○小川
説明員 厚生省の
結核予防課長でございます。ただいまの御
質問にお答えいたしたいのでございますが、
結核対策全般といたしますと、はなはだ広範囲になりまして、どの
程度に申し上げていいか、お時間の
関係もあるかと思いますので、概略的に申し上げたいと思います。
まず第一に、
全国にどのくらいの
結核患者があるかという点でございますが、これはなかなか実情把握の困難な問題でございまして、いろいろ專門的に御
意見が出ておりますが、私どもが一番
結核患者について掌握しやすいのは、
結核死亡者数でございまして、
結核死亡者数の何倍であるかということで推算いたすのでありますが、定説的には大体死亡者の十倍くらいが
結核患者であるというふうに
考えております。
昭和二十四
年度の
結核総死亡者数は十四万九千ぐらいでございまして、従
つて約その十倍としますと、百四、五十万というところを一応
考えております。ところが現在では、いろいろな
結核の近代的医療が発達して参りまして、昔なら死ぬものが、現在では相当存命いたします。従
つて実際の
患者数の推測は、今後は十倍以上になるのではないかと
考えております。一応私どもといたしましては、
結核患者数は死亡者数の十倍であり、従
つて百四、五十万を対象にして施策を進めております。
その対策の概要でございますが、まず第一に一般的な
施設の面から申し上げますと、大別いたしまして
患者を入れる
病院と、
結核療養所等と、もう一つは予防的活動をいたします保健所とわけてありますが、まず療養所について申し上げますと、現在国内に九万五千床ほどございます。それの整備といたしまして、私どもは大体ここ四、五年間ぐらいで、これを十九万床にいたしたいという
考えを持
つております。昔から
結核療養所の
病床の整備目標は、世界各国ともに、死亡者数と同数ということが目標とされておつたのでございます。私どもも従来は死亡者数と同数ということで施策を進めて参つたのでございます。従
つて十三、四万の死亡数であるならば、十三、四万の
結核病床が必要であるというふうに
考えておつたのでございます。昔は
結核は入れて寢かしておくだけというふうに
考えておつたのでありますが、近ごろは手術しております。あるいはストレプトマイシンという薬を適時注射いたしますれば、これまた治癒を早めるという
関係で、
病院的な性格が非常にふえて参りまして、従来のように、ただ隔離の目的であるとか、静養の目的であるだけではありませんので、
結核療養所の使用がふえて参りました。そこで今では、死亡数の二倍ないし二倍半ぐらいを目標とすべきであるということにな
つておるのでございます。そこで現在の状態から見ますと、幸いにして、大体において
結核死亡者数は減少いたして参
つております。
昭和二十五年の
統計はまだできておりませんが、私どもは十三万から十三万二千くらいというように推測いたしておりまして、逓減いたしております。従
つて今後現在のような施策だけでも若干数逓減いたして参りますので、将来のベツド計画としては、逓減数と倍数とをにらみ合せまして、一応十九万という目標を立てております。とりあえず本
年度の
予算におきましては、一万七千余を新増設する予定でございます。そのうち国立で千五百、
都道府県あるいは市町村という公立
関係で六千九百、
健康保險組合に設置していただく分が七千、一般の
公益法人等に属しますものが千八百というような内訳でございます。以上が大体
病院施設についてでございます。
次に予防活動をいたします保健所について申し上げますと、私どもは
結核予防の第一線
事業として予防接種をやり、健康診断をやり、
患者の家庭を訪問させるというようなことは、すべて保健所に責任を持たしております。これの設備につきまして、大体人口十万について一箇所というねらいを持
つております。現在では
全国で七百四箇所でございますが、とりあえず二十六
年度におきましては、これを七百二十にいたしたいという
考えでおります。なおまた各保健所に働きます医師とか保健婦とかいうような
定員について、あるいはいろいろな機械設備についても、全面的に
改善をいたしたいという
考えであります。以上が大体の
施設関係についてでございますが、一般の予防
事業といたしましては、まず第一に健康診断の普及、予防接種の普及ということを
考えております。それは現在おります
結核患者をできるだけ多く発見し、できるだけ多く手当申し上げたいという
考えで、健康診断をいたしておるのであります。これは御
承知のように、行政的にやりますものは、あるいは学校教育法、あるいは労働
基準法、あるいは人事院規則、いろいろなものでなされておりますが、これとあわせて
結核予防法というものでもなされておるわけてございます。これらを統合いたすような
考え方で効果的な健康診断を広くやりたいというふうに
考えております。なおまた
患者の
家族でありますとか、
都市、工場等から病を得て農村に帰る方、こういう帰郷者についても、できるだけ多く把握して健康診断をやりたい、こういうふうに
考えております。なおまた未然に防止する方策といたしまして予防接種、すなわちBCGの接種ということの普及をはかりますが、現在の予防接種法では、満三十歳までは毎年一回受けなければならぬという義務が課されております。
昭和二十五年までにおきましては、接種材料の不足、これは従来は生きた生のワクチンを使
つておりましたが、現在は乾燥ワクチンに切りかえまして、その切りかえの過程に時間をとりまして、安全なワクチンにするために検定制度が実施されました
関係上、たまたま二十四、五年においては実施に至りませんでしたが、二十六年におきましては義務実施者全員に行きわたることが予想されますので、広く実施いたしいと
考えております。
その他の
事業といたしましては、多々あるのでありますが、あまり時間をとりますので、特に本
年度から実施する新現なものについて申し上げたいと思います。本
年度から
結核医療費を一部公費をも
つて負担いたしたいという
考え方で、
予算の御
審議をお願いいたすことにな
つております。これは一面には
結核患者の医療費の軽減をはかるというねらいと、他面には
結核の近代的医療、特に早期治療というものが可能になりましたので、早期治療の普及という二点をにらみ合せまして、それらに該当する適応症の特別の医療費を、公費で二分の一負担いたしたい。その公費負担の分の半ばを国が負担するという
考え方であります。その
内容は、現在
考えておりますところでは、成形手術と申しまして、胸部の一部、肋骨をとりまして、そして
上層部を縮めて治癒におもむくやり方、この成形手術と、それから人工気胸と申しまして、肋膜と肋膜の間に空気を入れまして、
上層部を萎縮させて治癒におもむかせる。この二つの積極的な治療、あわせてストレトプマイシンあるいはパスといういうな、近代的な特効薬の適正な運用ということの四つの療法に関すする限り、
都道府県知事に二分の一持たすという
考え方でおります。従いましてこれらをうまく運営いたしすれば、相当予防上効果があるのじやないかと思ます。
その他
根本的な問題は、
結核に
関係します技術者の教育であります。どこの地域においても、どの
患者も、最もいい手当を受けるということが望ましいし、また予防活動におきましても、適切な予防活動、診断等が必要でございますので、一応技術者の教育ということにも主眼を置いて、あるいは
結核研修所を設置する、その他一般的に公国的に医療の教育をするというような計画もございます。またそれらを広く国民に理解いたしていただくために、一般の衛生教育あるいは
結核に関する広報活動を強化するというようなことを
考えております。
以上が包括的な
意味で
考えております
結核対策でございます。