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金子委員 私は国民民主党を代表いたしまして、この
法律案につきまして、二、三の要望をつけ加えまして、賛成いたしたいと存じます。
この
法律は長いこと懸案にな
つておりましたが、とにもかくにも、不足ながらも
相当の国費が
結核のために出されておるということ、それからただいま
丸山委員の述べられましたような、健康診断あるいは予防接種ということ、これは確かに一進歩だと思うのであります。そこで私の要望申し上げたいことは、健康診断の問題につきまして、
保健所の施設というもの、制度というものを、全部活用しようというねらいを、この
法律は持
つておるのでありますが、しかしここに考えなければならぬことは、日本のような国費の少い、いわゆる貧乏な国で、一切官制と官費によ
つて一つの目的を貫徹しようということは、
相当無理があるのでありまして、その点から行きますと、この
保健所というふうな、何となく官制的なものを使うということは、これは国民と離れる結果になるということを、私は考えておるのであります。
それではしからばどういうふうに考えたらよろしいかと申しますると、今度の
結核の予防につきましても、あるいはこの
結核対策の国費におきましても、その以下の地方団体というもの、県なり、市町村というものがある程度の分担をしなければならない。そういうことになるならば、
結核の予防や、あるいは
結核対策全体を通して、市町村の組織なりというものと、もつと密接な結びつけをしようという考え方を持たなければいけない。今後厚生問題がだんだんに進展して参りますれば、おそらく市町村ごとに半公的な診療所なり、組織なりが必ずできなければならぬ時代が来るのではないかと思うのです。そういう半公的な機関というものと、こういうふうな国から下
つて行くところの
一つの組織というものが、相マッチして協力し合
つたときに、初めて
結核予防というものも万全を期し得られるのだと思います。国費をたくさん使うだけではいけない。たとえば
一つの例を申し上げますならば、今の国保なら国保というものの地域
社会保障の団体が、ほんとうに共同してや
つたときには、その組織自体すら、当然事業として、
結核予防対策あるいは寄生虫予防というような予防
方面にまで入
つて来るのであります。そういうふうな下から来る、自然性から来るものと、こういう官制的な組織が手をつないで行くということによ
つて、国費をたくさん使わないでもできるのではないか。そういう方向に持
つて行つていただきたいということを、私は第一に
希望するものであります。そういうふうな考え方にいたしませんと、先ほどからいろいろ問題が出ておるように、
病院に入
つておれは
療養する権利があるんだ、それに対して県は、あるいは国はこれだけの待遇しかしないじやないか、こういうふうにいつも権利
義務の呼ばわりだけでは、とても病人の
療養なんかできるものではないのです。これは
法律の問題でありませんから、
法律にどう書けとか、どういうふうに直せとかいうことは、私にはできませんけれ
ども、私
どもがTBの
病院を持
つておりましても、決して
結核患者は肉体の安静だけで病気がなおるものじやないのです。いかに肉体を安静にしてお
つたつて、精神的に目じりを上げたり下げたり、騒動したりするようなことでは、私は
結核は決してよくならぬと思う。結局
結核は心構えとからだと両方が相ま
つて初めて治療できるものだということを、私
どもは実際に今でも信じておるのであります。それでは地方自治機関とそれから国費の
運用を結びつけ合せることによ
つて、どうしてそれができるかと申しますと、たとえば
結核患者が
療養しておりましても、おれは不幸にして病気に
なつたけれ
ども、待遇は悪いけれ
ども、病気であるがゆえにこういう特権を与えられておるのだ、そうして自分が一人こうして休んでいるのは、たくさんの人の税金をつか
つて、おれは休養さしてもら
つておるのだ、こういうふうな精神的なものが出て来てこそ、心の安静がはかれるのであります。それは決して単なる唯心的な考え方でも何でもない。
結核患者が
療養しておるときは、おれは病気のためにこうして国費を使
つているんだ、こういう謙虚な気持と、平らかな気持があ
つて初めて
結核がなおるのであります。いかに薬をのみましても、あの中で常に不満不平だけで送るならば病気はなおらぬ。こういうふうに考えたときには、その範囲が、たとえば県の役人に世話に
なつたということよりも、村の村長さんが来て心配してくれるとか、あるいは隣組の人が来て心配してくれるというような形で、
社会連帯の感を身近かに感ずるような組織に置く方が、世の中はよりうまく行くと私は考えておるわけです。
従つてこの
予防法を施行する上に、官制的な
保健所だけにたよらずに、一日も早く町村なり、あるいは県なりの民間的な組織とうまく結びつけて
運用して行くことが将来大切なことであり、そういうことによ
つて国費を比較的少く使
つて行けるということが考えられると思うのであります。
従つて今後の
運用上に対しては、
保健所という官制的な、役人的な
一つのにおいをできるだけ抜いて、民間的な組織と結びついてこの問題を達成するように、
運用して行かなければならない、これが第一点であります。
それから
伝染防止と
強制入所の問題でありますが、これは先ほど他の
委員からも
質問の過程に、いろいろ議論が出たのでありますけれ
ども、実際の問題といたしまして、現在のベッドのあり方におきまして、先ほど
お話もありましたが、今後農村、あるいは漁村におけるところの現在発見されてない、統計上にはつきり出ていない者が、この制度によ
つて数の上に上りましたときに、はたしてこの
伝染防止と
強制入所というふうな問題につきまして、万全が期せられるかということに対しては、遺憾ながら私はそう予期できない。なぜならば、ここに本年度病床が
完全に思う
通りに行きまして十二、三万床のものができましたと仮定いたしましても、なおこの
法律が空文化するというふうな結果が生れやしないかということを気づかうものであります。しかしながらこの問題につきましては、一方において
予算的な
一つの制約もありますので、これに対しては今後十分この
法律が生きるような方法をとるのには、結局
予算の問題がついてまわりますので、この点厚生大臣におかれましては、今後とも新しい
法案をつくるときの努力と同じような努力を、続けていただきたいということを第二に
希望いたします。
それからもう
一つは、今
結核病院のいろいろの
状態を見ますると、先ほど
医務局長は退所後における
患者の動向に対して、ごまかい調査ができておらないという
お話でございましたが、これは非常にむずかしいことでありまするけれ
ども、私
どもが
病院に入りましたTB
患者の
状態を見ますと、大体において半年なり、あるいは一年なり入所してお
つて、それで退院した者で、二年なり三年なり帰らないで、健康を保持する者はそのまま行く場合が多いし、それが二度帰
つて三度目に来たときは、たいてい死ぬのであります。それはもちろん退所してからの
本人の攝生なり、あるいは経済的な事情によ
つて働かなければならないということが、原因しておるのだと思いますが、大体二度帰
つて三度目に来るのはたいてい死ぬのであります。そういうことを繰返しておる者を
現実によく見ておりますと、この問題は単に
伝染防止、あるいは治療の
意味におてい、一定期間入所させるごと以外に、
予算的にはもつと困難な問題でありまするけれ
ども、どうしても考えなくちやならぬことはアフター・ケアの問題だと思います。今この
法律においてはアフター・ケアの問題に対しては触れておりません。もちろん
予算がこれだけでさえも少いのでありますから、これは困難だと思いますけれ
ども、ただここに私は
希望として申し上げるのは、このアフター・ケアの問題について、現に私相談されている問題があるのであります。たとえば産婆とか
看護婦で長くその
方面の
仕事に携
つて年
とつた連中が、もう年をと
つておるから
看護婦としては働けないから、ひ
とつ何か財団法人でもつく
つてアフター・ケアの
仕事に生涯を尽したいというようなことを、現に相談されたことがあるのでありますが、こういうふうな、あるいは宗教団体でもけつこうですが、その他の民間団体に国家が
相当度の助成をいたしまして
——アアター・ケアを国費だけでつくることは
相当困難でありますから、そういう
方面に助成策をと
つて、そうして民間人と協力して、このアフター・ケアの問題を考える
意思はないか。私はむしろこのことに対して今後研究をしてほしい。これが第三番目の問題であります。
最後に第四としてお願したいと
希望することは、この
予算をかりに倍とりましたところで、この
法律を百パーセント満足させるわけにはいかない。そこでこの
結核がどうして
療養できないかと申しますと、まあいろいろの原因はあるにしても、結局経済問題でありまして、現在の組織労働者であるとか、あるいは共済組合の恩典を受けられておる国家の特別な
社会層の人は、一年なり二年なり休養いたしましても、それに対する收入は裏づけてありますけれ
ども、一般の庶民階級になりますと、あるいは自由労働者であるとか、あるいは農民だとか、そういう
人たちは働けなく
なつたあくる日から、無収入になるのであります。
従つて療養がただできることにかりになりましても、
生活の收入はま
つたく断たれるのであります。そういうふうなことで、今日同じ国民でありながら、特殊な事業を選んだ
人たちは、何とかりくつをつけて働かなくても金がとれる。そうして一般の国民層は働けなく
なつたときと一緒に收入が絶える。そうして病気にな
つても入院もできない。こういう制度については、私は
相当考え直さなくちやいかぬと思うのであります。そこでこの
法律施行の上は、
社会保障の問題と切り離すことができない
結核の問題でありますから、病気をなおす、
伝染を防ぐということだけでなく、どうしても国民が病気に
なつた場合には、
生活保障という問題が出て来るわけでありますから、
従つてこの
法律を達成する上には、より以上
社会保障の問題と関連性を強く持たなくちやいけないということをお考え願いたいのであります。
以上の四点の
希望を申し上げまして、本案に賛成いたします。