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今野委員 共産党といたしましては、
政府が提出いたしました
改正案に対しては、強い反対の
意見を持
つてお
つたのでございまするが、今回
参議院で
修正されまして、それが
原案として出て参りました。その内容を見ますると、私
どもが心配してお
つた点が大分やわらいで参りまして、ほとんど問題にするまでもないということになりましたので、反対するまでもないという
意味で、まあ
賛成するわけでございます。
以下その
理由について申し上げます。大体
国民医療の問題が、今日の状態で吉田
内閣などのもとでも
つて当然改正されないということは、私
どもが常々主張しておるところであり、また
世界の趨勢から見ても、あるいは日本の社会経済の状態から見ても、どうしてもこの
医療の社会化ということが医者の面ばつかりでなく、薬の面においても全面的に行われなければ、一般勤労大衆や何かの健康を保持することはとうていできないと、われわれは思
つておる次第でございます。しかしながら現在
厚生省で立案されました
医薬分業法は、そういうような面から見るとかえ
つて事態を逆行させるものである。そういうふうに私
どもは
考えてお
つたわけでございます。大体この
医薬分業の問題がどこから出されて来ておるか。国内での
医療態勢その他がいろいろ熟して来て、そういう問題が出て来たのかと申しますと、決してそうではないことは、私
どもの
質問に対する
厚生省のお答えが非常にあやふやである。
医療費の問題にしても、それからして医者の技術料その他の問題にしても、非常にあやふやであるという点から見ても、私は明らかであろうと思うのであります。これはそうではなくて、
厚生省当局も言
つているように、アメリカの
薬剤師の
人たちが日本へや
つて来て、そうしてその勧告に基いてやるというようなことになり、しかも
医師会やなんかでも
つてそれに反対したのに対して、サムス准将の公開状によ
つて医師会の幹部が総辞職せざるを得ないような、そういう事態まで起しておる。このことは決してこれが日本でも
つてこういう改正をする事情があるから、したのではないということを暗示しておるわけでございます。私
どもの
考えるところによれば、これは
二つのねらいがあるのではないかと思
つてお
つたのでございます。
第一は現在のような日本の複雑な状態のもとにあ
つては、製薬資本が伸びることがなかなかできない。ところが最近においてアメリカの製薬資本の進出ということが、これは現なまでの進出はありませんけれ
ども、事実上ではそろそろ出て来ておる。それでこの
法案が実施されるころになれば、そういうものが全面的に出て来るのではないか。そうして
薬剤師の方々は
厚生省の出された案に非常に
賛成しておられるけれ
ども、しかしながら私
どもがおそれるのは、そういう独占的な製薬資本の進出によ
つて、ちようどコカコーラが
世界を風廃しているような、ああいう調子がやはり日本にも現われて来て、そうして薬などは、いろいろなものを合せて丸薬にしたような規格品がずつと出て来て、それが風擁してしま
つて、そういうものでも
つてすべてやられることになる。昔星製薬でも
つてチエーン・ストアをつく
つて、そのチエーン・ストアの子弟までも教育するように学校をつく
つたなどということがありました。あれも星さんがアメリカを見習
つてや
つたそうでございますが、そういうような式でも
つて、すべての
薬剤師の方も、単に大資本のチエーン・ストアとしてのみや
つて行ける。そういうようなことにな
つて、
国民の
医療というまりは資本の利益の方がぐつと強く出る。それも外国の資本の利益が先頭に出て来る。こういうことを非常におそれるし、現在の単独講和のありさまを見れば、そういうものが決して杞憂でないことが明らかでありますから、そういう点からしても私
どもは
厚生省の案に反対してお
つたわけでございます。
それから第二の点といたしましては、最近お医者さんたちが成り立たなくな
つて、そうして
国民が非常に貧乏にな
つて普通の
医療は受けられない、不十分だということは
承知してお
つても、あの健康保険でも
つてやるよりしようがないという状態にな
つて、健康保険でも
つて医療をやる
人たちがふえて来た。そういうことのために、またお医者さんたちの中でつぶれる者もどんどん出て来る。こういうような状態のもとでさらにこれがなされるならば、さらにその状態が悪化して、開業医の人がやめなければならないような状態がどんどん出て来る。これが現状においては少くとも
国民の健康に大いに害があることになるし、そればかりでなく学校で医学を修める人、これは御
承知のように普通の大学とは違
つて二年長い。そういう長い年月を費した上インターンをや
つてお医者さんになる。そうして開業医にな
つても見込みがないということになれば、その
人たちの行き先はどうであるか。保健所その他が完備されてすぐにも医学の社会化の方に向うならば、そういう
人たちも大いに活躍する余地があるけれ
ども、そういう方向には向わない。そうすると一体その
人たちはどこへ行くか。そのことを暗示するのは、最近において国際連合軍の傷病兵たちのために、日本の医者が大分動員されておること、そうしてこれも日本の単独講和とからんで行われる、日本のいわゆる再軍備というような問題ともからみあわせてみると、そういうような軍医なんかをどんどん調達するというような方面にも、これが相当お手伝いをすることになる。こういうような点も、私
どもはあくまで戦争に反対し、戦争態勢をつく
つて行くことに対して反対するという
意味から、私
どもは反対であるわけであります。
この二点から反対してお
つたのでありますが、今度の
参議院の
修正案によりますと、新聞でも批評しておるように、この
法案は事実上いろいろ
厚生省案の
趣旨が生かされるようだという話がありましたけれ
ども、私
どもの見るところでは、これは世間の見るところも同じであると思いますが、事実上これは大した問題じやない、骨抜きである、こういうことが
考えられる。
従つてそういうような問題に対して、そうむきにな
つて反対するにも及ばないという点であります。またこの
論争がきつかけにな
つて、先ほどの
処方箋の問題もありまするが、
医師の
責任とかいろいろな点が若干でも改められるところがあり、またこれを機会に
医師の技術料の問題についても、幾らかでも公正な結果が出て来るかもしれないという非常にわずかな
期待でありまして、ほとんど問題となるまいと思いますけれ
ども、そういうことがありますものですから、しいて反対しないで
賛成して行こう、そういう
意味で
賛成いたします。