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1951-05-17 第10回国会 衆議院 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十七日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員   地方行政委員会    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君    池見 茂隆君       大泉 寛三君    門脇勝太郎君       床次 徳二君    久保田鶴松君   法務委員会    委員長 安部 俊吾君    理事 田嶋 好文君    鍛冶 良作君       佐瀬 昌三君    松木  弘君       武藤 嘉一君    上村  進君       梨木作次郎君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部警視         (総務部長)  加藤 陽三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四二号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより地方行政委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  不肖私が議案の付託を受けました委員会委員長でありますので、先例によりまして委員長職務を行わせていただきます。  それでは警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一四二号)を議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 提案理由はすでにお手元に配つてありますので、ただちに質疑に入りたいと思います。質疑は通告がありますので、これを順次許します。鍛冶良作君。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は法務総裁にまず総括的に承りたいのは、提案理由説明を見ますると、「現下治安実情にかんがみ、この際警察力を強化しその運営をさらに能率化する必要を認める」とこうなつておりまするので、あとの各項にわたる質問同僚委員から並びに私からやりまするが、まず第一番にこの点を総括的に伺いたいのであります。  現下治安実情にかんがみてこれを改革する必要ありとおつしやるのは、どのような実情にあるのをおつしやるのか。次いで警察力を強化しなければならぬとおつしやるから、今までに弱かつたところが、弱体化しておつたところがどこであつたか。さらに運営について支障のあつた点はどういう点であつたか、この三点をまずお伺いしたいと思います。
  5. 大橋武夫

    大橋国務大臣 わが国の治安につきましては、終戰直後におきまして経済界混乱また思想界混乱等によりまして、非常に憂慮せられつつあつた次第でございます。その後、一部の極端なる政治運動等の影響もございまして、全国各地におきまして不祥な集団暴行等事件があつたことはすでに御承知通りと存じます。その後最近に至りまして、漸次これらの運動もその勢いを弱めて参つてはおるのでございますが、しかし昨年朝鮮動乱の発生に伴いまして、多少またこうした面におきまして警戒を要するのではないかというふうに考えている次第でございます。もとより国内におきまする実情考えますというと、さしあたつてそう心配しなければならぬということはないと確信をいたしておりますが、しかし最近におきまする治安の問題は、ひとり国内的に考えて安心しておつてよろしいというふうなものでなく、絶えず国際的な動きと関連を持つものがある、こう考えられますので、政府といたしましては、国際関係、ことに朝鮮動乱動向等とにらみ合せまして、国内的にも注意をいたしているという状況でございます。なお警察法改正を要するというふうに考えられます点について申し上げますと、警察法は施行後三年余りに相なつておるのでございますが、この間に起りましたいろいろの過去の事件処理経過等から考えまして、今日国家地方警察自治体警察との協力関係を一層緊密にする必要がある、こういうふうな点が現在欠陷として考えられると思つております。この点につきましては、今回の改正案におきましては、特に自治体警察国家地方警察応援を求めまする際、その応援のために要しました費用負担につきましては、従来自治体警察が当然負担すべきものである、こういうふうな法制の建前に相なつてつたのでございまするが、経費の関係から、当然応援要請をしなければならない場合においても、自治体側において躊躇をする。これが事態の收拾を困難ならしめる場合も少くないように見受けておりますので、今回の改正案におきましては、かような場合の応援のための費用というものは、すべて国庫が負担をするというふうに改正をいたしたい、こう考えておるのでございます。  また過去三年間の経験に徴しまして、きわめて規模の小さい自治体警察というようなものにつきましては、治安上その能率を高めて行く上におきまして非常に欠陷が多い。ことにこれは小規模であるということから、当然に考えられるいろいろな欠陷もございますので、これらの点につきましては、でき得る限り国家地方警察協力をして行かなければならぬ。これによつてその欠陷の是正をはかる必要があるわけでございまして、たとえば今回の改正案におきまして、自治体警察区域内において、都道府県知事要請に基いて国家地方警察活動をするというような事項を加えてありまするのも、かような要求に応じようという趣旨でございます。  また自治体警察についてできるだけ国家地方警察がそういう欠陷を補いまするために協力をするということになりましても、やはり他の警察協力ということにはおのずから限度がございまして、自治体警察それ自体を強力なるものに仕立て上げるということが必要なわけでございまするが、これは何分小規模自治体警察が多数ありまする関係上、これらをことごとく能率的な強力なものに仕立て上げるということは、いろいろな面におきましてとうてい不可能ではなかろうかという限界があるわけでございまして、これらの点を考え合せまして、地方住民において、むしろ大きな單位、大きな規模を持つところの国家地方警察にこれを切りかえる方が適当でなかろうか、こういう希望が住民投票によつて明らかになりました場合においては、能率的な国家地方警察に切りかえる措置をとつて行こう、こういう点も加えた次第でございます。
  6. 前尾繁三郎

  7. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私から各論的な質問を少しいたしたいと思います。  まず法務総裁にお答えを願いたいと思うのでございますが、今回の改正案第二十条の二によりますと、今までありませんでした規定が新しく設けられまして、その規定の中に特に都道府県知事がその所管をするところの公安委員会に対して要求をすることができるという規定が、ここに定められようといたしておるのでございますが、都道府県知事に特にこうした権限を与えなければならない理由、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第二十条の一におきまして、従来は地元公安委員会要請がなければ国家地方警察というものがその管轄区域内に活動することができない、こういうことに相なつてつたわけでございます。しかしながら三年間の経験に徴しますと、当然国家地方警察応援を求めなければ事案処理が困難であると認められる場合におきましても、いろいろま内外の事情によりまして、地元公安委員会が適当なる時期にこの応援要請をなすことが妨げられておるというような場合も少くないのでございまして、かような場合におきましては、地元公安委員にあらざる他の機関要求によつて国家地方警察がその管轄区域内に立ち入つて活動するということを認めなければならない、こう考えたわけでございます。そうしてこの場合におきまして地元公安委員会要請がなくとも、国家地方警察出動をする、その場合を何人の判断によつて決定するかということが当然問題となるわけでございまして、当初私どもの立案の途中におきましては、これは国家地方警察運営管理に当つております都道府県公安委員会の認定によつてつてはどうであろうか、こういうことも考えてみたわけであります。しかしこれは元来都道府県公安委員会それ自体がその当該府県におきまする国家地方警察運営をいたしておるわけでございまして、その判断によつて国家地方警察発動をするということになりますと、これは自治体警察の側から申しますと、国家地方警察の一方的な見解によつてつてに入つて来る、こういうことになるわけでございまして、これは運用上いろいろ問題を生じやすい、こういうふうに考えられるのであります。とにかく自治体警察区域内におきまして、国家地方警察活動いたす場合におきましては、單に国家地方警察がその事案処理につきまして自主的に活動して行くばかりでなく、多くの場合におきましては、地元警察力の完全な協力を得るということも必要なることでありまして、それがためには国家地方警察自治体警察管轄内に出動いたします場合、その出動について、十分に自治体警察の側において、これは必要欠くべからざるものであるということについての納得、それからこれに対しては、自治体側においても当然に協力を惜しむべきでないということについての、單なるりくつばかりでなく、気分の上におきまする納得というものが必要になるわけでございまして、これらを考えますと一方的に出動するということは、必ずしも爾後の協力関係を期待する上からいつても適当な方法ではない、どうしても第三者的な機関によることが適当ではなかろうか、こう考えられたわけでございます。そこで一案といたしましては、自治体警察国家地方警察双方関係があり、しかも第三者的な地位にありますところの検察庁においてこの場合を認定して、そうして国家地方警察出動検察庁要求するということも一つ考えでありますが、御承知通り検察庁というものは、これは全国一体になつておりまして、上司に対してのみ責任を負うという、普通の行政官庁機構を持つておるのであります。従いましてかような自治体警察活動すべき当然の範囲、その事柄について国家地方警察が入つて来る。これは自治体の側から申しますと非常に重大な問題でございますから、かような事柄につきまして、行政官庁の一方的な見解をもつて場合の判定をすることは、警察民主化、あるいはそういつた地元警察納得を得るという上からいつて、必ずしも適当ではなかろう。でき得ればこれは他に適当な、輿論によるところの監督のもとにある機関が決定して行く、そうしてその決定については輿論による批判というものが可能である、そういう機関にまかす方が適当ではないか、こう考えまして、都道府県知事というものにこの権限を付与することにいたしたわけでございます。御承知通り都道府県知事はそれ自体公選せられた機関でありまするのみならず、都道府県知事行政につきましては、民主的な機関でありまする地方議会がありまして、この地方議会が絶えずその行動について報告を聽取し、またそれに対しまして公の批判をするということが建前となつておるのでありまして、都道府県知事要求をいたしました場合におきましては、適当なる機会に遅滞なくこれを都道府県会報告をする。これに対しては都道府県会があらゆる角度から批判し検討して行く。これによりまして国家地方警察自治体警察区域に入つて活動するという異例的な措置が、決していたずらに権限の濫用にわたるようなことはない。警察民主化ということの結果、当然今日の警察法においては、地方分権という考え方が根本になつておりまするが、決してこの根本的な理念を妨げるというような仕方において、この要請がなされたものではない。そういう保障をこの議会批判を通じて期待することができる、こう考えたからでございます。
  9. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 概略わかりましたが、ここで改正法によりますと、都道府県に新しく隊長が設けられるようであります。なおこの警察法趣旨から申しますと、総理大臣の主管のもとに中央における公安委員会をつくりましても、これに総理大臣が関与できないような趣旨が含まれておると思うのでありまして、その趣旨から申しますと、都道府県知事が関与するということは、警察法制定の根本的な趣旨の破壊になり、ひいては隊長が設けられた場合、これが旧来の警察部長の復活となりまして、いわゆる中央集権的な――地方自治体から反対のあります中央集権的な警察が新しく芽ばえたんではないかという感じがするのでありますが、この点に対しては、いかようにお考えになりますか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来都道府県警察長というものがありましたが、これを今回隊長名称を改めたのでありまして、その法律上の性質並びに権限等につきましては、従来と何らかわりのない單なる名称の変更にとどまるものでございます。これは何ら警察運営について従来の警察長権限に附加するものでなく、また減少させるものでもございません。御承知通り現在の国家地方警察指揮命令という系統を申し上げますると、行政管理につきましては、中央国家公安委員会というものがございまして、全国的に行政管理をいたしておるのであります。しかしながら実際警察権発動についての指揮命令は、運営管理に属するわけでございまして、この運営管理は、都道府県ごとに設けられておりまする都道府県公安委員会というものの專権に属することに相なつておるのでございます。この都道府県警察長という従来の機関、これは新しく隊長という名称に改められておりまするが、これは都道府県公安委員会運営管理のもとに、その指揮を受けて部下を指揮して行く、こういう機構にすぎないわけであります。従いまして国家公安委員あるいは国家地方警察本部中央におけるこれらの機関は、何ら警察長、あるいは新しい警察隊長というものに対して警察権発動についての指揮権監督権というものを持つておるものではございません。中央集権というような弊害は、この都道府県公安委員制度によりまして完全に払拭されておるというのが、現行法建前でございます。
  11. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そこでもう一つお尋ねいたしますが、新しく設けられました二十条の二によりまして、自治体警察の中で、今申しました都道府県知事要請によりまして、都道府県公安委員会警察命令いたしまして職務執行を行います場合に、国家地方警察活動に対しまして自治体警察協力をしない、こういうような場合が生れるおそれがなきにしもあらずと思いますが、この場合にはいかような処理になりましようか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 都道府県公安委員会運営管理に服して、当該市町村警察当該事案処理協力しなければならない、こういうことに規定いたしております。しかしこの規定が遵守されない場合の処置については、法律としては何ら定めておりません。現在におきましても、この種の問題はあるわけでありますが、ただこれにつきましては、刑事訴訟法中に検察庁におきまして、都道府県公安委員会に対しまして、警察官が検察庁に対する協力をしない、こういう場合にはその罷免あるいは処分を要求することができる、こういう規定があるだけでございまして、このほかの事柄は、都道府県当該市町村の外部の関係としてはないわけであります。結局さような場合には、これは後日当該市町村会あるいは公安委員会において問題として取上げられ、その公安委員会判断あるいは市町村会批判に基く公安委員会判断によつて適当に処置される、こういうわけであります。
  13. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の自治体警察協力しないという場合ですが、地方自治法第百四十六条によりますと、知事市町村長命令に従わない場合には罷免することができるという規定がありますが、知事がその命令に従わない自治体警察行動に対しまして、市町村長罷免することができるというようなことは考えられないものでしようか。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知通り自治体警察におきましては、市町村長指揮命令権限を持つておらないのであります。これはまつた市町村公安委員会権限に属するものと考えておりますから、これに対しましては、公安委員会に対して何らかの措置考えるということは、考えておりまするけれども、市町村長に対してこれに対する処置をするということはちよつと考えられないのじやないかと存じます。
  15. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それがほんとうの解釈でございましよう。私の考えでは、都道府県知事要請を認めました範囲、これは治安上重大な事業についてやむを得ない事由の場合でございますが、大都市の東京とか大阪とか名古屋におきましても必要性が生れるのじやないか。むしろ都道府県知事にこうした要求権を持たす必要があるならば、同様な意味におきまして市町村長にもこの要求権を与えた方がうまく行くんじやないかという考えが生れるのでございますが、この点いかようにお考えになつていらつしやいましようか。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 市町村、ことに大都市の市長というようなものに対してかような権限が必要ではなかろうか、こういうお考えでございまするが、かような場合におきまして通常考えられる措置といたしましては、市町村長当該市町村公安委員会に対しまして、国家地方警察応援要請しろ、こういうことを要求することができると思います。もちろんこれは法律権限によつて要請するわけじやございませんが、事実上要請することができるわけであります。そうして市町村長は、公安委員職務執行にあたつて適当でない、こういうことを認定いたしました場合には罷免権もあるわけでございますから、市町村長におきましては、特に都道府県知事の場合のごとくかような明文を置きませんでも、現行法運用によりまして、事実上相当の部分は解決できるのではなかろうかと思うのであります。解決できない場合におきましては、この関係都道府県知事というものが必ずあるわけでございまして、これに依頼するという道が新しく開かれることになつているわけでございますから、まず実際の運用といたしましては、この程度で大体支障がないのではなかろうか、こう考えて、かようにいたしたわけでございます。
  17. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 実は私たち法務委員会の立場から懸念いたしておる点はそこでございまして、提案理由説明でも法務総裁がお述べになりましたように、治安の維持上必要欠くべからざるものといたしまして、この法案が提出されたものでありますから、できますればそうした面にももう少し気をお配りくださいまして、抜け目のない法律にしていただきたい、こういうように希望いたすものであります。  次は議題をかえまして五十八条でございますが、この五十八条が改正されておるようであります。この改正の内容は、結局「犯罪又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪並びにこれらに関連する犯罪」とうたわれておるのでございますが、関連する犯罪というのは、解釈によりますと非常に広くもなりますし狭くもなるのでありますから、この解釈をひとつ……。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ここに「関連する犯罪」という観念を採用いたしておりますが、これは、立案者考えといたしましては、刑事訴訟法第九条におきまする関連事件、あの範囲に限定をいたして、あれとほとんど同様な関連という意味でこの文字を用いた次第であります。
  19. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私たち考えでは、この「関連する」ということを相当広義に解釈していただきまして、たとえば共犯者の場合とか余罪追及というような場合まで含めてよいのではないかと実は考えておりますが、こういうような場合はどういうようになりましようか。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お説のような趣旨で、刑事訴訟法第九条に「関連事件」というものができているのでありまして、第九条の第一項には「数個の事件は、左の場合に関連するものとする。一、一人が数罪を犯したとき。二、数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。三、数人が通謀して各別に罪を犯したとき。」第二項に「犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪及び賦物に関する罪とその本犯の罪とは、共に犯したものとみなす。」とかような規定がございまするので、従つて御指摘になりました余罪のごときもの、また数人共犯の場合いずれも関連犯罪として考えております。
  21. 前尾繁三郎

  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連した質問ですが、二十条で北海道を特別に取扱われた理由、さらに他の府県においても、大きなところではこういう必要がないものかどうか。あつたらどういう考えをお持ちになつているか、それをお聞きしたいと思います。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は北海道は現在警察法上特別の取扱いに相なつております。と申しますのは、北海道一道でございまするが、しかしその区域は非常に広大でございまして、本州におきまする数府県にまたがるような地区が、行政区画と相なつております。そのために、実は北海道警察制度は他の府県とは多少趣を異にいたしております。全国的な様子を申し上げますると、まず中央国家地方警察本部というものがございます。それからその下に六つの地方警察管区本部というものがあるわけであります。そしてその管区本部というのは中間機関でございまして、その下に各府県警察隊というものができておる、こういう状況でございます。ところが北海道に限りましては、北海道一道でございまするが、しかしそこに独立管区本部が設けられておりまして、その下に現在五つ警察隊、こういうものがございまして、警察隊長が五名おるわけであります。従いまして、これは内地の場合から見ますると、五県に相当するような機構北海道自体の中にできている。ところで内地の場合におきましては、都道府県公安委員会というものが、各警察隊ごと一つずつあるのでございまして、そうして管区本部すなわち数府県管轄する中間機関については公安委員会というものは設けてないわけであります。ところが北海道は、都道府県公安委員会ということになつておりまして、五つ警察隊のそれぞれには独立公安委員会というものはなく、ただ北海道公安委員会というものただ一つがあるわけでございまして、ちようど他内地においてはそういうもののないところの管区本部というもの、中間機関管轄区域一つ公安委員会がある、こういう建前になつておるのでございます。そこで今回の改正におきましては、内地におきますると同様に、各警察隊ごと公安委員会を設けることとし、現在の中間機関管轄区域の全体にまたがるところの北海道公安委員会というものを解消しよう、そうして都道府県という單位から申しますと、北海道は非常に別扱いになるのでありますが、警察系統から申しますと、内地の各機関と同様なところにそれぞれの公安委員会を持たすようにいたしたい、こういう趣旨でございます。この点は、まつた北海道という道が、警察單位から申しますと数府県と同じような機構を持つているという特殊の事情に基きましたものでございます。従いまして、同様のことを他の府県について行うという考えはただいま持つておりません。
  24. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この規定だけではよくわからぬのですが、そうすると道公安委員会というものがあるのでありまするか。それからそれがあると管区警察本部というものがあるのがなくなるのか、この点承つておきたい。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在は北海道には北海道全地域を管轄いたしまする札幌管区本部というものがございます。そして同時に札幌管区本部全体の管轄区域につきまして、北海道公安委員会というものがございます。従いまして、この札幌管区本部というものは、これは引続き存続せしめまして、各府県管区管轄します他の五つ管区本部と同様に中間機関的なものといたして参りたい。そうしてその下に北海道においては五つ警察隊、これはそれぞれの内地の場合におきまする都府県警察隊に相当する程度機構及び規模を持つておりまするが、この五つ警察隊はそれぞれ存続いたします。従いまして、内地と同様に各警察隊ごと公安委員会を持たせ、これがその警察隊運営管理に当るようにいたしたい、こういう趣旨でございます。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、今までありましたような北海道公安委員会というものはなくなるわけでありますか。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りでございます。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に承りたいのは、都道府県知事要請によつて自治体警察で地方警察が仕事をします場合に、市町村公安委員会と何らの連絡もなくやるようにこの規定では見えるのですが、そういうのでしようか。また連絡をする必要がないものかどうか、まずその点を承りたい。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほども申し上げました通り国家地方警察が、ある市町村警察管轄区域内に二十条二の規定によつて出動いたしまする場合におきましては、当然その事件は、本来その自治体警察処理すべき事件でございますから、その後におきましても、自治体警察協力を受けなければこれをうまく処理することはむずかしいのでございます。従つてどうしてもかような事柄につきましては、国家地方警察それから自治体警察との間に円満な了解があるということが必要でございまして、それがためには、当然事前において適当なる打合せをし、また発動する場合につきましては、そのことについての自治体側の完全なる了解がなければならない。従いまして手続といたしましては、通常さような了解をとりつけるに必要なあらゆる手続が行われるということを期待いたしているわけであります。ただこの法律案の中にそれらの手続について規定を特に欠いております理由は、現実の場合におきまして、時日の切迫等によりまして、必ずしもさような手続をあらゆる場合において履践した後にこの発動が行われるということが期待できない、もつと急いでやらなければならない、そういう場合もあろうかと思いまして、最小限度の法律しなければならないと認められる規定だけをここにうたつたのであります。決して御質問のような当該都道府県公安委員会なり、あるいは当該市町村公安委員会なり、あるいは自治体警察の了解をとる手続をしないのが原則であるという考えではございません。それをするのが原則でありまして、しかしそれをしないでやる場合もあるから特にするということを書いてない。しかし運用上といたしましては、当然御趣旨のような手続が要請される、こう考えられます。
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうだとすれば、もつとここに規定として表わし方があるように思いますが、第一にそれでは承りたいのは、ここには「市町村警察は、当該事案処理については、当該都道府県公安委員会運営管理に服する」こうなつております。警察は服する。そうすると、市町村公安委員会は服さないのでしようか。服さなくてもよろしいのでしようか。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自治体警察都道府県公安委員会運営管理に服する、こう書いてありますが、この市町村警察というものは当然市町村警察を構成しておりまするすべての機関を含むという意味でございまして、市町村公安委員会をも含めた意味で用いたつもりでございます。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならば、もつと何かそういう特別の場合は通知せぬでも、あとで連絡してよろしいとか何とかいうことにして、そうでないと先ほどの田嶋君の疑問が出て来るようなことになる。これを読んでおりますると、警察は服すると書いてある、公安委員会は服さない、そうすると市町村公安委員会の意思と都道府県公安委員会の意思と違つた場合には、自治体警察というものはどこに従つていいかわからぬことになる。それで田嶋君の言われるように、それでは都道府県公安委員会の命に服さなかつた場合はどうか、こういうことが起つて来ると思うのであります。もしそういう意味であるならば、市町村警察には連絡をとるとか、公安委員会もこれに服さなければならぬ、こう規定されないとこれではわからぬように思いますが、これは議論のようですが、もう一応承りたい。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともなお説でございまして、私どもがこの案を書きましたときの気持は、まつたくただいま鍛冶委員から言われたことと同じ気持で書いております。そういうような場合において連絡ということは当然あるものであつて、当然であるから特に書かなかつた、この程度のものでありまして、さような連絡をせずにやるのが建前だというつもりで書いたわけではございません。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはひとつとくと御考慮を願うことにしておきましよう。  さらに二十条の二の「治安維持上重大な事案」それから「やむを得ない事由」これはたしか前にありました案を見ましたときには、この治安維持上重大な事案というものは具体的に現われておつたと思うのですが、今度のにはなくなつておりますが、どの程度でこれを重大であるかどうかをきめられるのか、また具体的に表わさなかつたわけはどういうわけか承りたいと思います。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 立案の途中におきまして、これはどういう事案であるかということを列挙的にする方法を考えたことのありますことは、今お述べになりました通りでございます。実はこの第二十条の二の「治安維持上重大な事案」と申しますのは、犯罪の性質、内容、波及性、こういう点から申しまして、相当広範囲にわたつて治安について影響がある、こういう重大な事案という意味なのでありまして、これはおのずから犯罪の種類から言つてある限界がある、こう考えられるわけであります。たとえば騒擾、内乱、外患等のいわゆる集団的な暴力犯罪でありますとか、あるいは信用に関する罪、すなわち有価証券あるいは銀行券、通貨偽造こういつた事柄、あるいはまた公務員に関する犯罪であるとか、およそ犯罪の種類性質から見てある限界はあると存ずるのであります。ただこれを特に列挙しないでかように書きました意味は、それ以外に何でもやろうという意味では決してないのでございまして、ただかような列挙をいたしますると、いかにも見る者の感じといたしまして、かような事柄については、これは国家地方警察がやるべきことなのであつて市町村自治体警察としては、当然必要ない事柄だというふうな感じを起させる。このことは、この種の重大な事案というものについての自治体警察の熱意というものを、決して高めるゆえんではない。しかし本来の警察といたしまして、さような事案につきましては、一般の犯罪以上に、自治体警察としても、当然力を入れなければならぬ事柄である。そこでそういうことを列挙しない方がよかろう。そうしてまた列挙したからといつて、列挙した事柄について、すべて原則的に国家地方警察がやるというような性質のものではなく、それはやはり原則的には、現在の警察法建前といたしましては、自治体警察がやるべきものである。そうして自治体警察の能力、熱意等の点から見まして、どうしても独力では解決できないのではなかろうかということを信ずるに足る十分なる理由のある場合に限つて、例外的の措置といたしましてこれを国家地方警察処理にまかせる、こういう意味でありますから、その重大な事案につきやむを得ない事由がある場合といたしまして、むしろさような犯罪の種類について列挙的に扱うことを避けたらいいのではないか、こういう意味でかような規定を置いた次第でございます。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 では次いでやむを得ない事由とはどういうことなのです。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 やむを得ないというのは、これは国家地方警察処理する以外に、その事件の解決の方法がないのではないかということを信ずるべき十分な理由がある場合、こういう意味でございまして、たとえば特定の事案につきまして、何らかの理由により当該自治体警察がその処理について熱意を失つておるような場合、あるいはまた事案の内容から考えまして、地方の自治体警察が独力で処理することは警察の能力の点等から考えて、どうしても不可能であろう、こういうような事柄が合理的な根拠によつて認められる場合、こういう意味でございます。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういたしますと、治安維持上重大な事案、またやむを得ない事由、こういうものの認定は、都道府県知事の專権にまかせてあるのでしような。この点はいかがです。
  39. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法文上はそういうことになつておりますが、しかし都道府県知事がかような事態であるということを認定するにつきましては、もとより都道府県公安委員会等から、いろいろな情報の提供を受けることが当然でありますし、また必要に応じましては当該市町村公安委員会、その他自治体警察機関なりあるいは市町村長なり、そういう人から情報を受けるということもあるわけでございまして、さような情報に基きまして都道府県知事は、この権限を行使されるものと思うのでございます。そうしでこの権限の行使の結果につきましては、都道府県知事は遅滞なくこれを都道府県議会報告をいたしまして、その批判を仰ぐということになるのでありますから、決してこれが濫用せられる、あるいは事態の処理について、まつたく盲的に処理されるということはなかろうと考えるのであります。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 実際問題としてそうも考えられるのですが、法律的に考えまして、では府県知事が必要である、こうして出動させた。そうすると市町村公安委員会では、必要ございません。私の方で処理できます。やめてもらいましよう。こういうことがあつたらそれはどうなるのです。
  41. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さような場合がありましても、これは都道府県知事権限に属しておりますから、これは都道府県知事の請求に基きまして、国家地方警察出動することができる。またその場合において、当然都道府県公安委員会運営管理にその事案処理については、自治体警察をも服せしめるということに相なるのであります。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さらにまた同じりくつですが、これは都道府県議会報告と書いてありますが、報告だから議会の反対があつても知らぬ顔をしておつてよろしいものか、もし議会でこれは必要のないものをやつたということで、何らかの決議でもしたとすれば、府県知事に責任がありますかどうでしようか。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 府県会につきましては、一般府県行政におけると同様に、都道府県知事議会に対して責任を負うのであります。これについては、その他に特別の法律上の責任はございません。
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると法律上の責任はないが政治上の責任はとらなければならぬ、こう解釈してよろしいのですな。ではその程度にしておきまして、次は二十一条ですが、この公安委員の資格について緩和せられたことはまことにわれわれもけつこうだと思うのでありまするが、さらにここにまた「又は任命前十年間に」官公庁における職業的公務員でなかつたこと、こういうことが出ておりまするが、この「十年前」というのはやはり必要なんですか。必要だとすれば、どういうわけで必要なのか、よくわからないからひとつ承りたい。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来公務員の経歴のあつた者が、いかなる時期において、いかなる期間であつたとを問わず、すべて公安委員としての資格を欠く者という規定に相なつてつたわけであります。それを今回は緩和いたしまして、任命前十年間にそういう公務員としての経歴がなかつた者ならば、それ以前においてあつた場合においても資格を認めよう、こういたしたのでございます。
  46. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の言うのは、十年でも三年でもよろしいが、何ゆえに官公庁の職業的公務員であつたらやれないのか、それがわからないのです。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この公安委員に公務員としての経歴を排除しておりました従来からの法律の精神は、警察民衆化という線に沿いまして、警察運営管理、あるいは自治体におきましては、警察のすべての管理について全責任を負うところの公安委員が、できるだけ民衆の代表者であるといろ意味におきまして、官僚的な経歴のある者はこれは除外して行こう、この趣旨は当然警察におきまする官僚主義の弊害を除いて行くという趣旨から出たものと承つております。
  48. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あとは議論になりますからやめます。  その次は二十一条の三号ですが、第三項の第三号、これはよくわからないのですが、三号の前段に掲げてあるものは、これはこういう団体に加盟しておるものは委員になつていかぬという趣旨なのか。二人はいかぬけれども、一人だけはいいという趣旨なのか、よくわからないのですが、どなたでもいいですから、御答弁を承りたい。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第二十一条の第三項に、「左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。一破産者で復権を得ない者、二禁錮以上の刑に処せられた者、三日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」、これらの人々は一切公安委員としての資格がない、こういうことを定めたものであります。  二人以上というのは、これはその次の独立の、まつたく別個でございまして、「委員の任命については、その中二人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。」これは前項の第三号の政党以外の政党員はこれは当然公安委員となる資格があるわけでございますが、その資格のある人がなつた場合においても、同じ政党に属する人が二人以上になつてはいけない。この委員会の構成は三名でございますから、二人以上ということになりますと、過半数を一党をもつて制するということになりますので、これは警察が政党の手先となつて、政治的に行動することを予防するための用意としてかような規定があるわけであります。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私もそうだろうと思う。これはあとの二十四条の規定から見てもそうなければならぬことでしようが、これを読んだんではそうならぬ。これは三号であつて、その下のものはこれは第四項に持つて行くものじやないですか。こう書いてあるから、どうもおかしいと思うけれども、二人ならいかぬが、一人だけならいい、こういうようにけてあるから……。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは印刷の誤りでありまして、申訳ありません。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもそうなくちやならぬと思います。これは四項と心得ておきます。  次は第三十一条ですが、これはわかつたようでわからぬので、ひとつ明白にしておきたいのですが、ここに書いてある運営管理行政管理、これはどういう区別がありますか。
  53. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 行政管理と申しまするのは、警察の実際の活動方面を運営と申しておりまして、それ以外の方を行政と申しているわけであります。従つて人事でありますとか、あるいは予算でありますとか、物を買うとか、組織、人事、教育といつた方面を行政、それから実際の警察活動それ自身を運営、こういうふうに大体の概念はいたしております。警察法の第二条には「行政管理とは、警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。」次に「この法律において運営管理とは、左に掲げる事項に係るものをいう。一公共の秩序の維持、二生命及び財産の保護、三犯罪の予防及び鎮圧、四犯罪の捜査及び被疑者の逮捕、五交通の取締、六逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は検察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの」こういうものであります。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に四十条ですが、これは自治体警察を置いてよろしいという町村を告示できめる。こういうことの規定だと思いまするが、ところが、これを読んでみますと、「住民投票によつて警察を維持しないことができ、又、警察を維持しないこととした後再び警察を維持することができる。」今度新たにこの町村に指定された場合は当然自治体警察を設けなければならぬのか、また默つてつてやめてもいいのか、これがわからない。今まであつた規定はここにありますが、新たに指定された場合、告示された場合、これはひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この法案の趣旨は、新しく指定をされた場合におきましては、住民投票によつて維持しないということをきめない限りは、当然維持しなければならない、こういう考え方であります。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもおかしいと思う。おれのところはこんなものは、告示されたけれども必要がありませんと言うのを、どうしてもやらなければならないというのは、この法律をつくつた趣旨と違うように思う。そうすると住民投票で、今告示しても、やるかやらぬか、これは問うてさしつかえないのですか。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま法律上の建前を申し上げましたが、実際個々に告示をいたしまする場合におきましては、大体地方において自治体警察を設けたいという希望があります場合に、この希望に基いて告示の中にその市町村名を加えるということが、現在の実情でございまして、このことは今後においてもそういう扱いに相なることと思います。ただ法律建前といたしましては、告示になつた場合においては、住民投票において決定しない限り、当然設けねばならない、こういう法律建前になつておりますが、運用上は設けない希望の町村が告示されるということは、実際上としてなかろう、こういう扱いになつております。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもこの条文ではそう読めません。人口に従い政令をもつてこれを告示するとなつております。人口が五千以上あつて、市街的の町村であれば、当然やらなければならぬように思いますが、そのときに、告示されたけれども、私のところはなくてもよいと言える何かがなければならないと思いますが、これによりますとそうでない、「人口に従い」と書いてある。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは人口五千以上の市街的町村ということになつておりまして、人口はなるほど国勢調査によりまして明らかに相なりまするが、市街的町村であるかどうかということは、やはり行政庁の手続によつて認定を必要といたすのでありまして、事実はこの条項の運用にあたりまして、まつた地元警察を置かないことを希望している、そういうものが告示によつて指示されるということはなかろうと考えております。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次は四十条の二の第八項でありますが、十月三十一日までにという、これはどういう意味なんですか。  十月三十一日までに第六項の規定による報告のあつた町村については、翌年四月一日にその警察維持に関する責任の転移が行われる。十月三十一日までにやつたものは来年の四月一日にやるが、それから後のものは、その翌年になる、こういう意味なんですか。それがよくわからないのですが……。
  61. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 さようでございます。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 何か附則にあつたようですが、そんなに長く待たなければならぬ理由はございますか。
  63. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 実はこの各町村におきまして、警察を持つ持たないという住民投票をやり、そしてその報告がありますれば、なるべく早く実際に転移を――置かないならば置かないように、まだ持つていないところは持つようにするということをいたすべきなのでありまして、そういたしたいのでありますが、この場合には国の予算と関係をいたしまするので、通常の年におきましては、予算開始の四月一日からということにいたしたいと思います。そうでありませんと、その間に臨時国会でも開かれない場合には、補正予算の形式で出しようもありません。従つてこれは予算編成の技術と直接的な関係を持つておりますために、さようなことをいたしたのであります。ただ本年度におきましては、この法律を初めて施行するわけでありますから、できるだけ早くこの措置を行うことが適当であります。町村警察が廃止されるかされないか、長い間の不安の状態にありますことは、治安の維持の上にも悪い影響を及ぼすと思いますので、今までの町村警察を廃止いたしたいという希望を持つておる向きの町村が相当ありますので、これは実施の場合におきましてはどうなるかわかりませんが、これらの決定を早くいたしまして、本年の十月一日から転移を始めたい、かような考えであります。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次は四十六条ですが、これは人数は市町村にまかせるということになつておりますが、この説明を読んでみると、増員したければ予算さえあればやつてよろしいのだというふうに聞えますが、減員はどの程度までやつてよろしいのですか。
  65. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは自治体警察はその自治体の原則に従いまして、これらの定員はまつたく自由にいたすというのが本旨でございます。従いまして当該自治体におきまして、この程度警察吏員で十分である、こう認めました際には、現在よりも減りましてもさしつかえないということに相なつております。このたびの改正におきまして、自治体警察が他の警察応援要請をいたします場合には、国費で応援をいたすという態勢にいたしたのであります。従いまして国家地方警察応援というものを前提にいたして、当該町村の警察吏員の員数等を考える、こういうふうに相なつておると考えるのであります。従いまして当該町村におきまして、現に警察吏員としてこの程度でよろしいと認定いたしました場合には、それに対してこれは少な過ぎるということを他の機関から言う必要はなかろう、かように考えております。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはまことに極端な議論をするようですが、今まではどこへ行つてもこんなに少い警察吏員しか持たない自治体警察ならば、置いても置かないでもよろしいという議論が行われておつたのです。あるいは中には、二人か三人なら財政は持てる、それでやはりおれの町はおれの方で持つた方がよいということで、ほとんど警察と認められぬものをがんばつて、二人ぐらいでやつてつたら、これはいたし方ないのですが、そういう場合にはどういたしますか。
  67. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 ただいま鍛冶委員のおつしやいましたような極端な場合は絶無であるということは保証できないと考えますが、普通常識的に考えまして、一つ警察署を維持するということになりますれば、やはり今の最低程度――これを一人減らしてもいいかどうかというような議論はありますが、極端に半分あるいは三分の一にしてしまうというようなことはあまりなかろうと考えております、しかし万一そういう場合でありましても、当該町村としてそれでよろしい、その程度の人員でよろしいということであれば、それは自治体警察の本旨からみましてさしつかえないものとかように考えております。それで国として非常に困るという場合には、先ほど御質問がありました二十条の二の規定もございますし、また公安委員会におきまして、国家地方警察、あるいは他の自治体警察応援を求めるということが適切に行われまするならば、それで国としての治安の維持は十分であろう、かように考える次第であります。
  68. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういうことは極端な場合ですが、私としてはやはり最低限度これだけのものを置かなければならぬということはきめておいてもいいんじやないかと思います。それでそれを維持するかどうかということが始めてきまるので、やはりおれのところは二人か三人でも自治体として持つてつた方がいいというところが出ぬとも限りませんから、これはひとつ御考慮を願つておきたいと思います。  その次に五十四条の二ですが、「国家地方警察市町村警察及び市町村警察は、相互に、」、これはどういう意味ですか。
  69. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはうまい条文ではございませんので誤解を生ずるかもしれませんが、書きました心持といたしましては、これは二つのことが書いてございます。一つは、国家地方警察市町村警察、これは相互に情報を交換し合わなければいけない。また市町村警察は相互に情報を交換しなければいけない。つまり市町村單位がたくさんございますから、その必要なものはお互いに交換し合う。こういう二つの事柄をまとめて「及び」でつなぎましたので、おわかりにくかつたと思います。
  70. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、これは「国家地方警察市町村警察並びに市町村警察間においては」こうやつた方がいいわけなんですね。
  71. 大橋武夫

    大橋国務大臣 上手に書けばそうでございます。(笑声)
  72. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それからこの情報交換というところですが、これはどの程度なんですか。何か関係のあることだけ、あつてもなくても、毎月おれのところでこういうことがあつた。こういつて出すのですかこの点はよくわかりませんが。
  73. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは他の管区警察にも関係がある通常の常識におきまして考える場合の情報でございます。また当該警察におきまして、他の警察関係がなかろうと考えておりましても、他の警察からお前の方にこういう情報があるならば知らしてほしい、こういう申出があれば関係があると考えるのが当然でありますので、そういう場合にはやはり情報を提供する、こういう意味でございます。
  74. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次は六十七条の三であります。これは政府委員説明ではよく出ておりまするが、この規定ではその意味にとれないように思いますので質問したいのです。第一には、自治体警察が廃止になりますと、その警察に勤めておつた職員をすべて国家警察が引継ぐ、こういう御意思なのでありまするか、その点から承りたい。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは二つの意味がございます。法律的な意味から申しますと、引継ぐか引継がないかという実際の警察官個人の身分についての規定ではなくて、これはまつたく定員の規定でございます。その意味は、自治体警察の廃止が決定した日の実際の当該町村警察の職員の数を、そのまま将来長く国家地方警察警察官の定員として附加する、こういう意味でございます。しかしこれの実際上の取扱いといたしましては、当然そのときり警察吏員は、希望がありまするならば、そのまま国家地方警察に全部引取る、こういう扱いをいたすつもりでございます。
  76. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の総裁の説明でしたら、このあとに「置くことができる」とせないで、「置く」とか「置くものとする」とか――「置くことができる。」というのならふやしてもふやさぬでもよい。従つてそのまま引継いでとつてもとらぬでもよろしい、こういうように解釈せられるのですが、これをなぜ「できる。」としたのですか。今の御説明であるならば、「これだけ増員する」そういうようにやらなければならぬと思うのですが……。
  77. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは法律上置く権限を認めるということでありますから、必ずしも置かなくてもよいわけであります。しかし実際問題といたしましては、それだけ増員を願いたい。かように考えております。ここでは権限を与えるという意味におきまして「置くことができる。」としたのであります。
  78. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、趣旨はそれだけふやす、そうして職員はそのまま引継ぐというのだが、規定としてはそこに幅を持たしておいた。こういうことなんですな。
  79. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 仰せの通りであります。
  80. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この改正案が出まするについてわれわれは、国民こぞつてこれを歓迎するものと心得ておりましたのに、一部で非常に反対の声を聞いて実は驚いたのです。その反対の根本の理由はこの点にあつたかと思われるので、ひとつこれは明白にしておいていただきたいと思うのであります。従いまして、こうはなつているが、どこまでもそのまま捨てないで採用するつもりであるというならば、この点もう一ぺんあらためて総裁からお答えを願いたいと思う。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自治体警察の廃止に際しまして、現在自治体警察に奉職いたしておりまする全職員はそのまま国家地方警察に引継ぐ、これが公安委員会といたしまして、この処理についてとつているただいまの方針でございます。
  82. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 ちよつと蛇足でございまするが、ただいま鍛冶委員の述べられたような不安を一部起しました例を申し上げておきます。それは前に伝えられました案といたしまして、当該自治体警察を廃止いたしました場合には、その廃止をした警察官の定員をそのまま定員として置くことができるというのではなくて、その中の若干を定員として置く、そうして今後引続いて使われる定員よりも廃止をされた数の方が多ければ、その多いだけは一年間を限つて定員外にする、こういう案を考えたことがあるのであります。その場合の考え方といたしまして、あふれた者はこちらの一般定員の方へ実際の人間は入れてしまう、定員としては減らしてしまう、こう考えておつたのであります。そのために三万の警察官を五万にふやす、いわゆる二万増加と考えておりましたのを、廃止したのをそちらの方のわくへ持つて行く、かように考えておつたのでありますが、その後考え方をかえて、減らしたところは全部そのまま定員を別個にふやす、こういうことにいたしましたので、その誤解は解消したと考えております。ただいま法務総裁からも言明せられましたように、その通りに実施いたしたいと考えております。
  83. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはわれわれも趣旨としてそうあつてほしいが、ただ一つここにめんどうなことは、この参考資料を見ますると、自治体の方と国家地方警察の方とに俸給手当等に差異があります。これはどうもやつかいなことだと思いますが、これらも何か適当にやるようにお考えになつておるかと思いますが、もし何かありまするならば、この際承つておきたいと思います。
  84. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 なるべく俸給の減らないように、こちらの方に採用がえをいたしたいと考えておりまするけれども、自治体警察吏員が国警の――以前同じ状態において勤務をいたしておりましたものと比べまして、あまりに開きが多過ぎるという場合には、若干は減ずるということにもなろうかと思いまするが、そこに出ておりまする表は警察官の一人当りの平均でございます。自治体警察の方はむしろ年をとつた警察吏員が多いと考えます。従いまして個々に比べてみました場合に減給になる場合はそうたくさんはなかろうかと考えております。今まで実施しておりましたそういつた給与の面は、できるだけ既定事実を許す限り認めて行きたい、こういう考えであります。
  85. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さらにもう一つ聞きたいのは、この六十七条の二で、市町村警察の持つてつたものが、なくなつた場合は国家警察で使う、無償でこれを讓渡する、こういう規定ですが、これは一体実際において行われるものでしようか。われわれは市町村実情を知つておりますが、町村債を起して借金をしながら建てて、いろいろやつておるものを、この法律一本で無償で取上げるということは、実際において適するものかどうか。またもつと深く考えれば、そういうことはさしつかえないかどうかということまで考えられまするが、この点はいかがですか。
  86. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これはここに書いてございまするように、当該市町村に不必要で国家地方警察に必要なもの、こういうことになつております。たとえば今まで警察署を新しく建てて今度廃止をする。そこでその建物はその市町村ではいらない、ほかの用にも使わないというときに、国がそれを無償で使う、こういうことにいたしたい次第であります。むしろそうなりますると、どんなものでも市町村が全部いるということになつて一つも来ないじやないかということの方が心配されると思うのであります。しかしながらその当該町村では自治体警察としては廃止をするけれども、やはり警察は置いておいてもらいたい、そうでなくてもあるいは派出所あるいは昔の分署というようなものを置いてほしいという要望は必ずあると考えますので、そこで話の調整はつく、今まで大きな建物でありましようと、小さな建物にかえて派出所程度の建物を出すから、前の大きな建物は国の方にそのまま保有させてもらいたいということで、実際問題としては話がつくとかように考えております。
  87. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもますますわからなくなつて参りますが、その不必要という意味はもし今のあなたの説明でありましたら、おれは売りたい、売るために必要だと言われたら、とれないとしたらほとんど来るものはない、何かそこに目途があるのじやないですか。もつとも負債のある場合には承継するように協議して――これはそれで行くかもしれませんが、それにいたしましても負債という意味は抵当権でもついておればどうか知らぬが、町全体で町債を起してその一部がその中に入つている。こういう場合にもこの建物の負債等も認められるかどうかということも問題でありまするし、何かここに具体的に少しはいい方法を考えられなければいかぬじやないかと思いますが、いかがですか。
  88. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 りくつの上から申しますると、必要であることが合理的でなければならぬと考えます。売つて財源にしたいというのは、これはここで言う当該市町村には必要だとは認められないと、かように考えられますが、しかし先ほども申しますように、むしろわれわれ今陳情を受けておりますものは、警察を廃止した場合に、そこに派出所とか分署とか、そういうものをぜひ置いてもらいたいということをみな言つて来られるわけであります。そういう際には建物は全部とつてしまつて、なくしてしまつて、そうして置け、こういう注文は私は通常出ない、かように考えております。むしろ建てなければならぬ場合におきましても、地元で起工するから置いてもらいたいという要望が多いのでありまして、われわれの方としてそうならないように、できるだけ予算については努力をいたしておりまするけれども、一般の情勢はそういう情勢でありまするから、私はその心配は、極端に考えれば心配になりまするけれども、実際問題としてはそれは合理的に行くもの、かように存じておる次第であります。
  89. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ただ私が心配するのは、ここに無償と書いてあるものですから、それは決つてもらうのはいいがただでは困りますと必ず言うに違いないと思う。それから実際問題とすると、やはり地方警察がありまして、別に自治体警察が立つておる。どれを使うかということが問題になつて来ますが、考えてみれば新しい方を使つた方がいいだろうと思います。そうするとそれならば向うにあるからこれはいらぬでしようと必ず出るだろうと思う。すべて何もかも無償でとつてしまうということでなく、これはあとの実際の問題ですが、何かそこに合理的なことを考えられねばならぬじやないかと思うのでありますが……。
  90. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 地区署と自治体署が二つありますような場合には、御説のような問題が起ると思います。このときには国家警察といたしましても二つ持つ必要はありませんので、自治体と話合いをいたしまして、その職員を收容するだけの広さがあれば、国家地方警察がこれをとる必要はないと考えております。その場合に新しい署の方がよければ、その署の方をくれ、交換しよう、これも事実問題ですけれども、そういうことも考えております。この警察法が施行されました際に、今まで国家警察として持つておりました建物で、そこが自治体区域なつたというものは、無償で自治体に提供をいたしておるのであります、この際にそういつた建物のないところは新たに自治体で建てましたが、しかしこれの財源も全部国の方で見る。その起債によりました分はその元利を見てやる。それからそのほかに補助費という形でも出ております。しかし御承知通り、全額と申しましても予算の上できめられた額でありますし、実際はそれに継ぎ足しをして行く実情でありますけれども、その費用の大部分は国の方から出ておるわけであります。そういう関係もありますから、交換につきましては、地元との話合いで大体円滑に取運ぶことができるものだと考えております。
  91. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大体わかりますが、ここに無償と書いてあるのですからそれを心配いたすのですが、何かこれは事情によつて考えるということができないか。こう無償と書いてある以上は、絶対無償でなければならぬと言わなければならぬように思いますが……。
  92. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 もとよりこれはその当該自治体といたしましても、警察の用に供する建物として建てたわけでありまして、今後警察をみずから維持しないといたしましても、その警察の仕事というものは国家警察がかわつてやるわけでありますから、警察の目的に建てた建物が依然警察の目的に使われる以上は、その警察をどこで維持しようと、そのために自治体警察要求をするという必要はなかろう、かように考えるわけであります。ただそういう場合に、国家地方警察の必要でないようなものまで、無償で渡せというわけには参りませんが、国家地方警察がその地域を維持するためにどうしても必要だというものにつきましては、同じくその地方の警察の目的に使うわけでありますから、私は無償で讓与する、こういう考えであります。
  93. 鍛冶良作

    鍛冶委員 まあそれ以上は議論になりますから、もうよろしゆうございます。
  94. 前尾繁三郎

    前尾委員長 上村君。
  95. 上村進

    ○上村委員 ちよつと一、二点。「第十九条に次の一項を加える。」ということで、「管区警察学校及び警察大学に在校する警察官は、五千人を限り、これを第四条第一項の定員の外に置くことができる。」この理由がはつきりしないのですが、どうしてこういうことが必要であるか、理由を承りたい。
  96. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは簡單に申し上げますと、現在国家地方警察の定員三万では約五千人ばかり不足をするから、その分をふやしたい。そうしてその不足をするのはなぜであるかと申しますと、ちようど五千人ばかりが常時学校で再教育をしなければならぬことに相なつております。それで現在の実情を申し上げますと、本来から申しますと、再教育で数箇月職場から離れておるのでありまするから、その残つた職場に対しましては、他の人員をまわして事務に支障がないようにしなければならないわけでありますから、現在の三万の定員をもつていたしましては、それだけの余力がございませんので、やむを得ず大部分の警察官が在学中はその職場はそのままにいたしてあるという実情にございます。従いましてこの機会にそれだけ国家地方警察の重要性ということも大きくなるのでありますから、この際にその不足の分だけを埋めるようにいたしたい。それには約五千人ふやさなければならぬのであります。しかしそれには学校へ行つているための不足でありますから、その学校に行つている者だけを定員外にする、こういう措置を講ずればそれで必要を満たし得る、こう考えたわけであります。
  97. 上村進

    ○上村委員 次に二十条の二の、「治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるとき」というこれは、まあ鍛冶委員などの説明によつてわかつたようでございますが、やむを得ない事情ということは一体客観的に事案の性質から認めるものであるか。それとも治安を維持するところの主観的警察力の不足というようなことから見たのであるかはつきりしないのです。抽象的に書いてしまえばこういうふうになるかもしれませんが、結局事案の性質上やむを得ないというのか、警察力の方から見たやむを得ないというのか、どちらかということをはつきりしておきたいと思うのですが、その点いかがですか。
  98. 大橋武夫

    大橋国務大臣 治安の性質でなくして、警察力の面から見て国家地方警察の力によらなければ解決の見込みがない、こういうふうな考えでございます。そして、それもただ知事がかつてにそう認めるというのではもちろんないのでございまして、そう認めますことが合理的な根拠に立つてだれにも首肯できるという場合でなければならぬという心持ちをもちまして、やむを得ざる場合と、こう表現いたした次第でございます。
  99. 上村進

    ○上村委員 今の総裁の説明で、主観的方面の力の関係でやむを得ぬということであるようですが、そうすると元来警察の二本建になつている自治警察というものもあるのでありますからして、そういう力の関係の補給であるならば、この二本建の自治警察を利用すればいいのであつて、特にかくのごとく二本建の場合に地方警察に優先権を持たすような意味は立法の趣旨自体からして意味をなさないと思うのです。何かそのほかに理由があるのじやないかと思いますが、そういう主観的な防衛力、鎭圧力の方面から見るならば、元来あるところの警察力を利用すればいいのであつて、それさえなくても、私どもが地方に行つて聞くと、二本建における地方警察の優先あるいは自治警察のまま子扱いというような軋轢を聞いたこともあるのでありまして、それらの趣旨から言つて、この規定はまつた意味をなさないように思うのですが、その点なおはつきりしておいてもらいたいと思う。
  100. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自治体警察の手にあまるというものについて発動する趣旨であるならば、自治体警察自体を強化すればいいではないか、特に国家地方警察がこれを助けるという必要はないじやないか、こういうふうな御趣旨と承るのでございますが、この点はまことに理論上ごもつともなことだと思うのであります。但し御承知のように自治体警察というものは比較的規模の小さいものが多数あるのでございまして、今日この自治体警察ことごとくを、あらゆる事件処理できるような、それだけの能力があるものに仕立て上げるということはなかまか困難でありまして、おそらく不可能に近い、こういう実情でございまするから、それを補充する方法といたしまして、規模の大きな国家地方警察においてそれだけの力を準備する。そうして自治体警察は通常処理するような事案について必要な能力を準備する。その手に余るような事案につきましては、国家地方警察応援を求めるなり、また応援を求めることができないという場合におきましては、県知事要請によりまして、国家地方警察が積極的に活動して行く、こういうふうにいたした方が全体の警察としての能力を機動的に相互に融通的に経済的に使うゆえんである、こう考えた次第でございます。
  101. 上村進

    ○上村委員 そうすると、この規定運用について、なおもう一点お確かめしておきたいのですが、大橋法務総裁警察予備隊の創設者でございますが、警察予備隊も今と同じような重大事案について治安のためにこれを設けられてあると言つておられるのですが、治安上重大な事案ということになつて、国家警察が出なくちやならぬというふうなことにして、しかもそれがずつともつと大きくなつた場合、それらの点について警察予備隊もしくは国家警察との関係が一体どういうふうになるかということがはつきりしないのですが、それについてはどういう考え立案をなさつたのですか。
  102. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察法によりまする警察は、通常起ります事態に対しまする通常の警察でございます。警察予備隊はそうした通常の警察事項を処理するためのものではなく、これは通常の警察力をもつて処理できないような大規模な騒擾事件等の際におきましてこれを処理しようというものでございます。すなわち警察は通常の事態のための警察であり、警察予備隊は非常の場合の非常の措置、これを準備しておる、こういう性質のものと考えております。
  103. 上村進

    ○上村委員 そうすると人口五千以下の市町村住民投票によつてこれを廃止することができる、こういうふうになつておりますが、これによりますと、大体地方は財政に悩んでいる、五千以下の町村はおそらく大半はこういう住民投票の決議をするであろうと想像されるのですが、政府立案趣旨から言えば、とにかく五千以下の町村は自治警察はなくなつてもいい、いいというよりもむしろなくなれという示唆を与えたところのものであろうかどうかということを私はお聞きしておきたいと思います。
  104. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、現行警察法の根本精神をかえようという考えは毛頭持つておりません。すなわち現行のこの警察法は従来の警察国家的な警察を打破いたしまして、民主的な警察を打立てますために、従来の中央集権的な警察をできるだけ地方分権的なものに仕立て上げて行かなければならない、こういう根本的な理念のもとにできているわけであります。現在の自治体警察というものはこの思想に基いてできておるのでございますから、政府といたしましてはどこまでも自治体警察の育成強化をはかつて行くということが警察法の精神にかなうものと、こう考えておるのであります。ただ実際の問題といたしまして、非常に規模の小さい警察は、その能力を強化しようといたしましても、当然限度があるわけでありまして、その限度を越えては強化をして行くということは不可能でありまするばかりでなく、その限度内におきましても、非常に能率の面において、また経済性の面において困難が少くない、こう考えております。たとえば一つ警察署を考えましても、ここに署員百人あります警察署、ここにも一人の署長が必要であり、一人の会計係が必要であり、また一人の庶務係が必要である。署員七名の警察署を考えましても、ここにも一人の署長、一人の会計係、一人の庶務係が必要である、こういうふうに考えて参りますと、警察力を能率的に発揚して行くという上から申しまして、小さな自治体警察を多数設けるということは、なかなか困難でございまして、このことごとくをほんとうに強力なものにして行くということは現在の実情から申しまして不可能に近いと思うのであります。それで地方の住民におきまして、なおかつ警察自治体で維持することが必要であるという強い希望を持つておられる場合におきましては、これは当然その意思を尊重することが至当でありますからして、できるだけそれは独立警察として育成して行く。しかして独立警察として維持いたしております以上は、できるだけ国家地方警察におきましてもこれに協力するような措置を講じまして、その小さな警察をできるだけ強力なものにしなければならぬ、こういうふうに考えております。かような考えのもとに、今回の改正案におきましては、さような場合におきまする国家地方警察発動範囲を拡張いたしましたり、あるいはまた国家地方警察応援をいたしましたときの費用を、国庫の負担にするというような措置を講じたわけであります。かような措置を一面において講じますと同時に、警察の経済性、能率性、これらの点から考えまして、住民諸君が独立警察を持つよりも、むしろ国家地方警察管轄に入つた方がいいではないか、こういう気持のあります場合には、例外的な措置といたしまして、その意思を生かして行く、こういうことのためにこの廃止の処置を認める、こういう趣旨でございます。
  105. 上村進

    ○上村委員 総裁の答弁、なかなかうまいことをおつしやつておりますけれども、第二十条の二のつまり地方警察の優先権を認め、しかして三十条においては警察隊長を置く。こういうような優先権を地方警察に認め、そして今度は、その反面に農村の大半を占める小さな村の自治警察をなくするということは、何といつてもこれは警察のいわゆる官僚化であり、警察国家の萌芽であると言わなければならないと思うのです。しかもわれわれが一言申しておかなければならぬものは、治安維持ということをいつも政府は思想的にのみ重きを置いて、そして彈圧的な文句で規定されるのでありますが、警察の任務は、むろんその思想上の取締りも必要でありましよう。思想の違う政権と何によつては違うのでありましようが、人民の要求している治安の維持というものは、決してそういうものばかりではない。やはり殺人あり、強盗あり、強姦あり、あらゆる財産的あるいは人道的犯罪の大部分が、生活の困窮もしくはいろいろの警察の取締りの不完全、不公平、こういうところからできておるのでございます。それらのことについて一向この警察法改正が触れていない。むしろ警察民主化警察の民衆化に対して逆行的な傾向を持つておるように私どもは思うわけであります。自治体警察がある以上は、やはりこれを生かして、そして何と言つて自治体警察国家地方警察よりも、より民主的なんです。そういうものを助長するということでなければ、警察が自然に警察国家の保護になり、官僚のもとになり、憲法の認めたところの基本的人権の尊重に対して威圧を加えて行くということになると思うのであります。この点議論でありますから、お答えをいただく必要はありませんが、附則において一言御質問しておきたいのでありますが、町村の自治警察を廃止したときになると、そのまま五千人以下の日本の町村の自治警察というものがなくなつてしまうのですが、そうするとそこには警察機関というものは一時影を隠すということになるのでございますか。この一番しまいの附則の8のところ「予算の定める範囲内において、国家地方警察の職員として置くことができるものとし、この場合における職員の定員は、政令で定める。」この点はどうでしよう、その暫定的な措置は。
  106. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お答えを申し上げます。まず最初に申し上げたいと存じますのは、この法案はこれによつて政府が町村の自治警察を廃止しようというものではないということであります。すなわち政府といたしましては、この法律案改正によりまして廃止できるという道を開くだけでありまして、廃止することは、これは当該町村におきます住民の意思によつて廃止されるのであります。決して政府の意思によつて廃止したり、維持したりするという趣旨ではありません。政府はただ住民の意思が廃止に向つた場合には、その意思を尊重して廃止するための道を開いて行くというだけであります。  それから次に警察法のこの改正というものが、一般の強盗、殺人等の普通の犯罪関係なく、政治的な考えを念頭において立案されておりはしないか、こういう御質問がございましたが、しかしこれもまつたくさようなものではないのでございまして、法律におきまして国家地方警察応援をする、この費用を国庫の負担にする、こういう場合において、この強盗、殺人というような犯罪につきましても、やはり応援要請される場合がある。その場合の応援費用は国庫が負担をするという意味である。また自治体警察管轄区域国家地方警察発動する場合におきましても、特別な強盗、殺人等の事件で、そうしてそれが解決のためにはどうしても装備あるいは施設を持つておる、また特別の技術、経験を持つておる国家地方警察でやらなければならぬというようなことが認められます場合においては、その殺人なり強盗なりの事件の解決のために、都道府県知事のかような要求が提起されることを一向避けておらないのであります。この点の御批判は当らないと存ずるのであります。  それから自治体警察の廃止の道を開く、このことは結局民主的なる自治体警察のかわりに、官僚的な国家地方警察が幅をきかすことになるのではないか、こういう御意見もございましたが、この点も当らないのでございます。今日警察法のもとにおいて運営されておりますすべての警察というものは、すでにすでに民主化せられておるのであります。決して自治体警察だけが民主的な警察であつて国家地方警察が民主的な警察ではないというようなお考えがありますとするならば、これは誤りでございまして、すみやかに是正されることを希望するりであります。すなわち今日国家地方警察につきましては、民主的な都道府県公安委員会の完全なる運営、管理のもとにあるわけでございまして、中央においてその活動を統制するような中央集権的な色彩は一切払拭しておるのでありまして、国家地方警察もまたきわめて民主的な警察でありますことは、自治体警察と何らかわりのないところであります。  それから最後に御質問になりました、自治体警察の廃止が行われました場合においては、当然これは廃止のとき間髪を入れずして、国家地方警察がその警察の責任を引受けるというふうになるわけでありまして、それを予想いたしまして規定をいたしているような次第でございます。その間自治体警察は責任を負わない、国家地方警察も責任を負わない、そういう区域が一瞬間でもできるというようなことは、この間において予想いたしておらないのであります。
  107. 前尾繁三郎

  108. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この国家地方警察の定員を五千人ふやすという点でありますが、今上村委員からもお尋ねがあつたことでありますが、現在警察大学とか、その他の警察学校で教育を受けておる人数はどのくらいでありますか。
  109. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 警察大学と管区学校両方合せまして、今日の数は約四千人でございます、これは時によりましてかわります。多いときには五千人を上まわる場合もありまするし、今日の実数は四千人と若干になつておるのであります。
  110. 梨木作次郎

    ○梨木委員 われわれが経験いたしましたところでは、警察学校へ入つておる場合は、先ほど法務総裁説明では、職場をそのままにして教育を受けておるのだということを言われましたが、私どもいろいろ刑事事犯などで、証人として警察官を調べます。その場合大体大きな動員のかかつた場合は、警察学校の生徒が動員されておるのであります。そうすると、今あなたはどこにおるのですかと聞きますと、警察学校の生徒であります。で、部署はありませんというぐあいに答えておるのであります。私はこれらの事実から見ますと、警察学校へ行つておるときは、職場には――職場と言つては語弊がありますが、警察官署の所属を拔いて行つているのではないかと想像しておるのでありますが、この点はいかがな扱いになつておるか実情を伺いたいと思います。
  111. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 多くの場合には職場をそのままにして行つております。たとえば大学に入つておりまする警察官は、何課勤務という勤務をそのまま、あるいは何係長そのままという場合が多いのであります。しかし管区学校におります巡査、巡査部長という者になりますると、あるいは職場の所属がなくなつて行く場合もありましようが、しかしこれは稀有の例であります。今梨木委員のおつしやいますのは、おそらく府県警察学校に初任教養として入つておる者、まだ一人前の警察官として教養の終らない者、従つて部署の定まつていない者をおさしになつてのことであろうと思います。
  112. 梨木作次郎

    ○梨木委員 県の学校に入つておる。つまりこれから一人前の警察官になるその前の教育を受けている、この分も今御説明なつた四千人、この中に入つておるのですか、入つておらないのですか。
  113. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 それは含んでおりません。これは警察大学と管区学校だけであります。
  114. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ところで実際はこういう県の学校におる者も、いろいろな動員のときには使われておるのであります。ということは、実質的に警察官としての仕事をしておるような結果になると思うのでありますが、一体警察学校で例の一人前の警察官になるための見習いの教育を受けている警察官というのは、全国でどれくらいおりますか、おわかりになつたら聞かせてもらいたい。
  115. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これも時によつてかわりますが、全国といたしまして大体千人から二千人前後の様子でございます。これは自治体警察も合せてでございます。
  116. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この見習いの警察官をいろいろな大衆的な動員に使うということ、このことから非常な人権の蹂躙の弊害が起つておる実情をわれわれは見ております。一体こういうことはよくないことだと思うのでありますが、どういうぐあいにお考えですか。
  117. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 なるべくこれは避けたいのでありますが、実際必要な場合にはやむを得ないと考えております。そしてこの場合は警察官としての調書をつくる。そういつた職務権限はできないのでありますが、応援程度の普通の警察官として使うのにさしつかえない程度の教養を満たした後におきましては、そういう場合に使うのもやむを得ないと思います。
  118. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほどの説明だと警察大学や警察学校に入つておる者は今までも大体四千人ないし五千人おつた、だから実質的にはふえないような印象を受ける説明に聞きとつたのでありますが、しかし一面これは運営のやり方によりましては、今度は五千人、警察学校におる者は除外するということによつて、実質的に三万五千人になりまして、そのほかにまた今度は警察学校に四千人か五千人入れることができる。実質的には四万人に増加することになりはしませんか。
  119. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは梨木君の数学がちよつとおかしいのでありまして、現在は定員三万人でございます。そのうち五千人だけは学校にいる場合が多い。従つて実際の警察として働いておりまする者は、学校におる者以外の二万五千であります。これだけでは足りないので、警察学校にいる者以外に実際に働く者を三万にしよう、こういうのでございますからして、従来の三万、そのほかに学校に行つておる間だけは五千人以内を定員外とする。最大限度両方の合計が三万五千、これ以上には一人も増加することを許されないのであります。
  120. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ところが実際はこういうことになつているのではありませんか。従来はこれは警察学校に四千人ないし五千人おる。これは警察学校におるのだから、定員外だといつて、実数は三万人使つてつて、そのほかに四、五千人の警察学校や大学の生徒さんがおつた、こういうことになつているのではありませんか。
  121. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今までは定員内の者でなければ警察学校に行かれないのでありますから、警察学校に行つておる者は定員外というのは、今度法の改正でそういうことにしようというので、今までは定員の三万人を一人でも越える者は警察にはいない、こういうことであります。今度は学校に行つておる五千人以内を定員外にするから、三万五千までふやすことができる、こういう趣旨でございます。純粋の増加は五千であります。そうしてまた増加した後の最大の数は三万五千でございます。
  122. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その定員の問題と関連いたしましてお伺いしたいのでありますが、六十七条の三で自治体警察が国警に委讓しまして、そうしてこれは定員外になるということになつて来まして、これを維持できるというような趣旨に私は理解したのでありますが、かりに、具体的に伺いますと、自治警が廃止になりまして、国警の方に委讓になる、それが一万でも二万でも出て来ます。  そうなつて来ますと、九万五千の自治警の定員というものがあるわけでありますから、かりに一万人が国警へ移つたとして、八万五千人になります、が、しかし自治警は依然として九万五千までふやすことができるのだから、こういう形で実際は国警、自治警を合計いたしますと、定員をふやすことがこの通路を通じてできることになりはしませんか。その点はどうです。
  123. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の改正案におきましては、自治警の定員の九万五千というわくをやめることになりまして、自治警はその自治警察の定員を自主的にやれることができるということにいたしました。そこで九万五千人というわくは全然ないわけでございまして、従つて従来の十二万五千というものもなくなつたわけでございまして、全国の警察官の定員が幾らあるかという場合におきましては、まず警察法規定によりまして、三万の国家地方警察、そうしてそのほかに五千人以内の学校に在学中のもの、三万五千は固有の国家地方警察の定員であります。そのほかに町村の警察が廃止されました場合においては、町村警察の廃止の日の現在定員というもの、そのものがそつくり国家地方警察の定員として附加されることになるのであります。現状について申し上げますと、現在九万五千というわくの範囲内におきまして、町村の定員というものが一万九千に相なつております。従つてこの全員が切りかえられる。全部の町村警察が廃止されれば、一万九千だけは三万五千のほかに、この六十七条の三によつて国家地方警察の定員に附加されることに相なるのであります。そこでそれでは残つた自治警察の定員はどうなるか、これは現在は九万五千というわくがございますから、九万五千から一万九千そつくりそのまま国家警察に移つた場合におきましては、それを差引きましたところの七万六千、これが自治体警察の定員として残るわけでありますが、しかしこの七万六千というわくは、今回の警察法改正によりまして、自主的にきめればよろしいということに相なりまするから、それが七万六千そのままであるか、あるいはこれが減少するか、あるいは増加するか、それは将来自治体において決定するところでありますから、わかりません。しかし国家地方警察に関する限りは、ただいま申し上げました通り、三万五千のほかには廃止の日におきまする自治体警察の実際の員数だけが附加される、こういうわけになるのであります。
  124. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今ちよつと一万九千人とおつしやいましたが、そうすると、これは大体今のところ廃止を予想される自治警の数が一万九千人くらい、こういうことでありますか。
  125. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは法律上廃止を認められておる自治体に属する定員が一万九千、すなわち御承知のように、自治体には、市の自治体警察と町村の自治体警察があります。全国の町村の自治体警察の定員を合計しますと、現在の数として約一万九千であります。しかしこの全部が廃止されるということは考えられません。このうちどの程度が廃止されるかは、実際やつてみないとわからないので、全部廃止されたとしても一万九千にしかならない、こういうことを申し上げた次第であります。
  126. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そこでその点について伺いたいのでありますが、大体どれくらい自治警が廃止されるであろうという見通しをお持ちですか、伺いたいのです。
  127. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは今のところやつてみないと何ともわかりませんので、見通しはつけておりません。
  128. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ちよつと私うつかりしておるのでありますが、この九万五千の自治警の定員のわくが今度ははずされるというのはどの条文でありましようか。
  129. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 四十六条でございます。
  130. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると今度の改正によつて警察は国警と自治警と加えると、まあわくがはずされて、幾らでもふやすことができるというようなことに理論上はなるわけでありますね。
  131. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律上は、国警についてだけわくがあつて、自治警のわくがなくなつた、こういうことになります。
  132. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど上村委員からの質問の中で、政府は自治警を廃止する考えで今度の改正をやつたものではない、こうおつしやいました。なるほど法務総裁警察を所管しておる役所ではそういう考えを持つておられるかもしれませんが、政府全体の政策から見て参りますと、地方財政を非常に窮迫させるような政策を実際上とつておる。その結果、実際は地方におきましては自治警を非常に希望しておるのであります。それは、地方の実情を最もよくつかんでおるのは自治警察でありますから。ところが地方の財政を非常に圧迫するような政策の結果として、これは維持できなくなる、これはたまらないというので、廃止をしなければしようがないということになつて来ておる。政府全体の政策から見ますと、一方におきましては政策的に地方財政を圧迫するような政策をとつてつて、そして片一方におきましてこういう警察法改正をやれば、それに乘つて行くのは当然であります。政府全体の政策の面から来ておると私たち考えるのでありますが、その点法務総裁はどうお考えになりますか。
  133. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府全体の政策といたしましては、地方財政についてできるだけ十分な援助を与えたい、そういうふうな線でやつておりまするから、お話のような考えは毛頭ございません。
  134. 梨木作次郎

    ○梨木委員 第二十条の二の点をもう少し聞きたいのでありますが、警察法の六十二条の国家非常事態の特別措置に関する規定の中では、「国家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について国家非常事態の布告を発することができる。」と、こういうことになつておりまして、單に総理大臣だけの意思にまかせないために、国家公安委員会の勧告という一つのわくが入つているのであります。ところが二十条の二を見ますと、「治安維持上重大な事案につきやむを得ない」というような規定のしかたをしておるのでありますが、六十二条とのつり合いの上から申しましても、單に都道府県知事の認定のみにまかせるのではなくして、少くとも都道府県公安委員会の勧告というようなものを介入させるということが、都道府県知事の專断をある程度制限することに役立つであろうと思うのでありますが、どうしてそういうような考慮を払われなかつたか。六十二条はれつきとしてそういうぐあいに規定をしておるのでありますが、なぜこの場合こういうような規定をされたかということについて説明を願いたい。
  135. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともな御質問でございまして、私どもといたしましてもそういうことを考えたこともあるわけであります。ただ御承知のように、国家地方警察自治体警察について、特にこの改正の問題を契機といたしまして、意見の対立というようなことが伝えられておつた際におきまして、国家地方警察自治体警察区域において活動をいたすということは、見方によつては、国家地方警察自治体警察のなわ張りにまで立ち入つて、なわ張りを拡げて行くのではないかというふうな感じがないでもない。こういう際におきまして、国家地方警察運営、管理をやるところの都道府県公安委員会の意見――むろんこれはこの問題について最高の情報であろうと思いまするが、しかしそれを法律上はつきりやるということは、いかにも国家地方警察がかつて気ままに知事に勧告を出し、自分の発意で自分のなわ張りを拡げて行くのではないか、こういう感じを与えるおそれがございまするので、これらの点を考えまして、知事が巖正公平に、真に治安というものの立場から処理する、こういうところをはつきりする意味において、かえつて都道府県公安委員会の勧告というようなことを法律上の要件としない方が、この際においては適当ではないかと考えた次第であります。
  136. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それではさらにその点について伺いますが、六十二条に書いてある「治安の維持のため特に必要があると認めるとき」というのと、二十条の二の「治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるとき」というのとは、どういうぐあいに違うのでありますか。
  137. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この六十二条は、国内におきまするあるいは国内の一区域におきまする警察全体を、一つ指揮系統に置く、こういう治安維持のための必要というわけでありまして、今回の二十条の二はそうした大がかりなものではなく、ある事案が発生いたしておつて、これを解決しないと一地方の治安に重大な関係がある。その場合においてある特定の事案処理だけに限つて国家地方警察活動を認める、こういう趣旨でございます。従いまして、文字は同じ文字を使つてございまするが、しかしその規定の内容の性質上、この二つの治安維持のためという言葉の意味は違つておる、こう考えております。
  138. 梨木作次郎

    ○梨木委員 六十二条によりますと、これは全国だけではなくて、一部の区域についても国家非常事態の布告を発することができるということになつておるのでありまして、この二十条の二も大体一部の区域だと思うのであります。従つてこれは少くとも非常事態宣言をするような、そういう事態が一区域において起つたということに該当するようなことを予想しておるのかどうか、もしくはこれとは少し違うのかどうか、そこのところを伺いたいと思います。
  139. 大橋武夫

    大橋国務大臣 二十条の二におきましては、非常事態宣言のようなことを予想したわけではございません。これはまつたく特定の事案処理についての必要というだけのことであります。
  140. 梨木作次郎

    ○梨木委員 国家地方警察が自治警の区域内で職務執行する、また自治警が国警の要請に基いて職務執行するというような場合において、その間にこれらの警察官が行つた不法行為、それに基く国家賠償という問題が起つて来るわけなんであります。この場合、国警の要請に基いた場合におきまして、自治警のそれに要した費用は国家が負担すると言つておりますが、その場合の自治警が行つた不法行為について国家賠償は、これはどこへ請求すればよろしいのですか。
  141. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 その場合は国でございます。
  142. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ところでわれわれが始終――国警と自治警並びに警察自体の問題なんでありますが、関連しますからこの際伺つておきたいのですが、いろいろな人権を侵害される場合、あなたはどこの警察で何という名前ですかと聞いても言わないのであります。これは国家地方警察基本規定によりまして、だれからでも聞かれた場合には、必ずその所属官署並びに氏名を答えなければならないということになつておるのに、これが励行されておらないのでありますが、この点についてどういうような監督をされておるか。
  143. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 警察官が職務執行いたします際には氏名、その所属を明らかにすべきものだと存じます。
  144. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この点については、洋服の前のところに所属官署と名前を書くようなことをやつてもらわないと、聞いてもなかなか言つてくれないのでありますが、そういうお考えはないかどうか聞いておきたいと思います。
  145. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 現在のところそういう考えは持つておりません。
  146. 梨木作次郎

    ○梨木委員 十五条の二で、今度またいろいろ新しく階級をふやして来ているようでありますが、どうして長官、次長、警視長、警規正というふうにたくさんこしらえて来るのですか。これは新しい警察予備隊に類似するような階級制を、さらに巖格に取入れて来たような感じ、何か軍隊的な感じを受けるのでありますが、こういうふうに、特別に階級をふやして来た理由をお伺いいたします。
  147. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは新たにふやすのではございませんで、実は今の警察法には警察官の階級は、府県国家地方警察警察官についてだけ規定をいたしております。従いまして管区本部警察官の階級は規定をいたしておらないのであります。教養その他の規定も書いてない。これが不備でありましたので、国家警察全体として一本にまとめ上げた。そのために上の方に実際階級があるのをこの法律の中へ入れて規定をいたしたい、こういう考えであります。
  148. 梨木作次郎

    ○梨木委員 警視長とか警察正というものは今でもあるのでありますか。
  149. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは公安委員会規定であるわけであります。それは管区本部に在勤しておる者の中にはそういう者がいるわけであります。
  150. 梨木作次郎

    ○梨木委員 二十一条の点を伺いたいのでありますが、ここに「旧職業陸海軍軍人」と書いてあります。この旧職業陸海軍軍人という意味はどういう意味でありますか。
  151. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 追放令に該当いたしておりまする範囲の陸海軍人、それから現役の下士官、これはその中に入るというふうに解釈いたしております。
  152. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今度追放令が解除になつたら、どういうぐあいに解釈したらいいのですか。
  153. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 その解釈は、現在追放令にきめておりまするのと同じ解釈をとつて参るつもりでございます。追放令の規定を準用しておるわけではございませんので、あそこに掲げておるものをさように考え、さように解釈するというわけであります。
  154. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そしてさらに「職業的公務員」とあります。これもちよつと目新しい表現でありますが、これはどういう意味でありますか。
  155. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは現行法にありますそのままでございまして、名誉職でありますとか、職業としてやつていない者は入らないのであります。
  156. 梨木作次郎

    ○梨木委員 常時勤務を要する云云とありますが、どういうことでありますか。
  157. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 俸給、給料を受けて勤務する職員。
  158. 梨木作次郎

    ○梨木委員 俸給、給料とおつしやいますけれども、これは常時勤務を要しなくてもいいのですか、その点はどうですか。
  159. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 事実上は常時勤務になると考えまするが、生活給与として俸給、給料を受けて勤務をしているという者であります。これは常時でありませんでも、そういう状態の者があれば入ると考えます。しかしながら原則といたしましては、さような者はほとんど常時勤務だと考えております。
  160. 梨木作次郎

    ○梨木委員 五十四条の二でありますが、これは「国家地方警察市町村警察及び市町村警察は、相互に、犯罪に関する情報を交換するものとする。」とありますが、相互にこういう義務を負担するという趣旨でありますか。
  161. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 さようでございます。
  162. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この中では犯罪に関する情報だけで、警察の任務に属する公共の秩序の維持、生命及び財産の保護、こういうことについては情報の交換は義務的ではないという趣旨でありますか。
  163. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 ただいまあげられましたような事項も、やはり何らかの犯罪関係をいたすと考えます。犯罪に全然関係のないものにつきましては、この中には入りません。しかしながら生命あるいは人の保護という意味で家出人を探してもらいたいという申出がある、こういう事柄はもちろん実際上として連絡し合わなければなりませんが、これは現実に行われておりますので、ここに法律で義務づけるものとして最小限度のものを規定いたしたのであります。
  164. 梨木作次郎

    ○梨木委員 せつかくここでそういう義務的なことを規定されるのならば――もちろん警察の任務としては犯罪の捜査あるいは鎭圧ということが任務の重要なものになりますが、しかしながらこの警察法第二条におきましても、第一番目と第二番目に、公共の秩序の維持、生命及び財産の保護ということが書かれておる。これが警察の最も重要な任務であるというような観点から、こういうふうに書かれたと思います。ところがあなたの説明だと、犯罪に関することは大きく解釈すれば、もちろん公共の秩序の維持とか生命及び財産の保護ということに関連があるとおつしやいますが、こういう考え方の中に、警察というものは單に犯罪の捜査だけで、人民の生命、財産の保護だとか公共の秩序の維持ということについて、どうもおろそかに考えておる、そういう思想の現われがこういう規定の仕方になつて来ているのではないかと思うのでありますが、せつかくそういうことならば、はつきりそう規定されたらいかがですか。
  165. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 こういう情報というものをとります際には、誤解のないように、できるだけ狭くしておくということが、むしろ望ましいのではないかと考えております。あまり広くいたしますと、いろいろの誤解を生ずるおそれがあると思うのであります。
  166. 梨木作次郎

    ○梨木委員 六十七条の二のところで、先ほど鍛冶委員から質問のあつたところでありますが、市町村に不必要な財産を無償で国に讓渡するという点でありますが、こういう規定は憲法に違反しませんか。私有財産の侵害になりはしませんか。この点はいかがですか。
  167. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 現行法の中にも、また警察財産のこういつた転移の場合の特別な法律ができておりますから、その中にあります通り規定をいたしておるのであります。
  168. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これについて不服な場合はどういう救済の方法を考えておられますか。
  169. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 総理大臣に申し立てまして、そこで解決をするということにいたしております。
  170. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この五千人の定員の増加、これによりまして予算はどれくらいふえる予定でありますか。
  171. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 これは平年度におきましては約十億ばかりでございます。
  172. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私の計算では、十七億ぐらいの計算に、この与えられた資料から見ましても、なるのですが、それくらいでいいわけですか。
  173. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 その資料のどの方からでありますかわかりませんが、大体給与とそれから旅費及び最小限度警察官の働きに必要な諸費、被服費というようなものは考えております。この警察の現在の総予算を、警察官の数で割りました数字の割合にはふえないと思います。
  174. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今警察官に対しまして、ピストルを持たしてありますが、あれはどの程度に操作についての訓練をしておるのでありまするか。今非常にあれから受ける災害がふえておるのでありますが、それらの操作上のいろいろな監督、注意、訓練、それをちよつと伺いたい。
  175. 斎藤昇

    ○齋藤(昇)政府委員 警察官のピストルの使用につきましては、非常に鎭重を期して、万全の処置を講じておるのであります。訓練につきましても、私ははつきり数字は覚えておりませんが、三十時間くらいは初歩の訓練として訓練をいたしております。それを受けない者は事実上拳銃を発射させないようにいたしておる次第であります。
  176. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではほかに質疑もないようでありますから、地方行政委員会法務委員会連合審査会を一応終了いたしたいと思います。はなはだ不なれで皆さんに御迷惑をかけましたことをおわびを申し上げまして、これをもつて散会いたします。     午後一時二十七分散会