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辻政府委員 それでは私から一応ただいま
政府が
研究いたしております
警察法改正の骨子について、御
説明をいたします。
五、六点ございますが、第一は
国警の現在の
定員三万を五万に
増加いたしたい、こういう点であります。この問題につきましては、過去三年間の経験によりまして、現在の
国警の三万の
定員が非常に手
不足にな
つておる事実が明らかになりました。三万でありますが、そのうち常時
管区学校に九千名の
定員がございまして、現在は約五千名を入れております。
従つてそれだけ減員になりますので、実働は二万五千ないし二万一千という
数字になります。
地方の
駐在所等も二割
方警察官がおらないというようなところができておるのでございまして、
治安上非常に不安に
考えられるのであります。なおこの、問題の詳細につきましては、
国警長官から申し上げます。これが第一点の
国警の
増員の問題でございます。
第二点は、
自治体警察の
定員の問題でございます。これは現在全体として九万五千の
わくがあるのでございますが、これを各
自治体がそれぞれ必要に応じて、
定員を
自分の
自治体の
要望によ
つてきめるというふうにいたしてはどうかという問題でございます。これは発足当時
昭和二十二年の
人口基準で配分をいたしましたものが、その後の二年間におきまして、各
都市、ことに戰災
都市のごときは、おびただしく
人口の
増加を来しており、
方々の
都市から
定員をふやしてくれという
要望書、
陳情書が、
国家公安委員会にも山積しておる
状態でありますし、各
地方をまわりましても、とても足りないという
要望を聞くのであります。しかしながら、全体としては九万五千の
わくがございますので、足りないとすれば、他の
自治体からまわすよりほかに
方法がないのでありますが、
相当多数を持
つております
大都市におきましても、
治安上現在の
定員を割愛することはできないということで、非常に困
つた問題にな
つておるのであります。その点につきましては、現在のように各
自治体が経済的に独立しておるという姿になりました以上は、その
自治体の要求するだけの
数字を、
自分の
費用をも
つてまかなうようにしたい。
従つて全体の
定員の
わくをはずさなければならないという結果になると
考えております。これが第二点であります。
次には
国警並びに自治体警察相互の
応援関係でございます。これは現在までの
法律におきましては、
自治体警察が
国警に
応援を要請する場合、
国警から
応援に出ました
費用等については、
法律に明記がございませんでした。これを明文化いたしまして、
自治体警察が
国警に
応援を要請した場合に、その
費用は
国警が
負担するということを明らかにいたしたいと
考えておる次第であります。
費用の問題がはつきりいたしませんと、ほんとうに
応援を早く要請しなければならない場合でありましても、
自治体警察がこれを躊躇することがしばしばありまして、
事件が拡大してから非常に不利になるという
事例がしばしばございました。また小さい
自治体警察のごときは、非常に
費用がかさみますので、とうていその
負担にたえ切れないという事実があるわけでございます。また
自治体警察相互の
応援につきましては、
国警が仲介をいたしまして、
国警に申出てもらえば、
自治体警察から
自治体警察にも
応援ができるようにいたした。その場合の
費用もやはり
国警が
負担をする。こういう場合は大体非常に大きな
事件の場合でありますから、国の
治安上
国家が
負担すべきものであると
考えておる次第でございます。こういうふうに
改正をいたしますためには、
警察法の五十五條の
改正が必要にな
つて来る次第でございます。
その次には小さい
自治体警察の
存廃の問題でございます。御承知のごとく現在約千六百の
自治体警察が、それぞれ独立に分立をいたしております。その小さいものは七、八名ないし十名というのが非常に多いのでございます。これらの
自治体警察は、旧
警察制度の時代におきましては、
駐在員一人か二人くらいのところに、大体一人くらいの
警察吏員が配置されておる
状態にな
つております。こういう小さい
自治体警察におきましては、
平素は
あまり用がございませんが、いかに小さくとも
一つの
警察署を形づくるためには、最低どうしても十人くらいの人がいるわけであります。内勤もいりますし、外勤もいる。署長がいりますし、小使もいるという次第でありまして、ある
一定数はどうしても入り用であります。しかしながらこれが独立した
警察となりますと、もしその町に何か少し大きな
事件が起りました場合には、十人や十五人の人数では絶対にいかんともできない
状態にございます。
平素は
あまり用がなくて、いざというときには間に合わないというのが、現在の小さい
自治体の悩みであると思います。もちろん
警察吏員のための
費用も、
自治体にとりましては非常に莫大な金額になりますので、過去三年間におきまして、小さい
自治体警察を廃してほしい、返上したいという
陳情書、
決議書等が、私
どもの
委員会に山積いたしております。実際に
地方をまわりましても、その
通りの実情がよく看取されるのでございます。しからばこれをどうするかという問題でありますが、この小さい
自治体警察を各
自治体がどうしても持
つていたいということであれば、
地方自治の精神から申しまして当然持
つてお
つてさしつかえない。しかしどうしても
自分ところでは持ちきれないというところはこれを
国警に編入する。それをどこできめるかという点についてはいまだ結論が出ておりませんけれ
ども、
町村の議会もしくは
住民投票等の民主的な
方法によ
つて持つ持たないをきめて、これを
国警に編入してはどうかというのが、この小さい
自治体警察の
存廃問題であります。市以上のところは、市は当然
自治体として完全な
一つの形態であると
考えまして、これは必ず
自治体警察を持つことにいたしまして、
町村についてはそれぞれの
自由意思によ
つて、
存廃をきめたいと
考えておる次第であります。これは
治安上今までのいろいろの
事件を
考えてみましても、小さい
自治体が弱いために、非常に困
つた事案がたくさんございます。たとえば
労働争議等に関して、
不法行為が起りましたような場合、十人や十五人の
警察官ではとうてい数百や数千の勢力に対抗するということはできない。また
工業都市のようなところ、たとえば日立であるとか、あるいは
炭鉱都市のようなところにおきましては、大体その町はほとんどそこの
会社の
職員によ
つて形づくられておる。また
公安委員も
会社の
職員の中から出ておるというふうな例もたくさんございます。こういうところで、何か
騒擾事件のようなものが起りました場合に、その小さい
自治体警察は手に負えないと思えば、さつ
そく国警に
応援を要請すればいいはずであります。しかしながら実際問題といたしましては、その町の大
部分の人の意向に反して、
国警に
応援を要請することはなかなかできにくいものでありまして、
公安委員会は非常に消極的になり、
警察長も極度に消極的になり、
従つて事件を拡大してしまうというような
事例がしばしばあるのであります。その次の問題は特殊の
犯罪であります。この
犯罪の種類につきましてはまだ
研究中でございますが、たとえば
内乱のようなもの、あるいは全国的な
騒擾事件とか、
団体等規正令違反のような
犯罪、あるいは
通貨偽造、あるいは
証券偽造とい
つたような特殊の
犯罪につきましては、
国家地方警察が
自治体警察の管内においても
司法権を
行使し得るようにいたしたいと思います。これはいろいろの理由はございますが、もちろん各
自治体が非常に強力な
警察を持
つておりまして、十分にこの特殊な
犯罪についても
取締りが行われておる場合には、
国警が
出動する必要もございませんし、またそんな
意図もないのであります。しかしあまり有力でない
自治体警察官内におきましては、こういう
犯罪はしばし、
取締りが非常に困難に陷り、事実上できないという場合が多いのであります。たとえば
密入国あるいは
密貿易とい
つた問題が起りました場合に、
密入国は山口県の某港の市に
密入国をするのではなくて、
日本に
密入国をして来るのでありますけれ
ども、地理的な
関係で某港の市がしばしば
密入国の入口にな
つているという場合に、その町の
自治警察はたえずそれを取締まらなければならないということはその町にと
つても非常に大きな
負担であります。またその町には直接さのみ大きな
治安上の影響がない、その町を
通り拔けて
日本のどこかへ入
つてしまうというような場合には、その
自治警が消極的になるのはまことに自然なことだと思う。また
通貨偽造のような場合におきましても、ある町で一枚の千円
紙幣の
偽造が発見されたというような場合に、その町でこれを
捜査し、
犯人を逮捕するということは事実上困難であります。その
偽造紙幣がほとんど全国的に数百枚通用しておるというような場合には、全国的な
情報によりまして、それを検挙するということは可能でありますけれ
ども、
一つの独立した
自治体だけで、これを取締るということはきわめて困難であります。
従つてこの点に対しても
自治体警察が非常に消極的になりまして、ほとんど手をつかねておるというような
状態が、現在までしばしば起こ
つたのであります。こういう場合にそこの
自治体が強力で十分にその
捜査なり逮捕をやれば、もちろんよろしいのでありますけれ
ども、それをやらなか
つた場合に
国警が
出動して
司法権を
行使する。但しこれは
国警の
権限のある種の特徴になるわけでありますが、こういう
法律によりまして、いろいろな
弊害が起り得ることは
考えられるのであります。
従つてそれに対しては特殊の
犯罪を
法律によ
つて明記いたしまして、また
国警が
出動する場合には、
事前に
当該自治体の
公安委員会に申入れを行いましてやり、その他の
弊害の起らないような十分なる制約を設ける必要があると思うのであります。先に申し上げました小さい
自治体で、
騒擾事件などが起りました際に取締れないと同じことが、やはり
権限の問題にも
関連いたしまして、
公安委員会が機能を事実上喪失して
しまつた、極端な例では
公安委員会がつるし上げにな
つてしまつたというような場合もございます。そういう場合には向うから
応援の要請をしたくもできないのであります。そういう場合に
国警が
出動する、こういうような法規にいたしたいと
考えております。
それからもう
一つは
犯罪情報の
交換であります。
現行法におきましては、
個々の
犯罪情報において
交換をすることは規定されておりません。千六百の
警察がそれぞれ独立いたしておりますために、全国的にまたが
つた犯罪、あるいは他府県に
関連のある
犯罪等につきまして
情報をまとめ得ない、
従つてその
犯罪の
捜査が非常に困難になるというのが現状であります。各
自治体は
国警に
情報を集めて、
国警はその
犯罪に
関係のある
情報を
自治体に必ず通告する、こういうふうにいたしたいと
考えておる次第でございます。これらの問題は一部に
国警の
権限拡張というような非難もあるようでありますが、そういう
考え方は毛頭ないのでありまして、現在困
つておりますこういう問題をどうすればいいか、一生懸命われわれが
考えました結果、ただいまの小
自治体警察の廃止、あるいは
特殊犯罪に対する
国警の
権限行使というようなことに
なつた。それよりもよい
方法があるならばお教えを願いたいと思
つておるのであります。
このほかに
関連いたしました
犯罪、一人の
犯人が数犯を犯しておりますような
関連犯罪、これにつきまして
現行法を改めたい点が
一つございます。しかしこれは多分に技術的な問題でございますから、
長官から御
説明申し上げます。
それからもう
一つは
公安委員の
資格の問題、現在では過去において
警察官もしくは職業としての
官吏の
履歴のあ
つたものは一切いけないということにな
つている、
従つて非常に
公安委員の
選択の
範囲が狭められるのであります。人材を得にくいということになるのであります。
大都市であるとか、あるいは県の
公安委員の
範囲の場合に、非常に広い
範囲から
選択ができますが、
自治体の小
都市、あるいは現在の
町村等におきましては、その中から
官吏の経歴の全然ない、しかも良識のある人を
公安委員に三名選び出したいということになると、事実上非常に困難が伴います。この点につきましては、過去十年間において
官吏の
履歴のない人であれば、
公安委員の
資格を認めてほしいという点を、私
ども考えておる次第でございます。ごく大体に御
説明申し上げますとただいまの点でありますが、なお
国警増員の問題、
関連犯等の問題、その他の点につきましては
斎藤長官から、さらに補足して申し上げたいと思います。