○
山口(正)
政府委員 ただいま
大臣が御
説明申し上げました
検疫法につきまして、逐條的に私から御
説明申し上げたいと存じます。
法案はお手元に差上げてございますので、その
法案について逐次御
説明申し上げることにいたしたいと存じます。
本
法案は、第一章から第四章までにわかれておりまして、第一章は
総則、第二章は
検疫、第三章が
検疫所長の行うその他の
衛生措置、第四章が
雑則、それに
附則がついているのでございます。
まず第一の
総則——第
一條は、この
法律の
目的をうた
つているのでございます。この
法律の
目的は
二つございまして、第一は、
検疫を
実施することによりまして、
検疫伝染病が
国内に
侵入して来るのを防止するということでございます。第二は、
検疫所長が行うその他の
衛生措置によりまして、
検疫伝染病以外のその他の
伝染病の
予防を行うということでございます。ここで
検疫と申しますのは、
外国から来航いたしました
船舶、
航空機につきまして、ただいま申し上げました
目的を達成いたしますために行われまするところの
書類の
検査、あるいは
診察、
病原体の
検査、
消毒、あるいは
鼠族昆虫類の
駆除、隔離、停留、
予防接種等の
措置をいうのでございます。
第
二條は、
本法の
対象となります
検疫伝染病についての
規定でございます。この
法律において取扱います
検疫伝染病と申しますのは、
国際衛生條約に従いまして、
コレラ、
ペスト、発疹チフス、痘瘡、
黄熱を取扱うようにいたしておるのでございます。
第三條は、
検疫を
実施いたします港についての
規定でございまして、これは
検疫を
実施いたします港を政令で定めるように
なつておりますが、その定めます基準は、一応
入港船舶の実績、それから防疫的の見地、この
二つからきめて行きたい、そういうふうに考えております。
第二章は、さきほど申し上げましたように
検疫に関する事柄でございまして、第四條から第二十三條までございます。
第四條は、
入港の
禁止でございまして、これはさきほど
大臣から御
説明申し上げましたように、従来は
検疫施行港に入
つたものだけ
成規の
検疫をいたしまして、そのほかの港に入りまするときには、特別な
事情のない限りそのまま入れる。
伝染病が発生しているような場合には、その土地の
当該官憲に報告して、その指揮を受けるというふうに
なつてお
つたのでございますが、そのようなやり方で、
検疫を
実施しない港に船が来ることを認めて、そこでは特殊の
手続をふめば
検疫を受けたと同様な効果を与えるというような
制度は、
検疫港を設ける
必要性も、あるいは
伝染病の
国内侵入を完全に防遇するということ、あるいはひいては
検疫ということ
自体をも否定するようなものになるのでありまして、
従つてこの考えを排しまして、新しく今回は、第四條に掲げてございますように、
外国から
わが国に参ります
船舶は全部一応、
検疫を
実施いたします港に参りまして
検疫を受けなければならないということにしたのでございます。第二項は
航空機についての
規定でございます。
本條に違反いたしました場合には、十万円以下の
罰金という
罰則がついております。
第五條は、
検疫の
根本規定でございまして、
外国から来航した
船舶または
航空機につきましては、その長が
検疫済証あるいは仮
検疫済証—これは後に申し上げますが—、これらの
交付を受けた後でなければ、何人も
船舶あるいは
航空機から、上陸したりあるいは物を陸揚げしたりすることができないという
規定でございます。但し、その
乗客、
乗組員のうちに、
虫垂炎患者のように、非常に火急を要するような
患者が乗
つてお
つた場合には、
検疫所長の特別の
許可を受けて、そういう
許可証をもらう前に上陸することができるということに
なつております。
本條の
規定に違反いたしました場合には、一年以下の
懲役または十万円以下の
罰金という
罰則がついております。
第六條は、
検疫前の
通報でございますが、これは
検疫を受けようとする
船舶などの長は、あらかじめ
検疫港あるいは
検疫飛行場に近づきましたときは、無電あるいは
信号などで
通報をするということでございます。これは
検疫所において
準備態勢を整えさせるために、そういう
措置をとらせるわけでございます。
第七條は、
航空機についての
虫類の
駆除でございますが、これは主として
黄熱を媒介いたします特殊なかの
侵入を防止いたしますために、
検疫飛行場に着く前に
虫類の
駆除を行うということでございます。
船舶は
検疫区域を
陸岸から四百メートル以上離れて設けますので、かが飛んで入るという心配はございませんから、
船舶についての
規定はないわけでございます。
第
八條は、
検疫区域についての
規定でございますが、これは
検疫能率の点と、港内あるいは
飛行場の汚染を防止いたしますために、
検疫を受けようとするときには、
一定の
区域に入
つて、そこで
検疫を受けなければならないということにしているのでございまして、その
検疫区域を定めます場合には、
厚生大臣が
運輸大臣と協議して定めるということに
なつております。第三項に、天候その他の
理由、たとえば
天災とか、
地変などのために、どうしてもその定められた
検疫区域に入ることができないという場合には、
臨時に
検疫所長が指定した
場所に入
つて、そこで
検疫を受けるということになるのでありまして、その場合には、
検疫所長は、その港の
港長と協議してきめよということにいたしております。
第九條は、
検疫信号に関する
規定でございます。これは
検疫をしてほしいという
検疫の要求と、それからほかの船に対して、この船はまだ
検疫が済んでいないのであるということを示します注意のために、
信号を掲げさせることにしているのでありまして、定められました
場所に入
つた時から
検疫済証を受けますまでの間、晝の間は黄色い旗を
前橋頭に掲げておく、夜は紅白二燈を上下に連繋させて掲げておくということにしているのでございます。この
規定に津反いたしました場合には、五千円以下の
罰金という
罰則がついておるのでございます。
第十條は、
検疫開始のことに関する
規定でございまして、これは、
船舶などが
検疫区域に入りました場合には、非常に天気が悪い、あるいは陸上の
天災地変などがあるという特別なやむを得ない
理由のある場合を除き、ただちに
検疫を
開始しなければならないという
規定でございますが、ただ、旧没後は
検疫をしないということに
なつております。これは、
夜間は危険を伴いますことと、
乗客の睡眠を妨げるということから考えて、
船舶についでの
夜間内検疫は
実施しないということに
なつております。但し、
伝染病が発生しているときとが、あるいは
小型船舶の場合、あるいは公務上特に緊急を要するというようなときには、
夜間も行うように
なつております。
航空機につきましては、
夜間も
検疫を
実施するのでございます。
第十
一條以下は、
検疫の具体的な
規定になるのでございまして、第十
一條は、
書類の
提出及び
呈示に関する
規定でございます。これは、
検疫を受けますに際しまして、
船舶などの長は、
検疫所長に対しまして、
明告書を
提出しなければならないのでございます。
明告書と申しますのは、そこに書いてございますように、
船舶等の名称あるいは
登録番号、
発航地名、
寄航地名、その他省令で定めます幾つかの
事項がございますが、それを記載した
明告書を
提出しなければならないのであります。この
明告書という
制度は、
検疫にあたりまして、的確な判断を下す
基礎資料となりますと同時に、
検疫を早急に終了させ得るという利点がございますので、この
制度を設けているのでございます。なお、第二項におきましては、
明告書以外に、そこに掲げましたような
書類の
提出または
呈示を求めることができるという
規定でございまして、
本條の
規定に違反いたしました場合には、六箇月以下の
懲役または五万円以下の
罰金という
罰則がついておるのでございます。
第十
二條は、
船舶に乗
つている者に対する
質問に関する
規定でございまして、
検疫所長は、
船舶に乗
つている者に対して
質問を行い、あるいは行わせることができるという
規定でございます。虚偽の答弁をいたしました者に対しては、六箇月以下の
懲役または五万円以下の
罰金という
規定がついておるのでございます。
第十三條は、船に乗
つている者に対しての
診察、あるいは船に対するいろいろな
検査についてでございます。この
診察並びに
検査に対して拒否をしたり、あるいは妨害をした者に対しましては、六箇月以下の
懲役、五万円以下の
罰金という
罰則がついているのでございます。
以上は、健康な
船舶についてすべての
船舶についての
規定でございますが、第十四條は、
検疫伝染病の
病毒に汚染しているもの、あるいは汚染した疑いのある
船舶に対する
措置でございまして、必要があると認めた場合には、そこに掲げてございます第一項の第一号から第七号に
規定いたしました
措置をとることができるのでございます。第一号は
患者を隔離すること、第二号は
病毒に接触したと思われる者を停留すること、第三は
消毒、第四は死体の火葬、第五は物の
使用禁止、第六は
鼠族、
昆虫の
駆除、第七は
予防接種ということでございます。この
措置に対して拒否したり、妨害したり、忌避した者に対しましては、
一定の
罰則がついておるのでございます。
第十五條は、先ほど申し上げました者者隔離についてのこまかい
規定でございます。
第十六條は、先ほど申し上げました第十四條第一項第二号の、接触者の停留に関する
規定でございます。この
患者隔離あるいは接触者の停留に関する命令に違反いたしました場合には、やはり
一定の
罰則がつけられているのでございます。
第十七條は、
検疫済証の
交付でございまして、
検疫所長が
検疫を
実施いたしました結果、
伝染病がその船あるいは
航空機によ
つて国内に搬入される心配がないと認めましたときには、
検疫済証を
交付するわけでございます。
第十
八條は、先ほど
大臣が御
説明申申し上げました仮
検疫済証の
交付でございまして、これは絶対百パーセント安全とまでは行かないけれども、大体十中八、九は大丈夫だろうというようなときには、
一定の
條件をつけまして、
許可証を与えるわけでございます。
第十九條は、その
一定の監察期間内に
伝染病が発生した、あるいはそのほかの事故が起りました場合には、その
検疫済証の効力が失効するという
規定でございます。
第二十條は、
船舶のねずみの
駆除などを行いました場合に、それに対しまして証明書を
交付するという
規定でございます。二十條の第一項が
鼠族の
駆除でありまして、第二項は、
予防接種をやりましたときには、
予防接種をや
つたという証明書を与える、こういう
規定でございます。
第二十
一條は、
緊急避難の場合でございまして、急迫した危難を避けるために、やむを得ず船が
国内の港に入り、あるいは
飛行場に着陸させるというような場合には、
検疫施行港あるいは
検疫実施飛行場でなくてもさしつかえない。そういうやむを得ない急迫した危難を避けるというような場合には、さしつかえないという
規定でございます。
それから、第二十
二條は、軍用艦船に対する
検疫でございまして、これは別に
法律で定めなければならない。現在の
わが国の置かれております状態から考えまして、これは講和條約の締結された後に、別にきめなければならないと思うのでございます。
第二十三條は、海上保安庁の
船舶などに対する特例でございまして、これは密入国者などのありました場合に、一々
検疫を
実施する港まで連れて行くことができないというような場合の特例を
規定しているのでございます。
以上が
成規の
検疫に関する
規定でございまして、
検疫伝染病を
対象といたしましての
検疫に関する
規定でございますが、第三章は、
検疫伝染病以外の
伝染病に対する
措置、あるいはねずみの
駆除というようなことに対しての
規定でございまして、第二十四條は、
検疫伝染病以外の
伝染病が発生いたしまして、まだ
国内法の適用を受けないというような場合に対して、応急的に
検疫所長が
伝染病予防の
措置を講ずるという
規定でございます。
第二十五條は、健康
船舶についてのねずみの
駆除でございます。これはねずみが繁殖しておりますと、一たび
病原体が
船舶に入りますと、爆発的に発生いたしますので、あらかじめねずみの
駆除を行わせるという場合でございまして、行わなくてもいいというような状態の場合には、免除証明書、あるいは行
つたというような場合には
施行証明書という証明書を出すということでございます。
第二十六條は、船側の方から、あるいは飛行機側の方から、
検査をしてくれと言われた場合に、その
検疫所の
業務にさしつかえない
範囲内において、
検査、あるいは検診してやるという場合でございまして、この場合には政令で定めた手数料を納めさせるということに
なつております。その額はまだ検討中でございます。第二十七條は、港地区におきまするいろいろな清掃、あるいは
鼠族昆虫の
駆除というような、
伝染病予防上必要であるという
措置につきまして、特別な場合に
検疫所長がそういう
措置を講じ、あるいはまた港の
区域内で労働に従事しておりまする者につきまして、健康診断をや
つたり、
虫類の
駆除を行わせるというような
規定でございます。
第四章は
雑則でございまして、第二十
八條が
検疫官という職名に関する
規定でございます。
第二十九條は立入り権限についての
規定。
第三十條は、この
法律による
検疫所長及び
検疫官の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないという権限解釈でございます。
第三十
一條は
検疫に従事する者の制服あるいは証票についての
規定でございます。
第三十
二條は、
検疫に際しましてとりました
措置に対する実費の徴収
規定でございます。
第三十三條は、
緊急避難の場合にと
つた措置の
費用の
支弁のことでございます。
第三十四條は、
検疫伝染病以外の
伝染病について、この
法律を準用する場合の
規定でございまして、
外国に非常に
検疫伝染病以外の
伝染病が発生して、それが
国内に持ち来たされるおそれが非常に多いというような場合に、特別にこの法を準用するという
規定でございます。
第三十五條から四十條までは先ほどから申し上げました
罰則に関する
規定でございます。
第四十
一條は、省令委任に関する
規定でございます。
附則につきましては、
本法を制定していただきますのにつきまして、他の法令との
関係、あるいは経過
規定などを
規定しておるのでございまして、この
法律の
施行期日は、
本法を
施行いたすということになりますれば、世界各国に周知させる必要がありますので、
一定の期間を設ける必要上、二十七年の一月一日から
実施したいというふうなことでございます。
以上簡単でございますが、一応逐條的に御
説明申し上げました。