○井之口委員 私水産委員としてとりわけこの問題は重要視するのでありますが、この問題の複雑性はどこにあるかと申しますと、
漁業制度の
改革、漁場制度の
改革、こういう
農地問題についても行われているような一大
改革によ
つて引起されておる今日の
漁業権の
補償金に対して、一般的な
税法による譲渡
課税がそのまま適用されるという点、
従つてこれから引起されるさまざまな不合理な現象、このために起
つておる問題であります。現在の法律をも
つてやりますれば、
漁業権の
補償額約百七十八億に対して、八十億または九十億からの
税金がかか
つて、これが没収されてしまうという形にな
つておる。だからして何らか法の適用の手かげんによ
つてこれを減らそう、あるいはまたこうして出て参りました
租税特別措置法の一部を
改正することによ
つて、まず十四億七千七百万円くらいに減らそうというふうな
考えが出て来るわけでありますが、しかし今度の法案をも
つてしても、
漁業制度の一大
改革の趣旨を徹底させた
意味においての租税制度というふうなものにはならぬと思われるのであります。これが今の
政府においてまるでちぐはぐな行政をや
つておりまするために、一方においては、画期的な大
改革をやろうとしておるにかかわらず、他面においては、ことまるで矛盾した
反対の方向に進んで行くというふうな制度をとりつつある。この矛盾が
従つてここに現われておるものとわれわれは見るのであります。第一、たとえば
漁業権の
補償金を交付するにあたりましても、ここに出ておりますいろいろな資料によると、
漁業会に
補償額として与えられる部分が百三十八億、それから会社有の
漁業権の
補償額は七億一千万円、それから
個人漁業権の
補償額は三十二億、こういうふうな算定にな
つております。しかし
漁業会に
補償される百三十八億の中にも、寄生的な、まるで
漁民の生き血を吸
つて、この
漁業権によ
つて従来長い間封建的な利得を続けて来ていた連中もおる。また会社有の
漁業権に対して、これにもそういうものがおる。あるいは大資本家の連中で漁場を独占してお
つて、それから厖大な利得を得ていたというような人間もおる。さらに
個人有であ
つても、やはり同じような寄生的な
個人がおる。こういう不合理があるのに、一般的な、一律的な算定をも
つてしては、そういうものに利得さしておいて、せつかくの
漁業制度改革の
利益を、まるで
消滅さしてしまうような結果に立ち至るのである。こういうふうな寄生的なものからの
漁業権の没収は、無償ですべき性質のものである。そういう方面に一般的に有償で与えてしま
つたならば―現在の法案では与えてしまうことになるのでありますが、しかし
税法をもし
改革するとなれば、むしろそういうところには大きな
課税をして、しかもその
課税をも
つて無償没牧の実質を実行するのが当然であり、これが農業におけるところの
土地改革に、やはり匹敵するようなものにな
つて来るのであります。しかるにそういう考慮がこれには払われおらぬのみならず、またいよいよ
補償して行く場合でも、今度新しく
改正されようとするものは、再
評価税の形で
軽減して行こうというふうな点にしか限定されておりませんが、再
評価するにしても、それが零細なる
漁民に対して、依然として大きな
課税が続けられて行
つて、そして寄生的な漁場の
所有者に対しては非常な恩恵にな
つて来る。のみならずまた零細
漁民に対しては、将来
許可料、
免許料というものがずつと続けてとられて行く仕組みにな
つているのですが、そうすればかえ
つて零細
漁民は
税金の
負担でも
つて、漁場は一応自分らの所有に帰するといえども、決して将来
漁業を安心してや
つて見くということにはならないと考るのであります。
そこで問題は、まずこの
漁業権の
補償で、完全に寄生的な部分に渡
つて行くのがどれくらいのパーセンテージになるのか。またたとい寄生的なものであ
つても、非常に零細なる
生活を営んでいるところの、社会政策を必要とするような漁場の
所有者、そういうふうなものがどれくらいの率になるのか。こういう点を
政府において統計上明確に出してもらうと、はつきりそれが推定されるのでありますが、その点の算定方法を
政府では考慮されたことがあるのか。そうした統計上の考慮の上にこの法案をつくられる
意思はないか。これをちよつと第一番に聞いてみたいと思います。