○砂間
委員 先ほどからの
大橋法務総裁の御答弁を聞いておりましても、これは
犯罪の性質によるとか、あるいは政治的な性質の
犯罪だとか、こういうふうなことも申しておられましたが、普通の訴欺やどろ棒や火つけや人殺しをつかまえるのには、今の
警察制度で十分できると思います。集団強盗とかいうふうなものも間々起
つておるようでありますが、しかしそういうのもたいていつかま
つておるようであります。また
自治体警察がそういう事案について手が及ばない、力が及ばないというときには、それはすなおに
国家警察に応援を依頼するでありましようから、特にこういう
規定を設ける必要はない。そうしますとどうしてもこれは
犯罪の性質ということは、何か階級的な政治運動あるいは労働者の運動とか、そういうふうなものに関連した一つの彈圧の措置として、あらかじめ計画しておるというふうな――これは必ずしも邪推ではございませんが、そういうような感じが、答弁の言葉の間からふんぷんとしてかおりがして来るのであります。過去の三年間の経験と申しましても、私どもに大体想像されますことは、やはりそうい
つたふうなことではないか。たとえば具体的な例をあげて申し上げますと、もしこういう例が該当しないということであれば、そうおつしや
つていただけばけつこうでありますが、たとえば吉田内閣の悪政によりまして、非常に苛斂誅求をやられて、とても人民が生きて行けないような悪税を取立てる。その税金を納めてないと、もう差押えにや
つて来る。そうしてトラツクを持
つて来て、武装警官が出動して来て家財道具をみんな持
つて行く、こういうふうなことは
政府の悪政の結果でありまして、こういう悪政をしきますと、全国的に大きな反税闘争が起
つて来るのはあたりまえであります。個々の場合火つけとか、どろぼうとかいうのは個々の不心得者がありまして、偶発的に起
つて来るのでありますが、こういう悪政の結果起るところの一つの
民衆の反抗運動は、相当全国的に起
つて来る可能性があるのであります。あるいはまた、労働者に対しまして低賃金で徹底的に超過労働でしぼり上げる、こういうふうなことをやりますと、労働者は当然労働組合をつく
つておるのでありますから、大きなストライキの波が全国的に上
つて来る、それからゼネストというふうな事態も起
つて来る可能性は幾らもあるのであります。しかしながら、一方においてこの
自分の失政の結果、そういう事態が発生するような要因をつく
つておきながら、それから起
つて来た運動を、これは
国家治安維持上捨てておけない
自治警なんかにはとてもまかせておけないということで、
国家警察で断圧しようということになりますと、これはとんでもない間違いでありまして、本来種をまいておりのは
政府の政治のやり方が悪いのでありますから、
自分の悪政をたなに上げて、ただ
警察力をも
つて、暴力によ
つて人民を断圧する、こういう結果になるわけであります。最近の事例といたしましても、たとえば平和の声という新聞がありました。これはその内容から行きましても、私どもは何ら治安上不穏当というふうなものは感じないのでありますが、それがいけないということにな
つて、多数の人が
検挙されておるのであります。しかしこれがいけないものであるならば、それは発行をさしとめておけばいいのであります。それを合法的に十号も二十号も出させておきながら――合法的に出ておるのでありますから、
地方の
人たちは朝日新聞や読売新聞を取継ぎしたと同じように営業行為としてこれを発売頒布しておる。ところがそれを二十号も過ぎたあとで、あれはどうもアカハタの後継紙だと認定したという口実をあとからつけて発行停止し、それ以前に配布したものまでも
検挙し投獄しておる。しかもその
検挙や家宅捜索の場合、不法なやり方をや
つておるのでありまして、必要もないような多数の武裝警官を出動させて、そうして立会人もつけないで屋内に不法侵入いたしまして、――
捜査令状を持
つて来ておるのでありますから不法侵入ではありませんが、必要以上の多数の者が押しかけまして、そうして立会人もつけずに、か
つてにそこらをひつくり返しまして、探しまわ
つておるというようなことをや
つておるのでありまして、そういうふうなやり方は、これは
政府としてどういう言い分があるかしれませんが、少くとも人民といたしましては、はなはだけしからぬ
政府の断圧だというふうに、
一般の
人たちが感じておることであります。こういうふうに何かの政治的な意図によ
つて、たとえば戰争を推し進めようというふうな政策を、
政府がひそかにや
つておるときには、戰争に反対する言論
機関や、あるいはそういう平和の運動をする人を不法に断圧する。その場合に
自治体警察なんかではなかなか手ぬるい、むしろ
自治体警察の署長や警官の中には、平和の声に賛成し、講和
投票に署名しておる人もたくさんあるわけでありますが、従
つてそういう者も取締る、それを中央の
政府の
方針によりまして、こういうふうな者まで断圧しろという場合には、
自治体警察だけではなかなか思うように行かないので、こういう第二十條のこの
規定を設けまして、そうして府県知事をそそのかしまして、
国警の方から手をつけて行く、こういうふうにする
ための
改正ではないかというふうに、私どもには解釈されるのであります。と申しますのは、特に
大橋法務総裁のごときは、この一月以来におきましても、共産党の非合法化、あるいは共産党の解散というふうなことを、何べん新聞に声明発表して来ておるかしれません。ところが今の事態では、なかなか多数の共産党員は、一挙に解散彈圧することができないので、予備隊を増強したり、いろいろ
警察力の増強をはか
つている。しかしそれも国際
関係もありまして、表面目に立つような
方法ではできないので、
自治警を
国警の下に従属させて、
国警が
自治警を使
つて、市
町村まで踏み込んで行く。あるいは
住民投票によ
つて、
自治警は
財政的に非常に窮迫しておりますから、そういうところに廃止の決議をさせて、それを全国の
国警に收容して行こう、こういうふうな形で
警察力の増強をはか
つて、十分自信がついたところで、共産党の非合法化、解散をやるんだというふうな動機が含められておるのではないかというようなことが、先ほど来の山手君や門司君の質問に対する
政府委員の答弁を聞いておりますと、これは私は邪推ではないと思いますが、そういうふうな臆測ができるような可能性が、非常にたくさんうかがわれるのであります。しかしもしそういうことを目的としておるのでない、労働運動の彈圧や、
ほんとうの正しい意味での平和運動、あるいは特に共産党の彈圧の
ために、
警察力の
強化というふうなことを
考えておるのではないというのであるならば、その点をひとつここで明らかにしておいていただきたい。そうしてここにいわゆる治安維持上重大な事案につき、やむを得ない事由ということについて、たとえば集団暴力行為というのは、どういう場合のことをさすのであるかというようなことについて、これをもつと率直に具体的に明確にしていただきたい。