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矢柴公述人 ただいま御紹介のございました
矢柴でございます。今回の
地方税法の
改正案についてでございますが、これに関しましては、技術的な面が多いのでございまして、大
部分私どもは格別な所見を持
つていないものが多いのでございます。次にごく簡單にその点を申し上げてみたいと思います。
第一に、
附加価値税についてでございますが、
附加価値税について
加算法を採用せられたということでございます。これは
納税者の方の
便宜といろ点からそれが必要でありまするならば、さように
改正されてしかるべきものであると考えるのであります。ただ御
承知のように、府県の徴税機構というものが、まだ貧弱でございまして、その際に
控除法と
加算法と
二つの
方法があるということにな
つて参りますと、その間に若干複雑さがございまして、そのための徴税機構の方面における困難というものが、若干は予想せられると思うのであります。いずれにいたしましても、この問題についてはわれわれもまだ未経験なことでございまするし、今後の問題になるのではありまするけれども、ただいま申し上げました若干の徴税上の困難というものを犠牲にいたしましても、この
法案の
通りに
納税者の
便宜をはかるということでけつこうであると思うのであります。
第二番目に、
市町村民税でございますが、第一に
法人に対する
所得割を課けることに相な
つたことでございます。これは先ほども御議論がございましたが、税というものに応益的な要素がかなりあります以上、特に
市町村民税のごときにおいては、その要素がかなり強いものでありますことを考えますならば、当然
法人もまた実質上の
一つの
事業主体をなしておりますので、
所得割を課けるということは当然であろうかと存じます。第二番目に
個人の
所得に関する
源泉徴收の
制度が開かれた問題でございます。これも御
承知のように
市町村民税が非常に高いという評判があ
つたのでございます。またわれわれ自身もそのことを
納税する側に立ちまして、身にしみて感じたのでございます。しかしながら実際に考えてみますると、
市町村民税の税率は
国税所得税の約二割でございまして、このわれわれが高いと感じておることは、逆に申しますると、一度に相当まとま
つた税を納めるということが、
勤労者の経済状態に合わないという点が、大きな要素であ
つたように思うのであります。その点がこれによ
つて是正されるということは、まことにけつこうであると思うのであります。またその際にこの税が考えられました当初におきまして、勤務地の
市町村が全部とるという考え方があ
つたのでございまするが、これは私どもが極力反対したところでございまして、ほかの
市町村の住民につきまして、勤務地においてその
市町村が、
市町村民税をとるということはあり得ないことでございます。
〔
大泉委員長代理退席、野村
委員長代理着席〕
今回はその点についても、その考え方を貫いていただきまして、
住所地の
市町村にこれが送付せられるといういとにな
つておりますので、これもまことにけつこうであると思うのでございます。ただ問題はこの場合における徴收上の困難という問題でございます。おそらく大工場等におきましては、自分の府県だけではなしに、他の府県の相当多くの
市町村からさえ、通勤者があるということもかなりあると思うのであります。これの整理ということは
事務上の非常に大きな
負担になるのではないか、こういうことが心配せられるのであります。一般に
特別徴收義務者に対しましては、徴收交付金を出さないということにな
つておるのでありまするけれども、かような場合におきまして、われわれ
日本人の常識としましては、ある程度の徴收交付金という問題は考えられていないのではないか、かように考えるのであります。
なおその次に、この機会に問題であると考えますのは、現在の徴税機構の問題であります。
シヤウプ勧告におきましてそれぞれの自治体、それぞれの徴税主体というものが、みずから
税額をきめ、みずから徴收するという原則を打立てられました。これは地方自治という考え方から、理念的にはまことに筋の通
つた話であると思うのであります。しかしながらその結果はどうかと考えまするに、従来ありました
附加税の
制度が廃止せられ、また賦課そのものについてそれぞれの主体がみずから徴税令書を発行せねばならぬ。こういうことにな
つて参りましたために、
市町村、府県を通じまして徴税費の非常な増大を来しておる、こういうことは事実でございます。後に出て参ります
事業税の問題を考えましても、これは国の
所得税あるいは
法人税というものについての
課税標準が、そのまま採用せられ得べきものでございます。しかるにこれを別々に調査をしなければならぬ、また相当遠隔の
市町村に住んでおります
納税義務者に対する賦課も、やはり県で独自の徴税機構をも
つてやらねばならぬ。こういうことのために、きのうも長野県の副知事が申してお
つたのでありますが、非常に莫大な徴税費がいる。大体長野県では一割にな
つてお
つたようでありますが、こういうことにな
つておる。
シヤウプさんの理想はけつこうであるけれども、そのために現実というものをすつかり無視されておる、こういう感じがするということを申してお
つたのでございます。この問題は府県、
市町村というような縦の系統だけでなしに、横の問題としても考えねばならぬ。
市町村相互間においてただいまございます
源泉徴收についての非常に錯雑した状態ができて来るのであります。また
国税との間においても、われわれがその問題だけを取上げてみますと、非常にむだがあるという感じがいたすのであります。ひとしく公の目的を持
つておる団体という
意味におきまして、しかもそれが、同一の目的を持
つておるという場合におきまして、この徴税のために
一つの協同的な機構をつくる、あるいは協同的な
立場から、たとえて申しますと、
源泉徴收の税につきまして、ある
委員会で配分
基準をきめて、ある
市町村でとりまして、それをそのきめました配分
基準で分配してしまう、こうい
つた何らか徴税機構の簡素化と申しますか、
合理化といいますか、効率化といいますか、そういう
意味でも根本的な
改正というものがなされていいのではないか、こういう感じがいたすのであります。ただ非常に研究した問題ではございませんけれども、ただいまの徴税機構が
シヤウプさんの理想にあまりに忠実であ
つて、現実に対してはあまりに目をふさぎ過ぎるものではないか、こういう感じがいたすのであります。徴税機構の問題は、私どもも
結論を完全に持
つておるわけではございません。ただ感じだけをこの際申し上げておきます。
次に
固定資産税でございますが、
固定資産税につきまして、庶民住宅等の
使用者課税というものを廃止せられる。これは私どももこの
制度ができましたときに、
最初庶民住宅というようなものにぶつかりまして、非常に困
つたのでございます。ただこの税を提唱といいますか、待望を、むしろ私どもは
使用者課税のできる前に、いたしてお
つたのでございまして、その理由は、現在たとえば横須賀市というものをつかまえてみますと、これは国有財産が非常に多いのであります。その国有財産を一時使用で借りまして、多くの
会社がここで工場を経営する、
事務所を開くというようなことをいたしておるのであります。さような場合に、これに対して全然税が課からないということは、
課税の公平という
意味から考えましても、おかしいものではないか、また
地方団体の財政という点から考えましても、これは何とか
措置すべきものである、こうい
つた考えを持ちまして、さような
意味で、私どもはこの
使用者課税を待望いたしたのでございます。たまたま出てみますと、問題になりましたのが、この庶民住宅の問題なのでございます。これはちよつと困
つたと私どもも正直そう感じたのであります。さような次第でございますから、この際
固定資産税の
使用者課税の廃止につきましては、公の財産が
個人のために使われておるというような、ただいま申しました横須賀の工場のような事例、こういう場合につきましては、これは存置していただいていいのではないか、こういうふうに考えます。あるいはこれを法定外の税として各
市町村に認める、こういうお考えもあるやに承
つておるのでありますけれども、なかなか特別なめんどうな
手続をも
つて新しく税を起すということは、
市町村にと
つてはまことに容易なことではないのでありまして、さような御趣旨でありましたならば、條例をも
つてさような場合に
使用者に対する
課税をすることができるということを、初めから
法律の中にうたい込んでいただくということがいいのではないか、かように考えるのでございます。なお根本にもどりまして、ただいま申し上げましたような国の收益資産、これは国鉄、專売公社の
問題等を含めての問題でございますが、かような財産というものに関しまして、これに対する
課税権が地方に全然ないということは、非常に不合理であると思うのであります。昔国有林野が非常に多い
市町村に対しましては、国からこれに対する税の欠損に対する交付金が出されてお
つたのでございます。そういう点から考えてみましても、收益財産に対する
課税は、これは国のものでありましようとも、あるいは各種公団のものでありましようとも、当然あ
つてしかるべきじやないか。この方面に何ら
措置がありませんために、特にそういうものがかたま
つておる地方、今横須賀市を申し上げましたが、おそらく呉、佐世保というような方面においても、同様の問題があろうと思うのでありますけれども、多くの工員をかかえて、
市町村の與える利益という方面については非常に多くを受けている
事業、あるいはその
事業に使われている資産、こういうものについて税がないということは、これは応益原則という点から考えましてもおかしなことである、かように考えるのであります。この点をこの機会にお考えをいただきますれば、仕合せであると思うのであります。
次に
固定資産税につきまして、
償却資産の問題であります。
償却資産は
固定資産総額のうちの約二割という
金額にな
つておるようでございます
——一九%ぐらいにな
つているように思いますが、この税は県内の
市町村というものをと
つてみますと、非常に偏在税種でございます。山奥の小さな村に千万円を單位にして勘定するような
税額が、すつぽりと入
つて来るというようなこともありますれば、また工業都市というようなところに、非常に多くの
固定資産税が課か
つて参りまして、ところによりまして、税收総額に比べましてこれが四割、五割というような
金額にな
つているところすらあるのであります。さようなところになりますと、これは当然
標準財政需要というものを上まわ
つた税收になるのであります。平衡交付金を受けない
市町村というものが、そこにできるわけであります。その場合におきまして、その
市町村の得ました税收というものは、本来の
計算から申しますれば、全地方自治体の
税金として、平衡交付金法によ
つて計算されておりますはずのものが、これが
一つの
市町村のために逃げてしまうのであります。少い税をも
つて日本中にできるだけレベルの高い行政をしようという考え方を持ちますならば、当然かような税というものは、あまりに偏在のために不公平の起らないような範囲において、徴收するということに改めていただいていいのじやないかと思うのであります。かような
意味におきまして、私は、現在の
償却資産に対する
固定資産税というものは、府県税にしていただくのが当然である、妥当である、かように考えるのであります。特に
償却資産に関しましては、評価ということが非常に問題になりまして、しかもこれは
市町村間の統一ということは非常に困難なことでありまして、非常に不均一なものにな
つて来る、こういうことも当然考えられるのであります。ただいまの
制度では著しく
固定資産税のあるような
市町村につきましては、これを付近のその仕事に何らかの関連のある自治体に対しまして、配付をするというような
制度が設けられておりまするけれども、この
制度もおそらく全国的にスムーズにその目的が達成されるということはないであろうと、かように考えるのでございます。
次に
事業税でございます。
事業税に関しまして申告納付の問題と、それから分割
基準の明確化ということが行われました。これは非常にけつこうなことなのであります。私神奈川県でございまするが、神奈川県のようなところでは、大
部分の
法人というものは、その本社を東京に持
つておるのであります。さような場合におきまして、東京都の税務の吏員がサボ
つておるなどと申し上げるのではございません。一生懸命でや
つてくれておるとは思いまするけれども、その大
部分の税收を他府県に持
つて行かれるとい
つたよろな税につきまして、非常にめんどうな帳簿の検閲をいたしまして、適当なる否認額を算出するというような大骨はなかなか折れるものではないのであります。この配分の問題は、昔府県が中央集権のもとに、完全な統制された一体でありましたような時代におきましては、それほど弊害も目立たなか
つたと思うのであります。現在のように府県が自治体として公選知事のもとに、それぞれ
独立して仕事をや
つております場合に、ここで他府県の徴税吏員が自分の方にあまり
関係なくて、よその府県に非常な
利害関係があるというような問題につきまして、大骨を折
つてくれるということは、期待することが困難なのでありまして、これは従来の私どもの非常に大きな悩みでありました。これが今回の
改正によりまして相当改善をせられるということは、非常に善ばしく思
つておるところでございます。ただしかしながらこの際におきましても、なお問題に残
つておるのであります。この種の税につきましての徴税機構というものについての根本的の考え方というものは、いま少しく新しい地方自治の姿に応じまして、研究し直す必要があるのではないか、かように存ずるのでございます。なお
事業税につきまして、これは本年一年だけの税ということに相な
つておりますので、必ずしも強く主張するわけではございませんけれども、この税がいわゆる累進
課税の税でございませんために、零細な業者にかなり重い点があるということは事実でございます。かりに
所得税が千円という業者を抽出して考えてみますると、その業者の
所得金額というものは、各種の工場の問題を考えてみますると、大体八万円程度になるわけです。すなわち八万円程度の
所得のある者は千円の
所得税を納めるということになるわけでありますが、それに対しまして
事業税は幾ら納めるということを考てみますと、これは九千六百円納めるということになるのであります。ただいま
事業税に関しましては、二万五千円の
免税点が設けられておるのでありますけれども、これは
免税点でありまして、
基礎控除でありませんために、かような問題が起
つて来るのでありまして、この際ある程度の
基礎控除を
事業税に考えていただくならば、その点の
欠陷がかなり是正できるのではないか、かように考えるのでございます。
次に国民健康保險税でございますが、これについてはただいまお話がありました
通りでございます。格別な所見を持
つておりません。それからその他一般的に今度の
税法改正案は、字句の整理あるいははなはだしい罰則等についての若干の
修正が行われたのでございまして、これでけつこうであると私どもは考えるのでございます。なおこの際現在の
税法について技術的に考えてみまして、これは何とかしていただかねばならぬ、こういうふうに私どもが考えておりますものを申し上げてみますと、船舶税の問題でございます。これは
市町村の税でございまするが、船舶に対する
固定資産税あるいは船舶税の問題でございます。こうい
つたような問題に関しまして、こういう移動を非常にやります資産というものについて、どの程度にこの
標準をとるかということは、非常にむずかしい問題でございまして、か
つて不動産取得税のありました時代でございますが、船舶についても取得税がございました。その当時に私どもはよく談判を受けたものであります。一体あなたの方はおれのところの税を幾らにしてくれるか、東京はこう言うておる、静岡はこう言うておる、安いところへおれは船籍を持
つて行く、こういうことを申すのであります。同様な問題が現在
市町村税として船舶について残
つて来ております。これらの
課税標準の決定というものに関しましては、何らかの統一した
措置というものを講ずる必要があるのじやないか、かように考えるのでございます。
以上現在の
税制につきまして、
改正の必要というようなものを、この
税法そのものに即して申し上げたのでございます。
しかしながらお許しを得まして、根本的に
地方税法あるいは
地方税制全般の問題として御考慮をいただきたい点を申し上げたいと思うのであります。御
承知のようにただいまの
地方税法、これによりまして、府県は非常にはなはだしい窮迫に陷れられたのであります。御
承知のように現在の
税制をもちまして、府県が自分の税收をも
つて義務費中の義務費であります義務教育費をまかない得る府県が幾つあるか、大体義務教育費に自分の税收が足りないという府県が、七割以上にな
つておるのであります。少し広く考えてみますと、ほとんど全部と言
つていいほどの府県が、税收を全部ぶち込んで、やつと教育費がまかなえるか、あるいはわずかにその一
部分に達するか、こうい
つた状況にあるのでありまして、換言いたしましたならば、ただいまの
税制といろものは、府県に対しまして税をと
つて義務教育費だけはまかなえ、あるいは義務教育費の半分だけはまかなえ、残りの仕事はすべて平衡交付金を国がきめてやるから、それでその範囲内でまかなうようにすればよかろう、こうい
つた税制なり、平衡交付金
制度に相な
つておるのであります。ことに
税額が過小であります結果、すべての府県が平衡交付金を受けるということに相なるのでございまするが、平衡交付金は、
シヤウプさんも、最大限の徴税努力をも
つて、最小限の行政を行わせるように配分をするのだということを言
つておられるのであります。これは全体の府県がその状態に追い込まれることになるのでございまして、ことに税につき直しては、このたび平衡交付金法の
改正をせられまして、
基準税收として八〇%をとるということを申されております。かように考えて参りますと、徴税成績の非常に悪い昨今におきまして、八〇%を
基準税收として
標準財政需要から差引きまして、その残りを平衡交付金として與えるということになりますると、税というものはもうその府県が徴收の義務を有する、そして滞納についての危險を
負担するというだけの
意味しか考えられない、それに近いものにな
つて参るのであります。かような状況では、自治というのは、はなはだ愚かなことにな
つて来ると思うのであります。特に平衡交付金の総額が、ただいまのように根本にさかのぼ
つて、常に
金額としての査定が行われておる、またその配分の
基準というものも、決して客観的なうまい
基準というものは認められるものではない、こういう状況にな
つて参りますると、地方財政というものは中央まかせ、人まかせのものにな
つて、自治というのはま
つたく名ばかりになると思うのであります。現に私どもは二十六年度予算の編成を、ただいまや
つておるのでありますけれども、私どもは自分の金が一体幾らあるのか知らないのであります。税につきましては、各種の資料からある程度の見通しもつけます。またそこに若干のインフレによる増額もあるだろう、これも見通しをつけます。けれどもそれをつけてみたところで何にもならぬのであります。その分平衡交付金が減
つて来るであろう、こういうことを考えてみますると、中央で一体自分のところの税收を幾らに見てくれ、自分のところの
標準財政需要というものを幾らに見てくれるか、それがきまらぬことには、われわれは自分がどれだけの金を持
つておるのかわからぬのであります。いわんやそれを
基礎にいたしまして、仕事の計画をするということは不可能であります。またかりにそれをある程度の見通しをつけて始めるといたしましても、途中で、
法律によ
つて大きな義務費がわいて参ります。あるいは今回のべース改訂のような問題が出て参ります。そのたびにそれだけの
金額が中央から與えられるのでございましたならば、問題はございません。けれども、そのときにな
つて、その分として全然くれなか
つたり、ごく一部をくれたり、まるでどういうことになるのか、見当がつかぬということでありますると、不安でいたし方がないということになるのであります。何よりも申し上げたいのは、こうい
つたことはりくつではございません。現実に各府県がただいま與えられました税收と、平衡交付金というものをも
つては、自治体としての運営をや
つて行くことができないというはめに、陷れられておるということでございます。これを救うために、根本の問題としましては、どうしても
地方税、ことに府県税をふやしていただかなければいかぬ。特に普遍的な税をふやすということが、平衡交付金を受ける府県を、少しでも少くするという
意味においていいのでありまして、これは
市町村についても同様かと思いまするが、現在の府県のように、特に普遍的税收が與えられておりませんところにつきまして、その配慮が切に望まれるものであります。酒やタバコの消費税でありますとか、ガソリン税でありますとか、あるいは府県民税でありますとか、こうい
つたものをお考えいただくことが、まことに必要であると思うのであります。近来教育
関係で、教育税ということが言われておりますが、どこの府県に行きましても、一般財源について申しますならば、教育費がほとんど全
支出中の五〇%以上、五五%というような比率を占めておりますときに、これに対する最もいい税として、普遍的な税種である府県民税というものが考えられていいのじやないか、かように考えるのであります。
なお、この際当面の問題としてお願いを申し上げたいのでございまするが、現在の平衡交付金の問題でございます。現在の平衡交付金を
算定するにあたりまして、政府が非常に大きな、ほとんど常識をも
つて考えがたい誤りを犯しておるということを皆様方に訴えまして、その是正をお願い申し上げたいのでございます。
すなわち平衡交付金の今回の
算定にあたりまして、給與ベースの改訂について、大蔵省は一律に一人千円ということで
計算をいたしておるのでありまするが、神奈川県だけを考えてみましても、今度のベースの改訂だけで、四億六千七百万円という大きな金がいるのであります。また教員について考えてみますると、教員の俸給というものは、比較的高いのであります。私どもが
昭和二十四年に文部省から神奈川県のべースとして示されました
基準そのままをとりまして、切りかえをや
つてみましても、一人当り二千八十円ばかりの
金額に相なるのであります。結局政府はこの問題について、百六、七十億の金しか予定いたしておらぬようでありますけれども、実際はこれが倍いるということであります。これらの問題は、実地について少しく検討されたならば、ただちにわかるはずの問題であります。これをいたずらに耳をおおうて、千円で
計算をせられたというところに、その意図がどこにあるのか、私どもは非常に遺憾に存ずるものでございます。
さらにまた先ほども申し上げましたように、法令
改正に伴
つて、地方に義務
負担というものをかけまして
金額についても、大きな
算定の誤りがございます。また、これは非常にはなはだしい問題として、地方に雑
收入が百八十億あるという
計算を、大蔵省はしておられるのであります。それでベース改訂をまかなえ、こういう
計算をされたようでありまするけれども、これはまことに大きな間違いでございまして、神奈川県で
計算をしてみましたところ、雑
收入は
昭和二十五年度予算で、ちようど五億円ございます。けれどもその中でほんとうに一般財源を見得るような雑
收入は二、三千万円、そのほかに競馬、競輪等の益金が六千万円、その程度あるだけのものでございます。その他の雑
收入というのは、各種の特別会計に
支出いたしました運転資金でありますとか、あるいはたとえば水産試験場で漁をやる指導船を持
つておりますが、これが外へ出まして水産指導をするかたがた、魚をと
つて参ります、こうい
つたような費用、それぞれ
收支とんとんと申しまするよりも、むしろマイナスにな
つておる一部なのであります。そうい
つた状況でありますにかかわらず、これを百八十億と見るというようなことをいたし、平衡交付金の総額を減らす改訂にかかわらず、ほとんどしないというような状況に追い込まれ、さらに起債のわくにおきましても昨年を下まわる一方、
事業の方は公共
事業費もふえておれば、また災害に関しても多くの
負担を地方に課そうとしておる、こうい
つたような状況にあるのであります。これでは府県はほんとうにや
つて行けないのでありまして、私どもは人権費と
事務費というものをまかなうこともできない、こうい
つた状況に追い込まれて参
つております。さきに予算
委員会に知事がこの点については資料を差上げておりまするので、くだくだしく申し上げることを省略いたしまするが、ただいまの状況ではどうしても
事務費すら
支出に困難を感じ、いわんや一般の行政というようなものは考え及ばない。また公共
事業についても、これを全額遂行するということはほとんど不可能に近い、こういうのが全国の府県の現在の状況でございます。
以上たいへんくだくだしく申し上げましたが、かような平衡交付金の状態というものを、すみやかに是正していただきまして、当面の府県の危急をお救いいただきますると同時に、また
市町村についても、その財政の窮迫を緩和していただきますとともに、根本的な問題といたしまして、今回出ましたような
地方税法の
改正案でなしに、さらに根本的な地方自治を真に地方自治たらしめるための
地方税の
改正を御企画いただくように、切にお願いをいたす次第でございます。