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1951-02-17 第10回国会 衆議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十七日(土曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 門司  亮君       生田 和平君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    吉田吉太郎君       床次 徳二君    山手 滿男君       大矢 省三君    久保田鶴松君       木村  榮君    立花 敏男君  出席政府委員         国家公安委員長 辻  二郎君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の会議に付した事件警察に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件を議題といたします。昨日警察法改正に関しまして参考人より意見を聽取いたしたのでありますが、本日は国家公安委員長及び国警本部長官の御出席を願いまして、警察法改正に関して、いろいろお考えになつておるところの御説明を聽取いたしたいと思います。辻公安委員長
  3. 辻二郎

    辻政府委員 それでは私から一応ただいま政府研究いたしております警察法改正の骨子について、御説明をいたします。  五、六点ございますが、第一は国警の現在の定員三万を五万に増加いたしたい、こういう点であります。この問題につきましては、過去三年間の経験によりまして、現在の国警の三万の定員が非常に手不足になつておる事実が明らかになりました。三万でありますが、そのうち常時管区学校に九千名の定員がございまして、現在は約五千名を入れております。従つてそれだけ減員になりますので、実働は二万五千ないし二万一千という数字になります。地方駐在所等も二割方警察官がおらないというようなところができておるのでございまして、治安上非常に不安に考えられるのであります。なおこの、問題の詳細につきましては、国警長官から申し上げます。これが第一点の国警増員の問題でございます。  第二点は、自治体警察定員の問題でございます。これは現在全体として九万五千のわくがあるのでございますが、これを各自治体がそれぞれ必要に応じて、定員自分自治体要望によつてきめるというふうにいたしてはどうかという問題でございます。これは発足当時昭和二十二年の人口基準で配分をいたしましたものが、その後の二年間におきまして、各都市、ことに戰災都市のごときは、おびただしく人口増加を来しており、方々都市から定員をふやしてくれという要望書陳情書が、国家公安委員会にも山積しておる状態でありますし、各地方をまわりましても、とても足りないという要望を聞くのであります。しかしながら、全体としては九万五千のわくがございますので、足りないとすれば、他の自治体からまわすよりほかに方法がないのでありますが、相当多数を持つております大都市におきましても、治安上現在の定員を割愛することはできないということで、非常に困つた問題になつておるのであります。その点につきましては、現在のように各自治体が経済的に独立しておるという姿になりました以上は、その自治体の要求するだけの数字を、自分費用をもつてまかなうようにしたい。従つて全体の定員わくをはずさなければならないという結果になると考えております。これが第二点であります。  次には国警並びに自治体警察相互応援関係でございます。これは現在までの法律におきましては、自治体警察国警応援を要請する場合、国警から応援に出ました費用等については、法律に明記がございませんでした。これを明文化いたしまして、自治体警察国警応援を要請した場合に、その費用国警負担するということを明らかにいたしたいと考えておる次第であります。費用の問題がはつきりいたしませんと、ほんとうに応援を早く要請しなければならない場合でありましても、自治体警察がこれを躊躇することがしばしばありまして、事件が拡大してから非常に不利になるという事例がしばしばございました。また小さい自治体警察のごときは、非常に費用がかさみますので、とうていその負担にたえ切れないという事実があるわけでございます。また自治体警察相互応援につきましては、国警が仲介をいたしまして、国警に申出てもらえば、自治体警察から自治体警察にも応援ができるようにいたした。その場合の費用もやはり国警負担をする。こういう場合は大体非常に大きな事件の場合でありますから、国の治安国家負担すべきものであると考えておる次第でございます。こういうふうに改正をいたしますためには、警察法の五十五條の改正が必要になつて来る次第でございます。  その次には小さい自治体警察存廃の問題でございます。御承知のごとく現在約千六百の自治体警察が、それぞれ独立に分立をいたしております。その小さいものは七、八名ないし十名というのが非常に多いのでございます。これらの自治体警察は、旧警察制度の時代におきましては、駐在員一人か二人くらいのところに、大体一人くらいの警察吏員が配置されておる状態になつております。こういう小さい自治体警察におきましては、平素あまり用がございませんが、いかに小さくとも一つ警察署を形づくるためには、最低どうしても十人くらいの人がいるわけであります。内勤もいりますし、外勤もいる。署長がいりますし、小使もいるという次第でありまして、ある一定数はどうしても入り用であります。しかしながらこれが独立した警察となりますと、もしその町に何か少し大きな事件が起りました場合には、十人や十五人の人数では絶対にいかんともできない状態にございます。平素あまり用がなくて、いざというときには間に合わないというのが、現在の小さい自治体の悩みであると思います。もちろん警察吏員のための費用も、自治体にとりましては非常に莫大な金額になりますので、過去三年間におきまして、小さい自治体警察を廃してほしい、返上したいという陳情書決議書等が、私ども委員会に山積いたしております。実際に地方をまわりましても、その通りの実情がよく看取されるのでございます。しからばこれをどうするかという問題でありますが、この小さい自治体警察を各自治体がどうしても持つていたいということであれば、地方自治の精神から申しまして当然持つてつてさしつかえない。しかしどうしても自分ところでは持ちきれないというところはこれを国警に編入する。それをどこできめるかという点についてはいまだ結論が出ておりませんけれども町村の議会もしくは住民投票等の民主的な方法によつて持つ持たないをきめて、これを国警に編入してはどうかというのが、この小さい自治体警察存廃問題であります。市以上のところは、市は当然自治体として完全な一つの形態であると考えまして、これは必ず自治体警察を持つことにいたしまして、町村についてはそれぞれの自由意思によつて存廃をきめたいと考えておる次第であります。これは治安上今までのいろいろの事件考えてみましても、小さい自治体が弱いために、非常に困つた事案がたくさんございます。たとえば労働争議等に関して、不法行為が起りましたような場合、十人や十五人の警察官ではとうてい数百や数千の勢力に対抗するということはできない。また工業都市のようなところ、たとえば日立であるとか、あるいは炭鉱都市のようなところにおきましては、大体その町はほとんどそこの会社職員によつて形づくられておる。また公安委員会社職員の中から出ておるというふうな例もたくさんございます。こういうところで、何か騒擾事件のようなものが起りました場合に、その小さい自治体警察は手に負えないと思えば、さつそく国警応援を要請すればいいはずであります。しかしながら実際問題といたしましては、その町の大部分の人の意向に反して、国警応援を要請することはなかなかできにくいものでありまして、公安委員会は非常に消極的になり、警察長も極度に消極的になり、従つて事件を拡大してしまうというような事例がしばしばあるのであります。その次の問題は特殊の犯罪であります。この犯罪の種類につきましてはまだ研究中でございますが、たとえば内乱のようなもの、あるいは全国的な騒擾事件とか、団体等規正令違反のような犯罪、あるいは通貨偽造、あるいは証券偽造といつたような特殊の犯罪につきましては、国家地方警察自治体警察の管内においても司法権行使し得るようにいたしたいと思います。これはいろいろの理由はございますが、もちろん各自治体が非常に強力な警察を持つておりまして、十分にこの特殊な犯罪についても取締りが行われておる場合には、国警出動する必要もございませんし、またそんな意図もないのであります。しかしあまり有力でない自治体警察官内におきましては、こういう犯罪はしばし、取締りが非常に困難に陷り、事実上できないという場合が多いのであります。たとえば密入国あるいは密貿易といつた問題が起りました場合に、密入国は山口県の某港の市に密入国をするのではなくて、日本密入国をして来るのでありますけれども、地理的な関係で某港の市がしばしば密入国の入口になつているという場合に、その町の自治警察はたえずそれを取締まらなければならないということはその町にとつても非常に大きな負担であります。またその町には直接さのみ大きな治安上の影響がない、その町を通り拔けて日本のどこかへ入つてしまうというような場合には、その自治警が消極的になるのはまことに自然なことだと思う。また通貨偽造のような場合におきましても、ある町で一枚の千円紙幣偽造が発見されたというような場合に、その町でこれを捜査し、犯人を逮捕するということは事実上困難であります。その偽造紙幣がほとんど全国的に数百枚通用しておるというような場合には、全国的な情報によりまして、それを検挙するということは可能でありますけれども一つの独立した自治体だけで、これを取締るということはきわめて困難であります。従つてこの点に対しても自治体警察が非常に消極的になりまして、ほとんど手をつかねておるというような状態が、現在までしばしば起こつたのであります。こういう場合にそこの自治体が強力で十分にその捜査なり逮捕をやれば、もちろんよろしいのでありますけれども、それをやらなかつた場合に国警出動して司法権行使する。但しこれは国警権限のある種の特徴になるわけでありますが、こういう法律によりまして、いろいろな弊害が起り得ることは考えられるのであります。従つてそれに対しては特殊の犯罪法律によつて明記いたしまして、また国警出動する場合には、事前当該自治体公安委員会に申入れを行いましてやり、その他の弊害の起らないような十分なる制約を設ける必要があると思うのであります。先に申し上げました小さい自治体で、騒擾事件などが起りました際に取締れないと同じことが、やはり権限の問題にも関連いたしまして、公安委員会が機能を事実上喪失してしまつた、極端な例では公安委員会がつるし上げになつてしまつたというような場合もございます。そういう場合には向うから応援の要請をしたくもできないのであります。そういう場合に国警出動する、こういうような法規にいたしたいと考えております。  それからもう一つ犯罪情報交換であります。現行法におきましては、個々犯罪情報において交換をすることは規定されておりません。千六百の警察がそれぞれ独立いたしておりますために、全国的にまたがつた犯罪、あるいは他府県に関連のある犯罪等につきまして情報をまとめ得ない、従つてその犯罪捜査が非常に困難になるというのが現状であります。各自治体国警情報を集めて、国警はその犯罪関係のある情報自治体に必ず通告する、こういうふうにいたしたいと考えておる次第でございます。これらの問題は一部に国警権限拡張というような非難もあるようでありますが、そういう考え方は毛頭ないのでありまして、現在困つておりますこういう問題をどうすればいいか、一生懸命われわれが考えました結果、ただいまの小自治体警察の廃止、あるいは特殊犯罪に対する国警権限行使というようなことになつた。それよりもよい方法があるならばお教えを願いたいと思つておるのであります。  このほかに関連いたしました犯罪、一人の犯人が数犯を犯しておりますような関連犯罪、これにつきまして現行法を改めたい点が一つございます。しかしこれは多分に技術的な問題でございますから、長官から御説明申し上げます。  それからもう一つ公安委員資格の問題、現在では過去において警察官もしくは職業としての官吏履歴のあつたものは一切いけないということになつている、従つて非常に公安委員選択範囲が狭められるのであります。人材を得にくいということになるのであります。大都市であるとか、あるいは県の公安委員範囲の場合に、非常に広い範囲から選択ができますが、自治体の小都市、あるいは現在の町村等におきましては、その中から官吏の経歴の全然ない、しかも良識のある人を公安委員に三名選び出したいということになると、事実上非常に困難が伴います。この点につきましては、過去十年間において官吏履歴のない人であれば、公安委員資格を認めてほしいという点を、私ども考えておる次第でございます。ごく大体に御説明申し上げますとただいまの点でありますが、なお国警増員の問題、関連犯等の問題、その他の点につきましては斎藤長官から、さらに補足して申し上げたいと思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま辻公安委員長から、私から補足するようにというお話がございましたから、その点を補足いたします。  国警人員増加の点につきましては、大体公安委員長から今日人員不足で困つている点を御説明になつたのでありますが、さらにつけ加えて申し上げまするならば、そのほかに国警一つの職責でありまする自治体警察に対する応援義務でありますが、たとえば昭和二十五年中におきましては、自治体警察に対して応援に出ました件数が千三百十件、延日数にしまして六千八百七十三日、延人員で十万五千、二十四年中におきまして、件数で千六百三十一件、延日数で五千百九十九日、延人員で十二万二千五百人という数になつておるのであります。同一府県内で数箇所から応援を要請されるという場合には、この人員不足のために、これに応じ切れないというような事柄が予定をせられるのであります。今後の治安情勢考えますとき、ある程度の人員増員をしておくということが、絶対不可欠のように考えるのであります。地域的に申しましても、たとえば北海道にありましては国家地方警察定員は千四、五百名しかないのでありますが、あの広い地域、ことに海岸線等におきましては、ほとんど警察官がいないというような状況であります。今後の情勢を勘案いたしますると、先ほど公安委員長からお述べになりました事柄のほかに、そういつたような面におきましても、警察官相当数増員をいたしまして、治安の完璧を期する必要があると考えておる次第であります。  それから関連犯の点につきましては、警察法第五十八條によりますと、一つ犯罪管轄区域をまたがつて行われた場合、あるいは一つ管轄区域始つて他管轄区域に及んだという場合には、その管轄区域を越えて職権行使できるのでありますが、この規定は個々犯罪に限定しておりまするので、たとえば同一犯人が数管轄区域にまたがつて犯罪を犯したというような場合には、それぞれの管轄区域警察で、別々に捜査しなければならないということになつておるのであります。たとえばAの町である殺人強盗犯があがつた、そしてこれがB、Cその他の自治警あるいは国警地域で同じような殺人罪強盗あるいは窃盗をやつたということがわかり、また自供したといたしましても、これをあげた、また捜査を主としてやつたAの町村で本人を調べて検挙をするということはできず、B、C、Dそれぞれのところで別々にやるという建前になつておりまするから、これは実際上の便宜の問題といたしまして、Aの警察で、それぞれの余罪を全部追及できるようにした方が便宜だと考えて、その改正をお願いいたしたい、かように考えておる次第であります。
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは両政府委員に対して質疑を許します。山手滿男君。
  6. 山手滿男

    山手委員 辻さん及び齋藤長官からのお話で、意図しておられる警察法改正そのほかの問題のアウトラインは、大体わかるような気がするのでありますが、二、三の点について御質問をしてみたいと思います。  今しよつぱなに、定員を約二万人増加しまして、五万人にするというお話でございますが、現在の国家警察の三万人という方々は、一つの村の駐在所にぽつつとおられる。それが全国的な広い区域に散在をしておるわけでございまするが、二万人ふやすといたしまするならばどういうふうなぐあいにこれを配置する御意図であるか、その点をお伺いしたいと思うのでございます。
  7. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま公安委員長から御説明がありましたように、管区学校には九千人を入れておきまして、常時教養をいたしますと同時に、何か事のあつた場合には、そこからまとまつて出動ができるという態勢にあるのでありますが、今日は定員の都合上、四千人前後しかこれに入れ言」とかできませんので、できるならばこれを九千人まで増加いたしたいというのが一点、そのために四、五千人をこれに充てるということになるのであります。  それから各府県におきまして、常時は警察仕事をやりまするけれども、何時でも急にその場所に集まり得るという態勢のもとに大部分を配置いたしたい。警備の緊急に応じて、ただちに集まつて出動ができるという態勢に約一万人を置きたい。その他の者は、今日警察の手不足を感じている方面に配置しておきまして、召集の場合は、あるいは少し時間を要するかもしれないけれども、数時間かければ召集ができるとしいう状態に置いて、駐在所の欠員のところへ補充しましたり、あるいは警察官不足のために、やりたい捜査その他の仕事に従事できないという方にふだんは当らせておきたい、大体こんなふうに考えております。
  8. 山手滿男

    山手委員 さつきお話がございましたが、北海道のように非常に広い面積の所の駐在所に、一人か二人の警官が配置されておるというふうな場合、各地方に分散をして、いろいろ警備の万全を期するということは、私はなるほどとうなずけるのでございますが、さつき特殊犯罪の例としていろいろあげられました内乱的なものであるとか、あるいは通貨偽造犯罪そのほかというようなものは、本土におけるごとき現在非常に強力な自治体警察が存在しておる区域でほとんどこれが行われておる。小さな村、たとえば駐在巡査が一人くらいというようなところで、大量に人が集つて蜂起するというようなことはまずまずあるまい、こういうふうに考えるのでありますが、今の長官お話を聞いておりますると、強力な自治体警察のある所が、さらにこの管区学校そのほかで一つの力を持たれるということは、ダブつて来るのではないか、こういう気がするのでございますが、その点についてどういうふうにお考えでございますか。
  9. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 お話通り管区学校所在地は、大体大きな自治体警察のあるところでありますが、管区学校から出動しなければならないというような場合には、当該の大きな自治体警察におきましても、やはり相当緊急な事態にある場合が多いのであります。とともに、その管区学校の所在の市の警察区域以外の地点に出ます際には、やはりその管区学校所在地自治体警察だけに依存するというわけには参らないと考えるのであります。  もう一つは、ただいまあげられました特殊犯罪について、必要な場合には国家地方警察権限行使ができるという、その職権行使の点でありますが、これは大都市自治体警察内部に対しましては、おそらくほとんどさような職権行使をしなければならないような場合は起らないであろうと考えまするけれども、しかし先ほど公安委員長のあげられました通貨偽造であるとか、有価証券偽造であるとか、あるいはその他各種関係犯罪につきましては、絶えず犯罪情報を集めまして、それによつてこれを研究し、関係自治体警察に通知をいたしますとともに、やはり專門的にその犯罪についての鑑識、あるいは手口その他をそれぞれ勘案いたしまして、どこに重点を置いて、どういうように捜査をしなければならぬかということを、研究調査をする必要があるのであります。このためには、やはり相当人員を必要といたします。そうしてその情報関係自治体警察に知らせる、それによつて自治体弊察活動をしてもらう。自治体警察がそれによつて活動をしない場合には、やむなく職権行使するということになろうかと思いますが、職権行使をいたさなくても、自治体警察に対する援助というような意味合いから、相当の分量の仕事があるのであります。これをいたしまするためにも、やはり若干の警察官増員を必要とするというふうに考えます。
  10. 山手滿男

    山手委員 ことに今警察法改正をしようとされるねらいというものは、大きな全国的な規模において行われるようなものを目標にしておられるように思うのですが、伺いたいと思いますのは、今一齊蜂起をいたしましたり、あるいは全国的な規模でいろいろな内乱なんかを計画するというふうなことが想像をされるのであるかどうか、この問題をなぜ聞くかと申しますと、内乱的なそうした国内の大混乱を起すというふうな事態に対しましては、私どもはむしろ警察予備隊の力でこれに当る方がいいんじやないか。警察という問題はあくまで普通の警察であつて、われわれの日常生活に密接に関係のあるものでありまするから、そういうものを対象とした警察のやり方あるいは警察制度の改革ということは、別の方法にまつ方がいいのであつて十分愼重考えなければいかんのじやないか。そうした全国的な規模による動乱内乱あるいは大がかりの犯罪というふうなものとの関連を、少し御説明を願いたいと思うのであります。
  11. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 今日の国の内外の情勢から考えまして、日本にある種の政治革命を企図する意図をもつて準備が行われ、また行われつつあるということは、われわれ絶えず念頭に置いておかなければならぬと思うのであります。その場合に、大規模内乱であるとか、あるいはクーデターというものが現実に行われました場合には、お説の通り警察予備隊出動ということがあると考えられます。しかしその段階になるまでの間には、各種不法事案一つの組織的な意図をもつて、あらゆる犯罪の形をもつて現われて来ることを、われわれは予想をしなければならぬと考えます。最後のクーデターあるいは大規模内乱ということになる以前において、先ほど申します一つの統制された意思に基く各種の小さな個々犯罪ゲリラ的犯罪と申しますか、そういつたものを事前に防止し、あるいはそのたびに適正に処理をして行くということが、この内乱なりクーデターを持ち来らすことをできなくするという唯一の方法であると考えるのであります。従いまして、私は警察法といたしましては、警察予備隊出動するようなそういう情勢をつくらせないために、治安の確保を維持するということが、最も緊要であると考えておるのであります。また社会全体にとりましても、さような大規模内乱が醸成されるような事態までほつておかれ、そしてそういう大動乱が起つてから鎮圧をするということは、社会的な損失もまた莫大であると考えるのであります。かように考えまするときに、広範囲一定意図をもつて、あらゆる犯罪の形をもつて現われて来るものを、その都度、あるいはできるならば、事前にこれらを検挙し、あるいは鎮圧するという必要が、最も痛切に考えられるのであります。私どもの一番心配しておる点はその点にあるのであります。
  12. 山手滿男

    山手委員 その点われわれとしても一番重要視して、これをどういうふうに持つて行くかのわかれ目になるんじやないかと思つておるのでありまするが、今長官お話をいろいろ聞いておりますると、どうも警察法改正のねらいがあやふやになつて来るのではないかというような気がするのであります。というのは、そういう事前の予防行為というか、早目に察知して予防するというふうな、いろいろな警察行為というものは、現在の自治体警察でも十分やれるのではないか。言いかえまするならば、いろいろ改革をねらつておりまする情報交換とか、情報を相互に見せ合いをするというふうな制度の改革ぐらいのところで、十分間に合つて行くんじやないか、こういうふうな気がするのでございますが、その点について国警の方からのお考えを承りたいと思います。
  13. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 情報を十分交換をいたしまして、その情報に基きまして、自治体警察が完全なる働きをしてくれまするときには、私はおそらくただいまおつしやいますように、まずまず行くであろうかと考えます。過去のいろいろの事例から考えますと、これは例外的ではありますけれども、先ほど辻公安委員長説明されましたように、われわれとしてはその犯罪をどうしても早く検挙しなければならぬ。そのためにはもう少し力を入れてもらいたい。その小さな自治体警察で十分な力がないというならば、われわれの力も貸そうと申しましても、なかなかそれがスムースに行かないという場合が、例外的ではありますが、存在するのであります。また自治体警察がやりたいと思つても、相当費用がかかる。しかし自治体自身にとつては、その犯罪を検挙するかどうかは、当該自治体治安ということには大した心配はない。従つて住民も当該の市町村もあまり関心を持たない。この場合に、応援要請をしてくれればよろしいが、先ほど申しましたように、なかなかスムースに行かないというふうな場合に、一体どうしたらよろしいかという問題であります。また御承知のように、自治体警察から応援要請がなければ、いかにその犯罪の検挙が、国の治安上、あるいはその犯罪の鎭庄が国の治安上必要であると考えましても、実力行使に出ることができないのであります。私は過去の具体的の例を申しますることは、当該自治体にとつて非常に迷惑であると考えまするから、公開の席では申し上げたくありませんけれども、ある地域がほとんど開放地区のような状状になつてしまつておる。たとえばここには平事件の主謀者が逃げ込んで、そこではある事業主が非常なつるし上げにあう。これを警備し、その逃げ込んだ犯人を検挙しなければならない。自治体警察長は国警考えを一にいたしまして、応援要請をし、応援計画をする、何時何分に何名集めて、どういう計画で、どういうようにこれを捜査し、鎮圧するかという計画を立てて、自分の職場に帰り、公安委員に相談する。公安委員はこの事件はもう少し穏便に済ましたい。外部から応援要請をとつて鎭圧をすることは、望ましくないということで退席をしてしまう。さらに警察長はそれでは困るというので、足を運んで、そのうちの一人、二人にさらに来てもらつて、結局は応援要請をしたという事案があるのでありますが、そのために隣り村までトラックに乗つて来ておる応援警察官が数時間をそこで待つていなければならない。これが応援要請ができなかつたという事態であるならば、そこは永久に開放地区になつてしまうということが現実にあつたわけであります。そういう例は一、二ではないのであります。先般もGHQの麻薬課長が私のところへ参りまして、国警警察官を数十名出してくれ、だんだん話を聞いてみますと、ある第三国人の集団しているところを麻薬の嫌疑をもつて捜索するのだ、彼はあるいは拳銃その他を持つつているかもしれない、麻薬官だけではいけない。そこで私はどこだと聞きますと、何々だ。そこは自治体警察だから、少くとも警察長公安委員から応援要請がなければ国警は入つて行けません。従つてそこに話をして応援要請をとらせましよう。ところが、それは絶対やつちやいけない。向うに知れれば、たちまち手入れがあるだろうということが漏れてしまう。それは当該自治体警察関係者のだれにも言うわけには行かないのだ。話をすれば、事前に漏れることは火を見るよりも明らかだということで、しからばというので、結局非常に困つた事件があつたのであります。委員長ちよつと速記をとめてください。
  14. 前尾繁三郎

    前尾委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  15. 前尾繁三郎

    前尾委員長 速記を始めて、
  16. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 こういうふうな場合にどうするか、処置がないのであります。従いまして、さような場合、なお例をあげますといろいろありますけれども、これはもう申しませんが、そういう場合に、とにかく今の警察法では、その自治体警察の管内におけるあらゆる法律の執行について、警察権を発動するかどうかというのは、当該自治体警察にもつぱらまかされておるのであります。これをやるかやらないか、またやる意欲があるかどうかということは、もつぱらそこの公安委員会にまかされておるのでありますから、こういう状況では国としてはどうしても困るという場合に、何らかの保障を置くということが、少くとも私は国の法律の執行ということを、当該自治体警察に委任している以上は、これに事欠くというときに、国がつくつた法律で、どうしてもこれだけは確実に執行されなければ困るというものについては、何らかの方法で保障の道が必要であろうということを私は痛切に考え、またそれは絶対に必要なものである、かように考えております。
  17. 山手滿男

    山手委員 今斎藤長官からお聞きいたしますことは、これは自治体警察の本質の問題を当委員会でも、もう少しうがつて研究をして行かなければいかぬという気分を起させるに、十分なお話であるのでございまするが、そこで国家地方警察の方から自治体警察区域捜査の手を伸ばして行く、いわゆる二元的な捜査が始まるというふうなことになる可能性が多分にある。そうすることによりまして、必要以上に犯罪捜査の過程で混乱が起きるじやないかということが、心配をされておるのでありまするが、そういうふうな問題をどういうふうにお考えになつておられますか。
  18. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は大部分自治体警察は、非常に捜査意欲に燃えておると考えます。従いまして、全国の犯罪情報に基いて、その情報当該自治体警察に提供いたしまするならば、大部分自治体警察は、それに基いて十分な捜査をしてくれると考えます。従つてそういう場合には、これは捜査権だけではなしに、警察権の行使でありまするから、警備その他の実力行使も含んでおるのでありまして、單なる捜査権の拡充だけではございません。またその自治体警察が力が及ばないというときには、応援要請をしてくれると考えるのであります。さような際には国家地方警察は、このために自治体警察犯罪捜査について取合いをやつたり、またそのために感情の対立が起るというようなことがありましては、これはわれわれの意図するところではありませんし、もしさようなやり方をするとするならば、私は輿論のきびしい批判を受けるであろうと考えます。たとえば東京あるいは大阪の警視庁が懸命に捜査をやつているのに、あるいは懸命に事態の処理に当つているのに、要請をもなくて国家地方警察がそこに出かけて行く、そして物笑いになるというようなことをいたすはずがないと考えているのであります。それらの点につきましては、十分なる法律上の解釈はもちろん、また実際行使に当る場合の内規を設けまして、さようなことの絶対起らないようにいたさなければならぬと考えておるのであります。これを実際に行使いたします際は、ただいま申しますような例外的な場合においてのみ権限行使し得る、さように考えております。ただもう一つは、もし自治体警察で十分なる権限行使をやらず、またこれに意欲がないというときには、場合によれば国家地方警察が、限られた犯罪範囲内においては、直接手を入れるかもしれないということになつておれば、私は自治体警察がむしろ自分の面目上からも、今までよりももつと一層励むようになるであろうと考えるのであります。従いまして、この保障があることによつて、かえつて自治体警察が自然に一層真剣になるのではないか、かように考えております。通貨偽造あるいは有価証券の偽造、すなわち今日千円札あるいは各種の株券の偽造が非常に氾濫いたしておりまするが、これの捜査につきましては、これらの株券はたくさんの自治体警察あるいは国家地方警察区域内にまたがつて行使をされておるのであります。自治体警察におきましては、犯罪情報は大部分提供してくれます。しかしながらほんとうに大事な情報は、これは自分のところで検挙したいというところから、自然に自分のところにそつとしまつておくということになりがちであります。しかしながら、今やつておりまするやり方を申し上げますると、それらの株券なり千円札を取寄せまして、そしてその紙質あるいは印刷その他を科学捜査研究所及び刑事部の特殊の技能者等が研究をいたし、これはどういう方面をさらに捜査したらよかろう、こういう方面を捜査したらよかろうということで、実際上は国警の中に一つ捜査本部をつくつたような形でやつておるのであります。いざホシに近づいて来るということになると、さあ、これはどこで検挙をするかという問題になります。この場合に、Aの自治体警察、Bの自治体警察、それぞれ自分のところで検挙さしてほしいということになつて来る。しかし一つ犯罪でありまするから、そう各所で検挙することは絶対にできないのでありまして、どこかにきめなければならぬのであります。そこで今まで一番犯罪の多かつた所、あるいはまた一番熱心にやつていた所、そこで検挙をするようにというあつせんをして、話合いの上どこということをきめるのでありますが、なかなか話合いがうまく行かないというような場合も多いのであります。またその犯人の一味が、今まで予想していなかつたある所でつかまつた。そのつかまつた所でこれを全部やりたいということを言つて来る。あるいはその犯人をこちらの警察へよこしてくれ、自分の方でやりたいということを言つて来る。そういう場合もやはり同じことが起るのであります。かような場合には、もしこういう権限が與えられているならば、君たちがそう取合いをして、言うことを聞かぬならば、これは国警でやつてしまうぞといううしろ、たてがありますと、たとえばこれは大阪でやるのが至当じやないか、こういうことを考えました際に、もしみんなわれもわれもと争うならば、やむを得ないから、これは国警でやる、こういうようなことが言い得る立場にありますると、最も適当と思う所を中心にして、そこでやるという相談もまとまりやすいのであります。従いまして、こういう権限がもし法律上與えられたといたしましても、これについては全部こちらでやつてしまうというような考えは、毛頭持たないのであります。現在自治体警察国家地方警察と協力してやつて行くのには、どこでだれを中心にしてやつてもらうのが一番いいかということの判断によつて、できるだけ自治体警察の能力を生かして行くということが、一番望ましいと考えております。東京警視庁は二万五千、大阪警視庁は八千の警察官を持つておるのでありますから、国家地方警察はこういう権限を持つたからと申しましても、それをさしおいてやるというようなことは絶対できることではないのであります。さようなやり方をするならば、必ず世間からきびしい批判を受ける。権限を濫用し、かえつて犯罪捜査を困難ならしめたじやないかという批判を受けると思います。国家地方警察に、もしこういう権限が與えられるといたしますならば、われわれといたしましては、責任があり、そうして苦労のみ非常にふえて参るのであります。現在の警察法でありまするならば、これはわれわれ何ともできませんから、やむを得ない、法律上は責任がありませんと言つておられるのでありますけれども、しかしそれでは国の治安は保てないのではないか。犯罪の鎭圧、予防その他に困るではなかろうかというので、他に方法がないとするならば、この方法よりほかに道がなかろう、かように考えておるのであります。国家地方警察といたしましては、もしこういう権限が與えられるといたしますならば、そういつた形の上の責任、そうして実際実施する場合に、全部が全部みずからやれるかといいますとやれません。自警、国警両方の力を合せて、こういう問題を解決するように持つて行くという、大きなところが生かされるものだと考えておるのであります。
  19. 山手滿男

    山手委員 今お話がございましたように、捜査あるいは実力の行使を、実際問題としては協同してやるという建前になるのでございましようが、しかし自治体警察の方において、捜査意欲が十分でない、そのために犯罪に対処するに十分でない、こういうふうな場合ができましたときには、国家警察が背後から、やらなければ出るのだという態勢を持つことが、非常にいいという話であります。なるほどその通りであろうと思うのでありますが、そういう態勢を法的につくり上げて参りますと、勢い国家地方警察というものが中央警察的な存在になるのじやないか。自治体警察の上に位をいたしまして自治体警察を実質的には指揮命令するというようなかつこうになつて行くんじやないか。そういたしますと、自治体警察をつくりましたあの当時の趣旨、あるいは当委員会で非常に力こぶを入れておりまするところの地方自治の本旨を、もう少し徹底して行こうというふうな考え方、そういうものと、この警察法改正をめぐつて、非常に大きな食い違いができるんじやないかということが考えられるのでございますが、国家地方警察警察法改正によつてつて行こうとするねらいが、中央警察的な存在にしようとするものであるかどうか。あるいはそういうかつこうになるんじやないかということについて、お伺いをいたします。
  20. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは私個人の考えでございますが、今日の自治体警察自身が持つております本質から来る事柄考えてみますと、先ほども自治体警察自身の持つ本質というものを、もう少し研究しなければならぬとおつしやいましたが、この考え方から徹底をいたしまするならば、何らか国の法律で、少くとも国家的な治安という面からでも保障される道がありませんければ、先ほど申し上げましたような事態の頻発ということが考えられますと、私は国の法律は国の警察でやらなければしようがないのじやないかということになりはしないかと考えるのであります。自治体自身の持てる権限ということも、もちろんでありますが、しかし国が法律自治体と無関係につくり、その法律をエンフオース、することが自治体の当然の権能であるということ自身が、事実に合うかどうか、私は多少疑問があると考えるのであります。国が法律をつくり、これを完全に施行するかしないか、これは自治体にまかせるんだということで安心しきれるものであるかどうか。自治体自身の警察権というものは、自治体の條例その他によつて、施行は自治体警察が当然やるべきであり、またやる責任を持つべきであろうと思うのであります。いろんな法律を国会を通過させてつくる、そしてこれは当然自治体が完全に執行すべき本来の権能があり、また国は何にもこれにタツチできない性質のものであるということには、私は必ずしも賛成ができないのじやないかと思うのであります。今日の自治体警察は、従前の国家警察をそのまま分断して、自治体が持つているというだけのことでありまして、自然発生的に起つて来たアメリカの自治体警察とは、事実において、相当相違をいたしておると思います。アメリカにおきましても、アメリカの連邦の必要な法律を執行するためには、連邦捜査機関があり、州の警察は、州内の市町村警察が十分にやつておりませんところでは、現実に職権行使いたしませんけれども、潜在的には州の法律は、州内のどの地域においても州警察がやり得るという権能を保有しておるところが、大部分だと私は承知をいたしております。そうであつてこそ、初めて州の法律が完全に施行されるものだと私は考えておるのであります。私は自治体警察の存在というものが、日本の民主化に、また日本地方分権化に必要であると思えばこそ、いかにして自治体警察を存置しながら、国の権益と背馳しないようにするかということを考えるのが、最も必要な事柄であろうと考えておるのであります。自治体万能、自治体警察区域内においては、国は一指も染めることができないという状態のもとにこれが進行されるならば、私はかえつて自治体警察全廃という反動の来ることをおそれるのであります。
  21. 山手滿男

    山手委員 この問題は警察予備隊の強化というような問題も取り上げられそうな気配もありますし、十分研究してみたいと思います。斎藤長官の御説明で大分私どももわかつて来たような気がするのでありますが、自治体側からもいろいろ所見が述べられておることでありますし、この問題は法案をおつくりになるについても、十分愼重にやつていただきたいと思います。ことに国際関係で講和問題が進展をしつつある折柄、外国の新聞紙などの伝うるところによりますと、日本警察制度改正というものをいきなり取上げて、警察を増強して行くということが必ずしもいい影響を與えておるのじやないと、われわれは感じておるのでありますが、十分愼重にお願いいたしたいと思います。まだ同僚議員から質問があるそうでありますから、私はこの程度でやめます。
  22. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 いずれ警察法改正の問題につきましては、政府側から提案された際に、深く掘り下げて御質問申したいと思うのでありますが、とりあえず警察法改正するということにつきましての根本的態度について、お伺いいたしたいと存ずるのであります。  今日の日本警察制度は、日本民主化の根幹をなすものでありまするから、その実施に幾多の欠陥を持つておるという理由だけをもつて、この根幹にも触れるような制度を軽々に動かすことがよろしくないことは、何人も異論のないところであろうと存ずるのあります。今日の国警自治警の二本建が、犯罪を検挙するという立場から見て、必ずしも完璧でないということについては、私もお説のごとく同感でありますが、それだからといつて、この際この根本をこわすような、国警がただちに自治体警察範囲に入つて捜査権を持つかということについては、相当考慮を要する問題じやないかと思うのであります。今日の警察制度の非常な欠陥は、むしろ捜査権をどこで持つかという問題でなくて、政府が国の政治をやる上において、国内の治安状況について盲目であるという点でなかろうかと存ずるのであります。すなわち今日の政治が盲が勘でもつて政治をいたしておるという点にあるのでなかろうかと思うのであります。少くとも治安確保ということが、国の政治の上におきまして、最も重要な部面であるとするならば、国内の治安状況がどうなつておるかということを知ることが、最も必要なことでなかろうかと存ずるのでありますが、残念ながら現行のこの警察制度では、政府が国内における治安の状況を的確に知ることができない、そういう組織を持たないという点にあるのでなかろうかと存ずるのであります。この見解をもつていたしまするならば、私は今日国警自治体警察の中に入つて捜査権を持つという問題よりも、全国的な治安に関する情報網を確立することこそが必要じやないか。その知り得た情報によつて、いかに警察権を行使するかという問題とは、おのずから別じやなかろうかと思うのであります。警察権を行使する場合には、あるいは自治体相互の応援により、あるいはまた検察庁等の指導により、それぞれ行き方があると思うのでありますが、とにかくその前提として、的確な情報を得る。先ほど国家地方警察官が三万から五万くらいに引上げられるというようなお話がありましたが、これがただ單に駐在所の巡査をふやすというようなことでは、ほとんど無意味じやないか。むしろこれだけの増員は、これを情報網に振り向けるということこそが、今後の政治をやる上においていいのじやないかと思うのであります。たとえば、先般来自由労務者が各地方の職業安定所に押しかけておる。個々自治体から見れば、それはばらばらの事件のように感ぜられますが、しかしながらこれを国家全体の立場から見ると、何らかそこに一派の連絡があるのじやないかということは、国の全体の情勢を知らなければ判断が下し得ないのであります。そういう意味において、今日の警察制度には非常に欠陷がありはしないか。従つて今後の治安確保の上におきまして、警察力の充実の問題もありましようし、場合によりましては、警察予備隊の発動の問題もありましようが、いずれにいたしましても、この警察力の拡充という問題を警察権力の強化という問題に考えずして、情報網の確立あるいは的確なる情報をつかむという方面に持つてつていただきたい。それはわれわれが代議士として国政を審議する場合におきましても、今日まで国内の治安状況について御説明を承つたこともありません。たとえば大阪地方におきまして騒擾事件みたいなものが起つたというような場合にも、あとでおつかけて調べに行くというような状態では心細くて、とにかくわれわれとしては審議の十分なる責任を持てないような現行制度をいたく遺憾に思つておるような次第でありますが、この点につきましてはひとつ警察制度改正をただちにして、権力分配の問題と考えずして、そういう方面に力を用うべきではないかという点について、まずお伺いいたしたいと存ずる次第であります。
  23. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 龍野委員のおつしやることは、まことにごもつともだと存じております。警察官増員の問題は、先ほども申しましたようにこういつた権限が、国警に付與されるということになりまするならば、そういつた犯罪情報を收集することが、一番の先決問題であります。従いましてそういう意味におきまして、犯罪情報を收集するために増員されました部分相当数を充てる必要があると思います。先ほどただちに緊急の用に間に合うために、日常は他の警察職務に従事させると申しましたが、これらの相当数は、やはり犯罪情報に従事をさせることが緊要だと考えております。
  24. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 次にもう一点お伺いいたしたいのは、首都警察についてであります。今日の東京が自治体として最も大きい、従つて完全に自治体としての存在を固守していることは御承知の通りであります。しかしながら首都東京を單に自治体としてばかり見るべきものであろうか、あるいは国というものの考え方からも東京というものは、ながむべきではないかというような気持もいたすのであります。各国の例を見ましても、少くともこの首都につきましては、大方の国におきましては、この治安は直接国において責任を持つているような例が多いように見受けるのであります。この点に関しましてひとつ御当局の見解を伺いたい。この際私はそれに関して自分の私見は申しませんが、御見解を伺いたいと存ずるのであります。
  25. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まことにごもつともな点だと存じます。首都警察が他の多くの国におきましては、国家警察という形になつているのであります。わが国におきましても首都の治安というものは、他の自治体治安とは著しく形を異にしているということは申し上げるまでもありません。従つて首都警察が国の治安の立場から遺憾ないかどうかという問題が、一番大きな一つの問題だと考えます。そこで首都警察を国の警察あるいはそれに近いような他の何らかの方法考える必要があるのではないかということは、一つ研究問題としては、まさに研究に値する問題だと考えておるのであります。しかしながら首都警察と申しましても、交通の違反の取締りからあらゆるものを全部、国家的見地から行わなければならぬかどうかという点は、また考えるべき点もあると考えます。自治体警察としてさしつかえないものと、どうしても国家的な面から強くその色彩を明らかにしなければならぬという、この二つの面を持つていると考えるのであります。私個人といたしましては、もし国家犯罪について今考えておりまするような事柄が、法律国家地方警察に與えられまするならば、少くとも情報の牧集、あるいは先ほど申しましたように、このためにまた首都警察自身が相当今までより以上に——現在も、あるいは現実の問題といたしましては警視庁は十分職責を果してくれておると思いますが、なお一層果すようになるのではないか。まずさしあたつて第一段階といたしまして、この国家的な犯罪についての権能というものが認められる。この運用によつてさらにどういうようになるか、第二段として研究を次に延ばしていい問題ではなかろうか、かように考えている次第であります。
  26. 門司亮

    ○門司委員 私はきわめて簡單に少しばかりお聞きしたいと思いますが、一番先に聞いておきたいと思いますることは警察法改正で、五十五條の改正、あるいは五十四條の改正その他の改正は行政上の改正でありまして、直接基本には触れないと思いますが、基本に触れる問題として、これは斎藤国警長官でなくて、公安委員長にお聞きをしておきたいと思いますが、御存じのように警察予備隊が七万五千設置されております。その上に国警が二万の増員を必要とするという、その根拠をもう少し明確にお示しを願いたい。
  27. 辻二郎

    辻政府委員 これは先ほど国警斎藤長官からも御説明いたしました通り、現在の三万で絶対に不足をいたしているということを、私どもは全国を歩きまして認めておる次第であります。三万の中から五千名は常時学校に行つております。あとの二万五千が全国に散在しておる。駐在所のごときも平均二割くらいは警察官がおらない駐在所ができておるのみならず、北海道等におきましては、非常に広汎な地域に少数の警察官しかおらない。また最近頻繁に国警への応援要請がございまして、長官が述べましたように延十二万人余の警察官がそちらの方へ応援出動いたし、そのためにそのあとがからになるというような事実がございまして、私ども公安委員といたしましても、これは最初の三万というエステイメーシヨンが少なかつたということを認める次第であります。従つて国警の手薄のところをよく承知して、犯罪都市から田園地区の方へ移行した例が統計に示されているのであります。そういう点から現在におきましてまつたく手が足らないと、こういう状態であるのであります。
  28. 門司亮

    ○門司委員 私はお話は一応前に伺つておりますが、そういたしますと警察予備隊の性格について、これはどういう形で——御存じのように警察予備隊は、一方において警察権を持つているわけであります。司法警察官としての職務を執行することができるような仕組みになつていると私は思う。そういたしますと、日本の現在の治安状況から見ますると、大体警察予備隊の運営が、民主的に行われるような状況になれば、すでに国家警察官の増員というものは必要としないのじやないか。これが財政的に見ましても、かりに二万の人間をふやして参りますると、大体三十二億ないし四十億の金を必要とすると考えられる。警察予備隊で、御存じのように、去年二百億使つて、今年百六十億を計上しております。こうなつて参りますると、警察に使います費用というものは非常にたくさんになつて来ると思います。七万五千の警察予備隊を持ち、さらにどうしても二万の増員をしなければならぬというような現実の治安状況であるかどうか、私どもとしてはそれほどとは考えられないのであります。従つてただ單に応援が多いからこれを必要とするのだ、あるいは今お話のようなことだけでは、私どもは承服しがたいのであります。ことに先ほどの斎藤長官の御答弁の中に、開放地区という言葉が使われておるのでありますが、この開放地区というようなものが、日本の国内の一体どこにあるかということであります。現在の警察権の及ばない地区というように解釈できるような、不安な状況にある土地が日本のどこにあるか、もし御存じでありましたならば、この際ひとつ明確にしておいていただきたい。
  29. 辻二郎

    辻政府委員 警察予備隊の問題につきましては、これは国家公安委員会の所管でございませんので、私から申し上げるのは不適当かと存じますが、私どもの知る範囲内におきましての警察予備隊の任務は、全国的に何かの騒擾事件のようなものが起つた場合、あるいは非常に大きな天災地変が起つた場合、あるいは地区的でありましてもきわめて大規模事件が起つたときに、出動するものと伺つております。従つて警察予備隊は、出動しないときにおきましては、平時は司法権を持つておらないことになつておりますので、現在国警が取扱つておりますような日常の犯罪等については、現在の国警の手不足警察予備隊に期待することは無理であると考えております。御承知のごとく、遺憾ながら昭和二十四年、五年におきましては、刑法犯が百六十万件にも達しておりまして、未曽有の犯罪数になつております。戰前に比べますと、警察官の数は自治体国警を合せまして三割ふえておりますけれども、窃盗犯のごときは約二倍、凶悪犯のごときは五、六倍にもふえておるという状態でありまして、はなはだ手が不足いたしておるのであります。また千六百の独立した小自治体になりましたために、警察の能率という点におきましては非常に下つた。但しこれは地方自治の観点から、私どもはあくまで警察の民主化という点は絶対に確保する考えでおりますけれども、一方におきまして小自治体が非常に能率が下つたという点、それから経費がたえられない。平衡交付金は警察吏員一人当り十八万何がしでありますが、実際の各自治体からの報告によりますと、二十万ないし二十五万を要しておつて、これを小さい自治体負担することはとうていたえられない。また人事の交流ということは、地方自治の建前から考えられません。ある町が自分の町を守るために置いた警察官が、隣の県に行くというようなことはとうてい考えられないので、人事の交流ということは原則的に考うべきことでない。従つて十人か十五人の警察官はそこに固定いたしますから、士気が沈滞いたしまして、またボス化するおそれがある。こういう点で、千三百の小さい自治体の能率が非常に下つたというような点も、現在の警察能率の上から考えなければならないということを——これは私どもの耳に入る範囲内におきましては、あまたの陳情書、それから地方の県議会の決議書、あるいは県知事等からの陳情書、決議書が全部保存してございまして、それに小さい自治体の廃止を要望しておるのが統計的に現われております。また現在も全国町村会から千三百の町村に向つて、小さい町村自治体の存否についての諮問を発しまして、その答えが続々到着しておりますけれども、私どもの手に入つた範囲におきましては、現在まだ全部統計を完了しておらないようでありますが、圧倒的に、小さい自治体は困るというのが輿論であるというふうに、私は考えております。
  30. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、一時開放地区のような観を呈したと申し上げたのであります。開放地区のようになつて警察が全然入れないというような地区は、現在のところはございません。先ほど申しましたのは、一時ほとんどそれに近いような状況を呈した、これは若干の期間でありました。それから一村あるいは一町全体というわけではありませんが、ある種の集団ブロックの中には、事実上ほとんど警察が入れないようなところが——これは御承知のように、いわゆる朝鮮人の密集部落の中には二、三そういうのが以前はございましたが、最近は若干事情が改善されたと思つております。しかし将来こういうような事態が起らないでもないということは、杞憂ではなかろうと考えております。
  31. 門司亮

    ○門司委員 今の公安委員長お話でありますが、実は昨日大阪の警視総監のお話を聞きますと、現在の日本治安を保つには現在の警察力で、大体間に合うんじやないかというような話を、われわれは伺つておるのであります。そういたしますと、少くとも警察増員については、この際必要がないじやないかと考えられる。同時にこの機会に、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、時間がないという話でありますから、なるだけ簡略に申し上げますが、弱小町村自治体警察を廃止するということは、住民の意思によつて、これの存廃をきめるというようなお話のように伺つておりますが、その場合に廃止されました自治警察定員は、この二万の中に含まれているのか、あるいは現在持つておりますものを、そのまま国警に移譲して行くのか。同時に、こういうことをお考えになつておるとするならば、必ずそこまで考えられておると思いますが、どのくらいの自治警察が廃止せられて、その人員は一体どれくらいであるかということを、この機会にお伺いをしておきたいと思います。
  32. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 町村自治体警察が、その町村意思によりまして廃止をすることになりました場合に、その自治体警察区域国警で見なければなりませんから、その区域を見るについて必要な員数だけを国警の一般定員のほかに増すというふうに考えております。たとえば百人の定員自治体警察が廃止をせられる、あるいは集計して百人になるという場合に、その区域を維持するのには五十人で足りるという場合には、五十人だけを増すことにいたします。あとの五十人は不要になるわけであります。自治体警察が住民の意思によつて廃止されるものが何箇町村になるか、私のところではちよつと見当がつきませんが、ただいまの目算では、廃止をせられた町村警察定員の少くとも半数以内で足りるであろうと思つております。
  33. 門司亮

    ○門司委員 警察の行政の面から見ますと、非常に私は重大な問題であると考えておりますが、御存じのように、警察官といいましても、やはり警察に奉職しておることによつて、その生活の根拠を得ておりますので、法律改正で、かりにいくらかの人員をどうしても減らされなければならないということになつて参りますと、各自治体におきましては、治安の責任を持つております警察官の中に必ず動揺を来すであろうということは、はつきりこの機会に言い得ると思う。そういう事態に一体どう対処されるお考えをお持ちになつておるのか。これは法律で定めれば、きわめてぞうさのないことでありますが、そうまでして国警の力をそこに及ぼすということが必要なのか。もう一つ考え方といたしましては、現在の弱小の自治体警察というものは、警察組合というようなものをつくらせて、そうしておのずからその範囲において十分完璧を期して行く。いわゆる署内勤務というようなものがだんだん滅つて来る。三つの署がありますれば三人の署長がおりますが、一つになれば一人の署長で済むというようなことであつて従つて現在の定員治安が保てる形ができますと同時に、財政的にもそれならば十分やつて行けると考えます。警察法改正の中に、これを廃止して国警に吸收するということでなくて、民主警察を助長するというお考えがおありになるかどうかということであります。この点をひとつ伺つておきたいと思います。
  34. 辻二郎

    辻政府委員 現に組合警察を実施しておるところもございまして、いろいろな実績がございますが、町村警察は大体広い地区に飛び飛びに島のようになつておりますので、それぞれ経済状態もみな違う自治体が、組合警察自治体同士でつくるということは、事実上非常に不便が多いので、その間に国警の地区がございまして、三里行つた先に一つ、五里行つた先に一つということになつておりますから、これが共同して連合の警察をつくるということは事実上なかなか困難でありまして、うまく行つておらない例を、私どもは承知いたしております。しかし最初から申し上げました通り警察を持ちたいという自治体に、これをやめろというのでは決してないのでありまして、あくまでもその住民の意思によつて、どうしてもごめんこうむりたいというのを、ほかに持つて行くところがありませんから、国警に吸收する、こういう考え方でございます。  また警察官の失業者を出しはしないかという行政上の問題について御質問がございましたが、これはただいま長官説明いたしました通り自治体区域が集計して百名のところが、五十名で足りるというと、五十名は不要のものになるという点で、失業の不安を與えはしないかということでありますが、現に自治体のところは五十名でいいといたしましても、国警の地区は、さつきるる申し上げました通り、絶対の手不足でございますから、そちらの方に相当数は吸收されることになるだろうと思つております。それらにつきましては何がしかの保障の方法について考えを練つておる次第でございます。
  35. 門司亮

    ○門司委員 どうも私はその点がわからないのですが、三万を増員するということであつて、今の三万が五万になるということで、一応国警定員というものは限られておる。そのほかにこういうものを吸收して行くことができるということになると、日本警察官の数というものは減らない、こういうことになるわけであります。今の委員長お話のように、余つたものはほかにまわすということになると、それが二万の中に含まれておるのかどうかということがはつきりしない。従つて二万のわくの外に出るということになると、定員をふやすということが、單に定員をふやしたというだけでなくて、実際はそれよりふえておるということになると思いますが、そういう議論は別にいたしまして、今のお話でありまするが、私ども考え方からいいますと、もう少し突き進んだ考え方が、実はされなかつたかどうかということであります。これは端的に言いますと、地方の住民の意思従つてこれをきめるというのは、それは現行法においてきめるから、そういうことができるのでありまして、住民の意思においてこれをきめようとするならば、現行法の五千という数字が一体正しいのであるかどうかということも、さらに検討の必要があると私は思う。同時に警察自体の問題から考えてみますと、人口が五千である、あるいは町並がそろつていて、市街地のような様相を備えていなければというような現行法を離れて、この警察法改正についてはもう一つ掘り下げた考え方をいたしますならば、現在の国家地方警察というものの権限を拡張するというよりも、むしろ自治体警察を助長するということで、たとえば五千とか三千とかいうわくをきめておりますから、現在では飛び飛びにできておりますが、それが自治体全体の希望によつてできるのだということにし、さらにその希望によつてできるということは、必然的に財政の問題その他いろいろ複雑した問題がついて参りますので、これは組合警察ができるのだということにして、一応五千というわくをはずしてしまつた後の、組合警察というようなものが考えられないか。そういたしますならば、今の委員長お話のように、飛び飛びに小さい自治体警察があつて、それを統合することが困難だという問題は私は解消されると思う。一つの地区に対して組合警察をつくつて行くということの方が、むしろ完全なものができ上るのじやないか。要約して申し上げますと、国家地方警察範囲権限を増大したり、この人間をふやすということを考えるよりも、むしろこれを縮小して、そうして自治体警察を助長して行つた方が、警察の民主化ということには十分なり得るのではないか。その場合に、さつき言われておりますよう関連した犯罪、あるいはいろいろな犯罪捜査その他が、国家的に見て困難な場合があるというようなお話があつたのでありますが、これは国家的に見て、もしそういうことがありますならば、それに対しては中央からそれを指示し、あるいはそれに対して援助を求めるというようなことは、私どもには一応考えられる。警察官の数をふやして行くということは、中央集権であると同時に、実勢力がふえて来るという傾向を持つのであります。われわれのおそれるのはそこでありまして、中央に力を持つと同時に、中央の兵隊がふえて参りますと、勢い実勢力がそこに増されて来るのでありまして、従つて機構の上でなく、実勢力の増強ということが、きわめて中央集権的の警察力になりやすいのであります。国家全体に及ぼす犯罪に対して、たとえば国警長官が、いろいろな指揮をするといたしましても、それの運営というものが、おのおのの自治体警察官自身であり、自治体の責任者が、その国警長官の指図というが、そういうものに従つてこれを捜査し、検挙するというようなことができ上つて行くならば、何も実際的の中央集権的のものはできない。国家的に関連した犯罪にのみ国警が加わる。自治体警察というものは従来通りの形で、十分治安の維持は保てるというふうに考えておるのでありますが、この辺までお考えがなされておつたかどうか、お伺いします。
  36. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私どもといたしましては、ただいまお述べになりましたような点を、もちろん十分考えたのであります。しかしながら、私ども国家地方警察に身を置いておりますから、従つて我田引水的な考え方を言つたのであろうということをお考えになられても、やむを得ないだろうと考えます。従いましてそういう点は国会なりあるいは政府の方で十分お考えをいただく点であろうと考えます。町村全部が自治体警察を持つ持たぬの自由を與える。五千以下にも與えるということも一つ方法であろうと考えております。しかしながら今日五千くらいなところでは、自治体警察は非常に困るというのが一般の声でありますから、わざわざ範囲を広めてそして困るような状態を、いかに自治体の機構であるとしても、そういう制度を設ける必要がないのじやなかろうかというような意見もありますし、またそういう場合に組合警察をという御意見でありますが、これも公安委員長から現在の実情を述べましたように、われわれといたしましては組合警察をつくるということは、実際上非常に困難でありまして、單に地域が接続している、いないというだけでなしに、組合警察をつくるということ、それの運用自身につきましても、これは非常に困難な点が実際上多いのであります。また大多数の組合警察をつくることを前提にして、自治体警察を設けると申しますことは、これは自治体警察を持つのがよろしいという点からも、やや離れて来るように考えるのであります。彼此勘案をいたしまして、新たに五千未満の町村にまで、さらに警察を持つ、持たぬの権能を與えるということは必要がないのではなかろうかと、私どもとしては考えておりますけれども、これはしかしわれわれといたしまして、どちらになりましても国家警察自身の立場から考えまするならば、問題の外だと考えておるのであります。全国の第一線の警察を全部自治体警察にして、そして国家的な犯罪についてだれか指揮するものがあれば、それでよろしくはないかというお話も、やはりそういつた観点から考えてみたこともあるのであります。いわゆる府県警察というものは、そのまた一つの形だと考えております。しかしながら国家的に見てどうしても大事だという犯罪につきましては、やはりただその情報を收集し、それを提供し、こういうようにしたらどうであろうかという勧告だけで、私はうまく動くものとは考えられません。ちよつとそういう自信は持てません。
  37. 門司亮

    ○門司委員 それではこのくらいにしておきまして、次に具体的の問題をお聞きしておきたいと思いますが、今の委員長説明では自治体警察増員は、自治体自体でこれをなし得るようにするというような財政的の裏づけがあれば、これをなし得るというようなお話を伺つておるのでありますが、その場合の基礎は、警察法制定当時の大体人口に按分した比例で、これをふやそうというお考えであるのか、ふやすことができるというお考えであるのかどうか、必ずしも私は無制限ではないと思いますが、それを制限されておるのかどうか、また同時にそういうことがあるといたしますならば、現在御承知のように三十三万の人口を持つ川崎はわずかに六百人に足らない普通の三分の一以下の人員しか持つておらない、あるいは尼崎もそれと同じような数字を示しておりますが、これらの自治体警察の中で今緊急に増員をしなければならないと考えられております地域に対して、一体警察官がどのくらいふえて行くか、その数字が概略でもおわかりになるならば、この際お聞かせ願いたいと思います。
  38. 辻二郎

    辻政府委員 制限のわくをはずすと申しましたのは、現在警察法の第四十六條にも市町村警察吏員定員地方的要求に応じて、市町村が條例でこれを定めるとあります。しかし全体としては九万五千のわくを越えないというのでありまして、これ自体がちよつと無理なわくがここにあると思います。現在国家公安委員会の方に参つております各都市からの陳情は、絶対に足りないさつきの川崎市の例のようなものが非常に多いのでありますが、これは主として中都市に非常に多いのであります。それらの都市を積算いたしまして、どれほどの警察吏員になるかということは、ちよつと私からはお答えいたしかねますけれども相当数になると思われるのであります。しかしまた一方ではこのわくがとれれば減してもいいというところも起つて来る。極端な場合は三人でも四人でもいい、何か事件があれば、応援を要請すればいいというようなところも起つて来るということもあり得るかと思うのであります。しかしこれについては、財政的な問題と関連いたしまして、特に平衡交付金のごときは、かつてにきめた定員に対して與えられるというわけには行かないかと思いますが、それらの点については、その自治体自身において十分に検討してきめられるべき問題だと考えております。
  39. 門司亮

    ○門司委員 この問題は重要と言うよりも、複雑な問題に必ずなつて来ると私は思います。従つてここで警察法のこの法文を改正することにおいて、警察官がどのくらい日本にふえるのかということが、はつきりわからなくなつて来る。国警の方はさつきから伺つておりますように、二万をふやすというお話でありますが、これも自治警をやめたものを、ここに何か全部吸收されるような話でもあり、また斎藤さんは、いらなければ半分は失業するかもしれないというようなお話であり、公安委員長はそれはどつか足りないところにまわすというようなお話でありまして、どうもこの点は、はつきりしないのでありますが、一応国警が二万ふやされるという仮定をいたしましても、自治体警察の面で今のお話のように、これがかつてにある程度までふやせる。かつてに減らせるというようなことになつて参りますと、一体日本警察官というものは、警察法改正するとどのくらいふえるかということが、はつきりしなくなつて来るというようなことでは、私は全国の治安を一応考えた場合に、警察官の大体の数さえはつきりしないというようなことでは、ただちにこの警察法改正をするということは、もう少し考えなければならない問題が起るのではないか、同時に地方自治警察増員について、今委員長もちよつと触れられましたが、各自治体におきましては、これが十分必要だという考え方を持つてつても、今の自治体の財政力ではこれをまかなうことが非常に困難である。従つてどうしてもこれはやはり平衡交付金によらなければならないという場合に、一体平衡交付金の算定の基礎というものが、無制限というと言葉が少し過ぎるかもしれませんが、任意に定めた警察官の数というものについて、これが一体認められるがどうかということは、きわめて大きな問題であります。警察法の四十六條の規定によつて自治体が條例で定めることができる、しかし九万五千のわくを越えてはならないという法律が一方にありますので、従つて今の定員というものは、警察法実施当時における治安の従来の状況、それから人口の比例に応じて、大よそこれは、その数が示されておるはずであります。従つてその示された数において、これが大体定められております。従つてこれらのものは平衡交付金を算定いたしますある程度の基準にあるということは、平衡交付金算定の基礎になつております書類に、はつきり書いてあるのであります。一番先にはつきり書いてある。ところがこれが任意に増員ができるということになると、その算定の基礎に狂いが出て来て、これを地方財政委員会で認めることができないというような場合になつて参りますと、警察官はふやしたいんだが、財政的にふやせない、こういうトラブルが必ず起つて来ると私は思う。この間の調整は、一体どんなふうにされるのか、その辺をひとつ十分伺つておきたいと思うのであります。従つて私の考え方としては、自治体警察増員をすることはできるが、しかしそれは前に示した基準によつてのみ、これをふやして行くことが一応考えられるならば、平衡交付金の算定の場合にも、私は大して支障はないと考える。しかしこれが任意でふやすということになると、財政的な問題で必ず行き詰まりを来して来ると考えております。この点はどうお考えになりますか。
  40. 辻二郎

    辻政府委員 地方自治の精神から申しまして、警察吏員の数を地方的要求に応じて、市町村がきめるということは、私は合理的ではないかと考えるのであります。しかし現在の定員は、昭和二十一年の戰災直後の人口基準できめられたものなのであります。その人口基準自体が戰災都市におきましては、特にはなはだしく狂つてつておるのであります。それが現在自治体警察吏員のでこぼこを生じておるのだと思うのであります。従つて警察吏員自治体條例によつて必要なだけふやす、但し平衡交付金の警察吏員に対する分配方は、現在の人口基準あるいはその他の合理的な方法で、おきめになるべきではないかと思う。それでその都市が欲する警察吏員を抱えられるだけの費用が出るか出ないかは問題でありますけれども、もしほかに財源を持つている自治体であれば、平衡交付金は足りないけれども、他の財源を充てても警察を増強しなければならないと考え都市は、そういう方法をとられるでありましようし、もしそれがそういう他に財源がなくて不可能である都市は、警察吏員を縮小して、そうして必要な場合には応援を要請するというようなことになるのではないかと考えております。
  41. 門司亮

    ○門司委員 もう時間がございませんので、簡單に申し上げておきたいと思います。いろいろ山ほど問題を控えておりますので、その次に聞いておきたいと思いますることは、町村が住民の意思によつて、大体自治警察の廃止その他をきめるというお話でありますがその住民の意思は一般投票によるのか、あるいは間接のものできめられるのか、その辺をもう一つ伺いたいと思います。
  42. 辻二郎

    辻政府委員 これはその自治体町村議会できめた方がいいか、あるいは一般住民投票によつてきめた方がいいか、現在各方面の意見を徴して研究をしております。
  43. 門司亮

    ○門司委員 その次には全国的の犯罪でありまするが、全国的の犯罪について警察増員が必要であるというので、いろいろお話があり、さらに警察情報等をやはり中央にまとめるというようなことが必要だというお話があつたのでありまするが、その中でこの機会に伺つておきたいと思いますることは、密輸入あるいは密入国の問題が、しばしば話に出たのでありますが、これは海上保庁が最も重要な役目をする一つの段階にあるのではないか。いわゆる警察というものは、海上保安庁の見のがしたと言うと悪いかもしれませんが、網にかからなかつたものを陸上において初めて発見する。従つて第一線としては、これは当然海上保安庁の一つの任務だと思います。先ほどのお話から考えて参りますると、海上保安庁との連絡は、現在大体どういうふうにとられておるか、この点についてもしおわかりでありましたら、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  44. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 海上保安庁とは絶えず密接な連絡をとつております。海上保安庁が船等から発見をいたしました場合、あるいは港で発見いたしました場合には、ただちに警察に連絡をし、警察と一緒になつてやるというように、密接な連絡をとつております。しかし何分にも日本の海岸線は非常に長くて、全部海の上で発見をするということは、非常に不可能なことであるのであります。どうしても陸に上つてから後に発見をするというものの方が多くなることは、やむを得ないことであると思います
  45. 門司亮

    ○門司委員 最後にもう一つ聞いておきたいと思いますることは、きのうのお話から総合いたして参りますると、犯罪情報交換といいまするか、これを国警に報告をしてもらうということが、国警の方から見れば非常に有意義だというふうにお考えになつておるようでありまするが、一方からこれを考えて参りますると、そういうことを法律できめるということ自体が、すでに中央集権の一つの現われであると思う。法律できめたからといつて、人間的にあたたかみのあるつながりがなければ、なかなかそれは困難ではないか。お互いが警察官として、犯罪をなくするというほんとうの熱意に燃えた警察であれば、現状でも情報は十分交換し合える。さらに十分の連絡はとれているはずである。それを冷たい法律に直すということは、その間に今までほとんど支障がなかつたと思われるようなものが、冷たい法律で義務づけられる、従つて義務を履行しなければ、そこにはやはり何らかの中央から来るおしかりを受けるということは、当然われわれにも想像がつくと思う、ここにやはり中央集権的の警察というものができ上る可能性が、強くわれわれには見られるのでありますが、この点については先ほど申しておりますように、自治体警察の方から言わしめますならば、現状でも人間的に警察官としての立場から十分情報交換し、さらに犯罪捜査等は協力ができるのであるから、これを義務づけて行くということ自体に、かえつてみぞを深めるようなことになるのではないかというような意見があつたのでありますが、この点については、われわれもあるいはそうではないかというように考えるのであります。どうしても警察情報というものはここに集めなければならないというような、今まで何か大きな欠陷でもあつたかどうかということでありますが、具体的な例でもありますならば、それをお示し願つておきたいと思います。  それからもう一つは、これは斎藤長官も速記をとめられておりましたので、私もこの場所では強くは申し上げたくないのでありますが、自治体警察犯罪捜査の上で秘密が漏れやすいような形にあるということは、非常に大きな問題であります。日本犯罪をなくするという建前の上から行きますと、自治体警察が秘密が漏れやすいというようなことになつて参りますと、言いかえれば自治体警察の腐敗あるいは堕落だということを、はつきり指摘された言葉だと私は考える。もし日本自治体警察が、こういうことがあるから、これを中央集権にしなければならないというような理論になつて参りますと、警察制度自体も根本からわれわれは一応考え直さなければならないような事態ができて来るのであります。これは私の聞き違いであつたかしれないが、斎藤長官のお言葉の中には、確かに自治体警察は、どうも秘密が漏れやすいというようなお話があつたかと思いますので、この点を私は確かめておきたいと考えておるのでありますが、私の申し上げたことが誤りであるかどうかということを、もう一応確かめておきます。
  46. 辻二郎

    辻政府委員 ただいま全国的な犯罪情報交換という問題につきましては、必ずしも国警でやる必要はないのであります。しかし現在全国の警察の有線、無線の通信綱を、維持管理いたしておるのが国警でございますから、便宜上これはどこか一箇所に集めないと意味をなさないと思います。それで便宜上国警に集めて、国警がこれを必要な関係自治体に知らせるということが、一番便宜的な方法で、すぐ実行できるのではないか、また能率的ではないかと考える次第でございます。
  47. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 門司委員のおつしやいますように、情報交換はお互いに熱意があれば、法律上書かなくてもできるんじやないかというお話はその通りであります。その通りであるにもかかわらず、必ずしもそうは行かないという場合が事実皆無とは申せないのであります。法律の上にはいろいろ道徳的規定を書く場合が多いのでありまして、これはこういうようにするものだということをはつきり書いて置いた方が、書かぬよりも行われやすいということが、他の法律にもたくさんあるのであります。この法律によつて情報を提供しなければ処罰をするとか何とか、そういう点は考えておりません。かくあるべきものだということを書いた方が、今までよりもよくなるであろう。考え方によりますれば、犯罪情報国警何かに持つて行く必要はないのじやないかというように考えるものも、万に一つないとも言えないのでありまして、私は完全に行われているとは申されないのであります。ただこう書いただけでこれがよくなるかと申しますと、それだけでよくなるとは思いません。しかしこういう道徳的規定が書かれて、しかもこれはお互いに情報は提供し、また全国的な情報関係のところからもらうというようになつておりますれば、こういうように法律に書かれておるにもかかわらずなぜくれなかつたのだということは言いやすい。お互いに言いやすいし、自然にそれが守られやすいであろう、かように考えるのであります。  それから自治体警察の腐敗の点を申されましたが、私はある種の事件について特に漏れるおそれがあるというような事柄は、やはりこれはあつてはならない事柄ではございますが、事実あり得ることであつて、これも実際防ぎにくい問題であります。ことに小さな区域だけを担当しているという地域になりますと、そういうことが事実非常に多いのであります。国警の地区ならばそれはないかとおつしやいますと、私はないとは言い切れないと思います。ある地区署、あるいはある一部だけを受持つているところでは、何らかの方法でよく漏れるということは、これは自然のなり行きと申しますか、よほど監督を厳重にいたしておりましても、そういうことがあり得るのであります。そういう場合に、広範囲地域を持つておりますと、そこのところにそれを知らせないで、他の県本部とか、あるいはよそで計画し、そこから警察力を持つてつて、そこの地元には通告しないでやるという例はたくさんあるのであります。警視庁自身におかれても、私はそういうことがあるだろうと思います。非常招集をして、署で一齊捜査をやられると漏れるから、今度は署には知らせないで、本庁だけで捜査をやろうというような場合もあるのであります。何も自治体警察のみに腐敗が多いとか、あるいは自治体警察であれば必ず漏れるとか、そういう問題では私はないと考えております。特殊の事件については、この事件はどうも漏れそうだということは、めいめい非常な努力はしておりましても、これは実際はあり得ることだと思います。
  48. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではまだ質疑の通告がありますけれども、午後から選挙法の改正会議がありますから、残余の質疑は後日に譲りまして、本日はこれにて、散会いたします。     午後一時五分散会