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1951-05-17 第10回国会 衆議院 人事委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十七日(木曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長代理 理事 藤枝 泉介君    理事 田中 重彌君 理事 淵上房太郎君    理事 松澤 兼人君       足立 篤郎君    加藤隆太郎君       塩田賀四郎君    田中  豊君       藤井 平治君    西村 久之君       中曽根康弘君    成田 知巳君       八百板 正君  出席政府委員         人事院事務官         (事務総局給與         局次長)    慶徳 庄意君  委員以外の出席者         專  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 五月七日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として八百  板正君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員梨木作次郎辞任につき、その補欠として  河田賢治君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員河田賢治辞任につき、その補欠として加  藤充君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二日  二川町の地域給指定に関する請願八木一郎君  外二名紹介)(第一六七三号)  福江町の地域給引上げ請願八木一郎君外二  名紹介)(第一六七四号)  田原町の地域給引上げ請願八木一郎君外二  名紹介)(第一六七五号)  徳山市の地域給引上げ請願今澄勇紹介)  (第一六七六号)  中津町の地域給引上げ請願加藤鐐造君紹  介)(第一六七七号)  丸亀市の地域給指定に関する請願(田万廣文君  外一名紹介)(第一六七八号)  郵政省職員特別俸給表制定に関する請願(淺  沼稻次郎紹介)(第一六九七号)  同(椎熊三郎紹介)(第一七三一号)  延岡市の地域給引上げ請願渕通義紹介)  (第一七〇三号)  志段味村の地域給引上げ請願早稻田柳右エ  門君紹介)(第一七一九号)  安浦町の地域給指定に関する請願宮原幸三郎  君紹介)(第一七二〇号)  川尻町の地域給指定に関する請願宮原幸三郎  君紹介)(第一七二一号)  千葉市の地域給指定に関する請願松澤兼人君  紹介)(第一七四六号)  土岐郡下の地域給引上げ請願加藤鐐造君紹  介)(第一七四七号)  多治見市の地域給指定に関する請願加藤鐐造  君紹介)(第一七四八号)  臼杵市の地域給指定に関する請願村上勇君紹  介)(第一七四九号)  益田町の地域給存続請願中崎敏紹介)(  第一七七三号)  江津町の地域給存続請願中崎敏紹介)(  第一七七四号)  飯田村の地域給指定に関する請願神田博君紹  介)(第一七七五号)  奈良尾町の地域給引上げ請願西村久之君紹  介)(第一七七六号)  多度津町の地域給指定に関する請願(田万廣文  君外一名紹介)(第一七七九号) 同月十三日  鵜沼町の地域給指定に関する請願武藤嘉一君  紹介)(第一八一一号)  枕崎市の地域給指定に関する請願床次徳二君  外一名紹介)(第一八二四号)  上下町の地域給指定に関する請願平川篤雄君  紹介)(第一八二五号)  佐野町の地域給指定に関する請願塩田賀四郎  君紹介)(第一八二六号)  都志町の地域給引上げ請願塩田賀四郎君紹  介)(第一八二七号)  生穗町の地域給指定に関する請願塩田賀四郎  君紹介)(第一八二八号)  伊万里町の地域給引上げ請願保利茂君紹  介)(第一八二九号)  倉敷市の地域給指定に関する請願星島二郎君  外一名紹介)(第一八三〇号)  山崎町の地域給存続請願大上司紹介)(  第一八七三号)  坂越町の地域給引上げ請願大上司紹介)  (第一八七四号)  相生市の地域給指定に関する請願大上司君紹  介)(第一八七五号)  有年村の地域給指定に関する請願大上司君紹  介)(第一八七六号)  上郡町の地域給指定に関する請願大上司君紹  介)(第一入七七号)  鹿兒島県下地域給指定に関する請願(二階堂  進君外一名紹介)(第一八九〇号)  広石村の地域給引上げ請願塩田賀四郎君紹  介)(第一八九一号)  鮎原村の地域給引上げ請願塩田賀四郎君紹  介)(第一八九二号)  堺村の地域給引上げ請願塩田賀四郎君紹  介)(第一八九三号)  山田村の地域給引上げ請願塩田賀四郎君紹  介)(第一八九四号)  鵜方町の地域給指定に関する請願中村清君紹  介)(第一九〇一号)  揖西村地内農林省兵庫種畜牧場職員地域給指  定に関する請願松澤兼人紹介)(第一九〇  八号)  那加町の地域給指定に関する請願武藤嘉一君  紹介)(第一九〇九号)  南松浦郡下の地域給指定に関する請願西村久  之君紹介)(第一九一五号)  魚目村の地域給引上げ請願西村久之君紹  介)(第一九一六号)  若松村の地域給指定に関する請願西村久之君  紹介)(第一九一七号)  奈良尾町の地域給引上げ請願西村久之君紹  介)(第一九一八号)  北魚目村の地域給引上げ請願西村久之君紹  介)(第一九一九号)  伊部町の地域給指定に関する請願大村清一君  紹介)(第一九三五号)  片上町の地域給指定に関する請願大村清一君  紹介)(第一九三六号)  串木野市の地域給指定に関する請願)(床次徳  二君紹介)(第一九三七号)  須坂町の地域給存続請願田中重彌君紹介)  (第一九三八号)  安登村の地域給指定に関する請願中川俊思君  紹介)(第一九三九号)  唐津市の地域給存続請願保利茂紹介)(  第一九五四号)  愛川町の地域給引上げ請願(小金義照君紹  介)(第一九五五号)  長崎市の地域給指定に関する請願岡西明貞君  紹介)(第一九五六号)  丸亀市の地域給指定に関する請願島田末信君  紹介)(第一九五七号)  内海町の地域給指定に関する請願玉置實君紹  介)(第一九七一号) の審査を本委員会に付託された。 三月三十一日  矢本町の公務員地域給支給に関する陳情書  (第四九  〇号)  西大寺町の地域給指定に関する陳情書  (第四九四号)  京都府の勤務地手当切下げ反対に関する陳情書  (第五一六  号) 四月六日  公務員の新退職給與制度確立に関する陳情書  (第五五九号)  呉市の地域給に関する陳情書  (第五六一号)  釜石市の地域給指定に関する陳情  書(第五七三  号)  西浦町の地域給引上げに関する陳情書  (第五七九号)  公務員給與ベース改訂に関する陳情書  (第五九八号) 五月四日  長崎南松浦郡全五島の地域給指定に関する陳  情書  (第六一四号)  栃木県下の勤務地手当地域給指定に関する陳情  書(第六  五六号)  玉野市の地域給引上げに関する陳情書外三件  (第六六八号)  薪炭手当支給に関する陳情書  (第六七六号)  松島地区地域給指定に関する陳情書  (第六八一号) 同月十二日  深堀、香焼両村の地域給指定に関する陳情書  (第七二六号)  初瀬町の地域給引上げに関する陳情書  (第七三〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国家公務員災害補償法案内閣提出第六八号)  (予)     ―――――――――――――
  2. 藤枝泉介

    藤枝委員長代理 これより人事委員会を開会いたします。  委員長がおさしつかえがありますので、しばらくの間私が委員長の職務を行います。  本日は国家公務員災害補償法案内閣提出第六八号、予備審査を議題といたします。  まず最初に本法律案内容について政府より説明を聽取いたしたいと思います。慶徳政府委員
  3. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 この法案逐條説明に入ります前に、この法律案に対する大体の構想簡單に申し上げまして、その後に各條文に対する重要なポイントにつきまして御説明申し上げたいと存じます。  この法律案構想の第一の点といたしましては、従来たくさんの法令によつて実行されておりました補償制度を一元化いたしまして、さらにまた国たる使用主の無過失損害賠償責任制度を確立するというのが第一点であります。従来の制度におきましては、たとえば官吏療治料であるとか、巡査、看守療治料であるとか、あるいは雇員扶助令傭人扶助令というふうな多種多様の法令によりまして、しかもまた官吏雇用人とが法令の基礎におきましても、また補償内容におきましても、差別待遇を受けておるというようなかつこうに相なつておつたのであります。さらにまたこれの補償内容といたしましても、あるいは扶助であるとか、あるいは給與とかいうふうな言葉を使いまして、いかにも恩惠的な給與でありまして、各職員権利として認めるがごとき法体系を持つていなかつたのであります。今回これらの各種各様法令を廃止いたしまして、提案いたしておりまするところの法律に一元化いたしまして、新しい法律に基きまして完全に損害賠償責任制度を確立いたしまするとともに、一般公務員に対する権利としてこれを認めて行こうというのが第一点でございます。  第二点といたしましては、補償決定に対する苦情処理制度を設けた点でございます。先ほど申し上げましたごとく、一般職員権利といたしまする以上は、その権利に対する不平不滿苦情というようなものにつきまして、権利保護の万全をはかることが当然であるのでありますから、従来の制度におきましては、苦情処理機関が全然設けられておらなかつたので、今回新たにこの制度をつくりまして、いわゆる民主的な補償制度運営をはかろうといたしました点が第二の点でございます。  第三の点といたしましては、補償制度それ自体官民ともに大体同じ基準において行つて行こうというふうに考えた点でございます。先ほど申し上げましたごとく、事業主損害賠償責任という観点において考えましたごとく、あるいは民間の事業主であろうとあるいは国たる使用主であろうと、損害賠償責任という観点におきましてはまつたく同一であろうという考え方に立脚いたしまして、大体におきまして労働基準法、あるいは労働者災害補償保険法というようなものと、その精神内容におきまして軌を同じゆうするというやり方をとつたのであります。従いまして公務員に対する特殊性という問題が当然考えられなければならない点があるのでありますが、その特殊性に基く措置につきましては、やがて新しく立法化されるでありましようところの恩給制度等におきまして十分考慮することといたしまして、補償制度はいわゆる官民パーという原則に立ちまして考えたのでございます。  第四の点といたしましては、補償に対する金品につきまして非課税という制度を確立いたしました点でございます。従来は補償に対する課税問題につきまして、法律的にきわめてあいまいでございまして、所得税法にございまするところの損害賠償解釈によりまして、かろうじて非課税所得というような扱いをやつて来たのでありますが、何分にも解釈に基くところの運用の問題でありまするので、中央方面におきましては意見が一致いたしましても、各地方に散在する現実の姿といたしましては、ことごとにいろいろの問題があつたのであります。今回法案におきまして明確にこの点を立法いたすことによりまして、従来のごたごたも解消いたしまするし、はつきり非課税であるという制度を確立することといたしたのでございます。  第五番目の点といたしましては、新たに補償制度に関する総合調整機関を明確にうたつたという点でございます。従来は先ほど申し上げましたごとく複雑多岐各種法令によりまして、しかも各地区が思い思いの運営をやつて参つたのであります。これに対する全般的な総合調整機関ももちろんなかつたのであります。従いまして公務障害認定の問題にいたしましても、あるいは平均給與額計算につきましても、あるいは補償実行の面におきましても、非常に各省庁間におけるアンバランスがあつたのであります。今回人事院が全体の総合調整をなす責任機関といたしまして、その人事院総合調整のもとに各省各庁が実施事務に当るというような制度を確立することによりまして、従来のばらばら、あるいはアンバランスというような点も是正されまして、公正な運用ができるものと期待いたしておるのであります。さらに総合調整機関を設置するのに関連いたしまして、補償制度裏打ちとなりまするところの予算上の問題につきましても、たとえば昭和二十四年度の予算について申し上げますると、一般会計特別会計を通じまして、わずかに補償に要する経費といたしまして三千万程度の予算が計上されておるにすぎなかつたのであります。それを本年度の予算におきましては、二億七千万円に増加いたしまして、先ほど申し上げました総合調整と、さらに補償裏打ちとなりまするところの予算との調和によりまして、より以上公正な運営ができるような仕組みにいたしたのでございます。  大体全体の構想といたしましては、以上の五点にわけて申し上げることができようと考えます。  これから逐條につきまして、問題点につきまして簡單に御説明申し上げたいと存じます。  この法律案は、全体の構想が四章にわかれておりまして、法文は三十四條、附則は十項から成り立つております。  まず第一條の、この法律目的及び適用範囲であります。目的につきましては、すでに国家公務員法第九十三條から九十五條規定によりまして、その大きな精神がうたつてございます。すなわち無過失損害賠償責任という観点に立ちまして公務員法自身もでき上つておるわけであります。この精神目的に従いまして立法いたしたのでございます。適用範囲につきましては、原則といたしまして一般職に属する職員でございまするが、その中に、船員につきましては、現在船員保険法適用を受けておりまするのに関連いたしまして、船員保険法によるやり方をとりました方が本人にとりまして有利でございまするので、この法律から適用を除外いたしまして、従前同様船員保険法適用によりまして災害補償をやつて行くというやり方をとつたのでございます。それから未復員者及び特別未帰還者につきましても適用除外をいたしたのでありますが、これらにつきましては、すでに立法されておりまするところの未復員者給與法、さらに特別未帰還者給與法によりまして補償に相当する給與が行われることに相なつておりまするので、その法律に基いて実行するために適用除外といたしたのでございます。  次に第二條は、人事院の権限を規定したのでございますが、先ほど申し上げましたごとく、総合調整責任機関を明確にうたつた規定でございます。  第三條は、補償実施機関に関する規定でございます。書いております條文は「人事院が指定する国の機関」というふうに書いておりますが、実際の実行面におきましては、ちようど給與に関する実施機関各省各庁でありますのと同じように、この法律によりますととろの指定する国の機関も同じような考え方をもちまして定めて行きたいというふうに考えております。さらに実施機関の行いますところの補償事務範囲でございますが、これも人事院規則によりまして定めることに相なつております。療養実施なり、補償金額決定あるいは支払い、公務障害認定というような実施面に関する仕事の一切は、実施機関におやり願う考えを持つております。すなわち人事院において定めますところの総合調整による人事院規則あるいは指令、細則等によりまして各実施機関運営していただくという構想に相なつております。  第四條は平均給與額でございます。平均給與額に関する規定は、この法律建前といたしましてきわめて重要な條項でございます。まず労働基準法との比較につきまして簡單に申し上げてみたいのでありますが、考えておりますところの精神におきましては、労働基準法とまつたく同じ精神のもとに考えたのでございます。すなわち災害の発生いたしました日の前三月間平均によりまして、その額を平均給與額にするという点につきましては、基準法精神とまつたく同様でございます。ただ国家公務員の場合におきましては、それぞれの給與法におきまして、明確に給與体系が定められておりますので、労働基準法において定められていますがごとき抽象的な文句ではなく、その給與範囲を明確に規定いたしてございます。従いまして超適勤務手当とか、あるいは特殊勤務手当石炭手当寒冷地手当というようなものの一切を含めることといたしまして、現在の給與体系から除外されますのは年末給だけという考え方とつております。さらにこの第四條の第四項の規定が重要な規定と思つておるのでありますが、特にこの中で平均給與額計算いたしました場合において、著しく公正を欠く場合におきましては、人事院規則をもつて平均給與額計算方法を定めるというような規定を設けてございます。このような規定労働基準法におきましては全然ない規定でございます。考えておりますところの代表的なことを申し上げますと、ベース改訂になりましたような場合におきましては、この條項の発動によりまして、新しいべースによつて計算して行こうという考え方とつております。大体この第四條に流れておりますところの根本の考え方が、経済界が安定いたしました場合の恒常的立法という前提に立つておりますので、経済界が安定いたしましたような場合においては、現在見るがごときひんぴんたるベース改訂というものはないであろう。従いまして災害発生の日にさかのぼる三月間平均によりまして平均給與額計算することそれ自体が、経済界の安定したあかつきにおきましては、適正であろうという考え方とつておるのでありますが、現在のような段階におきましては、ひんぴんたるべース改訂等がございますので、先ほど申し上げました公正を欠く場合という條項運用によりまして、経過的な運行をはかつて行きたいというふうに考えておる次第でございます。  ずつと飛びまして第七條規定でございます。第七條規定におきましては「離職した場合においても、補償を受ける権利は、影響を受けない。」というふうに書いてございます。すなわち災害を受けまするのは在職中でございます。ところが何かの都合等によりまして、どうしても退職することを余儀なくされましたような方もあるあけでありますが、そういうような場合におきましても、この法律に定めております一切の補償が、退職後においてもその権利を保障する言葉をかえて申し上げますと、退職後におきましても、在職者とまつたく同様の権利保護して行こうという考え方でございます。従いましてそういう権利保護という観点におきまして、あるいは讓り渡し、担保に供し、差押えることもできないというよな條項を設けておる次第でございます。  第十條は療養補償に関する規定でございます。  さらに第十一條療養範囲に関する規定でございます。療養補償につきましては、いわゆる現物給付現金給付の二本建を考えております。病院等によりまして、直接療養補償いたします場合がいわゆる現物給付でございます。ところがいつも病院のみにかかることが不可能の場合もございまするし、いろいろの関係からいたしまして、いわゆる一般開業医師に診療をしていただきまして、それから現金療養補償を受けるというような場合もございますので、いわゆる現金給付方法もあわせて考えることといたしたのでございます。療養範囲につきましては、実はいろいろ問題があるのでありますが、これらの運営につきましては、すでに労働基準法あるいは労働者災害補償保険法等におきましていろいろの先例ができ上つておりますので、それらの先例を十分参酌し、かつまた一方国家公務員にふさわしいところの條件も加味いたしまして、合理的な管理、運営をやつて行きたいというふうに考えておるわけでございます。  第十二條休業補償でありますが、従来の官吏あるいは雇用人につきましても、現在給與法におきまして俸給表適用を受けております人々につきましては、従来の官吏俸給令というものがいまだに残つております。その官吏俸給令によりまして、公務傷病のために休んでおる期間は、俸給全額支給するという建前とつております。さらにまた扶養手当勤務地手当等につきましても、人事院規則によりまして、俸給と同じようにその全額補償するという建前とつておりまするので、第十二條休業補償に該当いたしまするものは、俸給表適用を受ける者は実質的に該当はしないであろう。従いまして日々雇い入れる者とかいうような、いわゆる非常勤職員に限りまして、この條項が実質的に適用に相なるであろうというふうに考えております。  第十三條の障害補償でございますが、障害補償に対するやり方は、まつたく労働基準法と同様でございます。  次に遺族補償の第十五條でございます。これも労働基準法と大体において同じでございますが、きわめて事務的に見まして、部分的にかわつておるところがございます。要すれば考え方といたしましては、従来の制度に見られたがごとき、單なる形式上の関係から遺族範囲をきめるという考え方を捨てまして、実質的に本人の手によりまして扶養を受けておる者を優先的に遺族として補償して行こうという考え方とつておりまするので、本人收入によつて生計を維持するものが非常に先順位なつております。形式的にあるいは子であり父母でありましても、本人收入によつて生計を維持しておらないような方々は、一番最後のいわゆる後順位であるというようなやり方とつにおるわけであります。葬祭補償につきましても、これは労働基準法とまつたく同様でございます。  次の第十九條の打切補償でございますが、もちろんこれも労働基準法法形式におきましてはまつたく同じでございます。ただ運用心構えといたしましては、この條項にも打切補償をすることができる、いわゆるできると書いてございます。従いまして考え方といたしましては、完全になおるまで療養補償を行いまして、できる限り第十九條の打切補償運用をしないような心構えで考えて行きたいというふうに思つております。従いまして打切補償條項が発動されますのは、よくよくの例外の場合以外にあり得ないであろうという考え方とつておる次第でございます。  次の第二十條の補償分割であります。補償分割に対する精神は、労働基準法とはたいへん違つております。御承知の通り労働基準法は、むしろ事業主負担力の軽減、あるいは負担力観点から見た分割補償というような観点に立つて立法しておるのでありますが、国家公務員の場合においては、国という大きな経済主体でありますので、国たる事業主の面から考える必要はほとんどないであろう、むしろ補償を受ける者の側の便宜の観点から考えることが適当とするのではなかろうか。たとえば不幸にして本人公務災害を受けまして死亡いたしましたような場合に、その配偶者遺族補償を受けるというようなことになつた場合を仮定いたしますると、何といたしましても一時に数十万円という金がころがり込んで参りまするので、従来のいろいろの例から見ても、とかくあちこちからせびられまして、配偶者自身が非常に不幸な立場に追いやられるというような場合も、えてして多いというような現実の姿が一面にございまするので、もつぱらそういう場合の保護といいますか、救済というような観点におきまして、この法律規定いたしてございます。  次の第二十一條補裝具支給であますが、労働基準法におきましては、補裝具支給につきましては福祉施設範囲の中におきまして運用上の手心としてやつておるのであります。この法律におきましては、そのやり方はあまり感心しないと思いまするので、補裝具支給という一箇の條文を明確に起しましてやることにいたしてございます。  ずつと飛びまして、第三章二十四條以下の審査規定でございます。これは冒頭に申し上げましたごとく、本人権利として認めます以上は、当然苦情処理機関を設けるととがあたりまえと考えまして、このような規定を設けた次第であります。あとは大体におきまして労働基準法及び労災法との関係、釣合いを考えまして規定した條項でございます。  ずつと飛びまして、第三十三條、予算の計上の点につきまして簡單に触れてみたいと存じます。この規定に書いてありますがごとく、人事院の統計的研究の結集に基いて、補償に関する予算を計上するという特殊の條文を設けてございます。冒頭において御説明申し上げましたように、とかく従来は無計画に予算化されるという面もなかつたわけではありませんが、とにかく損害賠償責任という観点に立ちますところの補償制度といたしましては、でき得る限りその実行を円滑になし得るところの予算上の裏打ちということが、きわめて重要な要素をなすのであろうと考えます。ところが従前は何分にも各庁ばらばらでありまして、全体を総合する何ものの機関もございませんでしたので、予算計上におきましても思うように行つていなかつた点が多々あつたのであります。従いましてこの法律におきましては、総合調整機関であるところの人事院の研究調査の結果の資料に基いて予算を計上いたしまして、補償実施の万全をはかつて行きたいという、特別の條項を一本うたつておる次第でございます。  その次は附則の方に行きまして、いろいろな規定があるのでありますが、冒頭に申し上げましたように、従前の法令を全部廃止いたしまして、この法律に一本に統合するためにたくさんの法令を廃止いたしております。大体法律案のおもな事項につきましては以上でございます。
  4. 藤枝泉介

    藤枝委員長代理 政府の説明は終りました。続いて質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。松澤兼人君。
  5. 松澤兼人

    松澤委員 二、三の総括的な点につきまして御質問申し上げたいと思います。  第一は恩給法の改正と申しますか、新しい恩給法はいつごろ提案される予定でございますか。マイヤースの勧告というものを拝見しておりますが、これがほんとうに法律なつて国会の審議を受ける時期はいつごろのお見込みでございますか。これを第一に承つておきたいと思います。
  6. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 新しい恩給制度につきましては、国家公務員法第一七條及び第百八條にそれぞれ規定しておるのでありますが、特に人事院に対しまして、新しい恩給制度の調査研究をすみやかに行いまして、その成果を国会及び内閣に提出しなければならないという條項がございまして、新しい恩給制度に関する義務づけが人事院に課せられておるのであります。従いまして目下懸命の検討を加えておるのでありますが、でき得れば来るべき通常国会までに勧告をするというような心構えで、諸般の準備を行つております。もちろん来るべき通常国会に提案するという前提に立ちますると、予算との関係が出て参りますので、予算編成期前に人事院としての、いわば一種の決定版のようなものをつくる必要があらうというふうに考えております。従いましておそくとも七月ないし八月ごろまでには、人事院としての決定版をつくりたいという方針の下に、着々進行いたしておるのでございます。
  7. 松澤兼人

    松澤委員 新しい恩給法が国会に審議されるということになりますと、必然的に予算の裏づけが必要であると思うのでありまして、もちろん政府が補正予算を組まなければならない時期が差迫つていると考えます。そういたしますと、臨時国会において補正予算が審議されるそれ以前に、恩給法の新しい案が提出されるならば、できるだけすみやかにこれを実施に移すことができると考えるのであります。補正予算の時期に法案の提出が間に合うかどうか、この点さらに重ねて御質問申し上げます。
  8. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 私どもの方といたしましても、できるだけすみやかに成案を得たいというふうに考えておるのでありますが、何分にも実際の作業に入つてみますと、明治初年以来の長い沿革を持つ恩給制度でありまするし、さらにまた共済組合における長期給付も、当然新しい恩給制度に吸收、合併するというような問題もありまするので、実際その事務に入つてみますると、非常にむずかしい問題がたくさんございます。従いまして現在の進行状態からいいますと、補正予算までに人事院として勧告をするということには、ちよつと行きかねるのではなかろうかというふうに想像されるのじやないかと思います。
  9. 松澤兼人

    松澤委員 そういたしますと、なお念を押しておきまするが、人事院としては最後の決定版が七月あるいは八月にできる、できましたらさつそく勧告をされて、二十七年度予算に組み込むように努力をされる、あるいはそれに間に合うように勧告をされる、こういうように了解いたしてもよろしゆうございますか。
  10. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 大体におきまして、そういうふうに御了承願つてけつこうかと思うのでありますが、ただ何分にも国家公務員全体にわたる、いわゆる恒久立法でございますから、ただいま御質問のただちに勧告をするかどうかというような点につきましては、政府側ともいろいろ相談したいという一面を持つておりますので、勧告権を発動させるかどうかというようなことは、客観情勢も十分考えなければならないと思います。七、八月ごろに勧告をするということだけは、はつきりお答え申し上げることを留保さしていただきたいと思います。
  11. 松澤兼人

    松澤委員 勧告権の発動は留保さしていただきたい、こういうお話でありますが、いつも人事院が勧告をされる場合に、すでに予算が国会を通過したあとで勧告をされたりして、いろいろと手違いがあるのであります。勧告はいろいろな政治的な意味もありまして、ただちに勧告することができないような事情があるかもわかりませんが、案が出ましたならば、さつそく政府と折衝する段階に入らなければならないと思います。それには一応勧告という形で行いますか、あるいはまた人事院の成案として発表されるという形をとられるか、いずれにいたしましても、できましたものはできるだけ早くそれを基礎として政府との折衝なり、あるいはまた国会に案を審議ざせるなり、あるいはまた一応の案の内容を説明されるなりいたしまして、すみやかに実施に移されるような方法を講ぜられることが適当であると思うのでありますが、予算はできてしまつて、勧告はそのあとからできるというような不手ぎわを繰返されるということを私は心配いたしますので、この点、政府との折衝がいつごろ、どういう形において行われるか、もう一度承りたいと存じます。
  12. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、七月または八月ごろまでに成案を得まして、その得ました成案に基きまして、第一次的に政府側と折衝いたしたいと考えております。その折衝の経過のあるいはいきさつ等の結果によりまして、はたして勧告になるかどうかという点は、情勢を見きわめてやりたいというふうに考えております。
  13. 松澤兼人

    松澤委員 ただいまお話でよくわかりました。七月あるいは八月に成案ができたら第一次の折衝を行う、さらにその折衝の結果を見て、勧告の時期をきめるということで、よくわかりました。  希望でございますが、これが一日も早く実施されるためには、万全の措置を講じて予算編成にはずれないようにひとつ御努力を願いたいと存じます。  第二にお伺いいたしたいことは、いわゆる社会保障制度というものが一応の案ができて発表になつております。私どもは一日も早くゆりかごから墓場までという社会保障制度の理想が実現されることを希望し、また努力しているものでありますが、この社会保障制度という一つの大きな構想と、そうしてこの公務員災害補償法との関係、全般的な意味におけるお考えを承りたいと存ずるのであります。言いかえてみますならば、社会保障制度の一環としてもちろん公務員災害補償法というものが構想せられておるととはよくわかるのでありますが、あるいは社会保障制度でうたわれておる構想から、さらにこの公務員災害補償法がすぐれている点であるとか、もしくは行き足りない点であるとかいうような点につきまして、その連関において、どういう精神で、もしくはどういう内容においてこの公務員災害補償法が立案せられたかという大きな観点からお話を伺いたいと存じます。
  14. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 仰せのごとく、社会保障制度との関係につきましては、当然国家公務員としても十分考えなければならない問題であろうと考えております。申すまでもなく、国家公務員でありましても、一般国民でありますので、憲法第二十五條の健康にして文化的な最低生活を保障するという観点において立法されますところの社会保障制度のらち外であり得ないということは、むしろ当然とするところであろうかと考えます。  ただ基本的にはそういう理論になろうかと思うのでありますが、現在の社会保障制度は、社会保障制度審議会から勧告されたのみでありまして、これを具体的に政府がどう取上げるかという具体的方針もきまつておりませんので、いわば現在の段階におきましては、まだ成文化されていない、社会保障制度ができるまでの一つの過程的現象であるというようなかつこうになつているのが現在の姿であろうかと存じます。  ところが国家公務員法におきましては、もうすでに成文化されまして、災害補償制度に関する規定法律をもつて定めなければならないというふうに明確に定められておりますので、この條項に基きましてとの法案の作成をやつた次第でございます。従いまして社会保障制度審議会から勧告されておりまするところの社会保障制度が実を結びましたあかつきにおきましては、その社会保障制度とこの補償法との間におきまして、合理的な調整をはかる必要のあることは当然であろうかというふうに考えておる次第でございます。
  15. 松澤兼人

    松澤委員 次に労働基準法との関係でありますが、大体において、労働基準法の立法の精神というものにのつとつてこの法律ができているということは了解できたのであります。しかし最近におきまして、リッジウエイ声明に便乘いたしまして、いろいろ労働法規の改悪ということが問題になつているのであります。特に労働基準法は、保守的な立場や、あるいはまた資本家的な立場にある人々から、相当に攻撃を受けていることは事実であると思います。従いまして労働基準法の行き過ぎというものを是正しなければならないという空氣が、一方において起つているのであります。しかし私どもは、労働基準法はやはり経済界における民主的な考え方の一つの現われとして、従来の工場法や、あるいはその他のそういう精神によつてできておりました労働者の福利的な法律が、まつたく新しい見地に立つてできたというふうに考えておりますので、これは決して行き過ぎである、つまり経営者側にとつて、負担にたえられない労働者側の保護法であるというふうには考えておらないのでありますが、もし万一リッジウェイ声明からいろいろと国内において法律の改廃などが行われた場合に、具体的に労働基準法が現在の標準を下げて、保護的な面を引下げるというようなことがありました場合に、公務員災害補償法はどうなるか、これはもちろん仮定の問題でありますが、そうなつた場合の国家公務員災害補償法というものがどうなるかという点について、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 たとい労働基準法がいかように改正になりましても、いわゆる労働者に対する最低基準を保障するところの制度であるという根本は、おそらくかわらないであろうという前提に立ちましてお答え申し上げたいと存じます。そういう前提に立ちますると、あくまでも最低という線でございまするので、言うまでもなく国たる使用主は、模範的使用主として給與なり、補償なりその他の面において、十分考える必要があろうかと思いまするので、その場合におきましては、模範的使用者として十分取入れられるところの考え方に基きまして、合理的な結論を求めたいというふうに考えます。
  17. 松澤兼人

    松澤委員 そういたしますと、仮定でありますけれども、たとい労働基準法がその標準を引下げるといつた改悪が行われるような場合にあつても、国家公務員法精神に立脚して、公務員災害補償法というものは絶対に引下げない、この法律内容で行くという、そういう自信があるように承つたのでありまするが、そう了解してもよろしゆうございますか。
  18. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 どうも仮定の問題でございまするので、たいへんお答えしにくいのでございますが、要するに結論といたしまして、労働基準法が最低保障を前提としました立法でありまするならば、国たる使用主は、いついかなる場合においても、最低の線のみでやらなければならないという制約もないはずでございます。従いましてその場合には、模範的使用主という観点に立ちまして、そのできた結果に応じまして、十分考慮いたしたいたいとうことでございます。
  19. 松澤兼人

    松澤委員 仮定でありますから、もちろんお答えしにくいことはよくわかつています。大体においてこの国家公務員災害補償法が労働基準法精神に立脚している、密接な連関を持つている、こういうふうに了解いたしますので、労働基準法の、われわれの言葉で言えぼ改悪でありますが、そういうことがあつて災害に対する支給が下つて来た場合、国家公務員は民間の労働者と違つて特別に保護すべき理由があるということであれば、民間の労働者に適用される労働基準法が下りましても、国家公務員災害補償という精神は下げるべきでないという結論が生じて来るわけであります。しかしこの法律一般労働者という見地から、一方においてその基礎をなしておる労働基準法が下つて来れば、必然的に国家公務員も労働者という立場で引下げなければならない、こういうお考えならば当然下つて来る、こう予想される。そこで形の上では労働基準法精神なり内容に立脚して、国家公務員災害補償法というものができているのであるけれども、国家公務員特殊性というものを十分にお考えになつているとすれば、たとい民間の労働者の保護規定がその標準を下げましても、国家公務員は下げるべきではないという結論が生じて来る。その点がよしんば仮定でありましても、人事院考え方においてはつきり違つたものがあれば、おのずから異なつた結論が生じて参ります。この点を承りたいと思つて、先ほどから質問しているのであります。
  20. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 たいへんむずかしい問題でございまするが、考え方いかんによりまして、いろいろの考え方が出て来るのではなかろうかと存じます。ただいま御審議願つておりますところの補償法におきましては、形式におきまして労働基準法と同じにして行こうという考え方とつております。将来ただいま御指摘になりましたように、もしかりに労働基準法が現在よりも低下するというような状態が出て参りました場合におきまして、また別な考え方考え方によつてはあり得るのではなかろうかということも、立法論として考えられると思います。たとえば、ただいま御指摘になりました公務員特殊性、しかし特殊性という観点のみでなくとも、たとえば民間におきましては、補償制度による補償のほかに、大体何がしかの金一封を出すというような慣習も、相当大きな民間企業においては行われておることも事実でございます。かように形式的な補償と実質的な補償と、両方使いわけて考えますと、必ずしも民間が下つたからといつて下げる必要がないというような立法論も出て来てるのではなかろうかと考えます。
  21. 松澤兼人

    松澤委員 それではその問題は一応その程度にしておきまして、次にお伺いいたしたいことは、国家公務員の特別職と現業の問題であります。地方公務員法におきまして、特別職及び公営企業の職員が地方公務員法からはずされたのであります。そして四企業は別に公共企業体労働関係法といつたような法律によつて規定せられるし、また單純労務に従事している現業的な人々は、これまた別の法律あるいは政令によつて、地方公務員法からはずされることになつたのであります。そこで国家公務員の特別職及び現業の問題につきましては、従前から種々問題があつたのであります。現在国鉄、專売は公社職員として国家公務員のわくからはずされましたが、なお電通でありますとか、あるいは郵政であるとかいつたような人々の中に、やはり特別職にしてもらいたいという強い希望があります。あるいはまた公社組織に移してもらいたいという希望がある。なおまた印刷庁の現業に従事している職員は、どこまでも現業というわくの中に入れてもらいたい、こういうことを言つて一般職からはずしてもらいたいという希望があるそうであります。こういうことを考えてみますと、国家公務員法における特別職、一般職ということが一応再検討される時期ではないか、こう考えるのであります。従いまして国家公務員として特別職のわくを広げるというお考えが、現在人事院の中においてあるかどうか、あるいはあるとすればどの程度一般職から切り離すか、その時期などについてお話を承りたいたいと存じます。
  22. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいま御指摘になりました現業方面等につきまして、特別職にしてほしいというような希望なり御意見なりが非常に強くなるということは、私どもの方としても十分承知いたしております。特に最近営林労務者につきまして、この問題が非常に強く問題にされておるという事実も十分承知いたしております。ただこれらの問題を、現在の国家公務員法を改正いたしまして、具体的にどう持つて行くか、どういうふうにやつたらいいかというような点につきましては、人事院といたしましてまだ結論的な方針は決定いたしておりません。
  23. 松澤兼人

    松澤委員 全然結論は出ておらないというお話でありますが、たとえば今申しました郵政、電通などの現業に携わつている人々、あるいはまた印刷庁の工場で働いておられる人たち、こういう人たちがはたして一般職として適用せられることが適当であるかどうかという点について、それでは角度をかえてお伺いいたしたいと思います。
  24. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 御承知の通り現在の国家公務員法は、マツカーサー元帥の書簡を中心として根本的に改正されました、その線にのつとつて施行されておるわけでございます。従いましてただいまの御質問は、根本的な考え方、マッカーサー書簡それ自体がどれだけ効力を持ち、力を持ち、尊重し、どういうふうにそれをあらためて、再検討すべきかという基本的問題にからみついて来る問題のように考えられるのでございます。従いまして人事院の現在の立場といたしましては、マッカーサー書簡によりましてでき上りました現在の国家公務員法、なかんずく特別職へ持つて行きました場合に、団結権なり、団体交渉権というようなことを必然的に持つことになるであろうという実際問題との関係を考慮いたしますると、どうしてもマッカーサー書簡の再検討というような問題にスタートを切る必要があるのじやなかろうかと思うのでございます。現在の考え方といたしましては、別に再検討というようなところまで、私らの方としては行つておりませんので、従つて具体的にお答え申し上げる域に達しておらないとでもお答え申し上げるよりほかないのじやなかろうかと存じます。
  25. 松澤兼人

    松澤委員 それでは問題をかえまして、この災害補償法は公務上の災害ということが中心であります。そこでお伺いいたしたいことは、公務上の災害という意味、あるいはその内容規定といとことはどういうふうにお考えになつておいでになりますか。実際の適用の面における人事院のお考えがどうであるかということを承りたいと思います。
  26. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 公務上の災害というものに対する、いわゆる定義づけというようなものは、この法律の中に別にうたつてはございません。別にうたつてはございませんが、たとえば恩給法であるとか、あるいは労働基準法であるとか、あるいは労働者災害補償保險法であるとかというような同種の立法がわが国におきましても古くから行われております。従いまして公務上の災害という考え方は、これら古くから行われておるところの立法例を通じまして、もうすでに一つの定義が不文律的に定められておるものと考えておるわけでございます。具体的に申し上げますならば、公務上直接災害を受けた場合、さらに公務上と相当因果関係をもつて起きた災害という解釈に相なつておるわけであります。これらの解釈運営につきましては、個々のケースによりましていろいろな場合が起つて来ることが想像されるのであります。それらにつきましては労働基準法、労災保險法等の先例を十分考慮いたしまして万遺憾なきを期したい、かように考えておる次第でございます。
  27. 松澤兼人

    松澤委員 この点につきましてはいろいろ前例も慣例もあるということでありますが、ごく簡單に、公務上の災害にはどういうケースがあるかという点について、ひとつ別に書類をもつてお知らせ願いたいと思います。もちろん机の上で事務とつていて、あるいは天井が落ちてけがをしたというようなことや、あるいはまたは現場の職員が機械的な原因によつて災害を受けたというようなことは、だれにもわかることでありますが、たとえば公務上道を歩いていて自動車にぶつかつたというようなことが公務上の災害になるのかならないのか、あるいはまた休憩時間でない勤務時間中に廊下を歩いていてけがをしたということは公務上の災害になるのかどうかというような、具体的な例及び公務上の災害とそうでない場合の限度に至るまで、どの程度いろいろのケースがあるかということを承つてみたいと思うのであります。これは具体的な問題でありますから、一応後に書類をもつてお知らせ願いまして、なお御質問申し上げたいと存じます。  なお委員長にお願いいたしたいのでありますが、いろいろ御質問申し上げたいこともありますけれども、一応本日の質問はこれで打切りますから、いずれまた機会をあらためて御質問をいたしたいと思います。
  28. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまの資料のお話でございますが、たとえば道路を歩いているときに傷害を受けた、あるいは執務時間中廊下を歩いているときに傷害を受けたというような、具体的の二、三の例をお示しになつたのでありますが、これは率直に申し上げまして非常にむずかしい問題でありまして、個々の問題につきまして公務上と相当因果関係があつたかどうかという認定の問題に必然入らざるを得ないのではなかろうかというふうに存じます。従いまして個々のこまかな具体的な資料の要求をされたようでございますが、現在私どもの持つておりまする資料は、各省ごとに従来どういう実績があつたか、どの程度の件数があつたか、さらにどの程度の金額の補償があつたかというような、全般的な資料は持つているのでありますが、御指摘になりましたような、個々のこういう場合はどうというような具体的な資料は、今ただちに差上げることはちよつと困難かと思うのでございますが、そういう程度でよろしゆうございますか。
  29. 松澤兼人

    松澤委員 私がそういう個々の具体的な例をあげたので、かえつて話がこんがらつたかもしれませんが、もちろん一応の書類を出していただけば、さらにまた私はこういう場合はどうかといつて御質問申し上げますので、その詳細なものはできないということになると、また議論しなければなりませんが、そういうところはお含みの上でお出しを願いたいと思います。
  30. 藤枝泉介

  31. 淵上房太郎

    ○淵上委員 松澤委員政府委員との質問応答で大体いろいろわかりました。なおこの機会に一、二お伺いいたしたいと思います。十二條の休業、補償の問題であります。これは平均給與額の百分の六十に相当する金額に限定されておるのでありますが、先ほどお話のように、主としては、実質的には非常勤職員支給されるというお話でありますが、百分の百を支給されずに、百分の六十とされた理由はどの辺にあるか、ちよつとお尋ねしたいと思います。
  32. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 災害補償自体につきましては、すでに御承知と思いますが、国際労働会議がありまして、国際労働会議に基くところの一つの條約として採択されております。その採択されました精神に立脚いたしまして、わが国における労働基準法等というものもでき上つているわけでございます。この休業補償の問題につきましても、国際労働会議において採択になりましたのが根本の思想でございまして、経常的に受けます給與の三分の二を補償するという国際労働会議の條約でございます。その精神にのつとりましてつくりましたのがやはり百分の六十ということでございます。ただその場合に俸給表適用を受けておりますのが百分の百と申しましたのは、わが国といたしましては、古くからそういう場合に百分の百をやるという法体系がすでにでき上つておりますので、それをしも百分の六十に下げますことは、いかにも既得権の侵害になるというような面等もございまして、百分の百の方はそのままといたしたのでございます。ただこの場合にもう一つつけ加えさしていただきたいと思いますることは、百分の百という方面は本俸、扶養手当、勤務地手当だけでございます。それに反しまして、こちらの百分の六十の方は、超過勤務手当、特殊勤務手当寒冷地手当石炭手当というような、いわば一切の給與を含めたものの百分の六十でございます。従いましてそこに一つの差がございます。もう一つは俸給等の金額をもらいまするときには、いわゆる給與としてもらいますので例の源泉課税の所得税及び地方税がすべて課税の対象に相なります。ところがこちらの百分の六十の方は全部非課税でございます。こういうことを全体的にながめますと、あまり大きな開きはないであろうというふうなこともちよつとつけ加えさせていただきたいと思います。
  33. 淵上房太郎

    ○淵上委員 逐條的にもう一つ二つお伺いいたしたいのですが、二十五條に「労働者災害補償保険審査官若しくは労働者災害補償保険審査会の決定又は裁判所の判決に矛盾しないようにしなければならない。」という規定がありますが、これは判定の場合に、前もつて審査官または審査会の決定あるいは判決があつた場合はいいが、判定の方が先になつた場合は、実際の運用はどういうようになるか多少疑問があるのですが、どういうようになるのでしようか。
  34. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまの御質問の点は、二十三條の條文と裏腹の関係に実はつくられておるわけであります。すなわち二十五條精神は、二十三條におきまして、労働基準法とつり合いのとれるよう運営をするように十分考慮しなければならないという條項の裏腹の関係に相なつております。従いまして労働基準法等におきまして、まだ先例のできていない、まつたく新しい先例というような問題ができました場合においては、労働省の方とも緊密な連絡をとりまして、一般民間にまで影響するような問題につきましては、できるだけ両者協議をしてやりたいと思つております。ただ公務員だけのまつたくの特殊性のものにつきましては、もちろん人事院の独自の立場において先例をつくりたい、かように考えております。
  35. 淵上房太郎

    ○淵上委員 もう一つお伺いいたしたいのですが、先ほど御説明の中にありましたように、苦情処理規定を設けて本人権利保護をしようという趣旨はまことにけつこうなお考えでありまして、この二十四條の問題だろうと思うのですが、給與を受ける側の方の立場からひとつ考えまして、たとえば二十四條にいう認定金額の決定、あるいは請求による判定の通知、こういうようなものが著しく遅れた場合にどうなるか、この問題は八條にすみやかに通知しなければならないという規定があり、あるいは九條ないし二十二條に金額の支給の問題がありますが、これが係官の故意または過失により著しく遅延する場合があると想像されるのであります。各省長官が一々やるのではなく、実際の事務は、その事務に従事する第一線の職員がやるのだろうと思いますが、官庁の中にはややもするといろいろそういう事態がありがちなんです。著しく遅延することによつて、せつかくのこの保護規定のその効力が非常に薄くなるというような場合が想像されるのでありますが、そういう場合に対する措置は何らかお考えになつておりますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  36. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 その点は実際の事務の執行面におきまして、きわめて大きな問題と心得ております。従いまして問題は、補償実施にふさわしいところの予算計上ということが何といつても迅速に補償するところの根本要因であろうかと考えます。従いまして本年度の予算において二億七千万円計上いたしておりますが、今後におきましても、人事院の調査研究資料に基きまして、実施面における予算上の裏打ちを完全ならしめるという点について、今後も努力いたしたいという考えを持つておりまするし、先ほど申し上げましたような第三十三條というまつたく異例の條項を設けましたのも、その理由にほかならないのでございます。  さらに現実の問題としては、人事院の方でしよつちゆう調査なり監査なり等をいたしまして、あとう限りそういうことのないように常時心がけて参りたいと考えております。しかしそれにいたしましても、御指摘になりましたような事案が出て来る場合も考えられると思います。  その場合にはこの第三條の第四項に規定しているのでありますが、実施機関が当然行うべき責務を怠つたり、あるいは法律、規則、指令等に違反して補償実施を行つたりしたような場合におきましては、人事院はその是正のために必要な処置をいつでもとることができるという條項がございますので、これらの活用によりまして、御指摘になりましたような点のないように万全の策を講じたい。またそういう心構えのもとに運用にも十全を期して行きたい、かように考えております。
  37. 淵上房太郎

    ○淵上委員 人事院当局の心構えはよくわかりましたが、私はこの問題は、先ほどのお話のように、給與を受ける本人からいえば重大な問題だと思うのであります。それに対しまして、もう少し強い何らかの措置をとるような規定がないことはまことに遺憾に考えておるのであります。九仭の功を一簣に欠くのじやないかと考えますが、これに関連して思い出しますのは、政府契約の支払遅延防止等に関する法律というのがあります。昭和二十四年二五六号です。これによりますれば、これは例ですけれども「国の会計事務を処理する職員が故意または過失により国の支払を著しく遅延させたと認めるときは、その職員の任命権者は、その職員に対し懲戒処分をしなければならない。」という一連の法律がありますが、これくらいの措置を講じて、そうして公務員の福祉の維持または保護の十全を期していただきたいという考えを持つておるのであります。いかがでしよう。この問題はひとつこの次までにもう少し人事院当局でお考えいただいたらどうか。現に今申します政府契約の支払遅延防止等に関する法律の実例もあることでありますから、ひとつ御再考を要求いたしたいと思います。
  38. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 実はその問題につきましては、この法案をつくります過程におきまして相当重要な問題として論議された点でございます。卑近な例として申し上げますと、この法律におきましては第三十四條に罰則の規定がございます。この罰則の規定の中に、ただいま御指摘になりましたような場合においては、その取扱い担当官に対して、ここにありまするごとく「六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」この條項を発動し得るようにつくつたらどうであろうかという問題が、きわめて真劍に論議されたわけでございます。ところが一方におきまして、たとえば淵上先生の御指摘になりましたような法律もございまするし、さらにまた国家公務員法自体建前といたしましても、懲戒処分の問題がございまして、あるいは停職なり免職なりあるいは減俸なりという、それぞれの規定もございます。従いましてむしろ体刑を含むがごとき罰則の條項事務取扱い担当官にしいるということは、一方におきまして国家公務員法上におけるところの懲戒処分の規定と重複することになりまして、どうも片手落ちすぎるのではなかろうかというような意見等があつたわけでございます。すなわち権利者を保護するに急のあまり、担当者をただ萎縮させる、ふるいあがらせるようなことばかりやるというようなこともいかがであろうかというような、いろいろの論議のありました結果こういうような案になつたのでありまするが、御指摘になりました点は、実際問題としてきわめて重要な問題と考えております。従いまして私の方でもなお検討いたしたいと思いますが、一応そういう問題がありましたことだけをお答え申し上げておきたいと思います。
  39. 淵上房太郎

    ○淵上委員 もう一つお尋ねしたいのですが、ただいまお述べになりました二十六條と関連する三十四條の罰則の問題であります。第二十六條第一項の規定による報告をせず、それから文書を提出せず、出頭をせず、これらの三項につきましては、正当の理由なくという断り書はいらぬかという疑問が一つあります。それはいかがでありましようか。
  40. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 おつしやいます通り、ここに文句としては書いておりませんが、解釈といたしましては、正当な理由なくという解釈を当然考えております。たとえば三十四條の問題について御指摘があつたわけでございますが、おつしやいますような意味合いにおいて考えますと、細部にわたりましてはいろいろ疑問点があろうかと思います。従いましてこの法律解釈権につきましては、第二條第二号に「この法律実施及び解釈に関し必要な人事院規則を制定し、及び人事院指令を発すること。」つまり明確に解釈権も当然総合調整機関たる人事院に與えるということに実は書いておるわけであります。従いまして正当な理由あるものについてまでも三十四條の罰則を適用するというような解釈運用は、当然すべきではなかろうというふうに考えておるわけでございます。
  41. 淵上房太郎

    ○淵上委員 ただいまの御説明はちよつと納得が行きませんが、人事院規則でいかようにおきめになりましようとも、法律によつて今度は事務をとる方の保護をしなければならぬ立場から考えますれば、第一号には必ず正当の理由なくがいるんじやないか、これは法律ですから、人事院規則でおきめになりましても、この法律の方が問題でありますから、これはひとつお考えになる必要があるのではないかと思います。もう一ぺんお考えを願いたいと思います。
  42. 藤枝泉介

    藤枝委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十八日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十八分散会