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1951-03-08 第10回国会 衆議院 農林委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月八日(木曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 中垣 國男君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君       小淵 光平君    川西  清君       河野 謙三君    原田 雪松君       平野 三郎君    八木 一郎君       金子與重郎君    八百板 正君       池田 峯雄君    横田甚太郎君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (農政局長)  藤田  巖君         農林事務官         (農業改良局         長)      小倉 武一君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      上松 憲一君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 三月七日  二十五年度産菜種油売渡しに関する請願足鹿  覺君紹介)(第一〇八六号)  東河村字岡田地内にため池築設の請願佐々木  盛雄君紹介)(第一〇八七号)  天台宗中本山に国有林等譲与請願佐々木盛  雄君紹介)(第一〇八八号)  子吉村地内の国有林払下げに関する請願(村上  清治君紹介)(第一〇八九号)  農村電柱敷地補償に関する請願田中啓一君  紹介)(第一〇九九号)  外地引揚獣医師免許に関する請願平川篤雄君  紹介)(第一一五八号)  農作物防疫体制拡充強化に関する請願千賀  康治紹介)(第一一五九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  農林漁業長期融資法案に関する陳情書外三件  (第三三二号)  同  (第三三三号)  同  (第三三四号)  同  (第三三五号)  同  (第三三六号)  養と(兎)振興策に関する陳情書  (第三三七号)  単作地帯農業振興に関する陳情書  (第三三九号)  農業委員会法案反対陳情書外一件  (第  三四一号)  農業委員会法案に関する陳情書外二件  (第三五一号)  農業協同組合育成強化に関する陳情書  (第三六二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農業委員会法案内閣提出第四三号)  農業委員会法施行に伴う関係法令整理に関  する法律案内閣提出第五四号)     ―――――――――――――
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  農業委員会法案及び農業委員会法施行に伴う関係法令整理に関する法律案一括議題といたし、質疑を行います。質疑の通告がありますのでこれを許します。八百板委員
  3. 八百板正

    八百板委員 農業委員会法案についてお尋ねいたしたいと思うのであります。この法律は、従来三つ機関によつて行われておりましたそれぞれの事業内容を統合いたしまして、一本にしようというものでありますが、目指すところは、一本にすることによつて第一条の目的生産力発展をねらつているようでありますが、内容をしさいに検討いたして参りますならば、第一条の目的が、かえつて統合することによつて弱まつて行くという見解を持たざるを得ないのであります。この点について、まずどのような見解の上に立案せられましたかお伺いいたしておきたいのであります。
  4. 藤田巖

    藤田政府委員 従来の三委員会とも、これまでの経過では、各委員会目的に向つて御活躍されまして、それぞれの成果をあげておられるわけでありますが、農地改革仕事にいたしましても、また農業調整仕事にいたしましても、さらにまた改良事業仕事にいたしましても、現在では、委員会ができました当時の事情とはかわりました新しい情勢ができて来ていると考えております。従つてこの新しい情勢に即応いたしまして、村ではやはり一本の委員会において総合的に施策を進める、それぞればらばらな仕事ではなくて、総合的に一体化した施策によつて自主的見地に立つてこれをやつて行くということが、現状においてはきわめて必要であるという認識のもとに三委員会を統合いたして、新しい目的を持つた農業委員会として発足いたしたいということであります。
  5. 八百板正

    八百板委員 総合いたしますところの前提なつた諸事情につきましては、また詳しくお尋ねいたさなければならないのでありますが、この農業委員会法案は、まず予算の上において、十分なる仕事ができないようにこれを狭めているし、さらにまた書記人員等につきましても、三委員会一緒にしてわずか一、二人でやれというように押しつけようとしているのであります。こういうことになりますと、結果において目的は狭められ、ねらつた方向とは逆に、あともどりせざるを得ないのでありますが、この委員会附則の終りの方を見て参りますと、とりあえず農業調整委員会書記が暫定的な諸任務を遂行することが記載されているのであります。一体農業委員会法案は、これを運用するにあたつて三つのものを統合したと申しましても、書記の点においては農調委書記を主として引継いで行くような行き方をとつておるのでありますが、そういう点から行きますと、三つを統合するというのは、農調委の方に統合するという考え方でやつて行こうとされるのか、さらにまた、この所管局農地局がやるのか、農政局がやるのかというような点について、局長見解を承つておきたいと思うのであります。
  6. 藤田巖

    藤田政府委員 農業委員会法附則におきまして、農地関係仕事を除いた他の仕事につきましては、これは農業調整委員会として経過的に処置するというふうに書いてございますが、別途同時に御審議をいただいております農業委員会法施行に伴う関係法令整理に関する法律案附則におきまして、農地委員会はやはり農業委員会法の規定による委員会が成立をいたします日までの間は、従来通りつております。農地関係仕事は取扱つて行くということにいたしているわけでありますから、決してその間の取扱いについて、不公平なことは考えていないつもりでございます。なお今後の農業委員会所管の問題でございますが、これは農地局関係仕事あるいは改良局関係仕事もございますが、やはり総合的な委員会の主管ということに相なりますれば、農政局がお世話をすることがいいのではないかと思つておりますが、農地局及び農業改良局ともいろいろ御連絡をいたしまして、実質的には三局一緒になりましてこの仕事をして行かなければならぬと思つております。
  7. 八百板正

    八百板委員 新しい委員会ができるまではそういうふうな取扱いをされるのでありましようけれども、結果においては、この政府提案の説明などを見ますと、農業調整委員会書記が中心となつて農業委員会の新しい仕事をやつて行くという考え方言葉の上に現われているのでありますが、そういうことになりますと、農地改革の未完了の分に対する仕事が非常にやりにくい結果になるだろうと思うのであります。今日残つておりますのは農地改革の比較的困難な部分が多いのでありまして、農地改革関係仕事というものは、ほかの農地関係法令に相当通暁した者でなかつたならばこれを取扱つて行けないということは、すでに政府の御存じの事柄であろうと思うのであります。この法案農地改革が相当程度完了したという前提の上に立つておるのでありますが、農地改革部分的にはある程度終了したと見ることができるでありましよう。たとえば予定いたしましたところの面積買収等につきましては、相当予定に近い数字を上げていることはお示しになられている表によつても見ることができるのでありますが、さてしさいにこれを見て参りますならば、最もかんじんな未開墾地開放という点については、一向に進んでいないという結果を、農地改革の結果において私どもは見るのであります。もちろん所有権の移動が、地主から小作人所有にかわつて自作農になるということも、農業生産力の上に大きなプラスになるとは間接的にあり得るのであります。しかしただ単に所有権がかわつたということだけでは、いろいろそれに基く弊害は除かれますけれども、やはり一反歩は一反歩の田で、新しい面からのプラスは起つて来ないのでありまして、どうしても農地改革を推進するためには、未墾地を徹底的に開放いたしまして、あるいは山林を畑とし、これによつて新たなる生産力の基盤をつくつて行くというところに、農地改革の大きな重点があつたはずであります。しかるにこの未墾地開放の面についてその実績を見てみますならば、まことに微々たる結果がこの報告の上に現われているのでありますが、この点について、このような重要な農地改革未墾地開放を残しておきながら、なおかつ農地改革が相当完了したという見解政府は持つておられるのであるかどうか、この点をお伺いしておきたいのであります。
  8. 藤田巖

    藤田政府委員 農地改革を始めます当初に計画をいたしました範囲におきましては、大部分がすでにその効果を収めております。わずかしか残つておらないということは言えようかと思つております。さらに進んでいわゆる第三次農地改革までこれを徹底すべきである、こういうふうな御意見ではございますが、まだはつきりその点についての方針が、政府といたしましてもきまつておらないわけであります。われわれといたしましては、今後さような政策が決定されるときに従つて、この問題を考えて行こうと思つております。
  9. 八百板正

    八百板委員 御答弁は少し見当をはずれているのであります。私のお尋ねいたしておりますのは、いわゆる今次の農地改革を第三次の農地改革発展させて、さらに未墾地あるいは山林開放をも含めた広汎なる農地改革をさらにやれというようなことではないのでありまして、すでに決定せられました農地改革方針に基いて、しかもすでに政府の手によつて買收せられましたものは、たくさんの数字によつて現われております。お示し農業委員会法提案に伴う参考資料農林省提出にかかる第一〇ページの表を見ますると、農地買収面積については、それぞれ売渡し並びに登記について、ある程度進行を見ているのでありますが、さらにまた牧野買収面積等についても、若干の進行成果收めているのであります。未墾地買収面積になりますと、買収面積に対して売渡し面積がきわめて少いのであります。すでに売渡し登記を完了いたしましたものは、政府買収面積のわずかに一四%にすぎないというような実情であるのでありまして、このきわめて重要なる未墾地開放が、このようにしてわずかに一割ちよつと上まわるという程度成果をもつてして、これで農地改革が完了したというような前提を土台にして物事を考えられることに、間違いがあるのではないか、こういうふうな点を私はお尋ねいたしたのでありまして、第三次農地改革の問題ではなくして、すでにして決定せられ、進行中の農地改革が、このような停頓をいたしているということについて、お尋ねを申し上げたのであります。
  10. 藤田巖

    藤田政府委員 農地改革が、具体的にどの程度まで進んでおるかは、各村村の具体的な事情によつて非常に違うであろうと思います。御指摘通り、すでに計画せられておるもので、まだたくさんの農地関係仕事の残つている所もあろうと思います。しかしながらある村においては、もはや農地関係仕事については、大部分が済んでいるというふうに、各村々の事情が違うと思います。従つて今度の農業委員会の本来の仕事といたしましては、もちろん御指摘農地関係仕事は、その基本的な仕事であるということを私ども考えております。しかしながらその事業量ということにつきましては、全体的に見まして、やはり当初よりも相当減つているということが言えるであろうと思う。従つてわれわれといたしましては、その意味で、全部の市町村について、これを一律に農地委員会として単独に置くということには、実情として、あるいはまた財政事情として許されない点もあろうと考えております。従つて一つ委員会で今後これを運営し、協力経費を節減して、その目的重点とするところに向つて仕事をやらせることが必要であろうと思います。
  11. 八百板正

    八百板委員 未墾地の問題につきましては、本日は農地関係の方が見えておりませんので、お見えになつた際に、もう少し明らかにして行きたいと思うのでありますが、ただ一点お考えを承つておきたいと思います。すでに買収いたしましたところの未墾地が、いろいろの事情のために、売渡しが困難な問題にぶつかつて、そこにいろいろと農村において問題をかもしておることは御承知の事柄だと思います。従つて、そういうふうな面からこの問題を見て参りまするならば、せつかく農地委員会において買収いたしました土地が、その後いろいろと横やりが入つて参りまして、たとえば山持ち勢力等運動等が影響いたしまして、せつかく買収したものが売渡しができないというような状態で、立ちすくみの状態にあるものが非常に多いのであります。従つてこういう状態のもとにおいて、農地委員会を廃止して農業委員会をつくつて、しかもその農業委員会がわずかの書記をもつて仕事ができないような予算でもつてこれを狭めておいて、しかも農地改革実情に暗いそういう人々に担当させろというふうになつて行きますならば、その結果において、今日まで進行して参りました農地改革打切つて、それを逆転させるものであるというような判断をせられる結果になることは、火を見るよりも明らかでありまして、そういう意味合いにおいて、この機会農業委員会法によつて三つを統合いたしまして、既存の農地改革の、たとえばすでに進行いたして参りました未墾地買収計画等を逆もどりさせたり、狭めたり、あるいはこのことのためにうやむやにするようなことについては、既定方針のごとく、法律に基いて積極的に農地委員会運営を通じて、これを完成するために努力するのであるという強い意思を持つておられるのであるかどうか、この点だけをこの機会に伺つておきたいと思います。
  12. 藤田巖

    藤田政府委員 三委員会が統合されます結果、基本的な仕事が遅れるようなことがあつては相ならぬのでありまして、われわれといたしましても、さような農地関係仕事がたくさんあるので、農業委員会は、農地関係仕事は、従来よりも積極的にやられるというふうなやり方で運営をして行くべきだと考えております。
  13. 八百板正

    八百板委員 なおこの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、農地関係担当者に、さらに詳細なるお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、同僚足鹿委員からもお尋ねすることになつております。従つてその席上においてお尋ねを申し上げることにいたしまして、一応質問を留保して打切つておきます。
  14. 千賀康治

    千賀委員長 次は池田峯雄君。
  15. 池田峯雄

    池田(峯)委員 この法律の第一条に「この法律は、農業生産力発展及び農業経営合理化を図り、農民地位向上に寄与するため、」とうたつてあるのでありますが、一体何が日本農業生産力発展を阻害し、農業経営合理化を阻害し、農民地位向上を阻害している有力な原因であるかということについて、政府の方では、どういうふうに考えておられるか、その点を第一にお伺いしたいと思います。
  16. 藤田巖

    藤田政府委員 非常に御質問が広汎で漠としておりまして、実はお答えに相ならないかと思いますが、農業生産力発展農業経営合理化農民地位向上ということは、農業政策の基本的な方針でございます。そうしてこの方針を達成するために、農林省は、各種の具体的な問題について、その線に沿つて施策を進めておるわけであります。そうしてまたさような国の政策なり、また地方行政における政策を円滑に推進し、また農家意思というものがその政策の上に反映するような組織として、農業委員会というものを考えておるわけであります。従つて農業委員会というのは、そういうふうなものの一つ協力態勢と申しますか、それの一つ組織法であります。従つてこれによつてすべてのものが解決するわけではございません。そこでそれは個々の具体的な政策、たとえば米価の問題でございますとか、あるいは国の財政支出をさらに大きくする問題、そのほかいろいろな問題、個々農業政策について、これを実現して行くということになろうかと思います。
  17. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういたしますと、政府といたしましては、現在としては何が日本農業生産力発展を阻んでおるかということについて、的確な考えは持つていないものと私ども了知してよろしいものなんでしようか。
  18. 藤田巖

    藤田政府委員 先ほどから申しましたように、農業生産力を阻んでいる問題はたくさんあろうと思います。現在農林省でやつております各個の施策についての御批判はあろうと思いますが、それについては個々の問題について、農林省としては全力を尽して、その施策を進めているわけであります。従つてその個々の問題について、具体的に私どもとしては解決をして行きたいと思います。
  19. 池田峯雄

    池田(峯)委員 それでは少し問題をしぼりまして質問したいと思います。日本では画期的だと言われる農地改革をやりました。そして地主搾取がなくなつたのでありますから、一反歩から半分以上の小作料をとつていた地主搾取がなくなつたのでありますから、日本農民生活はどういう計算をしても、相当向上しなければならないはずであります。相当日本農民生活向上しなければならないという結論が出るのであります。にもかかわらず、現在日本農民生活は決してよくなつておらないのであります。もしよくなつているという資料があなた方にありますならば、御提出願いたいと思いますけれども、私ども認識しておる限りにおきましては、日本農民生活は、何ら戦前の農民生活と異つておらない状態であります。こういうのは一体どこに原因があるのだろうか。農地改革をやつてもさつぱりよくならない。一体どこに原因があるのか。この点を御質問いたします。
  20. 藤田巖

    藤田政府委員 従来の地主土地小作人に与えて、自作農民を創設いたしましても、ただそれだけのことではその成果は完全でないのであります。御指摘通り、それをさらに団結いたしまして、協同組合の力によつてこれをもり立てて行く、あるいはまた農産物価格の適正を期する問題とか、そのほか従来の地主によつてつておられました共済関係仕事でありますとか、あるいは金融関係仕事でありますとか、またいろいろな問題について、国がさらに積極的な援助をする、かような一連の方策があつて初めて農地改革成果が得られる、こういうことになるので、従つてそれぞれの一連の具体的な施策について、農林省といたしましても、できる限りの努力をいたしておるわけであります。
  21. 池田峯雄

    池田(峯)委員 どこの農村へ行きましても、昔の地主さんは相当大きな家にも住んでおりますし、金も相当持つておりまして、これを中央の産業にも投資するというようなことをやつております。これだけの資本蓄積がかつて地主さんにはできたのであります。でありますから遊んでいてそれだけの蓄積をしたのでありますから、これは搾取です。人間人間搾取した、小作人搾取したわけです。そういうものがなくなつたのだから、自作農なつ農民諸君がその分配を受けて、相当裕福にならなければならない勘定なんです。これは数学的に見て当然そうなんです。ところがならない。一体これはどういうことなのか、こういうことを聞いておるのでありまして、あなたの御答弁ではまだ納得行かないから、もう一度お答えを願います。
  22. 藤田巖

    藤田政府委員 それは先ほども申しておりますように、ただ単に所有関係移つただけでは、農家経営の安定というふうなものは、それで話は済んだということには相ならぬので、やはり零細な自作農家耕作農民というものをもり立てて、いろいろの施策によつて農業生産力を増大し、しかもまたそれが同時に農家経営の安定に資するように、改善に資するように施策を凝して行く、そういう一連施策をやることによつて達成せられる。従つてそれについて各種努力をいたしておるということを申し上げておるのであります。
  23. 池田峯雄

    池田(峯)委員 どうも顧みて他を言うようなお言葉でありまして、問題の本質にはなるべく触れないように御答弁されておるようであります。あとでまたこの点はつつ込んで御質問したいと思うのでありますが、私の意見としては、要するにこれは昔よりも税金も重くなつておりますし、昔の米の値段に比較いたしましても、今の米の値段が、諸物価と関連して、工業生産物が非常に高くなつている。いわゆる鋏状価格差というものが相当開いて来ておる。つまり農民に対する地主以外からの搾取が非常に多くなつているということが、最も根本的な原因ではなかろうかというふうに考えるのでありますが、この点につきましての討論は、これはやりたくありませんからこれだけにいたします。  次に、市町村農業委員会所掌事務に、「農地の開発、改良、保全その他土地生産条件整備及び土地利用高度化に関する事項」あるいは「農業技術改良その他農業生産に関する事項」というようなことがあるのでありますが、この土地改良をやることはきわめて必要なことであります。たとえば排水の整備によりまして乾田化を達成し、二毛作を促進する。こういうことはきわめて必要なことでありまして、こういう計画市町村が立てました場合に、政府がある種の金融の道を講ずるというようなことも、これもきわめて必要なことであり、適切なことであろうと思うのでありますが、こういう場合にただ単に農地乾田化しただけでは、目的は十分に達成されないのでありまして、従来の耕作器具機械改善整備農耕様式改革、こういうことが当然これに関連して問題になつて来ると思うのでありますが、現在日本農機具工場はどういう状況になつておるかと申しますと、戦後農機具工場が相当出て参りましたけれども、最近この農機具工場が相当つぶれております。採算がとれなくなつているような状態になつておりますが、こういつたような農耕様式改革ということにつきまして、政府はどういう政策をお持ちになつておられるか、その点を御質問いたしたいと思います。
  24. 藤田巖

    藤田政府委員 日本土地生産力を上げますための農耕用関係機具の問題、そういうものは当然土地利用の全般的の方針一連の中に考えて行かなければならぬ問題であります。農機具部門は、従来とも非常に弱小な部門であります。われわれといたしましては、やはり金融の問題、あるいは資材の問題、こういうふうなものについて、今後さらに一層のめんどうを見て、農機具工場としては極力優良な機具生産して行く、それからまた、それぞれ日本農業実情に合うような機具生産して行くというような、品質あるいは規格等改善の問題についても努力して行くということが必要であろうと思います。
  25. 池田峯雄

    池田(峯)委員 必要であろうと思うという御答弁でありますけれども、現在日本政府はどういう政策をとり、どういう方針耕作機械改良農耕様式改革というようなことをやつておるか。現在どういうふうにやつておるかということを御質問しておるのでありますから、どうぞ実際に即して御答弁されんことを希望いたします。
  26. 藤田巖

    藤田政府委員 これについては農業改良局方面で、具体的に農機具についての試験、研究、調査を進められており、それに合せまして、農政局関係といたしましても、推薦さるべき農機具生産に支障のないような金融具体的措置というふうなものについては、個々の問題について、十分金融機関等との間のあつせんをいたして、具体的に解決をして行くことに努めております。
  27. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そうした場合に、農機具工場の方で非常に適切な農機具を創案し、これを農民が購入いたします場合に、相当農家の負担になつて来る、そういう機械を入れるよりは、むしろ今までの農耕様式の方が金がかからないで済む、こういうような問題が当然そこから起つて来るのであります。こういう問題をどういうふうに解決しようとお考えになつておるか。
  28. 藤田巖

    藤田政府委員 二十六年度当初予算の要求の際には、私どもは特に単作地帯方面に、裏作を導入するために必要な農機具の購入等について助成することも考えたのでありますが、これは遺憾ながら国の予算といたしましては成立をしなかつたのであります。しかしながらその後食糧増産運動に関連いたしまして、県においては相当これの積極的な設備助成ということに、すでに乗り出しておられる県も相当あろうと思う。われわれといたしましても、今後は財政の許す限り、かような面についても、できる限り国の援助も与え、さらにこれが困難な場合におきましては、やはり金融の問題であろうと思いますので、金融の面について、具体的に必要とするものについてはこれをあつせんをして、極力それが実現するように努力いたして参りたいと思います。
  29. 池田峯雄

    池田(峯)委員 政府がそういう考えを持つていたといたしましても、現実には先ほどの、農地改革を実行したにもかかわらず、日本農業生産発展しない。その原因と同じような原因がここに働きまして、借金をし、あるいは自己資本を投じて農耕方式を改良し、あるいは土地改良いたしましても、これに対してどれだけの利益が上つて来るかというような問題が解決されませんと、やはり問題にならないのではないか。十万円の資本を投じたといたしましても、その利潤の回収が全然不可能であるという状況ならば、これは投資する必要はないのであります。投資するばかはないのであります。従いまして、そういつたような農民経済を左右する大きな農民経済以外からのいろな問題があろうかと思うのでありまして、単に金融というだけでは、あるいは国家資本を若干協同組合などに投下するだけでは、まだ不十分な点があるのではなかろうか。そういう点を政府としてはどういうふうにお考えになつておられますか、ちよつとお聞きしたいと思います。
  30. 藤田巖

    藤田政府委員 これは先ほどもたびたび申し上げておりますように、まず試験、研究、調査を完全にいたして、その経済的効果というものを確実につかみ、その経済的効果の確かなものについては、資金的措置あるいは資材的措置について万全を期して行く、さらに農機具等が導入し得るように、技術普及の点について一層積極的に力を入れる、こういうような一連的な方策をもつて、これを全体的に推し進めるということ以外に方法はなかろうかと考えております。
  31. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういう場合に、政府は米価の中に、そういう農家土地改良の費用であるとか、あるいは農耕機具改良であるとか、こういつたものに投資したその回攻を見込んで米価をおきめになつておられるか。
  32. 藤田巖

    藤田政府委員 米価は、御承知の通り大体パリティー方式を採用いたしてやつておるわけであります。しかも米価の決定については、もちろん生産費の面からの考慮もございますが、また一般物価あるいは消費者に対する面も考慮して決定さるべきであろう、従つて私は、すべての問題が米価によつて解決するものとは考えておりません。その点については、農林省といたしまして、あくまでも再生産に支障のないような米価をきめるということには努力するわけでありますが、なおかつそれによつて農業としては立ち行かないという部面もあるわけでありますので、国は別途の施策によつてこれを裏づけする、この両方の施策によつて日本農業を育てて行かなければならぬ、かように思つております。
  33. 池田峯雄

    池田(峯)委員 米価の問題だけでは解決されない、なるほどそうだろうと思うのです。たとえばここで農業恐慌というような問題がございます。しかも、これは林子平の言葉ではありませんが、日本橋の水はテームズ川の水に通ずる、日本の経済がアメリカ経済の中に深く入つて行けば行くほど、向うの経済の影響を受けて参ります。こういうふうに、農民がどんなに努力いたしましても、その農民努力だけでは解決がつかない、農民の力では何ともならない、そいう力が左右しているのだ。そういう大きな力の中で何とかかんとか努力をしているのだけれども、その努力はいつも報いられないで、そうした大きな力の動くままに流されて行かなければならないというのが、日本農民日本農業ではなかろうか、こういうふうに私は考えているのでありますけれども、その点について政府の御意見を承りたい。
  34. 藤田巖

    藤田政府委員 それはたびたび言われることでありまして、日本農業はアメリカと比べましても全然別個のもので、全体的に企業として成り立ち得るものではない、私どもはさように思つております。従つて農業政策の問題を論ずる場合には、その日本農業の特質というか、使命というものをよく考えて、やはり国がその基礎条件の整備については積極的な援助をする、これはぜひとも必要なことであろう、その意味においては全然同感に考えております。
  35. 池田峯雄

    池田(峯)委員 農地改革の問題について農地局の方に御質問いたしますが、今後農地改革はどういうふうに進めて行つたらいいとお考えになるか。
  36. 上松憲一

    ○上松説明員 農地改革につきましての今後の行き方というお話でございますが、御案内の通り昨年農地価格の統制がなくなりましたに関連いたしまして、農地改革を継続することが困難な事態に立ち至つたのでございます。従いましてその混乱を防止し、農地改革を継続いたしまするためにポツダム政令が出されたのでありまして、従来の農地改革考え方は今後も続けて行きたい、かように考えております。
  37. 池田峯雄

    池田(峯)委員 最近農民に対する税金が非常に苦しい負担になつて参りまして、税務署が農地を差押えをするという事例がまま見られて来ておりますけれども、こういつたことに対しまして政府はどういうふうにお考えになつておりますか。
  38. 上松憲一

    ○上松説明員 農地が差押えられました場合の競落人は、やはり農地を耕作する人に限るのでございます。従いまして、ことに競売につきましても、農地調整法の所有権の移転に関する知事の許可を必要とするというふうに解しておるのでございまして、競売等の場合におきましては、極力その弊が発生しないように税務署等とも連絡いたしまして、極力農地自体を差押えしないようにいたしておる次第でございます。
  39. 池田峯雄

    池田(峯)委員 宮城県の塩竈税務署では、一反歩千九百円かで農中の公売を公示しておるという事実があるのであります。これは政府に私が質問書を提出いたしまして、これは認めております。農地を千九百円で公売してその所有権を奪われてしまう、農地改革の上からこういうようなことがはたして許されるべきものであるかどうか、この点もひとつあなたの所見を承つておきたい。
  40. 上松憲一

    ○上松説明員 御案内の通り、昨年のポツダム政令によりまして、農地の移動にあたりましては、価格に対しまして条件を付することになつておるのでございますが、その条件はいわゆる最低価格以下の価格もつけてはならないということにいたしまして、従来の価格の七倍すなわち反当約五千円程度を標準にいたしておるのでありまして、千九百円ということでありますれば非常に安過ぎるのでございまして、そういうものは土地が非常に悪ければ別でございますが、私の方といたしましても、かかる安い価格で農地が売買されるというようなことは考えておらないのでございます。
  41. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういたしますと、日本政府は二つありまして、大蔵省の方では相続税の見積りによりまして、反当一千九百円で競売をやる、しかし農林省の方では反当五千円以下では売却してはならぬ、こういうことになつておりました、きわめて政府の不統一性を暴露しておると思うのでありますが、こういうことでははなはだ迷惑しごくであると思うのであります。農地改革をうたつておる一方におきましては、そういつたようなきわめて安い価格で農地を取上げてしまうというようなことが現に行われているのでありまして、こういう点に対しまして、農林省として今後どういう措置をとられるつもりであるか、その点を承つておきたいと思います。
  42. 上松憲一

    ○上松説明員 具体的な事案につきましては、私の方はまだ承知しておりませんので、実情をよく調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  43. 千賀康治

  44. 金子與重郎

    ○金子委員 前の質問の残りでありますが、漏れたところを簡単に質問申し上げたいと思います。それは第八条でありまするが、この八条の第一項に「耕作の業務を営む者(その所有する小作地の面積が二反歩をこえる者を除く。)」とあります。問題はその次の行にもあると思いますが、その次の(ロ)の「二反歩をこえる面積の小作地について耕作の業務を営み、」このことが一つと、もう一つは第十条に行きまして選挙の資格でありますが、内地における一反歩、北海道の三反歩という、この基準は——将来農民になるという考え方ならば別でありますが、農業者というふうな見解から参りますと、内地の農家は自給食糧をつくるだけでも、関東地帯における二毛作地をとりましても、田畑半々にいたしましても約三反六畝くらいないと、まつたくこれが飯米用になつて食うだけにも足りないのであります。そういう面から行きますと、先ほど共産党の委員からも言われましたように、農民人間並の生活をするには、どうしても経営面積を多く持つて行く以外にはないのであります。その多く持つて行くにはどういう方法かということは別問題といたしまして、そういう点から行きますと、この基準は非常に小さいのでありますが、ここにとりました基準は、どこを根拠にしてとつたのであるか、その点を説明していただきたいと思います。
  45. 藤田巖

    藤田政府委員 第一の質問は、私ちよつと御趣旨がわかりかねましたので、もう一度質問いただきたいと思います。第二の点につきましては、従来かような基準をとつておりましたものを、今回におきましてもそのまま踏襲をいたしております。
  46. 金子與重郎

    ○金子委員 踏襲をしたということでなく、踏襲したのはしたでしようけれども、あなたの考え方として、これを選挙権の基準にする、あるいは前の小作人の場合には二反歩というものを基準にとつたその意義、あなたの見解を聞きたいのです。
  47. 藤田巖

    藤田政府委員 これはもちろん農家というのは、どの程度以上を農家考えるかということに触れるだろうと思います。しかしながらわれわれといたしましては、いやしくも土地を持つて耕作をしておる者はできる限り農家考える。極端な、いわゆる家庭菜園とかいうようなものは別でありますが、いやしくもそれによつて生業の一部としておるという者は、できる限りこれを救い上げようというような趣旨からいたしまして、この制限を従来置いておりますし、この程度で続けることが適当だろうという見解をとつたのであります。
  48. 金子與重郎

    ○金子委員 その点はそういうふうなお話であつたといたしましても、ただ一反歩農業の生業とみなせるかどうかということに多分に疑問があるのでありますが、それ以上は討論になりますからやめておきます。  第十四条の選任による委員でありますが、これは学識経験者五人ということになつております。この学識経験者の選任につきまして、この委員会所掌事務を見ましても、また一面この法律目的を見ましても、村の農業の全体の総合計画を立てるというふうな大きな問題を取上げておるとするならば、その村の経済あるいは産業を推進して行く機関というのは、たとえば協同組合のようなものにいたしましても、どうしてもその実体を持つておる機関があるのでありますが、そういうものを役名としてこの選任の中に入れて法文の上にうたつた方が妥当だと考えられます。なぜならば、この前のあなたの答弁では、自然にそうなるではないかというお話でありますが、もしこの改選のときにそうなりましても、おのずから他の団体と任期が違いますからして、役名として入れるのでなければ、任期がずれましたときには当然かわつて来るという関係がありますので、そういう必要があると私は思うのでありますが、局長考え方はどういうふうにお考えでありますか。
  49. 藤田巖

    藤田政府委員 これは具体的に申しますと、たとえば協同組合長は委員とする、こういうふうな規定のしぶりをしたらどうかというお話であります。これはやはり法制的には、この前に御答弁したと同様になるのでありますが、当然さような人たちは選ばれることであろうし、またさような人たちの漏れておるよろな場合には、選任委員として選ぶことが適当であろうというふうに考えております。やはりこの委員というのは具体的なその人、その人の学識経験その他の人格等を基礎として選定するものであります。極端に申しますれば、会長よりも専務理事の方がよいという場合もあろうかと思います。そういうような意味から考えまして、やはり具体的にその村にちようど合つたような委員の選び方をするゆとりをつくつておいた方が、むしろうまく行くのではないかというふうに考えておるのであります。
  50. 金子與重郎

    ○金子委員 その点は非常に重要なことでありますので、あなたは委員というものの性格はこうであり、実態はこうだとおつしやいますけれども、それは農村実情に少しそぐわない点があると私は思うのであります。なぜならば、かつて昭和の初年代に農村が不況になりましたときに、あの農村自力更生運動というものが、とにもかくにも農村復興の上に、いろいろな政策と相まつて大いに役に立つたこと、それから当時の指定町村というものが、今日になつてみて、あの一つの事業はよかつたと、私は農村の立場から見ておるのでありますが、そのときにかりにああいうふうな更生運動をやる村の委員をつくるときに、村の枢要な仕事をやる立場にある人を抜いておいて、委員は頭のすぐれた人たちを集めて行くということで、実際その仕事に関連のない人たちだけの意見というものが、はたしてどれだけの浸透性があるかということを考えたときに、もし法令としてうたうことが不適当ならば、省令なりあるいはその他の方法によつてでも、村の重要機関の人たちはこの枢機に参画するという形の方が実行力があるとかたく信じておるのでありますが、あなたは実際において村をどの程度に御理解か知らないが、私はその点をかたく信じておりますので、そういうことを私の意見になりますが申し上げて、私の質問はやめます。
  51. 千賀康治

  52. 八百板正

    八百板委員 先ほどお尋ねいたしました中で、農地局関係にわたる部分については、政府委員の出席をまつた上でお尋ねをすることにしておつたのでありますが、この際農地改革に関係する分について若干お尋ね申し上げたいと思うのであります。まずお示し農業委員会法提案に伴う参考資料、この中の農地改革及び未墾地開放実績一覧表を見ますると、牧野の点につきましては買収したのに対し、売渡しが三分の一近く残つておる。登記の分量が相当残つておると思われるのでありまして、二十四年度と二十五年度、それぞれ登記は八万町歩ぐらいしか済んでおらないのでありますが、同じテンポで行くといたしますと、同一分量でも二年ぐらいかかると思うのでありますが、こういう点から見ますと、ずいぶん仕事が残つておるように思おれます。農地改革が大体終了したという前提の上にこれらの法案考えられておるようでありますが、この点についてまずお考えをいただきたいのであります。  なお重ねて一括してお尋ねいたしますが、未墾地買収面積のうち二十五万町歩をまだ売り渡しておらないのでありまして、しかも売渡し登記にいたりましては、総面積の十四、五パーセントしか完了しておらないという実情でありますが、これらの原因はどこにあるとお考えになつておりますか、その点伺つておきたいのであります。
  53. 上松憲一

    ○上松説明員 牧野につきましては売渡しがおくれておるのではないかというお話でございますが、実は牧野につきましては、着手いたしましたのが非常におそかつたのでございます。従いまして仕事が幾分ずれておるのでございますが、ことに売渡しにつきましては、実測も要するというような関係で遅延いたしました。しかし着々実測も進みまして、極力二十五年度内には売渡しを完了したいというふうに思いまして、仕事を進めて参つたのでありますが、幾分二十六年度にまたがる点も生じて参つたのであります。しかしこれにつきましては極力事務の進捗をはかつております。なお未墾地につきましては売渡しがきわめて少うございます。と申しますのは、買収並びに管理がえでは百二十五万町歩に達しておるのでございますが、売渡しは三十四万町歩といろ数字でございます。しかしながら、これは百二十五万町歩中不適地と申しますか、そういうものを差引きましたものの大部分につきましては、開拓計画は進んでおるのでございます。開拓計画が進み、建設工事が進みますに従いまして、着々売却もいたすつもりでございます。従いまして、着手しないで放置されておるものは少数でございます。
  54. 八百板正

    八百板委員 未墾地買収につきまして進行しておらないのは不適地等の数字が入つておるからだと申されておるのでありますが、当初買収いたします場合には、開墾適当なる土地であるという前提のもとに買収せられておりますことは当然でありまして、従つてその後これを不適地なりと判断し、あるいは不適地ではないかというふうな考えを持つに至つた事情を、私ども考えてみまするに、その間山を手放したくないという山地主のいわゆる逆攻勢的な攻勢が、適地をも不適地であるというようにゆがめて、そういう傾向に運んでおる事実をわれわれたくさん知つておるのでありますが、そういう点について判定の基礎が、そのときの情勢や、あるいは地方における勢力関係等によつてぐるぐるかわるようであつては、なおさらこの農業委員会法の制定後における農地改革の、とりわけ未墾地に対する進行の状況が危ぶまれるのであります。この点について、確固たる判定の基礎というものを政府は持つておらなければならないと思うのでありますが、この点を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  55. 上松憲一

    ○上松説明員 御案内の通り未墾地の処分につきましては、いわゆる急速取得と称しまして、非常に急ぎましてたくさんのものが取得されたことがあつたのであります。その後に至りまして、いわゆる適地選定基準なるものが確立いたしまして、従来のものにつきましては、ときにはその基準に合わないものも生じて参つたのであります。適地選定基準というものを今後は確定いたしまして、それに照しまして買収なり、管理がえなりを進めて参る、かつ従来のものにつきましても、適地選定基準に照しまして、合致しないものは元に返すという方法を講じたいと思つて、今せつかく研究しております。
  56. 八百板正

    八百板委員 適地選定の基準というものがしよつちゆうかわつて、しかも適地選定の基準に合わないものはまたもどすということをやりますと、せつかく買収した農地も、開発のために計画したものが、いわゆる村における力関係の影響を受けて、あるいはその他の運動等の影響を受けて、未墾地買収売渡しがきわめて不完全なものになつて、重要なる農地改革の趣旨が逆もどりする危険がまことに大きいのであります。とりわけこの農業委員会法は、農地改革打切り、農村の反動化を目ざすという非難が一方に起つておるのであります。特にこの農業委員会法の制定によつて、既存の未墾地開発の方針が逆もどりをするようなことのないように、十分な注意を払つて行かなければならないと思うのでありますが、そういうふうな方向について、政府はどういう考えを持つておりますか、明瞭にしていただきたいものであります。
  57. 上松憲一

    ○上松説明員 適地選定基準の設定が遅れたことによりまして幾分混乱を生じたのでありますが、今後はこの適地選定基準を法律の中に明確にうたいまして、それに合致せしめて、適正なる事業運営をやつて参りたいと思つておるのでございます。従いまして、未墾地開発事業を今後ゆるめるとかいうことは考えておらないのでございます。適地については極力開発を推進するという考えでございます。
  58. 八百板正

    八百板委員 それでは三つの点を並べてお尋ねいたしますから、あわせてお答えいただきたいと思います。  まず第一には農地委員会書記を、まだ農地改革がたくさん残つているという重要性にかんがみて、農業委員会の方に引継ぐように努力すべきだと思うのであります。ことに残つている農地改革仕事には困難なる仕事が多いのでありまして、これらを処理するためには経験のない者ではできない場合が非常に多いのであります。そういう意味で引継ぐ必要があるだろうと思いますが、引継ぐためにどのような努力をされ、どのような結果がもたらされているか、さらに引継ぐことのできない書記に対する身分保障についてどのような見解を持つておられるか、この点についてまずお尋ねしたいのであります。もう一つは、農業委員会委員の構成にあたつて地主富農層の委員数を特に小作農側の委員の二倍としたということ、この点特に農村の民主化をはばむ反動的傾向を織り込もうとする意図が、はつきりこの割合の上に現われておるように考えるのでありますが、この点についてどういう見解を持つてやられたかという点、さらに第四条につきまして、とりわけ農地利用関係についてのあつせんの経費を、特に市町村自治体の負担としたという理由、この三つの点をお答えいただきたいと思うのであります。
  59. 上松憲一

    ○上松説明員 農地委員会書記の問題でございますが、従来農地改革に長く従事していただきまして、非常に有能な人が多いのでございます。従いまして、これらの人につきましては極力身分を引継いでいただくようにという御依頼はいたしているのでございます。しかし万やむを得ず転職をされる方も生ずると思います。こういう方々につきましては、一応退職資金の準備はあるのでございますが、そのほかになるべく他の事務をあつせんしていただくようにという通牒も出しております。かようにいたしまして、農地委員会書記の身分につきましては、極力努力いたしている次第でございます。  四条の農地の利用関係等についてのあつせんに関しまする経費の問題でございますが、実はこの考え方は以前からあつたのでございまして、ことに国の事務、地方の事務というものを明確にすべきであるというシヤウプ勧告もあるのでありまして、そういう点にかんがみまして、実は農地関係のあつせん等に関しまする二十六年度予算は、平衡交付金に入つているような点もありますので、別にそれと矛盾するわけではないと考える次第でございます。
  60. 藤田巖

    藤田政府委員 この八条に関係いたしまして、小作人、いわゆる一号から選出する委員の数が二号委員の半分である、つまり小作人以外の者を二倍にしたのは不公平ではないかというお話でございますが、むしろこれについては本委員会においても逆な質問が出ております。現実に一号委員に属する者は、全体の農家戸数の一七・二%であります。一七・二%で農家戸数から申しますればずつと少いにかかわらず、選挙される委員については、これが二対一になつて、むしろ不公平ではないかという意見も出ているわけであります。われわれといたしましては、小作階層に属する者を特に重んじて、農家戸数の比率によらず、さらにそれを尊重をして、たくさんなウエイトをつけていると考えておりますので、御質問は全然当らないと考えております。
  61. 八百板正

    八百板委員 ただいまの農地委員の階層の点につきましては、この農地委員会の性格を考えます場合に、そういう反動的傾向を農地委員会の中に織り込んではならないという意味合いにおいて、その点をお尋ねいたしているのであります。少くともこの農業委員会法は、新たなる農業政策の方向を打ち出そうとするところのねらいを、一面において持つていることは申すまでもないのであります。このことができるかできないかということは、一にかかつてその運用のいかんにあるのでありまして、従つてこの運用を果して行きますところの農業委員会の構成の中には、農地改革等によつて農村の中に新たに盛り込まれた要素を、一層その方向に強化して行くことが必要なのであります。そういう意味合いにおいて、農村の民主化をはばむような傾向に出ることを非常に警戒しなければならないと考えるのでありまして、そういう点の考慮が十分にはかられなければならないという趣旨を私は申し述べているのであります。この点につきましてはいろいろ議論のあるところでありまして、質問の範囲を越えるかと存じますので、この程度にいたしておきたいと思うのでありますが、第四条の点についての御答弁を伺つておりますと、従来もそういう考え方の傾向があつたというお話であります。自治体の財政は今日とかく貧困をきわめておるのでありますから、こういう際に、とりわけ農地の利用関係等についてのあつせんの経費を自治体の負担にすると、結局自治体がそういうふうな仕事の支出をいやがることになるのは当然でありまして、そのために引継がるべき農地改革の方向が、自治体の経費負担に名をかりて圧殺せられる結果になり、従つて事なかれ主義に陥るという意味合いにおいて、この経費の負担の取扱いは、ねらつておる方向と逆行して、事実上この農地の利用関係について行うあつせんを不可能ならしめる危険があるのではないか、こういう角度からお尋ねいたしておるのでありまして、そういうふうな心配がないと考えられておりますか、この点をもう一ぺんつけ加えてお答えをいただきたいと思います。
  62. 上松憲一

    ○上松説明員 農地改革に関します経費は、国が負担するということが当然であると考えます。御案内の通りに、地方財政法におきましては、農地調整に関する経費は国の負担とするという条文があつたのでございますが、実はこの場合の農地調整は農地改革を意味するというふうに了解いたしておるのでございます。農地の利用関係等、すなわちたとえば農地の交換分合というような費用については本年度から実施いたしておりますが、やはり地方で半額を負担していただくという趣旨でやつておるのでございまして、いわゆる一般的な農地改革以外の農地調整関係については、地方も負担をしていただくというふうに考えておる次第でございます。
  63. 千賀康治

    千賀委員長 進行いたします。横田甚太郎君。
  64. 横田甚太郎

    ○横田委員 一番初めに、この日本農村が、いわゆる文学に書かれておるようにゆたかであるならば、どんな極道な委員会をつくられても、何をやられてもかまわない。しかし実際はそうではないのでありまして、委員会をつくられても、何をやられてもかまわない。しかし実際はそうではないのでありまして、日本農村は、日本政府が言う文字で表わした農村とは、大分違う。これが問題でありまするがゆえに、私は聞くのであります。現在の日本農村に対しましては、いかなるよき意図を持ち、民主的なものだという頭から論じて行つても、それは民主的なものではない。ちようど農業協同組合法がそれなんで、もし農地開放というものが徹底的にやられてこれが成功するものであるならば、農業協同組合のコースをまつしぐらに行かなければならないのでありますが、やつた結果は、マツカーサーは満足しておるかもしれないが、日本の農林官僚で良心のある人は、悩みを持つておる。農業協同組合はどんどんつぶれて行く。前置きが長くなりますからやめておきますが、こういうわけで、私が聞きたいのは、農業委員会をこしらえられるところの農村に対する認識を、改め直す気持があるかないかということであります。その一例といたしまして、たとえば供出制度というものが、日本農業にとつて——町の消費者じやないですよ、貢献しておるかしておらないか、この点に対する政府見解はどうか、この点をまず第一に聞きたい。
  65. 島村軍次

    ○島村政府委員 供出制度は、戦時中のあの食糧不足の場合に、あまりに強権発動をし過ぎたという非難があつたことは事実でありますが、これは国民食糧の確保の点からいつて、ある程度までやむを得なかつた事柄とも考えられるのでありまして、今日ではそれを漸次改善いたしておりますので、供出制度そのものも、必ずしも農村に不利なものではない、かように考えております。
  66. 横田甚太郎

    ○横田委員 そんなとぼけたことを聞いておるのとは違います。日本の供出制度というものが、日本農業に貢献しているかいないか。農業というものは拡大生産をしなければならないのに、逆に縮んで来ている、この点に対する政府見解はどうですかということを言つているのです。
  67. 島村軍次

    ○島村政府委員 ただいま答弁申し上げました通りで、あなたの御指摘のようなことはないということです。
  68. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたの答弁の中に、こういうことがあつたでしよう。供出制度を存続してくれという意見農村にたくさんある。これはどうですか。廣川さんもそういうことを言う。それは大きなインチキじやないか。食管特別会計なんかどうなつているのか。アメリカの米を高く買い、タイやエジプトの石の入つた米を補給金付で買うている。こういうような補給金付で買つている米を日本の米と競争さしているから、日本の米の値段、麦の値段がコントロールされる。日本農業は、そういうふうな占領政策にくつついた経済的な制約のもとにおいて、非常な不利な競争状態に置かれている。その苦しさに、政府がやる食糧政策というものは、日本農業を滅ぼすものであるにかかわらず、余儀なく供出制度を存続してもらわなければならない、こういう泣言にかわつておるのではなかろうか。この意見が非常にあるために、ダレスさんが来たときに、日本農村から、講和に対するはつきりした農村自立の線が出ない、私はこう思うのです。そういうわけで、競争がなかつた場合には、日本農村はこの供出制度をもつと本質的に批判する力があると思う。ところがこの補給金によつてごまかすところのやり方があるために、日本農村は、いわゆる供出制度という日本農業を滅ぼすものを批判する力を失つている。こういうわけで、日本農業に対する今の政府、前の政府が、戦後、戦時中を通じてやつていた供出制度というものは非常に悪いことではないか、このことを聞いているんですが、どうですか。
  69. 島村軍次

    ○島村政府委員 わが国の食糧は、御案内の通り、自給自足ができないという結果が、戦時、戦後を通じて現われておるのでありまして、むしろ横田さんのただいまのお話のようなことは、消費者の立場をちよつとも考えていないような御議論で、私はそれには反対であります。しかし農村の現在の供出制度をなるべく緩和して、農民が納得行き、かつみずからが喜んで国内需給の食糧を供出する制度になるように今回の供出制度も漸次改めつつありますので、さように御承知願います。
  70. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういう横着な答弁はいけません。欠配、遅配をさしたのは日本政府であつた。とうもろこしを食わしたのも日本政府である。このごろ、石のまじつた米を食わしているのも日本政府である。こういう横着な政府が、消費者の立場を考えていると言えますか。そういうことは議論になりますから、帰つてよく考えてもらいます。  それで日本農村におきましては、いわゆる日本の食糧は自給できない、こう言われるんです。自給できないが、しかし自給度を高かめることについては、どうやら一奮発されて意見が一致したらしい。だからこの点を質問して行きます。政府見解によりますと、こうなつております。これも出所を明らかにしておきます。最近出ました日本経済年報第七十集によりますと、日本は大体三箇年間の計画をもちまして、開墾を十五万一千町歩やつて行きます。その半面には、二十一年から二十三年まで、平均して田にいたしまして一万九千町歩、畑にして二万町歩、合計三万九千町歩、合計三万九千町歩からのものをつぶしておるのです。これは一体どういうわけでつぶしておるのですか。経済の自立とか、あるいはその自立の基礎になるところの一国の農業生産力を高め、食糧の自給という観点から見ました場合に、農村に金を入れる、そうして土地改良とがいろいろなことをやる、こういうようなことをやるというのも、一に生産力を高めたいからである。この生産力の基礎になるのは土地である。片方で土地を開墾しながら、片方で土地をつぶして行く。一体どういうわけでこの四万町歩の土地をつぶしているのですか。これは大きな問題です。戦争が終りまして二十一年—二十三年は民主団体が暴民扱いをされずに、自由に活動しておつた時です。その後におきまして民主団体は弾圧されて、朝鮮においては戦火が熾烈化して来まして、軍部ののさばりというものはひどいものです。日本においても警察予備隊がのさばつております。そうなつて民主団体が文句を言えなくなつて来たならば、これは四万町歩どころではないと思う。ジープがぶうつと走ると、知らない間に飛行場になつてしまう。だから私は、四万町歩はもつとふえるかふえないか、片方においては開墾に金を使つて、片一方においては米のよくとれる土地がなぜつぶされて行くか伺いたい。
  71. 島村軍次

    ○島村政府委員 直接つぶれる原因はいろいろあると思うのでありますが、災害復旧が未完成なのが一番大きな原因です。従つて農業関係においては、この災害復旧を促進して行けば、四万町歩はうんと減つて来るのです。
  72. 横田甚太郎

    ○横田委員 災害復旧は——ちようどきのうの廣川農相の昆虫の話と一緒です。災害復旧だけでなしに、飛行機のおり場にした、こういうことに対する政府の統計があるかないかということを聞きたいのです。だから四万町歩をもう少し割つてください
  73. 上松憲一

    ○上松説明員 つぶれ地につきましては、私の方でも調査をいたしております。実は政務次官からのお話のように、災害復旧ができないのが最大の理由でございますが、その他にも、最近学校用地等につきましてのつぶれ地も相当加味されております。今手元に数字は持つて参りませんでしたが、現在は指令によりまして、旧軍用地は農耕を許されるということで、極力農地のつぶれることは差控えていただきたいということを交渉いたしておるのであります。現在までのところ、予備隊のためにそうたくさんの農地がつぶされたという報告は受けておりません。
  74. 横田甚太郎

    ○横田委員 予備隊の経費はまだ貧弱です。これは日本人が集まつておるのです。私が聞いたことに対して日本人のことばかり言つておるが、外国人によつてつぶされた農地をお調べになつておるかどうか聞いておるのです。
  75. 上松憲一

    ○上松説明員 お尋ねの趣旨につきましては、まだわからないものが多いので、ただいまここで申し上げる数字を持ち合せておりません。
  76. 横田甚太郎

    ○横田委員 しつこくならない程度にとどめますが、わからないものが多いというのは、いつごろわかるかということです。こういうことは早くわからない限りにおいて困るのです。なぜ困るかといえば、村に農業調整委員会があつたときに、われわれが一番困らされたのは、米のかわりにれんこんが生えているのです。これはいいのですよ。ところがそうじやないのであつて、あるはずになつておるところに、米もれんこんも生えずに、今度は飛行場になつておる。そういうところにあんたたちは供出の割当をやつておる。こういうことでは困るからといつて食糧庁に行つたら、食糧庁のかたい役人は剣もほろろに追い返すのです。そこで困る困るといつてつておるのが供米の阻害になる。だから供出のパーセンテージをずつと見てみなさい。九五%、九六%、九八%まではずつと上るが、それから上らないのは原因がここにある。だからこれを早くやつてもらわなければならない。これをやる意思があるかどうかということと、同時に、供出のパーセンテージが上らない場合において、こういうことが非常に阻害になつておることを認めるか認めないかということを聞いておるのです。
  77. 島村軍次

    ○島村政府委員 供出制度につぶれ地が関係するということは、私はないと思います。ただ横田さんのお話の通りに、たとえば従来軍用地あるいは宅地になつてつたものが畑地なり田地になつた、それを今度は他に利用したという場合に、統計上あるいは調査上、不十分だつたものもあろうと思います。しかしこれは事実がわかればすぐ減額なり、それぞれの補正をする道も開かれておるわけでありまして、供出制度に直接影響のないものと考えております。
  78. 横田甚太郎

    ○横田委員 補正する道を開かれておると言われるが、実際には開かれていない。食糧庁に行つても、今までまともに扱うてくれたことはない。去年はどうしたか、一昨年はどうしたか。大阪を主体にして、各府県が全部補正を要求した。そのときにあなた方の答えはどうでしたか。しばらくがまんしてくださいといつて、だらしのない供出補正をやつたのは、あなた方自身ではないか。このことについてもいろいろ意見があるのですが、まだあとにたくさんありますので……。要は農村に対しまして、政府は民主的にやりたいと言われるようなことは、今後一切やめられたらどうですか。なぜかというと、日本農村を解放しましたときに、米をつくつておる、麦をつくつておる、それに対して、適当な価格によつて買われておつたならば、この生産は引合うものなんです。こういうところに対しては、何も政府がいらない法律をこしらえて、こういう集まりをこしらえるということを言わなくても、クラブのようななごやかな組合ができまして、ここではいつも冠婚葬祭をやつておる。そしてごちそうがゆたかである。ところが政府のやつておるのはそうではないのであつて、麦を引合わない値でとつておる。そして自分の都合が悪くなつたときは、アメリカの麦は買うても日本の麦は知らぬといつて、統制撤廃をする。しかもアメリカのものは補給金が二百二十五億ついておる。米の場合においては、実にだらしのない米価のきめ方をしておる。そこで言うのです。農村の民主化というものは、こういう法規をこしらえて、ここへすわる人をみんなで選んでくださいといつて投票用紙を五十枚渡しても、百枚渡しても、民主化はされない。要は民主化の根本として私が聞きたいのは、農村に対して払うべきものを十分お払いになつた方が民主化するのではないか。農村の収奪がひどい、それをごまかすために、いわゆるあんたたちに対する責任を追究されない意味合いにおいて、農業委員会、前においては農業調整委員会とか、農地委員会とか、こういう化けものをこしらえておるのではなかろうか。この点の見解はどうですか。
  79. 島村軍次

    ○島村政府委員 今度の農業委員会こそ民主的になつて、あなたが御指摘なつたような問題がすべて解決するというのであります。
  80. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはどういうふうに解決するのですか、それを聞きたい。この内容を見ると、こういうことが出ておりますね。農業委員会法案の第七条第三項に、「市町村農業委員会は、左に掲げる事項に係る総合計画の樹立及びその実施について、市町村長に建議し、又は市町村長の諮問に応じて答申することができる。」こうなつております。この場合に、建議と諮問とどちらを大きく扱うのかということを聞くのです。私たちが農業調整委員会時代に一番困つたのは、建議ということに対しては、一回もわれわれの意見というものは重んぜられたことはないのです。しかし市町村長さんが農業調整委員を勤めますときには、必ず米出せ、麦出せ、いも出せ、とることばかり考えていた。しかもそのとるものは値段が安い。だから今度の場合において、内容が大分かわつておりますが、この建議と諮問とどちらの方を大きく重んじになるのかということを承りたい。
  81. 藤田巖

    藤田政府委員 これはどちらを重んずるということでなくて、その両面が必要であろうと思います。つまり地方行政農家意思が反映され、しかもまた地方行政の遂行によつてそれが円滑に行くように、相互間の協力関係を十分に密にして行く。従つて問題の取上げ方は、団体から取上げる場合は建議になり、自治体から取上げる場合は諮問になる。要は真に農業委員会が、現実問題として権威あるものとしてつくり上げられ、それがどの程度市町村との間に重んぜられてやられるかということの具体的の問題になつて来ると考えたわけでありますが、法制的にはいずれを軽んじ、いずれを重んずるということは考えておりません。
  82. 横田甚太郎

    ○横田委員 権威あるものと言われましたが、その権威とは一体どういうことかということを聞いておるのです。たとえて申しますと、日本農業自体が引合うものであるならば、公益事業委員会のように、日発、配電から入れようとかなんとかいつて、一生懸命になつて予算委員会まで問題を持ち込みます。あるいは少し話がそれるかもしれませんが、木内問題でもそうだ。日本農業自体が引合わないのです。その引合わない問題を扱つて、しかも金も十分にもらえないような農業事務に携わつて、さらに政府からの強権を食つて、隣の人から米を奪い、麦を奪うために農業委員会の中に入り込むような、そんなばかな農民がどこにありますか。農業自体が引合わないで、農業を危殆に陥れて、それを何とかやりくりするためにそこで熱心な討議が行われておりますが、とにかくこの権威というものは、日本の経済的条件のもとにおいて失われるようにできておるのが日本農業じやないかということを聞くのです。そうした点について、藤田さんはもう少し良心的な答弁をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  83. 藤田巖

    藤田政府委員 これは結局啓蒙運動が進んで、農家自身が積極的に自立してもらおなければならないと思いますが、しかし日本農家の現在の段階から申しましても、農家みずからの力で立ち上ることはむずかしいわけであります。従つてそこに自主的な団体の力でこれを盛り上げよう、あるいは国がこれに対して大いに協力して行くというふうなことで、全体のレベルを上げるということをして行かなければならないと思います。
  84. 横田甚太郎

    ○横田委員 そこであなたは啓蒙すると言われますが、これは農業団体が啓蒙するのですか。今の農業協同組合に入つてごらんなさい。啓蒙する何ものもないのです。ここでは組合がつぶれるから金を出せ、金融のために金を出せ、お前のところは米を出せと言うのです。だから啓蒙しようにも啓蒙のしようがない。どうして啓蒙して行くのか、その方法が私にはわからない。特にこういうことが言えるのじやないですが。ここにも新聞に出ておりますが、大阪の区会議員で四年間勤めた人は七十二万円もらう。農民は生れてから何年働いておるのですか。やめるときに一体何円もらえるのですか。廣川農林大臣は何と言つておるか、町の陳情と農家の陳情とは違うのだと言つていますよ。農業内容を見ましたときに、何にも啓蒙するものがないのに、啓蒙々々と言われますから、いよいよわからない。農業団体は農業ボスをすえ置くこと以外に仕事はないのでありますが、その啓蒙するということは一体何を啓蒙するのか、それをひとつ承りたい。
  85. 藤田巖

    藤田政府委員 実情は、協同組合にいたしましても、真に農家のための団体として、名実ともに実質を備えているという状態でないと承知しております。しかしながら要は農家自身が自活をして行くということで、それについて何を啓蒙するかというお話でありますが、これはいろいろのことがあると思います。農業生産力を高め、農家経営を安定し、農民地位向上をはかるための仕事がたくさんあるわけでありますから、そういうふうな仕事全体について、農民の団体も農家もお互いに自覚をして、それを国としてもできるだけ浸透徹底させて行くということをしなければならぬと思います。
  86. 横田甚太郎

    ○横田委員 農家自身が農家自身がと二言目には言われますが、農家というものが自分のことをまじめに考えたら、労働者ならばストライキの線に行くが、農民つたら、まじめに考えれば考えるほど田地を耕さなければならない。今歴史を調べてみますと、戦争中に食糧をつくつたために、日本農村が戦力の培養地になつた。それが後にどういう形にかわつてつたか、やはり供出の形において米をとられておる。ほかの分野においては、いろいろな経済的な民主的な形が採用されたといつて喜んでいるが、しかし農村においてはそれがないのです。依然として供出制度が続いておるのです。それで政府は非常に無理なことをやつておる。これを供出と言わずに買入れと言つておるのです。ここで私のわからないのは、供出と買入れというものは一体どう違うのか、この点を少し解明してもらいましたならば、大臣の答弁も私は少しはわかると思います。私の考えによりますと、供出と買入れというものは非常に違うと思います。それを政府においては一緒であると考えておられるのかどうか。
  87. 藤田巖

    藤田政府委員 農家のつくつたものを国民食糧の確保のために出してもらいたい、そういうふうな意味も含めての字句が供出であろうと思います。これを単に経済的に考えるならば、買入れということになるだろうと思います。
  88. 横田甚太郎

    ○横田委員 その出してもらいたいという条件は一体いつまで続きますか。
  89. 藤田巖

    藤田政府委員 国民食糧の確保上、かような制度を必要とする期間はやはり実施して行かなければならぬと思います。
  90. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういうことは、計画から見ますと、なかなか終りそうもないのです。     〔委員長退席、松浦委員長代理着席〕 あなたたちが計画をお立てになりまして、依然として二百万トンの米を入れなければならぬ、麦を入れなければならぬと言われておりますが、これは戦略的な目標のために、しかも日本の国の政治の内容さえ討議することなしに、農民は供出といろ形において、引合わない価格で物を收奪されておる。こうなれば、いつまでたつても、日本農家は自立ができないのじやないですか。ここにこんなことが出ていますね。東京の議会におきましては、一生懸命に畜産の計画をやつておる。畜産小委員長なんか実に熱心にやつている。私たちの感心するくらい。資金なんかの点はそのがんばりはえらいものなんです。ところが今日の新聞を見るとこういうことが出ている。百姓が馬をどんどん売つている。東京の議会で畜産奨励をやつているにもかかわらず、農村の有畜化を論議しているにもかかわらず、実体の農村におきましては、娘が身売りし、馬が身売している。池田君の今の質問にもありましたように、農地が大蔵省の下役人どもに差押えられておる。その原因は一体どこにあるのかということです。これは一体どうなんです。
  91. 藤田巖

    藤田政府委員 これは日本農家自身全体が非常に脆弱でございまするし、しかもいわゆるドツジ・ラインの政策の遂行が、農村及び農家の経済に重い負担をかける、その方にしお寄せされて来ておるということは事実であろうと思います。かような現象が、個々の末端の最も脆弱な面に現われて来ておるということは、否定できないのじやないかと思つております。そのためにわれわれといたしましては、この際農業全体について食糧の増産をすると同時に、それが農家経営の安定になるようにということでいろいろ施策を進めておるわけであります。
  92. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはいろいろの施策を進めておられるのはよくわかりますよ。しかし進めておるにもかかわらずうまく行かないのは、ドツジ・ラインのためで、そこで私は特に農林省の責任のある方に聞きたいが、廣川さんはおらないし、次官に聞かなければしようがないのですが、西欧民主主義というものは、一つ政策を提示しました場合に、納得しなかつたら協力しないという建前をとつている。だからドツジ・ラインのようなものが、農村の経済面から見て、これが納得できないで、農村の收奪になると思つたときに、日本農民は一体どうなつて行くかということなんです。たとえて申しまと、外安の問題がそうです。これはこの前も聞いていただきましたように、外安が非常に日本に入つていた。入つた外安が固い。粉であるべきところの外安が、岩になつておる。船に積んだものをとりに行くのに、鶴嘴を持つて行かなければいかぬ。こういうよろな外安が入つて来るために、日本の役人に言わせると四億の損をしているというのです。これも一つのドツジ・ラインです。外国から入つて来るところの食糧は非常に高く買われている。そして悪いものが押しつけられている。にもかかわらず、日本農村におきましては、検査が厳重でありまして、値打のあるものが安く買われて行くのです。だから農民自身は、あなたたちは一生懸命にやつている、やつているけれどもとつの制約があつて、それがドツジ・ラインによつてどうしても修正できないというようなことがわかつたときには、日本農民は一体どういうような道を行くか、この点に対するお考えは一体どうですか。
  93. 藤田巖

    藤田政府委員 日本農家の現状から申しますと、やはりいかに苦しくても、農家としてはその生活程度を切下げても、やはり農業というものによつて生業を営んで行くということ以外に方法はない御承知の通り全人口の四割何分が農家であります。しかも他にこれを吸収するところの鉱工業部門というものが発展しておらない。そういうふうなことでありますから、やはり農家としては、いかに生産部門で圧迫がありましても、生活程度を切下げてまでやつて行かなければならぬという問題があろうかと思います。従つてわれわれとしては、さような点について、先ほどから申しておりますように、極力各種農業施策を講ずることによつて農業生産力を高め、しかもそれが農家の安定になるようにやつて行くということを考えております。
  94. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたが言われましたように、農業生産力を高めるといつても高まらない。それからもう一つしやくにさわる言葉は、生活が非常に低く切下げられてもがまんしてやつて行かなければならぬという言葉があつたですね。そうしたらいかぬですよ。世界人権宣言を見ると、四つの自由と書いてある。言論の発表の自由、礼拝の自由、欠乏からの自由、恐怖からの自由がある。こういう点から申しますと、大体貧乏にすると共産主義がはびこるから、アメリカ自身が最も心配しなければならぬはずだ。そういう世界の人権をもう少し高揚する意味合いにおいて、あらゆる政治、経済が論議されているのですから、生活程度を切下げて農業を維持するような農業であつたならば、これは再び中国がほしい、台湾がほしい、アメリカにもう一ぺん暴れ込んだろかというような民族ができる。そこで聞くのですが、藤田さんから言われたことは、答弁言葉として答えられておるのであつて、ほんとうのところは、もう少し農村の窮乏という現実を認めて、これを打開する策を持つておられるのではなかろうかということを聞きたい。その点はどうなんです。だから生活程度を低めてというようなお考えをやめにしていただきたい。これは世界人権宣言の違反なんです。
  95. 藤田巖

    藤田政府委員 私は決してそれがいいということを言つておるのじやないのです。そうなつたら農家はどうするのだということをおつしやつたのに対して、日本農業及び農村の特性からして、ほかへ行けないから、やはり切り縮めてもやらざるを得ないような事情にある、しかし決してそれがいいということを私は言つておるのではないのです。従つてわれわれとしては、具体的に各種法律案を必要とするものは法律案を出し、あるいは予算の必要なものは予算を出して、そして農業政策を推進して、農民がさようなみじめな状態にならないように進んで行かなければならぬ、こういうことを申しておるわけであります。
  96. 松浦東介

    ○松浦委員長代理 まだありますか。
  97. 横田甚太郎

    ○横田委員 では私の質問は次会に留保しておきます。
  98. 松浦東介

    ○松浦委員長代理 暫時休憩いたします。午後三時から再開の予定であります。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     休憩後は開会に至らなかつた