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1951-03-01 第10回国会 衆議院 水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月一日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 冨永格五郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 林  好次君    理事 上林與市郎君       石原 圓吉君    小高 熹郎君       川端 佳夫君    川村善八郎君       田口長治郎君    平井 義一君       原 健三郎君    水野彦治郎君       井之口政雄君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         水産庁長官   家坂 孝平君         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豊君         海上保安庁次長 柳澤 米吉君  委員外出席者         外務事務官         (政務局政務課         長)      藤崎 萬里君         專  門  員 杉浦 保吉君     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  漁業経営安定に関する件     —————————————
  2. 冨永格五郎

    冨永委員長 これより水産委員会を開きます。  漁業経営安定に関する件を議題とし、特に東支那海における漁船拿捕問題について審査を行います。この場合委員各位にお知らせ申し上げます。外務省から政務次官草葉隆圓君、政務課長藤崎萬里君、水産庁からは長官家坂孝平君、次長山本豐君、それぞれ政府委員が御出席に相なつております。  この場合山本次長から発言を求められております。これを許します。山本次長
  3. 山本豊

    山本(豊)政府委員 この前の委員会におきまして、川端委員及び田口委員からの御質問があつたわけであります。それらにつきましてお答えいたします。  川端委員から拿捕問題について、政府は対外的にどういう処置をとつておるか、こういう質問があつたのでありますが、政府におきましても、非常にこの問題を重大視いたしまして、実はさる二十日に関係各省、つまり外務省海上保安庁、それから水産庁、この三者でいろいろと会合を催し、各情報を持ち寄りまして、情報の交換をいたし、さらにまたこれに対する対策方をいろいろと相談いたしたのであります。とりあえずの問題といたしましては、船員は帰つたのでありますが、漁船は帰らないので、この漁船返還方と、今後のすみやかな拿捕行為停止方、この二点を——方法はいろいろ考究を要しますが、関係各庁でそれぞれ司令部関係方面懇請しよう、こういう結論を得まして、その手続を今とりつつあるわけであります。  それから田口委員お尋ねになりました第一点は、マ・ライン撤廃について政府はどういう処置をとつているか、こういうことであります。これは御承知のように、以西底びき網漁業の現在逢着いたしておるいろいろな経済的困難は申すまでもないのでありまして、主としてこの漁区の制限、禁止は、われわれもまつたく御説の通りと思つておるのであります。従つて政府におきましては、昨年来鋭意その拡張方につきまして、司令部に対しまして、たびたび懇請し参つたのであります。しかし今なお拡張を見るに至らないのでありまして、この点はまことに遺憾に考えておるのであります。ごく最近も、一月の二十二日でありましたか、農林大臣が総司令部天然資源局長をおたずねになりまして、本年初頭の現地視察の結果に基きまして、現地実情をつぶさに説明いたしまして、重ねて漁区拡張懇請いたしたのであります。しかしこれも今日までまだ御期待に沿うような結論を得ていないのであります。なおお尋ねになりました、マ・ライン撤廃につきましては、たとえば今日のような拿捕事件の頻発するというような事情におきましては、それらに対する対策といいますか、処置も同時に考慮しなければ、いろいろ問題があるのじやないかと考えます。しかし今後におきましても、その方向にはわれわれかわりはないのでありまして、なお続けてそういう方向努力しようと考えておるわけであります。  それから不法拿捕につきましての対策であります。一つは、たとえば米海軍出動が願えないものか、あるいは日本監視船を武装させる意思はないかどうか、あるいは漁船武器を所持させる意思はないか、これらの点の御質問があつたと思うのでありますが、この点につきましては、先般の関係各省との懇談会でもそれらの話が出たのであります。しかし漁船に武装させるということは、現在の情勢下にありましては、懇請してもなかなかむずかしかろうと思われる節もありますし、さらにへたに武装することは、かえつて逆効果を来すおそれも相当にあると思うのであります。そういうような意味合いで、漁船に武装させるということは、現在では非常に困難だと思われるのであります。しかしこういう事態がひんぴんとして長続きするということに相なりますれば、少くとも米海軍出動方につきまして、よく政府の方も考究をいたしまして、関係方面懇請をすることは、また可能であろうかと考えるわけであります。それらの点につきましても、今関係各省でいろいろと研究をいたしております。  それから漁船返還をすみやかにしてくれという質問に対しましては、川端委員の御質問に対する措置によりまして、お答えにかえたいと思うのであります。  もう一点、政府は底びき漁業について、経済的援助をする考えはないかという御質問であります。これらにつきましても、昨年来、たとえば底びきの補償の問題とか、またその補償にかわる資金の融通の問題とか、こういうふうな点を今いろいろやつておるのでありますが、これもなかなか簡單には参らないのであります。しかしそれ以外に、この間も参考人から、休業をして、休業手当を出せというような要望もあつたのでありますが、これに対しましては、石原委員からの反対意見もあつたように思うのでありまして、決して考えないわけではありませんが、そう簡單には結論は出し得ないのじやないかと思われるのであります。しかしもう一歩漁船保険等の問題につきましては、政府としまして、拿捕に対する漁船保険の加入もできるような方法をぜひ考えたい。これは漁船保険法の改正につきまして、現在その一つの事項として織り込んで、政府の方で考えておるわけであります。  簡單でありますが、以上お答えいたします。
  4. 田口長治郎

    田口委員 ただいま次長からの御説明を承つておりますと、結局何もできない、そういうふうに受取れるのでありますが、この事件は毎日ただいま頻発しつつある非常に緊急な問題でございますから、いろいろ御苦心の点はあると思いますけれども、早急に何か手を打つてただきまして、安心して漁業ができるような処置をとつてただきたい、こういうことを重ねてお願いしておきます。それから拿捕船返還させるという問題につきまして、国府軍であればいずれ折衝方法があると思いますけれども、大多数のものが中共側拿捕されておる、こういうふうに考えられるのでありますが、何か第三国を通じて折衝していただ方法がありませんかどうか、この点を外務次官にお伺いしたい。
  5. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまお尋ねの問題につきまして、今水産庁次長から御説明申し上げましたように、最近関係省が打合せまして、時間的に最もすみやかに解決しなければならない、しかもたいへん大きい問題と心得ますので、この対策を十分打合せつつある次第でございます。結局問題は、対外的な折衝なり交渉なりという問題と、対内的な水産行政一般についての問題だろうと思いますが、対外的な問題といたしまして、ことに外務省方面におきまして、第三国あるいは直接司令部等を通じましての、この問題の解決促進方に対する懇請という点に、今後相当尽力いたして参る、その方法が直接には現在とられる方法だろうと思います。
  6. 田口長治郎

    田口委員 これは水産庁権限外と思いますけれども先方が船をほしくて、船をとりに来るというような実情でございますから、自衞方法といたしまして、最小限度武器漁船に持たせる、あるいは取締船が持つて保護をするか、アメリカ軍艦を派遣してもらうか、どつちかでなければ——先方は船が必要である、船がほしい、こういうことでとりに来ておるのでございますから、そこに自衞策を講ずるのに道がないようなことは想像できないのでございます。その点をもう一度よく御研究になつて、要請するところは強く要請するような道をとられたら、自衞のための最小限度武器の保持ということは、私はできると考えるのでございますが、お話だけでは、どうもむずかしいだろう、交渉しても無理だ、あるいはだめだ、こういう考えを前提にしたお話のように考えるのであります。もう一回この点についてはつきりした御答弁をいただきたい。
  7. 山本豊

    山本(豊)政府委員 実は初めから消極的な考えを持つておるのではないのでありますが、この間関係各省といろいろ会合したときの話等も総合してみますると、これはなかなか困難だろうという各官庁意見なんです。決してそれであきらめておるわけではありませんが、むしろ監視船の速力を持つ、能率のいいものをつくるとか、あるいは組織的に出て行くとかいう方法の方がよくはないかという考えを持つておるわけであります。しかしながら今仰せになりました中で、非常の事態にはアメリカの軍の援助を受ける、たとえば飛行機で上を飛んでもらうとか、あるいはまた事情が許せば軍艦等を出してもらうとか、これらの方法につきましては、私は見込みなきにしもあらずと考えておるのであります。ただこれも軍作戦関係もありましようから、これはよほど強く申し入れましても、向うはどう出ていただけるかわからないのでありますが、それらの点をいろいろ考慮いたしまして、どの線で強く要求するかということを考えて、今研究しているわけであります。一応の懇請は、先般関係官庁から、それぞれ向うの各関係方面に出したわけであります。むろんその内容は書いてないわけでありまして、適当の処置をお願いしたいという程度のことでございますが、それを出したのであります。さらに今度は、大臣から資源局長あてにもやはり大体同じようなことを懇請したいというので、今その措置をとりつつあるわけであります。
  8. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 おそく参りましたので、各委員からすでにお尋ねがあつたと思うのでありますが、本問題はきわめて重大な問題でありますので、重ねて御質問したいと思うのであります。  わが方におきましては、当局におきましても、また関係漁業者におきましても、ポツダム宣言に基くところ連合国最高司令官権限によつて設定されましたマツカーサー・ライン厳守を、今日忠実に履行して参り、今後も監視等を厳重にいたしまして、さらに徹底したところのこれが履行をなさんと努力をしておるのであります。ところがこの連合国最高司令官権限によつて決定いたしましたところマツカーサー・ラインを不当に第三国が侵しまして、平和的にまじめに操業しているわが国漁船不法拿捕するということは、これは連合国最高司令官権限を侵犯するものであり、総司令部命令を忠実に履行するところのわが漁民に、不法な圧迫を加えていることは明らかであるわけであります。これに対して政府は、もつと強く総司令部に対してマツカーサー・ライン厳守——これはただ敗戦国たる日本のみでなく、関係各国がこれを確実に履行すべき義務があると思うのでありますが、その折衝の過程におきまして、総司令部よりいかなる御見解わが国に対して表明されておるか、総司令部はこの国際間のとりきめであるところマツカーサー・ラインが、現に侵犯されておるというこの現実、おそらく黙許されておるものとはわれわれには考えられない。そこでいかなる見解をもつて今後これに対処しようとしておられるかということについて、少くとも日本におきましても、総司令部意向はつきりと確認する必要があると思うのでありますが、政府はこの点に対していかなる努力を払われ、いかなる御意向を総司令部から承つておるか、この点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  9. 草葉隆圓

    草葉政府委員 政府としまして、ことに外務省関係におきましては、総司令部外交局関係と、この問題につきましては、実は緊密に連絡をいたしております。ことに先方といたしましても、この問題はただいまお話になりましたように、重大な関係がありますので、非常な関心を示しておりまして、何か適当な処置を至急に講ずる必要があることを十分了解してくれております。問題が御承知のようにずいぶん複雑で、しかも国際的にいろいろな関係を持つておりますので、具体的な方法につきまして現在司令部関係折衝いたしながら、検討を進めているような次第であります。この問題につきましては、ただいま申し上げましたように、先方におきましても非常に関心を示しまして、すみやかにその処置を講じたいという方法をとつておりますので、御了承を願いたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 吉田総理は先般参議院における質問に答えまして、單独講和の場合に、これに参加せざるところのある特定国が、講和条約締結後においてわが国に対して進駐する軍隊を派遣して占領をすること等があつた場合には、遺憾ながらわが国は自衞権を発動してこれを守らざるを得ないという、重大なる見解を発表しておられるのであります。今回マツカーサー・ラインが不当に犯されているという問題に対して、わが国の自衞権は認められないのであるかどうか、この点について、外務政務次官から当局の御意向を承りたいと思います。
  11. 冨永格五郎

    冨永委員長 この場合委員諸君にお知らせ申し上げます。海上保安長から次長柳澤米吉君が出席しておられます。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの点につきましてはごもつともだと存じます。ただ占領下にあります現在の日本といたしまして、いかなる意味におきましても、対外的な意味における特殊な行動をとることはできない状態であります。この点はさよう御承知を願います。
  13. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 先般の委員会における拿捕漁船関係者の御意見によりますと、中共政権マツカーサー・ラインを全然認めていない。ポツダム宣言及びそれに基くところマツカーサー・ライン国民政府がこれをとりきめしたものであつて中共政権は何らこれに関知するところでないということを言つていることは事実のようであります。このマツカーサー・ライン中共政権は、その言うがごとくに認めておらず、東支那海全体が中国のものであるという主張をいたしているのでありますが、私ども国際法上における通念からいたしまして、各国領海というものは、距岸三海里をもつて領海と認めているわけであります。これは国際法通念である。従つてマツカーサー・ラインを認めないから、東支那海全体が支那の領海であるという論議はまつたく飛躍であつて国際法を無視したところの理論であると私ども考えるのでありますが、これに対する当局の御見解はいかようでありますか、お尋ねしたいと思います。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問通りに、マツカーサー・ラインを認める、認めぬは第二の問題といたしましても、国際法的に、領海の従来の観念からいたしまして、御質問にありましたように三海里程度、その他一、二の国におきましては少しかわつた説もあるようでございますが、そのようにして、その他は当然公海として従来から考えられ、また万国その認識のもとになされておりますから、その公海の上におきまする拿捕ということは、まことに遺憾であると存じます。
  15. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 大体当局の御見解におきましても、今回の拿捕事件は完全な不法行為であり、マツカーサー・ラインの公々然たる侵犯行為であるわけであります。これはわが漁業者ポツダム宣言を忠実に履行しておる建前からいたしまして、非常に重大な問題であります。これらの不法行為が頻発しておりますことは、わが国ただ占領国命令を守るという消極的立場に終始して、その義務を履行する上におきまして、関係各国第三国もまた、私ども義務と同様にこれを遵守すべきことを、日本立場において強く中外に主張すべきものであると思うのでありまして、この信念において、日本政府が従来欠くるところはなかつたか、非常に消極的な弱い立場に今まで終始して来ておつたのではないかと思うのであります。私どもは、今後総司令部当局の御援助を得まして、厳然としてこの私ども国際的な義務を果すと同時に、いやしくも許されたる権利は断じて侵犯さるべきものでないという立場を、はつきりと当局はとつてただきたい。それに対する万全の措置をとつてただくことを強く要請いたしまして、私の質疑を終りたいと思うのであります。
  16. 石原圓吉

    石原(圓)委員 この問題につきまして、前日の参考人説明によりますと、マツカーサー・ラインを完全に中国は認めない、それは蒋介石と申し合せてやつたことで、中国は知らないということは、はつきりと何人の者にも言明しておる。こういうことはもう争うべからざることであります。これに対する国際的の一つの、中共日本政府並びに司令部との間に、何かこの際折りきめをつける必要がないかと思うのでありますが、その点に対してどうお考えになつておるか、お尋ねしておきたいのであります。  それから共産党の方では、しきりに全面講和ということを主張しておるのでありまするが、全面講和を主張することは、この問題が非常に長引き、紛糾するのでありまして、その紛糾することは、先日の参考人の話にもある通り以西底ひきの魚は、東京市民の食料としての魚の四割を供給しておるということを言つておるのでありまして、またわれわれもそれを信じておるのであります。しかるに共産党が、以西底びきの業者に脅威を与えて、なるべく漁場に進出しないようにしようというたくらみがあるとすれば、これは共産党東京市民に魚を食わせないという結論になると思うのであります。そういうことになれば、共産党は、東京市民を全然不安定な立場に置くという結論になるのでありまして、これは井之口委員も大いに考えてもらわなければならぬと思うのであります。先日来の議論によつてそれははつきりしておるのであります。願わくばこの点について、井之口委員の何らかの御弁明があれば仕合せと存じます。
  17. 井之口政雄

    井之口委員 ただいま石原委員の方から、共産党水産行政に対する根本的な御質問があつたようでございまして、それも私のこれから明確にしたいと思うことでございますし、ついでに海上保安庁の方もおられますし、外務省の方もおいでになつておられますので、全般的な御質問も織りまぜて申し上げてみたいと思います。  第一に、いろいろな、日本遠洋底曳網漁業協会やそのほかのものからも陳情書も出ておりまして、その陳情書の裏にも拿捕されている船の統計が出ております。たとえば一九四九年以前のものとして、国府軍三十一隻、ほかに二隻撃沈、それから韓国李承晩政府によつて逮捕せられたもの三十二隻、しかもそのいまだ残存せるもの、国府軍において二十九隻、李承晩政府において十一隻である。しかるに一九五〇年の十二月以降に、中国人民共和国によつて拿捕されているものとしてここに上つているのは六隻でありまして、あとはほとんど未詳となつております。はたして国府軍なのやら海賊なのやら、中国人民共和国によつて拿捕されているのやら、その点が不明瞭であります。これは一昨日当委員会において参考人を呼び出して調べたところにおいても、報国水産常務取締役上田哲夫氏が明確に、自分の船は拿捕されたけれども、しかしそれは台湾の方に連れて行つたらしく、行つた先はどこかわからぬというようなことをこの席において述べられております。なおきようの日本経済新聞を見ますと、長崎発海上保安本部に達した情報といたしまして、ここに載つておりますが、和美丸九十九トン、第七五報国丸九十七トン、第三雲仙丸九十九トン等のごときは、これは明らかに蒋介石政府によつて拿捕されたもので、決して中華人民共和国によつて拿捕されているのではないというような情報が入つたということが、新聞に報ぜられております。これらの点を考えてみますと、この問題の根本になつている日本漁船拿捕問題は、一体どこによつて拿捕されているのやら、それが現在実情がどんなものになつているのやら、これがほとんどわからない。水産庁並び海上保宏庁においても、明確なる発表がないのであります。いつの幾日、今まで、どこにおいて拿捕され、どういうものは帰つて来ている、これこれはこうなんだというふうな明確なることが発表されておりません。私も水産庁やその他にもいろいろ問い合してみましたけれども、まだ明確なものがないということであります。しかもずつと古いころから、蒋介石政府によつて拿捕されたもの、それから李承晩政府によつて拿捕されたものが、まだほとんど帰つておらない。こういう状態もちつとも発表されないで今日放置されている。実情はどういうふうになつているのかもわからないのに、その対策をこの委員会において協議しようとなさり、またGHQの方に交渉されようとしておられるのでありますが、この点をまず明確にすることなくしては、問題の所在点がどこにあるのやら、従来のものが一体どうなつているのやら、百そう以上にも従来李承晩政府並びに蒋介石政府によつて拿捕されているものがあると思うのですが、そういうものの内容が一向にわからないのでありまして、われわれは、この点を第一番に明確にしていただきたいものと思う次第であります。これは海上保安庁並び外務省の方において明確にわかつているはずでありますから、この点もひとつお答え願いたい。まず今日出ておりますところ長崎発長崎海上保安庁に達した情報を正確に保安庁本部においても受信されているのかどうか、この点もお聞きいたします。  第二番にマツカーサー・ラインの問題でございますが、マツカーサー・ラインは、日本政府蒋介石政府との間に協定がなされて、設定されて、両方からこれを尊重することになつているのですが、それにもかかわらず蒋介石の船がしばしばこれを侵してやつていて、今まで拿捕されたものがたくさんあるのであります。今までの拿捕されたものがマツカーサー・ラインの外においてやられたものであるというふうに海上保安庁なり外務省においてはお考えであるかどうか。そうして今度の問題については、やはりラインのごく近くにおいてやられているということが、一昨日の証言において明らかになつているのであります。この点も政府においては、はたして正確などういう情報を持つておいでになるのか。これを政府としてひとつ発表してもらいたいと思うものであります。  マツカーサー・ラインにつきましては、一昨日報国水産常務取締役上田哲夫氏は、これの撤廃を主張している。これを撤廃してくれ、こういうものがあるから、かえつて自分らは拿捕される、これがなければかえつていいのだ、撤廃してくれということをこの人は主張しております。してみると実際の漁業家が、このマツカーサー・ラインの中に雲集しておつてとても操業ができない。これを撤廃して外に行きたいというのが、この人たちの直接の要求のように見受けられるのであります。そうといたしますれば、政府は今度起つている問題も、このマツカーサー・ライン撤廃ということによつて解決しようとなさるのであるかどうか。この点もお聞きしたいと思う次第であります。  これからいよいよ石原委員の御質問に対して、順々と答えて行きたいと思います。石原委員の御質問に対しては、非常に根深いところ反共思想、反ソ思想があるのでありまして、そのために事実をまげて、日本共産党全面講和に対するところの無知を表明しておるものだと私は思います。日本に駐屯しているところ外国軍隊日本から早く撤退させて、そうして全面講和をしたいということを中国並びソ同盟条約をもつて決定している。こういうことをしている国は、まだ世界のどこにもない。外国で、よし将来どうであろうと、今日日本占領状態を一日も早く終らせたいということを条約をもつて締結している国は、イギリスにも、アメリカにもどこにもない。ただ希望といたしましては、将来一日も早く撤退するということは、ポツダム宣言にはありますが、具体的な条約として、日本に進駐しているところ軍隊日本から撤退して、日本全面講和をしたいというふうな希望を表明している国は、中国並びソ同盟をおいてほかにない。ごく最近プラウダの記者に、スターリン氏が表明しているところのあの原則によりましても、ソ同盟という国は、決して外国を侵略する意思はない、中国も全然外国を侵略する意思はない、しかし自国の安全を脅かされるような、国境が外国の侵略をこうむるというような場合においては、中国においても断固としてやるが、みずから他の国に対して、太平洋のような大きな長い海を渡つて、よその国まで侵略の手を伸ばすというようなことは、全然やらぬということを明確に表明している。こういう国は世界にない。しかも国内をあげて、四億の中国民衆並びに……。
  18. 冨永格五郎

    冨永委員長 井之口委員に申し上げます。御意見の趣旨は、大体尽きたようでありますから、簡單に願います。
  19. 井之口政雄

    井之口委員 それでは簡單に申します。そういう状態でありますために、このソ同盟並びに中国から、日本を侵略したり何かするということはない。それをただそういうことを前提として、日本政府が、また昔の侵略的な帝国主義に帰ろうとする危険性が十分にある。この拿捕問題についても、これが織りまざつてつております。でありますがゆえに、われわれはたといマツカーサー・ラインが設定され、またはこれが撤廃になりましても、仲よく日本中国漁業協定を結んでやりまするならば、安心してやれる。これは日本の漁民が狭い中でやらないで、外に出て活躍するところの可能性も十分にある。このために日本共産党といたしましては、一日も早く全面講和を主張する次第であります。もしもこれを武力をもつて日本漁船を武装するとか、あるいはアメリカの海軍によつて、これにあと押しをしてもらうとかいうふうなことになつて参りますと、起つて来る問題はどうです。実際みんな考えてもらいたい。日本はあぶない。もしそういうふうなことになつてしまつたら、この国において戦争の起る危険がある。今朝鮮の内乱に干渉して、朝鮮で戦争が起つているが、この戦争は、やがて日本をも引込んで来ることになる。そうしてわれわれ日本国民が、この間受けたところのあの戦争の惨禍というものを、またまた繰返さなければならない。
  20. 冨永格五郎

    冨永委員長 井之口委員に申し上げます。意見にわたるようなことは簡單に願います。
  21. 井之口政雄

    井之口委員 その意味において、日本政府では、この漁船を武装させたり、あるいは連合軍から海軍を派遣してもらつて、あと押しをしてもらうというようなことをやることが、いかに危険であるかということを十分に認識されておられるかどうか、その点を外務省並びに海上保安庁に聞きたいと思います。私の質問に対しましては、いつもあつさりと……。
  22. 冨永格五郎

    冨永委員長 政府から答弁していただきます。
  23. 草葉隆圓

    草葉政府委員 石原さんの御質問マツカーサー・ラインがあるのに、中共がこれを認めぬと言つているがどうだ。それからさらに、できるならば協定でも結んでこの問題の解決にあたる方法はないかという御質問であつたと思いますが、実はマツカーサー・ラインの問題については、御承知のように、それぞれの立場において日本占領政策として、マツカアーサー指令のもとになされておりますそのマツカーサー・ラインを、政権がかわつたからといつて国際法的な原則から考えまして、正当な方法を用いずして、前にきめたことをあとで否定するということは、全然考えられないことだと存じます。国際的な約束を無視してもよいというようなことはできないことだと考えます。従つで当然マツカーサー・ラインというのは、正当に考えられて行くべきものだと存じております。この問題について今後中共と何らかの相談をしてという点につきましては、十分何らかの方法による連絡を、政府も今後努力して行かなければならないと存じておりますが、協定等を結ぶという点につきましては、なかなかそこまで今の日本立場としては困難な点もあろうと存じます。
  24. 石原圓吉

    石原(圓)委員 先刻井之口先生より種々お話がありました。新聞やその他によりますと、中共自体が漁船に武装をしているということも聞くのであります。中共自体武装して出るということになれば、日本漁船はもうやれないことは明らかであります。そこへ持つて来て、日本共産党できようは何丸がどこへ行つた、何丸はどういう方向に行つたということを、もしも通信する者があつたならば、それこそもう日本漁業者は全滅であります。それは中共みずからが漁船に武装しているということでそういう想像ができるのであります。これは想像であるけれども、この想像は当らずといえども遠からずというところであります。そこで、そうならば支那海の魚は東京のみならず六大都市には来ないのであつて、六大都市へ魚が来ないようにするのは共産党がするというふうに想像がつくのでありましてそうなると、この六大都市の市民は穀物だけの偏食になりまして、栄養失調になります。結局生命を縮めることになる。日本共産党六大都市の市民を殺す、こういう言葉も使えるようなことになるのではないか。でありますから、いかに共産党であつても、その点には大いに理解を持つてもらいたい。もし日本の滅びる以前に、六大都市の市民がなくなつたらどうなりますか。これは共産党の大なる責任であつて、また共産党のおもなる目的も達することができない、どうかこういう点を、特に井之口委員は水産委員として深甚なる御考慮をお願いしたいと思います。
  25. 山本豊

    山本(豊)政府委員 今お尋ねになりました隻数の問題でありますが、古い数字は今ちよつと持つておりませんけれども、ごく最近問題になりましたものについては、全部で十四隻でありまして、その中で今新聞に出、お話に出ている問題でありますが、この四隻、名前は和美丸報国丸雲仙丸が第三と第十八、この四隻は大陳島という所があるのですが、そこえ行つておるという電報がきのう入つたわけであります。これはおそらく国民政府関係だと思いますが、この点はさつそく返還方懇請したいと考えまして今その手を打つておるわけであります。多分これは返してもらえるのじやなかろうかと期待を持つております。その他のものが全部中共とも思えないのでありますが、大体中共考えられるわけであります。それから先般の拿捕事件によりまして、一応危難にはあつたのでありますが、うまく逃げて帰りましたものは第十雲仙丸、第三、第五大寿丸、第三、第五日邦丸、この五隻であります、これは乗組員だけ帰つたわけであります、現在わかつておるところはその程度であります。
  26. 川村善八郎

    ○川村委員 漁業経営安定に関する件につきましては、これまで国際的の漁業に重点を置かれて、特に拿捕船の問題を中心に質疑がとりかわされております。先般ダレス特使が参りまして、それと同時に司令部から水産に対する数項の強い勧告があつたのであります。その問題はもちろん漁業経営安定の問題とも関係があり、また本委員会において漁業資源に関する小委員会が設置されまして、私がその小委員長になつて研究しておりますが、水産資源とにらみ合せた将来の漁業をいかにすべきかという問題もこれに関連がありますので、水産庁に一、二お伺いしたい。  先般司令部におきまして勧告されました数項の問題は、日本漁業経営あるいは将来について重要な問題でありまして、日本の資源がすでにいずれも枯渇しておるという前提のもとに勧告されておるのであります。勧告されておる事項はたくさんありますが、その中で私のぜひ伺つておかなければならないことは、漁業資源の維持保護という問題と関連いたしまして、濫獲防止という重大な意味を含んだ漁業制限の問題であります。これを端的に事例をもつて申し上げるならば、今は全国内におきまして漁業資源を濫獲しておる、すなわち無数の無許可船が機船底びき網をやつておるということが一番問題となつて、しかも資源を濫獲し、枯渇させておるというのが事実であります。そこで私ら小委員会におきましては、この資源を十分調査の上、日本漁業のあり方、あるいは制限等もしなければならぬことはもちろんであるが、維持保護のために万全を尽さなければならないと考えて進んでおるようなわけであります。ところ司令部からは、もう決定づけて、日本漁業資源は保護育成しなければならぬ。繁殖保護ももちろんしなければならぬし、濫獲防止のためには漁業の制限をしなければならないという、至上命令を下されておるのであります。その中で一番具体的に取上げられている問題は、国内の機船底びき網、特に小型の機船底びき網の問題の将来についての具体的な勧告をされておるのであります。すなわちこれまでのたくさんの無許可船を防止するためには、一応登録して、一年以内に全面的にこれを廃止させろ、その場合においては国家補償をしなくてもよいということも言われております。しかし本委員会においては、補償ということはもちろん容易でないが、何らかの方法補償にかわるべき政策をとつて、これを防止し、あるいは制限をするということにしなければならないということで取上げております。そこで一挙にこれを廃業させるというようなことは、いかに漁民が法律を犯しておるから悪いとはいいながら、職業を奪うために失業者が出るということと、さらにこの問題を一挙に解決づけるとするならば、補償かあるいはそれにかわるべき何らかの方法をとつてやらなければ、とうてい法律をもつてのみこれを解決づけるということはできないというようなこと、そういうことでわれわれも研究しておるのでありますが、しかし占領下にあつて、一旦そういう強い勧告をされた以上は、われわれは、何としても、勧告に基いてこれを断固行つて行かなければならぬという責任があるはずであります。このことにつきまして、一体いずれを選ぶのか。勧告通り登録をして、一年以内に全面的にこれをやめさせるか、あるいはそのうち正式な許可をして幾分残すのか、あるいは転換させるといたしましても、何らかそこに具体的な生きる道を講じて転換させるのか、こういうふうな点におきまして、水産庁は率直に、これをどうしなければならないと考えるか。しかも一年間という期限がつけられておりますので、この一年間のうちに、はたして勧告通りのことができる自信があるか、これらについてまずお伺いいたしたいと存ずるのであります。
  27. 冨永格五郎

    冨永委員長 東支那海における漁船拿捕問題についての質疑は、時間の関係もありますので、本日の場合一応これで打切ります。  次にただいま川村委員からの質問に対する当局の御答弁を求めます。
  28. 山本豊

    山本(豊)政府委員 ただいま川村委員から、小型機船底びきの整備という問題が出ましたが、これは五ポイントの中に大きく取上げられまして、しかも期限づきであり、あるいは補償はしてはいかぬというようなことまで規定されておるようなわけであります。その運用をどうするかというお尋ねでありますが、実は私たちも、大体ただいま川村委員がお述べになりましたような線で行くより手はないと考えております。もつともこれは、たとえば片方においてこの転換が実際にできますためには、いわゆる沿岸の漁場といいますか、資源の増殖ということも考えて、それらの方面に行くような方法もとらなければならないし、それにしましても、ある数は絶対に多いわけでありますので、それらは結局廃業ということになるものも出て来ざるを得ないと思うのであります。それらにつきましては、補償かあるいはまた融資か、あるいはその他の方法か、とにかく経済的に転換し得るような措置を講じなければならぬと思うのであります。ことにまた、こういう相当隻数に上るものを、一回きりで一挙に廃止させ、転換さすということは容易にできることではないのでありまして、われわれといたしましても、たとえば一例を申し上げますと、五箇年計画を立ててやるとか、そういう方向に持つて参りたいと考えておるわけであります。従つて司令部の一年と言う意味は、われわれは、とにかく一年間にそういう向うべき計画を立てて、そうして実施の面におきましては、その内容のいかんによつては、三年計画でやるか、五年計画でやるかというふうに考えているわけであります。
  29. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいま山本次長から、勧告に基いて、大体一年以内にその計画を立てて、実施は、それぞれ漁場とにらみ合せ、そうして漁民のあまり不幸にならないような政策をとつて行きたいという御答弁があつたのでありますが、もちろんそうでなければならないし、これは当然であります。そこで私は、この司令部の勧告の実施を一日も早く完了したいと考えておりますので、ここで簡單に北海道に例をとつて申し上げたいと思います。  北海道では、小型機船底びき網のことを小手繰網と言つておりますが、これは事実機船底びき網であります。これが許可船は北海道では約八百隻あつたのであります。それから無許可船が七百隻で、合口計千五百隻あつたことは事実であります。その整備にあたりましては、昨年度これを取上げまして、すでにこれは整理を断行しておつて、昭和二十七年の三月三十一日までに整理を断行するということに決定づけられておるのであります。そこでこれに対しては、もちろん転換の漁業の面、あるいは資金の面、あるいは資材の面等、これを恵んでやつて転換させるということになつたのでありますが、資材の面、資金の面は遺憾ながら何ら約束が実行せられなかつたけれども、転換の面においては、大型機船底びき網に転換するように、約二百隻というものが許可になつて、これは混乱なく転換を了したわけであります。そこで数はもちろん千五百隻であるが、一方内地方面におきましては、聞くところによると、二万隻ぐらいのものがあるということであるから、十倍以上であるので容易ではありませんが、しかし、勧告された以上は、これを放置しておくわけに行きません。従つて、今期国会におきましては、すみやかにこれを取上げるようにしたい——すなわち、水産資源調査の小委員長として私はこれを要求するのであります。案については、一挙にりつぱな案が立てられるとは考えられないのでありますけれども、資源の調査は、すでにもう司令部はこれを終つて結論が出て勧告されるのでありまするから、むしろ、委員会において資源を調査するというようなことよりも、もうすでに結論づけられている以上は、具体的に漁業の整備の問題を取上げて行つた方が賢明でなかろうかと考えております。先ほどの次長の答弁から行きますと、取上げる意思は十分あるということを了承いたしました。今国会は三月いつぱいで自然休会になるということであります。これから時日もあまりないことであるが、勧告を誠実に守らなければならない義務がありますので、全部を取上げることは容易でないとしても、本委員会において、いわゆる資源の調査に関する問題、あるいは漁業安定に関する問題を強く取上げている以上は、この二つの面からも今度の小型汽船底びき網の問題、その他最も急を要する問題等は取上げて——五月であろうと思いますけれども、再開さるべきそのときは、具体案を実施に移すということこそ、占領下においてわれわれが勧告を忠実に守つて、将来漁業のいろいろな面の解決をはかるに有利であると思いますから、私は水産庁に対して、一日も早くその案を提示されんことを要求して、私の質問を打切ります。     —————————————
  30. 冨永格五郎

    冨永委員長 皆さんにお諮りいたします。漁業法等の一部改正の法律案を漁業制度に関する小委員会において起草すべく審議中でありますが、改正中に小型底びき網漁業の件があります。ただいま川村委員から質疑せられておりますが、先般司令部からもこのことに関係ある勧告もありましたほどで、非常に重大と考えるのであります。本委員会はこれを慎重に調査審議する必要上、全国より利害関係人を参考人として委員会出席を求め、御意見を聴取いたしたいと考えますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認めます。それでは参考人出席を求めることといたします。出席の日時、場所、人名、人数等は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認めます。     —————————————
  33. 冨永格五郎

    冨永委員長 この際お知らせいたします。国際捕鯨条約加入に関する件につきましては、来る七日午前十時より外務委員会との連合審査会を開会いたすことになりましたから御了承願います。この場合本問題につきまして連合審査会を開く前にここで御説明を願つておきたいと思います。  日本の捕鯨事業は、連合軍最高司令官より日本政府に対する覚書において、国際捕鯨協定を厳守することにより許可され、わが国食糧増産に大なる寄与をして参つた次第でありますが、今般関係筋の御厚意により、国際条約に正式に加入できる運びになつてつた次第であります。本問題につきまして水産庁当局より詳細なる御説明を願います。  なおつけ加えて御報告を申し上げておきます。大蔵省から主税局長が出席して、漁業権証券に対する課税問題について説明を聴取することになりましたが、時間の関係から、また大蔵省の説明関係から、次会においてこれをいたさせることに相なつておりますので、この点も御報告申し上げておきます。  なお水産庁当局から説明を願う前に、海上保安庁に対する質問石原委員より申されておりますのでこれを許します。石原圓吉君。
  34. 石原圓吉

    石原(圓)委員 最近漁船の遭難が非常に多いのであります。これはいろいろの原因があります。船体が老朽した点もあり、油が不足しかつ高騰したために、油の消費を節約する点、それから漁獲高が減つたために、漁船は風雨を冒しても沖合いの作業をしなければならないという、非常にせつぱ詰つた状態にあるのであります。これらのことが集まつて漁船の遭難が多いという結論になつていると思うのであります。これに対して水産庁並び海上保安庁は、相協力して善処する方法が必要であると思うのでありますが、ただいまどういうお考えを持つておられますか。海上保安庁にも取締りの施設権限があり、また水産庁にも今度取締り船ができるわけであります。この両者が十分緊密な連絡をとつて、いわゆる昔の海軍の作戦計画のようなものを緊密に立てて、遭難者を救う必要が迫つていると思うのでありますが、それらに対しまして、海上保安庁並び水産庁考え方を一応ここで承つておきたいのであります。  実は私の郡の漁船も先月の十一日に勝浦を出帆しまして沖へ出ましたが、それがそのままわからないのであります。大雪になる数日前のことでありまして、その当時はことさら漁船の遭難が多かつたと思うのであります。いまだ不明のものもたくさんあると思うのでありますが、そういう点から考えましても、この点は非常に緊急な重大な問題と思いますので、ここにお尋ねをしておきたいのであります。
  35. 柳澤米吉

    柳澤政府委員 漁船の遭難の問題でありますが、漁船の遭難は近ごろ北海道方面、あるいは太平洋方面、日本海方面、日本の全域にわたりましてひんぴんとして起つているのであります。これが原因に関しましては、お説にありました通り、船体及び機関の不備が原因の一つになつておりますが、そのほかに人的の問題も含んでいるわけであります。なおそのほかに海上の保安施設に対する不備ということが大きく取上げられていると思うのであります。従いまして海上保安庁といたしましては、建造に対しまして経済的にかつ有効なる検査を施行いたしまして、機械的の問題をまず整備いたしたいと考えております。これに伴いまして、第二の人的要素の問題がここに起つております。これにつきましては、すでに北海道方面、あるいは九州方面におきましても、全国にわたつて、機構の変更、あるいは海事知識の普及という点につきまして、海難防止の面を明らかに、簡單に書きましたパンフレットの配布を行つております。これによりまして人的の知識を上げたいと考えている次第であります。なおでき得ますならば、本国会におきまして、二十トン以上の船舶の乗組の船長だけは、小型の操縦士の簡單な試験を行うつもりでおります。この試験は海難の防止に関する知識を持つておればパスする程度の試験でありまして、それによつて知識の向上をはかり、海難の防止をはかりたいと考えている次第であります。  次に海上の保安設備の不備でございますが、第一に取上げられるものは燈台の不備でございます。御承知通りに、世界でまれに見る暗黒の海と称せられるほどの燈台の数の不足が、漁船遭難のパーセンテージを非常に大きくしておることはいなめない事実であります。これに関して政府といたしましても、財政の許す限り極力これが整備をはかつておる次第でございます。特に今までの燈台施設は、大船、巨舶に対するものを主として考えておつたようでございますが、近来は主として漁船その他の小船舶に対する燈台を目標として、建設されつつある状態でございます。そのほか保安庁といたしましては、事故が起りましたあとの救難の施設については、逐次建造計画を進めておりまんので、今年及び来年の十月以降におきましてはやや整備する状況に相成る、かように考えておる次第であります。  なおそのほかに水路海図の調製につきましても力を入れまして、精密な海図をつくりまして、それによつて海難の防止をはかりたい、かように考えておる次第であります。
  36. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいま海上保安庁次長から癖難防止についての御意見があつたのでありますが、まことに適切な説と私は考えております。申すまでもなく、海上保安庁が発足して以来、海難防止に非常に重点を置かれまして、施設におきましても、あるいは海難防止の実施にあたりましても、着々歩を進められまして改善をされておりますので、漁民諸君は申すに及ばず、船舶所有者が喜んでおりますことも、私どもは種々耳にするのであります。今後とも海上保安に一般の努力をいたされんことを望みます。ただ一言お伺いしたいことは、今日の遭難船の数が相当数に上つておることだけはわかつておりますが、隻数はよくわかつておりません。ただ今も御答弁がありましたように、漁船の遭難が非常に多くなつておることだけは事実であります。そこでその遭難隻数が判明すればまことにけつこうでありますけれども、大体どの程度のパーセンテージに上つておるかということを、まずお伺いいたしまして、さらに私の質問を申し上げたいと思います。
  37. 柳澤米吉

    柳澤政府委員 海上保安庁の統計に基きますと、昭和三十五年の正月から昭和二十五年の十二月末までの海難発生件数は、汽船におきまして千百三十件、機帆船におきまして千四百七十九件、そのほか帆船におきまして三百四件、合せまして二千九百十三件、これが普通の船舶の海難の状況でございます。しかしながらここで申し上げたい漁船の海難件数は、海難の届その他が非常に不備でございまして、的確なる数字を申し上げかねます。しかし概数を申し上げますと、少くともこの数の約五〇%増し、すなわち五千件近いものと、かように考える次第でございます。
  38. 川村善八郎

    ○川村委員 そうしますと、二千九百十三隻の五〇%でございますか。
  39. 柳澤米吉

    柳澤政府委員 二千九百十三隻は漁船以外のものであります。従いまして漁船はこのほかに約五千件あると考えております。
  40. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私はまだ質問があるのですけれども、時間の関係でこれに対する要望だけを申し上げておきます。私の言わんとするところは、これから漁船は古くなるし、漁獲高を高めるために海上の稼働時間が非常に長くなり、また危険を冒して出漁しなければならぬ実況であるから、海上保安庁水産庁とが緊密なる連絡をとつて、遺憾なく救済の道を講じ、また安心して出漁でき得る道をつける、こういう点を具体的に実現させたいというのが要点であります。従来水難救済会の時分には、漁村には救命艇があつて、もよりの警察官がそれの責任となり、また救護所というようなものがあつて、その所の青壮年はそれに協力して、悲壮な覚悟で救済に出たということがあつたのであります。それが近ごろはそういうことに行つてないのでありまして、そのことが沿岸漁業の遭難救済に非常な不便を感じておる、こういう点もあるのでありまするから、この漁船に限つては、海上保安庁水産庁が十分緊密なる連絡をとり、でき得る限り両者合体の一つの審議会のようなものをつくつて、その整備拡充をはかり、予算の獲得に協力するというような方法をとつて、すみやかにこれの拡充をはかることを強く要望するものであります。
  41. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいま私の言わんとするようなことを石原委員が言われたのでありますが、大体先ほどの御説明によりますると、年間において三千と五千も遭難している。これは相当の人命も失つており、あるいはこれに積んでいるいろいろな物資も相当に損害を受けておる。また直接的には船が相当多額に上る損害を受けている。こうしたものをすみやかに解消するためには、もちろん船舶救済船の設備とかあるいは燈台の設備その他いろいろありましよう。掘り下げて見ると、要は予算が不足であるから、そうした設備ができないために、海上保安庁の機能を十分発揮することができない。そういうことから遭難が多い、かように私は判断するのであります。そこで所管の問題でありますが、現在運輸省が所管しているように私は記憶しております。こうしたような非常に重大な使命を持つているところ海上保安庁を運輸省に所管さしておくことがいいか、私から言わせますと、これは水産庁、すなわち農林省と運輸省との共管でなければならないと考えるけれども、どちらもなわ張り争いをすることは、かえつて結果においておもしろくないことができると思うので、所管の問題について、むしろ総理府直属にして、海上保安庁が独自の立場において、縦横無尽に自分の機能を発揮して行くような機構にし、さらにこれに十分な予算を与えて、年間三千と五千に近いところの遭難を防止する、最後にはほとんど皆無にするというところまで持つて行かない限りは、実際に今後われわれが海上の保安のために尽したことが現われないということも考えますので、せつかく海上保安庁ができたのでありますから、それは大いにわれわれが検討すべきではないか、こういうことを考えておる。と同時に、まずその問題よりも、予算を十分裏づけをし、機構の拡充強化をはかつて、海難の防止に万全を期すということでなければならないと考えますので、委員長並びに水産庁長官におかれましては、運輸省ともよく相談をしまして、まず先に設備と機構の改革をする、それに伴うところの予算は大いに拡充して万全を期してやるという方向に進められんことを特に要望して、私の質問を終ります。
  42. 林好次

    ○林(好)委員 水産庁長官簡單に伺いたいと思うのでありますが、新しい漁業法の実施によりまして、大きな制度改革を行つておるわけでございます。従いまして、これらの大きな仕事を行いますのに、海区調整委員及び内水面の漁場管理委員会におきましては現地の調査をやらなければならぬし、また数回の会議もやらなければならぬのでありますが、国の二十五年度におきまするこれらの予算ではまことに僅少でございまして、地方におきましては、あの法に命じております広汎な仕事を実施するのには、まつたく金がなくて、仕事ができないというような現況であります。先般私は北海道に帰りまして、内水面の漁場管理委員会にオブザーヴアーとして出席をいたした次第でありますが、保護河川の設定にあたりまして、いろいろ特殊の事情のある河川がございまして、現地調査をしなければならぬ箇所が四、五箇所あつたのであります。しかしながら現地に調査に行きます旅費がないということであります。従いまして、道庁の課長が上京いたしまして、いろいろ水産庁にも交渉をいたしておるはずでございますが、まだ現在の段階におきましては、その解決、見通しもついておらぬという状況でございまして、これではこの大きな制度改革の仕事は完全に実行できない、かように私は考えております。昨日も北海道庁から、これらの費用は全額国庫負担であるのだから、ぜひ増額するように努力してくれ、このような電信が参つておるわけでありますし、先般水産部長が参りましたときも、北海道から出ております水産委員に対しまして、そのことをお話をして行かれたわけでありまして、この点につきまして水産庁として何か増額の方法考えておられるかどうか。聞くところによりますと、二十六年度におきましては増額を要求しておられるわけでありますが、しかし二十六年度よりもむしろ、基礎的な案をつくりますのに二十五年度の仕事がまことに重大である、かように私は考えておるのであります。長官の御意見を伺いたいと思います。
  43. 家坂孝平

    家坂政府委員 まず石原委員からお話のありました点につきましてお答えを申し上げる次第であります。実は漁船の遭難につきましては、取締りの関係もありますので、平素から保安庁と緊密な連絡をとりまして、しさいにわたることなどもよく御相談を申し上げて、非常に円滑に進んでおる状態であります。それでただいま保安庁次長からもお話がありましたように、現状におきましては、保安の私設もなかなか十分にやつて参れません。結局予算というような問題が重大な要因となることでありまするので、前の荒廃漁場の問題などの場合とともに、お互いに緊密なる連絡を結びまして、この予算の獲得に邁進して参つたのでありまするが、今後もこの方法を続けまして、十分施設その他の問題につきまして、拡充強化できるように私どもも御協力申し上げて参りたい、かように私えております。  それから水産庁といたしましては、遭難防止に関連いたしまして、小型漁船の乗組員の教育というようなことも非常に大きな関係がありまするので、漁船船員の養成という問題につきまして十分意を用いて参りたい、かように考えております。また今度法が改正になると思いまするが、小さい漁船にまで相当の技術を持つた者を乗せたいということで、試験制度などの改正もあるかと思いますので、これにも備えて参りたいと考えております。  それから林委員お尋ねの点につきましては、まつたく私どもも遺憾に存じております。二十五年度におきましては、今までこれは地方庁への委託費で全部をまかなう、こういう法の精神となつてつたのでありますが、これではどうしても海区委員会あたりの成績を上げることができないという実情が非常にはつきりして参りましたので、これを委託費でなしに補助費にかえまして、できるだけの補助が県からもできる、そういうふうにかえて進んで行きたいと考えております。二十六年度につきましては、林委員からお話のありましたように、若干の増額は考えられております。
  44. 林好次

    ○林(好)委員 そういたしますと、法の改正をして、地方費から出すようにするとおつしやるのですか。法の改正が、行えれば国が全部負担することになつておるのでありますから、国が負担することは私は当然であると考えますけれども、しかし二十五年度の予算において増額ができない場合には、法の改正をしなければ、地方費からは出せないことになつておるのでありますが、法の改正を本国会に御提案なさる御意見がありますか伺いたい。
  45. 山本豊

    山本(豊)政府委員 今の点私もしつかり聞いてないのですが、大体法律改正を要しないで、その点はできると思います。長官はまだこれからするようにおつしやいましたが、すでに通知は行つておるわけであります。従つて制度の上からは、現在でも道なりあるいは府県で出せるわけであります。しかしもともと全額国庫が持つべき性質のものであると思いますし、そうは言つても地方費でまかなうのもたいへんでございますから、やはり元金になる国の補助金をとれるだけふやしたいという点は考えておるわけであります。二十五年度といいましても、その時期もあと一箇月ばかりでございますから、なかなか困難と思いますが、二十六年度は若干でありますけれども、一応ふえるような予算になつておりますし、さらにわれわれの考えとしましては、二十六年度の追加予算かなんかの機会に、これを大幅にひとつ取出してカバーして行きたい、こういうふうに考えております。
  46. 林好次

    ○林(好)委員 水産庁から通牒を出しておられることはよく承知しております。しかしながら地方財政ももちろん苦しいこともありましようけれども、北海道の庶務課長はなかなか敏捷であつて、法の建前から行きますと、どうしても道費からは出せないということであります。道費から通牒によつて出ているのであれば、このような御質問は申し上げないわけであります。どうしても道費から出ませんので、この大きな制度改革の仕事に非常な支障を来す、このような心配から申し上げておるわけでありまして、水産庁から通牒が出ていることはよく承知しております。しかしこの法から参りますと、結局地方費から出せないということになつているものでありますから、実は困つておるわけであります。ですから、やはり地方費の平衡交付金かうでも出せるということになれば、結局法の改正をしなければ、実際問題として出ないですね。そういうことで北海道は非常に困つておるわけであります。これは内地の府県はどうか知りませんが、北海道は、実際に道費からはいくら交渉しても出ないわけであります。従つて仕事に大きな支障を来しておるわけでありまして、あるいは一時ほかから借入金でもしてやつているように私は考えておるのであります。やはり道費、地方費からはつきり出せるような方法をぜひ講じていただきたい、かように考えるものであります。
  47. 冨永格五郎

    冨永委員長 この場合委員諸君にお諮り申し上げます。国際捕鯨条約加入に関する資料は、一括して各位のお手元に御配付申し上げてございますので、本日のところこれを一応ごらんくださいまして、次会に当局から説明を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  本日はこの程度にて散会いたします。     午後零時三十二分散会