○奧田説明員 船舶職員法と申しますのは、御
承知のように、船舶の安全をはかりますために、これこれの船には、こういう資格を持つた船員を乘せなければならないということを、主たる
内容とする
法律でございます。
この
法律は海上保安庁の所管にな
つておりますが、その改正がただいま問題にな
つておるわけでございまして、その改正の要点といたしましては、いろいろございますけれ
ども、水産業に
関係のある点だけを申し上げますると、大体二つございます。第一点は、従来本法の適用がなかつた五トン以上二十トン未満の漁船に、本法が適用されることに
なつたという点でございます。第二の点といたしましては、これは漁船に限りま
せんが、一般的に資格が引上げられたという点がございます。以上二つの点が、本改正案の水産業に
関係を持つた主要な点でございます。
そこでこの改正法案につきまして、
水産庁といたしまして、特に問題とせねばならぬ点が、大体三つあると私は
考えております。第一の点は、今後の船舶職員法に対しまして、
農林大臣がいかなる権限を持つべきかという点でございます。第二の点といたしましては、今度の改正の実際的な
内容が妥当であるかどうかという点であります。第三点は、本改正に伴いまして必要になります船員の養成をいかにすべきかという点でございます。以上三つの点につきまして、簡単に問題の点を申し上げまして、御審議の御
参考に供したいと思うのでございます。
第一の、
農林大臣が船舶職員法に対していかなる権限を持つべきかという点につきましては、この改正の結果、五トン以上二十トン未満の漁船まで本法の適用を受けますので、漁船にとりましては、非常に重要な意義をこの
法律は持
つて来るわけであります。そういう
関係からいたしまして、
水産庁といたしましては、海上保安庁と交渉いたしまして、本法に基く命令を運輸大臣が定めんとする場合においては、
農林大臣と会議をしなければならないという規定を、本法の中に挿入することを交渉いたしまして、その点は
水産庁の要望
通りに決定いたしております。それが第二十九条に「運輸大臣は、この
法律に基く命令を制定しようとするときは、
農林大臣に協議しなければならない。」という条文が入
つているわけでございます。この点につきましては、
水産庁としては満足しているわけでございます。
それから第二の問題の、改正の実体的
内容でございますが、この点につきましては二つの問題がございます。第一の問題は、五トン以上二十トン未満の漁船に本法を適用することの可否であります。第二点は、その他の漁船につきまして一般に資格が引上げられておりますので、その点が妥当かどうかという点でございます。これらの点につきまして
水産庁としての根本的な
考え方を申し上げますると、われわれといたしましては、漁船なるがゆえに低い資格の船員でいいという
考えは捨てまして、漁船は小さい船の割に遠方まで行くのでございまするから、むしろ漁船船員の素質を向上する上からいいまして、資格を引上げることには賛成である。そういう理想を高く掲げるというような
考えを根本的な
考え方といたしまして、それに漁業の実情からいたしまして、一度にそういう理想に近づくこともできま
せんので、その現実との調和ということを
主眼にいたしまして、この法案の改正の審議に参画いたした次第でございます。そういう点から、そういう理想と現実の調和という点を
考えましておちつきましたのが、お配りいたしましたこの新しい資格でございます。これはお配りしました資料の船舶職員法に伴う新旧資格対照表というのをごらんくだされば、現行法がどうで、改正後どうなるかということがおわかりになります。時間がございま
せんので、この表の詳しい説明は省略いたしますが、大体におきまして、私
どもはこの改正案の
内容に満足いたしておるというところでございます。
それから第三点といたしましては、船員の養成の問題でございます。それでこの改正の結果、新たに資格免状がいるという乘組員が約三万人あります。それから上級免状が必要となるものが約三千人おります。この三万三千人を約三年間の
猶予期間の間に養成いたさなければならないのであります。ところが、現在船員の養成につきまして
水産庁で持
つております予算は、ほんの微々たるものでございまして、ただいま大日本水産会に委託しております。養成の委託費がわずか百二十六万円であります。二十六年度もこの
数字が踏襲されておりますので、これでは約二千人の養成しかできないような勘定にな
つております。そういう
関係からいたしまして、この三年間の
猶予期間に三万三千人の新たな免状のいる者を養成するためには、
相当な予算がいるわけでございまして、この点は最近の機会に予算の増額を要求いたしたいと、かように思
つておる次第でございます。
以上が問題の点でありますが、この法案はただいま参議院の方で審議されておりまして、参議院の
水産委員会では、この改正案につきまして、修正の
意見を決定されたのでございます。これはお配りいたしました資料でごらんを願いたいと思いますが、結局参議院の
水産委員会といたしましては、その五トン以上二十トン未満の漁船について、ただいま船長と同種の職務を行
つておる者が、本法施行のために新たに試験を受ける必要がある。そういうことによりまして、試験に落第しまして、失業する者ができるおそれは多分にある。それを三年間の間に養成して、しかもその間に津々浦々に保安庁の係官が行きまして、試験をいたしまして、免状を与えるということはとても不可能ではないかというような御
意見から、本法施行の際に、現にそういう小型漁船の船長の職務をや
つております者に対しましては、市町村長の証明があれば、その者に試験を行わないで小型船舶操縦士の免状を与えることとするというような決議をなさ
つたのでございます。この参議院の
水産委員会の修正
意見は、参議院の
運輸委員会の方に申入れをされたのでありますが、それはただいま交渉中でありまして、その結果はどう
なつたかまだ伺
つておりま
せんが、参議院としては、そういう修正
意見を決定されたのでございます。この点は御
参考までに申し上げておく次第であります。