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島村政府委員 政府が本国会に提出いたしました
農林省関係の
一般会計及び
特別会計並びに
公共事業関係の昭和二十六年度予算の概要につきまして御説明申し上げます。この詳細につきましては、
予算案関係書類をごらん願うことといたしたいと思うのであります。その要点について政府の施策の存するところを概要御説明申し上げる次第でありますので、御了承をお願い申し上げます。
まず、
一般会計分については、歳出総計において昭和二十六年度は二百六十七億九千六百万円でありまして、昭和二十五年度、前国会に提案いたしました
補正予算額を加えて二百三十一億三千九百万円であるのに比較しますと、三十六億五千七百万円の増加となつております。国の歳出合計が昭和二十五年度の六千六百四十五億七千六百万円に比し七十一億五千五百万円を減じ、六千五百七十四億二千百万円となつていることを考えあわせますと、来年度における
農林関係の予算の重要性がおのずから明らかとなると考えるものであります。
その内容についての第一は、政府が最も重点を置きました
食糧増産並びに
農業振興に関する問題でありますが、まず第一に
主要食糧農作物の
種苗対策について稻、麦、雑穀、とうもろこし、ばれいしよの
原種圃施設のほか、稻一万二千町歩、麦一万町歩の
採種圃設置に必要な補助として二億九千九百万円、前年は一億一千六百万円であつたのでありますが、これを計上しております。
第二に、
單作地帯対策でありますが、
單作地帯の稻作の安定化と増産を目途といたしまして、
温床苗代施設、
保温折衷苗代施設、
紫雲英採種圃施設、菜種の
共同育苗圃についての補助五億七千七百万円を計上いたしております。次に、
主要食糧農作物の
病害虫防除対策でありますが、特に米麦の病虫害による損害を防止するため、
常習被害面積稻作三十万町歩、麦作二十万町歩の
病害虫防除のための薬剤費及び
全国播種米麦種子消毒費を補助して、米百万石、麦五十五万石程度の減收を防止するための補助金として一億六千九百万円、前年度は一億九千五百万円で多少減少したような数字になつておりますが、二十五年度におけるジエーン、キジアの災害及び稲熱病の
異常発生に伴い
異常補正予算が成立したのでありまして、この減少はさような事情であることを御承知願いたいと思います。次に、
植物防疫法の施行につきまして、外国からの病害虫の侵入並びに国内に発生する
特殊病虫害の伝播を防止し、さらに
一般病虫害の
異常発生に対処することを目途として、ばれいしよ輪腐病の駆除、アメリカヒロヒトリの防除、
動力防除機具の購入等に必要な経費の補助として一億五千百万円を計上致しております。次に、
北海道農業振興対策並びに
北海道開発対策でありますが、
北海道農業振興のための気候、
土性等天恵に乏しい北海道における
農業振興を目途としました心土耕及び混層耕による地方の回復培養に必要な
トラツクター購入の補助、並びに
北海道農業と不可分の
てん菜糖業振興を目途とした
てん菜病虫害防除等を行うための補助として七千二百万円を計上いたしております。
北海道開発対策としては、酸性の強い
低位生産地帶に対し
炭酸石灰施用による
土地改良を行うための
炭酸石灰購入費補助として三千五百万円を計上いたしております。次に、農業の共済再
保険対策でありますが、末端組合の事務能力を整備するため、一組合当り一名の
人件費補助を二名に増加することとし、九億四千三百万円を、さらに突発災害に即応しうるため、再保險支拂い基金を
農業共済再
保険特別会計に設置し、同勘定に二十五億五百万円を計上いたしております。さらに
農業共済再
保險特別会計への繰入れ、すなわち
水陸稻及び麦に対する
共済掛金のうちの、
消費者負担分を
国庫負担とするために必要な経費として四十一億六千二百万円を
食糧管理特別会計に計上いたしております。次に、
農業委員会に必要な経費としまして、農民の
自主的意志に基いて
農業振興計画、
農地関係の調整並びに
農業技術の改良等を総合的に計画実施せしめるため、
地方公共団体に
農業委員会を設置することとし、そのために必要な補助十八億六千八百万円を計上しております。
第二に、
農業振興と密接な関係を持ちます
農業改良費及事業については、特に一
市町村当り一名の設置を目途として補助職員の増員を配慮し、さらに
試験研究機関の充実を目途として、
農業改良局関係で合計十八億七千八百万円を計上いたしております。
第三に、
農業生産力の向上及び農家経済の安定に密接な関係を持つ
畜産振興の関係でありますが、まず
畜産振興の根底をなす家畜の
改良増殖を目途とした種畜の購買、貸付の事業、種畜の輸入に必要な経費のほか、
人工授精施設に対する補助等に一億一千七百万円を計上しております。次に有畜営農の
奨励対策でありますが、
有畜営農指導指定地設置、自給飼料の増産確保、牧野の荒廃を防止するための牧野法の施行、
酪農振興、飼料の
生産指導並びに品質保全に必要な経費として二千四百万円を計上しております。次に、
家畜衛生対策としまして、
各種家畜疾病の予防及び撲滅、早流産の防止、初生畜の損耗防止、人工授精の普及をはかる目途のもとに、
家畜衛生技術の刷新、
獣医師免許審議会の運営、
獣医師国家試験及び
装蹄師免許試験の実施に必要な経費として三億八百万円を計上しております。次に、重要な種畜の生産地である北海道の畜産を振興するための補助として九百万円を計上しております。次に、優良種帯の
改良増殖、飼養管理、貸付、種付を行うほか優良純系な
飼料作物種子の確保をはかるために必要な種畜牧場の経費として二億四千六百万円を計上しております。
第四に、
蚕業振興対策でありますが、
輸出振興を目途として、養蚕を振興し蚕糸の技術を改良する等のために一億四千三百万円を計上いたしておりますが、これらの中で特に前年に比し重点が置かれていますのは、蚕糸の
技術改良に必要な経費一億百であります。
第五に、
林業振興対策でありますが、森林資源の培養、国土の保全を目途として林業の
改良普及、
森林協同組合の設立指導及び育成、ならびに造林の促進等でありまして、それぞれ前年度に比し増額されております。
林野関係で、昭和二十六年十一億九千六百万円と、前年十五億四千万円に比し予算額が減少しましたのは、主として
薪炭需給調節特別会計の整理に伴うものでありまして、実質的な減少ではないのであります。
第六に、
水産振興対策でありますが、水産増殖のために四千九百万円、その他
漁業制度改革の実施、
水産業協同組合の強化等を目途とし、
水産関係で九億二千九百万円を計上いたしております。
第七に、
農林省関係を通じまして、前年に比し著しく減額されておりますものを申しますと、
臨時物資需給調整法関係の統制のための費用、
自作農創設特別措置法に基く既墾地の調整、
森林資源造成法に基く農林中央金庫に対する
造林費立替金支拂いの減少、
薪炭需給調節特別会計関係の経費等であり、いずれも実質的な経費の削減ではないのであります。
以上をもつて
一般会計についての説明を終ることとし、次いで
農林省所管の
特別会計の関係について申し述べることといたします。
第一に、
食糧管理特別会計についてでありますが、次のような食糧統制についての構想の下に予算案を準備いたしております。まず、麦類の需給の安定に伴い、昭和二十六年度産麦については
強制供出制をとりやめ、農民の売渡し申込みに応ずる一定価格による
政府買入制とすること。次に、十一月以降は、米のみについて成人一人一日当りおおむね一合五勺の配給を行うこと。次に、
生産者価格は、
パリティ指数一九五に
特別加算額を加え、対米価比は小麦、裸麦六四%、大麦五四%とすること。次に、昭和二十六年産米についての
早場奨励金を三十億円とすること。次に
消費者価格は昭和二十六年一月以降、精米十キロ五百十五円、小麦粉十キロ四百二十五円、精麦は十キロ四百円、輸入精米は十キロ四百六十五円とすること。次に、輸入米麦は全量政府が買い入れて管理するものとし、
輸入補給金は二百二十五億円とすること。次に年度末における食糧証券の発行限度を、前年度の千百八十億円から千二百四十億円に引上げること。次に
所謂インベントリファイナンスは行わないこと。次に従来公団において取扱つていた砂糖及び原穀麻袋の業務を政府で行うこととして、これに必要な経費を計上いたしております。右のような方針のもとに、
歳入歳出とも五千五百六十三億四千五百万円を計上いたしております。
第二に、
国有林野事業特別会計についてでありますが、まず、植伐均衡の原則にのつとり
正常伐採量四、二八八、万六千石の伐採を行い、
他方造林事業、
林道事業の強化によつて造林を進捗するとともに
奥地林開発に重点をおくものとする。造林、林道、
種苗養成等に対する投資は九十六億九百万円を予定し、そのうち前年度において米国対
日援助資金特別会計から受入れた三十億円については二十六年度においては預金部から受入れることとする。右に基いて
歳入歳出とも百四十四億三千百万円を計上いたしております。
第三に、
農業共済再
保險特別会計についてでありますが、まず、
補正予算によつて本
特別会計の赤字を補填する方式が時期的ずれを生じて不合理であるので、これを是正するために二十五億円の支拂基金を設定いたしまして支拂の円滑を期しております。さらに、本
特別会計の赤字の原因が一面麦の
共済掛金率の低位に存することにかんがみまして、二十六年四月以降これを一、五〇八%から四、五五三%に引き上げることといたしました。右に基きまして
農業勘定では
歳入歳出とも八十億千百万円を計上いたしております。次に家畜勘定でありますが、牛馬の市場価格の値下りを見込むほか、
加入予定数の増加及び
共済掛金率の増加を考慮いたし、
歳入歳出をそれぞれ十億三千百万円といたしております。
業務勘定については別段取立てて申すべき点もありません。
第四に、
自作農創設特別措置特別会計についてでありますが、昭和二十五年七月三十日までに完了していない
既墾地五千町歩、未墾地六万八千四百四十二町歩の政府による買收を行い、
既墾地五千町歩、未墾地二十一万九千三百町歩、牧野十四万四千九百六十五町歩の売渡しを行うことといたします。
自作農創設維持特別措置法及び
農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令第二條の規定によつて、強制譲渡の対象となるもののうち、国の買收が予定される三千町歩及び同政令第八條の規定によつて、競売を申出た者が政府に買い取ることを申し出ると予想される一千町歩を政府において買い取ることといたしております。
創設された自作農が自作をやめる場合、「
自作農創設特別措置法及び
農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令」の施行による
農地価格の改訂の結果自作をやめる者が受ける不当な利益を同政令第三條に基いて国に納入せしめる
差金收入を九千百万円予定しておりますほか、同様に牧野についても
差金收入を三百万円予定しております。前述の政令によつて二十六年度をもつて
自作農創設特別措置法による農地等の政府買入及び売渡しは打切られることとなりますので、農地等の売渡し收入
から買收対価を控除した
歳入超過額等は
一般会計に繰入れることにいたしております。
なお、本
特別会計の予算とは無関係ですが、農地証券の繰上償還の残で、昭和二十六年度に繰り越されるものは、約四億円であります。右の様な構想に基いて、歳入を二十億五千七百万円、歳出を二十億五千七百万円と計上いたしたわけであります。
第五に、
開拓者資金融通特別会計についてでありますが、開拓地の入植者に対する
営農資金共同施設資金及び昭和二十一年、二十二年度入植者でいまだ本融資を受けていないものに対する
家畜導入資金として貸付金十四億二千三百万円を予定し、その財源を前年度
同様一般会計から繰入れることといたしました。右のほか、昭和二十一年より二十三年に至る間に
貸付財源調達のため、発行された国債の
利子支拂いのために必要な財源一億五千万円も
一般会計から繰入れることとしております。右のような方針で
歳入歳出とも十六億六千六百万円計上しております。
第六に、
森林火災保險特別会計についてありますが、
保險料收入、未
経過保險料無事もどし
金支拂いの財源に充てるための前年度
繰越資金の受入れ等の歳入と人件費及び
事務費等の歳出を計上し、
歳入歳出ともに七千九百万円といたしております。
第七に、漁船再
保險特別会計は、再
保險料收入、未
経過保險料等の歳入と
事業運営に必要な
人件費事務費等の歳出を計上し、
歳入歳出ともに三億一千万円といたしております。
第八に、
国営競馬特別会計につきましては、競輪との競争、
一般購買力の低下等を見越して歳入の減少を見込むことといたしまして、
投票券勘定の
歳入歳出四十九億円、
業務勘定の
歳入歳出十三億三千七百万円といたしております。
第九に、農業、林業、
水産業等の原始産業の生産基盤を強化することを目途とし、長期かつ低利な金融の道を開くことといたしまして、
一般会計、米国対日援助見返
資金特別会計及び
大蔵省預金部資金特別会計からの繰入金を財源として
農林漁業資金融通特別会計を設置することといたしました。昭和二十六年度におきましては、とりあえず
一般会計か二十億円、米国対日援助見返
資金特別会計から四十億円を支出し、その合計六億円を
土地改良、小水力発電、造林、林道、漁港、
北海道魚田開発等に重点的に融資する計画でありますが、この融資が補助金及び
自己資金と合体されて計三百六億円程度の事業量が完遂できることとなるのであります。
次に、
公共事業費について申上げます。
公共事業費の総額は昭和二十五年度の九百七十億に比し百十億増加された千八十億円となつておりますが、昭和二十五年度は
見返り資金に百十億を見ており、昭和二十六年度はこれが困難な状態にあるので、これを考慮すれば昭和二十五年度と同額と言えるのであります。このうちの
農林省関係のものについて申し上げたいと存じます。
まず、
災害復旧関係を除いた
一般公共事業費五百七十六億九千五百万円のうち
農業部門においては、前年に比し三十六億九千三百万円増の百二十一億九千三百万円であります。林業においては、同じく十三億九千三百万円増の五十九億四千二百万円、水産においては、五億七千四百万円増の十三億二千四百万円それぞれ計上されております。
右によりまして昭和二十六年度中の実施を期しております事業のおもなるものの概要は次の通りであります。もちろん今後地区別に決定されて行きますので、各事業間に動きが生じますことは、あらかじめ御承知願うこととして、まず農業の百二十一億九千三百万円については、開墾に四十三億三千二百万円を投じ、新たに六千五百戸を入植せしめ、
既入植者と合せて約三万六千町歩の開墾を行い、また建設工事では前年同様六地区の大
規模国営開墾、継続地区である十八地百区の国営開墾、二千二百十七地区の代行開墾及び前年同様の二千町歩の小
団地補助工事のほか、
新規事業として二万八百町歩の
新規開墾地の
酸性土壌改良を行い、農村人口の圧力緩和、
適正規模農業の確立を目標に
食糧増産に寄與いたしたいと存じております。干拓に十七億七千四百万円を投じ、二十四地区の国営干拓と五十七地区に及ぶ代行干拓及び
補助干拓を計画し、特に残工事のうち急速に効果の上るものに重点的にこれを施行せんとするものであります。
農業生産力の増強を行うため、
灌漑排水に四十九億四百万円を投じ、
総合灌漑排水は継続分七地区、新規として五地区を計画し、国営直
轄灌漑排水については五十九地区、
府県営大規模灌漑排水については百七十九地区、
府県営小規模灌漑排水については百四十五地区、
団体営潅漑排水として四十三地区を計画しております。
土地改良に三億四千五百万円を投じ、温水施設六十三地区、
暗渠排水施設については百六十七地区、客土については四十五地区、その他区画整理百四地区、
シラス地帯の
土壌保全工事九地区を計画しております。このほか防災施設として二億四千二百万円を計上し、これにより
防災ため池十七地区、
旱害恒久施設二地区、
干拓堤塘五十四地区の補強などを行うものであります。
林業の重要性については申し上げるまでもありませんが、二十六年度の五十九億四千二百万円の内訳は、
民有林造林に二十一億六千四百万円を投じ、二十八万四千町歩の
造林計画を期しております。またそれと同時に造林費の一時支出と、森林資産の長期固定という不利な経済事情にあるこの事業に対して、以上のような計画のもとに
造林計画を期しておるのであります。
公有林野官行造林に一億六千四百万円を投じ、千五百町歩の造林と補植二千町歩、撫育五万町歩を行い、
治山事業に二十七億七千百万円を投じ、二万七千町歩の治山を計画し、河川の水源地帯の保全をはかり、国土の
荒廃防止を行わんとするものであります。林道については木材の正常伐採と里山の
荒廃防止のため七億七百三万円を計上し、
民有林開発林道千六十二キロ、
奥地林開発林道七百九十一キロ、北海道における林道七十九キロを計画しております。
水産の十三億二千四百万円については、漁港については新規港数はいまだ決定をしておりませんが、継続分としては百三十六港を計画し、漁業生産の増強をはかり、漁民生活の安定を期するものであります。このほか魚田開発及び作業船の整備を
新規事業として計画しております。
災害復旧関係は、総額において前年度に比し七十億円減の四百億円となつておりますが、このうち
農林省関係の配分については、農業は前年に比し十二億五百万円増の八十三億七千二百万円、林業は前年に比し十六億五千九百万円増の二十億五千八百万円、水産は前年に比し一億七千三百万円減の四億三千四百万円となつております。
以上をもつて事項別の大要の説明をいたしたのでありますが、政策的観点からこれを概観いたしますと、農業の振興及びその生産力の増強のためにする補助施設の重点的施行、米価対策における特別加算制の実施等、興農増産施策の強化が目立つておりますし、また
農業振興に関係の深い畜産の振興にもできるだけの経費を注ぎ、蚕糸、水産、農地、食糧、林野をも含める日本経済の安定と自立のための財政政策のもとにおいて、それぞれ所を得た予算が計上されていると考えるものであります。冒頭に述べましたように、総予算中における
農林省関係の予算のウエイト、特に農業政策関係予算のそれが増大いたしておりますことは、今日農業政策が非常に重要な段階に到達しているとともに、それに副応した政府の決意が現われているとも言えるかと思うのであります。
最後に痛切な要望のありました農林水産業に対する長期資金の確保につきまして、前に申し上げました通りに、遂に
特別会計による農林中央金庫の活用が実現されることとなりましたことは、農林政策に画期的な重要政策の一つが新たに登場したものと考えますが、以上各項の施策によつて昭和二十六年度をもつて農林政策の新生の年となし得る基盤をなし得るものかと考えるのであります。
以上金額は百万円をもつて打切つて説明いたしましたが、御了承場願い、私の説明を終ることにいたします。
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