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1951-03-14 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十四日(水曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君       島村 一郎君    清水 逸平君       塚田十一郎君    苫米地英俊君       西村 直己君    三宅 則義君       宮幡  靖君    宮腰 喜助君       竹村奈良一君    深澤 義守君  出席政府委員         総理府事務官         (外国為替管理         委員会委員) 大久保太三郎君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局次長) 酒井 俊彦君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         農林政務次官  島村 軍次君  委員外出席者         海外同胞引揚に         関する特別委員         長       若林 義孝君         外務事務官         (管理局借入金         審査室長)   池田千嘉太君         大蔵事務官         (銀行局預金部         資金課長)   高橋 俊英君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月十二日  企業再建整備法の一部を改正する法律案内閣  提出第九四号)(予) 同月十三日  保税倉庫法及び保税工場法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇一号)  公庫の予算及び決算に関する法律案内閣提出  第一〇三号)  農業共済保險特別会計法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇四号) 同月十二日  たばこ民営反対請願松本善壽紹介)(第  一一七一号)  同(高木松吉紹介)(第一一七二号)  同(福田繁芳紹介)(第一一九九号)  同(木下榮君外一名紹介)(第一二〇〇号)  同(原彪君外一名紹介)(第一二七六号)  同(菅家喜六君外一名紹介)(第一二七七号)  朝倉病院医療施設に対する免税等請願(堤  ツルヨ君紹介)(第一二二三号)  未復員者給与法適用範囲拡大に関する請願(  堤ツルヨ紹介)(第一二三〇号)  コーヒーに対する物品税撤廃及び関税定率に関  する請願田中元紹介)(第一二七四号)  原油に対する関税率撤廃請願滿尾君亮君紹  介)(第一二七五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農林漁業資金融通特別会計法案内閣提出第六  三号)  資金運用部資金法案内閣提出第七一号)  資金運用部特別会計法案内閣提出第七六号)  外国為替資金特別会計法案内閣提出第八一  号)  資金運用部資金法施行に伴う関係法律整理  に関する法律案内閣提出第八六号)  在外公館等借入金返済準備に関する法律案  (内閣提出第八七号)  保税倉庫法及び保税工場法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇一号)  企業再建整備法の一部を改正する法律案内閣  提出第九四号)(予)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 これより会議を開きます。  去る三月二日本委員会に付託されました資金運用部資金法案、及び三月五日付託されました資金運用部特別会計法案、及び三月八日付託されました資金運用部資金法施行に伴う関係法律整理に関する法律案、及び三月十二日予備審査のために付託されました企業再建整備法の一部を改正する法律案、並びに昨十三日付託されました保税倉庫法及び保税工場法の一部を改正する法律案の五法案一括議題としまして、政府当局より提案趣旨説明を求めます。西川政府委員
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 ただいま議題となりました資金運用部資金法案外法案提出理由を御説明申し上げます。  今回、政府におきましては、国の会計に属する積立金及び余裕金等政府資金及び政府に準ずるものの資金統合管理の実を上げるため、預金部預金法を廃止いたしまして、新たに資金運用部資金法を制定し、その統合した資金を確実かつ有利な方法運用することにより、公共の利益の増進に寄与せしめることといたしたいと存じまして、この法律案を提供した次第であります。  この法律案の要旨を申し述べますと、次の通りであります。  一、郵便貯金及び郵便振替貯金のうち、常時の払いもどし資金以外のものは、資金運用部預託すべきものとすること。  一、簡易生命保險及び郵便年金特別会計契約者貸付金を除いた政府特別会計歳入歳出決算上の剰余から生じた積立金は、すべて資金運用部預託すべきものとすること。  一、国庫余裕金資金運用部預託し得るものとし、米国対日援助見返資金特別会計以外の政府特別会計余裕金は、資金運用部への預託方法による以外に運用してはならないものとすること。但し国債整理基金特別会計における国債の保有を除くこと。  一、資金運用部は、他の法律または政令によつて資金運用部預託される資金をも受入れるものとすること。  一、資金運用部預託金は、定期預託金のみとすること。  一、預託金条件は三月以上とし、それぞれの約定期間に応じて、利率は四階段に分け、最低年三分五厘から最高年五分五厘まで五厘刻みとし、法定すること。  一、資金運用部資金運用の対象は、国、地方公共団体、国または地方公共団体に準ずる法人及び金融債に限定することとし、特に金融債に対する運用については、資金運用部資金総額の三分の一、一つ金融機関の発行する金融債の五割、一つ金融機関の一回に発行する金融債の六割を越えてはならないこととすること。  一、資金運用部資金運用審議会を設置し、その組織及び権限について規定すること。  一、各特別会計積立金で、現に預金部預金以外の方法運用されているものについては、この法律施行の際、資金運用部にその資産を引継ぎ、その資金は、資金運用部預託されるものとすること。但し、簡易生命保險及び郵便年金特別会計積立金のうち、預金部預金及び契約者貸付金となつているもの以外の運用資産は、それが償還される都度資金運用部預託金に受入れることとし、当分の間は同特別会計積立金に属する運用資産として保有せしめること。  一、債券収入金預金は、四月一日に全部日本勧業銀行に払いもどし、同銀行に管理させること。  一、簡易生命保險及び郵便年金支払いは、政府が保証する旨法制化すること。  以上でございます。  次に資金運用部特別会計法案提出理由を御説明申し上げます。  今回政府におきましては、政府資金統合管理目的をもちまして、別途今国会資金運用部資金法提出いたし、御審議を願つているのでありますが、この資金運用部資金法を実施いたすことになりました場合に、資金運用部資金運用に伴う歳入歳出一般会計と区分して、その経理状況を明確にいたしますため、資金運用部特別会計を設けて経理することが適当と考えられますので、この法律案提出した次第であります。  その内容の要点を御説明申し上げますと、第一点は、この会計大蔵大臣が管理することといたしまして、その歳入歳出につきましては資金運用部資金運用利殖金一般会計からの繰入金及び付属雑収入をもつてその歳入とし、資金運用部預託金の利子、資金運用部資金運用損失金運用手数料事務取扱費繰越損失補填金、繰替使用金償還金及び付属諸費をもつて、その歳出とすることといたそうとする点であります。  第二点は、資金運用部資金運用資産保全をはかりますために、運用資産に価額の減損を生じた場合には、この会計決算上生じた剰余をもつて償却し、それをもつて償却できないときは、積立金をもつて償却し、なお償却できないときは、これを翌年度に繰越しまして整理し、一般会計から予算の定めるところにより、必要な金額を繰入れて補填することといたそうとする点であります。  第三点は、この会計決算剰余を生じた場合に、原則としてはその二分の一を積み立て、残余を一般会計へ繰入れることといたしますが、当分の間は積立てを行わずに、剰余の全額を一般会計へ繰入れることといたそうとする点であります。  第四点は、決算不足を生じた場合には、積立金から補足することとし、なお不足する金額一般会計から補足することといたしまして、第二点とあわせ資金運用部資金運用資産保全に資せしめようとするものであります。  第五点は、この会計において支払い上現金に不足があるときは、資金運用部資金を繰りかえ使用することができるようにいたそうとする点であります。  第六点は、その他予算及び決算の作成及び提出に関する手続等特別会計に必要な規定を設けることといたそうとする点であります。  次に資金運用部資金法施行に伴う関係法律整理に関する法律案提出理由を御説明申し上げます。  今回政府におきましては、別途今国会資金運用部資金法提出いたしまして御審議を願つているのでありますが、この資金運用部資金法を実施いたすことになりました場合には、各特別会計法その他の関係法律規定整理する必要がありますので、この法律案提出した次第であります。  すなわち各特別会計法、公債金特別会計法外四法律廃止等に関する法律災害救助法国民金融公庫法総理府設置法大蔵省設置法住宅金融公庫法及び日本輸出銀行法の一部を改正して、「大蔵省預金部」とあるのは「資金運用部」に改める等所要整理を行おうとするものであります。  次に企業再建整備法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  企業再建整備法に基く特別経理会社再建整備計画認可は、現在までにほとんど終了したのでありますが、認可後における経済事情変化等によりまして、資本増加、第二会社株式処分資産処分等が予定通り行えぬため、いまだ整備計画実行が完了していないものが少くない状態であります。従つてこの際特別経理会社解除条件を緩和し、整備計画のすみやかな実行完了を期するとともに、商法の一部改正法施行に伴う規定整備を行うため、この法律案提案いたした次第でございます。  次にこの法律案のおもなる内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一は資本増加に関する点でございます。すなわち、これまで整備計画において企業資本構成の是正、旧債務の返済等のために、増資を計画しながら、その実行の困難から特別経理会社として残つているものが相当ありますので、今回商法改正によりまして授権資本制度が採用されることになりますのに伴い、授権資本増加をもつて整備計画増資と認めることとしようとするものであります。  第二は第二会社株式処分に関する点でございます。特別経理会社の保有する第二会社株式は、証券市場状況等によりその急速な処分が困難なものが相当生じている実情にありますので、これらの会社については、整備計画中の他の事項実行が完了しますれば、第二会社株式処分が終つていないでも、特別経理会社から解除することとしようとするものであります。しかしながら特別経理会社解除になりました後でも、第二会社株式処分することは従来通りとするとともに、長期間にわたつて会社が第二会社を独占的に支配することを防止するため、その第二会社株式について有する議決権の行使につきましては、主務大臣の監督を受けることとしております。  第三は資産処分に関する点でございます。整備計画に定めた特別経理会社の旧勘定の資産、その他今後の事業運営について不必要な資産処分は、相当困難となつているものが少くありませんので、解散した特別経理会社につきましては、特別管理人の全員の同意があれば、資産処分が未済でありましても、整備計画中他の事項実行が完了すれば、整備計画実行は完了いたしたものとして、特別経理会社から解除しようとするものであります。  なお、この他、商法改正に伴いまして関係条文整備を行う必要がありますので、これらの点について改正を行うことといたしております。  次に保税倉庫法及び保税工場法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  今回、これらの法律案目的は、近時の保税倉庫及び保税工場運用状況にかんがみまして、これらの正規の利用を助長し、わが国貿易の発展に資せしめるため、保税倉庫法及び保税工場法の一部に所要改正をいたそうとするものであります。  改正の主要な点は、次の三点であります。  まず第一の点は、現行法によりますと私設保税倉庫庫主は、その保管貨物輸入税について一切の責任を負うことになつておりますのを、災害によつて滅失した貨物または税関長の承認を経て滅却せられた貨物については、責任を免除することとするとともに、庫主が供託する保管貨物輸入税の担保の種類を従来の金銭または国債証券のほか、税関長の確実と認める社債にまで拡張することといたしました。  第二の点は、従来、勅令規定されておりました保税倉庫及び保税工場特許手数料の徴収に関する根拠を、財政法規定趣旨にかんがみ、法律規定するとともに、加工貿易振興のため特に必要があるときは、特許手数料を低減または免除できることとして、加工貿易の助長に資することといたしました。  第三の点は、以上のような保税倉庫及び保税工場正規の営業を助長することといたしました反面、制定以来改正を見ずに今日に至つたため、著しく他の法規に比べて均衡を失している罰則の規定整備して、これらの制度に伴う違反行為の取締りの確実をはかることといたしました。  以上が、この五法律案提出いたしました理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  4. 夏堀源三郎

  5. 深澤義守

    深澤委員 在外公館等借入金返済準備に関する法律案について質問をしたいと思いますが、先般本委員会において説明されたところによりますと、在外公館が当時借入れたところの件数は、二十一万件あるということが説明されておるのであります。その審査をした結果が大体確認できないものが七万件くらいある。あとの十三万件くらいが確認できるものらしいという漠然たる説明を承つたのでありますが、この二十一万件に対する審査経過についてひとつ外務省の方から具体的な御説明を願いたいと思います。
  6. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまお尋ねのありました二十一万件と申しますのは、この前申し上げましたように、申請の出て参りましたものが二十一万件でございまして、必ずしも在外公館でこの法律で申しております借入金として借り入れたものでないものを、申請者の方でこれに適用があるのではないかという誤解のもとに提出されたものを含めますと、二十一万件の申請になる、こういうことでありまして、このうちただいま申し上げましたような借入金の性質を有していないものを除きますと、大体十三万数千件になるのではないかということでございます。
  7. 深澤義守

    深澤委員 戰争による在外資産被害というものは、実に莫大なものがあると思うのでありますが、これはそれに関連しての全部の申請であると思うわけであります。従つて当然借入金返済の問題に該当すべきものとして申請したものが、拒否されたということになりますと、そこに相当問題があると思うのです。戰争によつて被害を受けた人と政府との間に、相当の問題があると思うのでありまして、その具体的な内容をやはりわれわれは一応知る必要があると思うのであります。この法案を出して来ました場合におきましても、何らこれに関するところの資料というものが提出されていないのであります。もちろん質問によつて明らかにすればいいのでありますが、今のような御答弁ではわれわれははなはだ了解に苦しむのであります。大体二十一万件の申請が出て来たが、その二十一万件の内容がどういうものであるか、それから該当しないとして未確認なつたもの七万件はどういうものであつたか、あと残つた十三万件は大体どういうものであるかという、概括的な資料でもお出し願わなければ、どうもこの法案審議資料としては、不十分ではないかというぐあいに考えるわけであります。従つてこの資料提出委員長からひとつお願いしたいと思います。  第二にお聞きしたいことは、今度のこの法律は大体確認したものを評価するということが内容らしいのです。そうするとその前に、二十一万件中十三万件というものが大体関係があるだろうとして残されているのでありますが、これを確認する問題がまだ相当残つているのであります。そうすると十三万件の確認は、どういう方法によつておやりになるか。その点をひとつお伺いしたいと思うのであります。
  8. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お尋ねのありました十三万件の確認でございますが、これは実は「在外公館等借入金整理準備審査会法」という昭和二十四年の法律によりまして、審査会で逐次確認をいたしておるのでございます。先ほど申しました十三万件も審査会確認を経て、これが借入金であるかどうかということが決定するのでありまして、二十一万件のうち十三万件くらいだろうと申しましたのは、大体の推定でございます。従つてこれは審査会審査の結果確認すべきものとなるか、あるいは確認すべからずという結論が出ますか、これは審査会審議にまかしてあるわけであります。なお詳細の点につきましては、外務省から係官が参つておりますので、そちらから説明することにいたします。
  9. 深澤義守

    深澤委員 今御答弁になつたの大蔵省の方ですが、外務省の方からこの問題についての一応の御説明を願いたいと思います。
  10. 池田千嘉太

    池田説明員 ただいまの御質問については大体大蔵省からお話の通りでございまして、二十一万件というのは事務局で現在受付けておるものでございます。その内容はいろいろありまして、窓口では——窓口と申しますと市町村でございますが、窓口では審査したわけではありませんので、一応申請者の方で借入金と認めて提出するものは受付けてくれという趣旨でやりましたので、その届いた書類によりますと、一応全然該当しないと思われるものもあります。たとえば外国でやつた郵便貯金あるいは公債、社債、それから小切手類、そういうものを含んでおるのでありまして、先ほど大蔵省から申されましたように、ほんの事務的に一応見ただけの分類であります。これを正確に確認するかせぬかということは、審査会法にあります通り審査会で決定するものであります。
  11. 竹村奈良一

    竹村委員 関連して伺います。大体十三万件は推定だということは了承いたしますが、その十三万件が大体該当するであろうと推定された根拠、これに対して今までいろいろ問題があると思うのですが、たとえば邦人を海外から本国に送還する場合の費用等を借り入れられたものか、あるいは向うにおける生活費を補うために借り入れられた分、あるいはまたそういうようないろいろな面があると思うのですが、そういう種類別等がわかつておれば聞かしてもらいたい。  それからもう一つは十三万件は一体どこであつた。在外資産の借入れと申しましてもいろいろあると思います。樺太にもあるだろうし、おそらく朝鮮、上海、満州、そのほかいろいろありますが、地域別では大体どんなところかその点を明らかにしてもらいたいと思います。
  12. 池田千嘉太

    池田説明員 この借入金審査にあたりまして、借り入れた金をどう支出したかという点においても審査会で一一検討しておりますが、これは経費が非常に種々雑多でありまして、救済並びに引揚げのためということになつております。それには救済金引揚げの直接の費用もありますし、引揚げのための中国側との折衝の費用とか、それから貧困者救済するとか、いろいろな費用がありまして、これを一々分類したものは今手元にございません。  それから第二点につきまして、借り入れた先、借入者は一体どう分布されているかということについて、請求書につきまして一応事務局で調べましたところによりますと、これは中国地区の大使館、公使館、領事館などのあるところは、それをもちろん含みますが、ああいう混乱した事態でありまして、それ以外の、在留民のみあつて公館の手の及ばなかつたところでも、借入金が行われたと見られるところもあると思うのでございまして、そういう種類をあげますと、中国地区借入金を提供した先というものが六百五十九、それから南満地区外務省公館というものはほとんどありません。おもに自治団体が中心になつておりますが、それが南満地区では百五、それから北満地区では二百十三、朝鮮地区では百七十四、南方地区三百九十九、その他の地区というようになりまして、総計約千九百箇所で借入金が行われたというような結果が出ております。
  13. 竹村奈良一

    竹村委員 借入金使途については詳細はわからない、種々雑多だというのはその通りだと思うのでありますが、その点についてはわかるだけの資料でけつこうでありますから、御提出を願いたい。  それからもう一つは、借入金がどこに使われたかということは国の責任でありまして、それがはたして完全に救済するために使つておろうと使つておるまいと、そういうことは返済のときには別に問題にならない。借入金を借りたというだけで返済する義務があると私たちは考えておるのです。それが使い道はどこに使われておるかわからない。それはいたし方がありませんが、しかし借入金をする場合において、その借入金を認めた根拠、たとえば当然これは送還するために出したものである。あるいは聞くところによれば、たとえばこういう形で、内地に送金できないから政府に貸したという形で送金したということも、往々にしてわれわれは聞いているわけなんです。そういうようなものがどういうふうに取扱われているかという点を聞かしてもらいたいということと、それからもう一つ借入金返済するところの一人当りの最高額は、大体どのくらいになつておるのか。これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  14. 池田千嘉太

    池田説明員 ただいまの御質問でありますが、借入金審査にあたりましては、大体法律の第一条によりましてやつておるのでございまして、どういう使途に使われたかということは、お説の通り借入金の性格に直接影響はないものと思われますので、何十口とか、多いのは数万口も借り入れたという場合に、それを一々どれがどこに当るということを調査することはなかなか困難でありまして、そういう場合は審査会においても愼重に考慮しまして審査しておるのでございます。  それから最高額はどのくらいかという点につきましては、これは換算の問題がありますから、単純に金額のみを申しても適当かどうかわかりませんが、一応数額の上から行きますと、一口儲備券の一億円というのが、あるいは最高ではないかと思つております。
  15. 深澤義守

    深澤委員 この借入金の問題は、貸した方の人の申請審査してどのくらいあるかということをきめるらしいのですが、そうでなくて、在外公館があの当時これだけ借りたということを、日本政府におそらく報告してあると思う。その在外公館から報告されてあるものと、それから貸した方の人の申請とを照し合せて、審査をするということにしなければならぬと思うのですが、在外公館があの終戰直後において借り入れた額の政府に対する報告は、大体幾らくらいになつておるか。こういうことが明確になつておりましたら、ひとつお聞きしたいと思います。
  16. 池田千嘉太

    池田説明員 ただいまの御質問ですが、在外公館と言いましても、在外公館もありますし、そのほか法人自治団体あるいはそれに準ずるものという規定がありまして、もちろん在外公館について、あるいは主要なる法人自治団体の借り入れた数などは、大体正確なものが政府に報告してありますから、それはわかつておりますが、それ以外におきましてわからないものもあるようでございます。この点は御承知の通り終戰後書き物とか何とかいうものを全部持つて帰えることが、原則的に禁止されたというような状態でありまして、こういう点が審査上非常に困難を来たしておる原因にもなつておるわけでございます。
  17. 深澤義守

    深澤委員 在外公館の報告の中には、一応儲備券の一億円というものは報告されておるのですか。
  18. 池田千嘉太

    池田説明員 もちろん報告されております。
  19. 深澤義守

    深澤委員 そうすると食い違いはどんなことになつておるのですか。在外公館の報告したものと、貸した者の政府に対するところの申請額との開きは、どのくらいあるのですか。
  20. 池田千嘉太

    池田説明員 政府あるいは自治団体で借りましたものは、いろいろの関係国会の方の法律改正によりまして、申請期間を六十日も延ばしましたけれども、なおその申請の出ないのもありますし、あるいは故意に申請しない人もあるかと思いますが、大体出ておるのは七割くらいではないかと思いますから、金額においてもそのくらいの差が出ておるのではないかと思つております。
  21. 深澤義守

    深澤委員 そうしますと、在外公館政府に報告したものと、申請者申請したものとを比較すると、申請者申請の方が少いということになるのですか。
  22. 池田千嘉太

    池田説明員 大体お説の通りと思つております。
  23. 深澤義守

    深澤委員 その総額はどのくらいになつておりますか。
  24. 池田千嘉太

    池田説明員 これは金主の問題がありまして、総額と言つても、まだ主体を調査するものも大分ありますし、総額をまとめることはなかなか困難で出ておりません。
  25. 深澤義守

    深澤委員 どうもこの問題は非常に漠然としておつて、われわれこの法律案審議するのに苦しむのです。それで漠然とした状態でもいいですから、一応何か資料をもらわなければ、ただこれだけでは、ちよつとわれわれは賛成反対の決意をするわけに行かないと思うのです。従つて外務省当局から今までの審査の経過を概要でいいですから、一応資料の御提出を願いたいと思います。委員長からぜひそういうふうにおとりはからい願いたいと思います。
  26. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 明日午前中までに資料ができますか。
  27. 池田千嘉太

    池田説明員 ひとつできるだけ……。
  28. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 関連して……。この問題につきましては、すでに債権者となるべき方々に証券を交付しておるようです。それを受けた方々は、これは一つの有価証券だ、担保化してもいいのだという意味合いで、裏書き譲渡なり処分をする方が大分あるんじやないか。こうなつた場合に政府では、これはまだ審議会で確定していないのに、有価証券のような性質のものを発行しておられますが、これは有価証券の性質を有するものでしようか。それともそういう単なる、あつたんだという事実を通知する程度のものでしようか。
  29. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまお話のように、確認済みのものにつきましては、在外公館等借入金確認証書というものを逐次交付をいたしております。しかしながらこの確認証書は現地通貨、たとえば法幣の幾らとか、あるいは儲備券の幾らとかいう現地通貨建で借入金確認しておるのでありまして、これが実際にどのくらい日本の通貨で返つて来るかということは未確定でありまして、今度の法律におきましてその評価を審査会で定め、そうして次の国会支払いに関する法律を出しまして、初めてこれが日本の通貨として幾らの借入金になるかということがわかるのでありまして、それまではいわゆる有価証券という取扱いは受けられないことになつております。なおこの確認の最後に注意事項といたしまして、この証書に記載された借入金に対する支払額、支払時期及び支払方法等は、別個の法律をもつてこれを定めることになつているという注意事項がございます。お話の有価証券の扱いは受けないと思います。
  30. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうすると、貨幣価値の相違も相当ありますが、その当時の貨幣価値によつて処理されるものか。あるいは現在の証券をその債権確認をしたというときの貨幣価値によつてきめるものか。いつのときの貨幣価値によつてきめるかということをお聞かせ願いたい。
  31. 酒井俊彦

    酒井政府委員 それらの点を今度提出しております法律案に基いてできます審査会で、決定をいたしたいと考えておるのであります。
  32. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうすると、確認後に大体証券というもの、いわゆる有価証券の性質のようなものを交付することになりますが、予算処置ができなければただちに支払いができないから、支払いは将来なんだ、こういうことになつた場合に、農地調整法によつた農地証券のような運命になる心配がありまして、金のある者はどんどん割引きして買い、資力の弱いために引揚者なんか結局倒されるという心配がありますので、この点は今後農地証券と同一運命にならないように、まだ内容がわかりませんが、状況によつてはあるいはこの内容を修正してお願いすることがあるかもわかりませんが、ぜひ農地証券のような運命にならないように十分御注意を願いたい。
  33. 島村軍次

    島村委員 この際ちよつとお伺いしておきたいのですが、なるほど政府に対して貸金があつた。ところがその当時は何か証書をいただいておつたのが、たまたま帰国に際してそれを押収された、従つて何も証拠となるようなものがないというような方が大分おありになるようですが、これらに対して実際のお取扱上のお考えをお話いただければけつこうです。
  34. 池田千嘉太

    池田説明員 大体領収書を持つて来られないのが原則なんでございますけれども、大分多くの場合持つて来られておるようでございます。それで先ほど申しましたように、こちらに現地からの借入れ責任者の報告のあるものが大部分でございますから、それに基いてそれと照合しながらやつていますから、来ていないのも、証書がないのを出してはいけないと言つてはいないのでして、そういう事情を含めまして証書がなくても自分の記憶により、あるいは何かの方法で出しているのがずいぶんあります。そんなのは台帳によりまして現在までのところは処理しております。
  35. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ちよつと遅れて来ましたので、すでに済んだかもしれませんが、もう一度承りたいのですが、確認をいたします場合の条件で、せんだつてちよつと大蔵省関係の方から聞きましたのですが、もう一度はつきり……。
  36. 池田千嘉太

    池田説明員 この確認条件といたしましては、二十四年六月公布されました法律の第一条に書いてありますが、御参考までに読みますと、『この法律において「借入金」とは、太平洋戰争の終結に際して在外公館又は法人自治団体若しくはこれに準ずる団体が引揚費、救済費その他これに準ずる経費に充てるため国が後日返済する条件のもとに在留邦人から借り入れた資金をいう。』というこの条件に合いますものを確認しているわけであります。
  37. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 今のお話をわけますと、借り入れた主体とそれからその用途、これが重大な問題になつているようでありますが、それに対してせんだつては、正規借入証というものが必要だというお話であつたのですが、正規借入証というのはどういうものであるか伺いたい。
  38. 酒井俊彦

    酒井政府委員 先般申し上げました正規の借入証と申しますのは、正規という言葉を私使いましたかどうか記憶にございませんが、昭和二十年九月に外務大臣から在外公館長あてに出しました訓電におきまして、最後に「之を整理する事致すべきに附、其の使途金額明細出来得る限り証憑書類等を整備し保存し置かれ度」という訓電が出ております。一方、在外公館側でもそういう証憑書類をとりますと同時に、貸した者に対して借りたという証拠を渡すという措置がとられたということかと思います。
  39. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 これは主体が非常に雑多でありますので、借入証というようなものもまあ持つて来なかつたのもあると思います。持つて来たとしても、種々雑多なものがあると思うのですが、その借り入れた証拠というものは、その主体を認めるか認めないかによつて違うとか、もしくはその記載の方法によつて影響を受けるとかいうことがありますか。
  40. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお尋ねの主体によつて確認するかどうかということはございます。在外公館、居留民団、その他これに準ずる団体が、さつき申し上げましたように、引揚げの経費あるいは現地における救済費その他のものとして借り入れたものを確認するのでありまして、そういういわば公的な機関でない場合に、確認目的とは少し違うというような団体も申請としてはございますので、そういう場合には確認にならないものがございます。
  41. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 今の準ずるというところに疑問があるのですが、どういうものを準ずるものとお認めになりましようか。
  42. 池田千嘉太

    池田説明員 準ずるというのは、その請求書について見ますと、請求書が一件だけで、この使途に提供したというようなのがありまして、こういうようなのは、場合によつてはその使途によつて、準ずると認め得る場合もあるでしようけれども、そうでない非常に引揚げ救済をやつておりますけれども、大きい団体のほんの一部分だけでやられたという場合までも認めるかどうかというような、いろいろな問題がありまして、これは全般的にずつとならしてみまして、およそのところで、これは相互扶助である、あるいは借入金に認めるとかいうようなことを、審査会で考えておるようでございます。
  43. 竹村奈良一

    竹村委員 先ほどの苫米地さんの質問で、その団体によつて、これは借入と認めるとか認めないとかいうような御答弁がありましたので、その点を少しはつきりお伺いしておきたいのでございますが、たとえば大連地区において、大連におけるところのあの接収後におきましては、大体日本の外務省やその他のものは、いろいろな民主団体等が起つて、そういう民主団体等が自主的に日本の出先から——一応その当時の出先が力がなくなつて来た。そうして民主団体に相当な力ができて来た。だからそのものに暗黙のうちに委託して、民主団体が引揚げに非常に努力した。そのために借り入れた金、これはその当時の出先公館も一応承認しておる。こういうようなものは返済の対象になつておるのかおらないのか。その点だけはつきり聞いておきたい。
  44. 池田千嘉太

    池田説明員 今の御例示になりました大連の問題でございますが、これは借入金といいますが、救済引揚げの事業をやつた面から言いますと、もちろん自治団体と認めていいものではないかと思つておりますが、この点もまだ審査会においていろいろ調査中でありまして、私事務当局としまして、これをどうという判定を申し上げるわけに行きません。
  45. 竹村奈良一

    竹村委員 そうするとひとつ委員長にお願いしておきたいのですが、先ほど宮腰委員の質問にも答えられて、この審査会で一応確認したものを交付されているということが、答弁されておるのでありますから、その審査委員会責任者をお呼び願つて、詳細にその点を承つてから、一応われわれの態度を決したいと思いますので、そういう人を次の委員会にお呼びくださらんことを委員長にお願いしまして、私の質問は今日はこれで終りたいと思います。
  46. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 次にお諮りいたします。ただいま議題となつております在外公館等借入金返済準備に関する法律案につきまして、海外同胞引揚に関する特別委員会の委員長より、衆議院規則第七十条により、本案に関し意見を述べたき旨の申出がありましたが、この際同委員長に発言を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 御異議ないようであります。さよう決定いたします。海外同胞引揚に関する特別委員長若林義孝君。
  48. 若林義孝

    ○若林海外同胞引揚特別委員長 御好意によりまして、特別の発言の機会をお与えくださいましたことに関して、厚く御礼を申し上げます。ただいま議題となつて委員会において御審議になつております在外公館借入金に関するこの法案は、海外同胞引揚特別委員会におきましても、かねてからこの法案のできることを望んでおつたのであります。一応この法案につきましても懇談会を催しまして、審議をする機会を持つことができたのであります。きわめて複雑多岐にわたります借上金に関する返済の事務でありますので、相当困難を感じておることだと思うのでありますが、海外同胞引揚特別委員会といたしましては、政府を極力督励いたしまして、あるいはすでに御説明があつたと思うのでありますが、二万数件の確認証を渡すことができ、今月末にはまた約一万ばかりのものが渡せるというような運びになつております。一日千秋の思いでこれが現物化されることを望んでおるのであります。この法案はそのことに対して一道の光明を見出す感がある法案であります。この法案そのものがすべてを解決するとは思わないのでありますけれども、遅々として進まざるこの事件に対しまして、まず一歩前進というところの法案であろうかと思うのでありますけれども、まず今日の段階においては、これが妥当であるというこの段階で進むのがまず当を得ておるというような気持を、海外同胞引揚特別委員会としては持つておりますので、この大蔵委員会におきましても、何とぞ海外同胞引揚に関する特別委員会の意向を御了承くださいまして御審議を願いたいと、特に委員各位に対してお願いを申し上げる次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  49. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 承知いたしました。  それでは農林省の政務次官がお見えになつておりますから、その方の御質疑を願います。竹村君。
  50. 竹村奈良一

    竹村委員 私前に一応質問したのでありますが、まだそのことについて政府から明確な御答弁がない。特にこの際農林政務次官、つまり農政通である農林政務次官についてお聞きしておきたいのであります。大体この法律を出されて、たとえば、農林関係におけるところの土地改良等に対して、長期資金を融通するということになつておるのでございますが、それに対する利子等がつきまとうわけであります。そこで私は政務次官にお聞きいたしたいのでございますが、たとえば現在のような状態のもとにおいて、土地改良をやりまして、多額の長期資金を借りました場合に、この利子で——もちろん一般利子から行くと、これは安いではないか、こういうふうに言われるかもしれませんが、しかし実際において、現在のような状態のもとにおいて土地改良をやつて、これだけの利子を払つて返済でき得る見込みがあるかどうか。そういう見通しをもつて政府はこういう法案をお出しになつたのかどうか。この点をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  51. 島村軍次

    島村政府委員 現在の土地改良及び今度の法律案にあげております利子は、収益を基準にして償還し得るものとして、つまり利子を安くし、年賦償還の方法を年限も考えまして、詳細なる数字的の検討の上から立てておるのでありまして、決して御心配のようなことはないと思います。もちろん土地改良の場合におきましても、それぞれ状態が異なつておるのでありまして、御指摘のような収益関係も、必ずしも同一でないというようなところから、金を借りてまで土地改良をやらなければならぬというようなものもない、こういう見方をされる人もあるのであります。しかし現在この土地改良の急務は非常に全国的にとなえられて、増産効果というものは、わずかな土地改良によつて上げられるというところが相当残つておるわけであります。それらの問題をなるべく早くこの特別会計によつて救済いたしたい。従つて申込みのものは、当分の間はその収益率の高いものが申込みを重ねて来る。収益率の低いものについては、漸次このベースに乗るように措置いたしたい、かような考えで計算いたしておるわけであります。
  52. 竹村奈良一

    竹村委員 私は国内食糧自給の建前から考えても、土地改良の急務なることは当然だと思うのであります。そこで政務次官は大体その利用度の高率なところからこれを融通して行く。従つてこれは償還を期せられないことはない。その詳細な計画のもとにこれを立てた、こういうふうに承つたのであります。そこで私はお聞きしたいのでありますが、それでは現在農業以外のところでやつておりますところの企業、たとえば現在やかましく言われております、何といいますか、時局産業、特需産業、そういうものは特別だと考えて、それはおくといたしましても、普通の産業と比べて、農業がはたしていわゆる拡大再生産になるような企業形態にあると考えておられるか。それをあると考えられなかつたならば、おそらくこれは返済できるという見通しはつかないのでありまして、ほかの企業と比べて同じように農業が拡大再生産でき得るような政策がとられておると考えておられるのか。その点をひとつお伺いいたしたい。たとえば農産物というものが生産費を償つておるかどうか。その点が重要な問題です。借金をしても少くとも生産費を償つて、それ以上の利潤を上げていないと、これは返済できないと思います。その点をひとつお伺いいたしておきます。
  53. 島村軍次

    島村政府委員 他の産業に比して農業の収益率の少いことは御指摘の通りであります。かつまた今日の段階におきましては、零細な農業経営でありますので、なお一層収益率が少くなる、こういうふうな関係になることも御指摘の通りと思います。そこで一般的に農業そのものが再生産に必要な多額の生産費を償うだけの産業であるかどうか、あるいはこれに対する政策をさような意味においてとつているかどうかということに対しましては、もちろんなかなかむずかしい問題ではあると思うのであります。たとえば今日の米価あるいは麦価に比較しまして、生産費が物価の値上りによつて相当高騰しておる。従つて収益率が現在の米価パリテイによれば不十分であるということも考えられるのであります。そこで財政の面と輸入食糧との関係等を考慮しまして、なるべく消費者の価格を上げないようにし、こうして米麦価はなるべく高くするという考え方で、農林省としては生産費主義をとつております。従来のパリテイに比較しましては、少くとも二十六年度の米価決定にあたりましては、相当大幅なアルフアーを加えて、すなわち生産費を償い得るものに近いようなものに持つて行くことについても、御了承願いたいと思うのであります。そこで今回特別会計におきましては、これらの土地資本に対して国家資本をなるべく投下して、これらの農業経営に対する再生産に役立つような意味の国家資本投資をなるべく多くやるという建前から、特別会計も設けたような次第でありまして、漸次それらの方向に向つて、一面においては生産の増強をはかり、一面においては国家が資金的にこれらになるべく多額の資金を投ずるような政策をとることが、今日の農業政策としては、きわめて重要なことと考えて、予算案におきましても、特別会計においても、考慮いたした次第であります。
  54. 竹村奈良一

    竹村委員 もちろん土地改良あるいは農業方面に多額の資金を投ずる、その目的のためにやつたそうでございますが、しかしその目的のためにやられて、それが農業の増産になるが、それと同時にそれをやつた個人が返済できて、しかも拡大再生産になり得るような農政がやられない限り、いかに金をお貸しになつても、これは回収できない。従つて回収ができるかどうかということが問題なんです。初めから回収できなかつたらできないでもかまわぬのだという形でおやりになることは、政府としてはそういうことはやり得ない。従つて回収を目的にされる以上は、少くとも農業再生産ができ、しかもそれが拡大再生産になる。しかも資金は投資されても、それが拡大再生産になる、こういう見通しがはつきり立つておると言われるので、私はそのことを聞くのでございますが、私は遺憾ながら現在の農政におきましては、少くともこれにいくら金を投資されても、これは回収でき得ないようになるのじやないかと、こういうふうに考えるので、特にその点をはつきりさせておきたい。そこで米価、麦価の問題も、パリテイ計算をやめて、生産費に近いようなものをやられるといいますけれども、こんな論議は世間周知の事実で、生産費を償つていないということは、日本国中——おそらく農林政務次官といえども知つておられる。米価審議会でも問題になつておりますから、そういう一般論はここで繰返しませんが、そういうことははつきりわかつておるわけであります。そこでそういうふうに生産費を償わないもので、政府はいろいろ米価をきめて買い上げておるから、私が一番心配するのはこれはお貸しになつて返済ができない。そこでこの返済できないときには一体どうなるかと、前に大蔵省質問いたしますと、大体八割は国庫で負担して、二割は貸した中金が責任を負うのだ、こういうことを言つておられるのですが、そうなりますと、これは、八割国庫で負担される前に、この返済——貸した場合においてはそれに対するところの債権を、つまり返済を迫るために、いろいろな方法を講ぜられると思うのですが、そういう点について、もし土地改良をやつて、そのときに投資をする。それは返済できない。そうするとその土地改良をやつた土地なんかは一体どうされるのですか。それをひとつ聞いておきたい。
  55. 島村軍次

    島村政府委員 前段の御議論に対しては私は見解を異にいたします。何となれば、先ほども申し上げましたように、土地改良によつて増産が手取り早く期せられるという土地はたくさんあるわけです。これはおそらくあなたもよく御存じのことだと思うのでありまして、有効にして適切で手取り早くやり得る問題を取上げてやつておるのであります。しかし他の産業に比較しては償還年限も長いし、利子をなるべく安くすることによつて、この団体等がこれを取扱う場合におきましては、返済が困難だということにはならない、かような考えを持つておるのであります。万一の場合等についてはいろいろ条件をつけておるのでありまして、中金を通じてやる場合における中金の取扱いについては、もちろん従来非難もありまするが、できるだけさような問題については検討を加えまして、貸し付けるということにいたしておるのでありまして、条件がむずかしくならない程度で、なるべく条件を備えた者に貸し付ける方法を講じて、さような心配のないようにいたしたい、かように考えております。
  56. 竹村奈良一

    竹村委員 農林政務次官の今の御答弁を聞きますと、今度の土地改良にお貸しになる金を手取り早く借り受けて、そうしてだれが見ても土地改良をやつたならば、すぐ来年、再来年にでも収益が上つて返済できるというような土地へは優先的にお貸しになる。それ以外のところのものは、あまり恩恵を受けない、こういうふうに考えられるわけです。そういうところはもちろんお説のようにありますが、しかしその場合におきましても、そういう土地改良をやる場合においては、これはいろいろな制約がある。たとえば農林中金を通じて貸すということになると、農林中金の今までの考え方からしましても、やはり償還その他が非常に重要な問題になるのでありまして、それ以外のところはなかなか恩恵に浴せない、こういうふうに考えられるのですが、そういう恩恵に浴さないところに対しては、別に何かの方法をお考えになつておるのか。それをひとつ承りたい。
  57. 島村軍次

    島村政府委員 ただいまのお話は、農村の実情をよく御存じであれば、土地改良がいかに有効適切であつて、その道が現在の公共事業では満たされないというものに対して考えておるのであります。しかして暗渠排水その他増産効果の上るというもので取上げられない、国家資本の投下できないというものに対して、しかも手取り早くやり得るというものを主体に考えておることは、今説明申し上げた通りであります。今回の資金計画でごらんの通りに、補助費を計上されておる補助事業のうちでも、大規模であつて取上げられた増産効果が多いところといつても、農民自身からいえば必ずしも負担が低くはないというような土地についても、資金の申込みによつてそれぞれ審査の上でやるというふうな建前をとつておるのであつて、お話の点はこれは一つの抽象的な議論になるのでありますが、漸次拡大しまして、そうして資金の面においても回転がつくようなものについて考えておるのでありまして、むしろ国家的に考えましても、あるいはまた企業的に考えても、あるいは農業経営から考えても、今回の特別会計によつて相当大幅に取上げられるものがあるのであつて、御心配のような点は少いと思います。
  58. 深澤義守

    深澤委員 関連して……。農林政務次官は現在の日本農業について根本的に考えが甘いと私は思うのです。現在の日本の農業は、国家によつて一応農作物価格が制約されて、供出制度というわくの中で、まつたく公共事業という形で行われでおるのです。資本主義的な採算すら全然無視されて行われている。そこに日本の農民の苦しさがあるのです。だから私は根本的にはこの土地改良けつこうです。灌漑排水もやらなければならぬ。ところがとる方は公共的な性格で国家の権力でとつている。だからその反面土地改良も灌漑排水も全部国家がめんどうを見る必要がある。こういう金融という形が高い利息をつけて返すような金でやらせるということは、日本の実情にはぴつたり行かぬ。必ず失敗がある。この金が返せないような問題が必ず出て来ると考える。この問題はあなたとわれわれとの間に根本的な見解の相違があるかもしれません。そういう立場から竹村君も今主張しているわけですが、その問題は別として、この資金による経済効果の中で、干拓の整地をやれば一反歩当り三石五斗四升七合上るという経済効果が出ているわけです。今まで沼地であつたところを干拓をやつて整地をしたら、ただちに一反歩から三石五斗四升の収穫があるという経済効果を期待されているが、これはべらぼうな話であると私は考える。現在日本の非常な上田でも、三石五斗四升からの収穫を得るということははなはだ困難である。ところが干拓をやると約六百町歩の土地において、すぐ三石五斗四升七合という経済効果が上るという資料が出ているのですが、こういう効果があるのはどこですか。それをひとつ具体的に御説明を願いたい。
  59. 島村軍次

    島村政府委員 これは深澤さんが実体をよく御承知ない結果からだろうと思います。干拓をやつて整地をやる、しかし干拓の整地をやらなければその土地はいけない。その整地は農家自身がやつたらいいわけでありますけれども、今金をつぎ込むということは普通の金融ペースに乗らないだろうから、これは子供がお乳を要求するがごとく、この改良については非常な申込みが殺到すると思う。干拓地は御承知の通りに経済効果が相当上るところでなければ取上げないのですから、たとえば一つの例から申しますると、私の県の兒島湾であるとか、あるいは有明干拓等の実例から見ましても、平均反当三石三斗五升というものは非常に高い経済効果だと言われるかもしれませんが、事実そういうところもたくさんあるわけでありまして、これらの問題を取上げてやるということは、経済効果の上からいつて非常に高いものであるから、干拓の整地をやらして、ただちに従来の工事を生かすというような方法で、この資金面を取扱いたいということであります、
  60. 深澤義守

    深澤委員 農民は赤子が乳を欲するように資金を欲しておる。土地改良にしても灌漑排水にしてもそうなんです。今までこれを政府自体がどしどしやらなかつたというところに問題があるのです。今日本で、食糧問題が解決できない、できないと言いながら、農民に対する国家の資金の融通ということは、ほとんど行われなかつた。そこで今度これをやるということについては、趣旨としてはいいのです。われわれは反対はしない。農民はいよいよ資金融通法ができたというので、これに対して大きな期待を持つているわけです。ところがこれがすずめの涙です。農民が欲している資金は、実際はこんなわずかなものじやない。もつとたくさんです。そしてどしどし土地改良もやり、灌漑排水もやり、干拓もやつて、日本の食糧問題を解決しようとする熱意は農民にあるわけです。ところが政府がこれに対するところの十分な資金融通をやらないというところに問題があるのです。そしてまた資金融通をやつたところで、高い利子でもつて返して行けるという経済的な余裕がないというのが、今日の農村の実情なんです。そこでこの資金融通法は、農民が期待すればするほど、あまりに内容が貧弱である。そして経済効果が書類の上ではあまりにりつぱにつくり上げられているというところに問題があるので、今質問しているのであります。一反歩で三石五斗四升七合も収穫の上るところがあればけつこうです。これはどしどしやつてもらいたい。それについては、私は先般来委員長を通じてお願いしておつたのでありますが、各府県別の計画、それから水力の小発電施設七十五箇所の具体的な資料、それから漁港の百七十三港並びに災害復旧の百八十港について、具体的な資料をお示し願わなければ、どうもわれわれはこの経済効果というものを期待し得る確信が持てないわけなんです。そういう意味でこの資料を先般からお願しておつたわけでありますが、まだほとんど出ておりません。これを法案を決定する前に御提出を願いたいと思うわけであります。  それからもう一つ、畑地灌漑の問題について政務次官にお伺いしたいのでありますが、この畑地灌漑はどういう方法でもつて経済効果を期待されるのか。どういうところへこの畑地灌漑をやられて経済効果を上げられようとしているのか。この点をひとつお伺いしたい。
  61. 島村軍次

    島村政府委員 畑地灌漑もいろいろあると思うのであります。たとえばここに上つておりますのは非補助事業の畑地灌漑ですが、小団地で用水路をちよつと簡單に取入れれば、従来早魃で陸稻反当わずか五、六斗しかなかつたようなところがすぐ二石もとれた例があります。余談になりまするが、ブラジルの今年度の米の輸出が六百万俵くらいの予定が、千二百万俵になつたということは雨が多かつたからなんです。そういうところが日本全国津々浦々にあるわけです。われわれは畑地灌漑による土地の効果というものは、非常に大きいものだという見解を持つております。そんなことはできぬとおつしやるかもしれませんが、大規模ではすでに神奈川県の相模原の畑地灌漑も有効にその効果をあげている実例でありますし、各地の農業協同組合その他でこういうふうな点を取上げておる実例は、たくさんあるわけでありまして、実例を示せと言えばお示ししてもいいのですが、これはむしろ全国的にわたつた問題で、お示しいたさなくても、少し御視察になればすぐわかると思います。
  62. 深澤義守

    深澤委員 私はわからないから言うのじやないのです。小団地でもつて灌漑すれば、今までの陸稻が倍にも増収できるということはよく知つている。またそれを農民はやつているのです。ところが農民は自分の費用ではできない広い地帯があるわけです。どこの県でも二千町歩、三千町歩にもわたる陸作地帶がある。しかもそれが非常な早魃地帶である。これに畑地灌漑をやれば非常な増収ができるというところがある。だからそういうところをねらつてやるのか。小団地のこまかいものをやるのか。つまりその方針がどこにあるのかということなんですよ。少くとも資金融通という立場から国家が意を用いてやれば、そういう大団地の畑地灌漑をやつて大増収をやるべきだ。小団地の小さいところは、農民ができる限りの可能な労力と汗によつてつているのですよ。政府がやろうという場合には、そういう小団地をやれということではなくて、どこの県にもそういう大団地で五百町歩、二千町歩、三千町歩というところがあるのですから、これに対してやろうとするのか。その根本方針を聞きたいのです。
  63. 島村軍次

    島村政府委員 お説はごもつともでありまして、従来公共事業で取上げておつた土地改良の中には、畑地灌漑の仕事を比較的取上げておらなかつたのであります。そこで二十六年度の予算におきましても、公共事業費中に大幅に取上げたいということで、われわれも予算を要求いたしたのでありますが、しかしお話のような畑地灌漑も、これは一つの畑地という限定つきに考えぬでも、広い意味の灌漑排水の工事なんですから、有効な箇所については国が取上げ、あるいは県が取上げ、あるいは地方の大きな団地として取上げて現にやつておる地方もあるわけであります。畑地灌漑というものの考え方については御同感でありまして、大きな団地でさようなことで取上げて経済効果のあるところについては、現在の予算の範囲内でなるべく取上げて行きたい。今回の特別融通資金の方の畑地灌漑は経済効果は上るが、団地としては小さい土地で、国家の補助の対象として取上げられないところをなるべく取上げて行きたい。しかして公共事業と両々相まつて畑地灌漑の効果を上げたい。かような目的でやつているのでありまして、全体の経費の六十億というものが非常に少いことは、われわれも遺憾に存じておりますが、漸次これを増額して参りたいと思つております。
  64. 深澤義守

    深澤委員 もう一点。先般大蔵大臣並びに農林大臣が連合審査委員会に出席されたときに、非常に大きな食い違いが出て来たわけです。それは預金部資金運用が六十億できる見込みであるという口吻を、農林大臣が漏らされておつた。ところが大蔵大臣は、すでに資金運用部の計画は本院の予算委員会において決定されているので、それはできないと言われた。だからここに大きな食い違いが出て来たわけであります。もちろんその問題についてとやかく言うのではないのでありますが、大体農林省としては、この計画をもつと拡大し、今後もずつと計画的におやりになる腹でこの問題を出されているのか。しかしわれわれはそうは考えない。終戰後において相当農地改革をやつたが、農民の生活はずつと低下して来ている。そして苦しくなつて来ております。特に金融については苦しんでいる。税金はどんどんひどくなつて来ておる。物価は上つておる。こういうことで農民自体が今の農業政策では救われることができないという考えを持つて来ている。そこで農林省も、この農民の政府に対して柔順でない態度を何とかしてつつて行くために、この農林漁業金融というものを出したという程度にしかわれわれには考えられない。しかしほんとうに日本の農業を救つて行こうとするならば、政府全体がもつと強力にやらなくちやならない仕事だと思うのです。そこで私がはつきりお伺いしたいことは、先般もちよつと農林大臣に聞いたのですが明確になつていなかつた。自立経済に基く大きな日本の農業計画の一部分として出されているのか、それとも当面を糊塗するために出されているのかということなんです。だからもし大きな計画の中の一つの環として出されているとするならば、その大きな計画をお示し願いたいというふうにわれわれは考えているわけです。この点はまたあとの機会にもお聞きする機会があると思いますが、政務次官がおわかりになる範囲内で、そういう点についてひとつお答え願いたい。
  65. 島村軍次

    島村政府委員 お話の通り旱天の慈雨というのが今度の六十億だと思います。しかしその慈雨はきわめて少い金額であります。そこでわれわれ農林省の希望といたしましては、収益の点及び特別会計をつくつた点等、全体を通じての基本的な考え方は、十年間もすればある程度まで回転をするわけでありますから、十年間ぐらいは出してもらいたいという希望を持つております。しかしこれは省議で別にきめたわけでもなし、大蔵省と折衝したわけでもありませんが、将来はさような考え方でもつて、なるべく長期間にわたつて年々支出してもらいたい。そうして預金部資金もなるべくこれに加えて拡大して行きたい。最初は、農林大臣が申し上げたかどうか知りませんが、われわれの計算は、地方からの要求をとつてみますと二百億という一応の数字が出たので、それを基本にして要求いたしたのでありますが、国家財政の都合で二十億、見返り資金から四十億ということで、六十億に一応おちついたわけでありますが、関係方面との関係がありまして、本年度は六十億でありますが、将来ひとつできるだけ御協力を得てこれの増加をはかりたい。なお外資等についてもできるだけの努力をいたしまして、農村の資金が低利でまわるというようなことをいろいろ検討中であります。
  66. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 休憩いたします。  午後は郵政との合同審査会がありますからぜひ御出席を願います。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた〕