○小西
証人 その点につきまして、私どもああいう種類の
事故がああいうふうな状態で起るということを想像いたしませんでしたことは非常に残念でございますし、そのために結果から見ますと、適切な措置がとられていなか
つたという責めも甘受しなければならぬことは事実でありますが、また実際の問題といたしまして、今後の
職員の養成、それから
仕事のやり方その他につきましていろいろ考えております。すでに実施されたものもございますが、まず第一に
作業のやり方といたしまして、ああいう
架線作業を
列車が通る間あいにやるということに対する再検討、今後はできるだけ普通の
線路と同じように、一定の時間閉塞いたしまして、
列車を通さずに
架線工事をできるだけやらせるようにする
作業方法の改善。それからもう
一つは、
電車が通りません
夜間にある程度
作業を切りかえる。深夜に停電いたしまして、そうして
作業をやるということもできるだけやる。そのためには勤務体制その他をかえなければなりませんが、これもできるだけやる。それからもう
一つは、この間の場合はちようど
電車区間でありましたので、深夜三時間くらいの間あいがございますが、東海道線等の
列車区間におきましては、深夜三、四十分くらいの余裕しかない。そのほかは全部
列車が通
つておるという区間もありますので、これらの
作業を全部深夜にのみ集中してやるということは不可能でございます。従いまして今申し上げましたように、
晝間にできるだけ
列車の間あいを見てやる。そうして
列車を一定の時間閉塞いたしまして、そうして
列車を通さないでやる建前にする。非常に簡易な
作業でありまして、それほどの必要がない場合には、
列車を通しながらやる場合もありますが、この場合には
事故の起
つた場合に必ず
列車を停止することができますように、
仕事をや
つております
場所の両側に見張人を適当なところに置きまして、いつでも
列車を停止させることができるという処置をとらしてやる、こういうことに決定しまして、すでにそういうことをやらせております。
それからもう
一つは、従事員の指導、教養、
訓練の問題でありますが、御
承知のように戰争後、これは
一般的風潮でありますが、労働攻勢が非常に強くなりまして、いわゆる指導者、指導
監督の地位にある者の威令が行われなか
つたという時代がございます。国有
鉄道もその例をのがれるわけには行かなか
つた時代がございまして、終戰直後二十一年くらいまでは非常に
事故も多いし、
列車の運転等も非常に乱脈にな
つて世間の非難を浴びたこともございますが、この問題は次第に世の中の生活状態その他がよくなりますのと、例の下山総裁が非常に悲惨な最期を遂げました、その誘因になりました十何万の整理の問題を契機といたしまして、非常に情勢がかわ
つて参りまして、その後相当
一般の労働意欲も上
つて参りますし、指導者も指導力をとりもどして
参つたのでありますが、しかしこれもまだ戰前と同じ程度まで完全にというわけには参りません。従いましてこの点につきましても、より一層従事員の指導、教養を強化いたしまして、安全、迅速、正確な、世界に誇
つた鉄道にもどしたい、こういうことを念願しておるわけであります。このために非常に根本的な問題といたしまして、戰争中に採用いたしました従事員の素質の問題がございますが、これは
一般的に戰時産業その他に非常に優秀な
人間が参りまして、比較的素質の悪い従事員も入
つております。従いましてこういう者に対する指導教養というものは一そう必要でございますので、これに対してもいろいろ指導、教養の強化をはか
つて参ります。特に肉体的に
列車の運転その他にさしつかえのある者、それからまた素質的にやはり
列車の運転に従事する
作業に不適格な者、こういう者はいろいろ考査をいたしておりまして、これによりまして直接
列車の運転に携わらない
仕事の方へそういう連中の配置転換をする、これは一人々々の点につきましては非常に苦しい点もあるかと思いますが、とにかく旅客の安全をはからなければならぬ
鉄道といたしまして、や
つて参らなければならない
一つであります。こういうふうにいたしまして、従事員の素質の改善、指導、教養の強化という点にも力をいたして行きます一方、今回の車両がたまたま六三型でありましたので、非常な非難を浴びておりますが、今回の
事故は六三型でありましたために窓の構造が三段窓にな
つておりまして、内部からそれを割
つて外に出る、あるいはあけて出るということができなか
つた点で、惨害を非常に大きくいたしておりますが、全般的な構造といたしまして、ほかの車両に特に劣
つておるという点はないのです。従いまして六三型でなくとも同じような発火の
事故は起
つたわけであります。従いまして單に六三型ということに限定せずに、すべての
電車に対して、今度のような
原因で、今度のような発火の
事故が起らないように、緊急対策といたしまして、十月までに完了する見込みでございますが、まず第一に直接火の起らないようにいたしますために、パンタグラフのとりつけを、現在は一重の絶縁にな
つておりますが、これを二重絶縁にする。それから万一絶縁が破懐されまして火事が起りましても、火が中へ直接入り込まないように、屋根の二重絶縁の点と、それからもう
一つは今回の非常に早く
電車の燃えました
原因になりましたところの塗料の点でございますが、室内の天井の塗料を不燃性の塗料にする。それから問題にな
つておりますDコツク、これを両側につけまして
——今までのDコツクは先ほども非難がございましたが、ある
場所が非常に区々でありまして、床下にあるのでありますが、その
場所がはつきり明示してなか
つた。これは左右にそれぞれ対称につけまして、ある
場所をはつきり明示させておく。そうしてこれに対する従事員の
訓練、これは先ほど対策としてちよつと忘れましたが、全従事員に徹底いたしまして、今後ああいう
事故が起
つた場合には
運転士、
車掌だけではありません。駅員にも全部これを徹底させまして、すぐだれでもあれを開くということに
訓練しておりまして、すでにやらせておりますが、現在は
一つしか床下につけておりませんが、これを左右につけましていつでもあけ得るようにする。そのほかに室内に同じようなコツクをもう
一つ目に見えるところにつけまして、乗客が内部からもそれを操作できるようにする。その他すでに実行いたしまして現在あります腰掛の下の三万コツクの
取扱い、これは乗客に周知徹底せしめまして、非常の場合に開き得るようにいたしております。そのほか湘南型のように、車両の中間をつなぎます幌をつけまして、火事等
事故がありました場合に自由に他の車両へ移動できるようにする。これだけの措置を十月末に完成するつもりでや
つております。約三億近くかかると思いますが、いずれ追加
予算ということになりましようが、内部で融通いたしまして、ともかくその
工事を進めて完了する予定であります。その他恒久的対策といたしましては、窓を全部普通の窓に改造いたしますとともに、それから先ほど申し上げました天井を全部鉄板にいたしまして、普通の
電車のように、これは電球のついた明るいいい
電車にする。その他車自体を普通の
電車と同じように非常にいい状態にいたしますために手入れをする。電気部分につきましては、三鷹
事件の当時非常に非難の的にな
つておりました下部配線はほとんど引きかえましたし、その下部配線がむき出しにな
つておりますものは全部被覆する、あるいはパイプの中に納めまして、
危險のないように措置いたしておりますが、まだ一部分その当時の悪い材料のものが
残つておりますので、これも全部スタンダードのものにかえてしまう、こういうような
工事を全部完了いたしますのに約十二、三億かかるのでありますが、これは大体先ほどの緊急の
工事をやりますれば、一応発火の心配などもなくなりますので、大体今の恒久対策の方は三、四年計画で実施いたしたい、こういうように
思つております。