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富安政府委員 お答え申し上げます。御質問が多岐にわた
つておりましたので、私のただいま控えましたメモにあるいは漏れがあるかもしれません。漏れました点は、さらに
お尋ねいただきまして、
お答えをいたすということに
お許しを得たいと思います。
まず第一に、八億余りの
放送費の
増額に
なつておるが、一体この
内容がどういうものであるか、それを簡単に
説明するようにという
お話でありました。この八億余円の
増額の大
部分は、
番組費の
増加ということに
なつておりまして、ほかに僅少の
調査費その他のものはあります。何と申しましても、
放送事業の
大衆と直接につながるところは、
番組の良否ということ、つまり
放送の
内容に関することなのでありまして、この点に
事業計画の
方針として主力が注がれておることはもちろんのことでありまして、この
増額の八億というものは、
予算総額に対して
相当な重きをなしておること、
相当なウエートを持
つておることは当然なのであります。大体
番組費の
増額というけれ
ども、その
内容はどういうようなことが多く
なつておるかと申しますと、
お話の中にもありました
出演料、
著作権料、それから
放送の
内容といたしまする
作品を委嘱する
作品委嘱料、それに合せまして
通信の
専用料、これまた
相当額に上るのであります。そういうようなことだけでも八億のうち六億四、五千万円というものが占められているわけであります。
〔
委員長退席、
庄司委員長代理着席〕
そういうようなものに対しまして、この
増額をもちまして
物価の
値上りを補い、また
放送事業を拡充いたし、それから時間としましても、
放送時間をできるだけ
増加する。それにつけ加えまして、いろいろの
放送の
番組に
関係いたしまする
番組の
審議機関を新たにつく
つて、その
審議を待
つて番組の向上を期するというようなこと、あるいはまたどういうような
放送が最も
国民大衆の望むところであるか、受けているかというようなことに関しまする、いわゆる
世論調査であります。その
世論調査をただいまも十分にや
つてはおりまするけれ
ども、なおそれを
調査することであるとか、
報道網を充実するとか、そういうような
放送の
実質内容を向上せしめることに、八億余円の大
部分のものが費されているわけであります。それだけをもちまして、
放送の
内容を向上し、
国民大衆の
満足を買うのではむろんないのであります。これとともに
資本支出におきましても、
相当の額を
建設費として認められておるのでありますから、
物的施設の
拡充整備、それから
番組面におきまする八億余円の、ただいま申しましたような
内容を持
つておりまする
増額、こういうようなものと両々相まちますれば、御結論にありましたような、
放送の面目を一新して、
国民大衆の要望にこたえることができるのではないかと
考えておる次第であります。
それから五十円というものが、世間には必ずしも安くはないという声があるようだが、その点に関する私の
考えはどうかという
お尋ねだ
つたように拝聴いたしました。五十円が高いか安いかということは、なかなかむずかしいことでありまして、
考え方によりましては、五十円が安いとも言えますし、安くないとも言えると思うのであります。
物価との
比較、あるいは他の
外国の例、いろいろな
方面からこれを判定しなければならぬと思うのであります。五十円が安い高いということを離れても問題となりまするのは、三十五円を五十円に上げるということ、つまり
値上げの率があまりに急激であり、きつ過ぎはしないかということが、まずだれの頭にもすぐ来ると思うのであります。それが一体
一般の
物価の
値上りとどういうようなことにな
つているかということは、慎重の上にも慎重を期して
考えなければならぬことと思うのであります。一躍四割以上の
増額は、いかにも急激のように見えるのでありますけれ
ども、これは二十三年七月以来しばらくすえ置きに
なつてお
つたのだという
事情を
考慮して、判断をしていただきたいのであります。私の聞いておるところによりますと、これは
委員会発足前でありますけれ
ども、この三十五円を
情勢に応じてたしか四十五円に上げようという案もあ
つて、それがそれぞれの
方面の了解も得てお
つたのでありますけれ
ども、結局最後に
政策的意味において、その
値上げは
実現できなか
つたのだということを承
つております。もしそのときにこの段階をふんでおりましたならば、その後の
物価の
値上りがありましても、こういうような急激の
増加ということにはならなか
つたはずでありますけれ
ども、そのときは
値上げにならずに、そのときの諸
物価の騰貴にかかわらず、今日まで維持してお
つたものですから、急に上げなければならぬことにな
つたのであります。それでは二十三年七月と現在の諸
物価との比率が、一体どういうことになるのかということになるのであります。これはいろいろの
物価と
比較しなければならぬと思いますけれ
ども、私
どもはまず類似のものとしてすぐ頭に来るのが、
新聞の
料金との
比較であります。
新聞の
料金は御
承知のようにたびたび
値上げに
なつておるのでありまして、二十三年七月当時と今日と
比較いたしますと、一・八倍の
増額ということに
なつております。それが
受信料の
値上げは、約一・四倍ということに
なつておるのであります。そのほかに
電力料だとか、
ガスだとか、
鉄道だとか、そういうものとの
比較が一応頭に来るのでありますが、
電力料は約三倍だと思います。それから
ガスの
料金は約二・三倍だそうであります。
鉄道の
料金は一・六倍だそうであります。そうして
新聞の
料金はただいま申しましたような
事情であります。こういう際に
受信料の一・四三倍、そのくらいの倍率というものは、私
どもの
考えといたしましては、どうもやむを得ないかと
考えておる次第であります。もちろんこの
増額によ
つて得られた増収が、どういうものに使われるかということによりまして、もしこれが望ましからざる使い方をされるということでありますならば、これは一分一厘といえ
ども増額などは不当だということになるのでありますけれ
ども、今日の経済
情勢その他
物価の大勢等を見ますると、この
物価の
値上りの際におきましては、若干の
値上げがなければ現状維持さえできない、現状よりもますます悪くなるというのが
実情なのであります。現状を維持するということにさえも、三十五円では不可能であるのに、現状をも
つて放送事業が
満足するということはできないのでありまして、ただいまよりもつとはるかに
内容を充実しなければ、
放送の
使命を果し、
国民大衆の要望に沿うことはできないと思うのであります。そうなるとどうしても三十五円を上げないでおくというようなことでは、
事業の
使命を全うすることができないのでありまして、それでは一体どのくらいの額を得て、どのくらいの
事業をぜひこの際しなければならぬのかということを両方から
考え合せまして、結局五十円ということにおちついたのでありまして、
物価庁の方でも、これくらいの程度は妥当だという意見を聞いておるのであります。こういうような
物価の大勢から
考えまして、また
放送事業の現状から
考えまして、これだけのことはどうしてもこの際やらなければ、法律によ
つて負わされた
使命を果すことができないという両方の点から
考えまして、五十円というようなものがまず妥当のところであろうかと私
どもは
考えておる次第であります。
それから選挙の録音の
お話があ
つたようであります。これは実際問題といたしまして、
日本全国のある県等におきまして、地勢等によりまして
放送に非常に不便、不自由——山の高低の
関係からいたしまして、いろいろ
施設を
考えましても、その県の
聴取者に十分の
満足を買うことのできないような
事情でございます。選挙というような切実な実際問題に触れますと、特に問題が深刻になるのでありまして、選挙の際に自分の県の選挙
放送は聞けなか
つたのが、隣の県の
放送を初めて聞くというような
実情にあるのだというようなことは、ある地方によ
つては私
ども承
つておるのでありまして、これはどうしてもその状態を救う方法を講じなければならぬと
考えております。
お話のありました録音、これも確かに
一つの方法でありまして、ある県におきまして、その県の
放送がうまく聞けない。隣の県から
放送されるのを聞けば、それで初めて地方の選挙
放送が聞けるのだというような
事情がある県によ
つてはありますので、それを救うために、ある県で選挙
放送をや
つておりますものと同じ
内容のものを、他の県からも
放送せしめるというような
番組の編成方法を
考慮いたしますと同時に、他の県から
放送するとい
つても、そこに
放送しようとする者が出かけて行
つて放送しなければならぬということであ
つてはたまらぬのでありまして、それは録音の方法によ
つて、自分で足を運ばないでもその
放送が他の県からも
放送できるのだ。そしてそれが自分の県の人に聞けるようになるのだということにすれば、全部とは言いませんけれ
ども、地形と選挙
放送というような切実な実際の問題に関しまして、その窮通の道の
一つには役立つと
考えまして、これは
お話の
通りに録音を利用して、ただいまのやつかいな問題の解決の
一つに役立てようということは、私の方でも
考えておる次第でございます。
それからレツド・パージの問題の
お話がありました。これはスキヤツプが数次にわた
つて出しました
日本政府あての書簡の精神に基いて、
協会の判断で
行つたのでありますが、これは司令部から出ておりまする書簡の精神と意図をくみと
つて行
つたものだと御
了承を願いたいのであります。
それから
民間放送の圧迫ということの問題に触れてであります。
民間放送が近く生れようとしている際に、
協会といたしまして
聴取料の
値上げを行い、その
値上げによ
つて施設を
拡充整備するということは、
民間放送に対して圧迫になりはしないか、こういうことであります。しかし私
どもの
考えておりますところによりますると、ただいま申しましたような
事情のもとにおきまして、三十五円を五十円に上げるということは、
民間放送に対して圧迫を加えるという程度のものであるかないかということにつきましては、この程度をも
つて民間放送の誕生あるいは助成を圧迫するとか、妨げるというような結果になるとは、私
どもは
考えておりません。
〔
庄司委員長代理退席、
委員長着席〕
それから待遇の問題についても
お話があ
つたようでありますが、この意見書等にも書いておきましたけれ
ども、
放送協会の人件費の件につきましては、
協会の経営、
委員の側におきましても、ずいぶん慎重に検討を加えておるようであります。世間には
放送協会が剰員をかかえ込んでいるではないか、ぜいたくに人を使
つておるではないか、あるいはまたその人に対して
相当高い給与を、他の者と
比較して与えておるのではないかという声がある。その声にかんがみて、自分で慎重に
考えたものだと思います。その点につきまして、どういうようなことに
予算が
なつておるかということにつきましては、私
どもの方で十分に検討をいたしたのでありますが、人件費の節約については、例
年度よりも
事業費に対する人件費の
割合などを、はるかに減じておるくらいに
考慮を払
つておりますし、人間としましても、わずかに五十人ばかりしか増員をしていないような状態でございます。それから待遇の問題につきましても、これは私
どもの方といたしましてもよく
調べたのでありますが、一口に申しますと、平均の基準給は一万二千円ということに
なつておるようであります。その一万二千円というものは、ずつと前からすえ置きに
なつておるのでありまして、二十四年の一月以後、その基準を維持しておるのであります。御
承知のように公務員につきましては
一般に上
つておるのにかかわらず、
協会は自分でその点を返上いたして、上げないでいるという
実情であることを、とくと御
考慮を願いたいのでありまして、私
どもといたしましても、待遇が過重であるというようなことは
考えていない次第であります。これを要しまするに八億の
増額、それから全体としましては十六億くらいの
増額に
なつておりますが、その使途はおおむね妥当であり、これをもちまして
一般の要望にこたえ、
情勢に応ずる
事業の面目一新ということには役立つ、またこれをも
つて十分とは申すことはできないかもしれませんが、この際にせめてしなければならない程度のこと、五十円という程度の
値上げとにらみ合せまして、ぜひこの際やらなければならぬという程度のことは、なし得るのではないかと私
ども考えまして、さような旨を意見書にも書いて提出しておるような次第でございます。何とぞ御
了承を願いたいのであります。