○
野原委員 先ほどの御
説明に引続きまして御
説明申し上げます。
森林の
土地の
所有者であ
つても、その
土地について
地上権者があり、その
地上権者が
立木竹を所有し、育成している場合は、その
地上権者が
森林所有者であり、
土地の
所有権者は
森林所有者ではないのであります。また杭木
業者、パルプ
業者、素材生産
業者等のごとく、單に立木のみを所有し、その
土地についてはその立木を
伐採しかつ搬出する等の
伐採に伴う使用権しか有していない者は、もちろん
森林所有者ではないのであります。
国有林、
民有林の区分は、その
森林所有者が国であるかいなかで定めるわけでありますが、
国有林野法第三章の部分林については、部分林契約による
造林者が
森林所有者であると
考え得るので、本来、
民有林に入るべきでありますが、これは
国有林として規律して行くことが妥当であると
考えられるので、特に
国有林である旨を明らかにしたのであります。
なお公有林野、官行
造林地については、国が
地上権者であるので、国が当然
森林法でいう
森林所有者であり、従
つて国有林の
範疇に属するものであります。
民有林は、以上の
国有林以外の
森林ですから、この中にはいわゆる公有林、社寺有林、私有林のすべてが包含せられるわけであります。
第二章は営林の助長及び監督でありますが、第二章においては、
森林計画に関する
規定、
森林計画で定める
伐採に関する
規定、火入れ等
森林についての危害防止に関する
規定から成り立
つております。すなわちその目指すところは、現在の
施業案の
制度を改めて、行
政府の
責任のもとに
森林生産の保続をはかり、
森林施業の
合理化に資するように
森林施業の
基準としての
森林計画を設定
実施し、戰時
戰後を通じて急激に荒廃と減耗の一途をたどりつつある
わが国の
森林資源の保続
培養に努めて行こうとすることにあるのであります。
森林計画の設定、その内容、構成等は
法案に詳しく書いてあるので、ごらんを願いたいと思います。
なお
森林計画は、
森林生産の保続をはかることと
幼齢林保護、
伐採地跡地の早急な
造林、急傾斜地の皆伐作業を抑制することを旨とし、かつ施業の
合理化に資すべきことを目途として作成されなければならないのであります。右のようにして決定された
森林計画については、
森林の現況、経済事情等に著しい変更があつた場合等においては、
森林計画を変更することができますが、なお
森林区
実施計画に異議のある者は、その公表の日から二十日以内に異議の申立てができることとしたのであります。
森林計画で定められた事項については、一般的に
森林所有者はその
計画に従
つて施業することを旨としなければなりませんが、特に植栽に関する事項については、
森林区
実施計画で定めたところに従
つて植栽しなければならないのであ
つて、これに違反のあつた場合は、行政代執行法または臨時
造林措置法の運用によ
つて造林の実現を期し、違反者に対しては罰則の
規定はないのであります。
次に
伐採については、次のごとき取扱いとなります。すなわち
森林を制限林、普通林、特用林及び自家用林に区分するのであります。
制限林は、保安林、保安施設地区の
森林、砂防指定地区の
森林、国立
公園の特別指定地区の
森林等、その
立木竹の
伐採を制限されている
民有林とするのであります。
普通林は制限林、特用林及び自家用林以外の
民有林とするのであります。
特用林は、省令で定める樹種、たとえばはぜ、栗、うるし、あべまき等を主とする
森林で、その立木の果実の採取その他の省令で定める用途に主として供されるもの、すなわちいわゆる特産樹を主とした
森林であ
つて、
森林所有者の申請によ
つて指定したものとするのであります。
自家用林は、
森林所有者が、自家の生活の用に充てるため必要な
木材、薪炭等の
林産物採取の
目的に供すべきものを、五反歩以内で申請によ
つて指定したものとするのであります。
右の四種の
森林のうち、特用林と自家用林については、その立木の
伐採に関しての制限は加えません。普通林の立木のうち、適正伐期齢級以下の立木と制限林の立木については、都道府県知事の許可を受けなければ
伐採できないことにな
つております。この場合の都道府県知事が
伐採を許可し得る限度は、
森林区
実施計画で定める
伐採許容限度
数量の
範囲内でありますが、特に必要がある場合は二割の
範囲内で許容限度を増加することができることにな
つております。普通林の立木のうち、適正伐期齢級以上に属する立木については、
伐採の六十日前までに都道府県知事にその旨を届け出れば
伐採することができることにな
つております。この場合の適正伐期齢級は、省令において地域別及び樹種別に定められるのでありますが、おおむね
成長量最多の時期を
基準として定められるのであります。
なお非常災害に際して緊急の用に充てるための
伐採または公共の設備に対する支障木、危險木の
伐採等の例外
措置を認め、また試験研究の用に供される
森林等については、
森林計画に関する
規定、
伐採制限に関する
規定は適用しない旨を明かにしたのであります。また普通林の立木の
伐採の許可制に伴い、一部の幼壯齢林の
伐採が制限せられることとなりますが、その場合にその立木の
伐採を制限された
森林の
森林所有者に対しては、その
森林を担保として、原則として
森林組合を通じて、平均四分の低利
資金を
農林漁業資金融通法の定めるところに従
つて融通する途を開き、この
法律と同時提案中の
森林法施行法で所要の
改正をはかることとな
つております。
第三章は保安施設に関する条項であります。この章は、第一節保安林、第二節保安施設地区にわかれておりまして、第一節は
現行法第三章保安林に
相当するものでありますが、第二節は新設の
規定であります。
第一節の内容は保安林の指定または解除、保安林における制限、保安林に指定された場合の損失補償並びにこれらに関する手続を定めたもので、
現行法とほとんど同様であります。ただ指定または解除の手続に多少の補正を加えたのと、保安林指定の事由として、新たに火災の防備及び干害、雪害または霧害の防備を追加したのであります。なお現在の保安林は、
新法施行と同時に
新法によ
つて指定されたものとするのであります。
第二節保安施設地区は従来国または都道府県が行
つていたいわゆる治山工事の主体、事業の態容等について
法律上の根拠を與えたもので、おおむね次の内容を含んでいるのであります。
国または都道府県が
森林の造成事業または
森林の造成もしくは維持に必要な事業を行う場合には、保安林の指定の場合と同様の手続によ
つて、
農林大臣が
森林または原野等をその事業
実施に必要な限度で保安施設地区として指定するのであります。都道府県が保安施設事業を行う必要があるときは、保安施設地区の指定を
農林大臣に申請するのであります。保安施設地区指定の有効期間は七年とし、必要があるときは三年を限
つて延長できるのであります。なおその後十年間は国または都道府県はその保安施設事業にかかる施設の維持管理行為を行うことができるのであります。国または都道府県が保安施設事業を廃止したときは、
農林大臣は遅滞なく保安施設地区の指定を解除しなければならないものとし、また地区指定の後一年を経過しても国または都道府県がなお事業に着手していないときは、その指定は失効するのであります。保安施設地区の
土地の
所有者その他その
土地に関し権利を有する
関係人は、国または都道府県がその地区内で行う
造林、
森林土木事業その他保安施設事業を行うこと、及び期間満了後において施設の維持管理をする行為を拒んではならないものとしたのであります。国または都道府県は保安施設事業を
実施することによ
つて関係人が受けた損失を補償しなければならないのであります。国は保安施設事業によ
つて利益を受ける都道府県に、その事業費の三分の一以内を負担させることができるのであります。また都道府県の行う事業に対しては、その事業費の三分の二以内を国は補助することができるのであります。保安施設区の有効期間が満了したときに、
森林であるもので、いまだ保安林でないものは、そのときに保安林として指定されたものとみなされるのであります。従
つてそれ以後は保安林となります。
次に第四章、
土地の使用の条項であります。この章は
現行法第四章
土地の使用及び收用に
相当するものであります。この章においては、
森林から
林産物を搬出するため他人の
土地を使用することが必要な場合における、使用権の設定に関する事項を
規定しており、
現行法とほとんど同様であります。すなわち使用権設定に関する都道府県知事の認可、使用に関する協議が整わない場合の都道府県知事の裁定、使用される
土地の
所有者の、その
土地の收用の請求、使用の際の損失の補償、損失の補償に関する訴訟等を
規定し、さらに水の使用権の使用についてもこれらの
規定を準用するほか、水流における工作物の使用等に関する
規定を置いたのであります。
改正を加えた点は、
土地の使用権を設定し得る場合を明確にし、
森林から
木材、竹材もしくは薪炭を搬出し、または林道、
木材集積場その他
森林施業に必要な設備をする場合として、
林産物の
範囲を明らかにするとともに、設置しようとする設備の
範囲を拡張したことであります。
なお
土地使用に関する
規定のほかに、立入り調査の
規定を置き、
森林所有者、または権限に基いて
森林の
立木竹の使用もしくは
收益をする者が
森林施業に関する測量または実地調査のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、他人の
土地に立ち入り、または測量もしくは実地調査の支障となる
立木竹を
伐採することができることとしたのであります。
第五章は
森林審議会に関する事項でありまして、
森林に関する重要事項について、
農林大臣または都道府県知事の諮問に応ぜしめるために、農林省に中央
森林審議会を、都道府県に都道府県
森林審議会を置くこととし、
地方森林会は廃止することとしたのであります。本法によ
つて森林審議会に諮問される事項は、
森林計画の決定、保安林の指定または解除及び保安施設地区の指定に関する事項であります。
中央
森林審議会の
委員は、学識経験者十七人、農林省その他の
関係行政機関の職員十人とし、
農林大臣が内閣総理
大臣の承認を得て任命するのであります。
農林大臣は専門の事項を調査させるため必要があると認めるときは、
委員のほかに専門
委員を置くことができます。
都道府県
森林審議会の
委員は、学識経験者十人、都道府県その他の
関係行政機関の職員五人とし、都道府県知事が任命するのであります。
第六章は
森林組合及び
森林組合連合会に関する
規定でありまして、この章は、
森林組合及び連合会の組織、事業、管理、設立等に関する事項を
規定しているのであります。
組合の
目的といたしましては、
森林組合及び
森林組合連合会は、
森林所有者の
協同組織により
森林施業の
合理化と
森林生産力の増進とをはかり、あわせて
森林所有者の経済的社会的地位の向上を期することを
目的とするのであります。
次に独占禁止法との
関係でありますが、
森林組合の
組合員は、独占禁止法の適用については、法人たる
組合員であ
つて、常時使用する従業員の数が百人を越え、またはその経営する
森林の
面積が三千町歩を越えるものを除いて、同法第二十四条第一号の小規模事
業者とみなされるのであります。
森林組合は施業
組合及び生産
組合とし、事業及び
組合員に関する
規定は本文にありますので、ごらんを願います。
施設
組合は林道を開設し、拡張しまたは復旧したときは、都道府県知事の認可を受け、その事業の
実施によ
つて特に利益を受ける者にその事業に要した費用の一部を負担させることができる
規定とな
つております。右のほか、施設
組合の倉荷証券の発行、
組合施設の員外
利用等については、一般の協同
組合と同様であります。加入及び脱退は自由とし、議決権及び選挙権は一人一票とするほか、
組合員の権利義務については、一般の協同
組合と同様であります。
組合の管理に必要な事項として、定款、規約、総会、総代会、財務等に関し、一般の協同
組合の例になら
つて必要な
規定を設けまして、
組合員から信託を受けて
森林の経営を行う施設
組合について信託法の適用の特例を設けたのであります。この
組合の設立、解散、清算、登記及び監督等の
規定を設けておりますが、
組合を設けるには、施設
組合にあ
つては十人以上、生産
組合にあ
つては五人以上の
森林所有者たる個人が発起人となることを必要としております。その他、設立の手続、解散、清算及び監督については、一般の協同
組合と同様であります。
森林組合連合会の事業及び会員でありますが、
森林組合連合会は、左に掲げる事項の全部または一部を行うことができると
規定しております。一、連合会を直接または間接に構成する者のためにする
森林の経営に関する
指導。二、会員の行う事業に必要な
資金の貸付。三、会員の行う事業に必要な物資の供給。四、所属員の生産する
林産物の運搬、加工、保管または販売。五、所属員の行う林業に必要な種苗の採取または育成に関する施設。六、所属員の行う林業に必要な林道の設置その他共同
利用に関する施設。七、防火線の設置、病虫害の防除、その他所属員の
森林の保護に関する施設。八、所属員の幅利厚生に関する施設。九、林業に関する所属員の技術の向上及び
組合事業に関する所属員の知識の向上をはかるための教育並びに所属員に対する一般情報の提供に関する施設。十、所属員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結。十一、前各号に掲げる事業の外、会員の
指導及び連絡に関する施設。十二、前各号に掲げる事業に附帯する事業。以上のような事柄を行うのであります。
連合会の会員たる資格を有するものは、連合会の地区の全部または一部を地区とする
森林組合または
森林組合連合会であり、また連合会の地区の全部または一部を地区として、他の
法律に基いて設立された協同
組合であ
つて、前号に掲げるものの事業と同種の事業を行うものであります。これらのものが連合会の会員として
規定しております。
第七章は雑則の
規定でありまして、これは一括して載せておるのでありますが、共有林分割請求の制限、林業技術普及員及び林業経営
指導員の設置、この
法律又はこの
法律に基く命令の規正による
行政庁の処分に不服のある者の訴願、都道府県の費用負担、
造林、林道、試験研究に対する国庫の補助、林業経営
指導員及び林業技術普及員を設置するため都道府県の費用に対する国の補助、
森林区施業
計画又は
森林区
実施計画の作成、その他都道府県の
事務の費用に対する国庫の補助等に関する
規定を設けておるのであります。
第八章に罰則
規定を置いておりまして、
森林窃盗その他、
森林に関する罪の特別
規定と本法の
規定の違反の罰則を含んでおります。前者については、おおむね
現行法通りとして、時勢に応じて整備したのであります。
以上が
森林法の
規定しております概要であります。
次は、
森林法の施行法でありますが、
森林法の施行に伴う経過
規定及び
関係法律の
改正規定から成
つておるのでありますが、そのおもな内容は次の通りであります。
第一条は、
森林区
実施計画の期間が開始するまでは、
現行法によ
つて定められている
施業案が依然として効力を有する旨の
規定であります。
第二条は、新
森林法施行後
森林区
実施計画に基く
伐採許可の
制度が発動するまでの間
——これは昭和二十六年十二月三十一日までの予定でありますが、これまでの間においては、
森林の立木の
伐採は、経過
措置として、
伐採の届出を必要とする旨を
規定いたしました。
第三条は、
森林計画の特例として、
新法によりまして最初に定める
森林基本
計画は、明年三月三十一日までのものといたしまして、これに基いて
森林区施業
計画を定めることなく、ただちに
森林区
実施計画を定め得る旨、及びその際は
伐採に関する事項及び
伐採許容限度
数量のみを定めればよいことといたしました。かつ
森林区
実施計画は昭和二十六年十月三十一日までに決定すべきものと定めたのであります。
第四条も、
森林計画の特例についての
規定でありますが、これは昭和二十七年四月一日を始期とする
森林基本
計画及びそれに基く
森林区施業
計画の期間は、五年、四年、三年、二年、一年とできるように特例を設けたのであります。すなわち四百三の基本
計画区につきまして、おおむね五分の一ずつの地区は、それぞれ五年、四年、三年、二年、一年の期間の
森林基本
計画及び
森林区施業
計画を定めまして、爾後毎年五分の一の基本
計画区について、
森林基本
計画及び
森林施業計画が編成されるのであります。
第五条は、保安林についての制限に関する効力の存続期間の
規定であります。
第六条から第十五条までの
規定は、現在の
森林組合が新
森林法の
森林組合に移行する場合の経過の
規定でありまして、そのおもな点は次の通りであります。
すなわち現在の
森林組合は
定款変更の手続によ
つて、新しい
規定による
森林組合に移行できるものといたしました。その手続は、旧法による旧
組合の
定款変更手続と
新法による新
組合の
定款変更手続との双方の条件を備えるごとき愼重な議決
方法によるものとしたのであります。
なお、組織変更に際しての地区の変更、出資一口金額の減少等はできないことといたしまして、組織変更は、
行政庁の認可を受け、登記をすることを必要としたのであります。
以下第十一条は、組織変更に伴う
組合員または会員の脱退の
規定、第十二条は、新
組合と旧連合会との
関係、第十三条は、旧
組合と新連合会との
関係の
規定で、それぞれ組織変更に際しての
組合と
組合員、連合会と会員との
関係及び経過的に混乱することを調整するための
規定であります。
第十四条は、組織変更後の
組合員または会員の
責任についての、第十五条は、新
組合の事業を旧
組合の事業より縮小した場合についての経過
規定であります。なお旧
組合が、新
森林法施行後八箇月以内に組織変更をしなかつたとき、及び旧連合会が同じく九箇月以内に組織変更をしなかつたときは、そのときに解散したものとなるのであります。
第十六条以下第二十三条までは、
関係法律の
改正でありますが、この中で、特に第二十三条による
農林漁業資金融通法の
改正が最も重要な問題であります。これは新
森林法によ
つて幼壮齢林の
伐採が許可
制度となる結果、特に零細な
森林所有者が
森林を処分して、ある
程度まとまつた金を必要とする場合に、その
森林の換金が困難となるので、これらの人々に対して、その
森林の立木が
伐採し得るに至るまでの期間、長期低利
資金を貸し付け得るように、
農林漁業資金融通法の
改正を行うものであります。すなわち、この
改正によ
つて、
農林漁業資金融通特別会計から年平均四分、貸付期間二十五年以内の長期低利
資金が、いわゆる
伐採調整
資金として今後は融通せられることとなるのであります。なおその貸付の直接の対象としては、
森林組合を原則とし、
森林所有者には、
森林組合から転貸する
方法によるものとし、その貸付金の限度は、
利用伐期齢級以上適正伐期齢級以下の
森林の立木の評価額とし、かつ、その毎年の一
森林所有者に対する貸付金額は、三十万円を限度とする
方針であります。なおこの
資金の償還は、定期一時償還の
方法を採用したのであります。
第二十四条は、罰則の適用及び旧法の
規定またはこれに基く命令の
規定によ
つてした処分、議決、申請その他の行為についての当然の経過
規定をあげておるのであります。
以上をもちまして、
森林法案と
施行法案のあらましを御
説明申し上げた次第であります。