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1951-02-02 第10回国会 衆議院 農林委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君    理事 吉川 久衛君 理事 足鹿  覺君       宇野秀次郎君   小笠原八十美君       小淵 光平君    越智  茂君       川西  清君    河野 謙三君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    八木 一郎君       大森 玉木君    坂口 主税君       八百板 正君    山口 武秀君       横田甚太郎君    中村 寅太君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (畜産局長)  山根 東明君  委員外出席者         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君 一月二十九日  委員河口陽一辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員井上良二辞任につき、その補欠として八  百板正君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 一月二十六日  裝蹄師法の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)(予) 同月二十九日  農地調整法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号) の審査を本委員会付託された。 同月二十六日  競馬法改正に関する陳情書  (第六三号)  主食配給事務費国庫負担に関する陳情書外一  件  (第八一号)  青果物共済制度確立に関する陳情書  (第八七号)  土地改良に対する国庫補助陳情書  (第九二号)  農業委員会法制定に関する陳情書  (第九五号)  早場米獎励金制度継続陳情書  (第一〇三号)  積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法制定に関する  陳情書(第  一〇六号)  耕地整理組合及び普通水利組織変更事務費に関  する陳情書  (第一一五号)  積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法制定に関する  陳情書(  第一三〇号)  積雪寒冷單作地帶振興策に関する陳情書  (第一四三号)  水稻秋落防止対策国庫助成に関する陳情書  (第一四七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農地調整法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)  獎蹄師法の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)(予)  昭和二十六年度農林省関係予算に関し説明聽取     ―――――――――――――
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  去る一月二十六日予備審査のため付託になりました内閣提出獎蹄師法の一部を改正する法律案及び去る一月二十九日付託になりました内閣提出農地調整法等の一部を改正する法律案を順次議題とし、その審議に入ります。  まず獎蹄師法の一部を改正する法律案趣旨について、政府説明を求めます。島村政務次官。     —————————————
  3. 島村軍次

    島村政府委員 ただいま御審議を願いまする獎蹄師法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  現行獎蹄師法は、昭和十五年に制定せられて今日に至つておるのでありますが、その後における諸情勢の変化によりまして、その一部の規定改正を要するものができて参りましたので、今回その不備を補うとともに削蹄及び獎蹄の一層適正な実施確保し、もつて農業生産力増強並びに運輸業の拡充に資せんとするものであります。  その内容につきまして概要を申し上げますと、第一が獎蹄師免許を受ける資格についてでありまして、現在獸医師及び獸医師免許を受ける資格のある者は、無條件獎蹄師免許を受けておるのでありますが、学校教育制度改革に伴い、新制獣医大学においては、特に獎蹄学の講義は見られず、外科学の一部として取扱われているので、新制大学卒業生及び新制大学卒業獣医師に対しましては、装蹄師無試験免許を行わないことといたし、また陸軍関係特修技術者に対する無試験免許制度もとりやめることにいたしたのであります。また一方装蹄師養成を目的とする学校卒業生については、所定の課程を修めた者は当然無試験免許を受ける資格があるのでありますが、学校教育法改正に即応して、実業学校または実業專門学校のかわりに装蹄高等学校または大学を卒業することによつてその資格を與えることにいたしたのであります。なお装蹄関係実業学校または実業專門学校本業生並びに新制大学卒業生以外の獣医師またはその免許資格者等については、昭和二十八年末までは装蹄師免許を受けられる資格が與えられますが、昭和二十九年以降からは、これらの者についての無試験免許の特典をなくしたいと思います。  第二は装蹄師業務の状況を一層的確に把握するために、装蹄師は毎年十二月三十一日現在により所要の事項を農林大臣に届け出ることといたしたのであります。  第三に行政庁の裁量による装蹄師免許の取消しまたは業務停止処分が過誤または專断により装蹄師の権利を不当に侵害することを防ぐために、行政庁がこれらの行政処分をするには、公開による聽聞を必要とすることとしたのであります。  最後に罰則の金額を現在の経済状態に適合するよう改めたことであります。  以上が本法案の概要でありますが、どうぞ愼重御審議の上御可決をお願い申し上げる次第であります。以上簡單に御説明申し上げます。     —————————————
  4. 千賀康治

    千賀委員長 次に農地調整法等の一部を改正する法律案について趣旨説明を求めます。     —————————————
  5. 島村軍次

    島村政府委員 農地調整法等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  現在の農地委員会委員任期はおおむね市町村農地委員会では八月、都道府県の農地委員会では九月に満了することになつておりますが、来るべき地方選挙においては、農地委員会委員で立候補する方々が出まして、欠員が相当できることが予想されるのであります。このような場合には、現在の農地調整法規定によりますれば、原則として補欠選挙を行わねばならぬことになりますので、任期満了六箇月前は各階層ごと定員の二分の一に至るまでは再選挙補欠選挙も行わないことにいたしたのであります。  その他選挙人名簿の据置に関する規定もございますが、以上その理由を申し上げた次第でありますので、御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。  以上簡單に御説明申し上げます。
  6. 千賀康治

    千賀委員長 ただいまの両案に対する質疑は次会合より行うことにいたします。     —————————————
  7. 千賀康治

    千賀委員長 引続きまして、これより先般国会提案になりました昭和二十六年度予算の中で、農林省関係につきまして政府より説明を承ることにいたします。
  8. 島村軍次

    島村政府委員 政府が本国会に提出いたしました農林省関係一般会計及び特別会計並びに公共事業関係昭和二十六年度予算概要につきまして御説明申し上げます。この詳細につきましては、予算案関係書類をごらん願うことといたしたいと思うのであります。その要点について政府の施策の存するところを概要説明申し上げる次第でありますので、御了承をお願い申し上げます。  まず、一般会計分については、歳出総計において昭和二十六年度は二百六十七億九千六百万円でありまして、昭和二十五年度、前国会提案いたしました補正予算額を加えて二百三十一億三千九百万円であるのに比較しますと、三十六億五千七百万円の増加となつております。国の歳出合計昭和二十五年度の六千六百四十五億七千六百万円に比し七十一億五千五百万円を減じ、六千五百七十四億二千百万円となつていることを考えあわせますと、来年度における農林関係予算重要性がおのずから明らかとなると考えるものであります。  その内容についての第一は、政府が最も重点を置きました食糧増産並びに農業振興に関する問題でありますが、まず第一に主要食糧農作物種苗対策について稻、麦、雑穀、とうもろこし、ばれいしよの原種圃施設のほか、稻一万二千町歩、麦一万町歩採種圃設置に必要な補助として二億九千九百万円、前年は一億一千六百万円であつたのでありますが、これを計上しております。  第二に、單作地帯対策でありますが、單作地帯の稻作の安定化増産目途といたしまして、温床苗代施設保温折衷苗代施設紫雲英採種圃施設、菜種の共同育苗圃についての補助五億七千七百万円を計上いたしております。次に、主要食糧農作物病害虫防除対策でありますが、特に米麦病虫害による損害を防止するため、常習被害面積稻作三十万町歩、麦作二十万町歩病害虫防除のための薬剤費及び全国播種米麦種子消毒費補助して、米百万石、麦五十五万石程度減收防止するための補助金として一億六千九百万円、前年度は一億九千五百万円で多少減少したような数字になつておりますが、二十五年度におけるジエーン、キジアの災害及び稲熱病の異常発生に伴い異常補正予算が成立したのでありまして、この減少はさような事情であることを御承知願いたいと思います。次に、植物防疫法施行につきまして、外国からの病害虫の侵入並びに国内に発生する特殊病虫害の伝播を防止し、さらに一般病虫害異常発生に対処することを目途として、ばれいしよ輪腐病の駆除、アメリカヒロヒトリの防除動力防除機具購入等に必要な経費補助として一億五千百万円を計上致しております。次に、北海道農業振興対策並び北海道開発対策でありますが、北海道農業振興のための気候、土性等天恵に乏しい北海道における農業振興目途としました心土耕及び混層耕による地方回復培養に必要なトラツクター購入補助、並びに北海道農業と不可分のてん菜糖業振興目途としたてん菜病虫害防除等を行うための補助として七千二百万円を計上いたしております。北海道開発対策としては、酸性の強い低位生産地帶に対し炭酸石灰施用による土地改良を行うための炭酸石灰購入費補助として三千五百万円を計上いたしております。次に、農業共済保険対策でありますが、末端組合事務能力を整備するため、一組合当り一名の人件費補助を二名に増加することとし、九億四千三百万円を、さらに突発災害に即応しうるため、再保險支拂い基金を農業共済保険特別会計設置し、同勘定に二十五億五百万円を計上いたしております。さらに農業共済保險特別会計への繰入れ、すなわち水陸稻及び麦に対する共済掛金のうちの、消費者負担分国庫負担とするために必要な経費として四十一億六千二百万円を食糧管理特別会計に計上いたしております。次に、農業委員会に必要な経費としまして、農民自主的意志に基いて農業振興計画農地関係調整並びに農業技術改良等を総合的に計画実施せしめるため、地方公共団体農業委員会設置することとし、そのために必要な補助十八億六千八百万円を計上しております。  第二に、農業振興と密接な関係を持ちます農業改良費及事業については、特に一市町村当り一名の設置目途として補助職員の増員を配慮し、さらに試験研究機関の充実を目途として、農業改良局関係合計十八億七千八百万円を計上いたしております。  第三に、農業生産力の向上及び農家経済の安定に密接な関係を持つ畜産振興関係でありますが、まず畜産振興の根底をなす家畜改良増殖目途とした種畜購買貸付事業種畜輸入に必要な経費のほか、人工授精施設に対する補助等に一億一千七百万円を計上しております。次に有畜営農奨励対策でありますが、有畜営農指導指定地設置自給飼料増産確保牧野荒廃防止するための牧野法施行酪農振興飼料生産指導並びに品質保全に必要な経費として二千四百万円を計上しております。次に、家畜衛生対策としまして、各種家畜疾病の予防及び撲滅、早流産の防止初生畜損耗防止人工授精普及をはかる目途のもとに、家畜衛生技術の刷新、獣医師免許審議会運営獣医師国家試験及び装蹄師免許試験実施に必要な経費として三億八百万円を計上しております。次に、重要な種畜生産地である北海道畜産を振興するための補助として九百万円を計上しております。次に、優良種帯改良増殖飼養管理貸付種付を行うほか優良純系飼料作物種子の確保をはかるために必要な種畜牧場経費として二億四千六百万円を計上しております。  第四に、蚕業振興対策でありますが、輸出振興目途として、養蚕を振興し蚕糸技術を改良する等のために一億四千三百万円を計上いたしておりますが、これらの中で特に前年に比し重点が置かれていますのは、蚕糸技術改良に必要な経費一億百であります。  第五に、林業振興対策でありますが、森林資源の培養、国土保全目途として林業改良普及森林協同組合設立指導及び育成、ならびに造林促進等でありまして、それぞれ前年度に比し増額されております。林野関係で、昭和二十六年十一億九千六百万円と、前年十五億四千万円に比し予算額減少しましたのは、主として薪炭需給調節特別会計整理に伴うものでありまして、実質的な減少ではないのであります。  第六に、水産振興対策でありますが、水産増殖のために四千九百万円、その他漁業制度改革実施水産業協同組合強化等目途とし、水産関係で九億二千九百万円を計上いたしております。  第七に、農林省関係を通じまして、前年に比し著しく減額されておりますものを申しますと、臨時物資需給調整法関係の統制のための費用、自作農創設特別措置法に基く既墾地調整森林資源造成法に基く農林中央金庫に対する造林費立替金支拂い減少薪炭需給調節特別会計関係経費等であり、いずれも実質的な経費の削減ではないのであります。  以上をもつて一般会計についての説明を終ることとし、次いで農林省所管特別会計関係について申し述べることといたします。  第一に、食糧管理特別会計についてでありますが、次のような食糧統制についての構想の下に予算案を準備いたしております。まず、麦類需給の安定に伴い、昭和二十六年度産麦については強制供出制をとりやめ、農民売渡し申込みに応ずる一定価格による政府買入制とすること。次に、十一月以降は、米のみについて成人一人一日当りおおむね一合五勺の配給を行うこと。次に、生産者価格は、パリティ指数一九五に特別加算額を加え、対米価比は小麦、裸麦六四%、大麦五四%とすること。次に、昭和二十六年産米についての早場奨励金を三十億円とすること。次に消費者価格昭和二十六年一月以降、精米十キロ五百十五円、小麦粉十キロ四百二十五円、精麦は十キロ四百円、輸入精米は十キロ四百六十五円とすること。次に、輸入米麦全量政府が買い入れて管理するものとし、輸入補給金は二百二十五億円とすること。次に年度末における食糧証券発行限度を、前年度の千百八十億円から千二百四十億円に引上げること。次に所謂インベントリファイナンスは行わないこと。次に従来公団において取扱つていた砂糖及び原穀麻袋業務政府で行うこととして、これに必要な経費を計上いたしております。右のような方針のもとに、歳入歳出とも五千五百六十三億四千五百万円を計上いたしております。  第二に、国有林野事業特別会計についてでありますが、まず、植伐均衡の原則にのつとり正常伐採量四、二八八、万六千石の伐採を行い、他方造林事業林道事業の強化によつて造林を進捗するとともに奥地林開発重点をおくものとする。造林林道種苗養成等に対する投資は九十六億九百万円を予定し、そのうち前年度において米国日援助資金特別会計から受入れた三十億円については二十六年度においては預金部から受入れることとする。右に基いて歳入歳出とも百四十四億三千百万円を計上いたしております。  第三に、農業共済保險特別会計についてでありますが、まず、補正予算によつて特別会計赤字を補填する方式が時期的ずれを生じて不合理であるので、これを是正するために二十五億円の支拂基金を設定いたしまして支拂の円滑を期しております。さらに、本特別会計赤字の原因が一面麦の共済掛金率の低位に存することにかんがみまして、二十六年四月以降これを一、五〇八%から四、五五三%に引き上げることといたしました。右に基きまして農業勘定では歳入歳出とも八十億千百万円を計上いたしております。次に家畜勘定でありますが、牛馬の市場価格の値下りを見込むほか、加入予定数増加及び共済掛金率増加を考慮いたし、歳入歳出をそれぞれ十億三千百万円といたしております。業務勘定については別段取立てて申すべき点もありません。  第四に、自作農創設特別措置特別会計についてでありますが、昭和二十五年七月三十日までに完了していない既墾地五町歩未墾地六万八千四百四十二町歩政府による買收を行い、既墾地五町歩未墾地二十一万九千三百町歩牧野十四万四千九百六十五町歩売渡しを行うことといたします。  自作農創設維持特別措置法及び農地調整法適用を受けるべき土地譲渡に関する政令第二條の規定によつて強制譲渡の対象となるもののうち、国の買收が予定される三千町歩及び同政令第八條の規定によつて、競売を申出た者が政府に買い取ることを申し出ると予想される一千町歩政府において買い取ることといたしております。  創設された自作農自作をやめる場合、「自作農創設特別措置法及び農地調整法適用を受けるべき土地譲渡に関する政令」の施行による農地価格の改訂の結果自作をやめる者が受ける不当な利益を同政令第三條に基いて国に納入せしめる差金收入を九千百万円予定しておりますほか、同様に牧野についても差金收入を三百万円予定しております。前述の政令によつて二十六年度をもつて自作農創設特別措置法による農地等政府買入及び売渡しは打切られることとなりますので、農地等売渡し收から買收対価を控除した歳入超過額等一般会計に繰入れることにいたしております。  なお、本特別会計予算とは無関係ですが、農地証券繰上償還の残で、昭和二十六年度に繰り越されるものは、約四億円であります。右の様な構想に基いて、歳入を二十億五千七百万円、歳出を二十億五千七百万円と計上いたしたわけであります。  第五に、開拓者資金融通特別会計についてでありますが、開拓地入植者に対する営農資金共同施設資金及び昭和二十一年、二十二年度入植者でいまだ本融資を受けていないものに対する家畜導入資金として貸付金十四億二千三百万円を予定し、その財源を前年度同様一般会計から繰入れることといたしました。右のほか、昭和二十一年より二十三年に至る間に貸付財源調達のため、発行された国債の利子支拂いのために必要な財源一億五千万円も一般会計から繰入れることとしております。右のような方針歳入歳出とも十六億六千六百万円計上しております。  第六に、森林火災保險特別会計についてありますが、保險料收入、未経過保險料無事もどし金支拂い財源に充てるための前年度繰越資金受入れ等歳入人件費及び事務費等歳出を計上し、歳入歳出ともに七千九百万円といたしております。  第七に、漁船再保險特別会計は、再保險料收入、未経過保險料等歳入事業運営に必要な人件費事務費等歳出を計上し、歳入歳出ともに三億一千万円といたしております。  第八に、国営競馬特別会計につきましては、競輪との競争、一般購買力低下等を見越して歳入減少を見込むことといたしまして、投票券勘定歳入歳出四十九億円、業務勘定歳入歳出十三億三千七百万円といたしております。  第九に、農業林業水産業等原始産業生産基盤を強化することを目途とし、長期かつ低利な金融の道を開くことといたしまして、一般会計米国対日援助見返資金特別会計及び大蔵省預金部資金特別会計からの繰入金を財源として農林漁業資金融通特別会計設置することといたしました。昭和二十六年度におきましては、とりあえず一般会計か二十億円、米国対日援助見返資金特別会計から四十億円を支出し、その合計六億円を土地改良、小水力発電造林林道漁港北海道魚田開発等重点的に融資する計画でありますが、この融資補助金及び自己資金と合体されて計三百六億円程度事業量が完遂できることとなるのであります。  次に、公共事業費について申上げます。公共事業費の総額は昭和二十五年度の九百七十億に比し百十億増加された千八十億円となつておりますが、昭和二十五年度は見返り資金に百十億を見ており、昭和二十六年度はこれが困難な状態にあるので、これを考慮すれば昭和二十五年度と同額と言えるのであります。このうちの農林省関係のものについて申し上げたいと存じます。  まず、災害復旧関係を除いた一般公共事業費五百七十六億九千五百万円のうち農業部門においては、前年に比し三十六億九千三百万円増の百二十一億九千三百万円であります。林業においては、同じく十三億九千三百万円増の五十九億四千二百万円、水産においては、五億七千四百万円増の十三億二千四百万円それぞれ計上されております。  右によりまして昭和二十六年度中の実施を期しております事業のおもなるものの概要は次の通りであります。もちろん今後地区別に決定されて行きますので、各事業間に動きが生じますことは、あらかじめ御承知願うこととして、まず農業の百二十一億九千三百万円については、開墾に四十三億三千二百万円を投じ、新たに六千五百戸を入植せしめ、既入植者と合せて約三万六千町歩開墾を行い、また建設工事では前年同様六地区の大規模国営開墾継続地区である十八地百区の国営開墾、二千二百十七地区代行開墾及び前年同様の二千町歩の小団地補助工事のほか、新規事業として二万八百町歩新規開墾地酸性土壌改良を行い、農村人口圧力緩和適正規模農業の確立を目標に食糧増産に寄與いたしたいと存じております。干拓に十七億七千四百万円を投じ、二十四地区国営干拓と五十七地区に及ぶ代行干拓及び補助干拓計画し、特に残工事のうち急速に効果の上るものに重点的にこれを施行せんとするものであります。農業生産力増強を行うため、灌漑排水に四十九億四百万円を投じ、総合灌漑排水継続分地区新規として五地区計画し、国営轄灌漑排水については五十九地区府県営大規模灌漑排水については百七十九地区府県営小規模灌漑排水については百四十五地区団体営潅漑排水として四十三地区計画しております。土地改良に三億四千五百万円を投じ、温水施設六十三地区暗渠排水施設については百六十七地区、客土については四十五地区、その他区画整理百四地区シラス地帯土壌保全工事地区計画しております。このほか防災施設として二億四千二百万円を計上し、これにより防災ため池十七地区旱害恒久施設地区干拓堤塘五十地区の補強などを行うものであります。  林業重要性については申し上げるまでもありませんが、二十六年度の五十九億四千二百万円の内訳は、民有林造林に二十一億六千四百万円を投じ、二十八万四千町歩造林計画を期しております。またそれと同時に造林費の一時支出と、森林資産長期固定という不利な経済事情にあるこの事業に対して、以上のような計画のもとに造林計画を期しておるのであります。公有林野官行造林に一億六千四百万円を投じ、千五百町歩造林と補植二千町歩、撫育五万町歩を行い、治山事業に二十七億七千百万円を投じ、二万七千町歩の治山を計画し、河川の水源地帯保全をはかり、国土荒廃防止を行わんとするものであります。林道については木材の正常伐採と里山の荒廃防止のため七億七百三万円を計上し、民有林開発林道千六十二キロ、奥地林開発林道七百九十一キロ、北海道における林道七十九キロを計画しております。  水産の十三億二千四百万円については、漁港については新規港数はいまだ決定をしておりませんが、継続分としては百三十六港を計画し、漁業生産の増強をはかり、漁民生活の安定を期するものであります。このほか魚田開発及び作業船の整備を新規事業として計画しております。  災害復旧関係は、総額において前年度に比し七十億円減の四百億円となつておりますが、このうち農林省関係の配分については、農業は前年に比し十二億五百万円増の八十三億七千二百万円、林業は前年に比し十六億五千九百万円増の二十億五千八百万円、水産は前年に比し一億七千三百万円減の四億三千四百万円となつております。  以上をもつて事項別の大要の説明をいたしたのでありますが、政策的観点からこれを概観いたしますと、農業の振興及びその生産力の増強のためにする補助施設の重点施行、米価対策における特別加算制の実施等、興農増産施策の強化が目立つておりますし、また農業振興関係の深い畜産の振興にもできるだけの経費を注ぎ、蚕糸水産、農地、食糧、林野をも含める日本経済の安定と自立のための財政政策のもとにおいて、それぞれ所を得た予算が計上されていると考えるものであります。冒頭に述べましたように、総予算中における農林省関係予算のウエイト、特に農業政策関係予算のそれが増大いたしておりますことは、今日農業政策が非常に重要な段階に到達しているとともに、それに副応した政府の決意が現われているとも言えるかと思うのであります。  最後に痛切な要望のありました農林水産業に対する長期資金の確保につきまして、前に申し上げました通りに、遂に特別会計による農林中央金庫の活用が実現されることとなりましたことは、農林政策に画期的な重要政策の一つが新たに登場したものと考えますが、以上各項の施策によつて昭和二十六年度をもつて農林政策の新生の年となし得る基盤をなし得るものかと考えるのであります。  以上金額は百万円をもつて打切つて説明いたしましたが、御了承場願い、私の説明を終ることにいたします。     —————————————
  9. 千賀康治

    千賀委員長 この際装蹄師法の一部を改正する法律案、並びに農地調整法等の一部を改正する法律案について質疑を行うことにいたします。  最初に装蹄師法の一部を改正する法律案について質疑をお許しいたします。
  10. 小笠原八十美

    ○小笠原委員 ちよつと政務次官に……。これは御質問を申し上げるということになるか、あるいはまた御注意申し上げることになるかわからぬが、従来こういう法案が出て、罰則事項がある。こういうことは特に民間で提案され、法文化し、すでに二年経過したにかかわらず、その取締りに対して、各地方警察や検察庁に連絡はとらぬでおつて、放任されておる部分がある。従つて何か罰則事項に関する問題の告発があつても、取上げないというのが今日までの現象なんです。そういうものは農林省の方で通告していないことに基くものであるのじやないかとわれわれは思つておるのであります。現にこの前やつた家畜商法の取締り、これは無免許が横行した。ところが税務署が無免許に対して税金を賦課しないということで大騒ぎをやつておる。だからこういう法案が幾ら出ても、罰則事項があつても、連絡をとらないということ、取締り方面の関係者が、立ち上らぬという問題が起きておるのですが、それを特にお調べになつて装蹄師法であつても、すべて法案になつたものに対しては、特別の実行ができるように、罰則であろうと、その他のことであろうと、それぞれ手配をしないと、思わざる失態を招くような現状である、こう思うのでありまするが、一体従来できた法案に対してどういうような手続をしておるか。その内容をよくおわかりであつたら御説明願いたい。
  11. 山根東明

    ○山根政府委員 罰則の検察当局による励行が十分でないじやないかというような御意見でありますが、実は私どもが新しい法案をつくりました場合に、これを周知徹底させるために——もちろん官報で公布になりますので、形式的には全国に周知されるわけになるのでありますが、このほかにさらに大体年に一度または二度、特に国会が終了いたしました直後に、県の庶務部長なりあるいは庶務課長の会同を開きまして、新法案の説明会を開いております。ただ従来やつて来ておりまするけれども、お話のように、十分罰則の適用が励行されていないという事実は、私どもも御注意として承りまして、この法案の施行適用にあたりまして、遺憾のないように期したいと思つております。
  12. 小笠原八十美

    ○小笠原委員 局長の御説明によると、各関係県とか、課長会議とかいうことを申されたが、そうじやないのだ。取締りの警察の方、あるいは検察庁の方で、その通知をしないというのか、連絡をしないというのか、そういうことをやつて、告発しても受入れない。これはふしぎな現象だ。私はこの法案ができた以上は、通告があろうが、連絡がなかろうが、そんなものは法律によつて処断すべきものと心得ておる。これは当局もその通りに考えられるのだろうが、しかしながらそれを全然わからぬといつて、相手にせぬということがある。そこであなた方は、自分の系統的な方にだけ説明しておつて、法的措置を取行うところの官庁に対しての連絡が悪いのじやないかと思う。これは連絡がなくてもやることは当然であるから、ほつておいてもそつちが悪いと言われればそれまでだ。しかし実際に行われないということになつたらば、これはいずれの欠陥にせよ、その担当しておる関係の方には、それだけの連絡をとらぬということになるのじやないか。そういう点はどうなつておるかということを伺つておる。
  13. 山根東明

    ○山根政府委員 従来罰則を規定いたしました法案が公布になりますと、特に検察当局へ連絡することはお話のようにいたしていなかつたのであります。ただせつかくできました法案の罰則が適用されないで、非常に弊害を生ずるような事態がありますれば、検察当局の注意を喚起することにはやぶさかでない気持でおるわけであります。そういう事態がありますれば、また私どもの方で調査の結果わかりますれば、そういう措置をとりたいと思います。
  14. 小笠原八十美

    ○小笠原委員 調査の結果ではないが、家畜商のごときは全国で無免許が横行して、告発しても受入れないという現状であるのだから、無免許を急速に取締ることをそれぞれの官庁に連絡をとつて、急速に局長名か大臣名による通牒を発してもらわなければ困る。  次に獣医師装蹄師法の関係でありますが、これは従来、あまり学問の方の問題でなく、技術的に熟達した連中が各地方にたくさんある。それが試験制度は二十八年まで、二十九年から試験を受けられないということになると、やはり試験的な関係だと、相当学力問題も加わることと思うのだが、従来のように、手腕力量等、学問を除くほかのものが備わつておるのはどうなるのだ。この点は今度の立法の中において、今の御説明には詳しくなかつたのですが、その点について伺いたい。
  15. 山根東明

    ○山根政府委員 改正案の内容について、なお若干御理解の足りない点もあるようでありますから、もう一度御説明申し上げますと、二十八年の暮れまでの猶予期間を設けましたのは、従来の制度による獣医師である者は無試験免許をやつておるわけであります。ただ農林省へ申請して、登録を受ける必要があつたわけであります。もう一つ、軍隊の乗馬部隊等でテツチンの免状をもらつて帰る人がおるわけでありますが、これも無試験免許を與えておつた。そしてやはり農林省へ申請して、登録を受ける必要があつたわけでありますが、特に陸軍部隊の者につきましては、すでに陸軍がなくなりましてから何年かたつておるわけでありますので、いつまでもそういう規定を設けておくのもおかしいじやないかということで、一応これを削る。但し削つたその日から、そういう人たちが、従来申請をしなかつたために、せつかく技倆がありながら、免許が受けられぬということでは気の毒だということで、そういう人たちは二十八年の暮までに農林省に申請してをもいたいということで、猶予期間を置いたのであります。獣医師につきましても、今後の獣医師学校で蹄鉄工の学科が十分行われないということに実は新制獣医師制度ではなつておりますので、これらには免許を與えない。ただ古い獣医師で、従つて学校で蹄鉄の勉強をしていた連中につきましては無試験免許を與える。しかしこれも二十七年の暮までに申請をしてもらいたい。そこで私どもの方では事務的な整理期間をそういうことにいたしまして、それまでに申出があれば無試験免許されるという考えであります。さらに今後におきましては、そうした資格のいかんにかかわらず、試験制度はずつと引続いてやつて行きたい。この場合蹄鉄は主として技工の問題であるから、むずかしい試験にはなかなか合格できぬ人があるつて気の毒じやないかというような御趣旨だと思うのでありますが、お話のように蹄鉄は技工が主でありまして、実は私どもの万も、そういう意味で学説の試験は実はやるわけですが、しごく簡單な問題でやつておるようでありまして、主として実地試験といいますか、そういうものに重点を置いて試験をやるわけでありますので、技倆がそこまで進む程度の能力のある人であれば、学科試験もそう特にむずかしい試験はやつていないのでありますから、御心配の点もそうはなはだしいものではないんじやないか、こういうふうに考えております。
  16. 小笠原八十美

    ○小笠原委員 いやそこで心配が出て来る。技工に重点を置くということはごもつともな話であります。ところが技工を試験するに足る試験官が一体日本のどこにあるか、それが問題です。現在第一ひん曲つた馬の足をまつすぐに伸ばす癖がある。そういうものを偉いと言つて技工の資格を與えておく癖がある。それが結局馬に故障を與える一番の原因になる。ひん曲つた足というものは曲つたなりに削蹄しなければいけない。何年もかかつてそれを元にもどすという方法をとらないとだめなんです。それを急速にまつすぐにやつたのは技工の最も下手なものである。ところが今の試験官の中には、少しでも曲つたら絶対に試験に及第させないという試験官が多い。そういうわからない者ばかりおるので、それが心配なんです。そこのところをあなたは実際おわかりになつておるのだろうか。局長さん、あなたもしろうとだろうが、この問題は大分めんどうな問題ですよ。職医師さんたちに試験をさせたら、たいへんなみそになる。この点が非常にあぶない。私は別に法案について反対もせぬけれども、いざ試験ということになつたならば、試験を行う試験官をさらに試験して、それから踏み出すということにならないと、全国的に非常にまずいことになりますから、その点ひとつ十分に注意して、試験を担当される方をお選びになつていただきたいと思うのであります。
  17. 原田雪松

    ○原田委員 本案は大体簡單なのでありますが、内容はいろいろあると思うのです。すでに装蹄師の問題は装蹄師学校に入つて免許を受けられるか、受けられないか、非常に今の在学生は不安の念とともに、この法案の通過を期待いたしておるのであります。しかも参議院を通過して衆議院に付託された問題でありますので、趣旨において大体賛成でありますが、この際二、三お尋ねしておきたいと思ます。  第一点は、ただいま装蹄師の数はデーターでいただきましたが、この中で学校を出た装蹄師が何人おるか、それから軍出身の装蹄師が何人おるか、これをあとでお知らせ願いたいと思う。今小笠原委員からお話がありました通り、牛も馬も要するにいろいろ用役によつて関係が違いますけれども、昔からのことわざに、つめなければ馬なしということがありますが、つめがしつかりしていなければ使役に耐えられない。だから装蹄師の職責は能率上にきわめて大なる影響を與える性質のものである。そういう意味から、技術の点も非常に重く見まして、蹄鉄工から装蹄師という肩書を付與したものと思います。これは開業獣医師ももちろん相当やつているのもありますが、主として現在やつておりますのは、学校出よりも軍隊出の方が多いように考えられます。しかも軍隊出の長い経験をした人が地方に帰られてやる場合も、学説とかけ離れた我流をやる装蹄師がたくさんあるのであります。装蹄というものの完全をはかる上において、全国的にブロックで講習会をやられる。そうして完璧を期する必要があると思うが、その点について畜産局長はどう考えているか。  それから届出制に今度はなるようでありますが、これは非常にいいことでありますが、今までは届出制ではなかつた。ところが届出の点において職医師方面もなかなか思うように集まらない。それで届出の場合に届出なければどうするというような罰則を設けるかどうか。これはなかなか困難が伴う問題であることを事実において知つております。やるならば最も簡便な方法に基いて、届出を周知させる方法とは、どういう内容であるか承りたいと思つております。  それから重要な問題は、この二十九年度で獣医師に無試験免許を渡さない。その他のものも一応整理するというようなお話でありますが、装蹄師学校の学生の問題はどうなるか。日本に幾ら学校があつて、これからどの程度卒業生を出す予定であるか。この際伺つておきたいと思います。  なおこの法文ですと、獣医師はあま装蹄師をやる者はないので、何だか念頭に置いていないような感じがするのであります。しかし獣医師の開業試験の場合に総点数を五十点以上とらなければならない。ところが獣医の方は学術実地ともに優秀な成績の合格者がおる。ところがこれが遺憾ながら五点点数が足らぬ、こういう者を落第に入れてある。一生それに身を捧げようという獣医師が、装蹄師は別にこういう法律でもつくつて行くという際、そういう者を落すということは、試験委員の親心がないと言いたい。今現に泣いて歎願する者が数人おります。こういうことはよほど考えていただかなければならぬ問題ではないかと思う。少くとも獣医師装蹄師まで兼業する者はございません。ただその專門外でやつてもやらぬでもいいようなものの点数がちよつと落ちたからということで落第点とみなすことは、そこにはまことに温情味がないのではないか、こういうことはこの後もいろいろな問題であるかもしれない。当局はよほど考えを新たにしてもらわなければならぬと私は思うのであります。そういう意味から、私どもはこの装蹄師法案が別途の形に出ることはまことに賛成である。しかしながら今申し上げました通り、開業獣医師で現に兼業でやつておるものがたくさんおりますが、これの兼業の整理をよく考えてやつてもらいませんと、医者としての資格を持つた自由業の獣医師でさえ届出を怠る点がたくさんあるのであります。これは統計等をおとりになるにしましても——これはとられることは私は必要であると思うが、そこでよほど手かげんをしてもらわなければ、結局そういう点がまた不明瞭になつて、この統計というものは現われないようになりはしないか、その点についての当局のお考えを一応お尋ねして、次に質問を続けたいと思います。
  18. 山根東明

    ○山根政府委員 装蹄師の現在の数字に関する統計はお手元に差上げてありますが、大体これを集計いたしまして七千四、五百ではないかと思います。このうち、はつきりいたしませんけれども、学校卒業者は二割くらい、あとの八割くらいが軍隊の修業者及び国が行います試験に合格した者であろうかと推定いたしております。  次に届出の問題でありますが、これにつきましては、獣医師法にも同じに制度を設けまして、この数字もお手元の資料にお配りしてありますが、昨年暮の現在をもつて届出をやつて、届出制度実施しておるわけでありまして、おそらく百パーセント届出が励行されたということではなかろうかと思うのでありますが、蹄鉄工につきまして法律ができまして、本年の暮の現在で届出を開始されるわけでありますが、これにつきましてはその間に私どもで十分この趣旨を徹底させまして、できるだけの励行をはかつて行きたい。なお届出を怠つた者に対しましては、新しい規定でもつて免許の取消しができ得るという規定もあります。また罰則の規定適用になるわけでありまするので、そういう点からも十分徹底をいたしたいと考えております。  それから新しい制度で装蹄を教えております学校、今度の法律によりまして卒業生が無試験免許を受け得る資格をとられます学校は、現在のところ東京にあります日本装蹄高等学校だけであります。将来こうした学校がはたしてどの程度できますかは予測いたしかねますけれども、あるいは必要によりましてはさらに設立をみることも考えられると思いますが、現存のところでは日本装蹄高等学校一つであります。  それから過般の獣医師試験に装蹄の科目を設けて、それがふできであつたために、せつかくの獣医師獣医師試験に合格できなかつたような事例が二、三あるようなお話でありますが、実は獣医師試験につきましては、御承知の獣医師国家試験施行に関しまする免許審議会が、試験内容を專門的な見地から相談をいたしまして、そうした試験科目を決定したわけでありまして、お話のような気持も私どももせぬわけでもないのでありますけれども、そうした権威ある機関に諮つて決定いたしましたものに基いて施行をいたしたわけでありますので、最後にチャンスに漏れた方にはたいへんお気の毒ではありますけれども、かりにその人の救済を考えるということになりますと、獣医師資格ということのほかの面で考えて行くよりどうもいたし方ないのではないかというようなことを考えておるわけであります。
  19. 原田雪松

    ○原田委員 今の試験の問題はあとの祭りですから、深く言つても同じと思いますのでやめます。この提案理由の中にも、農業生産力増強に役立つ、こういうことが書いてある。この点をお伺いしたい。それから装蹄師の職務の範囲、つまり削蹄技術というものがあるのでありますが、それは馬のみに限定するのであるか、あるいは各種の動物を網羅して装蹄師がやるようにするのであるか、その点についてお伺いしたい。
  20. 山根東明

    ○山根政府委員 先ほど小笠原委員からもお話がありましたように、つめをうまくつけることは、馬の能率、寿命を健全に保持して行くために非常に必要なことでありますので、新しい装蹄師法によつて装蹄師の資質の向上あるいは現状を把握することによつて、私どもが畜産行政会全般の一つの資料にして行きたいというようなことから、新しい装蹄師法が農業生産力増強に一役買い得るというような趣旨で、提案理由において御説明を申し上げたわけであります。それから第二の点は、これも法律ではつきりいたしておりますが、装蹄師でなければ、馬については削蹄、装蹄ができない、牛については装蹄ができないことになつております。それ以外の動物の装蹄、削蹄は、これは装蹄師以外の者でもやつていいという建前になつております。
  21. 原田雪松

    ○原田委員 装蹄は装蹄師でやるということはわかります。削蹄の面でありますが、全国の家畜は、大家畜だけでも、牛でも二百三十万、馬も百万はいる。それが削蹄をやらないものが少くとも七割あるいは八割はあるのじやないかと思う。そうしますと、そういうものを使役します場合には、つめの削蹄をうまくやらないために、農業生産力の使役の面に非常な弊害を来しまして、能力的にならないというのが実験的にたくさんあるわけであります。そういうものは、装蹄師でなくてもかつてにやつてよろしいというわけなのですか、その点をもう一度伺います。
  22. 山根東明

    ○山根政府委員 馬の削蹄は装蹄師でなければやつてはいかぬ、牛の削蹄は装蹄師でなくてもやつていい、これは現行法の通りを引続いてやつて行きたい、こういうことであります。
  23. 原田雪松

    ○原田委員 たとえば自分の部落に装蹄師がいない、二里も三里も引いて行かなければ削蹄ができないというような面が、全国にはたくさんある。装蹄だけは装蹄師がやるという限界をもつて、削蹄はほかに実験家があるならばやらしてもいい。あるいは百姓が、こういう足をして、こんなげたをはいてはつまらぬじやないかというので、自分でかまで切つてやる、こういうことでなければ——これは装蹄師にやらせなさい、なぜお前はかつてに切つた、お前は罰金だ、こういうことになるならば、これは私は実質的に悪い法律だと思う。だからその点は、牛でも馬でもその他のものでも、少くとも装蹄は装蹄師がやる、削蹄は自由放題だということにしてもらいたい。そうでなければ実際いうたら困る。これはあなた方東京におられるからおわかりにならぬが、いなかへ行くと、もの知りとか家畜商とか、あるいは畜産の熱心家は自分で切つてやる。それをお前はなぜ切つたか、装蹄師の規則があるじやないかと言われると、かえつてこの法律はマイナスである。その点をはつきりしていただきたい。
  24. 山根東明

    ○山根政府委員 この点は、実は私もあまり技術的なことは詳しくわからない点もありますけれども、おそらく馬の削蹄は牛の削蹄とある程度技術的にも困難な点があり、従つてこれをまつたくのしろうとがかつてにやれるということにしておいたのでは、せつかくりつぱな馬もそこからつぶれて行くというような点があるために、現在の法律ができたものと思つております。ただお話のように、非常に不便な所で、装蹄師が三里も五里も離れた所でないといない。自分で削りたくてもこれが削れないということにはなつていないのでありまして、装蹄師にあらざれば業務となすことを得ずということになつておりますので、たとえば自分の馬を自分で削蹄するというようなことは、この法律の條項に反しないわけでありまして、業務としてするのでなければ、たとえば自分の馬を自分でやる、あるいは隣の馬をときたまそういう必要があつた場合に、お手伝いで削蹄をしてやるという程度であれば、そうした技能のある人であれば、これはやつてよいというふうに考えられます。
  25. 原田雪松

    ○原田委員 そこがどうも私ピンと来ないのですが、たとえば種畜牧場あるいは種畜分場というものがある、そういう所に技術者がおつて、ひづめの削蹄をしなければならぬということで、もうすでに講習会をやつておる。そういう場合に、牛馬を寄せて、集団的に獣医が削蹄をやるのがあります。現にやつております。これは業務でないのですか、地方によつて違うのですけれども、九州あたりでは馬立てと昔から言つている。そういうものをもつて削蹄にかえておる、その方が喜ぶ。周期的に農繁期前に年に三回なら三回、ちやんと部落別に寄せまして装蹄師は雇いませんが、專門家がおつて、獣医とかあるいはその附近の駐在技術員が寄り集つて、そして削蹄をして、教えてもいる。非常によいことなんです。そういうことをやめることになりますと、これはたいへんな問題になると思う。だからそういうものを営業行為と見るかどうか、そういうものはむしろ奨励すべきものであつて、こういうものは廃止すべきものじやないと私は考えます。その点で非常に局長と私と食い違いがある。そこを何とかしてもらいませんと、私どもはこの案には賛成しかねます。
  26. 山根東明

    ○山根政府委員 お話のように、ある一定期に一定の馬を集めてひづめを削るということは、各地で行つておるよ、うでありますが、その場合装蹄師がこれに当つておるようであります。なお実は法案全体の補足的な説明の一つとして、この機会に申し上げておきたい点は、この法案につきましては、先ほども提案理由説明にありましたように、いろいろな点を改正いたしておりますが、特に緊急改正の必要のあります点は、先ほど原田委員からもお話がありましたように、三月の学校卒業生を救わなければならぬという点からであります。そういう意味から、実は装蹄師法につきましては、ただいまの点、並びにこの前できました獣医師法との比較において、罰則の点なら、あるいは欠格條項の点について、なお根本的に整理をして行く必要のある條文が若干残つておるということを承知しておるのであります。ただいまの装蹄、削蹄の問題も、私も最初おことわりしましたように、実は專門的に十分勉強いたしていない点もありますので、この法案全体をさらに根本的に検討する機会に、ひとつ十分研究させていただきたい、さように思います。
  27. 原田雪松

    ○原田委員 今の私の要求事項を考えていただけますか。
  28. 山根東明

    ○山根政府委員 研究させていただきます。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 いろいろと明らかになつた点があるのでありますが、今局長の御説明によりますと、学制の改革によつて、本年三月卒業する者を救うためにこの法律の改正案が出た、こういうことに重点が置かれておるという、それだつたら、先刻も言われましたように、七千四百名の者のうち、八〇%がいわゆる昭和二十九年からは試験にパスしなければ、無試験免許がとれなくなつて来る。いわゆる結果からみると失業という形が出て来る、そういうことになるでしよう。免許所有者で資格を有する者が一万三千三百三十六名、このうち現存やつておる者が七千四百名ということになり、そのうち八〇%がいわゆる軍隊関係で、今まで無試験でやつておつた者ということになりますと、ちようど獣医師法のときと同じような結果が必ず出て来ると思う。問題は現行法でどういう弊害があるかということ。別に弊害がなければ、学校を卒業する者に対する対策だけならば、その点だけを修正して行けばよろしいのであつて、何か現在、法を改正して、軍隊において修練をした者、あるいはその他で適格の資格をとつておる者の仕事の上において、農民に迷惑をかけたとか、農業生産力を阻害するような何か弊害ができたとかいうことであるならば、私どもはこの法案に対して理解がつくが、ただ第一点の理由だけではわれわれは了承ができない。どういう弊害があつたか、なぜ昭和二十八年度一ぱいでこれを打切らなければならないのか。その点からまずお尋ねいたしたい。
  30. 山根東明

    ○山根政府委員 多少誤解があるようでありますので申し上げます。従来無試験免許をとつておつた者、すなわち軍隊の証書を持つておる者、あるいは町医師である者、こういうものが八割くらいおるわけでありますが、この免許を二十八年限りで取上げようという趣旨ではありません。この人たちは引き続いて営業ができるわけであります。今度の法律では、従来たとえば軍隊から卒業証書をもらつて来ておつた者で、まだ農林省に申請して来てない者とか、あるいは応召して満州に行つているとか、そういうようなものが若干あるかと思いますが、大部分の人は、おそらく免許の登録を受けていると思うのであります。それで今ただちにこれらのまだ登録を受けてない人の登録の道をふさぐのも気の毒だというので、その人たちには二十八年の暮れまでに申請してもらいたい、そうしてそれに対しては無試験免許を與えよう、こういう趣旨でありますので、決してそうした人たちのやり方が悪いから免許を取上げようという趣旨ではないのであります。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 大体その点は明らかになりましたが、しかし現存行つているものは、こういう仕事は必ずしも一人ではやつておらないと思うのです。これには助手的なもの、あるいは将来装蹄師として立つて行こうというような者で、貧困な家庭に生れて、将来こういうような仕事に職を求めて行こうというような者とか、いわゆる徒弟に似た者が、やはりこういうものには付属して現在あると思うのです。これは御存じだろうと思うのです。さような者は、おそらく現在の受験資格に合うような学歴もとれないだろうと思います。現在やつている人は、今局長の御説明で一応了承いたしましたが、そういうものに対しては一体どうして行かれるのか。これは実際問題として、将来に発生して行く問題だろうと思います。
  32. 山根東明

    ○山根政府委員 装蹄師の見習をやつている人たちには、実は試験制度があるのでありまして、学歴その他で試験の制限はいたしません。どういう人であろうと、国が行います試験を受けていただいて、合格できれば免許を與えることになるわけであります。ただもつぱらそうした技術の方面ばかりやつているので、先ほど原田さんでしたかどなたかのお話にもありましたように、技術がよくてもなかなか試験に受からぬ場合もあるという心配はあるわけでありますが、そういう人たちのために、先ほど原田委員から御要望がありましたように、今後においてそうした人たちの技能の向上というような面におきましては、できるだけ機会をつくりまして、講習会なり、訓練会なり、そういうようなものをやつてつて、そうしたほんとうにりつぱな技能を持つた人が試験に出まして、免許をとつていただくというふうなことにして行きたい、かように考えている次第であります。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 今年の三月学校を卒業する人間は何人ほどあるのですか。
  34. 山根東明

    ○山根政府委員 五十人くらいあるのです。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 五十人のためにこういう法律の改正をやろうと言うのですね。しかも全面的な検討は別の機会にやるということをおつしやいましたが、それはいつなんですか。
  36. 山根東明

    ○山根政府委員 実はもう少し詳しく御説明いたしますと、日本装蹄高等学校という学校が世田谷にできておりまして、そこの新規卒業生が三月に出るわけであります。現在の法律によりますと、実業学校または專門学校卒業生に対しては、免許をやるという規定になつておりますので、日本装蹄高等学校というあの学校は、現在の規定のままでは、卒業することによつて試験免許がもらえない建前になつております。従つてわずか五十人の卒業生ではありますけれども、その点を救済するために、第一條の第四号をそういうふうに改正したいというのが法案の一つの趣旨であつたわけであります。ただいかにも、そのためにほかに非常な迷惑を及ぼすというような誤解は、まだ若干お残りのようでありますけれども、その点は、先ほど来私からお話を申し上げましたように、そのほかの人たちに非常な迷惑をかけるというふうにはならぬと思つておりますので、その点ひとつ御了承願います。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 第一條第四号の改正のみにとどめて、あとの問題については、全面的によく御検討になつてからにしてはどうか。先刻原田委員の御質問に対しては、まだ全面的な検討が足らないということを御言明になつておるのでありますから、これらは獣医師法の場合に起きた事例、その後の経過ともいろいろ関連性がありますから、全面的に総合的によく検討してからでもおそくはないのではないか。特にわれわれ最も考えさせられることは、昭和二十八年末までのことを、昭和二十六年の今この期限をちやんと区切つてしまつているということです。この間に新しい事態が起きないとも限らないわけであります。ですからこれはもう少し総合的な立場から——第四号を御修正になるのは、そういう専門の学校を出た人たちが免許がとれないということでは矛盾でありますからけつこうでありますが——他の條項等については、もう少しよく御検討になつて、確信のある御成案を得て御提案になるのが妥当ではないかという感じを持つのであります。私は專門家でもなんでもありませんが、この点について特に昭和二十八年までにこれを区切つて行くことはどうかと思う。しかし外地から帰つた者であるとか、あるいは現在開業しておらない者でも、それに対する特殊な技能があつて、中途から新しく開業しようという者にとつては、さしあたりこれは支障になつて来るわけでありますから、そういう点にもう少し一段と考慮を拂われて行くことが、ほんとうに農業生産力の向上という提案理由趣旨にも合致致することになるのではないか、たいへん意見がましいのでありますけれども、あえて私はこの点だけ申し上げて打切つておきます。
  38. 島村軍次

    島村政府委員 御趣旨の点はわかりますが、畜産局長から申し上げましたように、学校関係のことが提案理由の一つになつておりますが、提案理由にも申し上げておりますように、その他のさしあたり改正を要する点を二、三加えて改正いたすのでありまして、全文の改正をごらん願えれば、あなたの御趣旨に合うようになつております。  それから二十八年までの期限については、たびたび局長も申しまましたように、現在やつておりますものは、それまでに登録を受ければそれで救済できるわけですから、期限をゆつくり考えたということに平たく言えばなるのではないかと思いますので、さように御承知を願い、どうぞひとつ御賛成を願います。
  39. 山口武秀

    ○山口(武)委員 本案の現行法は二十三年七月十日のものですね。そこでこの法案について考えますならば、この現行法における第二條、第三條の改正案をなぜ考えられなかつたのであろうか、この点をお聞きしたいと思います。この第二條におきまして、六年の懲役または禁錮以上の刑に処せられたる者は主務大臣が免許を許可しない。それから第三條によりますと、六年未満の場合におきましては免許をなさざることを得るということが書いてありますが、一体懲役に行つたり禁錮に行つて来たりした人が馬の足を持つてつめを張つて金をもらつて生活を立ててなぜ悪いのか、この点に対する御説明を願いたい。それからこの点に対する改正の意図があるかどうかという点をお聞きしたいと思います。
  40. 山根東明

    ○山根政府委員 第二條、第三條の改正を同時になぜ考えなかつたかというようなお話のようでありますが、実は最初私が原田委員の御質問にお答えするとき、罰則なりあるいは欠格條項についてなお根本的に考え直す問題を残しておるとお断りしたわけでありますが、そういう意味でこの問題はさらに他の立法例との比較検討なり、あるいは装蹄師業の実態に即応して、いろいろ検討を要する問題があるということは私どもも考えております。そういう意味で、できるだけ早い機会に検討の結論を出しまして、これらの点も必要があれば改正いたしたい、かように考えております。
  41. 山口武秀

    ○山口(武)委員 根本的になお考える余地を残しているというような答弁を前にしておる、そういう考えに立つておるということを言われておりますが、この改正法案は現実に出されておるのです。出されている以上、これに対してどういう考えかは当然持たれたはずだろう、検討がなされたはずだろう。私の質問に対して、そういう立場におりますあなたの御意見を伺いたいと思います。
  42. 山根東明

    ○山根政府委員 現在までの研究の結論から申しますれば、現行の第二條、第三條をそのまま装蹄師免許には適用した方が適当であるという結論を得ておるわけであります。
  43. 山口武秀

    ○山口(武)委員 これをそのまま残した方がよいというのですが、なぜ残した方がよいか。なぜ懲役に服して刑を済ませて来た者に対して、このような取扱いをしなければならないか。第一装蹄師にしたならばどういう迷惑がかかるか、むしろそういうことに対して懲役終了者を特別扱いにすること自体が、人権を無規するようなことになりはしないか、その人間が装蹄師になることを妨げたり、生活をすることに対して妨害になりはしないか、私はこの点に対してはつきり伺いたいのです。
  44. 山根東明

    ○山根政府委員 装蹄師は御承知のように他人の牛馬の装蹄、削蹄を業とするわけでありますので、そういう見地から、人格的にも、技能的にも十分な資格要件を必要とするというのが現行法の考え方の前提であると思うのであります。最近新しい立法例におきましては、こうした懲役の規定等が——多分御意見もそうであろうと思うのでありますが、そういう趣旨で緩和されておるということは私ども承知しておるのでありまして、私ども今後どういう線で、これを改正して行くつもりであるということはただいままだ申し上げられませんけれども、新しいいろいろなその他の立法例等と照し合せまして、さらに装蹄業の実態をも考慮いたしまして、この点は研究を続けて行きたいとかように考えます。
  45. 山口武秀

    ○山口(武)委員 さらに研究いたしたいというならばそれはそれでけつこうだと思います。だが今の局長の意見によりますと、他人の牛馬を扱うから特別な人格を必要とするのだ、このようなことを言つておりますが、それがなぜ懲役者にとつて適格なものとしてできないことになるのか。なぜならば他人の牛馬を扱うと言いますが、人間が生きて行く以上、これは社会の一つのつながりによつて生きておるのです。社会の人との交際によつて生きておるのです。牛、馬でなくて、人間との交際によつて生きておるのです、牛、馬の足にさわることは何ら迷惑のかかることではないのです。だからそういうような考え方を私は直していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  46. 山根東明

    ○山根政府委員 私どもが将来二條、三條を検討いたします際の考え方に対する御注意として承つておきたいと申います。
  47. 横田甚太郎

    ○横田委員 第五條のことを伺います。「開業ノ装蹄師ハ馬ノ削蹄若ハ装蹄又ハ牛ノ装蹄ノ需アル場合二於テ正当ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス」これはけつこうなんです。しかしこういうような結果が農村に非常に多い。施設があつて施設を利用できないのが農村なんです。しかも日本の農村は今供出で非常に困つておる。米価は安くて、そうしておのれの飯米まで削つて、これを供出優先のために取上げられておる。社会的な出産をやつておる。だからこういう農民に対しては、あとう限りの保障をしなければならない。ところが單にこういうふうにうたつてあるだけでは農村に今まであつたところの——こういうことをしてはらないか、実態は少しも改まつていない。もし拒むような結果があつたならばいけないので、これに対する法的保障を考えられる意思があるかどうかということを、まず一点お伺いしたい。
  48. 山根東明

    ○山根政府委員 開業の装蹄師が求めに応じなかつたことに対する罰則は、現行法第十一條——金額は改まりますが、五千円以下の罰金または科料の刑が規定してあります。
  49. 横田甚太郎

    ○横田委員 法的保障というのはもつと社会的な制裁を加えてもらいたい。そういう意思があるかないかを聞きたい。たとえばこういうふうに拒まれた結果になつ農民に対しては、罰金だけでなくて、むしろ村に行つて装蹄師があやまるとか、こういう方法を改めるとか、村にはいわゆる農業協同組会とか農民組合というふうなものがあるから、そういうふうなところに対する陳謝の意を明らかにして、大衆にこういうことができないような法的保障もしてもらいたい。五千円ぐらいはやみをやつたらすぐ返つて来るのです。だからその点を改めてもらいたい。こういう点でその法的保障を聞いておるのです。
  50. 山根東明

    ○山根政府委員 これも現行法の規定にもあるのでありますが、第九條に、「装蹄師法第三條各号ノ一二該当スルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得」という規定がありますが、応招も怠つて不都合なことがありました場合に、免許の取消しという処分も考えられるわけであります。
  51. 横田甚太郎

    ○横田委員 主務大臣はけつこうなのですが、これが農業生産に奉仕するという意味において、農民からそれは許してよろしいというようなことを、主務大臣なりあるいはその官庁を経て一の主務大臣に通ずるまでは許さないそういうふうに改めていただく意思はあるかないかということを聞いておるのです。主務大臣、主務大臣と言いますけれども、主務大臣というような忙しい人が、こういう小さい犯罪に対して、どうして一々そういうことをやるものですか。そういうような目の届かないところに、いわゆる農村におけるところの不平が起り、不正が起るので、その点を聞いておるのです。農民の意思を聞いてやつて農民の意思に基いて主務大臣がそういう決定をする。そういうふうに改める意思であるのかないか、それだけ聞いてやめておきます。
  52. 山根東明

    ○山根政府委員 主務大臣が措置をとります場合には、新しい規定の第九條で、「当該装蹄師二対シ予メ期日、場所及当該処分ノ原因タル事由ヲ通知シテ公開二依ル聽聞ヲ行ヒ」云々と規定して、いわゆる公聽会の制度によつて決定して行くという考え方をいたしております。
  53. 千賀康治

    千賀委員長 お諮りいたします。装蹄師法の一部を改正する法律案に対する質疑は保留といたしまして、次会に譲り、今日はこの程度で散会したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めまして散会いたします。  次会は月曜日、五日午前十時から開きます。その他詳細は公報において申し上げます。     午後零時四十一分散会