十万石の所要量になつております。このうち山口県と島根県と鳥取県だけで五十万石集めることになつております。潤葉樹言つてもいろいろありますが、どういう種類を使うことになつておるのであるか。     〔委員長退席。野原委員長代理着席〕 あるいはこの六十万石の潤葉樹針葉樹の割合はどういうことになつておるか。山口、島根鳥取だけで五十万石も使う、そのうちどういう潤葉樹をあの地帯でお使いになるのか。今のお話はまことにけつこうですけれども、その計画によつては、そういうような指導方針がうまく行くかどうか、非常に疑いを持つておるのですが、どうですか。
  26. 瀬川一郎

    瀬川説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。実は工場木材の現在の出荷計画というものは、各社が一応予定しておる数量そのままを載せたものでございまして、今御質問のありましたように見ますと、実は潤葉樹の非常に少いところもございます。たとえば広島とか岡山で潤葉樹がどれだけ使えるかというと、実は潤葉地帯でない県もあつて、いろいろの御疑問もあるかと思いますが、私が千六百万石のうちで約五百万石を潤葉樹に置きかえると申しましたのは、実はこういう意味なのでございます。今度新しくできるクラフト法による人絹パルプ、あるいはサルファィト・パルプ設備と申しますと、針葉樹だけでなしに、潤葉樹も使えるという方法なのでありまして、もちろんこの工場だけが現在出しておるこの計画から見ますと、全部潤葉樹に置きかえるということは、この会社としては考えていないように考えられます。しかし森林法が施行いたされまして、たとえば木材価格が針葉樹の価格と潤葉樹の価格とそう開きがなくなりますと、消費計画もかえられるということが考えられる点が一つ、もう一つ、全般的に申しますと、従来の亜硫酸法による人絹パルプ設備とか、クラフト・パルプ設備がございますが、それらの設備も、技術的に申しますと、人絹パルプは現在の設備で澗葉樹を使い得るような結果が出ておりまして、すでに御承知のように、東北パルプでは約半分は潤葉樹使つておる。それから現在のクラフト法設備も、もちろん潤葉樹が使える。そういう方法になつておりますので、今度新しくできた工場にも、もちろん潤葉樹を極力使わせるように指導いたしますとともに、従来の設備に封じましても潤葉樹を使う比率を高めて行く。そういうものによつて五百万石というものを潤葉樹に置きかえる、そういう方法でやつております。
  27. 平野三郎

    平野委員 今の御答弁では、私のお尋ねしておることが全然わかつておらぬわけで、一例をあげれば、山陽パルプの六十万石の計画は、針葉樹潤葉樹はどういう割合になるのか。潤葉樹といつてもいろいろの樹種がありますから、何を使われるのか、それを伺つておきたい。
  28. 瀬川一郎

    瀬川説明員 ただいまの樹種別の内訳というのは、実は目下のところでは調べをいたしておりません。それからどういう樹種を使うかという点につきましても、パルプの品質の均一化という点から申しますと、ある程度量的にたくさんのものを集荷できるような樹種の潤葉樹なんかもあると思いますが、特に山陽パルプの場合、どういう樹種のものを使う、針葉樹潤葉樹をどの県からどういうふうにとるかという点については、実は資料を持つておりません。
  29. 平野三郎

    平野委員 通産省の方は、まつたくしろうとですから、おわかりにならぬのでありますが、これは林野庁の方でこの計画をごらんになれば、これはどうも妙なことだと専門家の方が言うのは当然なことであります。潤葉樹としては、当然ぶな以外には今日パルプ原料となるものは考えられませんが、今あなたのお話にあつたように、東北パルプが現在相当にぶなを使用しております。大体ぶな地帯というものは近畿地方から北部であるわけであります。潤葉樹を使うと言うけれども、この四つ工場はほとんど西日本に集中しておるわけでありますから、愛知県の工場くらいは、あるいは多少潤葉樹利用が可能でありましようけれども、その他についてはほとんど考えられない。ことに山口、島根、鳥取で五十万石も使うというようなことです。この中に潤葉樹を大いに使うとかあるいはわらや竹を使うということは、これはただ机上の空論であつて、今のあなたのお話と現実の計画とはまつたくマッチしておらぬ。だからこれは要するに、まつたく当てずつぽうの調査であるとしか思われません。これはもう一ぺん——非常に疑問に思うのですが、三番目の苫小牧の愛知県の春日井工場、これは十四の府県からそれぞれ集めるような計画になつておりますが、このうち岐阜県からはずば抜けて八万石も使うようになつておる。しかもこれは岐阜県の一部と書いてあるが、この県だけ一部と書いてあるのはどういう意味ですか。
  30. 瀬川一郎

    瀬川説明員 実はこの別表の第二の木材の集荷計画という点につきましては、御指摘のように、二十八年度にできる工場でありまして、会社自体で具体的な山の手当をまだいたしておらないようなところもありまして、どこから幾ら集めるという計画は、実は具体的には立つておらないわけであります。現在の考え方として、それを大体どういう地域からどういうふうに集める予定だというので、一応の予定を伺つてまとめたものでありまして、これは大体建設の完成が非常に先の問題になりますために、そういう点についての集荷計画というものは、かなりラフなものだと私自身考えております。
  31. 平野三郎

    平野委員 私のお尋ねしておるのは、今の三番目の苫小牧について、特に十四の県があげてあるが、岐阜県だけが岐阜の一部ということが書いてある。しかもこの一部ということになつている岐阜県がずば抜けて多く、八万石も使うことになつておるのは、これはどういうことになるのかということをお尋ねしておるのです。これはだれが見ても実に納得のできないことなんですが、その点だけの御説明をお願いしておるわけであります。
  32. 瀬川一郎

    瀬川説明員 岐阜県の一部となつております点につきましては、先ほども申し上げましたように、非常にラフなものだと思いますので、私もこれをもう一度確かめまして、あとで御返事いたしたいと思います。
  33. 平野三郎

    平野委員 そうしますと、今いただきました資料というのは、各会社の方から通産省に提出したものでありますか。なおもう一つお尋ねしたい、ことは、先ほどは、結局通産省には全然認可権がないというお話でしたけれども工場の建築については、少くとも建築の規則によつて都道府県知事の許可を得なければならないと思いますし、あるいは工場運営についての資金のあつせんとか、そういう面については、おそらく通産省があつせんするという関係があると思いますし、全然野放しで、まつたくわからないというものではないと思いますが、そういう点はどうなつておるのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  34. 瀬川一郎

    瀬川説明員 もちろん設備新設につきましては、設備制限規則がなくなりまして以来、いわゆる設備の認可というものはございませんが、現実の問題といたしまして、各都道府県で建築許可などをいたしておりますが、御承知のように、各府県では工場誘致などをやつております関係上、大体誘致される工場というものは、建築許可も非常に簡単に下されておると思います。それでわれわれの方といたしまして、たとえばこういう新しい製造方法による設備となりますと、いわゆる機械輸入についての外貨予算とか、外貨資金の割当とか、あるいは開発銀行の融資だとか、いろいろの問題もございますが、そういう点につきましての各社からの計画を一応聞きましてわれわれの方では、木材の集荷計画だとか、あるいは設備計画だとか、そういう内容は一応当つております。ただいま御質問のあつたような、いわゆるそういう点についての計画内容についてはタッチいたしておりますが、木材の集荷計画という点になりますと、現在木材の統制もはずれております関係上、特にどの県から幾ら集めるという点になりますと、二年あるいは三年先の問題でございますので、会社自体としても、非常に大ざつぱな予定しか実はわれわれの方へ出しておらないのではないかと思います。もちろん一番最初に御質問のありましたこの集荷計画というのは、各社のいわゆる山林部の方から、一応の集荷予定として私どもの方へ提出されたのをまとめたにすぎないのでございます。
  35. 平野三郎

    平野委員 これは林野庁の方にお尋ねいたしますが、これらの資材入手計画も相当ありまするけれども、これは国有林の方からも多少供給されるような計画があるのか、あるいは、今までにそういう御連絡がありましたかどうか、お伺いいたします。
  36. 横川信夫

    横川政府委員 国有林から供給するという計画は立てておりません。従来そういう連絡を受けたこともございません。
  37. 平野三郎

    平野委員 少くもこれだけの厖大なるところの計画があれば、当然これは国有林の方でも相当考えなければならぬことだというふうに常識的患われますが、ただいま林野庁長官からお答えがあつた通り、今日まで何の連絡もなければ、また将来にわたつても、国有林がこれらの資材のめんどうを見るというような計画もないというわけで、結局これは全部民有林に依存するということになろうと思うのでありまして、今の御計画は少くも当てずつぽうということになり、私は実に意外にたえないのであります。実は私は岐阜県の人間でありますけれども、現在愛知県の春日井に大きなパルプ工場建設中であるということを聞いております。私は、岐阜県の実情を最もよく知つている者として申し上げるが、少くも岐阜県からあの工場資材を供給するというようなことは、とうてう不可能である。現在岐阜県にも本州製紙の工場とか、その他パルプ工場が相当ありますが、これらは岐阜県ではほとんど集荷しておりません。みな他の府県から集めておるのであつて、既設の工場でさえも、現在岐阜県の県内では木材を集めておりません。また集めることができない状況にあるのであります。従つて、この春日井にできる工場のごときも、岐阜県からは全然あてにしていないだろうし、またあてにしても入れるということは全然考えられないのであります。しかしただいまの入手計画を見ますと、山梨県からはわずか一万石で、岐阜県からは八万石も集めるという計画になつており、しかも岐阜県の一部から集めるということになつておるのでありますが、これを見ると、ほかの計画もまつたくでたらめな当てずつぽうな計画であつて、とうていかような計画というものは考えられない。特にこれはわずか三十二万石であるけれども、島根県でできるものは六十万石、鳥取県も三十四万石、九州にできるものが四十万石というふうである。御承知通りパルプの原木というものは、東北、北海道等北の方ならば相当の資材を確保できる見通しも成り立つものであるし、またその方面にできるものならば、われわれとしても一応なるほどと思われまするけれども、全部これは九州、四国、西日本の方にできるように大体の計画がなつているので、この資材入手計画というものについては、全然これは無計画というか、まつたく当てずつぽうのもので、かような工場ができましても、おそらく資材の獲得は困難である。しかし工場ができたからといつて、しいて資材を買いあさるということになりますと、ほかの産業を全然無視して、ただパルプを生かすためにめちやくちやなことをしなければならない。厖大なああいうパルプの資本によつてそれはできるかもしれませんが、そういうことになりますと、ますます木材の価格を増嵩せしめる原因になるだけであつて、いたずらに日本林政の混乱を招き、森林法をせつかく改正しましても、とうていこの森林法が正しく運営されるということはできない。しかも森林法を守れば、せつかくこれらの工場が建築せられて、莫大な資本が投下されても、立ちぐされに終る結果になるというふうにしか、われわれは考えられないのであります。従つて先ほど林野庁長官が申されましたごとく、すでに大分前から林野庁が非常に心配されて、しばしばこれについて通産省に警告を発し、申入れをしておられることは、これも林野庁立場にしては当然のことであります。それに対して通産省は何らの回答もなければ、また協議もないということになつております。しかるに今日、その認可権がないとか何とか言われても、監督官庁立場としては、それでは私は相済まぬ、思いますが、それらについてどうお考えになるのか。なおこの資料はまつたくでたらめなものであつて、とうていこれは、われわれとしては審議するに足らぬものであります。さらにもつと正確なるところの資料を重ねて提出されることを要求いたしまして、最後に、今の私の意見についてどう思われるのであるか、こういうことでいいと思われるのであるかどうか、重ねて御質問いたしまして、一応私の質問を終ります。  さらに特に委員長にお願いしたいことは、非常な重大な問題でありますので、もつと的確な答弁をされるように要求していただきたいと思います。
  38. 横川信夫

    横川政府委員 先ほど私お答え申し上げましたうちで、一部訂正させていただきます。と申しますのは、春日井工場につきましては、ぶなを主とし利用する工場を愛知県内に設備をいたしたいという連絡は受けております。ただ国有林から供給をするというようなお約束はいたしておりません。先ほど通産省からお話もございましたように、二十八年度から活動を始める工場のようでありますので、その点は今後の問題であろうと思うのであります。私どもといたしましても、岐阜県の奥地林の開発をぜひやらなくてはならぬことだと思います。そういたしますと、ぶなのべにや用材等をとりましたあとの枝条の利用の問題が起きて参ります。全部製炭をするわけにも参りませんので、集約利用立場から、さようなものはできるだけ各工場で消化をしていただくということは、こちら側といたしましても望ましいことであります。  それからもう一点、先ほどどもの方から再三申入れをしたというお話のございました点でありますが、私の方から申入れをしたのは一度でございまして、それに対しましては通産省から返事をいただいておりますので、その点誤解のないようにお願いを申し上げます。
  39. 矢野宏太郎

    矢野説明員 ただいま御指摘いただきました御意見はまことにごもつともでございまして、われわれといたしましても、森林法の施行に伴いまして、今後とも林野庁の方と十分連絡をとりまして、新増設パルプ工場に対して、資材需給がなるべくうまく参りますように、ひとつ努力したいと存じております。  それから提出いたしました先ほど資料でございますが、この木材の集荷計画につきましては、会社自体といたしましても二、三年先の問題でございまして、十分まだ計画が立つていないだろうと察せられますので、われわれといたしましても十分検討の上、わかり次第もう少しはつきりした資料を提出したいと考えます。
  40. 野原正勝

    野原委員長代理 午前はこの程度にとどめまして、午後一時から再会いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————  休憩後は開会に至らなかつた