○
加藤(充)
委員 提案者の
理由の
一つにあげられました点で、われわれはもつと吟味しなければならないことがあるのでありまして、それは国論がどうだこうだということを言つたのでありますし、またこの問題を国連が取上げてくれたから云々ということを言
つておるのでありますが、これはよほど考えて見なければならないと思うのであります。なるほど表決の上では必ずしも過半数というわけには行かないかもしれませんが、現在ソ同盟、中華人民共和国、並びに欧亜の人民
民主主義諸国というようなものを加えますならば、それだけでも八億の
人口であり、これは世界総
人口の四割を占めるのであります。そのほかに先ほどの朝鮮問題について、中共を侵略者として制裁を加えるかどうかというようなことが国連で
審議されましたときに、アラブ十三箇国でしたか、これらのある国の意図する懲罰動議に絶対反対し、あるいは棄権をしたこの人々の数というものは、おそらく七億ほ
どもあるでありましよう。こういうふうなことを加えてみますならば、今や国連に加盟の人間の数の中で、その過半数が、そうして全世界の人間の過半数が、国連の運営なり、国連の最近の
仕事ぶりなりについて特定国の傀儡の
機関にな
つてしまつたというようなことを言
つておるのであります。私
どもはこういう国連の実体、国連の実情というような問題、そうしてそのことは一部少数の者が言うのでは断じてなしに、世界の輿論がこれを指摘しておる。世界の人間の大多数がこれを確認しておる。そうして確認するばかりではなく、それに抗議しておるというような
事情のときに、国連がどうだこうだというが、今の国連にそのまま協力する、肩入れして行くということ自体が、
日本のためにいいことか悪いことか、あるいは正しいことか、正しくないことかというようなことをわれわれは嚴重に批判検討しなければならない
段階に立ち至
つていると思うのであります。こういう
意味合いにおきまして、私は今の提案の
理由が少し検討不十分であり、わが党としてはその点については賛成しがたいということであります。
そしてなお私はこの法案はきわめて非科学的な、きわめてよからぬ——この引揚
対策審議会というようなものはきわめて間違つた
仕事をしておると思うのであります。大体におきまして抑留同胞三十七万どうだこうだというが、三十七万というようなものは、まつたく架空なものであり、仮定なものだと論定しなければならないのであります。またそれを架空ならずとする科学的ないわゆる合理的な基礎資料というものはないのであります。にもかかわらず、こういう問題をもてあそぶということは、幽霊は出るものだというようなことを、国家の責任を持つ
機関が肯定し、そのためにこういう看板を出し、幽霊は出ないとは聞いておつたけれ
ども、
政府機関がそう言うならば幽霊は出るかもしれぬというような
考え方をいつしか遂にみんなに持たせることであります。この幽霊
対策というようなものを国家が持つ必要はないのであります。幽霊
対策というようなものは神霊学者や坊主にまかせるべきであると思うのでありまして、こういうふうな
やり方をやります中で、片一方におきましては自分たちの責任において殺してしまつた戰争の犠牲者、あるいは戰争のための不幸がいまだになおいやされきれずして苦しんでおる人々の不満と反抗をよそに向けて、責任を回避するという、まことに卑怯下劣なやち方を含むものであります。また一方にはそれにも増して反共・反ソの
宣伝をやる。そして戰争への道具にこの
機関を運営して来たことは今までの実績に徴してまことに明らかだといわなければなりません。まつ先に申し上げました最近の国連というものは何をしておる、国連は何のために活動しておるというような国際的、世界的な批判と相まちまして、われわれはそれの
日本型的なこの引揚同胞
対策審議会というようなものの存置延長ということに対しましては、反対せざるを得ないものであります。