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1951-05-28 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十八日(月曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 内藤  隆君    理事 小松 勇次君 理事 猪俣 浩三君    理事 山口 武秀君       井手 光治君    大泉 寛三君       鍛冶 良作君    川本 末治君       志田 義信君    田渕 光一君       中川 俊思君    野村專太郎君       福田 喜東君    八木 一郎君       柳澤 義男君    石田 一松君       椎熊 三郎君    藤田 義光君       久保田鶴松君    坂本 泰良君       梨木作次郎君    高倉 定助君  委員外出席者         証     人         (海上保安庁長         官)      柳澤 米吉君         証     人         (政党役員)  椎野 悦郎君         証     人         (法務総裁)  大橋 武夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  委員会報告書に関する件  不正入出国に関する件  税務行政に関する証人出頭要求の件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。本委員会設置の決議によりまして、五月分の報告書を提出いたさなければなりませんが、これは委員長のもとにおいて簡単なる調査経過を作成の上議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なければさよう決定いたします。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 前回に引続き不正出入国に関する件について調査を進めます。ただちに柳澤証人より証言を求めることにいたします。柳澤米吉さんですね。
  5. 柳澤米吉

    柳澤証人 そうです。
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまより不正出入国に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が、職務秘密に関するものであるときには、その旨をお申出願いたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人柳澤米吉君朗読〕     宣誓書  良心に従つて、事実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  7. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。  紀栄丸事件証人証言によりますと、根室から知床半島にかけての海面の警備に対して、海上保安庁は、ほとんど手をこまねいておるというふうに陳述しておるのでありますが、はたしてそういうことが事実であるかどうか、あるいはまたそれが事実であるとすればその理由はどういう理由のものであるか、ひとつ述べてください。
  9. 柳澤米吉

    柳澤証人 昨年の暮におきまして、根室には船がございませんでした。これは釧路にあります船をもつて根室方面を警戒しておるわけでおります。その隻数も巡視船一隻でございます。その後二月になりまして、十メートル内火艇一隻、これを根室に配隻し、その後根室には内火艇二隻を配隻しております。この理由は、保安庁全体といたしまして船腹が非常に不足しておりましたが、昨年度の末期から今年にかけまして新造船ができつつある状態にあつたのであります。全体的に不足しておりました船腹配置根室湾はその範囲が非常に狭かつたために、ここに配置ができず、釧路からの行動半径内に入れておつたわけであります。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 根室湾か狭くてというのは、どういう意味ですか。
  11. 柳澤米吉

    柳澤証人 根室湾の南になります知床牛島の先端はマ・ラインと非常に接近しております。これを通過することは、冬季その他には、マ・ラインを越えずに通過することは非常に困難である。地方におきましてもやはりマ・ラインと接近しておりまして、通過が割当に困難である。従いまして根室に船を配置しておきますと、その行動半径割合に狭いというふうに考えております。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとマ・ラインと非常に接近しておつて、冬季にはことにマ・ラインを侵さなければ通過できないから、根室配置しないという意味ですか。
  13. 柳澤米吉

    柳澤証人 マ・ラインを侵さなくとも通行はできるのですが、その通行割合マ・ラインに触れる憂いがありますので、行動半径が狭いわけです。しかしそういうところに配置せずに——船腹がありますれば十分そこに配置するのですが、全然船腹が少かつたために、釧路からそこへ巡視させておつた状態にあつたのであります。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると釧路から巡視する場合も、マ・ラインを通過しなければ根室の方は巡視できないということになりませんか。
  15. 柳澤米吉

    柳澤証人 さようでございます。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると結局マ・ラインを通過しなければ巡視できないとするならば、特に冬期におけるところの巡視ということは事実上できなかつたのじやないですか。
  17. 柳澤米吉

    柳澤証人 一隻の巡視する範囲が、全体的に船腹が少かつたために、相当広範囲巡視範囲を持つているわけであります。従いまして釧路からの巡視範囲根室は入つていた……。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 それはわかつている。だから事実上は冬期は根室の方には行かなかつたということでしよう。
  19. 柳澤米吉

    柳澤証人 行くのが非常に困難であつたということであつたのです。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 困難だけれども困難を冒して行つたのか、あるいはまた困難だから行かなかつたのか、どつちなんですか。
  21. 柳澤米吉

    柳澤証人 困難でありますけれども、ときどき出かけてはおりました。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 何回くらい行きましたか。
  23. 柳澤米吉

    柳澤証人 はつきりした記憶は持ち合せておりませんです。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 この紀栄丸事件の起つたときには一回も巡視船には会わなかつた、そう言つているのですが、これは今あなたの証言によれば、ちようど十二月であつて、これは冬期である。従つて巡視船行つておらなかつたということに考えられるのだが、そのときは結局巡視船根室の方には行つてなかつたのですね。
  25. 柳澤米吉

    柳澤証人 その当日等は行つておらなかつた
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 当日は行つてなかつた。そうすると冬期間のうち何回くらい行つたかということをあとで調べて文書で出してください。
  27. 柳澤米吉

    柳澤証人 承知しました。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 昭和二十五年七月十五日、関税法違反被告事件被告人として起訴された高田進、この人は検挙当時海上保安庁総務部秘書課次席現職にあつたといわれているのだけれども、こういう現職にある人が何ら成規手続を経ずに博多などに出向いて、そういうような一つ違反事項関係しているというような場合に、監督の責任にある者が全然そういうどこへ行つているかわからない、あるいはまた同僚にしても部下にしても、そういう問題というものを一つも怪しまない、そういうようなことはやはり庁内の綱紀が非常に紊乱しておつた、そういうためであるか。あるいは何らかほかに理由があつて現職の官吏が部下にも打合せをしない、上官にも許可を受けないで出て歩いても一つも怪しまないというふうに海上保安庁はなつているのか。その点を証言してもらいたい。
  29. 柳澤米吉

    柳澤証人 高田進情報官といたしまして、情報の改築を役目としておつたわけであります。従いまして常には出張その他のことに必ず成規手続をとつておりますが、時にみずから情報関係秘密を要するというようなときに、早急に出張せねばならぬというような場合に、上司に口頭の了解を得て即時出張したというようなことではないかと考えられる次第であります。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 高田進事件に対して警備救難部長は、高田君は無罪になるのではないかと思うというような証言をしておりますが、その後の経過に照して、右証言訂正をする必要があろかないか、その点をひとつ。
  31. 柳澤米吉

    柳澤証人 これは訂正を要すると思います。現在まだ確定しておりません。
  32. 篠田弘作

    篠田委員長 うぐひす丸事件について、さき行つた警備救難部長証言と、その証言後に判明した事実について述べてください。
  33. 柳澤米吉

    柳澤証人 うぐひす丸事件につきまして、さき松野証人が起訴されるやに証言いたしましたが、現在のところ不起訴というふうに聞いております。
  34. 篠田弘作

    篠田委員長 大久保長官渡米にあたつて部内せんべつ金割当てた、そういう事実があるかどうか。あるいは割当てた際に、業者からこれを調達したものもある。また現在摘発されている海上保安庁の非常にたくさんな汚職事件、こういう問題は大久保長官渡米費の問題と関係があるかないか。それについて述べていただくと同時に、こういうような綱紀紊乱の問題が結局において不正入出国の取締りに非常な悪影響があつたのではないか、こういうふうに考えられるのですが、その点どうですか。
  35. 柳澤米吉

    柳澤証人 大久保長官渡米費割当てた事実はございませんです。なお今回の海上保安庁汚職事件は、幹部といたしまして非常に国民に対し申訳がないと考えておる次第でございます。従来海上保安庁は拡張の域にあります。新設以来常に目を拡充に向けておりました関係で、ややもすればかくのごとき不祥事件が出ましたのでございまして、非常に国民に対して申訳がないと考えておる次第でございますが、この事件不法出入国方面に対しましては、今後とも十分注意いたしますが、今までもこの方面影響はあまりないというふうに考えております。
  36. 篠田弘作

    篠田委員長 部内綱紀が紊乱しておつて仕事の上にはさしつかえない、こう言うのですか。
  37. 柳澤米吉

    柳澤証人 主として今度の汚職事件後方にある者の間に起つたと考えられます。前線、第一線の船舶及び燈台その他に従事しております者は真摯たる気持十分役目を果しておつたものと考えられる次第でございます。
  38. 篠田弘作

    篠田委員長 後方にある者が乱れておつて前線士気にも影響しないし、前線の事務にも影響しないというふうにあなたは長官として考えておりますか。
  39. 柳澤米吉

    柳澤証人 その点はなはだ申訳ないと考えますが、その影響する範囲の問題と考えますが、前線にあります者は、今回の事件に対しましても非常に遺憾の意を表し、なお今まで自分の真摯としてなして来たことに対しまして、同僚がこういう事件に関連したことに対しては非常に遺憾に思つているようでございます。後方汚職事件が全然影響しないとは申し上げられませんが、これによつて前線まで士気がゆるんでいたと考えるのは酷である、かように考える次第であります。
  40. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは後方というものは主として指揮系統じやないのですか。
  41. 柳澤米吉

    柳澤証人 後方むしろ物資補給系統というふうに考えております。
  42. 篠田弘作

    篠田委員長 物資補給関係者だけですか、今度の汚職事件ひつぱられたのは……。
  43. 柳澤米吉

    柳澤証人 補給ないし指揮系統にもございます。
  44. 篠田弘作

    篠田委員長 指揮系統の者が乱れておつて前線影響がないというのは、長官もいらなければ何も後方の者はいらぬじやありませんか。どういう考えなんですか。
  45. 柳澤米吉

    柳澤証人 指揮系統の人間といたしましても一部汚職関係いたしましたが、なお大多数の者が真摯たる気持でやつておりまして、はなはだこの辺については申訳がない次第でございますが、なお大多数はこの汚名を何とかして国民に対して申訳しようというふうに考えまして、現在真摯としてその目的に向つて進んでいる次第でございます。従いましてお説の通り指揮者その他が汚職いたしましたことにつきましては、下部その他に対しましても影響なしとは申し上げられませんが、大部分の者は、なおここに汚名を何とかして国民に対してそそごうというふうな気持で、現在できるだけ早く信用の回復に向つて進んでおる次第であります。
  46. 篠田弘作

    篠田委員長 委員の方から御質問ありませんか。
  47. 山口武秀

    山口(武)委員 ただいまの証言で、さきに行われましたところの高田進事件に関する警備救難部長の、高田無罪になるのではないかと思うという証言を、訂正を要すると思うということを言われておりましたが、これはどのような事情からあなたはどのようなことを知り得まして、このような証言をなすつたのでしようか。
  48. 柳澤米吉

    柳澤証人 現在まだ公判中でございまして、無罪とも有罪とも確定しておりませんので、無罪になるであろうというのは訂正をする必要がある、かように考える次第であります。
  49. 山口武秀

    山口(武)委員 それだけの理由ですと、警備救難部長のときも、本質的には事情かわりはなかつたと思う。それが無罪になると思うということを言つておる。あなたは今度は無罪になると思うということは訂正を要するというふうに言われておるのですが、これは同じ事情でそういうことを言えるというのは変なんですが、その間の事情の変化を聞かしていただきたい。
  50. 柳澤米吉

    柳澤証人 この前の救難部長も同じ状態でございましたが、これはその救難部長として考えましたときに、まだきまつていないものを無罪であろうというふうにしますのは、その事情を最もよく知つております当事者その他のお話をよく承つて判定しなければならないし、また結果がまだ出ない前にその結果を論ずるということは間違いであろう、かように私は考えておる次第であります。
  51. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、警備救難部長証言というものは、軽卒にあのような証言をした、こういうふうなことになるのですか。
  52. 柳澤米吉

    柳澤証人 松野君として、その当時決定しないものを、ある程度決定したかのごとく錯覚をもつて証言申し上げたのではないか、かように考えております。
  53. 山口武秀

    山口(武)委員 それでは松野証人証言錯覚に基いたものであるというならばそれでよろしいのですが、実はこの高田進事件につきまして、関係の検事の方にもここで証言をしていただいたのですが、そのとき判明したところによりますと、高田進が、自分の今ついている仕事から出る俸給としては少々法外な生活をしている、何か中国辺の方にも二号を囲つて世帶を東京と二つ持つておるというようなことがありまして、單にこの高田進事件について出て来たところの収賄というようなことでなくして、その以前からの生活程度から見ると、特別な収入でもなければ生活ができないように考えられる。そういうことになると、前にも高田進という人は密輸というようなものにあるいは関係がありはしなかつただろうか、あるいは今回の汚職事件というようなものに関連があつたのではないだろうかということが当然考えられて来るわけです。それを松野証人無罪になると思うということを言つたのは、部内でそのようなことのあるのを隠蔽する意図から出たものではなかろうかというようにも考えられるのですが、この点はいかがですか。
  54. 柳澤米吉

    柳澤証人 高田進君は、情報官としまして特別に情報関係をやつておりました関係で、今回の汚職事件とは関係はほとんどないであろうというふうに私は考える次第であります。
  55. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、この高田進事件が起りましたとき、海上保安庁内でも大分問題になつたはずであります。問題の点につきましても当然相当な検討をなしたと思うのでありますが、高田進は身分不相応な生活をしていたということにつきまして、何らかの説明ができるでしようか、あるいはこの問題については、あなたは全然調べもしなかつたし、気がつきもしなかつた、こう言われるのでしようか。
  56. 柳澤米吉

    柳澤証人 ただいまの高田君の私生活の問題でございますが、はなはだ申訳ないのでありますが、高田個人が相当ぜいたくであつたというふうな事実をあまりよく存じておりません。この点ははなはだ申訳ないと思つております。
  57. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほど証人は、海上保安庁は今回の汚職事件について大いに自粛しておる、そういうことのないように心がけておるということを言われておりましたが、このような問題になつている点について、まだ調査もしてない、当然考えなければならない問題についても考えてないということになりますと、さつきの自粛という証言も、私ははなはだあいまいなものではないかという感じが現在いたしておるのであります。それから先ほど大久保長官渡米するにあたつてせんべつ云々という話が出たわけでありますが、あなたはそのことについて、せんべつ割当というようなことは全然なかつた、こういうふうに証言された。そこでお聞きしたいと思いますのは、こういうことも出ておる。このせんべつ割当、か業者に対してなされなかつたということを言われましたが、このような問題が出たときに、あなたの末端の方の機構におきまして誤解して、いつもこれは割当をすることになつているから、また業者割当ててみようじやないかというふうに受取つてしまつて、そうして末端業者に対するせんべつ割当をしたというような話も出ておりますが、こういうことはありませんですか。
  58. 柳澤米吉

    柳澤証人 まだ明確に調書その他を調べておりませんが、ただいまのお話のような割当業者にしたというようなうわさは、新聞その他で私も見ましたが、事実は各個人がみずから出して、せんべつしようかという空気はあつたと考えております。
  59. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたは大久保長官あとを受けられまして、その後長官になられたわけですが、大久保長官がなぜ辞任をしたか、なぜあなたがあとを引受けられたか、その点を伺いたい。
  60. 柳澤米吉

    柳澤証人 前長官心境はどういう心境であつたか、私はすつかりは存じ上げておりませんが、私聞きましたところでは、満三年にも相なりますし、なお汚職事件等の問題の責任もございますし、この際保安庁も大いに身固めをして、国民信頼ある保安庁にでつち上げるためには、気風の改善その他国民信頼を得るように進むべきではないかというふうに考えられたものと推察いたします。
  61. 山口武秀

    山口(武)委員 大久保長官は、この汚職の問題がきわめて重大化しているときにやめられたのでありまして、あなたは国民信頼を得るためにもということを言われておりまするが、そのような関係できわめて普通でない異常な状態において大久保長官が辞任するとき、その辞任した人の心境がわからないというようなことで、この非常的な状況の中にある海上保安庁部内粛正、あるいは今あなたのおつしやいましたような国民信頼を得るというようなことはやつて行けるのですか。
  62. 柳澤米吉

    柳澤証人 大久保長官のやめられたことについては、先ほど申し上げたように推察するのでありますが、現化の私の心境といたしましては、この際保安庁国民信頼を得るよう、今度の事件によつて失われた信頼は、早急に部内粛正及び庁内全員一致して、一日も早く国民に対しておわびする。保安庁国民から見てりつぱになつたなと一言いわれることを期待して、前長官のやめられた趣旨のいかんを問わず、われわれはこの方向に向つて行きたいと考えておるのであります。
  63. 山口武秀

    山口(武)委員 大久保長官は、汚職事件に対する責任を感じてやめられたわけであります。あなたはその長官のときにその次の職にあつた者ですが、あなたにその責任はなかつたか。今あなたが一品も早く国民信頼を得ると言つたのは、一体どういうことに基いているのですか。
  64. 柳澤米吉

    柳澤証人 私もその当時の幹部の一人でありまして、指導につきまして非常に責任ある者の一人であることは事実でございます。私といたしましては、この難局を何とかして切り抜けて、国民に対しておわびを申し上げたい心で一ぱいでございます。
  65. 山口武秀

    山口(武)委員 私は、大久保長官かわりにあなたが出てやるということは、どういうような理由があるかわかりませんが、それではなお次の質問に移りたいと思います。あなたと保安庁部内におきまして、もとの海事将校が重要な位置を占めているということはあるのですか。
  66. 柳澤米吉

    柳澤証人 ございます。それは一人は船舶技術部部長をしております。一人は航路啓開本部長をしております。これは旧海軍の軍人でございます。
  67. 山口武秀

    山口(武)委員 その渡辺という人、それから田村という人、この人の階級は何だつたでしよう。
  68. 柳澤米吉

    柳澤証人 旧海軍大佐と記憶しております。
  69. 山口武秀

    山口(武)委員 二人とも旧海軍大佐ですか。
  70. 柳澤米吉

    柳澤証人 さようでございます。
  71. 山口武秀

    山口(武)委員 これは公職追放関係はどうなつているのですか。
  72. 柳澤米吉

    柳澤証人 公職追放範囲に入つておると考えております。
  73. 山口武秀

    山口(武)委員 公職追放範囲に入つてつてかまわないのですか。
  74. 柳澤米吉

    柳澤証人 特別期間の間、特に許されてこのいすについているものでございます。
  75. 山口武秀

    山口(武)委員 どのような理由で、どのような特別の許可を受けてその仕事をなすつているのですか。
  76. 柳澤米吉

    柳澤証人 御承知のように海上保安庁におきましては、機雷の処置を行つておりますが、これに対する専門家がおらないため、特に専門技術を必要とするので、航路啓開本部長としてこの職にあります。なお占領軍が持つております旧海軍の艦艇の保管につきましては、技術部長が当つております。
  77. 山口武秀

    山口(武)委員 この二人の元大佐のほかに、海軍将校関係の人はおりませんですか。
  78. 柳澤米吉

    柳澤証人 海軍将校は約百二十名くらいと記憶しております。
  79. 山口武秀

    山口(武)委員 追放関係の人でやはり同じような特別許可で動いている人ですか。
  80. 柳澤米吉

    柳澤証人 さようでございます。
  81. 山口武秀

    山口(武)委員 実は陸上における警察予備隊がいつでも地上軍に転化されるというようなこともいわれております。これにマッカーサー元帥肩身アメリカ証言したことでありまするが、それと同時に並んで海上保安庁海軍擬装隊である、こういううわさも大分出ているのであります。今あなたの言われました技術部長渡辺という元大佐が、三年以内に海上保安庁海事を再現して見せる、海軍の復活をやつて見せる、そのような話をしているというようなことも聞いたのですが、これはいかがですか。
  82. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと山口委員に御注意申し上げます。きようの柳澤証人海上保安庁汚職事件に関与して喚問したのでありまして、将来のそういう仮定的な問題に対する証人として喚問したのではありません。従つて仮定の問題に対して証人は答弁をする必要がないということを委員長は認めます。
  83. 山口武秀

    山口(武)委員 それならそれでよろしい。ただ私が聞きましたのは、汚職事件関係なのですが、海上保安庁内に旧逓信省系商船学校糸、それから元の海軍省系の三つの派がある。そうして旧海軍糸人たち商船学校糸の派あるいは旧逓信省系の派を押しのけようと思つて、今回の汚職事件というものが明るみに出た、さらに発展を見た動因となつている。このような話を聞いた。それだからそのようなことになりますと、事件発展についてやはり関係があるのではないか、私はこう思つたのです。  それでは次のことをお尋ねしたいと思うのですが、二十五年の春に海上保安庁におきまして、片田敏夫というものを、取調べておられる。それから二十五年の八月に清水海上保安部において第三丸良丸あるいは第八丸良丸、その他龍丸といいますか、その三隻を拿捕された。そのような調べの結果、実は軽視できない問題が次々と浮んで来た。それは若松の海上保安部の取調べによりますと、これは通称勃海の熊と呼ばれる野崎という男によつて、片田敏夫というものは大黒丸という船に乗船させられた。ところが乗つてみたところ、その船には三十三名乗つていたうち大学生のアルバイトの人たちも五名おつた。そうして今から台湾の基隆港に行くのだ、こういつて基隆につれて行かれた。ところが、昨年暮にやはり義勇兵の募集をやつたところが、その人たちのうちで十二名ほどが脱走をはかつて、台湾沖でしけにあつて溺死してしまつた。だからお前たちもそういうことをすると同じような運命になるぞ、こういつておどかされた。そしてしまいにやつとの思いでこの人たちは脱走して日本に帰つて来た。その帰つて来た一人が片田敏夫であつて、これを海上保安庁が調べた。ここで台湾の義勇兵の問題が出て来た。それからやはり清水の海上保安部の調べによりましても、私先ほど言いました丸良丸ほか二隻の合計三隻の船がやはり義勇兵応募容疑で拿捕された船であつた。それから船員は全部この一味である。それからこのことは根本元中将の命令によつてなされたというような点が判明していることがあります。しかもこの根本中将による台湾の義勇軍の問題は、昨年、一昨年あたりから大分出て来ていることでありまするが、この問題につきまして、あなたは御承知ないでしようか。
  84. 柳澤米吉

    柳澤証人 報告は受けております。
  85. 山口武秀

    山口(武)委員 そうしますと、義男軍募集の陰謀ということはおわかりでしようか。
  86. 柳澤米吉

    柳澤証人 ……。
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 質問の要旨がよくわからないじやないですか。
  88. 山口武秀

    山口(武)委員 わからないというのですか。
  89. 柳澤米吉

    柳澤証人 今はつきり記憶しておりません。
  90. 山口武秀

    山口(武)委員 あなたはこのような重大な問題をはつきり記憶していたいといいますが、やはり部内の重大な問題にもなるのではないだろうか、こう考える。私はこれほど重大な問題はないではないかと思う。これは当然ポツダム宣言受諾によりまして、連合国に降伏している日本が、戦争に参加しておるというような重大な関係のある問題を、あなたが記憶しておらないというふうで済まされるかどうか、これは私ははなはだ心外だ。しかも今戦争の危機が迫つておるというときに、日本人がこの戦争の渦中に飛び込んで行くというようなフアツシヨ的な陰謀がここにたくらまれておるということをあなたが知らないということで済ませるかどうか。あなたの方の情報官——これはあなたの方の情報官でなくて海上保安官です。この伊藤一夫という人が、この陰謀がすつかり暴露されて、それからこの台湾義勇軍の募兵に大きな役割を持つていて、かなり事件のかぎを握つておると思われるところの勃海の熊と通称言われておる野崎のいることも判明して、逮捕されておる、こう言われておるのですが、やはりこのこともあなたは知らないと言われるのですか。
  91. 柳澤米吉

    柳澤証人 お話の問題につきましては、海上保安庁としましてこれを発見いたしましたが、取調べその他につきましては、関係方面と協力してやつておる次第でございます。従いまして、情報としては聞いておりますが、的確なところを申し上げることができないのであります。
  92. 山口武秀

    山口(武)委員 重大な問題でありますので、あなたの知つておるところをお聞きしたいと思う。
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 山口委員に申し上げますが、きようの証人尋問は海上保安庁汚職事件に関する問題であつて、そういうあなたが質問しておるような問題は、本筋からはずれておると私は認めます。
  94. 山口武秀

    山口(武)委員 これは密出入国の問題です。
  95. 篠田弘作

    篠田委員長 密出入国の問題も情報程度の問題で、先ほど申しましたように、公務員として発言のできない場合は、その都度申出るということを証人に申し入れているのでありますが、情報とかあるいはまた将来の仮定の問題とか、本筋からはずれた問題はなるべく質問をある程度に切り上げてもらいたいと思います。もつと本筋の問題をしつかり突いてもらいたい。
  96. 山口武秀

    山口(武)委員 では私は質問を打切りますが、ただ残念に思いますのは、これほど重大な問題はないだろうと私は思う。密出入国の問題におきまして戦争にからんでおる。しかも日本人が戰争に加わつておるのだ。しかもそれが旧軍人によつて行われておるということが続々出て来ておるのです。このような問題についてあなたたちの取締りの態度に消極的なところがあつたんじやないか。あるいはこういう問題に対すると、どうも問題の要点がはつきりしない。私たちはしよつちゆう疑いを持つておるということだけを明らかにして質問を打ち切つておきます。
  97. 藤田義光

    ○藤田委員 私は率直に、簡單に二、三お伺いしたいと思います。  今回の汚職事件に関連しまして、まず第一に密出入国ということが非常に重大な問題になつておりますが、昨年御承知の通り外務省の一部として出入国管理庁ができております。こういうものができたために、せつかく発足して三年間、資材がない、予算が少い中に、コースト・ガードとしての使命を少しずつ果しておつた海上保安庁がかえつて事務の紛淆を来し、取締りをやるにしても、こういう役所ができたために、能率を阻害されるようなことがありはしないかと考えるのでございますが、この点に関して長官はどういうお考えでありましようか。
  98. 柳澤米吉

    柳澤証人 出入国管理庁は出入国しました者のあとの処置を主として行う官庁と考えております。入つて来ました者を取調べその他行いますのは、海上においては海上保安庁、陸上におきましては国警ないし自治警というものが行つておるわけでございまして、その間連絡を十分とりつつ、仕事行つておる次第でございます。
  99. 藤田義光

    ○藤田委員 委員長から問題の核心は大体つかれておりますので、私はその外側を少しつきたいと思いますが、昨年の七月、マッカーサー書簡が出まして、海上保安庁の人員の増強ということがいわれております。この増強の状況を簡單にお伺いしたいと思います。それは人員不足のためこういう事件が起きたということも当然想像されるのでありますが、十分能率を発揮できる人員を整備したならば、こういう不祥事も激減するのじやないかということがいわれておりますので、この際長官にお伺いしておきたいと思います。
  100. 柳澤米吉

    柳澤証人 海上保安庁が発足いたしましてまだ三年でございますので、お話のように、人員の整備も万全というふうに申すことができない状態にあります。昨年七月マ書簡をいただきまして、第一に船舶の増強、人員の増強ということに主眼を置きました。昨年におきましては巡視船が六十隻、港内艇百八隻という状態でございまして、一隻の船舶の見まわり範囲が非常に広く、ややもすれば欠陥があつたわけです。これがマ書簡、及び経常予算によりまして、今年の末におきましては、巡視船は百隻を越え、港内艇も二百隻を越える状態に相なつて、これによつてほぼ海上保安庁も、不足とは申しながら今までよりも数段強化される、かように考えられるのでございます。人員におきましても、人員の不足のため、現地の見まわり、その他非常に困難を感じておりましたが、二十五年度におきまして二千数百、二十六年度におきまして二千数百の人間の増強を得まして、今年の下半期におきましては、船舶、人員ともに整備がいたされまして、今までの海上保安庁を相当に強化いたすことができるのではないか、かように考えておる次第であります。
  101. 藤田義光

    ○藤田委員 きようの尋問事項大久保長官の名前が明示されております。大久保氏の個人的名誉に関すること重大でありまして、この点に関連いたしまして私ちよつとお伺いしたいと思いますが、大久保氏が昨年の五月の参議院選挙に立候補を勧められまして、現職を退くかもしれなかつたというようなことを、長官お聞きになりましたかどうか。すでに三年間を無事に勤め上げてやめられたということでありましたが、この辞意は今回の事件に関連なく昨年の春ごろからあつたということをお聞きになつたことがありますか。お伺いしておきます。
  102. 柳澤米吉

    柳澤証人 その点につきましては、御本人からお聞きしたことはございません。しかし、そういうふうなうわさ、またその他の情報からも、そういうふうに察せられることはございました。
  103. 藤田義光

    ○藤田委員 大久保氏がみずから渡米の費用を部内割当てたとかいうような質問事項がございますが、長官としては、先ほどの山口君の質問に対する御答弁で盡きていると思いますが、あらためてお伺いしておきたいのでございますが、円満な退職であつて、この問題には全然関連しておらぬということを明言願えますかどうか、重ねてお伺いしておきたい。
  104. 柳澤米吉

    柳澤証人 私聞きました範囲では、先ほど御証言申し上げましたように、三年たちまして御退職というふうに聞いております、しかし想像いたしまするに、たまたま汚職事件というものもございますので、前長官の御退任の心境については、私はその分も多少考えられての上というふうに考えておりますが、この辺は御当人の心境でございまして、証言するに非常に困難を感じておる次第であります。
  105. 藤田義光

    ○藤田委員 数日前最高検では、この事件を取扱つております横浜地検、高検の担当検事を集めまして、この事件はこれ以上拡大しない、現在の被疑者を中心に、今後証拠収集程度の捜査を継続するという最高方針がきまつたというふうに、私は拝承いたしております。司法権の限界に関する質問は遠慮したいと思いますが、この新聞報道、ラジオ放送等が、私は真実であるというふうに考えます。長官としては、この件に関しまして、もちろんこれ以上そう拡大はしないという自信を持つておられると思いますが、その点に関しましてもお伺いし、なお先般の汚職事件以来、庁内は大異動を断行されました。非常に不安定でありました庁内の人心も、ようやく安定したようでありますが、今後さらに相当の人事異動をやられるお気持がありますかどうか。この際お伺いしておきたいと思います。
  106. 柳澤米吉

    柳澤証人 今回の汚職事件に対する見込み等につきましては、御証言申し上げることができないと、かように考えます。異動に関しましては、長官に着任早々本部長の異動を行いまして、これによつて保安庁の考え方の切りかえをまず行いました。これを保安庁全員に徹底させるという考え方であります。なお先般本部長会議を開きまして、十分に自粛し、なお基礎をつくり、国民に対する信頼ある保安庁にするよう訓示をいたしております。なお今後の異動その他につきましては、現在考慮中でございますが、あまりに異動等によつて人心の不安定を起さぬよう、しかも一箇所に非常に長い人につきましては異動したい、かように考える次第であります。
  107. 藤田義光

    ○藤田委員 最後に一点、海上保安庁の将来に関していろいろと情報が流布されておりますが、私は現在の海上保安庁はあくまでアメリカのコースト・ガードと同じく、沿岸の警備が全使命であるというふうに観察いたしております、先ほど山口君の質問で明らかになりましたが、元の海軍将校百二十名を海上保安庁が使つておられるということによりまして、こういう点から一部を誤解を生じまして、海上保安庁が将来再軍備の場合の海軍になるのではないかというような説もございます。この際この汚職事件にも関連しておりますので、長官の所信をお伺いしたいと思うのでございますが、海上保安庁はあくまでコースト・ガードに全使命がある。再軍備に伴う海軍等には絶対ならぬという所信でございますかどうか、伺つておきたいと思います。
  108. 柳澤米吉

    柳澤証人 海上保安庁の将来につきましての決定は、国会及び政府等におきまして御決定になる問題でございまして、私が証人する範囲外というふうに考えております。私個人といたしましては、どこまでも海上保安庁は現在の海上保安庁である、かように信じておる次第でございます。
  109. 小松勇次

    ○小松委員 一、二お尋ねします。あなたの方の御関係で逮捕されました密入国者の数は、今日までどのくらいの数に及んでおりますか、まずこれを伺いたい。
  110. 柳澤米吉

    柳澤証人 昭和二十五年の一月から十二月までの数字で覚えておりますだけを申し上げたいと思います。全部で九百二十名だつたかと思います。入国は約五百名、出国が四百二十名というふうに記憶しております。
  111. 小松勇次

    ○小松委員 私は入国、出国というのがよくわからぬのですが、これは成規手続きを経たものでないのですな。
  112. 柳澤米吉

    柳澤証人 さようでございます。
  113. 小松勇次

    ○小松委員 さらにお尋ねしますが、この密入国者のうちで、どこの国の人が一番多かつたか、これをお伺いしたい。
  114. 柳澤米吉

    柳澤証人 一番多いのは韓国、次が日本人というふうに記憶しております。
  115. 小松勇次

    ○小松委員 韓国と申しますと、これは南鮮、北鮮を含んでの言葉なんでありますか。もしこれが南鮮の人の方が多かつたとか、北鮮の人が多いとか、こういう比率がおわかりになれば伺いたい。
  116. 柳澤米吉

    柳澤証人 一括して申し上げましたので、その南北の区別はただいま記憶しておりません。
  117. 小松勇次

    ○小松委員 それでは密輸出入についてお尋ねしたいのでありますが、あなたの方で検挙されました密貿易者は、どのくらいの件数があつたか、そうしてまたそれらの人たちが取扱つておる品目はおもにどういうものであつたか、またそのルートはどういうルートであつたかということをお伺いしたい。
  118. 柳澤米吉

    柳澤証人 ただいま記録を持つて来ておりませんので、正確に申し上げにくいと思いますが、でき得ればルート、品目、数量、金額等につきまして、書類をもつて御提出したい、かように考えます。
  119. 小松勇次

    ○小松委員 これは書類をもつて提出されればけつこうでありますが、あなたの御記憶にあります事件で、最も大きな事件としてはどういうものがあつたか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  120. 柳澤米吉

    柳澤証人 密貿易その他につきましては、記憶しておりますものは、第五金比羅丸事件というのが私の記憶に残つております。
  121. 小松勇次

    ○小松委員 その第五金比羅丸は、おもにどういう荷物を積んでおつた船でありますか。
  122. 柳澤米吉

    柳澤証人 これは昨年八月、鹿児島県の屋久島におきまして、沖繩から密航して来た第五金比羅丸に、電線とか銅板とかいうものを積み込んで来た。これはそのほかに弾丸の薬莢のようなものも多少積んでおりました。
  123. 小松勇次

    ○小松委員 そのほかに武器類はこの船には積んでおらなかつたか、そしてまたこの貿易の首魁というべき人はどういう人であつたか。
  124. 柳澤米吉

    柳澤証人 砲弾の薬莢等は積んでおりましたが、武器等は記憶しておりません。これが首魁としましては、どれを首魁と申し上げましようか、友成俊作という人もこの被疑者の中に人つております。
  125. 小松勇次

    ○小松委員 友成さんという方はどういう経歴の方ですか。
  126. 柳澤米吉

    柳澤証人 この方の前歴は私よく存じ上げておりません。大体根本中将を尊敬していたということは聞いております。
  127. 小松勇次

    ○小松委員 よく御存じないようでありますから、この点はこの程度にしておきます。  先ほどあなたの方の汚職事件についての証言でありましたが、大久保長官渡米の費用について、いろいろ部下の者が割当てて金を集めたという話に対しまして、さようなことはなかつたというお話でありましたが、しかし大久保長官としては、さような金は受取つてはおらないでありましようけれども、そういうような名目によつて金を集めた者は、あなたの方の部下にあつたのではないですか。
  128. 柳澤米吉

    柳澤証人 集めた者はなかつたと考えますが、各管区本部におきましてせんべつとして幾らかの何かを贈ろうという空気はあつたことは事実であります。
  129. 小松勇次

    ○小松委員 大久保長官渡米の費用というのは、どういう予算から出ておるのですか。国の予算ですか、それともほかの予算ですか。
  130. 柳澤米吉

    柳澤証人 国の予算で、渡米費としてはつきり旅費をとつて行かれました。
  131. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今海上保安庁では船をどれくらい持つておりますか。その隻数と内容をお聞かせ願いたい。
  132. 柳澤米吉

    柳澤証人 現在海上保安庁といたしましては、マ書簡による造船、二十六年度による造船、この二つの造船の最中でありまして、ただいまここで適確な数字は申し上げられませんが、先ほど申し上げました通り、現在におきましては巡視船としましては九十六隻、なお港内艇といたしまして百七十八隻、但しこの中でまだ竣工が終らないものもありますし、適確なる数字は申し上げられませんが、大体以上の数字がこの八、九月までにはでき上る数字でございます。
  133. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この巡視船はどの程度の大きさのものでありますか。それから港内艇百七十八隻はどのくらいのものでありますか。
  134. 柳澤米吉

    柳澤証人 巡視船は最大のものが七百五十トン、小さいもので二百七十トン。港内艇と申しますのは、長さで申しまして十二メートルないし二十三メートルというものであります。
  135. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると、大体総トン数でどのくらいになりますか。
  136. 柳澤米吉

    柳澤証人 排水トン数でありまして、はつきり私今記憶しておりませんが、保安庁の船の制限が、今まで五万トンまでであつたのが、マ書簡以来八万トンまでに制限されております。保安庁の現在の計画が全部でき上りましても、八万トンには達しないはずでありまして、現在適確な数字を持ち合せておりませんが、わくとしては大体そういうふうになつております。
  137. 梨木作次郎

    ○梨木委員 装備はどういうことになつておりますか。
  138. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと梨木君に注意を申し上げます。密出入国に関する問題について、海上保安庁の持つておる船の装備まで聞く必要は私はないと思います。これは先ほど申しました公務員の機密に関する問題であろうと思います。その点は機密であるかどうかということよりも、本委員会の証人を尋問する目的以外の問題であると考えます。
  139. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは掃海艇というのがございますか。
  140. 柳澤米吉

    柳澤証人 掃海艇はございます。
  141. 梨木作次郎

    ○梨木委員 幾らくらいありますか。
  142. 柳澤米吉

    柳澤証人 私の記憶では三十隻ちよつとと考えます。
  143. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この掃海艇が朝鮮沿岸までも警戒しておるそうですが、そういう事実はありますか。
  144. 柳澤米吉

    柳澤証人 そういう問題に関しましては、証人としてお答えはちよつとできません。
  145. 梨木作次郎

    ○梨木委員 掃海艇が魚雷か何かのために沈没した事件はありますか。
  146. 柳澤米吉

    柳澤証人 沈没したものでございます。
  147. 梨木作次郎

    ○梨木委員 何隻沈没したのですか。
  148. 柳澤米吉

    柳澤証人 私の記憶では二隻と思います。
  149. 梨木作次郎

    ○梨木委員 密入国の問題でありますが、いわゆる韓国から非常に大量の人が日本に送られて来ておりまして、それが軍事訓練を受けておる事実をわれわれは聞いておりますが、これはどういうぐあいにして入つて来ておりますか。
  150. 柳澤米吉

    柳澤証人 これは私存じ上げておりません。
  151. 梨木作次郎

    ○梨木委員 こういうことがアメリカの新聞に出ておるのでありますが、この点をお伺いいたします。シカゴ・デーリー・ニュースでは、今度の朝鮮動乱の問題につきまして、こういう記事を掲げておる。「日本の援助がなければわれわれは朝鮮から駆逐されたかもしれないということは誇張でも何でもない。日本人によつて補充された上陸用舟艇団は、軍隊輸送手段がきわめて必要であつたその時機に、最初にアメリカ軍の朝鮮輸送を援助した。日本人は、援助部隊の輸送が、戦局の維持か、完全な敗北かを意味したその時機に、すなわち七月第一騎兵師団の浦項上陸を援助した。日本人によつて補充された十九隻の船団は、九月中旬に仁川突入に参加した。」というのでありますが、これは海上保安庁承知しておりますか。
  152. 柳澤米吉

    柳澤証人 この問題は海上保安庁関係がないように思います。
  153. 梨木作次郎

    ○梨木委員 次に伺いますが、先ほどあなたは例の琴平丸の密輸のことをお話になりました。そこで友成俊作という人の経歴を御存じないと言われましたが、根本元中将を尊敬しておる人であるというようなお話がありました。これは元海軍中尉だということは新聞紙にも出ておりましたが、御存じありませんか。
  154. 柳澤米吉

    柳澤証人 私そこまで聞いておりませんので、証言できかねるのであります。
  155. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今度の汚職事件山口文三さんという人がありますが、この人は事務局の調査によりますと、検挙された当時は海上保安庁の海員ではなかつたようでありますが、これはどういういきさつでやめまして、その後どうなつてつたのか、それを御承知でしたらお伺いいたしたいと思います。
  156. 柳澤米吉

    柳澤証人 山口君は多分昨年だと思いますが、やめまして、その後会社に入つたようなことを聞いております。
  157. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この山口文三さんというのは、やめるときに何か不正事件があつて、やめてから民間の会社に入つたのではありませんか。その点は御承知ありませんか。
  158. 柳澤米吉

    柳澤証人 その点私はつきり記憶しておりません。
  159. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今度汚職事件関係した海上保安庁側の検挙された人の中に、元海軍将校はどれくらい検挙されておりますか。おおよその人数でよろしゆうございます。
  160. 柳澤米吉

    柳澤証人 元海軍の軍人はおらない、かように承知しております。
  161. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると、先ほど山口委員からも質問がありましたが、どうも今度の汚職事件海上保安庁部内におけるところの元の海軍派と、それから逓信省閥、そういつた関係の派閥的な争いも一つの原因をなして、その方から摘発して行つたというようなことはどうです。そういうふうにお気づきではないでしようか。
  162. 柳澤米吉

    柳澤証人 そういううわさもなきにあらずでございますが、保安庁としましてはいろいろの人が入つて来ておりますが、現在一致してこれから進んで行こう、かように考えておる次第であります。
  163. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほどあなたは技術部長さんは元の海軍大佐と言われましたが、それは渡辺安次さんという人でありましようか。それからもう一人航路啓開本部長、これのお名前は田村久三さんという人ですか。これをお伺いしたいと思います。
  164. 柳澤米吉

    柳澤証人 技術部長渡辺安次君、航路啓開本部長は田村、名前ははたして久三であつたかどうかちよつと失念しておりますが、渡辺君と田村君でございます。
  165. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほどこれら公職追放海軍人たちが特別の許可を受けてやつておると言われましたが、この許可というのは日本政府の許可でありますか、それとも総司令部の許可でありましようか、どちらでありましようか。
  166. 柳澤米吉

    柳澤証人 われわれは日本政府の下にありまして、日本政府の許可を受けております。
  167. 梨木作次郎

    ○梨木委員 最後にもう一点お伺いいたしますが、先ほど海上保安庁仕事の中に、元の海軍の艦艇の管理の仕事があると言われましたが、これはどの程度のものを管理しておりますか。
  168. 柳澤米吉

    柳澤証人 終戦後日本海軍のものが占領軍によつて全部保管されておるのであります。この保管業務は元来占領軍が行うべきものでありますが、この管理を日本政府において行えということで、海上保安庁においてこの管理を行つておる次第であります。
  169. 梨木作次郎

    ○梨木委員 どの程度の艦艇を管理しておるかということを聞いておるのです。
  170. 篠田弘作

    篠田委員長 どの程度ということは数量ですか。
  171. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうです。
  172. 柳澤米吉

    柳澤証人 その数量に関しましては、その都度非常に変化があるようでございまして、私記憶しておりません。
  173. 田渕光一

    ○田渕委員 冒頭委員長がいろいろお聞きになつた点について、証人は非常に恐縮されており、また実際はこうなつておるということでありますが、当委員会といたしまして、官紀綱紀の粛清の観点から私はお伺いいたします。あなたがこの腐敗した海上保安庁をどういうぐあいに粛清強化して行くかという具体案についてお聞きしたい。
  174. 柳澤米吉

    柳澤証人 はなはだ今回の事件は恐縮にたえません。  まず今度の事件を顧みまするのに、海上保安庁全体としてやや国民に甘やかされておつたという点はなきにしもあらずと考える次第であります。従いまして私初め幹部がややその点において気のゆるみがあり、また拡張の方に力を持ち、内部の嚴正的確の指導方針についてやや欠けたことがあつたことを考え、われわれとしては非常に恐縮にたえない次第でございます。一面人間の急激なる膨脹に伴いまして、ややもすれば適財適所の配置なく、なれない人間がなれない仕事をやつたというようなところにも欠陷があつたとわれわれは考える次第であります。これが一人ないし二人の汚職事件であつたならば、個人的の欠陥と言えるでありましようが、相当の人数がまとまつて汚職事件ということに相なりますると、これは指導者の責任が重大であり、何らかの欠陷がそこにあつたと考えられます。またその衝に当つている各部署の人々についても欠陥があつたのではないか。以上申し上げたようなところに欠陷があつたと考えられる次第であります。  つきましては、まず第一の幹部の考え方の粛清、これにつきましてわれわれといたしましては、ほんとうに地についた海上保安庁というものを考え、拡充いたしますについても、十分なる根底をつくり、おちついた海上保安庁をつくつて行く方に精神を傾けて行くべきではないか、かように考える次第であります。  第二に職員につきましても、職員をいかにしてあやまちのないよう善導して行くか、これにつきまして監察制度その他をつくりまして、これは職員の非違をあばき立てるという考え方でなく、いかにしたらば事務処理がうまく行くか、こういうことはかくすべきであるというふうに教え、いたずらに今までの非違を洗うことなく——これはもちろん洗つては行きますが、それにのみ専念しないで、できるだけ職員を善導するという方向に向けて行きたい。これによつて幹部の覚悟の転換と、職員の指導に対する転換と、この両者相まつて海上保安庁を急速に立て直すということを考えておる次第であります。
  175. 田渕光一

    ○田渕委員 要は私は信賞必罰が一番大事だと思うのであります。少くとも五月十七日現在の資料を見まして、約百名の人員の検挙を完了しており、それで収賄金額が七、八百万円、これは現われた金額はごく寡少なものでありましよう。長年にわたつてこの汚職が出て来る温床があつたに違いないですから、これに対する料亭——私どもが考えるのに、饗応というものの額も相当長年にわたる大きなものであろうと思います。今日やみ料理屋へ行つてちよつと飲めば、三万や五万はすぐ使つてしまう。こういうものが出ておりません。これを考えるときは、莫大なものである。それを私が考えるのにこれは免れて恥なきものを信賞必罰を明らかにするためには、重要な地位にあつた者は遠慮なくやつてしまう。しばらく山の中へほうり込んでしまうというくらいに厳重にやれば改まるかもしれぬが、このままで行けば、課長のけつを係長が握つておる。係長の不正を下の者が知つておる。下の方は人夫に至るまで知つておる。この乱れておるときは、少くとも事務に支障を来さない範囲で、ある程度の者は山の中にほうり込んでしまうという式にやつてもらわないと、とても恐縮しておるとか、あるいはどうだというようなことでは——われわれはどれだけ海上保安庁人たちのために弁護して来たかわからぬ。地方へ漁業の調査に行けば、海上保安庁はやみをとつてばかりおつて絶対聞いてくれない、いやそれはデマであろう、待ちたまえとわれわれは漁民を押えて来た。しかしこういうような事実が現われて来ているのでは、そこまでかえないとほんとうに日本一の海上の保安、保安庁の職責は果せない。官紀の粛正が最も大事でありますので、当委員会としても今日このようにもんでおるのは、別に罪を重くしてやろう、軽くしてやろうというのではなく、そういうことは裁判所にまかせておけばいいので、われわれはどこに欠陷があるか、すでに綱紀が乱れ、官紀が乱れておることの一つの反省、どこに欠陷があるかということを見出すのがわれわれの目的でありますから、私どもといたしましては、そういうような線に持つて行くように希望いたしまして、あなたも次長をなされて長官になられたのであるから、大体様子はおわかりだと思うので、なお一層厳粛にやつていただくことを警告しておきます。
  176. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御発言がなければ、柳澤証人に対する尋問はこれにて終ります。証人には御苦労さまでありました。引続いて理事会を開くことにいたします。  一時半まで休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十六分開議
  177. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。税務行政に出する件につきまして、理事諸君と協議の上基礎調査行つてつたのでありまするが、すでに基礎調査も終了いたしましたので、六月十八日、国税庁長官高橋衛君、六月十九日、名古屋国税局長石原次郎君、三島税務署長梅田三郎君、静岡県田方郡韮山村村長久保田豊君、六月二十日、広島国税局長松田文藏君、松江税務署長毛利坂次郎君、島根県商工業協同組合理事長川島喜代治君、以上七名の証人を喚問して調査を進めたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  179. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは不正入出国に関する件について調査を進めます。  椎野悦郎証人より証言を求めることといたします。  椎野悦郎さんですね。
  180. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  181. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまより不正入出国に関する件について証言を求めることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことに相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、葉剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただたきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人椎野悦郎君朗読〕     宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  182. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  183. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしている場合にはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際には御起立を願います。  証人は元共産党員江川文彌君に面識がありますか。あるいはありとすれば、いつごろ初めてお会いになつたか。またその後何回ぐらいお会いになつているか。
  184. 椎野悦郎

    ○椎野証人 最近の新聞に江川君の写真が出ておるのを見て、どこか会つたような感じがするという印象はあります。しかしながらいつどこで会つたかという記憶ははつきりしません。     〔証人に書類を示す〕
  185. 篠田弘作

    篠田委員長 それをごらんになつても記憶はありませんか。
  186. 椎野悦郎

    ○椎野証人 つけ加えて言いますと、私はこういう顔を一ぺん見ております。それは徳田書記長が佐賀県で爆弾を投げられたあのときの犯人の、いわゆるつら通しをしましたときに、この顔に非常に似ておるのがいた。しかしながら若松でこういう男に会つたかどうかということになりますと、非常にたくさんな人に会つております。しかも党員でありますれば、党会議に出席いたしますが、一回に百名、二百名、多いときには五、六百名も集まるのでありますから、その中でよほどのことがなければ、会つた人に対する印象というものは残らない。この人間に特別の記憶があるかどうかということになると、ありません。
  187. 篠田弘作

    篠田委員長 それではあなたは、江川君が入党するために党本部に出頭した際に、入党の関係書類が未着であるということで手続ができなかつたときに、紺野與次郎君が江川君と面会しまして、これは確かに江川君に間違いないということで、江川君を入党さした、こういうことを江川証人がこの委員会で証言をしておるのでありますが、そういう事実をあなたは御存じですか。
  188. 椎野悦郎

    ○椎野証人 知りません。
  189. 篠田弘作

    篠田委員長 それから証人ちよつと申し上げますが、証言される際には委員長許可を得てやつていただきたいと思います。  そうしますと、あなたは江川君の顔は覚えておられない、あるいは会つているかもしれない、こういうように解釈してよろしいですか。
  190. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  191. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは江川君に対して昭和二十二年の夏ごろ、九州若松市において共産党員永山正昭君を介して江川に面会の上、共産党の資金獲得の目的で、朝鮮との密貿易を依頼された、こういうような事実はどうですか。
  192. 椎野悦郎

    ○椎野証人 まつたくありません。
  193. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは証人は日本共産党の一翼として、海上区または海上細胞というものが存在していることは御存じですか。
  194. 椎野悦郎

    ○椎野証人 海上区ですが、日本共産党の中には、党の機関としてあるのは細胞、地区委員会、それから県委員会、地方委員会、中央委員金、統制委員会、これだけの機関があるわけです。ところでわが党ははかの政党と違いまして、非常に党員の数が多いわけです。この点ではおそらく特審局あたりに届けておるのもわが党が一番多いじやないか。従いましてこの活動をいろいろ発展させるために、いろいろなグループをつくつているわけであります。御承知のように国鉄というような組織は、全国的に一つの流れがあるわけであります。従いまして国鉄の党員がそれぞれ、たとえば九州でありますれば、門司の機関区なら機関区というところで細胞がありまして、あるいは熊本の機関区がありますれば、そこの細胞というのがある。一つとしてまとまつて行動するために、国鉄は国鉄として、九州なら九州、中国なら中国というように組織して、組織的な活動を行うようになつております。そういう意味では、国鉄にも電産にもそういう組織があるわけであります。それと同じように海員に対しましても、やはり海員が独自の活動ができますように、そういう組織を持つているわけであります。しかしながら海上区というように、組織上はつきりした組織があるわけではありません。ただ海員の関係は船の出入りの関係上、横浜の細胞に属している者が佐世保に行きまして、そうして佐世保で土地の党員と一緒に活動するというようなことがあるのですが、そういう場合に、組織を一つにまとめて行動するために、海上組織というものを、海上区というふうに普通呼んでいるのであります。それからもう一つの御質問は海上細胞でありますが、共産党には海上細胞というのはありません。共産党の組織といいますのは工場、鉱山あるいは船、それから農村というように組織されるようになつておりまして、たとえば何々丸という船があれば、何々丸細胞というように組織されるのであります。従いまして、海員細胞あるいは海上細胞というような漠然とした細胞はないわけであります。
  195. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたのおつしやることは、電産や国鉄と同じ意味合いの、職場の活動がしやすいために海上の組織というものがあるので、海上区というものは別にない、機関としてはない、また海上細胞というものは存在しない、こうおつしやるのですね。
  196. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  197. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、そのかりに海上区と今言われている組織は、これは一体どこに所属しておるのですか。
  198. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党員はすべて細胞に所属しておるわけであります。従いまして海上区で行動する場合にも、それぞれはそれぞれの船の籍のある港湾の細胞、港湾の中のその船の細胞に属しているということになるのであります。
  199. 篠田弘作

    篠田委員長 「前衛」という雑誌は共産党の機関誌だつたですね。
  200. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  201. 篠田弘作

    篠田委員長 紺野與次郎君は共産党の何をやつておられますか。
  202. 椎野悦郎

    ○椎野証人 中央委員です。
  203. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、紺野與次郎君が中央委員として、共産党の機関誌「前衛一の一九四九年の四十四号に書かかれた記事は、あなたは御存じですか。
  204. 椎野悦郎

    ○椎野証人 おそらく当時読んだだろうと思いますが、内容ははつきり記憶しておりません。
  205. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは一応証言の便宜のために読んでお聞かせいたします。四十八ページから五十三ページまで、約六ページにわたつて書かれた相当の長い論文ですが、「統一えの道。海員組合百大学から学ぶ」。「紺野與次郎」という署名のもとに、「一九四六年の海上ゼネストは、再建された海員組合の中央地方執行部内にいた少数派の党員が、緊密な連絡をもつて全情勢をつかみ、その上にたつて大きな網をたぐるように、海員大衆を全国の港湾に引きよせ、港湾における船員大会、船舶代表者会議を指導しこれを全国船舶代表者会議にまで発展させ、この船代会議が、陸上でボス化している執行部に圧力をかけ、船代会議と執行部とが一対一の割合で闘争委員会をつくり、真に闘える態勢をつくつたのである。」紺野君が「前衛」で発表しているところによると、船の方の関係と、陸上における執行部とが一対一の割合で闘争委員会をつくり、真に闘い得る態勢をつくつた。しかも陸上で執行部がボス化しておる関係上、闘うためにこういうふうにしておるということを言つております。また別の行で、「この若松の一角で始められた活動は、長崎、佐世保、門司、刈田、鹿児島等、九州一円に拡げられ、長崎では九州商船の闘争が党によつて指導された。党の九州海上区は、海上にキソを確立し、海員組合の九州組織は、中央の右翼幹部の自由にならないものとなつたのである。一度、船内に有力な党組織ができると、船は港々をまわり、全国的組織の性質を発揮する。九州で入党した党員は、こうして全国的性質をもつて、活動を開始した。」そしてそのあとに「これらの海上活動の基地として、党のいくつかの海上区が堅実に強化されてきた。」ということを、紺野與次郎君があなた方の機関誌である「前衛」において、はつきり著名して言つておられるけれども、それでもこれは確立した組織場としては共産党は認めておらないのですか。
  206. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私の意見は紺野君の意見とまつたく同じです。私が言いますのは、これは常の機関でたいということを言つておるわけであります。つまり党の機関といいますのは、一つの人間は一つの細胞に属するわけです。従いましてそれぞれの細胞から選ばれて、その細胞の代表からずつと上級機関まで選出されます。そういう一つの共産党の流れの機関ではない、こういうわけであります。たとえば国会議員諸君を例にとりますと、非常に明らかではないかと思います。この諸君はそれぞれの府県の一つの細胞のメンバーであります。しかしながら国会内において活動するために、国会議員団というものを組織しております。その国会議員団と同じように、つまりそれぞれの船の細胞のメンバーが、海員組合とか、あるいは海上の闘争とか、一つ一つの問題につきまして活動する便宜上、海上区というものをつくつておる、こういうふうに私は証言しております。
  207. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、党はこの組織は認めておらぬわけですか。
  208. 椎野悦郎

    ○椎野証人 認めておらないことはありません。
  209. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう意味で認めておりますか。
  210. 椎野悦郎

    ○椎野証人 つまり機関ではないというふうに認めておるわけでおります。つまり国会議員団とか、あるいは国鉄中央グループとか、あるいは国鉄の地方グループとかいうのと同じような組織として認めておるわけであります。
  211. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると俗にいわれる海上区というものは、どこに所属しておるのですか。
  212. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それぞれ上級の機関に従属するわけであります。たとえば佐世保なら佐世保の例をとりますと、長崎県であります。長崎県委員会にやはり従属します。それからまた別個に党の労働組合部に属しておるわけであります。
  213. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると労働組合部の出した文書は、これは信憑性を信用してもさしつかえない文書ということができますか。
  214. 椎野悦郎

    ○椎野証人 労働組合部から出したものの中で、労働組合に関することは、やはりそれ独自の信憑性を持つております。
  215. 篠田弘作

    篠田委員長 海員組合の中央委員選挙について労働組合部から出した文書、こういう文書を御存じですか。     〔証人に書類を示す〕
  216. 椎野悦郎

    ○椎野証人 これを見ますと、用語からしまして共産党の用語と全然違います。従いまして、これは明らかに偽造された文書だと思います。
  217. 篠田弘作

    篠田委員長 それはそれでいいです。  そうしますと、あなたはそれぞれの地区委員会に所属しておると言われるけれども——地区委員会というのではないですか、違いますか。
  218. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それぞれの上部機関です。たとえば佐世保の場合には長崎県委員会というふうな例をあげたのです。
  219. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、佐世保へ入つた船で、佐世保で入党した党員は、長崎の地区委員会なりに所属するのですが、その船が今度またよそへまわつてしまつた場合、命令を発するあるいは指令を発するという場合には、長崎県の委員会から、その船を追つかけて発するということになりますか。
  220. 椎野悦郎

    ○椎野証人 長崎で入党しまして、長崎の地区に属する船員が、たとえば若松なら若松に行きました場合に、若松でやはり活動しなければならないわけです。つまりそういう活動をするための組織として、海上区というものができておるということを先ほどから述べておるわけです。それはちようどたとえば奈良県で選出されました国会議員が、奈良県で細胞に属して奈良県でも活動しておるわけですが、一旦国会議員として選出されました以上、国会で活動しなければならない。そういう場合に国会議員団を組織して、そこで活動するのと同じような状況のもとにあるというように言つておるわけです。
  221. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、海上区のメンバーというものは、それぞれの上部機関に属して、かつこれは合法団体として登録されておるわけですか。
  222. 椎野悦郎

    ○椎野証人 登録は一人が大体一回登録されております。従いまして船に属しておりまして、そうして何々丸におれば、何々丸の細胞員として登録されております。
  223. 篠田弘作

    篠田委員長 それではいわゆる正式の党の組織のうちには入らないかもしれないけれども、とにかく海上の特殊性というものによつて、活動しやすいような一つの組織として——海上区という名前がついておるかどうかということは、あなたの今の証言で、正式についておらないかしれないが、通称海上区と呼ばれておる組織があるということはあなたは認めますか。
  224. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  225. 篠田弘作

    篠田委員長 その海上区の組織で、今あなたの証言では船によつて登録済みであるというのですが、そういう海上区といわれるものにも、やはり一つの対策本部というものがありますか。海上区の集まり、若松なら若松海上区というものがありますか。
  226. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それは問題がありますれば、党員が集まりまして討議をして結論を出すわけですが、指揮系統はやはり本部の労働組合部から出す。それから具体的の問題につきましては、それぞれの府県委員会あるいは地区委員会から指導を受けるわけです。
  227. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、今紺野君が「前衛」に「党の九州海上区は、海上にキソを確立し、海員組合の九州組織は、中央の右翼幹部の自由にならないものとなつたのである。」ということを書いておりますが、これによつてもはつきりわかる通り、組織で、すでにもう共産党員自身が、中央委員自身が、九州の海上区は——中央の右翼幹部というのはどういう人たちをさすかわからないが、そういう幹部の自由にならないところまで行つておるのだということを、紺野君が署名して書いておる以上は、海上区の組織というものは、相当強固なる組織ができておるというふうにわれわれは考えるのですが、その点はどうですか。
  228. 椎野悦郎

    ○椎野証人 その場合の中央というのは、海員労働組合のことです。共産党の中央の右翼幹部に対して、海上区が云々するというようなことはあり得ません。全文を読んでおりませんのでわかりませんが、今引用されたところから考えまして、中央部というのは、おそらく海員組合の中央部をさしておるのではないかと思います。共産党の中央部ではない。
  229. 篠田弘作

    篠田委員長 それではこれはどういうように解釈いたしますか。「海員大衆を全国の港湾に引きよせ、港湾における船員大会、船舶代表者会議を指導しこれを全国船舶代表者会議にまで発展させ、この船代会議が、陸上でボス化しておる執行部に圧力をかけ、船代会議と執行部とが一対一の割合で闘争委員会をつくり、真に闘える態勢をつくつたのである。」陸上でボス化しておる執行部というのは、これは海員組合のことをいうのですか
  230. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。おそらく海員組合のことをさしております。
  231. 篠田弘作

    篠田委員長 それではいずれにしても、これが相当有力なる一つの組織を現実に持つておるということはあなたお認めになりますね。
  232. 椎野悦郎

    ○椎野証人 つまりその論文から受けますところは、海上区というものが海員組合の右翼幹部と闘う上に、非常に大きな力になりつつあるということを彼は立証しようとしたのじやないかと思います。
  233. 篠田弘作

    篠田委員長 と同時に——海員組合の陸上における幹部に対して闘える態勢を整えると同時に、共産党の海上細胞として、相当組織力を持つておるということはお認めになりますかなりませんか。
  234. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういうことも言えるかもしれません。しかしながら必ずしも共産党が大きくなければ、海上における闘争が大きくならないとは限らないわけであります。つまりわれわれの政策が浸透しておれば、共産党員は一人もおらなくても、やはり闘えることになるのであります。
  235. 篠田弘作

    篠田委員長 共産党は多い方がいいんじやないですか。
  236. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それはもちろんそうです。
  237. 篠田弘作

    篠田委員長 そのためにあなた方が党員の獲得をやつたり、あるいは細胞をつくつたりしておるので、党員が一人もなくても、共産党の主義主張が国民に浸透して行くというのならば、そういう方面の党員獲得活動はいらないことになるのじやないですか、どうですか。
  238. 椎野悦郎

    ○椎野証人 もちろん共産党が多いほど私は日本のためにもいいと思います。
  239. 篠田弘作

    篠田委員長 それが結局あなた方のお考えになつておる問題ですが、それでは海上区の活動というものについて、どういう活動をしておるのかということを一応述べてください。
  240. 椎野悦郎

    ○椎野証人 先ほどから述べましたところで大体私は盡きておると思う。私自身は直接海上区にタッチしておりませんので、具体的にどういう活動をしておるかということはわかりません。
  241. 篠田弘作

    篠田委員長 共産党という党は縦の党で、あなた方議長をやつておられて、とにかく海員組合にしろ何にしろ大きな一つの組織で、海上で闘い得るほどの組織を持つておる一つの具体的な組織が、どういう活動をしておるかということを御存じないということは、どうも受取れないのですが、その点はどうですか。
  242. 椎野悦郎

    ○椎野証人 一般的な党活動や、それから政治的な傾向についての御質問なら、お答えすることができると思います。しかしながら国鉄で今どういうような活動をやつておるか、あるいは電産でどういう活動をやつておるか、あるいは海員でどういう活動をやつておるか、炭鉱でどういう活動をしておるか、文化関係でどういう活動をしておるかということになると、非常に幅広いものになります。たとえばそれはお医者さんの組織から生活協同組合に至るまで、党員が働いておるところがあるわけでありますので、みなそれぞれ党員がその中におるわけであります。従いましてその全般にわたつて、具体的な活動をここで報告しろということになりますれば、何らかの資料なしには困難であります。
  243. 篠田弘作

    篠田委員長 では問題をかえまして、共産党員田中松次郎君という人を御存じですか。
  244. 椎野悦郎

    ○椎野証人 知つております。
  245. 篠田弘作

    篠田委員長 顔もよく知つていますか。
  246. 椎野悦郎

    ○椎野証人 よく知つております。
  247. 篠田弘作

    篠田委員長 この人が海上関係の、党本部の責任者であると言われておるのですが、それはどうですか。
  248. 椎野悦郎

    ○椎野証人 田中松次郎君は、関西中央委員会の議長であります。
  249. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、同時に海上関係責任者でもあるわけですね。その下部組織である以上は、そういうことが言えますね。
  250. 椎野悦郎

    ○椎野証人 海上関係責任者ということにはなりません。もつと広汎な意味責任者です。つまり関西の党全体についての彼の責任者であります。
  251. 篠田弘作

    篠田委員長 従つて海上関係をも把握しておるわけですね。
  252. 椎野悦郎

    ○椎野証人 国鉄も、電産も、何もかも把握しておるという意味においては、海上もやはり把握しておるわけです。しかしそれは関西に限定されるわけです。
  253. 篠田弘作

    篠田委員長 先般の江川証人証言によりまして、九州の若松海上区の責任者は、永山正昭君であるというふうに言つておりますが、永山正昭君という人は何をやつておる人ですか。
  254. 椎野悦郎

    ○椎野証人 海上関係の全国的なオルグであります。
  255. 篠田弘作

    篠田委員長 海上関係の全国的オルグ……。
  256. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ええ。
  257. 篠田弘作

    篠田委員長 オルグといえば組織する人でしよう。
  258. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  259. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすれば、やはり海上関係というものは、一つ責任者を置いて組織しておることになるのじやないですか。
  260. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それは国鉄でも何でもすべて同じであります。国鉄関係のオルグあるいは海上関係のオルグ、電産関係のオルグというものを堂はたくさん持つております。
  261. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、オルグとしては一つの組織であるけれども、党員としては一つの組織になつておらない、こういうことですね。
  262. 椎野悦郎

    ○椎野証人 たとえば永山君の例をとりますと、永山君は中央オルグでありますから、これは本部細胞であります。そういう意味であります。
  263. 篠田弘作

    篠田委員長 この間江川証人がはつきりと、あなたに頼まれて、党の活動資金が非常に不足しておる、そこで朝鮮との密貿易をやれば非常にもうかる、ひとつ君、何とか骨を折つてくれないかということを頼まれて、九州で船員の関係とか、あるいはそういうものを組織してやつた、そのときにあなたから特に、なるべく党員を使わないでくれ、またばれた場合には、党に関係のないようにしてくれということを委嘱されたという証言をここでしておつたのです。あなたはそういう人を記憶にないとおつしやり、頼んだ覚えもないというように先ほど言われましたけれども、それならば頼んだ覚えもないし、記憶にもないような人間から、少くとも共産党の最高幹部であるあなたが、われわれから言えばもちろん汚名ですが、あなたから言つて汚名だと思うが、汚名を着せられて、新聞に大きく発表されて、それに対して何らかの対策がとられたかどうか、とられたとしたならばどういう対策をとられたか、御証言願いたいと思います。
  264. 椎野悦郎

    ○椎野証人 十八日の「毎日」の夕刊で、私最初にここで証言する機会が與えられたということを知りました。それで夕刊ですから、翌日が十八日です。翌日さつそく参議院の同志を通じてこのことを問い合せました。そうしたところが、そういう事実はないという報告があつたわけです。そこで、おそらくこういうことは問題になり得ない内容なんです。たとえば新聞に出ておるところを見ましても、これは新聞では二つ出ておりますが、一つは二十一年の夏に私がそういうことを頼んだ。その次は二十二年の六月あるいは二十二年の夏、これは「読売」と「朝日」によりまして内容が違います。ところが彼はそのとき私は統制委員として彼にこういうことを依頼したということを述べておるようであります。しかしながら私が統制委員になりましたのは、二十二年の十二月の第六回大会においてなつたので、従いまして私が統制委員になる以前のことを、彼が統制委員として私と会つたというような——今統制委員をやつておりますから、それにさかのぼつてつたということは、非常につじつまの合わないことであります。それから彼が、一番最後だと思うのですが——二十二年の春とか夏とかという期日を考えてみましても、このごろは私は九州にはほとんどおらなかつたのです。と言いますのは、二十二年の四月に選挙が行われた。選挙に私は立候補しております。立候補したのは、彼が私に会つたという若松ではないのであります。福岡県の四区から立候補をした。選挙の前後を通じまして私はここに行つております。それから選挙が終りましても、ここで跡始末をしております。それが済みましたら東京に帰つて来まして、そうして中央委員会やその他の会議に出席しております。従いまして、私が全然九州におらなかつたころ、こういうことを彼に頼んだということになるのであります。従いましてこういう偽りのことが長々論議されて、そうして私に汚名が着せられるということは、実にばかげたことだ、こういうふうに考えております。
  265. 篠田弘作

    篠田委員長 江川君の証言は、統制委員であるあなたに頼まれたというようには言つておらないのであります。速記録によりますと、こういうふうに言つております。「昭和二十一年の春と思います。月は何月か今のところは記憶はいたしておりませんが、そのときに私が若松地区委員会に行きましたら、永山正昭氏が、実は椎野氏が君と会いたいと言つておる。それであす晝ごろまでにここへ来て椎野悦郎に会つてくれないかという話が出たのであります。それで私もそれを承認いたしまして、次の日の夕方、夕方と申しましてもまだ明るいうちでございます。地区委員会で私と椎野悦郎氏、それから永山正昭氏に、それからもう一人は名前は今記憶がよみがえられないでわからぬのでありますが、折尾という駅の購買部のそのころ責任者だつたと思いますが、その人と四人で会いまして、椎野悦郎から、現在の党の財政は、君も知つておる通り非常に苦しんでおるのだから、君もひとつ力になつてくれということなんです。その力になるということに対して、具体的なことは、と私の方から質問しましたら、今日本から船員がどんどん向うの方へ品物を持つてつたり、向うから持つて来たりして売つておるということを聞いておる。それに相当利益があるらしい。だから、君の方でそれをやつてくれないかということになつたのであります。それで私どもとしましては、それをやることにいたしましても、いろいろこまかいところまで、方法とかそういうことを聞かなければ危険でできないということを話しましたら、向うの椎野の方の條件としましては、なるべく党員を使わずに、非党員を使うように、そうしてもし一つの船、または一人の船員が、そのことによつて逮捕された場合には、全然党の方に影響がないよつにつながりをつけておくな、それから朝鮮に持つて行く品物は、折尾の売店の責任者がそのころ九州において集めるからということなんです。それで連絡さえあればいつでも持つて行つて自分が船員に渡す、また向うから来た品物は連絡さえあればいつでも若松の方へ持つて来て、そこで取引をするということなのであります。」こういうように証言しておるので、統制委員のあなたと話し合つたということも言つておりません。それからちようど二十二年の夏、こういうように言つておる。この点はどうなんです。
  266. 椎野悦郎

    ○椎野証人 まつたく事実ないことでございます。従いましてないことである以上、詳しくここで証言する必要はないと思いますが、私の見た新聞では明らかに統制委員ということを述べておる。これを引用させていただきたいと思います。これは五月十七日「朝日」からの引用でありますが、ここにはこういうように書いてある。「二十二年六月ごろ、日共九州地方海上区議長永山正昭氏の紹介で入党、若松地区委員会の常任となつたが、同年夏、若松地区委で永山氏から、当時日共本部統制委員つた椎野悦郎氏に引合され、」云云となつております。それから北海道新聞の記事の切抜きを見ましても、やはり統制委員ということを述べております。しかもそれは当時ということを明らかに述べておる。
  267. 篠田弘作

    篠田委員長 それは新聞でありまして、国会はこういうふうに委員会では速記をとつておりますから、速記録によつてわれわれの方はその証言を調べるわけであります。
  268. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は、議長の方がなぜ手を打たなかつたというあれがあつたから、つまり私が統制委員になる以前に統制委員であつたという一事を見ましても、こういう信憑性のない問題について、あまり煩わなかつたということをここで証しているわけであります。
  269. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、自分自身が考えて、江川君の言うことことごとくが、信憑性を帯びると足らないものだから手を打たなかつたと言われるけれども、しかし新聞なりラジオなりというものは、これは天下の公器ともいうべきもので、何千万か何百万かの人間がこれを読んでおる。そのうち盲千人、目明き千人の世の中であるから、それを信用して、共産党というものは議長まで密貿易をやつておるというように考える国民があるかもしれない。それをお考えになりましたか。
  270. 椎野悦郎

    ○椎野証人 先ほど言いましたように、全然手を打たなかつたわけではないのです。つまり十八日付の夕刊毎日を見まして、さつそく議会に問合せをしております。ところが全然召喚などということはないということであります。念のためにこの毎日新聞を読んで見ますと、こういうように書いてあります。「密貿、密航を俎上にした衆議院行政監察特別委員会は十六日の元日共海上委員江川文彌証人(二七)が「椎野悦郎氏(現日共臨時中央指導部議長)から指令をうけて密貿に従事した」という証言を重視十七日内藤隆議員から問題の椎野氏の喚問動議が提出され来る二十五日同氏を証人喚問する。」というように新聞は書いておりまして、従いまして私は二十五日に召喚があるかどうかということを問合せしたところ、そういう事実はないという回答なんです。
  271. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは衆議院の行政監察委員会がこの問題を取上げて、あなたの証人喚問をきめておるのに、どういうわけで衆議院に聞かないで、参議院に聞かれましたか。
  272. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私の方の議員団は、衆議院も参議院も一本であります。つまり早く連絡がついたところへ聞いたわけです。これは参議院を通じてということは、つまり結局におきまして党の議員団に聞いたということであります。
  273. 篠田弘作

    篠田委員長 党の議員団……。衆議院の中から、あなたの方もこの委員会に二人の委員を送られ、特にそのうちの一人はおそらく理事だと思いますが、理事になつて理事会に出席されておる。それがそういう参議院と衆議院の一本の議員団でありながら、いやしくも議長の問合せに対して、そういう事実がないということを衆議院に問合せしないで、参議院の人がそれでは答えたのですか。
  274. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうではありません。私が頼んだという者が参議院におりますから、私は参議院ということを特別に言つたわけでありまして、参議院で調査するとか、あるいは聞き合せるとかいうような意味ではありません。つまりちようど参議院から来た人がおりましたから、こういうことがあるから、すぐ行つて調べて返事してくれということを頼んだ、ということを述べておるのであります。
  275. 篠田弘作

    篠田委員長 そこで、ないと言つたから旅行されたわけですね。
  276. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  277. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、第一回の場合はそれでも済んだわけでありますが、もしあなたが、ゆえなくしてこの委員会の喚問に応ぜられないというふうに委員会が認定した場合には、委員長は義務としてあなたを告発しなければならぬという法律の規定が国会にあるのであります。そういう大きな問題、うつかりすれば自分が告発されなければならないというような問題に対して、ただ参議院の事情を知らない人からちよつと聞いただけで、おれは呼ばれないのだと思つてあなたは旅行されたというふうに解釈していいですか。それともそれが絶対の責任者であるから、旅行されたというふうに解釈していいですか。
  278. 椎野悦郎

    ○椎野証人 おそらく監察委員会にどういう機関があるか知りませんが、そこの書記局、あるいは事務局というようなものがありますれば、そこに尋ねに行つてもらつておるわけであります。そこからの返事によつて私は行動したのであります。従いまして頼んだ人の個人の判断で行動したわけではありません。
  279. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたがお頼みになつたのは参議院の何という人ですか、あと調査しますが、そのお名前をちよつとおつしやつてください。
  280. 椎野悦郎

    ○椎野証人 参議院の共産党の方の事務局の國峯君に私は尋ねております。
  281. 篠田弘作

    篠田委員長 きようは証人として喚問してないから聞くわけには行きませんが、あなたの党から山口代義士が理事会に出席されておつたのであるから、万が一山口代議士にお聞きになれば、そういう問題ははつきりしたと思いますが、それはそれでよろしゆうございます。
  282. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は山口君に会えば、山口君に尋ねておつたに違いありません。またほかに衆議院の人に会えば、衆議院の人に尋ねておつたに違いありません。ただ、ちようどつたから、私は新聞を示してこれならば二十五日は問題だから、一ぺん早く調べてみてくれということを頼んだということを証言しておるわけであります。
  283. 篠田弘作

    篠田委員長 わかりました。  前の質問にもどりますが、さつきとるに足らない者であるから、問題にしなかつたというふうにあなたは言われましたが、今言つたように江川そのものはとるに足らない者であつたかもしれませんが、すでにラジオ、新聞という天下の公器を通じて全国民にそれが報道されておつた以上は、その結果までもとるに足らないというふうに考えられるかどうか、それをひとつ……。
  284. 椎野悦郎

    ○椎野証人 わが党に対する中傷やデマというものは、この問題に限らず今ますしばしば行われております。非常にたくさん行われておると言つていいかもしれません。それはたとえば三鷹事件などを見てもそうであります。しかしながら最後において真実が勝つということを確信しております。従いまして一つ一つについてそう煩わして、これでもつて自分の行動を決定するというようなことはやらないつもりであります。
  285. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、今後いかなるデマがあなたの上に飛ばされても、名誉毀損とか告発というようなことは言われませんか。
  286. 椎野悦郎

    ○椎野証人 もちろんそういう不正に対しては闘わなければならないと思います。われわれは不正と闘うために共産党を組織しておるのであります。
  287. 篠田弘作

    篠田委員長 どうしてこの不正と認定されるかもしれないことに対して、適当な処置をあなたはとられなかつたか。
  288. 椎野悦郎

    ○椎野証人 新聞に出たところを愼重にしさいに見て行けば、実に子供じみた、正気の人間のかような問題の立て方でないと私は思います。
  289. 篠田弘作

    篠田委員長 それはあなたの認識であつて国民の認識というものは違うのではないですか。
  290. 椎野悦郎

    ○椎野証人 だから先ほどから私は、結局において正しい者が勝利するということを確信しておるということを述べております。
  291. 篠田弘作

    篠田委員長 しかしその場合、あなた自身が何もやつておらないとするならば、当然江川を告発するなり何なりして、一つの国家的な機関に訴えてそれを争うということによつて、あなたが正しいということを国民の前に認めさせるという手段があつたと私は思うのだが、大部分か、あるいは何パーセントの人間かわからないけれども、あなたが沈默を守つておることによつて、椎野がやはり頼んだという解釈をする国民があると思うが、それに対する解決はどうされますか。
  292. 椎野悦郎

    ○椎野証人 これを告発するかどうかということは私自身の問題でありまして、それはここで証言しなくてもいいと思います。このデマに対しまして私が今後どういう態度をとるかということも、もしどうしても証言しなければならないのでありますれば、証言してもよろしゆうございますが、これは私自身がこういう不法な者に対してどういうふうに闘うかということにつきまして、いろいろ問題があるわけでありまして、従いまして、できればここで証言しなくてもいいのじやないかと思います。
  293. 篠田弘作

    篠田委員長 あなた御自身の行動については、ここで今証言する必要はありません。しかし江川の証言によりますと、その後共産党から非常な圧迫を受けて、上芦別に帰る途中に、道を聞かれたときに、自分がうしろを向いて答えた。ところがそこへナイフか何かで傷つけられた。裏切り者といつて傷つけられた傷がまだ残つている、江川証人はそういうふうに言つておりますが、あなたは最高幹部として、その証言に対してどういうふうにお考えになりますか。
  294. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういうばかなことはあり得ない。特に共産党員がそういうことをするということはあり得ません。
  295. 篠田弘作

    篠田委員長 委員の諸君から何か……。
  296. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さつきの海上区の説明ですが、われわれにはよくわかりませんが、要するに委員長の聞かれたところを総合しますると、海上区という党の機関はないが、そういう活動のオルグがある、こう聞いたのであります。そうしてみれば、海上区という名前で党の活動と同一のことをやつておることは間違いありませんか。
  297. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党の機関といいますが、私どもが発表しております規約をごらんになつていただけば非常に明らかになると思います。すなわちすべての党員は、第一に細胞に属するということを述べております。細胞を指導する機関というものを明示しておるわけであります。それは細胞の代表によつて選ばれる地区委員会、地区委員会の代表によつて選ばれる府県委員会、それからその上の地方委員会、中央委員会、こういう機関が党の組織であります。これはもし組織という言葉を——ひよつとすればあなたのお考えになつておる組織という概念と、共産党内で言つておるのと違うかもしれませんが、しかしながら共産党で組織とか機関とか言いますれば、これをさすわけであります。そういう意味において、海上区は党の機関でないということを述べておるわけであります。それはやはり国会議員団が党の機関でないというのと同様であります。つまり海上区といいますのは——党員が国会内で活動するために国会議員団を組織いたします、解散があれば国会議員というものはそれぞれ元の細胞に帰るわけであります。それと同じように、海上の活動をするために、一定の條件におきましてそういうものをつくりまして統一的な行動をとるということを行うわけであります。そういうことを証言しておるわけであります。
  298. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうして見ると、党の規定で定まつた機関ではない、こういうことだろうと思いますが、事実上において活動の単位になつておることは、今のあなたの証言でよくわかりました。そうして見れば、われわれが見たら一つのりつぱな組織体である、共産党の活動する単位、こう見ざるを得ないのです。あなた方は党則の上で、ならぬと言われるかもしれないが、われわれから見たら組織体があつて、それか活動の単位になつておる、その上に共産党というものがある。そういうものが事実上あることだけは否定できないじやないか。
  299. 椎野悦郎

    ○椎野証人 これは適切な例かどうかわかりませんが、たとえば自由党なら自由党の中で総務会とかいろいろな何があると思います。それらはやはり一定の行動のためにつくられておるものだと思います。そういうやはり組織であるということであります。つまりそれぞれが何と言いますか、それを基礎にしていろいろ活動を行うというときに、便宜的にそれぞれつくるわけであります。そういう組織であるということを言つておるわけであります。
  300. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも、組織であると言いながら——党の党則上きまつた機関でないかは知らぬが、一つの組織であつて、それが活動の単位になつておるとすれば、その組織はりつぱな党活動をしていると認めざるを得ないのですが、それでも党活動でないと言われるのですか。
  301. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は党活動をやつておらないとは言つておりません。むしろ党活動を旺盛にやらなければならないものであるというように私は証言しておるわけであります。
  302. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすれば、党活動をしておる一つの単位ではあるが、あなた方から見て党の機関としてはおらない、こういうことで、従つて届出もしておらぬ、こういうことですか。
  303. 椎野悦郎

    ○椎野証人 御承知のように、団体等規定令による届出は、一人が二つも三つも一つの組織内に届け出るものじやないんです。海上区に属しておる諸君は、すべてそれぞれの船なり、あるいはその陸上の彼らの働いておる職場なりの細胞員として届けられております。従つて届出はやつておるということになつております。
  304. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この間ほかの証人から聞きましても、いろいろビラ等にも海上区という名称で出ておるというのですから、そういうものは外部に対しても海上区というもので、一つの活動のときに、その名前で活動しておられることは事実でありますか。
  305. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それはたとえば国鉄中央グループとかいう名前で活動をしております。電産中央グループという名前で活動をしております。海上区という名前で活動をしております。
  306. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 次に承りたいのは、江川と会つたような記憶はあるが、どこでだれと一緒に会つたか覚えないと言われるのですが、そのほか江川に対して何かあなたの印象に残つたり、いろいろ話を聞かれたりしたことはございませんか。
  307. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ありません。
  308. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたは江川は病人だと言つておられたそうですが、そういうことはありませんか。
  309. 椎野悦郎

    ○椎野証人 病人だとは言いません。正常な状態じやないようだということは言つております。証言が非常に違つている。私が統制委員でない時代に、統制委員として紹介された、また私が若松におりそうでないときに、若松で会つたということを証言しておることが、どうも正常でないようだということを、先ほどから言つておるわけであります。
  310. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではあなたは江川については、その今お読みになつた新聞記事以外には知識はないわけですか。
  311. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  312. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、あらためて聞きますが、今委員長から、新聞の記事と違つた速記録でありまするが、その速記録を読まれて、ただいまどう考えておりますか。
  313. 椎野悦郎

    ○椎野証人 新聞の記事と大してかわつておらないと思います。つまりあそこへ行つたのは——ここで彼が述べておるのは、統制委員としての私と会つたということを述べておるわけです。しかしながら彼は、北海道新聞の投書、これはおそらく北海道新聞にそのまま載つたものと思うのでありますが、その中にはやはり当時統制委員としての私に会つたということを書いております。
  314. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 春だから若松におらなかつたと言われるが、夏だつたらどうなんですか。
  315. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は始終九州に行つてつたわけです。なぜなら私の家族が九州におる。しかし若松ではありません。あるいは私は九州に夏なら行つてつたかもしれません。しかしながら、それははつきりした印象に残つておりません。ただここで、つまり彼が述べておりまして、新聞に出ておりますので、その当時どうしておつただろうかということを考えてみましたら、その前後において私は自分の選挙区で選挙活動を行つてつた。選挙が終りましたら、選挙の報告のために全国の党の集会に出席しておつたということ、このことが浮び出したのであります。
  316. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それは春だと載つてつたから、あなたはそうお考えになろうが、今は夏だと言つておるのです。そうして見れば、あなたのそのときに浮んだことと、ただいまとは違つておるべきはずなのです。それを私は聞いておる。あなたは春だからおらぬのだから、こんな者は相手にならぬと言うが、それなら夏だつたらどうかというのです。
  317. 椎野悦郎

    ○椎野証人 夏に私は九州におつたかどうかということは、それは今静かに考えておりませんから、記憶には残つておりません。しかし少くとも永山君と一緒にこの男に会つたかどうかということになりますれば、それは印象に残る問題であります。従いまして私は会つておりません。
  318. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これ以上あなたとは議論してもしようがありません。あなたはそれだけのことで、一笑に付すべきものと思われるかもしれぬが、われわれはそう軽々に付すべきものとは考えません。あとは議論になりますから、やめます。  その次に私が聞きたいのは、元大安丸の事務長をしておつた有馬敬なる者を御承知ありませんか。
  319. 椎野悦郎

    ○椎野証人 全然記憶にありません。
  320. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 何か海員組合その他のことで、記憶のあるようなことはございませんか。
  321. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は終戦からかなり後まで、おそらく江川が言つておる時期までもそうだつたと思うのですが、炭鉱関係の指導をやつてつたのです。従いまして、海員問題については全然タッチしておりません。
  322. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 共産党に海員組合中央委員というものがありますか。
  323. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういうものはありません。
  324. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、中央委員というのは党の中央委員だけですか。特に海員から選ぶ中央委員というものはあるのですか。
  325. 椎野悦郎

    ○椎野証人 共産党には、そういう中央委員はありません。中央委員というものは、党の全国大会で選ばれるのです。その中央委員は、現在全部追放されましたが、あの連中だけであります。
  326. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 中央委員になるような者は、これは選挙か何かあるのでしようか。
  327. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  328. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうものの候補者になつたりした者ならば、たいていあなたは名前は御記憶ありませんか。
  329. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党の中央委員でしたら、全部記憶しております。
  330. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 有馬は中央委員になつたかどうかは知りませんが、海員組合から出る中央委員の候補者——おそらくこれは海員組合から推されたのだろうと思う。そういう人物であると聞いておるが、それならばあなたの記憶にあるはずだと思うが、どうですか。
  331. 椎野悦郎

    ○椎野証人 彼は共産党の中央委員に選ばれたこともなければ、候補者に上つたこともありません。
  332. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 労働組合ならば、これは御承知ありませんか。
  333. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それはとてもたくさんありますから、記憶できるものではないと思います。
  334. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 昨年の暮れ、ずいぶん多くのいわゆるレッド・パージなるものがありましたが、商船管理委員会において、レッド・パージでいろいろ騒いだことについては記憶ありませんか。去年の暮れからことしの一月にかけて……。
  335. 椎野悦郎

    ○椎野証人 レッド・パージ当時は、いろいろなところで騒ぎが起つたと思います。しかしながら、あなたが今おつしやつたところで騒ぎが起つたかどうかということについては、記憶はありません。
  336. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 証人に二、三お伺いいたしますが、先ほどからの証人証言によりますと、江川なる者に対しては、会つた記憶がないということでありましたが、一番最初に委員長から新聞記事と写真を提出されましたときに、こういう顏は見たような記憶があるということになりますと——今私はどこで会つたと追究するのではありませんが、見たような写真だということになると、あなたの頭のどこかに、いくらかでもその顏が記憶にあるということだけは認めてよろしいでしようか、それを承りたい。
  337. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういう漠然たる記憶を持つている人は、私たくさんあります。その中の一人としてなら、私は見たように思います。
  338. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それはそれだけにしておきます。  次は、あなたをお呼びしたということについては、江川なる者の証言がほんとうに正しいものであるか、あなたの証言が正しいものであるかということは、みずからこの委員会が判断しなければならないのであります。そこで私たちは、今のところはどちらが正しいかという結論には達していないのでありまして、そこをわれわれは、あなたの証言によつて確かめようとするのであります。そこで要するに、江川なる者があなたに会つたということは、いわゆる永山正昭なる者を介して、あなたの、いわゆる共産党資金獲得の目的で、朝鮮との密貿易によつて資金を獲得しようとする依頼を受けたのだということであります。そのことについてわれわれは究明しなくちやならないのでありますが、私のお伺いしたいのは、党資金のことであります。党資金が今非常に枯渇しているのだ、共産党では困つているのだということの証言でありますが、大体でよろしゆうございますが、現在党資金が困つておるか困つていないか、まずそこから承つて行きたいと思います。
  339. 椎野悦郎

    ○椎野証人 いつの時代でも、やはり党資金は私は困つておると思います。しかしながら、どうにもならないというような時代はありませんでした。それは選挙などにも、やはり十分活動できるだけの党資金は、私は党はささえておつたのじやないか、こういうふうに考えます。
  340. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 いずれの政党におきましても、党を運営する上においては、資金が十分であるという政党は少いと思います。そこであなた方も責任者として非常に御苦労なさつておる点は、われわれも党員の一員としてうかがうことができるのであります。そこで現在共産党が——もちろんあなたは、各党の中でも一番人数がよけいあるのだ、全国第一の党員を持つておるのだという御証言でありましたが、現在党員がどれくらいいて、それからいわゆる党員の会費ですか、党費ですか、それがどれくらい入つてということの、大体の御証言を願いたいのです。     〔「関係があるか」「十分ある」と呼ぶ者あり〕
  341. 椎野悦郎

    ○椎野証人 関係ないという発言もあるのですが、しかしながら、今現実にどれだけ入つておるという御質問でしたら、私には見当つきません。これは御必要がありますれば、それぞれ会計責任者がおりますから、それらに聞いていただきたいと思います。ただ規約にも、党の財政についての原則が示されております。これは発言されている規約に示されております。党の財政は、党費と、それか寄付金と、党事業といいますか、つまり今禁止になつたが、「アカハタ」という新聞の経営、それから現在では「前衛」とか、「新しい世界」とかいう雑誌の発行、これらの利益によつてささえることになつております。党費は月収入全体の一%ということになつております。たとえば一万円とる人ですと百円ということになります。そして全体としまして党員の数は、これも正確にはわかりませんが、私は大体六万から十万の間を動いているのではないかというように考えます。しかしこの数字につきましては、私ははつきり断定はできないわけでありますから、その点申し上げておきます。
  342. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうしますと、共産党員としてのあなたの記憶にありますただいまの党員は、六万から十万というように了承してよろしゆうございますか。
  343. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  344. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そこで党費は、いわゆる……。
  345. 椎野悦郎

    ○椎野証人 一%です。
  346. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 一%ですか。そこで日本の共産党の中には、日本人並びに日本に在住する朝鮮人等も入党されておられることだと思いますが、朝鮮人の党員が大体どのくらいおりますか。あなたは全部こまかく知りようはずがありませんから、大体朝鮮人の党員はどのくらいいるかという御記憶がありましたら、ひとつ御証言願いたい。
  347. 椎野悦郎

    ○椎野証人 朝鮮人が全国においてどのくらい入つておるかということは知りません。それは調べたらすぐわかるだろうと思います。しかしながら党で毎月統計をとつておりますが、労働者が何人、インテリゲンチャが何人、農民が何人という集計をとつておりまして、民族によつて差別的な集計をとるようなことになつておりません。全然記憶ありません。
  348. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 共産党に入党するときには、やはり生年月日とか住所、氏名、あるいは原籍というようなものをお調べ——というよりも、入党の際はそういうものが必要ないのでございますか。
  349. 椎野悦郎

    ○椎野証人 入党申込書にはそれを書くことになつております。
  350. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうしますと、人種的な差別をしないのはあなた方の思想からいつて当然でしようが、この人は朝鮮人である、ここの人は朝鮮の生れだということは、わかることはわかるのではありませんか。
  351. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それは漠然としてはわかります。しかしながら最近はやはり日本に原籍を持ち、あるいは原籍とは言えないかもわかりませんが、日本に長く住居して、そして日本の名前を使つている。これは彼らにとつて非常に不名誉なことじやないかと思いますが。そういう人が多いのです。これは克明に検討して行けば、あなたのおつしやる通りにわかることだと思います。しかしながらこれを克明にやつてつたのでは、党の仕事がそれにさかれなければなりません。従つてそういうことはほんとうにやつておりません。
  352. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 各地に日本共産党と書いて、そこに朝鮮人連盟とか、いろいろ名称は違うでしようが、共産党の中に、朝鮮人という特殊な組織というものを今認めているのですか。それともそういうものは全然なく、やはり一般日本人と同じように地区委員会の中に入つているのですか、それを承りたい。
  353. 椎野悦郎

    ○椎野証人 共産党と朝鮮人連盟は違うわけでありますが、朝鮮人連盟が公然とありましたときには、やはり国鉄労働組合の中にグループがありますように、朝鮮人のグループというものが朝鮮人連盟の中にありました。しかしながらこれが解散しました後には——つまりグループというのは、大衆団体ではそれを中心とする組織の中にあるわけでありますから、あなたのおつしやるような朝鮮人のそういうものはないわけであります。従つて大体におきまして、党は朝鮮人でありましようとも、日本人でありましようとも、一つの工場で働いておりますれば、その工場の細胞に組織されるというのが規約に定められた原則でありまして、居住でしたら、そこに日本人も朝鮮人もともにおりますれば、やはり一緒に組織されるということが原則であります。
  354. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もう一つ私が朝鮮人関係でお伺いしたいことは、この委員会においてもずつと密出入国の問題を取上げてやつて来たのでありますが、密出入国者の大部分は朝鮮人なのでございます。そういう点から行きまして、党員になるにはそういうことは全然関係なく入党させておられますか。とにかく入党する者は、入党申込書を持つて来ればただちに入党させるのか、それとも他の政党のように、二人あるいは三人以上の紹介とか、また身元がはつきりしているとか、あるいはまた外国人登録がはつきりできているかどうかというようなことを、共産党に入党させる場合はお調べになりますかなりませんか、その点承りたいと思います。
  355. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党員になる條件としましては、一定の組織に属しまして、党活動を行い、党費を納める、そして党の決定に従うということだけが條件であります。しかしながら具体的に入党させますときもやはり條件があります。それはいろいろ階層によつて違いますが、一定の歳月一緒に活動した人を、二人以上の者が推薦することになつております。もつともこれは規約が終戰後二回改正されておるわけでありますが、最初の規約では一定の年限を見るというようなことはありませんでした。それでそういうことなしに入党している党員も現在おるわけであります。しかしながら現行規約はやはりそういう制限を付しております。今入つて来る党員というものは、すべてその制限に従つて入党するということになります。
  356. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 朝鮮人の中には、必ずしもサラリーマンとか一定の固定した収入を持たない人もあるだろうと思うのですが、一%を党費として納めてもらうという場合に、全然職業がない、あるいは他の人に世話になつておる、それでも共産党員になりたいという人たちに対して、党費というものはどういう方法でおとりになりますか。それとも全然とりませんか、その点承りたい。
  357. 椎野悦郎

    ○椎野証人 実際上食えずにおる人から党費をとるということは、やはり困難だと思います。従いましてやはり党費の滞納というものがかなりあるわけでありまして、党の財政の中にも、そういう形で残つておるのではないかと私は思います。しかしながら、これはとれないところはとることができませんが、収入があれば、原則として一%納めるというのが、ずつと一貫してとられて来ておるところでございます。
  358. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 日本共産党員の中には、国籍を問わず、朝鮮人も日本人もみな入つておるということでありますが、われわれ今日まで新聞やその他のもので記憶しておるところによりますと、朝鮮人の、しかも日本の共産党に籍を置く者が密貿易をやつたとかいうことで、今まであげられた数をわれわれはある程度知つておるのですが、推野さんはそういうことがあつたかどうかということは一つも御存じありませんか、あるいはいくらか知つておりますか、その点承りたい。
  359. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は党員がそういうことをやつたということについては、全然知りません。
  360. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 先ほどそういう傷つけるような共産党員はいないということでありましたが、ひとつ承りたいのは——これは共産党の正しい行き方を国民に知つてもらうことは、あなた方としても必要だと思うのです。九州の地区委員長とかいつておりましたが、これは委員長かどうか知りませんけれども、赤塚敏夫という人をあなたは御存じですか。
  361. 椎野悦郎

    ○椎野証人 九州の地区委員長であるかどうか知りませんが、しかし赤塚という姓の者が九州の電産の中におりました。つまり電気産業労働組合です。その中の、多分地区委員ではなかつたかと思います。
  362. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 私の伺つているのは、赤塚敏夫という人が共産党としておられたかどうかということです。
  363. 椎野悦郎

    ○椎野証人 あなたのおつしやる赤塚敏夫という人かどうか、私は記憶しないわけであります。しかし赤塚という姓の者が党員としては電産におりました。それはおそらくこの前かその前かの参議院議員か衆議院議員、あるいは知事か何かわれかりませんが、候補者として立候補しております。それで記憶、しております。
  364. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 立候補したのを記憶していると言いますが、この人は福岡の人ですか。あなたも福岡にお宅があるのですが、福岡の人間であることを御存じですか。
  365. 椎野悦郎

    ○椎野証人 つまり一番最初にはつきりしておかなければならないことは、姓だけは知つておるということであります。だからあるいは同姓の人で、私が記憶しておるというのと、あなたが御指摘になるのとは全然違うかもしれません。しかしながら、とにかく電産におる赤塚は、さつき申したように、地方議会の議員か何かに立候補したというのは知つております。
  366. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 この人が共産党員であることは、これは事実なんですが、九州のいわゆる労働者の労働組合闘争資金の中から、大体二人でですが、百五十八万円ですかね、これを使い込んで福岡地検の問題になつているのは、あなたは御承知ですか。
  367. 椎野悦郎

    ○椎野証人 思い出しました。それは赤塚という名前では記憶しておりませんが、そういう事件があつたということは知つております。しかしそれはやはり第一に私どもの責任だと思つております。なぜなら、そういう人たちをりつぱに成長させることができなかつた、教育させ得なかつたということは私たちの責任であります。しかしながら党員も非常に多いのであります。その一人々々がどういう習性を持つているかということを知ることができないのですから、それを知つて入党させるということは事実上不可能じやないか。そういう悪事を犯した者が党員の中に入つてつたということは事実であります。しかしながらこれの一番大きな責任は、われわれが導き得なかつたというところにあると私は考えております。
  368. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 私はこれをあなた方の責任といつて、追究するために言つているのじやないのですが、これが共産党員でありまして、まあ率直に椎野さんは指導が十分行かなかつたことは遺憾であるということでありましたが、この人がただちに共産党から、その事件を起すと除名されたのですが、それも御存じでございますか。
  369. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それは当然私は除名になるだろうと思います。それはなぜなら、党の目的と違う行動を彼はとつておるわけであります。つまり党のその目的のためにわれわれは団結しておるわけでありますが、目的と全然違う行動力とりますれば、それはその人の生活の信條といいますか、そういうのが違うわけでありますから、本人が党から離れるか、あるいはわれわれが除名するか、ともかくたもとをわかたざるを得ないことは明らかであります。
  370. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 これは速記録をお認め願つてわれわれはそれ以上追究いたしませんが、ただここで委員長からも鍛冶委員からもお尋ねがありましたのですが、結局江川なる者が今度議会において証言したことは、あれはまるで子供じみている、時期からいつてもあれは合わない、しかも統制委員でない者が統制委員であつた、そういうものだから私は問題にしなかつた、こう御証言でありましたが、いろいろ私たちは新聞の記事を決して間違つているとは思わないのですが、やはり一番信用できるのは、この速記録なんであります。私たちは速記録は一番国会においては信用するわけであります。新聞ということになりますれば、それは正しきことを報道するというのが新聞ですが、たまたまやはりいくらか誤謬があることがあるのであります。そうすると私たちは、速記録における江川証人証言ということを一応信用するわけであります。そうすると、江川証人はあなたのことを、統制委員であつたあなたに云つているとは言つていない。要するにはつきり、永山正昭というものを介して会つているということなんであります。最初の証言によつて、統制委員でなかつた者を統制委員だと言つたような、そんな子供じみたことは明らかじやないか、全然事実無根じやないかということを言われますが、私たちはてこでもう一歩究明しなければならないことは、どちらの証言が正しいかということを究明しなければならない。ただこつちが間違つていたというような簡単なことで終るわけには行かない。われわれはこれはしつこいようでありますが、そのときに何ら処置をとろうとは考えていなかつた。しかし今委員長から速記録を読まれて——委員長が速記録を間違えて読むわけがありません。そうすると、統制委員としてのあなたではなく、いわゆる共産党員としてのあなたにお会いしたということを言つているのですが、しかもあなたのみならず、共産党全体が侮辱されるようなこうした大きな発表を、この国会の席上において言われたことがそれをもつて明らかになつたと思う。明らかになつた今日、あなたはこの江川に対して何らかの処置に出る考えがありますかどうか、それを承りたい。
  371. 椎野悦郎

    ○椎野証人 その点につきましては、先ほど委員長質問に対して答えたと思うのでありますが、われわれはどうしてもこういうデマとかなんとかいうものを避けることができないと思うのです。これは情勢が、やはり御承知のように戦争、それから植民地化の情勢が急迫すればするほど、われわれはこういうデマがしつこく飛ばされるということを今までも経験しているわけであります。私たちはもつとひどいデマを、今まで幾回となく経験しておるわけであります。そのたびごとに党が一一処置をとつたりすることは、たいへんそのことだけで追われるくらいの仕事じやなかつたかと思う。しかしながら今度の問題につきまして、われわれがどういうような態度をとるかということは、私だけの考えではなくして、やはり党の正式な機関の決定によつて行動しなければならない、こういうふうに考えております。
  372. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もちろん共産党に対するデマ宣伝が各地にあるだろうと思うのであります。わが党などにおきましても——各党にもあります。ことに政敵がある以上は、いろいろなデマが飛ぶ。それを一々問題にしていたのでは、ほんとうに党活動が何もできない。もつともであります。私たちの言うのは、単なる地方におけるデマ宣伝というデマと、このデマは違うと思うのであります。いやしくもいわゆる国家の最高機関でありまするこの議事堂において行われた証言によるデマであります。ただ單にあつちでかつてなことを言つていたというものではなく、しかも、この神聖なる宣誓をやつてのデマでありまして、こういうようなことは常にあろうデマではないのであります。しかもそのことが直接あなた個人に関することであり、しかもまた共産党という大きな組織、そして社会を改党しようとするところの大きな目的に向つての共産党に対する侮辱であり、あるいはこれが大きな支障になることも考えるのであります。ただいかに大きなデマが飛んでも、地方でとりざたされたとか、あるいは新聞にただ出たというようなデマではなくて、いわゆる国会、国の最高機関である議会において宣誓をして出たこのデマというものに対するならば、今までたくさんあるデマとはわれわれはとられないと思うのであります。相当根拠のあるデマであるということを、一応われわれは見るわけであります。これが後刻デマであつたと解決するかもしれませんがこれを単なるデマとしては、われわれは取扱うことができないのであります。こういういわゆる単なるデマと違うデマがここで出た。あなたの立場でいうならば、これに対しての何らかの御処置なり、あるいは相当の決意なり——どうしようこうしようということではなくて、あるいはこれを何らか共産党としては徹底的にやるつもりだ、明らかにするつもりだというような御決意がありますかどうか、それを承りたい。
  373. 椎野悦郎

    ○椎野証人 今の御質問で私は非常にはつきりいたしました。私とあなたの考え方の違いの一つは、もしもこれが共産党以外の政党であり、そして共産党以外の政党の責任者に対してこれと同じような誹謗が行われたとすれば、私は明らかにその人の政治的な生命を終らせるものだと考えます。ところで、私の場合には、共産党では個人の政治的な生命というのは副次的なものであります。第一に考えるのは何かといえば、やはり党の問題であります。従いましてわれわれは、これが非常に党にとつて有害であることは明らかであります。従いまして私だけが闘うのではなくして、全党をあげてこういう不正と不義に対しては闘わなければならないということを、私は証言したわけであります。
  374. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もちろん共産党の考え方とわれわれの考え方は違いますし、また個人的なデマであれば、政治生命を失うということでありますが、これがあなたの政治生命とか、あなたの立場とかいうことでなく、ここにはつきり出ている通り、共産党資金獲得の目的においてということになつておるわけであります。そうすれば、これはあなた個人ということではなく、問題は共産党ということだろうと思うのです。それに対してまああなた方の政党とは違うからということでは、われわれは納得できないのですが、共産党として何らかの処置に出る御意思がありますかどうか。くどいようでありますが、ひとつ承りたい。
  375. 椎野悦郎

    ○椎野証人 もちろんあります。われわれは徹底的に闘わなければならないというふうに確信しているわけであります。ただそれは私個人が闘うのではなくて、全党をあげて闘うのでなければならないということを証言したわけであります。
  376. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それで念を押しておきますが、それをはつきりさしてもらいたいのでありますが、われわれはただ葬りたくない、そこで闘うということは、江川証言に対して闘うと了解してよろしゆうございますか。
  377. 椎野悦郎

    ○椎野証人 もちろん江川証言に対しても闘うわけでありますが、しかしながら私はこういう悪質な陰謀がどこによつて行われているか、そしてそれが何を意味するか、すべてそれに関連する全体と闘わなければならないというように考えておるわけであります。
  378. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もう一つだけ……。
  379. 篠田弘作

    篠田委員長 やるのはいいですが、何か椎野君はからだの調子があまりよくないという通告が来ておりますから、できるだけ簡単に、要領よくやつてください。
  380. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 おからだの悪いのを長く時間をとつては何ですから、一つだけ伺つておきたいのですが、あなたの方では子供じみたことを言うやつだから、これは病人だという結論を出したようですが、われわれとすれば、先ほどの時の問題といい、時間といい、あなたの立場といい、大分そこに食い違つているようであります。あなた方が單にただ病気だということは、調べて病気だというのではなく、あなたの想像で、こういうことを言うのだから病人だという、軽い気持で病人だとお取扱いになつたのかどうか、それをひとつだけ伺つておきたい。
  381. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は、つまり彼が北海道新聞に述べておること、あるいはその後新聞に出ておる彼の証言というのは、正常な考えじやないということを述べたわけであります。
  382. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それで病人だとこういう……。
  383. 椎野悦郎

    ○椎野証人 いや、別に病人だと私は断定したわけではない。正常な考えではない、非常に混乱しておるということを証言したわけであります。
  384. 塚原俊郎

    ○塚原委員 先ほど山口委員からも、あなたが御病気であるから、なるべく簡単にしてくれということでありますし、社会党の方からもいろいろ注文があるようでありますから、私は二点だけお伺いしておきます。  今度の江川証言と椎野証言との間には、非常に食い違いがあるということは事実です。これは今までもこの委員会では相当の証言の食い違いがありますが、これくらい大きな証言の食い違いはございません。あなたの方はこれはデマであつて、またあなたの方から出ておる議員は、精神鑑定を要求するというようなことまで言つておる。しかしいやしくもこの国会で宣誓をして証言をした以上はそれを全然問題にしないということはできません。今までのところはこれを問題にしております。今までは江川証人というものを信用しております。きようあなたに伺つているわけですが、二十一年の冬と二十二年の夏ということが大分問題になつて参りました。椎野さんのお話を聞いておりますと、私もずいぶんいろいろな方に会つておりますが、あなたは非常に頭のよい方だと思います。静かにお考えになつて、二十二年の夏はあなたはどういうところにおつてどういう行動をしておつたか、これはわれわれでも今言われれば、三十秒も考えればわかります。ことにあなたは非常に頭がよさそうだから、今それを思い出してください。二十二年の夏六、七月ごろは、あなたはどういうところでどういう行動をされておつたか、それをまずお伺いしておきます。
  385. 椎野悦郎

    ○椎野証人 今それを御質問になれば、やはりさつき答えたと同じように、はつきりした記憶がないとお答えせざるを得ない。もしも時間をかければ、記憶を呼び起す資料をたくさん持つております。たとえば党のいろいろの集会の決定誌を見ますれば、私が出た会議と出ない会議は明らかになります。この出た会議の前後どこにおつたかということはすぐに記憶を呼び起せます。しかしここに何もなしに考えるだけでは、やはりこの雰囲気の中では考えられないのではないかと思います。
  386. 塚原俊郎

    ○塚原委員 党の最高責任者として、非常におかしな証言だと思うのですが、私はあなたの立場だつたら、すぐでも思い出せると思うのです。しかもあなたは二十二年の春というようなことを私新聞で見た。静かに考えてみたら、当時こうこうであつたということを先ほど言われておりました。二十二年の春のことを当時考えておつたならば、夏のことまでその当時考えるのは当然です。今この雰囲気の中で考えられない。なるほどあなたは御病人かもしらぬ。しかしこの雰囲気の中で二十二年の夏の自分の行動を考えることができないということは、私は納得しかねるのですが、いま一度あなたにお伺いしたい。
  387. 椎野悦郎

    ○椎野証人 やはり同じ証言を繰返すだけだと思います。
  388. 塚原俊郎

    ○塚原委員 わからないのですか。
  389. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ここでは記憶はよみがえらないということをお答えいたします。
  390. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そう言うならば、これ以上追究してもしかたがないからやめます。  江川証言では、江川は確かに椎野さんに会つた、あなたはそういう者は全然知らない、かすかにうろ覚えで、そういう人に会つたかなと思う程度であるというようなことでありますが、大体どうなんですか。共産党の方は、あなた方しよつちゆう人民のために闘うと言うから、不正はしないでしようが、こういうことで椎野さんの名前を利用して、別な人が、おれが椎野であるというようなことを言つて、何か仕事をしたというようなことを、今まであなたはお聞きになつたことがあるかどうか。
  391. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私の名前を使つて何かやつたというようなことを聞いたことはありません。
  392. 塚原俊郎

    ○塚原委員 全然、ございませんか。
  393. 椎野悦郎

    ○椎野証人 さつきの御質問ですが、今、一つ思い出したことがあります。これは二十二年の十二月の初めに、私どもは共産党の第六回大会というのをやつております。第六回大会の準備委員の一人であつた、そうして私はこの資格審査委員の一人を兼ねておりまして、そうして大会準備にはおそらく半年以上も使つたんじやないかと思います。そうして見ますと、二十二年の十二月に第六回大会が開かれたとしますと、私は夏ごろは大会準備のために東京におつたことになるのではないかと思う。
  394. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そういう証言をなさるのでしたらたどうぞひとつ今度お帰りになつて静かに考えたときでけつこうですから、その正しい、二十二年の春から夏にかけての行動ですね。これを梨木君も山口君もおられますから、ごめんどうでもおつしやつていただけば、こちらもやや納得のできる点もありますから、どうぞその点もお願いいたします。
  395. 椎野悦郎

    ○椎野証人 これはおそらく他のどこかに、この第六回大会の準備につきましての記録があると思いますから、これを調べれば、夏にどうしておつたという証言はできるわけであります。大体考えてみまして、私はこの第六回大会というのは、党にとりまして非常に大きな催しでありまして、非常にエネルギーを使つた集会でありまするから、あなたの御希望に沿う資料を提出することができるのではないかと、こういうふうに考えます。
  396. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 私は二点だけお聞きしたいのですが、第一に問題になつております江川文彌、これは共産党に入党していたかどうか、あるいは現存どうであるかということをお聞きしたいのです。
  397. 椎野悦郎

    ○椎野証人 彼の証言から見ますれば、入党しておつたということは、明らかでないかと思うのであります。この点につきましてまで、疑う必要はないのじやないかと考えております。しかし私自身は、入党しておつたかどうかということを知つてつたかということになりますれば、残念ながら知つておりません。非常に数が多いものですから、一々党員の名前を記憶するということはできないわけであります。
  398. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 この点を聞くのは少し無理かわからぬのですが、もし入党していたらば、どこの細胞に属していたか、その点をお聞きしたい。
  399. 椎野悦郎

    ○椎野証人 これは船に乘つておりますれば、その船の細胞に属しております。地区委員会の事務局におりますれば、地区委員会の事務局細胞に属しているということになるのであります。彼がほんとうにどこに属しておつたかということになりますれば、私の手元にある新聞だけではわからないのであります。彼がどこの細胞に属しておつたかということについては、ちよつと私にもわかりません。
  400. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 次にもう一つ聞きたいのは、この江川証人が当委員会で証言していることと、本日のあなたの証言とは全然食い違つているわけであります。そこで先般の江川証人の当委員会の証言後に、「朝日」「読売」に出た記事をごらんになりまして、そうしてその記事の末端に書いてあつた自分が出頭するかどうかの点については、気づかれて同合せをしておられますが、江川証人証言が、証人の考えにすれば全然事実無根である、これがはつきりした、それを商業新聞であつても、朝日新聞、読売新聞という大新聞に発表された以上は、その事実無根であるという点についての取消しの問題で、先ほどからいろいろ聞かれておりましたが、私はこの新聞をごらんになりまして、全然事実無根であるならば、この新聞の取消しを要求するのが普通の考えですが、そういう新聞の記事取消しの行為をやられたかどうかということをお伺いいたします。
  401. 椎野悦郎

    ○椎野証人 別に記事取消しを私どもは行つておりません。私どもの知つている範囲から言いましても、われわれはもつとひどい——もつとひどいという言葉は当らないかもしれませんが、相当ひどい記事の例証をたくさんあげることができるのではないか、しかしながら、それに対しまして記事取消しをやつても、それは拒否することもできましようし、実際上取消されないのが普通じやないかと思います。われわれ一番先に、この記事取消しというようなことを思いついたわけではありません。私どもが最初に考えましたことは、この人間の背後に何があるかということ、そうしてわれわれはそれとどう闘うか、こういうことを私どもは考えたわけであります。
  402. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 もう一点だけ。大体先ほどから証言をお聞きしておりますと、共産党の方針によつて、この事実無根であるということは、三鷹事件のように正しくわかる。そういう御方針で、この全然違うという点は、いつかは明白になるという観点に立つておられると思いますが、世間にこういうことが発表されました以上は、やはり世間的の、無知である一般大衆の誤解を解くためのそういう処置をとられたか、あるいは今後とられるお考えがあるかどうか、この点を伺います。
  403. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それは、つまりそのためにこそ私ここに立つたのだと思うのです。どうしてもわれわれは、こういう不正と闘わなければならないと考えております。そうして全党をあげて、先ほども言いますように、闘うつもりであります。しかしながらあなたがおつしやるように、新聞が私のきようの証言を、つまり江川の問題を取上げられたように、北海道新聞があれだけのスペースをさいて取上げてくれるかどうかという点については、非常に大きな疑問を持つております。従いまして新聞に対する工作はしなかつたということであります。
  404. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 二十五日にあなたを当委員会で喚問しておるということは、どこでお聞きになりましたか。
  405. 椎野悦郎

    ○椎野証人 昨日本部に出てから聞きました。
  406. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 昨日聞かれた……。
  407. 椎野悦郎

    ○椎野証人 はい。
  408. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それではここにあなたの奥様のお名前でしよう。妻と書いでございますが、当委員会に届出があつたのです。これは「不正入出国に関する件について五月二十五日証人として出頭するようにとの通知をうけましたが椎野悦郎は目下族行中のためこの通知を伝達できないことをお届けします」これは奥様の筆跡でしようか、ちよつとごらん願います。——そうですか。
  409. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ええ。
  410. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、ちよつとお伺いいたしますが、あなた方は旅行されるときには、奥様に行く先を知らせてないのですか。(笑声)
  411. 椎野悦郎

    ○椎野証人 どうもその点は——私は知らせておりません。
  412. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 知らせていないのですか。
  413. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  414. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、党の議長というような重大な責任におありになる方の行動は、その奥様も御存じないということになりますか。
  415. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  416. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうですか、われわれちよつとそこが……。だからお伺いしたわけです。そこでお伺いいたしますが、この文書を委員長から示されたときに、あなたは用語が違つておる、共産党用語じやないから、これは偽造であるという証言をされましたが、共産党用語というものが特別にあるのですか。
  417. 椎野悦郎

    ○椎野証人 やはり自然とそういう用語が生れて来ております。
  418. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それは日本語ですか。
  419. 椎野悦郎

    ○椎野証人 もちろんです。
  420. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 日本語ですか。
  421. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ええ。
  422. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それでは共産党独特の用語というものは、何か符牒か暗号なんかとしてわれわれ考えるよりほかないと考えるが、そういうものでもないのですか。
  423. 椎野悦郎

    ○椎野証人 今そういう習慣があるかどうか知りませんが、商売屋ではやはり取引の場合に候文を使うとか、それから官庁では可然哉というような用語を使つておりますが、われわれにもやはりそういう習慣がひとつできておる、それと全然その文章が合わないということを……。
  424. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 お読みになるといわゆる共産党用語というものは使つてないのですか。
  425. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そうです。
  426. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 たとえば例を一つ……。
  427. 椎野悦郎

    ○椎野証人 たとえばこういうふうに書いあります。一番最初から読みます。「今般書記局決定により海上対策部の漁民関係は農民部へ海員関係は労組部へうつることになつたので」とかように書いてあります。われわれは書記局では決定をしないことになつております。書記局は執行機関でありまして、この場合には当然政治局の決定によりというふうに文章は書き始められなければならぬわけであります。ところがこれでは書記局の決定によりというふうに書いてあります。
  428. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 なるほど、そうすると、それは用語というよりも、むしろ組織なんですな。
  429. 椎野悦郎

    ○椎野証人 先にもあげればたくさんあります。「来る十月の海組定期大会では規約により役員の改選が行われるが、」というような場合に、われわれは規約によりというような言葉は入れません。役員の改選というのはわれわれにとつては規約によることは明らかでありますから、そういうものを入れるようなことは全然ないわけであります。そういう点が——これは全部読みますと非常に長いですが、たくさんあります。
  430. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それについてもう一つお伺いしたいのですが、その文書は海員組合の中央委員選挙についての文書なんですな。そこで海員組合の中央委員を選挙するときに、一番興味を持つている政党は何かというと、やはりあなたの政党ぐらいが最も興味を持つている。われわれのような保守陣営における政党は、大した興味を持つていない、だから興味のないものに、特別にこういう文書をわれわれの方から出したとは思われない。これはどこから出たと想像するか。
  431. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私の考えでは、何かためにするためです、あるいはそれを売りまして生活をするためとか何とかいう関係から、どこかでつくられたものではないかというように考えます。それからもう一つ言いますと、その指令といいますか何といいますか、それが社会党に関係があるということではないわけでありますが、私どもは海員組合の役員の改選、役員をとるというようなことについては、一番興味を持つていることではないわけであります。私たちはむしろ下の大衆に対して一番興味を持つているわけであります。役員をとるということは二次的、第三次的、あるいは四次的な仕事だというように考えているわけであります。
  432. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、今ちよつとあなたが証言になつたが、こういうものをつくつてどこかへこれを販売して歩くのですか。(笑声)
  433. 椎野悦郎

    ○椎野証人 今そういうものをつくつて売れば、やはり買うところがあるような世の中ではないというように、私は考えているわけであります。
  434. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 どこかございますか。
  435. 椎野悦郎

    ○椎野証人 相当これはあるのじやないかと思います。共産党の情報だといつてつて歩いて、今まで飯を食つてつたというような人があるという話を、私何度も聞きました。
  436. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、共産党の情報を売つて飯を食つているというには、やはり共産党の情報をよくとれる立場になければ、そういう情報はできないわけですね。
  437. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それからよくつくることのできる人だと思います。(笑声)
  438. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そこでもう一つ私のお伺いしておきたいことは、これは先日証人として呼んだ大安丸の事務長に関することなんですが、どうもこれは当委員会では共産党に関係がないようなことを言つてつたが、われわれの調査では、相当に重要な役割を務めておる共産党員であると考えるものを私たちは持つておる。そこでそういう者の名前なんかが、ここにきつぱりと百人以上もあがつておるでしよう。少くともこれほどの人間の名前を調べるというときには相当に時間もかかる、ああいは手数もかかる。相当に通じていなければならぬはずだ。むしろ出どころはあなたの細胞そのものから出ているように私はこれを見ざるを得ない。——まあそれはそれでいいでしよう。水かけ論になりますから……。  それからもう一つ、あなたはいろいろさいぜんから証人の尋問に対しまして、江川という男は、気違いとは見ていないが、正気のさたではないという証言でしたが、ということはどういうことなんです。
  439. 椎野悦郎

    ○椎野証人 その点につきましては、先ほどから何回も証言したと思いますが、言つていることが非常に支離滅裂しているということを私は述べているわけであります。
  440. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 あなたが見られて、支離滅裂と、こういうのですな。しかしあなたもさすがに議長だから、これを気違いだとか、精神鑑定を求めるというような態度をとられなかつたことは、他の者から見れば大いに偉とするところだと思います。(笑声)その点は私も認めますが、しかしただ私の申し上げたいのは、前のあなたの党のお方方の尋問を聞いておると、この江川なる者の精神鑑定まで要求しなければならぬというようなところに追い込んでいる。こういう重大な証言を気違い扱いをして、これをもみ消そうという陰謀をしておるわけですが、その点はどうですか。
  441. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私はまつたく反対です。これはもみ消してはならない問題である。どうしても、これは全党をあげて闘わなければならぬ問題であると思つております。
  442. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 こういう重大な証言をやつておる江川なる者の精神鑑定をせよということは、これは党の統一を欠いていることだ。大問題だと思う。要するにさいぜん佐々木委員の尋問に対して、あなたから党をあげて闘うという強固な意思発表があつたから、私はそれを待つております。
  443. 小松勇次

    ○小松委員 お尋ねしますが、若松にありまするあなたの方の党の事務所はどこにありますか。
  444. 椎野悦郎

    ○椎野証人 若松の駅の前だと思います。
  445. 小松勇次

    ○小松委員 町名はわかりませんか。
  446. 椎野悦郎

    ○椎野証人 町名はわかりません。
  447. 小松勇次

    ○小松委員 その家主さんはおわかりなりませんか。
  448. 椎野悦郎

    ○椎野証人 家主はわかりません。
  449. 小松勇次

    ○小松委員 若松の新地四丁目の馬越丈太郎さんの家ではなかつたですか。
  450. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党の地区機関の家主まで全部覚えておるというわけじやないのです。家主まではとてもわかりません。駅の前だということは知つております。その家を尋ねて行きまして……。借りた家の家主がだれかというところまではちよつと覚えておりません。
  451. 小松勇次

    ○小松委員 この方のうちの二階を事務所にお借りになつたことはありませんか。
  452. 椎野悦郎

    ○椎野証人 若松の党の事務所は駅の前のやはりよその家の二階でありますが、入口が全然別につきまして、二階に上るところがあります。そういうふうな建物の二階家であります。それをどこから借りておるかということにつきましては、私は知りません。
  453. 小松勇次

    ○小松委員 この事務所はいつからおつくりになつたのですか。
  454. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それも記憶いたしません。
  455. 小松勇次

    ○小松委員 それではあなたの記憶をさらに呼び起していただくために、ここの家主さんの娘さんと長岡という共産党と結婚したというような御記憶はありませんか。
  456. 椎野悦郎

    ○椎野証人 党員も若い人がたくさんおりますので、結婚は始終やつておりますが、そういう結婚につきましては、一々報告があるわけではありませんから、そういうことは全然聞いておりません。
  457. 小松勇次

    ○小松委員 全然御存じなければどうもやむを得ないのですが、過日江川さんの証言によりますると、若松であなたの方で事務所を設けるについて、家主が非常にやかましく言うので、家主の娘と共産党員の長岡さんと結婚さして、そうしてそこの二階を借りることにしたというのですが、そういうような御記憶は全然ありませんか。
  458. 椎野悦郎

    ○椎野証人 全然そういう話を聞いたことはありません。
  459. 小松勇次

    ○小松委員 あなたはこの事務所へ出入りされたことはありませんか。
  460. 椎野悦郎

    ○椎野証人 昭和二十三年六月に若松で国鉄のストライキがありました。このストライキを激励しに、まあ争議団に対して激励演説をやつております。そのときにそこに寄つております。従いましてこの事務所には立ち寄つております。
  461. 小松勇次

    ○小松委員 二十三年でなくて、二十二年ごろ、ここの事務所へ出入りしたことはありませんか。二十二年ごろここに事務所があつたのではないのですか。
  462. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そこに事務所が、二十二年ごろからあつたかどうかということは知りませんが、私が行きましたときには、やはりそこに事務所がありました。
  463. 小松勇次

    ○小松委員 二十二年ごろにあなたは全然ここへお立寄りになつたことはないのですね。
  464. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私の記憶しておるところによりますと、二十三年の六月あるいは五月から六月にかけてだと思いますが、行つております。それは調べれば、すぐわかることであります。つまり国鉄で改正ダイヤの問題が起きまして、そうして遵法闘争というものか国鉄で起りました。その遵法闘争の最中に私は出かけて行つておりました。それから調べますればすぐわかります。
  465. 小松勇次

    ○小松委員 二十三年の六月に立ち寄つたという明確な御記憶があるのでしたら、二十三年ごろここに会合したことの御記憶が呼び起されそうなものだと私は思うのですが、行つてないのですね。
  466. 椎野悦郎

    ○椎野証人 二十二年ごろには行つてないです。
  467. 小松勇次

    ○小松委員 二十二年にこの事務所で、江川さんはあなたにお伝いしたということを言つておるのです。そういうことは全然ありませんか。
  468. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ないです。
  469. 小松勇次

    ○小松委員 あなたはそれから朝鮮人の朴という人を御存じですか。朴何というか名前は知りませんか……。
  470. 椎野悦郎

    ○椎野証人 朴という人はたくさんおりまして、たくさん知つております。
  471. 小松勇次

    ○小松委員 朴何ですか。永山さんと知り合いの朴という方は、何というのでしようか。
  472. 椎野悦郎

    ○椎野証人 彼がどういう朴という人を知つておるかということを知りません。おそらく彼にしましても、たくさん知つておるのじやないかと思います。現に党本部の勤務者の中にも朴という人はおります。
  473. 小松勇次

    ○小松委員 それではあなたのお知合いの朴さんという方は、朝鮮から日本へ正式に入国された方か、それとも以前から日本においでになつた方ですか、どういう方ですか。
  474. 椎野悦郎

    ○椎野証人 終戦以前から私と一緒に……。
  475. 小松勇次

    ○小松委員 私の伺う朴さんというのは、名前はわかりませんけれども、弾圧を受けて北鮮から日本へのがれて来た人だそうです。そういう方は御存じありませんか。
  476. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういう経歴のついている人は知りません。
  477. 小松勇次

    ○小松委員 江川さんのお話によりますと、この朴さんと永山さんといろいろお話があつた。それから密貿易の話も出た、こういうことをわれわれは承つておるのです。そのときの指揮者があなたであつたということであつたが、あなたはさようなことはないと言うんですが、全然ありませんか。
  478. 椎野悦郎

    ○椎野証人 ありません。
  479. 小松勇次

    ○小松委員 あなたの方では、党の資金をつくるのに、あなたはいろいろ御心配なされたそうですが、それはどういうようなことで党の資金をおつくりになつたんですか。重ねて私は伺いたい。
  480. 椎野悦郎

    ○椎野証人 先ほども証言しましたように、党費、つまり収入の一%の党費、それから党に対する寄付であります。それから党の事業の収入であります。それが党をささえておる財政であります。それから私が財政につきましていろいろ心配したようなお話でありますが、私は財政については全然タッチする党の立場にはありません。最近議長になりまして、それで金が苦しくて遅配になるとか、何日遅れるというような報告を受けまして、非常に心痛はいたしておりますが、しかしながら金をつくるとか、あるいは財政が困つておるからどうこうするというような部署や仕事にはタッチしておりません。
  481. 小松勇次

    ○小松委員 党の事業というと、おもなる事業はどういう事業でございますか。
  482. 椎野悦郎

    ○椎野証人 先ほども言いましたように、今まで、「アカハタ」が禁止される前は、「アカハタ」の新聞が一番大きな事業でございました。その後は「前衛」とか、「新しい世界」というような雑誌類がおもなる事業になつております。
  483. 小松勇次

    ○小松委員 失礼ですが、あなたの御職業は何でございましようか。
  484. 椎野悦郎

    ○椎野証人 現在は政党の役員でございます。
  485. 小松勇次

    ○小松委員 ほかに別に職業はお持ちになつておらないのですね。
  486. 椎野悦郎

    ○椎野証人 別に持つておりません。
  487. 小松勇次

    ○小松委員 そうすると、あなたの収入はどのくらいあるんですか。
  488. 椎野悦郎

    ○椎野証人 私は証言には関連性がないと思うのですが、せつかくですからお答えしたいと思います。国会議員の収入とは比較になりません。一万円以下であります。
  489. 小松勇次

    ○小松委員 失礼ですが、あなたは御家族何人いらつしやいますか。
  490. 椎野悦郎

    ○椎野証人 妻と子供が二人おります。
  491. 小松勇次

    ○小松委員 一万円の収入で御家族をささえておるわけですね。ほかに収入はないんですね。党から特別にあなたに対する手当、補助金、そういうようなものはないんですか。
  492. 椎野悦郎

    ○椎野証人 そういう手当はありません。しかしながら、こういうことはあります。いろいろな新聞や雑誌に原稿を書く、これは共産党の機関誌も入ります。それに対して、これは共産党の機関誌に載せた場合には、普通の一般の原稿料ほどは入りませんが少し入ることがあります。しかしながら、それは、取立てて言うほどの収入ではないのです。
  493. 田渕光一

    ○田渕委員 五月二十五日の梨木君の御発言では、非常な気違い扱いであり、精神鑑定をしなければならぬとまで言われておつた。あなたは今回のデマは正常な人と思えないと言つておる。私たちは普通の人と思う。こういうぐあいに非常に見方が違うのであります。そこであなたの党のためにも、あなたのためにも、これは徹底的に闘わなければならぬという御意思がありますか。当委員会としてもうこれだけ食い違つて来ると、このデマは江川証人のデマだつたろうとか、あるいはどうとかということで、それだけ問題を出しておいて、放任するわけには行くまいと思います。あなたの党の名誉のためでもあり、最高幹部としてのあなた個人の名誉のためにも、いま一度江川証人をここへ呼んで、あなたが実際にお知りになつていたか、あるいはまたあなたは話を全然しなかつた、顔も知らなかつたか、あるいは知つてつたかというようなことについて、対決なさるお考えはありませんか。
  494. 椎野悦郎

    ○椎野証人 それはむしろあなた方の方できめていただきたいと思います。私の方では、單に江川だけが問題ではなくて、江川をおそらくあやつつた者がある。私はその点におきまして、私の方の議員のだれが言つたか知りませんが、やはり精神鑑定の必要も出て来るのじやないかと思います。そういう意味におきまして、單に江川だけではなくて、江川をあやつつた者、その全体の問題をどうしても取上げなければならないというふうに考えております。なお党としましてはそのためにやはり闘う覚悟を持つております。今後も闘います。しかしながら、それを対決という方法でするかどうか、私はそういうなまぬるい方法ではいけないと思つております。これはどうしても徹底的に攻撃を加えなければならない。しかも江川のような人間じやなくて、それをあやつつておるほんとうの者に対して、攻撃を付けなければならぬというふうに考えております。あなたの方で対決をやらせるとかなんとかということをおきめになることは、それは御随意ではないかと考えております。
  495. 田渕光一

    ○田渕委員 非常な食い違いであり、江川証人がもし普通人とするならば、これを気違い扱いする共産党に対して不平はありましよう。私はこの意味で、後刻理事会ででも江川証人を再喚問されることにしてはどうかと思う。こういうようなことがちよちよい起きて来まして、絶えず証人の食い違いが多々あるということにおいては、一つの結末をつけなければならぬ。それは当委員会に取上げましたこの問題について、共産党の最高幹部である椎野さんの名誉のためにも、あるいはまた江川君の名誉のためにも必要だと思います。少くともこの点は後刻理事会において決定されんことを望んでおきます。
  496. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御発言がなければ、椎野証人に対する尋問はこれにて終ります。  証人にはたいへん長い間御苦労さまでした。     —————————————
  497. 篠田弘作

    篠田委員長 引続き大橋武夫証人より証言を求めることにいたします。証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種山、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申出願いたいと存じます。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。     〔証人大橋武夫君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、直実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  498. 篠田弘作

    篠田委員長 署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  499. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになり出すが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときにはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際には御起立を願います。  密人心及び密貿易の問題は治安上、経済上きわめて重大な問題であるにもかかわらず、その取締り、並びに検挙の実績はあまり上つておらないようであります。それはどういう原因によるものであるか。出入国管理庁、海上保安庁、税関等と警察当局といつたようなものがあるいは連絡不十分のためであるか。あるいは法務府系統以外の諸機関、たとえば外務省所管の出入日管理庁、運輸省所管の海上保安庁、大蔵省所管の税関、厚生省関係の麻薬課並びに公安委会所管の警察機関等、そういつたような組織の複雑によるものであるか、御証言を願いたい。
  500. 大橋武夫

    ○大橋証人 密入国に関する取締りにつきましては、大体今日におきまして密入国者のうちでその検挙と申しますか、取押えと申しますか、取締りにかかつて参りますものは約三分の二強ぐらい、あとの三分の一弱というものは検挙不能に終つておるということが想像されておるのでございます。その原因といたしましては、密入国の方法がきわめて辺鄙なところへ上陸をいたして参る。そうして海上に対する監視がいまだはなはだ十分でないというようなことが痛感されておるわけであります。すなわち海上保安庁におきまして海上の監視をいたしておるのでございまするが、この監視船の数が十分でない。従つて一隻当りの受持ちの海岸線というものは非常に広大でございまして、これについて完全なる警戒監視の網を張ることが困難であるといわれております。また使用いたしまする船舶につきましても、装備等において必ずしも十分でないために、せつかく発見をしても逃がしてしまう。これが他の機会において、またこちらの気がつかない間に上陸をするというようなことも想像されておるのでございます。特に関係機関といたしましては海上においては海上保安庁、陸上におきましては警察がこれに当つているのでありまするが、現在の実情から申しますると、自治体警察におきましては、この方面職務に対する熱意がいまだ必ずしも十分でないように見受けられております。従つて主として国家地方警察がこの監視並びに取押えに当つておるというような状況でございまするが、しかし国家地方警察はその管轄区域の広大なるに比較いたしまして人員がきわめて少く、また通信簿の施設におきましてもなお充実を要する状態でありまするので、かような機能的な面におきましても、相当な欠陷がある、こう考えておるのであります。  それから海上保安庁と国家地方警察との連絡でございまするが、この連絡につきましては国家地方警察本部並びに海上保安庁の各首脳部の間におきまして、それぞれこの問題につきましての職務分担の範囲を協定をいたし、また互いに情報の交換等につきまして協定をいたしておるのでありますが、末端におきましてこれが必ずしも協定の通り十分に行われておらぬという点もあるのではないか、かように考えておる次第であります。
  501. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまあなたの御証言によりまして、首脳部の間には具体的な問題に関する調整あるいは協定をやつているが、それが末端の方へ行くとできない部面があるというように聞えるのでありますが、これは大蔵省の所管とか運輸省の所管とか、外務省の所管とか、厚生省の所管とか、あるいは法務府の所管というふうに、一つ仕事に対してもとが幾つもわかれているということは、私たちが考えましても非常に不便であり、当然能率低下を来すというふうに考えられるのでありますが、これを法務府なら法務府に統一するというようなことはできないものでありますか。
  502. 大橋武夫

    ○大橋証人 現在の機構といたしましては、かつて法務府において所管をいたしておりました外国人登録事務が外務省に移管せられまする際に、外務省の所管におきまして出入国管理庁が設置せられた。この出入国管理庁と国家地方警察の間におきましては、一つの協定をいたしております。それは関係者の逮捕ということにつきましては、原則として警察がこれをやり、逮捕した関係者を出入国管理庁に引渡しをいたすというふうな話合いになつておるわけであります。それから海上及び陸上間の連絡につきましては、海上保安庁と国家地方警察の間でおのおの職務の分担を定めまして、連絡をとり、また情報を交換する、かようなことになつておる。そのほかの機関につきましては、特に協定あるいは申合せというようなものはなされておりません。すなわちただいま御指摘にたりました税関でありますとか、あるいは厚生省所官の機関、これらの機関と警察、海上保安庁、こういつたものの間には、この問題について格別の協定等はありません。しかしながら実際上におきましては、ある程度の連絡はやる、こう信ずる次第であります。これらの機関を総合いたしまして、一元的に統一できるようにする必要があるかないかという問題でありまするが、今日の官制の上におきまして、内閣において閣議で決定いたしました方針に従つてこれらの行政各機関を監督指揮いたしますることは、内閣総理大臣の権限でありますので、各関係機関におきまして、十分にさような必要を認め、またこれを実行する意思があれば統一的な運用ということは必ずしも不可能ではないと存じます。
  503. 篠田弘作

    篠田委員長 小さな自治体警察が非常にたくさんありまして、財政的にも小さな犯罪が起つただけでも相当行き詰まつておるというような状態でありますが、現行の組織のままでこういつた密出入国のような、言いかえれば国家的な事犯の取締りをさせるという場合に、そういう小さな自治体警察ははたして機能を発揮することができるかどうか、そういうことをさせることは不適当なんじやないかというふうに考えられますが、これに対してどうですか。
  504. 大橋武夫

    ○大橋証人 十分なる熱意がありますならば、自治体警察といたしましては、地域の割合に多数の要員を擁しておるのでありますから、ある程度の効果を上げることと存じますが、遺憾ながら現在の実情といたしましては、この種の問題についての自治体警察の熱意というものが、国家地方警察ほど十分でないように認められます。
  505. 篠田弘作

    篠田委員長 それからあなたの先ほどの証言で、内閣にその意思があればできないことはないというお話でありましたが、大蔵省の税関までも一緒にして密出入国の取締りをするということは無理だろうと思いますが、密出入国または登録令違反に関する取締りという問題について、出入国管理庁を現行の組織のままで、いわゆる外務省に所属した現在のままで適当とお考えになつておられるか、どうか、その点御証言願います。
  506. 大橋武夫

    ○大橋証人 この問題につきましては関係当局からの指示もございまして、現に研究をいたしております。その内容といたしましては、これを法務府所管の機関にしては、どうかということであります。
  507. 篠田弘作

    篠田委員長 密出入国または密貿易の事犯というものは、国内治安上重大な関係を持つものであると考えられますが、今申しましたように取締り当局が非常に多岐にわかれておるという関係もあると思いますが、どうもこの取締りについては背後関係までも追究するという徹底したやり方をしないで、むしろ軽易な事犯として処理されておる傾向かあるように私たちは考えますが、あなたのお考えはいかがですか。
  508. 大橋武夫

    ○大橋証人 密出入国並びに密貿易につきましては、それ自体が犯罪でございますので、この点について法律上しかるべく処分をいたしておりますが、しかしこれらの行為が他の犯罪の手段として行われておると考えられる場合も相当あり得ると存じます。しかしこの場合におきましては、現在の刑事訴訟法の要求をいたしておりますような、十分な的確なる証拠を捕捉いたしますことにすこぶる困難がございますので、その結果といたしまして、ただいま委員長のお述べになりましたような結果が生ずることは、十分想像されるところでございます。
  509. 篠田弘作

    篠田委員長 武力を伴う集団不正入国というものは今日まで行われておつたかどうか。あるいはまた今後行われる場合には、どういう方策が立ててあるかということについて伺います。
  510. 大橋武夫

    ○大橋証人 ただいままでに入国のために武力を使用して上陸したという事犯については、特に集団的にこれが行われたということはあまり聞いておりません。しかし上陸の途中におきまして、発見せられ、逮捕を免れるために、あるいは逃走をはかりますために武力を行使したというようなことは、多少はあると存じております。
  511. 篠田弘作

    篠田委員長 今後そういう問題かあつた場合の処置として何か考えておられますか。
  512. 大橋武夫

    ○大橋証人 特別にこれを予想してやつておるというわけではございませんが、昨年以来特に警察官に対します拳銃の配付を促進いたすという措置をとりまして、特に密入国が予想される府県につきましては、国警、自治警双方通じまして、各人に必ず渡るような措置を急速に講じた次第でございます。現在におきましては、全国の各警察官に拳銃が渡つております。これらの武器はさような場合におきまして、ある程度の効果を発揮し得ると考えております。
  513. 篠田弘作

    篠田委員長 今お尋ねしていることは、もちろん将来の問題でありまして、今からいえば仮定の問題になるのでありますが、しかし世界の例を見てみましても、武力を伴う集団不正入国といいますか、もつと大きな、いわゆる侵略というか、そういうもりが現実に前例があるのでございます。そういうような場合に拳銃だけで防止できるかどうか。何かそれに対処するべき法律あるいは対策というものが必要なのじやないか。たとえば警察法の非常事態宣言というようなものだけで解決されるかどうか。これはもちろん入つて来るものの数にもよるし、その装備にもよりますけれども、そういうことも全然架空の問題として笑い去ることができないということが現在の世界の状態である以上、日本もその例外であり行ない。またそういうことがあり得るかもしれないということをお考えになつて対策を立てておられるかどうか。
  514. 大橋武夫

    ○大橋証人 現在におきまして国内の治安、特に国外からの武力侵入に対しまして、国土を防衛いたしまする責任は第一次的にはもちろん政府にあるわけでありますが、しかしこれについて最後の責任を負う機関といたしましては占領軍であると存じます。従いまして今日占領軍といたされまして、朝鮮事変のために従来日本に駐屯いたしておりました部隊を相当朝鮮に派遣せられました。その空虚を埋めるために今年に入りましてからアメリカの州兵師団が派遣せられたわけであります。それから昨年の夏には特にマッカーサー元帥の書簡によりまして、警察予備隊を日本政府の責任において組織するということに相なりました。警察予備隊は御承知の通り七万五千、これをもしかりに軍隊の編成によつて当てはめてみますと、約四箇師団に相当する人員であります。これに対しましては現在カービン銃を、装備いたしまするとともに、なお必要に応じまして若干の軽機関銃を装備いたしております。これらの警備予備隊はもちろん州兵師団その他の占領軍と協力をいたしまして、御心配のような事態に対処するものと存じます。
  515. 篠田弘作

    篠田委員長 警察予備隊と国家地方警察との関係は、どういうようになつておりますか。
  516. 大橋武夫

    ○大橋証人 国家地方警察並びに自治体警察は現行警察法の規定によりまして、国民の身体、財産を保養いたしまして、そうして犯罪の捜査検挙に当る、こういう目的でございます。これに社会に普通行われまする一般の犯罪を予想いたしまして、それに対して通常必要な装備のもとにその機構を整備いたしておるのでありまして、まず普通日常的にありまする犯罪に対しましては、これが活動をすべきものである。しかしながら多数の集団的な騒擾事件であるとか、あるいは委員長におかれまして例示せられましたような、多数が武力を携えて不法に侵入して参るというような場合におきましては、とうてい警察の力をもつてこれが処理に当ることは不可能でございまするから、さような非常の場合に際しましては、警察予備隊がこれを処理する、こういうふうにその使命において相違がある、こういうふうに考えおります。
  517. 篠田弘作

    篠田委員長 どなたか質問ありますか。
  518. 島田末信

    ○島田委員 私は密輸、密入国というような問題は、今日の情勢では朝鮮人に直接間接関連した問題が非常に多いのじやないか、かように考えるのであります。そこで朝鮮人を問題とする以上は、一番大事な一つの場所というのは、わが国におきましてはまず山口県あたりがその関門的な存在じやないか、そういう意味合いからしまして、山口県下における朝鮮人問題について、その実情を明らかにすると同時に、今後の対策について所信を明らかにしていただきたい、かように存するのであります。それで以下項目に従つてお尋ねしたいと思います。  まず下関を中心として宇部、小野田、主として鉱工業地帯に集まつておる朝鮮人、これ登録しておる者及び不在入国者を含めての総数がどのくらいあるか、またそのうち特殊使命を帶びたというふうな者はあるかないか、こういう点をお伺いしておきたいと思います。
  519. 大橋武夫

    ○大橋証人 ただいまの数字の点につきまして資料の閲覧をお許し願いたいと思います。
  520. 篠田弘作

    篠田委員長 どうぞ。
  521. 大橋武夫

    ○大橋証人 山口県下におきまする朝鮮人登録の数は、本年三月末の出入国管理庁の調査によりますると、朝鮮人二万五千六百六十九名、韓国人千三百三十七名、計二万七千六名ということに相なつております。このほか密入国の者も相当あると存じますが、その数は判明いたしておりません。ここで朝鮮人及び韓国人と区別をいたしておりまするが、これは外国人登録令の最初の登録の際には、すべて朝鮮人として登録をいたしたのでありまするが、三十八度線以南が韓国として独立を認められましたる際に、特に韓国人として登録を希望する者に対しまして、本人の申出によつて韓国人として登録をいたしたものであります。それが韓国人としてあげられております。そのほか特に韓国人として申出をしなかつた者につきましては、従来通り朝鮮人として登録いたしておるのでありまして、その朝鮮人、韓国人の区別は、かような形式的の区別でございまして、出身地が三十八度線の以南であるか、以北であるか、あるいはまたその支持する政府が北鮮であるか、あるいは韓国政府であるか、そうした実質的な区別ではございません。
  522. 島田末信

    ○島田委員 そこで山口県に集まつておるそういう朝鮮人並びにただいまの韓国人の生活状態が、ややともすれば法律を無視したような、たとえば密酒造をやるとか、そのほか国の法律を無視したような、ごくふしだらなといいますか、放任されたような生活状態が非常に多いために、山口県の県政の上に、また県民の思想、道義の上に及ぼす影響は非常に多いというようなことを聞いておりますが、そういう実情はどんなものでございましようか。
  523. 大橋武夫

    ○大橋証人 日本に在住いたしておりまする朝鮮人諸君の職業別から申しますると、自由労働者、それからやみ商人と申しますか、そうした人が多いのでございまして、一般に生活程度も日本人と比べましては低く、また失業状態にあります者も多数あるわけであります。従いまして、これらの諸君がその生活に対しまして、公の救護または援助を求めまするために、いわゆる生活権擁護といつた行動に出ることはしばしばあります。またその経済的な面におきましては、やみ商売でありますとか、あるいは特に密造でありまするとか、そういうことをいたしておりますのは、これはひとり山口県に限らず、全国的に多数であります。これらの生活環境の結果といたしまして、犯罪発生の率から見ますると、日本人の場合に比較いたしまして、約十倍に近い犯罪の発生率を示しておるような状態であります。これは山口県におきましても、もちろん同体でありますが、特に山口県におきまして、かような問題が深刻に憂えられておりますゆえんのものは、特に山口県の地勢の関係上、その人口に比較いたしまして、朝鮮人諸君の数が非常に多いのであります。これは山口県におきましては、総人口約百五十万に対しまして二%弱というような状態でございまして、この朝鮮人問題が特に山口県においては深刻な問題となつておるのは、かようなことから来ておると思います。  もう一つ、特に朝鮮に近い関係からいたしまして、また朝鮮の現在の動乱の状態等もございまするので、山口県民に対しまする朝鮮人問題の刺戟の度合いが他府県に比して一層強いというようなことはあります。
  524. 島田末信

    ○島田委員 密輸、密出入国の足場としてはほかにも多少あるのでありまするが、この山口県が朝鮮と指呼の間にあり、ごく近いというふうな関係やら、その他連絡上の関係もありましようが、実情は政治的軍事的な一つの策源地帯として特異性を持つておるような状況があるというふうなことを聞いておりますが、その実情にいかがであります。
  525. 大橋武夫

    ○大橋証人 朝鮮人が特に山口県を政治的策源地、あるいは日本におきまする治安撹乱の活動の策源地とするということは、これは朝鮮に特に近いことでもございまするし、また朝鮮と交通上、あるいは連絡上最も便利な土地でございまするから、十分そういうことのあり得ることは想像できることではありまするが、しかしこれが具体的な証拠としては、ただいままでのところ認めておるものはございません。
  526. 島田末信

    ○島田委員 さらに軍事的に見て、ここを橋頭堡として確保しようというような意図が非常に強いようなうわさも聞いておりますが、そういう傾向があるかないか、お伺いいたします。
  527. 大橋武夫

    ○大橋証人 朝鮮人諸君が、わが国内におきまして、いろいろな機会に治安の撹乱というようなことをはかつているのではないかと思われるような行動に出ておられることはしばしばであります。また山口県におきましても、同様の傾向が十分にあるばかりでなく、他府県に比べまして、むしろそういつた傾向は強いと存じますが、特にこれを日本に対する侵略の橋頭堡として確保しようというような意図——これは地勢上そういうことがあり得るということは想像できることでございますが、しかし確実なる証拠によつて、さような意図のもとに現に何らかの行動が行われつつあるという実証を得るまでには至つておりません。
  528. 島田末信

    ○島田委員 山口県下在住の朝鮮人の思想動向と申しますか、そのうち朝鮮人連盟系統の思想動向は現在どうなつておるか。あるいは日本共産党との関係はどういうふうになりつつあるかということについてお伺いしたいと思います。さらに朝鮮人の共産党員はどういう組織と、どういう活動をやつておるか。あるいはさらに朝鮮人の党員は現在どういう行動をやりつつあるか。またそれの目標、方針は大体どういうふうに考えておるかということやら、さらに最高指令系統はどういうふうな現在実情にあるか。指令はどういう方法でなされておるかということについて、ごく簡單でよろしゆうございますか、実情をお聞かせ願いたい。
  529. 大橋武夫

    ○大橋証人 ひとり山口県ばかりでなく、わが国の朝鮮人全体につきましてこれを観察いたして見ますと、一昨年の九月に、御承知の通り朝鮮人連盟が解散を命ぜられまして、これによりまして、朝鮮人の動向というものにつきましても一時大なる混乱を見たわけであります。しかしながらその後漸次、この朝連解散の措置に対応いたします朝鮮人諸君の側の対策というものが確立いたして参りまして、その後におきましては、漸次第二戦線と申しますか、潜行的な活動に移行したような傾向を見ておるのであります。すなわち民主戦線でありますとか、あるいは祖国防衛委員会、こうしたような非合法的な組織や、あるいはまた解放救援会、あるいは女性同盟といつたような団体が組織せられまして、これを通じまして、従来と同じような傾向の活動が維持せられて参つたのであります。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 これらの活動の背後にありますものは、むろん申すまでもなく国際的な共産主義運動でございまして、その最高の指令というものは、もちろんモスクワあるいは中共といつた方面から流れておるのではないかと想像をいたしておるのであります。しかして日本におきます朝鮮人の共産主義的な動向というものは、朝連解散以来は、今申し上げましたような仮装的な団体あるいは非合法的な活動というように、裏面に隠れた動きとして行われておるのでありまして、これにつきまして、なおこれを実行に移して行きます方法として、いわゆる工作隊の組織でありますとか、あるいはこれの訓練等も相当に行われておるような情報を得ております。そして共産党におきましては、朝鮮人の対策を特に日共の中に置いて、朝鮮人の対策についての指導部というようなものを設けておりまして、朝鮮人の共産主義活動の指導をやつておられた時期がございますが、ただいまではこれは少数民族指導部といつたような名称にかえられておるというふうに聞いております。これらの朝鮮人の国内におきます共産主義活動は、むろん北鮮系の朝鮮人が多いのでありまして、昨年朝鮮動乱の勃発に際しましても、山口県のみならず、全国的に、必ず北鮮軍が勝つ、その際には日本人に対して復讐をするといつたような流説が流れまして、特に山口県宇部市におきましては、今に日本に朝鮮人がやつて来て、日本人をみな殺しにするというようなうわさも、宇部市の婦人の間に流れまして、相当恐慌を来したというようなことも聞いておるわけであります。日本に北鮮から潜入いたして参つておる朝鮮人が相当あるとは存じますが、しかしそれらの人々の活動というものは、今申し上げました国内におきます旧朝連系の組織とは別個に、個人的に活動するというような動きが多いのでございまして、これらは直接朝鮮におきます共産主義陣営の指令によつて活動をいたしておると認められるのであります。一般の国内に在住いたしております朝鮮人諸君は、むしろ日本におきましては、日本共産党の指導のもとに共産主義活動をするというような状況でございます。共産党といたしましては、朝鮮人の環境並びに特性から考えまして、これを日本におきます共産主義活動の尖兵的な役割を負荷するというような指導をいたしております。また朝鮮人も自然そういつた動きを事実上——この結果工作隊等には多数の朝鮮人が入つておるということも聞いております。また日共の朝鮮人に対します指導、さらにその指導方針なるものは、さかのぼればモスクワから来ておることは、むろん申しまでもないことであります。こういうふうにいわれております。
  530. 島田末信

    ○島田委員 さらに在住者の中には居留民団系の者も多少あるというふうに聞いておりますが、それらの動向やら、さらに将来性についてちよつとお聞きいたしたいと思います。
  531. 大橋武夫

    ○大橋証人 朝鮮人の居留民団というものは、確かに今日国内にございまして、これは共産糸でない人たちの団体でございますが、しかしその数及び力というものは、今日なお十分ではない。この原因といたしましては、左翼系の朝鮮人の圧力になかなか対抗できないということが一つと、また朝鮮におきまする動乱の結果といたしまして、かんじんの本国の政情というものがきわめて不安定である、こうした原因から今日居留民団の活動というものはあまり積極的なものは見受けておりません。
  532. 島田末信

    ○島田委員 私は先ほど来の証言によりまして、山口県下における朝鮮人問題をどう処理するかということは、まことに重大だと信ずるのであります。すなわち現在不正入国しておるところの人々が、生活状態においても非常に周辺に悪影響を及ぼしておるということを、どう処理するかということも大事でありますが、さらにまたそれらのいわゆる惡質と申しますか、あるいは思想的にわれわれと相いれない人々とでも申しますか、そういつた連中が、あるいは政治的に、あるいは思想的な策源地として山口県というものを利用しようとかかつておるようなけはいも想像されるという点もありましようし、また下関などを中心として、将来の政治的な、軍事的な橋頭堡として確保しておこうというふうな意図もあるやに想像される点もありましようし、考え合せまするとき、私は山口県下における朝鮮人のうち、その善良なる者はあくまで大いに保護して行くべきでありますが、さらにこれらの危険を感ずる在住者の措置をいかにするかという対策は、まことに重要であると信ずるのであります。これに対しまして、あるいは左翼急進分子をいかに処置するか、また善良なる居留民国糸の人々をどういうふうに保護し、助長して行くかというふうな、いろいろな問題があると思いますが、これに対するごく基本的な対策について、見解をお聞きしたいと思います。
  533. 大橋武夫

    ○大橋証人 現在朝鮮人諸君で国内に在留いたしております数は約五十五万、そのほかに多少密航者で未調査の者があると思いますが、まず五十五万から六十万という数でございまして、その大半はいわゆる北鮮糸と称せられる人たちであり、またその生活の実情は、先ほど申し上げました通りであり、いろいろな面におきまして、普通の犯罪もきわめて高率に上つております。のみならず日本共産党の指導のもとに、国内の治安に対しまして重大な影響を與えるような行動が計画もされ、また実行されつつあるというような実情でございます。これに対しまして、日本の治安を確保する上からいつて、何らかの措置が必要であるということを痛感いたしております。しかし基本的な考えといたしましては、この六十万に上る朝鮮人諸君の大部分の方方は、戦争終結後におきまして、朝鮮に帰るべき十分な機会を與えられたわけであります。しかるにこれらの諸君は、その際におきまして、朝鮮に帰るよりもむしろ日本にとどまりまして、そうして日本の再建に協力することによつて、日本の繁栄とともに自分たちの幸福の道を開いて行きたい、こういう希望のもとに、あえて帰国の道を選ばずして、日本に在留するという道を選ばれたわけでありますから、大多数の諸君はむろん日本の国法をよく守り、日本の再建に協力をして、この道を通じて自己の運命をこの日本において開拓しようという十分なる熱意を持ち、また日本政府に対し十分な協力の考えを持つておられる方々だと確信をいたしておるのであります。従いましてこれらの諸君に対しましては、日本にとどまつて十分にその力を日本の再建に注いで行くことのできますような必要な保護の手段を政府としては講ずべきであるのでありまして、この措置といたしましては、国内におきまする貧困者その他不幸な人々に対して與えられまする幾多の社会保障の道というものは、これらの朝鮮人諸君に対しましても平等に與えられるべきであり、また現にさような方針のもとに各種の施設が運営せられておるわけであります。しかしながらこれらの多数の諸君の中に、少数の危険なるか子が存在いたしており、これがいろいろと危険な行動に出、また日本再建を妨害したり、あるいは日本の治安を妨げるというようなことがあることは、これまた事実でございまして、この点については、政府といたしましてはそれに対応する処置をとらなければならない、こう考えております。従いまして、国内法に違反いたしましたる場合においては、国内法に基きましてこれに対してそれぞれの処置を講じまするとともに、場合によりましては、それらの諸君に対しまして強制的な送還をするというようなことも、将来の問題としては十分考えて行かなければならぬ、かように存じまして、この点につきましては、ただいま当局としては研究を急速に進めておる次第でございます。
  534. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ただいまの問題に関連して、今後犯罪を犯すであろうということを心配しておられますが、現に犯罪を犯して勾留せられましても、刑事訴訟法上保釈の手続をとれるということになつておれば、当然保釈しますが、この保釈された朝鮮人は、ほとんど逃亡して出て来ないという話でありますが、そういう事実はあなたの力でもお認めになつておりますか。
  535. 大橋武夫

    ○大橋証人 現在の不正入国者に対しまする取締りの実情といたしましては、不正入国者を逮捕いたしましたる場合におきましては、これをただちに検察庁に送致し、検察庁において取調べの上起訴をするということになつております。ところでこれに対しましては、いわゆる権利保釈の制度は開かれておらないのでございまして、権利保釈として被告人が保釈されることはないわけであります。しかしながら裁判所の職権によります保釈ということは、これはいわゆる一般の犯罪と同様にその道がございます。検察庁といたしましては、この保釈に対しては逃走のおそれがありますので、反対の意見を述べることを常といたしておりますが、まず大体において検察庁の意見通り保釈されない場合が多いようでございます。ただただいま鍛冶委員の御質問になりましたような、不正入国者をせつかくつかまえても、保釈をしたがために行方不明になる、こういうふうな事例は、朝鮮人諸君についてはほとんど聞いておりません。しかし南西諸島からの不正入国者につきまして、二、三お示しのような事例があつたことは聞いております。これは朝鮮人ではなくして、沖繩の南西諸島の人たちについてそういう事例が多少あつたように思います。
  536. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 不正入国者だけではない。一般犯罪についても、今島田君が言われたように、これらの対策ということはよほど重要であります。一般犯罪についてそういうことが多いようですが、そうだとすれば、送還すれば一番よろしいのですが、送還せないで保釈でほうつておけば、ほとんど出て来ない。それに対してどういう対策をお考えになつておるか、その点を伺います。
  537. 大橋武夫

    ○大橋証人 一般の犯罪につきましては、これは刑事訴訟法の規定によりまして、軽い者につきましては権利保釈の道が開かれております。これはどうもいたし方がないのでありますが、そこでただいま当局として研究をいたしております点は、一般犯罪につきましても、それが国内の治安にきわめて重大な関係のあるという犯罪を犯した場合、そしてその者を日本にとどめて置くことが、将来日本の治安その他の面から考えまして、きわめて不利益であるというふうなものにつきましては、正当な入国をした者につきましても、将来は強制送還の道を開きたい、そしてただいま御心配になつたような事態を予防したい、こういう考えでただいま研究を進めておる次第でございます。
  538. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 最後に一つお聞きしたいのは、先ほど委員長からの質問にお答えになりましてよくわからなかつたのですが、他国から軍隊で侵入して来た場合は、占領治下にある日本としてこれに対して戦争をいどむわけには行かぬということですが、しかし入つて来るものをとめるだけの——これほど大きな国内治安を乱すものはないのでありますから、これはある程度のことをやれるだけのことは、実力の及ぶ限りのことはやれるのじやないかと思うのですが、この点はつきりわからなかつたので、お聞きします。
  539. 大橋武夫

    ○大橋証人 先ほど私が申し上げました趣旨は、外国から武力による侵入がありますれば、むろん日本といたしましては、あらゆる措置を講じてこれを防禦する権利があるのでございますから、従いまして警察予備隊等はその際に相当の活動が期待できるわけでありまするし、それ以上に、現在は占領治下にございますので、占領軍がまた日本の治安について重大なる関心を持つておられまするから、その活動も期待できるであろうという趣旨を申し上げたつもりでございます。
  540. 高倉定助

    ○高倉委員 警察予備隊の問題でありますが、現在七万五千人の警察予備隊が各地に配置されて、治安維持について警察と協力をしておるようで、まことに心強く存ずるわけでありますけれども、先ほどお話がありましたように、武力によるところの集団不正入国等があつた場合において、現在一番私たちの考えるのでは北海道であります。北海道に対しましては、相当に警察予備隊等が配置されているようでありますけれども、北海道においても最も重要な地点であり、またソ連に相通ずる一番近いところの根室、この根室国は、相当広いところでありますけれども、人口が非常に少いのでありまして、ここにいまだに警察予備隊の設置がないのであります。これは予算の関係であるか、あるいは現存したところの建物がないために設置されないのか、今後どういうような方針をとつて行かれるか、現在においては、この地区において不安を感じておるところの一つであります。この点お伺いいたします。
  541. 大橋武夫

    ○大橋証人 警察予備隊が昨年創設せられましたが、非常に短期間内にその編成を終え、かつ一応の配置につけておるのであります。従いまして当時の方針といたしましては、現存の建物の所在地を優先的に取扱いましたので、そこへ一応落ちつけたわけであります。しかしながらこの警察予備隊配置ということは、将来について考えてみますると、やはり治安維持上の要請ということを眼目にして配置すべきものでありまして、今後できるだけ必要な地にも新しく——施設のないものはつくつてでも配置をしなければならぬと考えております。ただいまの配置が最終的なものとは考えておりません。
  542. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 二、三お聞きしたいと思いますが、現在朝鮮人の不正入国をしておる者は、個人々々の意思に基いて来ておるものが多いのですか。背後に何か積極的にこれをそそのかすといいますか、何か背後団体があることは考えられるのですか。
  543. 大橋武夫

    ○大橋証人 不正入国者につきまして、背後に相当な背景があるのではないかということは、十分に想像し得られるのであります。ことに日本に潜入いたしました後におきまして、一種の目的のために日本国内の情報を収集する、あるいはまた日本国内におきまする一般占領目的、あるいは反米的な活動のために入国する、あるいはまた日本の国連に対する協力を阻害する目的をもつて入国する、こういうような人人につきましては、もちろん相当有力な背景がある、こう考えられるのであります。
  544. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 さつき委員長質問されましたが、この武力を伴う集団不正入国といいますか、これは武力にもよりましようし——拳銃等を入国者が二、三隠して持つておるということが、はたして武力を伴う集団不正入国といえるかどうかということも問題でありましようが、真に武力を伴う集団不正入国といいますと、これは占領軍の問題でもございましようし、国連の問題でもございましようし、国際法上の問題でもございましようから、これはいわゆる侵略であり、侵入であり、自衛権の問題となつて来るだろうと思いますが、この点に関しまして、総裁の御意見をお伺いしたいと思います。こういう場合に、いわる自衛権発動ということは考えられるのですか。
  545. 大橋武夫

    ○大橋証人 自衛権の発動ということは、急迫不正な侵入に対しましては、いかなる国家も、国家としての基本的な権利を持つております。御指摘のような場合におきましては、当然わが国といたしましても、自衛権はあると考えます。
  546. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 この場合におきまして、いわゆる韓国と申しますか、あるいは北鮮と申しますか、そういうふうな背後の国籍関係、あるいはこういうものは軍隊でもありませんし、そういう場合におきまして、われわれとしては、ほんとうに自衛権というものは考えてよいものであるかどうか、この点はどうですか。
  547. 大橋武夫

    ○大橋証人 自衛権と申しますものは、必ずしも一定の国家の背景を持つた者ばかりではないと思います。急迫不正の侵害に対しましては、それがいかなる国家的背景を持つか持たないかということに関係なく、こちらの側においては自衛権を持つというふうに考えます。
  548. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 小さな問題ですが、戦時中からずつと日本におる朝鮮人でございますが、これは現在の扱いにおきましては、二重国籍になつておるのでございましようか。
  549. 大橋武夫

    ○大橋証人 これは外国人としまして、外国人登録令によつて登録されております。
  550. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 二重国籍ではないわけですか。
  551. 大橋武夫

    ○大橋証人 日本の国籍はないということになつております。
  552. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 なつておりますか。これは共通法の関係で、二重国籍みたいな扱いをされておるということを聞いておるのでございますが、そういうことはないのですか。共通法はまだ生きた扱いをしておるそうでありますが……。
  553. 大橋武夫

    ○大橋証人 私のただいま承知いたしておりまする範囲ではさようでございますが、なお必要とあれば、帰りまして取調べの上書面をもつてお答えをいたします。
  554. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それからあるいはさつき総裁がすでに答弁されたかと思いますが、普通の犯罪でございます。つまり密入国だけでなくて、朝鮮の人などが内地におきまして犯罪を犯した、徒党を組んでやつたという場合におきまして、刑によりまして、これを出入国でないほかの事件の場合におきましても、送還ということを適当とお考えになりませんか。
  555. 大橋武夫

    ○大橋証人 現行法におきましては不正入国者以外は、いかなる場合におきましても強制送還はできないことになつておりますが、しかし現在の考え方といたしましては、悪質な犯罪者は強制送還をすべきではないかと思つております。また関係当局からもこの問題につきまして、ある程度の示唆を受けまして、これに基いて研究をいたしております。
  556. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 これは武力を伴うのでないかもしれませんけれども、むしろ武器を隠匿しての不正出国ということなどで、今総裁の手元にわかつているものはありませんか。
  557. 大橋武夫

    ○大橋証人 ただいまその問題については資料を持つておりませんので、お答えいたしかねます。
  558. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それからさつき総裁が、海上の監視船の数が十分でないので、密出入国の取締りについて非常に不便を感じておるということをお答えになりました。また末端におきましては、海上保安庁あるいは国警等の上層部においてやつておる教程というものは、必ずしも十分に行われていない、この点においても遺憾の点があるというお答えでございましたが、これはかつての陸軍が海軍の船を持つという意味ではなくて、国警等におきまして、監視船と申しますか、密出入国監視についての船舶を持つことの必要をお感じになりませんか。
  559. 大橋武夫

    ○大橋証人 監視のための船は、できるだけたくさんある方がいいと存じますが、その船を海上保安庁に與えるか、あるいは警察に與えるかという点でございますが、現在の警察の考え方といたしましては、こうした点について、船はできるだけ持たないという方針をとつております。
  560. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今朝鮮人の送還の問題が出たのでありますが、大橋さんの答弁によりますと、不正入国者以外は、現行法では強制送還はできないのであるということでありました。ところが実際は強制送還をやつておる事例をわれわれは知つておるのでありますが、これはどういう法規に基いてやつておるでありますか。
  561. 大橋武夫

    ○大橋証人 私は承知いたしておりません。
  562. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これは総裁の管轄にあるところの刑務所に実際服役中の人たちが、朝鮮へ強制送還されておるのでありますが、この点を御承知ないというのは非常に不可解なのでありますが、もう一度念を押して聞いておきたいと思います。
  563. 大橋武夫

    ○大橋証人 私は個人といたしまして承知いたしておりません。
  564. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それではその点を具体的に申しますと、神戸刑務所におつた朝鮮人が相当多数送還されておるということを聞いております。実際目撃した人もあります。でありますからこれは調査の上で御報告を願いたいと思います。いかがですか。
  565. 大橋武夫

    ○大橋証人 委員長におきまして御要求があれば、資料は提出いたします。
  566. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは委員長、そういうぐあいにとりはからつていただきたいと思います。
  567. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 相談してからやりましよう。
  568. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは次に伺いますが、治安上危険なもの、こういうものについてはやはり強制送還の措置を講ずることを今研究中であるとおつしやいましたが、しかしこれは現在まだ独立を回復しておらない日本といたしましては、かようなことは憲法上可能でありましようかどうか、その点の見解を承りたいと思います。
  569. 大橋武夫

    ○大橋証人 司令部の命令があれば憲法上できます。
  570. 梨木作次郎

    ○梨木委員 独立した後におきましては、国際慣例から申しますると、国内において一つの政治活動をしたということで、その政府の迫害を受けて亡命をするという場合は、その国の請求があつても渡さないという一つの慣例ができておると思うのであります。こういう問題と関連いたしまして、現在朝鮮から日本へ来ておる人たちの中には、たとえば韓国内におきまして非常な圧迫を受け、その難をのがれるために日本へ来ておる人もあるのであります。これらの点につきましては、単に不正入国者としてさらにこれを強制送還するということは、国際慣例から申しましても、非常によくないことだと思うのでありますが、この点はどういうようにお考えでありましようか。
  571. 大橋武夫

    ○大橋証人 国際慣例から申しますると、お話の通り政治犯人につきましては、原則として引渡しを拒むところの権利があり、また拒むというのが慣例になつております。むろんその点を承知の上、研究をいたしておるわけであります。
  572. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その次に伺いますが、朝鮮から多数の人たちが、朝鮮国内においてほとんど拉致同様にされて日本へ送還されて、これがたとえば富士の裾野などで軍事的な訓練を受けておる。こういう人たちが逃亡をいたしまして、非常に日本の人民に一つの恐怖状態を起しておるという事実をわれわれは聞いておるのでありますが、これは一体どういう経路を経て日本へ入つて来ておるのかお伺いいたします。
  573. 大橋武夫

    ○大橋証人 私はその話は承知いたしておりません。
  574. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これはほとんど公知の事実なんで、それを総裁が御承知ないということはまことに奇怪なことでありますが、しかし御承知ないことですからやむを得ません。  次にお伺いいたしますが、警察予備隊が——ちよつと今数字を忘れたのでありますが、六千人か八千人を今募集しているような記事を見たのでありますが、これはどうしてこんなにたくさん募集することになつたのか、そのいきさつを伺いたい。
  575. 大橋武夫

    ○大橋証人 お示しの通り、来る八月に警察予備隊におきまして約七千名を募集いたすことになつております。これは現在それだけの欠員を生じたからでございまして、この欠員を生じました理由といたしましては、創設以来今日までの間に、それに相当する人員が大多数は自発的に退職をいたしたのであります。この退職の理由等につきまして、一々こまかい資料をただいま持つておりませんが、そのおもな原因と認められまするものは、警察予備隊へ入ります際には、相当の幹部になりたいという志で入りましたところが、その後数次にわたりまする試験がちようど終了いたしまして、その結果、自分の当初希望して行つたような地位につくことができない、それでやめたいというような希望が最も多数を占めております。
  576. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一点でありますが、先ほど日本における朝鮮人諸君の共産主義運動に触れられまして、これは結局は朝鮮の国内における共産党、またさらにその上には中共だとかモスクワが最高の指導をしておる、こういうような御答弁があつたように思うのでありますが、これは一体どういう根拠に基いてさようにおつしやるのでありますか。
  577. 大橋武夫

    ○大橋証人 推測を申し上げております。
  578. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 ほかに御発言がなければ、大橋証人に対する尋問はこれで終ります。証人には御多忙中長い間御苦労さまでした。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十三分散会