○原(純)
政府委員 これはわれわれといたしましても、
主税局、
国税庁を通じまして、一番大きな問題と思
つておる点でございます。全部申し上げます。問題がいろいろございますから、ひとつ一緒にお
考えい
ただきたいと思います。
まず予算の見積りでありますが、千百七十一億円という申告所得
税収入を見積
つております。これは例年の通り、前の年度つまり昭和二十四年度からの繰越し滞納額の収入が相当ある。これが二百七十五億であ
つたと思うのです。それと新たに二十五年分の
課税が行われる。そのうち年度内収入幾らかという見積りであります。千百七十一億から二百七十五億を引きましたところの九百億近くというものが二十五年分の
課税額であ
つて、年度内に収入されると見積られたものであります。その際
課税額といたしましては、千百九十四億、約千二百億という
課税額を見込みました。実績はどうか。まだ最終実績まで申し上げる段階ではありません。そこで先ほど徴收
部長から申されました
程度の見通し等をも入れまして、実績を
考えてみますと、最初の繰越分、二十四年度からの繰越分の収入が予算の二百七十五億に対しまして二百十六億ということで終
つております。ここで約六十億足らないということになります。それから次は二十五年分の
課税でありますが、これが予算の
課税額見込み千百九十四億に対しまして、実績見込みが目下のところの計数では九百億を切れる八百七、八十億という見込みであります。
税収滅の大きな原因は、従いまして
課税額の減にある。その
課税額に対します徴收歩合、これはむしろ予算を相当上まわ
つております。大体総体的な計数的のことをまとめて申しますとその通りでありますが、それではわれわれはそれをどう分析するかという問題であります。
その前に先ほど予算の信用の問題を言われたわけでありますが、今回の二十五年分の申告
所得税の
課税事務につきまして、われわれが非常に大きく展開を
行つたという点を申し上げたいと思います。これは通常国会の当時におきましても、機会があります場合に、長官なりあるいは局長なりから申し上げたと思うのでありますが、つまり申告
所得税制度に
なつたとはいうものの、実際はほとんど大部分の申告が不満足であるということで、毎年々々何百万という更正決定をいたして来ております。それがまたそれだけ更正決定が多くなりますと、もう日本の納税者はほとんど全部が悪いのだという意思表示を
政府がしたことになります。納税者としても大挙反撥するということで、御存じの通りかなり血なまぐさいケースまで出る
ような実態であります。しかし根本的に申告
所得税制度というものはいいものでありますので、これをわれわれは何とか本来あるべき姿に持
つて参りたいということの必要を、非常に強く痛感したわけであります。そこでことしこそは、在来のいわば地獄、修羅場の状態をやめたいというふうに
考えまして、各般の施策を立てまして、今回の国税申告の
事務に当
つたのであります。それはどういうわけかといいますと、まず抽象的に申しますれば、申告
所得税制度がしつかりするということは、納税者の申告が正しくよくなるということ、
税務署の調査なり仕事も、正確な適正なものになるということであります。これは一朝一夕をも
つてしてはできないのでありますけれ
ども、その方向にとにかく大きく一歩踏み出そう。それで一方で納税者が現在の
程度の記帳なり、あるいは所得の計算なり、あるいは申告なりということが、従来
程度しかできないということに対しては、やはり
政府として極力お手伝いをしなければならぬ。所得の計算にあた
つてお手伝いをしなければならぬという義務を痛感いたします。同時にそのお手伝いをするにしても、お宅はまあ幾らくらいでし
ようという
ようなことを、いいかげんに言う
ようじやあいけない。やはり帳簿をよく調べてやる。それから事業の実体も見てやらなければいけない。それが在来非常にうまく行きませんでしたのは、何と申しましても去年は一月がその確定申告期でありますが、一月に確定申告がある。そうすると七、八百万人に上る納税者に対して二月一ぱいに更正決定通知を出さなければいかぬということが、財政の要求であ
つたわけであります。それをやらないで年度を越しますれば、年度收入は落ちるというので、やむを得ずや
つたわけです。一月の間に何百万という事案について更正決定といういかめしいかつこうの通知を出さなければいかぬということが、いわば大きなボトル・ネックであ
つた。そこで
ただいま申し上げました大きな展開を行いますについても、中心的な課題は、そう短かい間に、神様でもなかなかむずかしい
ような仕事であります。これをやらなければいかぬという事態を何とか切りかえて参りたいということが中心であります。理想的にいいますれば、二十五年分の
所得税の
課税は二十五年のうちに調べるのがよかろうけれ
ども、やはり年が過ぎてから一年間はたつぷりかけてそして十分調査をして、その都度必要があれば更正決定をするというふうな仕事の運びにならないと、うまく行かぬわけであります。同時に納税者の方も、所得が大体においてしつかりはじけて、申告が大部分いい申告だ、更正決定する必要はもう何パーセントにすぎないという
ような事態に持
つて行かなければ、申告納税
制度というものはうまく行かない。そこで、そういう理想状態を実現し
ようという
考えを立てまして、それは
ただいま申しました通り、年度内
課税というものにあせ
つて。めちやめちやなことをしないということが第一であります。
従つてそれだけ年度収入はずれるということがございます。それから第二に、そうは申しましても、最初の年から申告は納税者の思う通りにしてい
ただいて、あとで調べるということでは、率直に申してほとんど全部を更正決定しなければならぬことになりますので、非常に手もかかりますし、また官職もいろいろ御非難がある
ようでありますが、やはりしつかりした調査をや
つて、それを納税者に率直に話して、それを判断してもら
つて申告をしてもらうというふうにしなければならぬと思いましたので、昨年の九月、十月以来非常な努力をして、実額調査というものをいたしました。それによ
つて、言葉を何と言
つたらよろしいのですか、申告の指導というとかたくなりますが、申告のお世話をするということを、二月の申告期に全力をあげていたしまして、この辺が何と申しますか、申告指導で申告をとるということになりますと、やはり前の
ように必ずぽんぽん更正決定するという場合と比べて、実際問題としては、どうしても税額が下ることになります。これを御了承願いたいと思います。今度は調べた結果二十五万と出たとい
つた場合に、うちはそれより多いと
言つてくれる人は少い。なぜなら去年の大雨で店の戸がこわれて、こういう修繕をしているという
ようなことは必ず言う。そういう
ようなわけで年度がずれるということ、それから、やはりそういう
ような事情で、
課税が低くなりがちであるということ、その辺が
課税額の減少の大きな原因であろうと思います。なおそのほかに、数え立てますといろいろございます。そのうち大きいと思われるものを一、二申し上げたいと思います。その第一は、これは相当大きいものでありますが、先ほど申し上げました補正予算の見込みの際には、七月予定申告の結果を資料といたしました。なぜかどいいますと、御存じの通り七月予定申告は、前年実績所得で申告すればよろしいということで、前年の一応コンクリートに固ま
つたものをもとにして行
つておるというわけで、それをもとにしたわけであります。当時七月予定申告のもとになりました前年実績、昭和二十四年分の
課税実績が税額で千七百億円であります。ところが、それがその後じりじりと減
つて来ております。最近の三月末現在で集めました計数によりますと、千七百億円が千五百八十四、五億、百十何億という減少を示しております。つまり予定申告をもとにして補正予算を組んだ。その予定申告はその前の年の実績をもとにしておる。そのもとが七%、八%落ちたわけです。そうすると、もとが落ちていますから、当然結論も落ちなければならぬということになります。それが非常に大きなフアクターだろう。これによる課程の減が、見当でありますが、八、九十億にはなろうというふうに私は
考えております。
そこで若干長くな
つて恐縮でありますが、大事な点でありますから、なぜそれが落ちたかということをちよつとつけ加えて申し上げたいと思います。いろいろありますが、大きく二つあろう。一つは例の審査の請求ですね。
課税は受けたけれ
ども、自分はこれでは不服だとい
つて再調査の審査請求を出しておる人が非常に多か
つた。去年はその人数だけでも百六、七十万とい
つておりますが、それがなかなか一、二箇月で片づくものではありません。補正予算を組む時分にはまだ未決の
関係が残
つております。それがあとになるに
従つてだんだん審査が確定される。前よりも多く決定されるのはほとんど例外なので、どうしても下るというのが一つございます。もう一つは前年は
課税に
なつたけれ
ども、その時分からどこへ行
つてしま
つたかわからない。妙な話でありますが、かなり営
業者が居所を移すことによ
つてわからなくなるというケースが多いのであります。
税務署は七月の際には予定申告が出て来ない。その人のところへ手紙で例の税額通知をやるわけであります。それが行き場所がなくて帰
つて来るというのが相当あります。これはあとをトレースするということをや
つておりますけれ
ども、なかなか完全に行かない。そういう点が大きな原因で、そういう大幅の減が予算の見積りの基礎と
なつたものに、実際上出て来るということが非常に大きいと思います。
それから第二としては
法人成りでございます。これは予算もある
程度見てお
つたわけでありますけれ
ども、やはり
法人成りの傾向は毎年のことでありますが、予期以上、顕著なものがあるということがやはり相当響いておる。