○井之口委員 やつと野党側にまわ
つて来ましたが、私は野党側の
意見を代表する以上、これは非常に重大なる発言でありまするから、政府においても十分に野党側の
意見を聽取してもらいたいと思
つております。第一番に、この問題の非常な難点は、
漁業権証券による
補償の問題と、それからこれに対する
課税の問題、あるいは
漁業権証券の
資金化の問題、また
資金化についても、これの買上げ、それから
一般融資の問題に細分されて行くのでありますが、さらにこれに関連を持つものは、免許料、許可料の問題でありまして、この四つの問題が入り組んでおりますために、非常に複雑性を帯びて来るのであります。そうしてこの複雑なる問題のために、與党側においてもいろいろ
意見の混乱があるようでありますが、根本的に
漁業制度の改革というところから出発して
考えて行けば、この混乱というものはおのずから明瞭に解消されるものと思う。たとえば
漁業制度の改革をやるにつきましては、従来の農地改革と同様な趣旨のもとに、
漁業を民主化するという根本
方針に立
つている。そのために羽織漁師として、いろんな漁場その他に対する
漁業権を独占しており、そうして寄生的な存在を続けていた、こうした漁場に単食うておる封建的な残存物を一掃するというのが、
漁業改革の本旨でなければならぬ。そのために、
ちようど農地
制度におけるところの農地法の改革と同様な手段がとられた。しかしそれは幾分の差異はあります。農地法においては、現に耕作している人々がただちにその土地を得ております。かつ交換分合の点はまだあとに残されておる。しかし
漁業の場合には、一応全部の
漁業権が買上げにな
つて、そうしてこれが
優先順位によ
つて売り渡すということにな
つておりますために、交換分合までも一緒にやられる形にな
つている。ある程度の協同化というものがここにおいて進んでおるのでありまするから、それだけの十分な注意をも
つてこれを取扱
つてお
つたならば、この問題もスムースに解決するのだろうと思うのでありますが、そうでなくして、今自由党のやるような
方針で、次第に民主主義に逆行して行くような
方針がとられております。それが今度の法案にもやはり現われて来ると思います。法案の内容から見ますると、
漁業権証券に対しましては、従来の法律、従来の規定をも
つていたしますれば、約九十億くらいの譲渡税がかか
つて来る。それをひとつ十四億くらいに減そうというのでありまするから、
一般的に見るならば、
漁民に対する非常な軽減の形にな
つているのであります。しかし一たび立入
つてその内容を見ますると、こうした寄生的な
漁業権の所有者に対しては、むしろ全額無償で没収するのが当然であるのみならず、もしそれができなか
つたとすれば、これは租税の形において没収するなりすることが当然であり、現実上の漁師に対しては、これは没収どころの騒ぎではなくして、むしろこれに対して政府は保護を與えてや
つて行かなければならぬのにかかわらず、将来免許料 並びに許可料が、これに大きな負担と
してかか
つて来る。そうして
大蔵省の
方針では、免許料、許可料をも
つて
この
漁業権証券の費用をカバーして行こうというふうな根本
方針を立てておられて、二十五年というふうな
制度も
とられたようでありますが、これはむしろ羽織漁師というふうな者に対しては何ら
補償する必要もないし、また税をかけるとすれば、むしろそれは全部この方面の金によ
つてまかなわれるような
制度をとるべきであ
つて、将来現実に
漁業をしなければならぬ
漁民に対して、許可料並びに免許料を法律をも
つてとらえて、それをも
つてこれを償却して行こうとすることは不合理である。この点に対しては、
川村委員も非常に明確に主張せられるところでありまして、なかなか感心している次第であります。さてそこで、政府においては今度五箇年にこれを減らして、そうして五分五厘にや
つて、それからそのうち、三年間くらいで買上げをやる、こういうふうなことを言
つておりまするが、もしそういうふうなことに
なつたとすれば、免許料、許可料をも
つて、これをカバーして行こうというような根本
方針はどうなるか、それとも全然その
方針も捨てて、新しく再出発してやろうとするのかどうか、この点が
一つであります。
それから二番目に、償還の問題でありますが、買上げを行うといたしますれば、さつき
大蔵省関係の方が言われておりました
通り、ある一定のわくがある。わくがあるために、そう思うように償還もできないという話であります。これは
国債償還の
資金のわくがあることは言わぬでもわか
つていることであるが、さらに大きく
考えれば、税金というもののわくがはま
つておる。人民から搾取して行く、しぼりと
つて行く。この負担によ
つて、これはわくをはめられている。もし三年以内に、まず三十億ですか、そういうものを償還して行くとすれば、これはそれだけの租税の軽減もできなければ、場合によ
つては、租税の増徴ということにな
つて行かなければならぬ。そうしておいて、しかもその金が、実際に働いているところの
漁民にまわ
つて行くのではなくして、羽織ゴロ
——当然寄生的なものとして
整理されなければならぬような人たちに、譲渡税は低くしてやるわ、さらにその上に、保護を與える。また現金でも
つて償還して行くということに
なつたならば、
漁業権証券によ
つて漁業改革をや
つて行こうというこの本旨は、なくな
つてしまうじやないかというふうな点についても、ひとつ御返事が願いたい。
それから次に、
漁業協同組合が、内部が
赤字で困
つておる。これは今日の
漁業行政の破綻を端的に
意味しておる。これをわれわれが育成してやろうというのが、今度の
漁業制度の改革なんであります。その改革をも
つてしてもできないということを、これは
意味しておる。のみならず、これの買上げ等によ
つて、
資金を
漁業協同組合の方に渡すことにな
つても、ただちに
農林中金なりその他の
銀行が、担保としてこれを差押えてしまうということに
なつたならば、今日の
買上げ償還をや
つても、何らの利益を與えることにはならない、こう思うのであります。それのみじやなくして、與えられたところのこういうものが、かえ
つて国民に対する大きな税金の負担を
意味することにな
つて来ます。そうして、国民の負担によ
つて一部の
金融業を利得させるというような結果に立ち至
つて来る。これというのも、ひとえに
漁業協同組合の
経営が軟弱であるから起るのであ
つて、
漁業協同組合の
経営が十分に成り立つ、そうしてこれが信用を大きく持
つものならば、こうした証券の
金融化というものは、そういう方面からでもおのずから解決して行くものである。そこで今、いろいろ自由党の方からの
意見としては、これの
資金化の問題において、担保として、特別の
銀行の設置等によ
つて融資を仰ぎたいというようなことが起
つておりますが、
漁業協同組合の根本も成り立たない、
漁民の生活の根本も成り立たないというふうな
事情のもとに放置しておきながら、そういうふうな
金融措置を講じたところで、結局また元のもくあみにな
つてしまう。結局は人民が税金でも
つて負担して行かなければならぬというふうに立ち至るのでありまして、結局それは川下を治めようとして、川上を治めないような愚かしい結果に立ち至るとわれわれは思
つています。こういうことを明確にするためには、今の寄生的な
漁業権の所有者がどれくらいの数に達するか、
漁業権証券によ
つて補償されるところの内容が、政府から出されている統計をも
つてしてはわからないのでありまして、
一般的に、單に個人に渡される、
漁業会に渡される、どこに渡されるかというふうなことだけしか明瞭にな
つていない。しかし内部に立ち入
つて、もつとこれが不在地主的なものに、あるいは寄生地主的なものに渡
つているというものが幾らで、そ
うして実際の
漁業をや
つている人たちに対しては、どれくらいになるというふうなことは、内部にわた
つて詳細なる資料が出て来ない限り、これに対する
課税の
方法も、またおのずから違
つて来なければならぬのですから、不可能であろうと思います。最後に
課税をする場合でも、これは認定することが政府は非常に困難だというふうな御
答弁でありましたけれ
ども、この寄生地主的な存在を明確にやはり選び出して、そういうものに対するところの譲渡税は、ほとんど全額にわた
つてもさしつかえないものとわれわれ思います。決して一率的に軽減したから、
漁民の生活がよくなるというものではなくして、むしろ一率的に軽減せられれば、
漁民の将来における免許料、許可料をも
つて羽織漁師の利益を助長してやるというような結果に陷
つて、
漁民の負担はますます重くなると思う次第であります。だからして、こういうものの算定は、働いている漁師自身が一番よく知
つているのであります。ある程度の基準を設けて、漁師自身が判定するような
委員会の
制度を実行することが、一番的確なる
課税標準の決定だとわれわれは
考えますが、これに対して政府としては何らかの案をつくる
意思はないのか。まずこれくらいの点を御
質問いたします。
最後にもう一箇条、この問題と離れた問題でありますが、千葉県の富津というところの沖合いに、今日大きなロープが張りめぐらされて、
漁民は非常に困
つております。これは小高委員も御存じのはずであるが、小高委員のところにも、どんどんと
漁民が困
つているという
事情を訴えて来ているはずでありますが、一体これは、どういうわけでこういうものができて来るのか。政府はこれに対して、どういう手段で
漁民の生活を保障しようとしておられるか。これを最後につけ加えて御
質問しておきます。