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1951-03-30 第10回国会 衆議院 農林委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月三十日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 松浦 東介君 理事 吉川 久衛君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    小淵 光平君       川西  清君    河野 謙三君       田中 啓一君    原田 雪松君       平野 三郎君    金子與重郎君       八百板 正君    木村  榮君       横田甚太郎君    松本六太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         通商産業事務官         (通商化学局化         学肥料部長)  柿手 操六君         議     員 渕  通義君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      清井  正君  委員外出席者         農林事務官   大口 駿一君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君 三月二十九日  委員金子與重郎辞任につき、その補欠として  小林運美君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員小林運美辞任につき、その補欠として金  子與重郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員中垣國男君及び勝間田清一辞任につき、  その補欠として田中啓一君及び八百板正君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十九日  農産物検査法案河野謙三君外二十名提出、衆  法第三六号) 同月二十八日  北落合地区民有未墾地開拓に関する請願(佐  々木秀世紹介)(第一五七三号)  槻木町外五箇町村排水改良工事促進等に関す  る請願庄司一郎紹介)(第一五七四号)  畜犬競技法制定に関する請願原田雪松君紹  介)(第一六一四号)  外地引揚獣医師免許に関する請願成田知巳君  紹介)(第一六一五号)  小清水村地内国有林野開放に関する請願(伊藤  郷一君外一名紹介)(第一六三三号)  地力増進法制定に関する請願足鹿覺君外十一  名紹介)(第一六四八号)  主食配給事務費国庫負担請願岡村利右衞門  君紹介)(第一六四九号)  国有林野再編成に関する請願田島ひで君紹  介)(第一六六〇号)  森林協同組合法制定に関する請願床次徳二君  紹介)(第一六六一号)  黄海村地内の国有林払下げに関する請願(淺利  三朗紹介)(第一六六二号)  大津保村地内の国有林払下げに関する請願(淺  利三朗紹介)(第一六六三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農産物検査法案河野謙三君外二十名提出、衆  法第三六号)     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  この際河野君より、肥料問題について緊急質問が要求されておりますので、十分間の範囲においてこれをお許しいたします。河野委員
  3. 河野謙三

    河野(謙)委員 一昨日肥料の小委員会におきまして、通商産業省当局日水事件につきお尋ねしたのでありますけれども、今日重ねて大臣からこの件に関する明確なる御答弁をいただきたいと思います。  まず伺いたいのは、大臣は過日日水社長を突如としてお呼びになつて日水事件についての円満なる解決を要求されたということでありますが、大臣意図する円満なる解決とはどういうことであるか。また日水社長お呼びになるまでの経過につきまして、簡單に御説明をいただきたいと思います。
  4. 横尾龍

    横尾国務大臣 時日は記憶はありませんが、田中伊三次代議士が私の部屋に来られまして、自分がある資本家から頼まれて、この会社の株を買うのだという話で、しかし多数の株が他の資本家移動するときには、往々にして現経営者との間に円満なる解決と申しますか、交渉と申しますか、そういうものが進まないから、ひとつ大臣から社長にそのことを話してもらえないかという話であつたのであります。私は実は私設会社のことに対して、監督官庁であるものが、あまり深くくちばしを入れるということは、すべからず。こういう感覚を持つている者でありますけれどもちようど私らが元やつておりました同業者の中で非常なる争いを生じて——はつきり申しますと、川南造船所であります。それで注文された船主も困られ、従業員も非常に困られているのがあるのであります。かかるようなことになりますと、最も必要なる肥料生産支障を来すので、私は社長にお目にかかつて、ただ円満なる交渉をしていただきたい、円満なる解決をしていただいて、肥料増産支障のないようにしてもらうことを希望いたしまして、日曜日だつたと思いますが、来ていただいてお話したことはあるのであります。ちようど私は荘野社長とはその前いろいろなことで二、三回お目にかかつたことがあるのであります。初め私は日本水素工業というのはよく知らなかつたのでありますが、社長荘野氏で肥料生産に従事しておられると聞いたので、荘野氏ならひとつお目にかかつてお話ようというので、日曜日に来ていただいたのであります。ことに官邸に呼ぶということは、いかにも監督官庁の権威をもつて左右するように思われるのも、はなはだ遺憾でありますので、私宅においで願つたところ、たしか志摩専務つたと思いますが、その方と二人おいでになつたのであります。志摩専務には、私そのときに初めてお目にかかつたのであります。来ていただきたいと申し上げましたのは、たしか志摩専務事務所を通じて申し上げたと思います。どこにいたかわからなかつたので、そうしたと思います。おいでになつて、お二人だものですから、私はただ、会社経営人事に関して何らくちばしをさしはさむものではないということを前提といたしまして、先刻申し上げますように、株の移動によつて、あるいは契約の事務のかわることもありますし、または、そうでなくても、その間に好ましからざる意見の衝突があるということになりますと、増産に影響いたしますので、ぜひその点を御了承願つて、円満な解決方を希望いたしますからということを申し上げたことはあるのであります。
  5. 河野謙三

    河野(謙)委員 田中某氏から話があつて、それによつて初めて事の内容を知り、それによつて社長を呼んだ。ところが、田中それがしは、明らかに荘野社長を呼んで、二回ないし三回にわたつて辞職を勧告しておる。この意図は、明らかに日水を乘つ取ろうという意図なのだ。この田中それがしが大臣に、日水事件について口をきけと言うことは、そこにあなたが誤解を受ける動機があるわけです。大臣は決して田中氏と意思は通じていない。田中氏の言うよう社長をやめさせるという意図でないことは、はつきりしておりますけれども誤解がここに起つていることは事実だ。またこれは誤解が起るわけなのです。そこで私は、この機会大臣立場上はつきりしていただかなければいかぬことは、円満なる解決と言うが、社長をかえることが円満なる解決とお考えになつているかどうか。御承知よう肥料工業、特に硫安工業というものは高度の化学工業で、あなたはことに技術のことは詳しいのでありますが、單なる一部の資本によつて経営改善はできない。資本と同時に高度の技術を持たなければ改善はできない。技術バツクのない資本というものは、化学工業特に硫安工業においては意味がない。そういうふうなことを御承知の上なら、一部の資本移動によつて技術バツクも何もないところのものがこれにとつてかわるということは、明らかに肥料工業の破壊であり、減産という結果になるのは当然なのだ。それについての私の意見はさておきまして、大臣の円満なる解決とは一体どういうことか。労働組合がいかに反対しようが、職員組合がいかに反対しようが、單なる一部の資本によつて経営を自由にするということが、一体肥料工業のためにいいかどうか。またあなたは全般工業を指導しておられるのですが、そういうことは、一体監督の地位にあられる通産大臣として認められるかどうか。円満なる解決とは、あなたはいかなることを意味しておられるか。これをひとつ伺いたい。時間がありませんから、簡單でよろしゆうございますから、ポイントだけ伺います。
  6. 横尾龍

    横尾国務大臣 私が社長を呼んで申し上げたことが誤解を招いているといううわさも聞きましたので、これははなはだ遺憾であるというので、その後荘野社長に会う機会がありましたときに、実は私はこういうことで申し上げたので、それが誤解を招いておるようでありますが、そういう意味でなかつたことを御承知おき願つて、私の申し上げたことを理解して、誤解のないようにしていただきたい、こういうことを申し上げたのであります。今の一般お話でありますが、荘野社長をかえることが円満なる解決というようなことまでは、私は考えていないのでありす。ただわれわれは、生産人といたしますと、最もその業に堪能した人がおやりになることが、最も増産に資するもとではないかということは、私見として考えておるのであります。但し、そういう私見があるからといつて、こうしなければならぬということを会社に押しつけることは、私は考えなかつた。ただお話しておきたいことは、今あなたの御意見通りに、生産生産に練達の士の経営することが一番いいということは、私が技術者であるから申し上げるのでないけれども、そういうふうに感ずるものであります。労働組合が騒ごうが、そんなことはどうでもかまわぬというようなことは、現在においては考えていないのであります。やはり従業員一同、それによつて不安がなく働いてくれることを私は希望しております。これが私の円満なる解決をしていただきたい、そういうトラブルが起らぬようにしていただきたいということをお話した趣旨であります。さように御承知願います。
  7. 河野謙三

    河野(謙)委員 時間がありませんから、最後に具体的に一つ伺います。日水事件がいよいよ最後段階に入つていることは、大臣承知通りであります。今の日野原氏が覆面で、これを中心とする株主臨時総会を要求していることは、事実なのです。一方において、従業員労働組合かこれに反対していることも、大臣、御承知通りだ。これがいよいよ臨時総会を開いて、もしこの両者が正面衝突して、会社経営が混乱し、工場がとまれば、明らかに減産だ。こういうことがもう目前に迫つている。ここで大臣——決して干渉ではない。この段階まで来たならば、生産行政を指導せられる大臣としては、当然、大臣意思が発表されていいはずなのだ。こういう段階に入つたときに、大臣は一体いかなるお考えであられるか。またもし、もう少し模様をみようというなら、いよいよ最後工場がとまり、従業員がストライキをやつたというようなときに、一体大臣はいかなる処置をとられるか。仮定の問題にお答えができないというようなことを言われるかもしれませんが、それはそういうことではいけません。時間がありませんから、はつきり私はここで申し上げます。一体こういう段階に入つたとき、どういう処置をとられるか、これを伺いたい。
  8. 横尾龍

    横尾国務大臣 今最後段階に入つているというお話は、二、三日前から承つておるのであります。至つてつたことだと考えております。しかし法的になかなかその権限がなので、あなた方の今のお話を尊重いたしまして、そうしてあるいは次第によつては、両者に再度、円満なる解決を私の方からお話したいとも考えておるのでありますが、まだその段階まで行つていいかということは、判断がつきかねておるのであります。さよう承知を願います。
  9. 河野謙三

    河野(謙)委員 そうしますと、大臣、非常に慎重にやつておられますが、法的問題は別としても、常識的に、また道徳的にお考えになつて、この御意見を発表されることは少しもさしつかえないと思う。角度をかえて申し上げますが、今の一部の資本家が不当に、会社に重役の更迭を要求している。しかしこれらの株主も、今の会社従業員全般が、労働組合全般がこれを受入れないという態勢は、明らかに知つているはずだ。しかるにこれを強引にやつている。この態度をあなたは是認されるか、これだけ伺つておきます。
  10. 横尾龍

    横尾国務大臣 それは御説の通り、そう無視するものではないことは私も考えます。この点につきましては、個人的でもいいから何かの方法を講じて——講じましたところで、ここまで行つたものが円満に解決できるかどうかということは、これは疑問でありますけれども、法的にできない者が言い得る範囲において考慮——したいという考えもないではないのであります。さように御了承を願います。     —————————————
  11. 千賀康治

    千賀委員長 これより、昨日、本委員会に付託になりました河野謙三君外十九名提出農産物検査法案を議題といたし、審議を進めます。まず本案趣旨について提出者説明を求めます。河野謙三君。     —————————————
  12. 河野謙三

    河野(謙)委員 ただいま上程になりました農産物検査法案提案理由を御説明申し上げます。  農産物の公正かつ円滑な取引と、その品質改善とを助長するためには、農産物について公定の規格に基く検査実施がぜひとも必要でありますが、現在の主要農産物についての検査は、食糧管理の強化以来管理制度の一環として実施されて来ておりますことは御承知通りであります。すなわち食糧管理法に基きまして、政府の買入れいたしまする主要食糧につきまして、その買入れの際に、政府の手による検査行つているのであります。しかるに最近の食糧事情の安定によりまして、昨年以来いも類及び雑穀が次々と買入れ品目から除外せられて参りましたので、これらの農産物についての検査実施につきまして、法的根拠を明確にいたすとともに、検査制度の確立をはかることが必要となつて参つたのであります。これが農産物検査法案を提案いたします理由でございます。  次に、同法案骨子につきまして御説明申上げます。まづ第一点といたしましては、農産物検査の性格を、従来の買入れのための検査から商品としての検査に改めることでありまして、このためには規格につきましては銘柄の設定、等級の増加など市場性を十分に取入れたものとして行くほか、規格設定にあたつて利害関係者並びに学識経験者等意見を徴して決定することとし、一方検査の結果に対して異議の申立の道を開くなど、生産者並び消費者利益擁護をはかつて参りたいと考えている次第であります。  第二点といたしましては、同法に基きまして国営検査実施いたします品目でございますが、これにつきましては、従来食糧管理法に基きまして政府買入れ実施いたしておりました主要食糧でありますところの米麦雑穀及びいも類について検査実施して参る考えであります。この中米麦につきましては、その農産物中に占めまする重要性と、流通の普遍性とにかんがみまして、売買の際には必ず検査を受けなければならないことといたしておりますが、それ以外の品目につきましては、受検の希望に応じて検査実施して参ることといたしておる次第でございます。ただ米麦以外の品目につきましても、特に強制検査実施を希望する都道府県があります場合は、条例を制定いたしまして、必ず国の検査を受けなければならない旨を命ずることができることといたしております。  次に第三点といたしましては、本法施行のための予算関係についてでありますが、本法による検査には、政府が買上げをいたしまする品目を除きまして一定の手数料を徴收いたすこととしております。なお検査に要しまする経費は、本年度はとりあえず食糧管理特別会計既定予算範囲内で実施が可能でありますので、特に本法施行によりまして新たな予算的措置を講ずることは考えておりません。  農産物検査法案提案理由及び法案骨子の概略は、ただいま申し述べた通りでございますが、何とぞ慎重御審議の上御可決賜わりますよう切に希望いたす次第であります。
  13. 千賀康治

    千賀委員長 この際吉川君より、本案に関して政府の所見をただしておきたいという申出がありますのでこれを許します。吉川久衛君。
  14. 吉川久衛

    吉川委員 この法律ができることに関しまして、二、三伺つておきたいと思います。ただいまの政府の御方針では、だんだんと主食までも統制をはずして行こうというような傾向にあるのでありますが、統制が行われているときにおいては、この検收等内容を持つ検査制度の必要は、十分認められるのでありますが、その統制がはずされて行くとすれば、食糧確保検收意味を持つ検査は、国営でおやりにならなくとも、これは農協等技術員を置きまして、これが自主的な検査を行うことが最も民主的でいいと思うのでありますが、こういう点について国がやらなければならないということについて、こういうものができたときに、政府はどういうようなお考えであるか、伺つておきたいと思います。
  15. 島村軍次

    島村政府委員 米麦等主要食糧に関しまする統制いかんにかかわらず、既往の経過から考えますと、御承知通りに、検査制度は、漸次県営から国営に移管して参つたのであります。米麦のごとく規格が統一されて、そうして国民ひとしく公平なる配給を受けなければならぬという品目については、県営ばらばらにやる、あるいはまた協同組合等で自主的にやるという、ばらばら検査では、不適当であるという従来の経験から、さようの結論がつけられると思うのであります。国で一括国営検査に持つて行くことが、従来の経験からかんがみて、また後段に申し上げましたよう理由によつて、適当と考えておる次第であります。
  16. 吉川久衛

    吉川委員 政務次官お答えでもありますが、日本の国は、北は北海道から南は鹿兒島のはてまで、非常に気候、風土が異なつております。従つて生産された同じ米でありましても、品質やその他いろいろ格づけについて、この基準が非常にむずかしいと思うのです。そういう点について、この法律ができまして国営検査がなされるという場合には、十分この点に御留意を願わなければならないと思います。  それから提案理由の御説明の中にありました、この法律実施に伴うところの経費の問題でございますが、その予算は、食管法特別会計の方から考えられるようでございます。しかしこの食管法によつてなされることになりますと、これは何か食糧確保といいますか、食端を受入れるという立場に立つところの食管特別会計をもつてなされるということでありましては、これはむしろ食糧増産といいますか、農民の増産意欲に影響するものがあると考えられるのでございますが、こういう点については、むしろ農政局の所管とすべきものであつて従つてその経費は、食管特別会計からではなしに、一般予算に計上さるべきものであると思いますが、こういう問題については、これは暫定の措置としてのものであるとは思いますが、将来こういう点について、政府はどういうふうにお考えでございますか。
  17. 河野謙三

    河野(謙)委員 ただいま吉川さんのお尋ねでありますが、将来は当然、あなたのお考えと同じことになるのでありますが、御承知ように、すでに本国会において御審議を願いましたように、本年度におきましては、現在の食糧制度のもとにおきまして、食管特別会計の中に予算として組んでありますので、本年度はとりあえず食管特別会計経費によつてまかなえる、こういうことであります。
  18. 吉川久衛

    吉川委員 この法律ができるといたしますと、輸入された農産物についての検査方法はどういうことになりますか。それからもう一つ、食糧事務所職員増減関係はどういうことになるか。そしてその身分保障等についても配慮がなされることと思いますが、その点について簡單に御答弁を願いたい。
  19. 清井正

    清井説明員 お答え申し上げます。ただいまの御質問の第一点の輸入食糧の点でございますが、輸入食糧検査につきましては、ただいまにおきましても、検査実施いたしておるわけであります。外国食糧が内地の輸入港に入りまして、それをいわゆる包装いたしまして倉庫に入れる際に、食糧事務所の出先の検査員がそこから標本を取出しまして、そこで検査をいたし、合格合格を検定するのであります。この制度は、この法律実施せられました場合におきましても、同様に実行いたして行くわけでございまして、この法律成否いかんによりまして、輸入食糧検査についての方法がかわるということはございません。  それから検査員事務能力等についての御質問でございますが、ただいま御承知通り食糧事務所の各県の本所のもとに支所出張所がございまして、支所は全国で約五百十四、出張所は約四千百ばかりございます。検査員の総数は約二万五千七百人ばかりおります。末端に参りますと、大きい町村では一町村に大体二人くらいおるところもございますけれども、少い町村は一人で二箇町村つておるというところもあるよう状況でございます。なお検査員等も、検査のほかにただいまは調査の事務実施いたしておりまして、なかなか現在の検査員陳容をもつてしては、実際問題として困難が行くとは考えておりますけれども、現実問題といたしまして、人数をふやすということはなかなか困難な状況でありますので、私ども事務的にはもつと十分な人員が必要かと思つておりますけれども、現下の態勢におきましては、ごく少数の人員をもつてしまして、できるだけ能率的に働かせまして、所期の目的を達したいと考えておる次第でございます。  なお身分保障につきましては、検査員一般職員と同様でございますから、国家公務員法に基きまする一般政府職員と同様の身分保障を持つておる次第でございます。
  20. 吉川久衛

    吉川委員 ただいま清井部長のお言葉によりますと、外国からの輸入食糧検査農林省でやつておいでだと思うのです。サンプルにあわせて検査実施しているというのでありますが、最近これは新聞紙上に報ずるところでもあり、また私どもも、東京都内消費者人たちからも聞いたことではありますが、そういう検査実施しておるにもかかわらず、いろいろ石炭がらや石が非常にたくさん入つている。清井部長消費者生活をしておいでになるお一人ですから、あるいはおわかりではないかと思うのでございますが、一体それで検査実施しているのかいないのか。これはたいへん消費者の間で問題になつておるのでございますが、一体検査は名のみであるのか、実際どういうようにやつておるのか、農林省としてはどういう態度でそういう問題を扱つておいでになるのか、もう少しその点を伺つておきたいと思います。
  21. 清井正

    清井説明員 確かにただいまのお話のございました、先般エジプトから入りました米について問題がございました。私どもさつそくその必要なものにつきましては再搗精をいたすということにいたしまして、消費者に御迷惑がかからないよう実施をいたしたのでございます。外国食糧は御承知通り船積みして参りますので、その検査方法につきましては、国内でも同様でございますけれども、ある一定の分量のうち一部分をとつて、それで検査をいたし、標準品検査ということになりまするので、これをもつていたしましても、全部を検査いたさない関係上、若干船底の方に悪いのがあつたりするというようなことがありまして、若干標準品より不十分な点もあつたことは実際問題としてあるかもしれません。しかし現在全部を検査するわけにも参りませんので、サンプル検査をやつて行かなければならないことは、事実上やむを得ないことでありまして、そういう検査方法は今後持続せざるを得ないのでありますけれども、実際問題といたしましては、配給不適品を発見いたしました場合には、これを再搗精するとか、これにいろいろの方法を講じまして、消費者に御迷惑のかからないように努めて行きたいと思つております。
  22. 千賀康治

    千賀委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。木村榮君。
  23. 木村榮

    木村(榮)委員 今の吉川委員の御質問と大体関連する点をお尋ねしたいのです。それは第四条に規定されております問題ですが、この場合は、輸入食糧が販売業者の手に渡つて、いよいよ販売を開始することになつた場合、販売業者の手に渡つてから検査をするのかどうか、この点を承つておきたい。
  24. 大口駿一

    ○大口説明員 販売業者も米麦の所有者であります限りは、本法によりまして受検の義務が発生いたします場合には、やはり検査を受ける義務があるわけでありますが、しかしながらこの法律には、検査をいたしました場合には一定の有効期間内は再検査を受ける必要がないということにいたしておりますので、配給段階に入りまして、消費者の手元に渡るまでの間は、通常の場合は有効期間内で処理は可能でありますので、販売業者が受検の義務を課せられる場合は比較的まれであると存じております。
  25. 木村榮

    木村(榮)委員 そういたしますと、政府の所有のものを販売業者に売るときには、これは原則として輸入のときに政府検査をやつておる建前になつておるから、その場合は検査しない。こういうことになるのですが、しかしそこで問題になるのは、販売業者が所有者である場合には、最終段階の売渡しは、また消費者にやるわけですから、その間において、この法律でもう一遍検査をすることができるのじやないか。有効期間というのはどういうよう法的根拠によつてやられるのですか。
  26. 清井正

    清井説明員 ただいまの御質問でございますが、有効期間につきましては、この法律の第十七条に規定がございまして、検査を受けた米麦につきましては、一定の期間を検査の際にきめまして、その期間内だけ有効であるというふうにいたすわけであります。たとえば、これは一年間有効であるとか、あるいは三箇月なり半年有効であるとかいうようなことを、検査する場合に有効期間というものをつけます。その規定に基きまして、それがその有効期間内において行われます場合においては、検査は有効でございますが、十七条におきまして定められた有効期間が過ぎましたならば、検査は失効する。こういう規定に相なつておるわけであります。
  27. 木村榮

    木村(榮)委員 そういたしますと、大体日本生産者から買い上げます場合は、この検査法律によつて相当嚴重な検査をいたしますから、包装その他の関係で、保存方法規格等によつてきまつておると思うのですが、輸入食糧の場合は、大部分が大体ばらで来るのでしよう。それを販売業者に売り渡す場合には、ばらで売り渡すのですか、一定の包装をして渡すのですか。かりに包装をしたとすれば、その間どういうよう検査標準、検査方法をやつて渡されるのか、その点を明確にしておいていただかぬと、もしばらのままで販売業者に渡すということになれば、その間において販売業者が、そういうことはないと思うのですけれども、あるいはほかのものをまぜるとかいうことによつて一定規格の標準がなかなかむずかしいのじやないか。だからそういうことをおやりになるのかどうか、この点を承つておきたい。
  28. 清井正

    清井説明員 ただいまの輸入食糧についての御質問でございますが、輸入食糧は、ただいまのお話通りばらで参ることは事実であります。ばらで参りましたものをこの第四条の規定しております通り輸入したばらで参りましたものを、業者が自分で包装いたしまして、それを政府が買い入れることになるのであります。その際に政府検査をいたしますことは、先ほど御説明申し上げた通りであります。これは検査でございますけれども、そのまま政府が買い入れるわけでございますから、ただいまわれわれが検査をいたしておりまするいわゆる受入れ検査的性格が非常に強い検査に相なるわけでございます。
  29. 木村榮

    木村(榮)委員 その場合、さつきも御質問があつたのですが、たとえば石炭がらが入つているとか、あるいは金屑が入つているとかいうようなことで、最終の消費者がこれを一定の値段で買わない。従つて相当のストツクが出て来るといつた場合の損害もあると思いますが、そういつた場合の損害は、政府が負うのか、引受けた販売業者がそれを負担するのか、その点はどうなのです。
  30. 清井正

    清井説明員 ただいまの御質問でございますが、これは御承知通り国内食糧についても全然同様でございまするが、検査をいたします場合におきましても、若干の不純物の混入しておることは認めておるわけであります。そこで輸入食糧を買います場合におきましても、ある一定分量の不純物の混入は認めておるわけでございますが、その程度を越えております場合におきましては、それによつて一応の賠償をとるということを考えなければならぬのであります。これが輸入食糧でありました場合には、業者の方からとるなり、あるいは相手の国との関係ということになりますが、これを買いました後に配給の過程において起りました場合においては、当初検査をした場合、あるいはこれを卸売業者に売りました場合に、一応この程度の不純物は認めるというような契約条件で契約いたしまして、それを越した部分につきましては、そのときそれの状況によりまして、あるいは政府がこれを背負うなり、あるいは民間業者が負担するなり、そのときの契約条項によつてきめて参りたい、こういうふうに存じておる次第であります。
  31. 木村榮

    木村(榮)委員 そこで、今度この検査がかりに実施されますと、輸入食糧であるものと国内生産食糧であるものと、大体最終段階の販売をやる場合には、明確な区別ができるようになりますか。
  32. 清井正

    清井説明員 ただいまの御質問の点でございますが、これは私ども配給を実際いたします場合に、政府が卸売業者に米として販売いたす場合においては、一定の数量の内地米と一定の数量の外国米とを売却いたしますけれども、これはそのときの在庫の数量に応じまして、内地米と外国米とをまぜて一定の割合でもつてこれを卸売業者に販売するということになりますので、この割合等は、そのときの食糧の在庫状況によつてつておりまして、一定の割合というものはございませんが、これを卸売業者に売りましてからは、外国米と内地米を一時的には同じよう  に扱われることになります。
  33. 木村榮

    木村(榮)委員 大体最終の販売の場合は、外国食糧が來雑物があつて悪いという点をごまかすために、日本の内地生産の米とか何とかが、天候その他の関係で、脱穀調製がうまく行かなか  つたから悪いというような印象を与えるような販売方法をやり、またそういうような宣伝をしているわけです。そこで、たとえば去年の米の検査の状態を見ますと、これは鳥取県の例ですが、昭和二十四年度においては、鳥取県下の全生産量の一等米が二・七%、二等米が二六%、三等米が六四%、四等米が六%となつておる。二十五年度を見ますと、一等米は〇・〇〇三五%、これはほとんどない、三等米は二六%であつたのが四・六%、三等米が六四%であつたものが四六%、そしてその逆に四等米が、昭和二十四年度わずか六%であつたのが、昭和二十五年度では四九%、ほとんど四等米に転落させておるわけです。これはもつとも天候その他の関係で、二十四年度と同じということはしいて申し上げませんが、しかしあまりにもひどいことが出て来ておるわけです。こういつた統計が示しますように、最近食糧のあまり芳ばしくないものがたくさん出来るというので、いかにも内地産のものが悪いような印象を与えるようなことをやつているのじやないかという疑いも見える。だからこの検査法によつては、今後はこれを外国食糧であるということと、これは国内生産のものであるという点が明確に表示されるようなことができませんか、その点を承つておきたい。
  34. 清井正

    清井説明員 ただいま鳥取県の例をとつてお話がございましたが、その点につきましては、私どもも二十五年産の規格を定める場合においては、二十四年産とほとんどかわらない規格をきめまして、実際の検査の等級別割合がそう苛酷にならないという心がけをいたしておるのであります。実際問題として、天候その他作柄との関係でそういつた事柄があつたかと思いますが、私どもこの規格をきめる際においては、そういう急激な変化を与えないように考慮いたしているわけであります。  それから外国精米と内地米とを区別するよう方法はないかというようお話でありますが、たまたま末端まで参りました場合においては、非常にむずかしいことでありますけれども消費者に、なるべく外国精米がわかるよう方法によつてつて参りたいというふうに考えております。
  35. 木村榮

    木村(榮)委員 これは提案者の河野先生にお伺いいたしますが、私は非常に好意的な御質問をするわけでありますから、その点を御了承の上御答弁願います。と言いますのは、さつき鳥取県の例を申し上げましたが、そういう場合に、第十九条の規定によつて検査に対する異議があつた場合には、十日以内に省令の定める手続によつて申し出られると書いてあるわけでありますが、この省令を定めますのは役所の役人の仕事だと思います。そういつた場合に、今の鳥取県の例で申し上げましたような、実際農民が異議の申立てのできることをねらつてこの一箇条をお設けになつたかどうか。そうだといたしますならばけつこうなことなんですが、その点をひとつつておきたいと思います。従つて省令は、そういう場合に、個々の検査を受ける農民が異議の申立てができるよう方法をとることになるような御配慮であるかないか。この点を承つておきたいと思います。
  36. 河野謙三

    河野(謙)委員 今、木村さんからお尋ねのように、まつたく十分に異議の申立ての余裕を持たして、そして農民の利便をはかるという趣旨以外に何物もありません。
  37. 八百板正

    ○八百板委員 ちよつと関連して……。ただいまの質問に関連して聞いておきたいのです。基準の立て方について先ほど吉川委員質問お答えがありましたが、少し不十分のよう考えられますので、もう少しこの点を明らかにしていただきたいと思います。  それから十四条に、検査実施について受験者の希望の場所においてということがあります。結局この場合においては、農業倉庫、工場など検査を行う場所をあらかじめ公示してというふうにありますが、そういうことになるだろうと思うのであります。私ども今まで承知いたしておりますところによると、たとえば、この検査を受ける場所によつて検査の基準が違うようなことが、われわれは現にあつたことを聞いているのであります。つまり、たとえば農業協同組合の行う検査の場合と、商人の行う検査の場合と、同じ品物であつてもその検査のつけ方が違うというようなことの起つている事実を私は聞いているのであります。そういうことをないようにするためには、この検査に対する異議の方法について考慮いたしますと同時に、單純にその異議を食糧事務所長の独断において決定するというような程度の方法では不十分ではないかと思うのでありまして、その検査実施を、さらに監査する何らかの機関が用意されてしかるべきではないかと思うのでありますが、こういう点についてどういう考慮を払つておりましたか、立案者の御意見を承りたいと思います。
  38. 河野謙三

    河野(謙)委員 検査の場所は、あらかじめ公示した農業倉庫その他その範囲で農業者の選択する場所ということにしております。今の異議の申立てでありますが、努めて異議の申立てを受入れるという考えは、根本的に間違いないのですが、ただあまりに無制限にあつても困りますから、そこで特に十日以内ということをうたつているのであります。しかし趣旨はどこまでも、できるだけ異議の申立てを自由に申し出られるようにという趣旨から出ていることに間違いありません。それから検査規格が場所によつて違うというようなことですが、これはちよつと問題が違つて来ますが、そういうことを考えまして、国営検査が全国的に比較的公平に、他の県営検査その他の検査よりも行くのではないかということで、国営検査のねらいどころは、どこまでも場所により、また所をかえて検査がまちまちになることを恐れて、国営検査を是なりとしてわれわれはやつたのであります。もし答弁が不十分でありましたら、また政府の方から補足してもらいます。
  39. 千賀康治

    千賀委員長 この際お諮りいたします。委員外の発言が要求されておりますので、質疑応答合せて十分以内において、これをお許しすることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めましてお許しいたします。渕通義君。
  41. 渕通義

    ○渕通義君 私は農産物検査法と日本農業の品種改良とのコンビネーシヨンの関係について、御質問をいたしたいと存じます。従いまして質問範囲がかなり広範囲にわたるので、答弁される当局者に、おそらくその問題につきまして適当な人はないかと存じますが、日本食糧増産というものが至上問題である以上、この農産物検査食糧増産関係は重大であると考えますので、一言質問をいたします。食糧増産の根本条件は、何と申しましても品種の改良でありますが、品種改良と申しましても、増産さるべき品種は、そこに必然的に生まれるものは劣等品種であるということが、当然科学的に立証されるのであります。そこで劣等品種をば、日本食糧増産という過程において生産しなければならないという、農民には課せられた一つの使命があります。これをつくります場合、できました品物に対し等級がいろいろつけられます。その等級の査定に対しまして、先ほど木村委員からも質問がありましたように、基準が非常にあいまいになりはしないか。そこで農産物検査の基準をば、どのところにはつきり置い行くかという点をひとつ承りたい。言いかえますならば、食糧を最も多く生産する立場における品種は劣悪品種である。従つて厳密な意味における検査実施いたしますならば、おそらく普通の優良品種に比べますと、どうしても一、二等差ができるということは必然的であります。そういう場合の品等のつけ方、基準のあり方について、御説明願いたいと思います。  次に全国的な基準のとり方が、東北と九州とにおきましては、おのおのの経済立地条件におきまして相当差があります。そういつた場合に、どこに基準をとつて検査をされているのか。この問題は、絶えず食糧特別会計の場合のときから質問をいたしておりましたが、依然としてなどは解けない状態にありますので、方々において問題を惹起いたしております。新たに農産物検査法を議員提出の名において出されましたので、その点をはつきり、全国を経済ブロック別にわけまして、その地帯における品種、品等をきめて行くというような方向に持つて行くのが、食糧増産上最も必要ではないかと考えますが、その点に対する政府当局のお考えを伺います。  もう一点は、この法案実施に当ります予算の面でございます。食糧特別会計予算範囲内において実施することになつておりますが、まじめな食糧検査実施した場合に、政府食糧特別会計予算内において、はたしてできるであろうかどうかということは、非常に疑問なきにしもあらずと思います。その予算範囲は幾らに見積つておるかという、三点につきまして、御質問をいたしたいと存じます。
  42. 河野謙三

    河野(謙)委員 今の渕さんの劣等品種でなければ増産にならないということは、少しく私は渕さんの独断であると思います。さような傾向のあることは私も認めますけれども増産即劣等品種ということには必ずしもならないと私は思います。その点は、少しく意見の食い違いがあります。しかしかりにそうであつたとしても、劣等品種のみに品種を持つて行くのだということにはならないと私は思います。  それから銘柄規格等の問題ですが、御心配の点につきましては、特に提案理由にも申し上げましたように、学識経験者並びに関係者の意見を徴してこれを決定することにしておりますから、その御心配はないと思います。第三点につきましては、ちよつと聞き漏らしたのですが、政府の方から御答弁いたします。
  43. 清井正

    清井説明員 予算の問題についての御質問でありますが、かりにこの法案実施されるにあたりましても、手数料としては、そう多くを実際問題としては期待できないのであります。ところが実際問題として、現在二万五千人ばかりの検査員を擁し、三十億以上の事務費、人件費がかかつております。とうていこれは支出、收入見合うということはできない状況でありますので、理想的な検査をすれば、相当多く費用がかかるということが、現実としては言えると事務的には考えております。
  44. 渕通義

    ○渕通義君 三十億くらいの予算が用意してあるように思いますが、理想的にやるのには、おそらく今の検査員では、仕事も非常に多く、また月給も安いというようなことから、ほんとうの検査はできない。そのためにいろいろな苦情が出る。そこでどうせ議員提出でやるのなら、徹底した検査実施するという気持において、この食糧特別会計範囲内において行つてお茶を濁すよう検査法なら、なきにしくはないというように、これははなはだ暴論になるかもしれませんが、私は考えておりますが、その問題に対して、政府はどういうよう予算の獲得に対し進まれる予定であるか、その点を一言承つて質問を打切ります。
  45. 河野謙三

    河野(謙)委員 御指摘の点はごもつともでありますが、現在の段階では、二万五千の人が、御承知よう検査のみに没頭することができないで、買入れその他の手続もあわせてやつております。しかし来年度以降におきましては、時期が来れば、おそらく検査は完全に独立して、検査員検査のみの事務を担当することになると思いますので、検査の真の目的を達することができると思いますし、同時にその段階に至りまして、もし御指摘のよう予算の面で不十分の点があれば、その時期にひとつまたあらためて御審議いただいてもおそくはないではないかと思います。
  46. 松浦東介

    ○松浦委員 大体質疑も尽きたようでございますから、質疑打切りの動議を提出いたします。
  47. 千賀康治

    千賀委員長 松浦委員の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。これにて質疑は終了いたしました。これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。金子與重郎君。
  49. 金子與重郎

    ○金子委員 この法律案は、提出されて質問の時間もきわめて短かいのでありますが、その内容を検討してみますと、不備不満な点が見えるのでありますけれども、今この法律案を本国会で通した方が、全体的に見て不利であるか有利であるかということを勘案したときに、この際通した方が有利だという見解から、私は本法律案は一応この原案で賛成いたしますが、これについでは強く条件を付しますから、この点を当局の方々はよく守られて、将来この検査法が全面的に実施されるようなあかつきには、農業生産のためにマイナスにならないようにしていただきたいということをお願いするものであります。  それでまず第一の問題といたしましては、この法の内容については、本来ならばこの際修正したい点がありますが、全部の農産物がこの法律によつて検査されるというが、現段階においては、米麦は收買検査段階にありますから、将来来るべき機会に修正を願いたいと思うのであります。その数点をあげてみますと、たとえば第三条の三項を見ましても、検査を受けないものの売買あるいは運搬の例外規定が置いてありますが、もう少し例外規定を多くする必要がある。と申しますのは、協同組合その他の組織体におけるところの、たとえば協同組合なら協同組合におけるところの加工のための運搬、仮取引というような場合に、一々検査を受けるのはまぎらわしい点が起きて来ますので、こういう点もはつきりしておく必要がある。また第六条に「農林大臣は、農産物の種類及び銘柄ごとに、その量目、包装及び品位についての規格を定める。」とあるのでありますが、これはややもすると一方的な收買検査に近い検査が出て参りますので、この決定にあたりましては、あくまで農村の代表者あるいはその他の権威のある審議会の議を経ましてのちに、これを決定するということでなければならないと思います。それから第二項に「農林大臣は、前項の規格設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、その施行期日を定め、その期日の三十日前までにこれを公示しなければならない。」とありますが、この検査は、包装の規格内容物の規格の二つがその際には当然出て来るのでありますが、この規格のうち包装の規格は、三十日くらい前にきめたのではとうていやり得ない。従つて包装の規格を定める期日は考えなければならぬが、さればといつてその規格をあまりにも早くきめようといたしましても、内容物の規格は、その年の豊凶によつて検査の程度に手心を加えなければならぬので、サンプルが届かないうちに規格をきめなければならぬということも不可能でありますので、現物の規格を発表する期日と包装の規格の期日は期限を別にしなければ、実際上やり得ないわけであります。こういう矛盾ははつきりわかつております。  それからなおあげてみますと、第十六条に「何人も、農産物の包装又は票せんに、前項の表示にまぎらわしい表示を附してはならない。」とあるのでありますが、今後この農産物の地域的な特定の市場における真価をより高める意味においては、当然その産地の特別なマークをつけることが、かえつて有利な時代が来るのであります。そのときに、これがまぎらわしいということで一々やかましく言われると、その特産地の産物の販路の上に逆な結果が来るということでありますので、この点を考慮する必要がある。これらの点が今さしあたつて思いあたつた内容、条文の不備な点でありますが、これを十分考えていただきたい。これが第一点であります。第二点は、検査の性格というものが、かつては收買検査——政府が供出を受けるための検査であつたのでありますが、今度は農産物検査いわゆる農産物の商品検査でありまするために、これは今までのような收買という一方的な形でなく、農産物全般にわたる一つの検査の機構でありまするがゆえに、なるべく近き将来において、この検査機関というものは独立機関にいたしまして、先ほど各委員からもその意見があつたのでありますが、独立機関として機構を立てなければいけない。食管特別会計の中に入れておいたのでは、この法律検査を全うすることは不可能だ、従つて近き将来にそういうことを考えなければいけない。これが第二点であります。  第三点は、日本農業の実態というものが、御承知ように、小反別な過小農業経営では、これを経営的に見た場合に、企業採算としてとうてい成り立たない、ただ日本農業というものは自然発生的に生まれ、運命的な支配によつて百姓を営んでおるというのが実態であるとすれば、農業政策全般に対して保護政策をとるということは、政治的に問題でありますけれども、同時にこの検査ということは單なる自主検査というようなことでなく、この農業の検査を通して政策の面、あるいは先ほどある委員からも言われました品種の選択、それから販売品の規格統一による価格の向上という、広い農政的な補助政策の一環としての国家検査でなければならない。もしもほかの工業品のような、ただ自主的に商品の価値を高めるための検査であるならば、何も国営検査をしなくても、農民自体が金を出し合つて検査をすればいいのであります。これを国営検査にするということは、自由販売になりましたあかつきには、まつた日本農業の保護政策の一環となるのだ。そうしてそれがためには、国家は相当程度の予算的な裏づけをするべきだ。これが第三点であります。以上三つの点を強く条件をつけまして、賛成する次第であります。
  50. 千賀康治

    千賀委員長 次は木村榮君に許します。
  51. 木村榮

    木村(榮)委員 今金子委員が言われました意見は大体賛成でございますので、重複を避けますが、あくまでこの検査というものは、日本農業の保護育成の立場からやつて行くことを主眼としてやつていただきたいことが第一点であります。従つてそういう関係検査の適正をはかつて、広く農民の中にも検査の結果を報告する。お互いに日本農業を育成し、品種の改善、適地適作、そういうことをやるためには、どうしてもこの自主検査でやつて行く。農民の方からも、これに協力してこの成果を高めるという観点から、検査官の検査結果を公表するといつたふうな、農民代表の審議会というようなものをつくることを御考慮願いたい。従つてこういう観点に立ちますと、日本の過小経営である農民の生産物を検査いたしまする場合において、この法案では手数料をとるようになつておりますが、将来金をとつたといたしましても、何らかほかの方法で助成金なりあるいは保護のためのものを出すようにして、実質的には検査手数料をとらないようにすることを御考慮願いたい。従つて国の予算を十分組んで、そうした観点に立つてつていただきたいということ。もう一つは、第十九条にございます「直接の利害関係のない者」ということですが、このことに関連いたしまして、農業協同組合は利害関係のあるものとして、農林省関係の方でも大体御解釈されるようでございますから、農業協同組合は利害関係のあるものとして、異議の申立て等ができるようなことだと解釈さしていただきたい。それから最後にもう一点、従つてこういう観点から日本の農業生産を発展させ、日本農産物の品種の改良等をやりますから、特に外国食糧輸入食糧検査は嚴重にやつて、そうして不良品や何かは入れない、こういう点を徹底的にやつてもらわなければ困る。その点を強調いたしまして賛成いたしたい、かよう考えます。
  52. 千賀康治

    千賀委員長 これより農産物検査法案について採決を行います。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  53. 千賀康治

    千賀委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決すべきものと決しました。なおお諮りいたします。本案に関する衆議院規則第八十六条による報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  次会は公報をもつて申し上げることとし、今日はこれにて散会いたします。     午後零時七分散会