○
木村(榮)
委員 私は
日本共産党を
代表いたしまして、ただいま
議題とな
つております
農業委員会法並びにその
修正案、その他関係
法案全部に対して
反対の
意見を申し述べたいと思います。
ただいま
自由党の
委員から、巧みな表現によ
つて、
日本の
地主勢力をいかに温存しようかとこれ努められた御演説があ
つたわけでありますが、大体戦争後上から与えられましたところのいわゆる
農地改革なるものは、これは、ただ單に、昭和初年ぐらいから
日本の当時の
農業会などがや
つております
自作農主義、いわゆる
農民の歴史的な
土地に対する所有欲というか、欲望というものを幾分
満足させて、その中で
農民をごまかそうという巧みな仕組みにな
つていることは、もはや
農民がこの
農地改革の中で実際に経験したことである。そういう状態でございますから、実際
農地改革とは名前ばかりで、大きな山林、原野の所有者というものは依然としてそのまま温存され、しかもそういう者の支配を通して、
農村における半封建的な基盤はやはりどんどんと強化され、決して衰えてはいない。この例はたくさんございますが、單にこれは農山村だけの問題ではなく、都会の付近などにおいても、そういう傾向は依然として相当強い。これは全国的な例をあげればたくさんございますが、そういう点は長くなるからやめましても、とにかくこういうような状態は以前と
一つもかわ
つていない。しかも戦後における各
政府の
農村に対する政策は、御承知のように、
農地改革に名をかりて
農村を欺瞞し続けながら、非常にうまくごまかしをや
つております。ついでだから私は申し上げますが、この点は
社会党の
八百板氏もさつき相当強調されましたけれ
ども、昭和二十四年の
農業センサスを見ますと——これは農林省が極秘の判を押して、部外に出さないと言
つておられるようでありますが——こういうものを見ると、
小作地は依然として全国に五十七万町歩ある。これは全耕地の一六%に当り、
農家戸数のパーセンテージをと
つてみますと、全
農家の大体四三%だ。これは一反にせよ、五畝にせよ、三畝にせよ、とにかく、何がしかの
小作地を持
つているのが全
農家の四三%ということにな
つている。これは反別にいたしますと、全耕地の一六%で、きわめて零細なようでございますが、
農村の封建的な要素がまだ多分にある中においては、こういうものは非常に大きな比重とな
つて農村を圧迫していることは、どうしても否定できない。こういうものをひた隠しに隠して、
自分たちに
都合のよい
統計を出して、ごまかして、
農村協調主義で、ともかく
地主も
小作もないから仲よくやれ、こういうことを言
つて、一方においては
土地取上げをどんどんや
つている。かくて
農村における
土地取上げの状態は、最近特に大きくな
つている。特に山村において山を持
つている
地主は、山の支配力を通して相当大きなことをや
つている。御承知のように、現在全国の山林の保有量は、用材並びに薪炭等を合せますと約六十三億石といわれておりますが、そういうものの所有権、使用権はほとんど山
地主が独占している。こういう支配を通して、か
つての
小作階級に対する圧迫は依然として強力である。こういう中におきましても、か
つてのいわゆる
農地委員会においては、
階層別の選び方をするとか、あるいはまた中立の学識経験者として相当な人を出すというような方法をも
つて、それでも相当民主的に運営をしておりましたが、今度の方法で行きますと、そういうことはほとんどなくな
つて、依然として今度は村のおえら方さんたちがうまく出て来て、強力な支配力を持つ。これは当然のことであります。そういう中において、
農村の
民主化とか、あるいは
農地改革ということを
政府は盛んに言いますが、現在の実情を見ますと、どうにもこうにもそれはや
つて行けなくなる。もはやただ
農業委員会だけの組織ではなく、現在
農村におきましては、隣保組制度も復活し、あるいは部落会長というものも生きて来る。こうい
つたものの支配は、依然として山の関係あるいは
土地の諸関係、こうしたものから来まして、その
代表者がほとんどそういう
地位を占めておる。こういうやり方、あるいは納税組合の強化、または消防に名をかりて、か
つての在郷軍人会の復活というような形で、一定の服装をつけ、一定の訓練を与えなければならない。これは今回の国会に出ました消防法の一部改正を通してもわかる。こういうものは関係はないとおつしやるが、
農業委員会法の組織というものは、ちやんと一連の関係を持
つておる。
小作も
自作もなく
なつたというようなことを巧みに言
つて、実はそうい
つた農村における支配を、あの手この手でしようというねらいが出ておる。
農業委員会も
農地委員会もだんだん数を減らす。とにかくそうして数さえ減らせばだんだん勤労
農民の
代表者が出て来る可能性が少くなる。そういうような、いろいろなあの手この手を巧みにやられて、上からぱつと押えつけてやろうというのが、この
法律案のねらいである。そこでそうい
つた中において
農村の状態は——話がだんだん
発展いたしますが、(「
発展じやない、脱線じやないか」と呼び、その他発言する者あり)私が
ほんとうのことを言うと、だんだんやきもきして、わいわい騒ぐ。こうい
つた状態の中にあ
つて、何ゆえに
農業委員会というものをこしらえるか。内容はなかなかいい。
交換分合に始ま
つて農業の
発展までやる。一体どんな
発展をさせようというのか。にわとり三羽、柿の木一本に至るまで税をかける。ただ紙に書いただけで一体どうして政策がやれるか。か
つての軍閥
政府は、なるほど無謀なことはや
つたが、正直だ
つた。野蛮ではあ
つたが、とにかく正直に率直に、やれ出せ、こう言
つてや
つて来たが、今度は言葉のあやでは巧みな表現をして、いかにも民主的な擬装しておるが、なかなか手がこん
でお
つて、うまく、いわば最初はえさを与えておいて、今度はうんとしぼり上げて行く、こういう手を巧みに用いておる。これが
日本の現
政府のや
つておることである。こうい
つたやり方だから、とてもたちが悪い。
委員会をこしらえ、巧みに民主的な擬装をいたしておりますが、しかしそれが
ほんとうに民主的なものならば、この
法案の中でも
委員会は何をしておるか。ただ助言をするとか進言をするとかで、
意見を言
つてもそれは通らない、こういう組織である。いかにも
委員会はいいものであるが、なぜ
意見が通らないかというと、それは人民の
代表ではないから、
意見を通しても通さなくてもどつちでもいい。
政府に迎合するものであるから、
意見が一致する、それをねら
つております。これは人民の利益の
代表者ではない。こういうことになれば、相当重大な問題である。これはちやんと予定をして、大体天くだり的に
委員会をつく
つて、
農業経営の
合理化だとか盛んに言
つております。最近私たちがもら
つた例の農林中央金庫から出ました
農家の資金の状態、こうい
つたものを検討してみましても、今の
日本の
農村の零細な自己資金では、
農業経営の
合理化あるいは生産の増強、
発展、こうい
つたふうなことはほとんど不可能である。しかもこの
農業委員会法案なんかにおいても、
農業委員会にそうい
つた意味の積極的な指導あるいはそうい
つたことをやり得る可能性もなければ、何にもない。ただ單に形式的に、
農民のあなた方が選んだ
委員会でやるのだという幻想を与えて、ごまかそうという巧みな方法でこしらえられておる。しかもこの点はさつき申し上げたように、耕作
農民の
代表というものを度外視して、一方的な
地主勢力によ
つてこの
委員会を運営し得るように、うまくこしらえられておる。これはアメリカ式とでも申せましよう。(「ソ連式だ」と呼ぶ者あり)何とでも言えましよう。やはりこの封建的な
農村支配というやり方は、植民地政策の上においての最も
基礎であり、この封建的な
農村の形態というものは、植民地的な搾取をや
つて行きますのに最も
都合がいい。そこでこの
方向へこの
方向へと、あらゆる機会を通して逆転させようということをねら
つておる。ここにこの問題が端的に出ておる。だからこうい
つた状態を考えますと、今
日本のわれわれがやらなければならないのは、
ほんとうにこの
農業生産をどんなふうに増強させ、
発展させるか、また生産の
発展を通して各
農家の経営を安定、
向上させ、
農民の生活をいかに
向上させるかということである。これは自然な、長期間的なことではだめであ
つて、急速にやらなければならぬ。そしてそれはどうしても、国家が計画的な
予算その他の措置によ
つて強力にやらなければできない。しかしながらそういう
方向へやるためには、今のような
農民から巻き上げる——たとえばアメリカの
日本問題を論じたものを見ますと、アメリカのお役所でさえも、アメリカの学説でさえも、
日本の
農村においては、
農民から十のものを取上げて、六のものしか返していないと言
つておる。こういう政策をやめて、国家が
ほんとうに今の
農村の
発展という
立場から、いわゆる平和的な産業、こうい
つたものをからみ合せて、大きく
発展計画というものを立てない限りにおいては、どうしても急速な
日本の
農村というものの
民主化並びに安定化というものはないわけで、ただこうや
つていても、米が足らぬ。だから外国から米を入れなければならぬということで、たくさんの補給金を出して米を入れて、アメリカの
農業恐慌を
日本に輸入して、そういう点から圧迫する。そういう圧迫を合法化してごまかそうとしておるところに、この
法律案のねらいがある。そうい
つた巧みなごまかしを今までもや
つてお
つたが、ますますごまかそうというのがこの
法案のねらいである。そのために農林省の役人
どもは、わざわざ間違
つた統計まで出しておる。農林省の
統計で、二十四年以降のものにはそういうでたらめが一貫して流れており、そのときどきによ
つて違
つておる。中には極祕という判を押して、部外に出してはいかぬというふうにしてまで出しておる。こういうことをや
つてごまかす。そうしてこれは民主的な
法律案であると宣伝する。人をだますのもはなはだしい。こういうことをやめて、
ほんとうに民主的な
農業委員会をこしらえることを私たちは主張いたします。がやがや騒ぐからやめますが、以上申し述べた観点から、何としてもこのようなごまかし
法案に対しては
反対である。
以上申し述べまして、大体
反対の
意見を終ります。