○高橋
説明員
御存じのように、司令部より五ポイント勧告によ
つてお示しをい
ただいたのでありますが、これにつきまして考えた漁業としては、おもに三つの漁業があります。その第一が小型底びき網漁業の整理の問題と、第二点は旋網漁業の整備の問題、第三点はさんま漁業でございます。この三つの漁業について考えました根本的な
考え方といたしましては、小型底びき網漁業を考えてみますと、これにつきましては、どうしても減船する方が一番いいだろうというような結論が得られましたので、大体この方針に
従つて立案をしておる次第でございます。それから旋網漁業につきましては、これはまだいろいろな施策を行う態勢が整
つておりませんので、旋網漁人につきましては態勢を整えるという意味で、整備をして参ろうというような方針で立案しておるような次第でございます。第三点のさんま漁業につきましては、これは昨年度の調査の結果を見ますと、資源に相当危険な情勢が出て参
つておりますので、この資源の危険な情勢に対応するための措置といたしましては、根本的には減船というような方法をとらずに、大体は採業期間を短縮しようというような
考え方で立山案進めて参
つております。以上三つの漁業につきまして、それぞれ違う方式をと
つたのでございますが、趣旨はいずれも五ポイントで指摘されました資源の面から見ましての減船あるいは整備、あるいは操業の短縮というような問題に帰着するのではないかというように考えて参
つております。
次にこれまでの経過を簡単に御
説明申し上げます。まずこの二つの問題につきましては、五月の八日、九日に
おきまして、全国の水産主務
課長会議も開催いたしまして十分なる
検討をいたしました。なおこの際は
水産庁から
一つの試案を出しまして、それについて具体的な御
意見を伺
つた次第でございます。次に五月十五日及び十六日に中央
漁業調整審議会を開催いたしまして、やはり
水産庁より試案を示しまして、これについての御
意見を承
つた次第でございます。なおこの
水産庁の案は、決してきま
つた案ではなくて、各方面から
意見を
ちようだいする、
一つの論議の種にしてい
ただくという意味で出した次第でございますので、まだこれについて案そのものは確定はいたしておりません。その際に示しました案の大要について御
説明申し上げます。
まず小型漁船底びき網漁業の整備、減船についての案を議
説明いたします。小型漁器用底びき網漁業につきましては、
御存じのように全国で三万五千隻の隻数がありますが。そのう正規の許可船は一万一千隻にすぎませんで、その他は無許可または許可違反船にな
つておるような
状態であります。従いまして、これは単なる取締りの強化だけでは、とうてい収拾することができないというような現状に相な
つております。そこで昨年度以来私
どもの方で、小型底びき網漁業処理要綱というような試案をつくりまして、海区
漁業調整委員会並びに
府県当局、漁業者の各位に御
審議を願
つてお
つた次第でございますが、さらにその後五ポイント勧告が出ましたので、単に小型底びきをいかに処理するかということからさらに一歩を進めて、いかに減船して参ろうかということが新しい問題となりましたので、こういう意味で試案をつく
つたのであります。これの試案の趣旨は、整理の目標は、資源調査が完成しないときめにくい問題ではございますが、一応昭和五年ないし九年当時の隻数を基準にいたしまして、その隻数までは一応減船したらどうかという案が骨子とな
つております。
従つて三万五千隻を一応二万隻にまで減船することを目標にいたしております。なおこれにつきましては一応五箇年
計画で減船してや
つたらどうか、従いまして毎年減船して参りまする隻数は三千隻に相な
つております。
次にいかにして減船して行くかということに入りますと、減船につきましては一応漁業者の希望によ
つて、所有漁船を国の費用で買い上げて参りたいということを骨子にしております。もちろんこのほかにいろいろの転換その他の処置が必要だと思いまするが、根本的な
考え方としては、国が買い上げるという点に重点を置いて
ただいま立案しております。従いましてこれには相当の
予算が必要かと思います。なぜこのような相当強い線を持ち出したかと申しますと、小型底びきの主として行われておりまする瀬戸内海その他の現状を見ましても、軽換が非常に困難でございますので、この小型底びきの問題を徹底的に解決するためには、どうしても国がこれを買
つて処理するということでなければ、徹底的な処置はできないのではないかというふうに考えたからであります。この買
つた船は今のところ原則として小型底びきの禁止区域内に沈めまして、小型底びき網の禁止区域内における操業を不可能にさせるとともに、築いその役目もさせまして増産をはか
つて参りたい、かような一石二鳥の考えをと
つております。いずれにいたしましてもこれには相当巨額の
予算が必要かと思いますので、目下事務的に
関係方面に
説明をして参
つております。
以上の案に対しまする
府県及び中央
審議会のご
意見を簡単に申し述べます。各
府県の御
要望といたしましては、結論としてこの案を実行させるためには、どうしても
予算的な裏づけが必要であるという点でございます。従いましてもし
予算がとれないと、こういう減船の処置が事実上不可能になるという点を非常に重要に指摘して参
つております。第二点は、これは合計一万五千隻の減船をするということになりますと、推定いたしまして四万人ないし五万人
程度の失業者が出ることになるが、この失業対策がこの案では必ずしも
はつきりしておらない。この失業対策に対しては、
水産庁はもう少し具体的に
検討を進むべきであるというような御
意見でございます。第三点は、この要綱は、相当取締力が強化されなければ結局実行不可能であろう。かりに減船したところで、そのあとで依然として無許可船がふえるようであ
つては、結局
効果が薄いことにたるのであるから、あわせて取締りの強化をぜひはか
つてもらいたいという、以上の三点が各都道
府県の係官の御
意見でございます。
なお中央
審議会に
おきまする御
意見は、いろいろあ
つたのでありますが、結論としては、非常に困難な問題ではあるが、やはり小型底びきの減船の問題は実施しなければならないというのが結論でございます。
ただやはり先刻申しましたように、
予算の裏づけ、失業対策の問題は、もう少し真剣に立案すべきであろうというのが、ほぼ一致した御見解のようであります。なお主務
課長審議に出なか
つた問題としては、この問題は水産業
内部だけでは解決しきれない問題ではないか。この水産業からはみ出る失業人口の問題、それから今水産業で包容しておるところの過剰な人口の問題、これを一体どうするのか、そういいましたような基本的な御
意見が出たわけでありますが、別に具体的にこうしろというところまでにはまだた
つておりません。以上が小型底びきに対しまする従来の経過の
説明でございます。
次は旋網について申し上げます。旋網につきましても私
どもの試案の骨子といたしまする点は、現在旋網漁業が
地方の知事の権限に属しておりますが、旋網漁業の現状を見ますと、ことに最近の傾向といたしましては、非常に大型化いたしまして、操業区域が相当広くな
つておりまして、数
府県にまたがり操業をしておるものも決して珍しくはないのであります。従いましてこれが
地方々々の知事の権限で許可とかということに相な
つておりますと、その間個別的に処理されるために、相当注意しなければならないような弊害の面も現われておりますし、一方資源が、特にいわし資源が増加していないにもかかわらず、
地方長官の権限で相当旋網がふえているとい
つたような悪い傾向もございます。
従つてこの立案の根本といたしましては、まず旋網漁業というものの態勢を整備しよう、そのために
地方長官にまかせるべき権限と、
農林大臣が直接許可して参りまする点とを
はつきりわけて処理して行
つたらどうかというような点を考えたのであります。そのわけ方と申しますと、大体四つにわけてございます。まず五トン未満の旋網につきましては、これは原則として従来
通り地方庁に一任いたしますが、六十トン以上の旋網につきましては、
農林大臣が直接許可して参ろうということに相な
つております。五トンと六十トンの間の中型の旋網につきましては、これを二つにわけまして、ある特定海区のものは
大臣か直接許可をして行くが、それ以外の区域においては、従来
通り地方々々の知事がこれを許可して行くという案でございます。
ただ知事に許可権はそのまま認めまするが、やはり小型底びきの場合と同様に、許可し得る
わくにつきましては、
大臣の承認制をと
つて行
つたらどうかというふうに考えておるのであります。以上
お話しましたような
考え方で旋網を四つの
グループにわけて、それぞれ実態に合うように処理して行こうというのが案の骨子であります。
それに対しまして過日の水産主務部
課長会議に
おきます都道
府県の係官の
意見といたしましては、六十トン以上の旋網を
大臣の権限に属せしめること及び五トン未満の漁船を知事の権限に属せしめることについては異論はございません。
ただ問題になりましたのは、その間の中型の旋網についてでございます。そのうち知事に権限を委任する点については異存ございませんが“
大臣の直接許可する特定海区につきましては、直接許可するという部分につきましては、これはかなりの部分の県から反対があ
つたわけでございます。その反対の
理由は、旋網漁業というのは、やはり底びきと同様、定置漁業その他の沿岸漁業と密接、不可分の
関係にある漁業であるというのであります。従いまして、この旋網漁業の調整は、単に旋網の
内部で調整を要する問題ではなくして、ほかの沿岸漁業と密接に
致をとらなければならない問題であるとして、この処置は、
大臣がやるよりも知事がこの任に当るのが当然である、こういうような
意見であります。ですからもう一度要約して申しますと旋網だけをとりはずして調整するというのは、
大臣に権限をや
つた方がよろしかろうが、ほかの沿岸漁業と非常に大きな
関係があるから、知事がやはり許可の権限を持
つてお
つた方が事実上いいではないかというような
意見もあろうかと思います。
以上が主務部
課長会議の大体の傾向でございます。この問題に対しまする中央
審議会の御
意見は、これは今
お話しました主務部
課長会議の空気とは反対に、
地方庁が現在や
つておりまするいろいろの
欠陷を指摘いたしまして、大きな方向としては
大臣が許可をすべき方向ではないか、というような
意見を発表する
委員の方が多いように拝聴いたしました。以上が旋網についての大体の
説明でございます。
次はさんま漁業について御
説明申し上げます。さんま漁業は、去年の調査に基きますと、資源に相当危険な状況か出て参りましたので、今年度は何か去年とは違
つたさらに別の制限を考えるべきであるとい
つたような
意見が、調査研究部の方から参
つておりますので、そういう観点に基いて、操業期間の短縮を行うという点に重点を置いて立案をした次第であります。この案の骨子としましては、まず期間の短縮を行うということ、この期間の短縮の点は、必ずしも画一的ではなくて、ある数量というもの基準にいたしまして、その数壁にまで漁獲が達した場合には、さらにきま
つた操業期間も短縮し得るというような点に重点を置いてあります。従いまして、もしこの数量の観念に基きました操業期間の短縮が可能であるということに相なりますと、従来十トン以下の漁船による例外規定があ
つたわけでございますが、これもはずすことができるであろうという趣旨で、十トン以下の漁船による除外規定は、この際廃止したらどうかという案でございます。それからなおさんまにつきましては、
北海道に船籍を有する漁船の操業と、
北海道以外の地に船籍を有する漁船の操業とを区分して考えた方が、いろいろな意味ですつきりするのではあるまいか、従いまして、
考え方としては、
北海道におけるさんまは
北海道に船籍を有する漁船に限る、
内地におけるさんまの漁業は、
北海道以外の場所に船籍を有する漁船に限
つたらどうかというふうに考えて参
つております。なお解禁日といたしましては、
北海道に船籍を有する漁船は、八月十五日から九月三十日までとし、
北海道以外の地に船籍を有する漁船の期間は、一月一日から十二月十五日までというように期間を考えてみたわけであります。この期間は先ほど申しましたように、固定的なものではなくて、ある
程度変動し得る、ことに漁獲数量をこちらの方で随時調べまして、それによ
つて繰上げることができるというような案に相な
つております。
これに対しまして各県の御
意見でございますか、主務部
課長会議では、やはりこの
考え方に対しまして、
北海道庁とその他の
府県と
意見が
はつきり対立いたしました。
内地府県の
意見といたしましては、やはり解禁日は全国一木にすべきであ
つて、
北海道では八月十五日、
内地では十月一日というような
考え方をしておるのは不適当ではないかというような御
意見であります。それに対して
北海道庁の御
意見は、全国一律の解禁日では、事実上
北海道の漁業者がさんまをとることが非常に困難になるのであるから、やはりその点は
実情に応じて、
北海道ではいつ、
内地ではいつというふうにわけて考えるべきであるというような御
意見でございました。なお申し添えますか、漁獲 量の制限とい
つたような観念を取入れた操業期間の短縮につきましては、技術的に非常に困難ではないかというふうな御
意見がかなり多か
つたのであります。
次に中央
漁業調整審議会に
おきます御
意見を御紹介申し上げます。私
どものつく
つたこのさんまの試案に対しまして、中央
漁業調整審議会の
委員の御
意見といたしましては、さんまの資源枯渇の情勢から見まして、漁獲数量に制限を置くことができるようなこの案の
やり方については、全面的に賛成するという御
意見でございました。
ただ北海道をどうする、
内地をどうするという点については、必ずしも各
委員の御
意見が一致しないのでありますが、大体の空気といたしましては、
北海道に対しさんまをとらせないというような
考え方は、おそらく実行不可能であろう。
従つてさんまの漁業に対しては、
北海道に何か特例的な措置を認めることはやむを得ないだろうという点が、大体の結論であ
つたように聞いた次第でございます。
以上小型底びき網漁業、さんま漁業、及び旋網漁業につきましての私
どもの持
つて参りました案の概略と、これが
審議された結果について御報告申し上げました。