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石井説明員 厚生省並びに
文部省と、
鉱工品貿易公団の間においてとりかわされました
契約の法律的
性質、これにつきましては、
契約締結になりました当時の
事情と、それから文章といいますか、文面の問題と、それからその後における履行の
状況、この三つからいたしましてこれを解釈いたさねぱならぬと思うのでございます。当時
自転車につきましては、臨時物資需給調整法による
配給統制が実施されておりまして、その販売あるいは
割当ということが、
一つの国家的な統制に
従つて行われてお
つたわけでございます。従いまして、
厚生省あるいは
文部省とい
つたようなところがほしいままに台数を
割当て、あるいはその取引をいたすということはできなか
つたわけでございまして、
関係庁の間で協議をしたところに
従つて、これらの業務を行
つたのでございます。この場合
厚生省、
文部省がその直轄学校あるいは国立療養所というようなところに
配給いたしたのでございますれば、これはもちろん
予算の裏打ちがございまして、この
予算の裏打ちによる国家の購買
契約担当官という立場で、
契約が行われたと思うのでございますが、実は
厚生省、
文部省のありました立場は、たくさんの管下の実際の
需要者の利益の代表者という立場であ
つたのが、経済的、実態的に見た場合の立場でございます。すなわち実態的に申しますれば、
厚生省あるいは
文部省自身は一台の
自転車もいらないのである。但し管下の兒童であるとか、あるいは
医師会、薬剤師会とい
つたようなものの利益を代表した立場でものを考えますれば、この
自転車がいるということにな
つたと思うのでございます。これを処理いたします法律的形式といたしまして、
厚生省ないし
文部省が直接の
契約の相手方にな
つて、明らかに
契約を締結いたしておるのでございます。この
契約の形式に関しまする限り、これは有効な明らかな売買
契約でありまして、
従つて契約上の
債務、物品の
引取りあるいは
代金の
支払いというものは、
厚生省、
文部省みずからこれに当るということが、文面上は明らかにな
つておるのでございますが、経済的な実態
関係はただいま申し上げましたような
事情がございましたわけでありますから、法律的に解釈いたしますれば、あるいは権利なき社団あるいは
団体の利益代表者、ないしは管理人という立場に立てお
つたことに相なるかと思うのであります。その後の
契約の実施
状況はしからばどうであるかと申しますと、
公団の側にありましては、あたかも
文部省ないし
厚生省それ自身が
契約の相手方であり、
契約に対して全部の
責任を負うものとこれを認めまして、金の
支払いがないにもかかわらず
品物を渡しておるという、
契約の履行が行われてお
つたのであります。これに対し
文部省ないし
厚生省におきましては、大体の立場といたしまして、権利なき社団の利益管理人、利益代表者というような立場から物事を処理されてお
つたのではなかろうと思うのであります。それが
答弁の端に現われました、あるいは
責任なしと言われ、あるいは金銭について無
関係というような
発言にな
つたところかと思うのであります。しかしながら実態
関係におきまして物事を考えますと、
厚生省に対しましては約一万五千台の
契約を行いまして、九千台余のものが現物で返
つて参つておるのでございます。これは相手がただいま申し上げましたような経済的な立場にあることの認識の上に立ちまして、單なる一片の売買
契約として物事を律するわけに参らない。従いまして当初の
契約がいかにもあれ、物が返
つて参るのでございますれば、まずこの点につきましてはその
範囲において、当然
契約の数量その他が減縮されたものとして考えよう。
経済情勢の変動もございます。
従つて元のきめた値段でとれないというのも、話としてわからないことではございませんので、大体におきまして
品物で返してもらうという線に沿うて、問題を考えておるわけでございます。実際や
つておりますことは、ただいままで申し上げました
文部省、
厚生省等が
契約を締結いたしました経済的実態に即し、同時に文言上に書かれました
契約書あるいはその他のとりかわし文書というようなものにも一致し、かつ
会計法、財政法とい
つたような
原則にもマッチし符合するごとく、これを処理いたしておるのでございまして、
厚生省関係について申し上げますと、約五千九百十五台という
自転車に
相当するものが、まだ返
つて参つておらないのでございます。この
金額が先ほど申し上げました四千七百万円余に当るわけでございます。このうち約二千三百万円
程度のものは、この三月一ぱいで
品物が
公団に返ることにな
つておるのでありまして、それぞれの先から物を收集いたしておるのであります。残りの二千四百万円ばかりのものが、物で返
つて来るか、あるいは物が滅失したり毀損したりしてお
つたならば、金で賠償させるかという問題に相なるわけでございますが、中には、実は
実務代行を受けましたものが詐欺盗難等にあいまして、
品物を紛失しておるという事件等もからんでおります
関係上、この九月末までには問題が解決しそうもないのであります。その
金額を見積りましたものが、二千四百万円余の九月までに
回收不能に陥る
金額と相なるわけでございます。
文部省について申し上げますれば、約一万一千台の
契約のうち、総額といたしまして九百五十台ばかりのものが、物として返
つて来ておらないと申すことができるのであります。これをこの九月までに可及的に物で返させる。かつ爾余のものは金銭の
債務の形で、
文部省を通じて弁償させまして解決いたそうというのが、われわれのと
つておるところでございまして、法律上の
性質というものにつきましては、先ほ
ども申し上げましたように、かかる
契約を締結する必要のありました経済的実態と、それから書面あるいは文書の出ました形式、それからこれの
会計法上、財政法上の処理の大要というものの三つの間に、正しい解決をいたさんといたしておるのが、われわれの現在と
つておる態度であります。