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1951-05-31 第10回国会 衆議院 建設委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月三十一日(木曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 藥師神岩太郎君    理事 内海 安吉君 理事 田中 角榮君    理事 村瀬 宣親君 理事 前田榮之助君       逢澤  寛君    淺利 三朗君       宇田  恒君    小平 久雄君       瀬戸山三男君    内藤  隆君       西村 英一君    三池  信君       中島 茂喜君    福田 繁芳君       増田 連也君    池田 峯雄君  出席政府委員         建設事務官         (管理局長)  澁江 操一君  委員外出席者         参議院議員   岩沢 忠恭君         建設事務官         (管理局総務課         長)      高田 賢造君         衆議院法制局参         事         (第二部長)  福原 忠男君         参議院法制局参         事         (第三部長)  岡田 武彦君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ————————————— 五月三十一日  委員逢澤寛君、上林山榮吉君及び高田弥市君辞  任につき、その補欠として岡西明貞君、柳澤義  男君及び川端佳夫君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  土地収用法案参議院提出参法第二三号)  土地収用法施行法案参議院提出参法第二四  号)     —————————————
  2. 内海安吉

    内海委員長代理 これより会議を開きます。  土地収用法案参議院提出参法第二三号及び土地収用法施行法案参議院提出参法第二四号を一括議題といたします。前会に引続き質疑を継続いたします。通告順に従いまして質疑に入ります。西村英一君。
  3. 西村英一

    西村(英)委員 私はきわめて簡単な、卑近なことばかりを御質疑申し上げますが、本法律案は、いわゆる私権とその公益性衝突によつて、その間の調節をする法案である。しかして従来の旧法によりますれば、国家権力が非常に強かつたために、公益性がややもすると私権を非常に侵すというようなことのために、今回の法律案改正につきましては、特に私権の擁護に重点を置いたということは、提案者説明いたしているところであります。私もまたこの点につきましては、旧法より、現在の段階と世情といたしましては十分私権を重んじなければならぬということにつきましては、提案者と同様の感を抱いているのであります。しかしこれをまた反面から見ますと、この法律はとにかく公益性の保護である。従いまして私権と申しましても、その実際問題に当ります点は、いろいろの事項があるわけであります。私権を主張します場合に、ほんとう収用及び使用される人が生活権を失うというような場合もあるし、また場合によりましては、土地値段折合いがつくかどうか、非常にべらぼうに私権の濫用といいますか、私権をたてにべらぼうな値段でなければ折合いがつかぬ、またその他あまり事由のない、ほんとうに個人的な理由で反対するというようないろいろな場合があります。私権が尊重されるのはまことにけつこうでありますが、その結果によりまして、ややもすれば公益性が反対に非常に阻害されるおそれがあるのではないかと思うのであります。現にその現われが相当に起つていると私は思うのであります。それでこれはその間のうまい調節をとるということでありますけれども、私権が非常に強力であり、濫用されるということになりますと、非常に公共性が阻害されて、公共性のある仕事がうまく行かぬ。またそれを解決するためには、不当なる金銭によつて解決しなければならぬ場面が非常に多いと思われるのであります。現にそういう徴候が出ておるのではないかと思われるのであります。そこで私がお聞きいたしたいのは、五十年間のこの旧法の適用によつた経験から、提案者岩沢議員は非常に御経験を積んでおられるでありましようが、その過去の歴史におきまして、またごく最近終戦後の私権が特にやかましく言われるときにおきまして、この事件取扱いはどのようなことになつておるか、端的に申しますと、戦時においては、この法律によつて適用されたところの件数はどのくらいあり、終戦後は、それが非常に多くなつているが少くなつているか、そういうような点につきまして、どなたでもよろしいのですが、御意見を承りたいと思います。     〔内海委員長代理退席委員長着席
  4. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 お答えいたします。この今度の新法私権を擁護するという建前はお説の通りであります。そのために生ずる、公益性というものが侵害されはしないかということを危ぶまれるのでありますが、収用委員会にかける前においては相当私権の主張はいたすと思いますが、しかしそのために公益性を害せられるという場合においては、やはり起業者はそこで初めて収用委員会に提訴いたしまして裁定を受けるという段取りになるのであります。その場合においては、収用委員会において従来のような官憲一点張りではなくて、やはり民間の委員も選定して、ほんとうに公平な立場公益性も十分尊重するということもやつておりますし、またその事前において調停とか和解とかいう方法も講じて、できる限り私権公益性とを調和した上においてすべてのことをやつて行こう、こういうことだろうと思います。また今お話の、従来のこういうような旧法による土地収用を建設省においてどのくらい取扱つておるかと申しますと、平均年に大体三十件くらいのものであります。それで私の見通しといたしましては、従来はほとんど私権を束縛せずというような考えで、審査会にかかればこれはまあまあいやだけれどもしようがないというので、泣寝入りにならなければならぬというような感があつたために、割合件数が少かつたのじやないかとも考えております。しかしながら今度の新法におきましては、相当収用者側についての発言権を許しておるような状態でありますから、今後におきましては、この収用委員会に提訴するという問題は従来よりも相当ふえるのじやないか、こういうように考えております。大体現在におきましては、三十件内外という今日までの経過に相なつておるのであります。
  5. 西村英一

    西村(英)委員 終戦後と戦前との著しい件数の差はありませんですか。
  6. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 大体同じでありますが、昭和二十二年では全体で七件で、二十三年度は十九件で、それから二十四年度は二十五件、二十六年度の三月まででは三十七件、新法が出なくても旧法では現在大体こういうような状態になつております。二十四年、二十五年、二十六年、こういうようにだんだんふえておる傾向は、実際の取扱いとして新法と同じような取扱いをやつておるために、この被収用者側ができるだけ有利に解決するという考えから件数はふえて来ておる、こういうように考えております。
  7. 西村英一

    西村(英)委員 大体提案者説明でわかりました。私の心配いたします点はそういうことでありまして、これは収用法でもつて適正な判断をしてもらうことによつて、ややもすると私は私権を非常にやかましく言うと、公益性の方は曲つて、それではということでべらぼうな高い値段どんどん買うようになるということを恐れるのであります。収用法は伝家の宝刀とも申されて来ましたが、そうでなしに、どんどん収用法を適用して適当に判断してもらう。あまり高い値段であればそれに応じなくても判断してもらうということで、公益性も主張し、一方私権私権で当然尊重せらるべきものだ、こういうように私は考えておりますが、今件数においても著しい違いがないというお話でありましたから、一応了解いたしまして、この点はそれだけにいたしておきます。  第二に私のお尋ねいたしたい点は、本法の第四条でありましたか、公益性衝突の場合であります。これは先般も村瀬議員から尾瀬原の例を引いてちよつとお話がありましたが、私はこの公益性衝突の場合、これは「特別の必要がなければ」というふうに入れてあるのですが、この特別の必要がなければというのは、ただ単に字句だけの問題か、あるいはこれを実際に適用する場合においては、第四条以外一般が収用及び使用やり方と違うようなやり方をやるのか。そういう点について四条の運用は一体どうして行くのか、尾瀬原のごとき問題になければ行政の問題として許認可のことで解決するのだから、こういうような第四条に該当するような例はないのだと申しておりましたが、実際例が今後たびたび起るのじやないかと思うのです。特別な必要がなければという、特別な必要はだれが判断し、どこでやるのか、特別な裁定方法考えておるのか、その点をお聞きしたい。
  8. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 第四条は「収用し、又は使用することができる土地等の制限」、こういう題目になつておる。これが非常に強く響いておるのじやないかと考えますが、実は第四条はやはり旧法にもありまして、いわゆる公共用に使つておる土地は、原則としてこれをまた再び収用することができないというようになつておるのでありますけれども、実際問題として、そういつた土地でも公益上必要だということは往々にして起ることがある。たとえて申しますと、ここに大きな学校の敷地があつて体操場がある。その体操場の付近に道路を新設するような場合において、この体操場に一部かからなければ道路の設計とかあるいはその他の関係上非常にまずい。その場合において、ただ単に収用することができないということを明記いたしますと、この道路というものが全然できない、そういつたような場合においては、もしその町村の人が同意すればよろしいですけれども、頑として聞かないような場合においては、土地収用委員会におきまして、この公益性が大であるか、あるいは学校使用としてこれだけはがまんすることができるかできないかという判断の上においてこの四条を適用する、こういうように私は考えております。
  9. 西村英一

    西村(英)委員 この弊別な必要がなければという判断は、収用委員会ではなくて、裁定をやる方が多いのじやないですか。
  10. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 それはお説の通りに、第一段階といたしましては、事業認定者建設大臣あるいはまた一府県ならば府県知事がやる、こういうことになります。
  11. 西村英一

    西村(英)委員 そうすると特別な必要がなければということは、普通の公益性のないところの土地収用使用する場合と、実際問題はやり方として違うのでしようか、違わないのでしようか。そだその辺が、実際問題としてはあまり違わないのじやないですか。
  12. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 手続は同じでありますけれども、同じ公益性を持つておる土地収用する場合においては、よほど慎重に考慮しなければならぬ。こういう精神があるのでありまして、従つてその場合においては、現在において取得しておる公益性の方が強いか、あるいはまた新たにそういう事業に対する公益性が強いかということの比較判断によつてきまるべきものだろうと私は考えております。
  13. 西村英一

    西村(英)委員 ちよつと逆に裏から聞きたいと思いますが、それでは「土地等収用し、又は使用することができる事業の用に供している土地等は、特別の必要がなければ、収用し、又は使用することができない。」とありますが、この収用法対象となる収用及び使用し得る土地というものは、公益性のある以外の土地は、どういうところが収用及び使用対象になるのでしようか。
  14. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 これは第二条をごらんになりますと、「土地利用上適正且つ合理的である」という言葉がありますが、その立場に立つて判断するということになると思います。
  15. 西村英一

    西村(英)委員 その点はまだ少し了解に苦しむのでありますが、質問を他に転じまして、第三条の「土地収用し、又は使用することができる事業」という条項についてであります。この点につきましても昨日いろいろ御質問がありましたが、この第三条の第三十号の、住宅の、「五十戸以上の一団地住宅経営」という点について、昨日の村瀬委員の御質問の意図は、その裏はどこにあつたか知りませんが、私は、庶民住宅を建てるために土地収用をやるというようなことはやむ得ないだろうと考えております。しかし「住居地域内に」とありますが、むしろこれは住宅地域内に庶民住宅をつくるということではなく、庶民住宅はどういう土地につくるかわからないというのが多くの例ではないかと思うのであります。住宅地域はきめてあるところもあるし、きめてないところもある、しかし庶民住宅は至るところにあるわけであります。従いまして、国または公共団体庶民住宅をつくるという必要のために収用しもしくは使用する場合には、住宅地域内でなくてもいいじやないか。もつと厳密に言いますと、工場地域及び商業地域を除いたその他の土地でもいいのではないかというような気がいたすのでありまして、住宅地域のみでなければいけないという理由が私にはわからないのでありますが、その点を伺います。
  16. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 そういう御質問もつともと思いますけれども、しかし現在におきましては、都市計画なりあるいは建築基準法によつて住宅居住地というものを指定いたしておるのでございます。これを全然わくをはずしまして、どこでもかしこでもいいのじやないかという西村さんのお話通りになりますと、農地その他に非常に迷惑を生ずるというようなことになるので、一応は法令によつて住宅居住地というものの地域を設定いたしますれば、大体その土地所有者は、もしここに住宅をつくる場合においては応ずるか、あるいは応じなければ庶民住宅の用地として収用法を適用されるというようなことになると思いますので、従つて事前住宅居住地というものを指定しておくということが必要じやないか、こういう意味において、この基準法にのつとりまして住宅居住地域内ということに限定をいたしたのであります。
  17. 西村英一

    西村(英)委員 大体了承いたしました。次に三十二号にかかわる問題ですが、都市計画法におきましてはいろいろと収用及び使用の場合を規定してあるのです。しかしこの第三条には、都市計画法に基く云々というような、都市計画法に基く収用及び使用のことは何も言つていなくて、三十二号にこれが変形されて出ておるように思うのでが、実際都市計画区画整理であるとか、あるいはその他の問題について収用するという場合を、特に都市計画法というものを列挙いたさなかつたのはどういう理由でございますか。この点をお聞きしたいと思います。
  18. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 御説ごもつともですが、都市計画法ですでに土地収用し得るような特別な条件を具備しておりますから、従つてそれだけは、この場合において明示することはいらないわけであります。
  19. 西村英一

    西村(英)委員 他の事項についてもそういうように例示してあるものがあります。たとえば放送法でも収用及び使用することができるようにうたつてありますが、特に都市計画法と違うわけでありますか。
  20. 澁江操一

    ○澁江政府委員 たしか放送法にありましては、放送法による放送設備土地その他の取得を要する場合においては土地収用法を適用するというような建前になつておりますので、これは収用法としては公益性のある事業であるということを受け入れれば、それで大体歩調が合うわけであります。手続その他は、放送法においては、公益事業であるという範疇に入る以上は収用法の規定を適用する、こういう法の運用になつて来るということを認めておるわけでありますから、そこには何ら矛盾はないというふうに考えております。
  21. 西村英一

    西村(英)委員 そうすると三十二号の「国又は地方公共団体が設置する公園緑地広場運動場、墓地、市場その他公共の用に供する施設」ということは、都市計画法以外でやる場合を指しておるのですか。都市計画法の十六条には、「道路広場、河川、港湾、公園緑地その他」というふうになつており、たとえば広場のごとき、あるいは公園のごとき、あるいは緑地のごときダブる事項もあり、また道路のごときものは抜けておりますが、三十二条はこの都市計画法に基かないところの、それ以外のことをいつておるわけですか、その辺が私にはわかりません。
  22. 高田賢造

    高田説明員 御説のごとく、三十二号には都市計画云々という言葉はございません。それは、たまたま都市計画法できめられておるところの公園計画に基いて、それによつてきめられている公園について、この収用法に基く公園のための土地収用ができるわけでございますし、また都市計画が設定されておりました場合には、この収用法によらずに、都市計画法に基く事業認可とみなされて収用される、この両方の場合があるわけでございます。
  23. 西村英一

    西村(英)委員 どうもはつきりしないのでありますが、もう一つ他の点を伺います。提案理由説明を伺いますと、最近電源開発要請等にかんがみまして、公共事業施行のために土地のいろいろな問題が起つて来るというようなことについて特にお考えになつているようですが、さいぜんも申し述べましたように、第四条の公共性衝突の場合あるいはその他の事項を見ましても、今後総合開発その他によつて起るところの土地に対するいろいろの紛争の問題等につきまして、従来と違つたような特別な事項があまり多く見当らないのであります。これは私がまだ精読していないからかもしれませんが、第五条に少しそういうようなことを言つておるわけでありますが、今後総合開発をして行く上におきましては、いろいろと問題があると思うのです。そういうふうな問題が起りましたならば、一体どういうふうに対処されるか。あるいは収用法らち外で解決しようとするのか、その辺について提案者にお考えがあれば承つておきたいと思います。
  24. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今世間で非常に高く叫ばれております総合計画、この総合計画については、土地収用法らち外であります。これを実施する場合に、いろいろトラブルが起つて来るのでありますが、先ほどお話のように、今しきりに叫ばれている電源開発の問題でありますが、これは特にわれわれとしては、従来の土地収用法においては土地使用する、水を使用するというような漠然たるもので、しかもこれは土地収用法を準用するというような非常に弱い表現になつているのであります。従つて今回はこういう水の使用というようなものについて、それに付随して起るすべてのものについては、やはりこの土地収用法対象物として明確にこれを示しているのでありますから、今後はもしそういうトラブルが起れば、土地収用法にかけてはつきり解決することができるのであります。従来の例を申しますと、ダムをつくつた場合においての水の使用とか、漁業権とか、その他のいろいろな権利の解決については大体収用法そのものが非常に明確を欠いているために、収用法にかけたことはほとんど一ぺんもないのであります。従つてある場合においては関係者が非常に得をする場合もありますし、ある場合においてはいろいろの条件のもとにおいて、権利者に非常な不利を招いたということも相当あるやに聞いておるのでありますが、今度の収用法においては、十分その私権を保護するという建前からこれを立てておりますから、十分その発言権もあるのでありまして、また起業者側においてもこの問題が準用でなくて、ある場合には公益性というものを強調して事業を遂行することになりますから、従来とかくダムなり、電源開発というような問題で起つたようなトラブルも、割合に少くなつて来ると考えております。
  25. 西村英一

    西村(英)委員 最後にお聞きしたいのは、収用委員会の問題でありますが、従来収用委員会は実際にはなかなか開催されなくて困るという話をたびたび聞いているのであります。従つて先般も私は言いましたが、事業をやるのに非常に支障を来す。早く開いてもらつて、早くきめることをきめてくれればよいが、なかなか収用委員会自身が、収用法にかかる事件はとかくうるさい問題でありますから、収用委員会がなかなか開かれぬということをたびたび聞くのであります。この法律は第四十六条に「遅滞なく、審理を開始しなければならない。」ということが書いてありますが、従来の経験にかんがみて、また収用委員会が進んで開かれないで、一箇月も二箇月も待たされては非常に困ると思います。実際従来のやり方はどうであつたか、これは法定期間はあつただろうと思いますが、その法定期間内に開いておつたか、それから相当に経過して開いておつたか、またこの法律のように特に遅滞なく開けということだけで、従来の弊害をカバーできるのかどうか、そういう点について提案者の御説明を承りたい。
  26. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 旧法によりますと、収用審査会土地収用の提訴を受けた日から一週間以内においてこれを裁決するということを規定いたしているのでありますが、実際問題として、お説の通りに長年一週間以内において問題が解決しないものが相当つたのであります。と申しますのは、受理する前にやはり事前工作として、起業者関係人とが土地収用法にかけずに、十分談合して何とか打開の道を講ずるといつたような工作相当つてみるのが、今あなたのお話のように、これが壁にぶつかつてから後を計算なさると、非常に時日が経過したように思うのであります。実際処理する場合においては、今の規則では一週間以内において裁決しなければならぬ、これが裁決する場合においては、いわゆるメンバー官憲一点張りの、官側に都合のいいようなメンバーばかりでありますから、受理すればほとんど官庁起業であると官庁の側の申立を受理するような傾向が多分にあつたと思うのであります。しからば今回の改正ではどうなるかということになるのでありますが、今回は旧法に比べますと相当和解とかあるいは調停とか、できるだけ本格的な審査委員会に持つて行くまでに、また持つて行つても、その道程におきまして、いろいろ方法を講じて互いに融和してこの事業を促進するような考えを持ち、またそういうことをわれわれ非常に望んでいるために、従来のように一週間以内において裁定するようなことはできないかもしれません。従つてこの問題は少し従来より遅れるのではないかというような懸念があるかもしれませんが、特に緊急を要するような場合においては、百二十三条においてこれをカバーいたします。もし起業者が情においてやる場合においては、適当の担保をこれに提供して、そして土地収用委員会審査によつて緊急的に仕事ができる道を開いているような次第であります。
  27. 西村英一

    西村(英)委員 私の質問は大体それで終りましたが、先日村瀬委員質問いたしましたし、また私もいたしました土地利用調整委員会でございます。これは昨日も申しましたような理由によりまして、あまり私は意見を聞く必要がないように見受けられますが、これは調整委員会意見を聞いて━━調整委員会最後的決定機関であるということならまだ意義がありますが、そうでなくて官側意見を聞いてやることは、決定権がどこにあるかということにつきまして非常に疑義を持つ問題でありますが、これらの点につきまして、もう少しお考えがなかつたかどうかと私は思つております。この点につきましてお考えがありますればお聞きしたいと思います。
  28. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 土地調整委員会の問題につきまして、起案の当時から実は問題がありまして、西村さんの御意見通り、これはほとんどわれわれといたしましてはいらないのではないかというような考えを持つてつたのでありますが、土地調整委員会の非常なる要望によりまして遂に実のないような、ただ諮問機関としてこれを利用するというような程度にとどめておつたのでありますが、現在におきましてはそういうようないきさつもありますので、この土地収用法を実施したあかつきにおきまして、いかにこの土地調整委員の働きが妥当であるか、あるいはまた全然意味をなさないかというような実積に徴しまして、今後適当な方法を講じたいと思うのであります。
  29. 池田峯雄

    池田(峯)委員 講和をやつてからアメリカが日本に一定期間、あるいは無期限かもしれませんが、進駐する。そしてこれに対して基地に使用する権限をアメリカ軍に与える、こういうような問題があります。あるいは基地を新しく設けることに対しても権限を与えるようなことになるかと思います。こういう場合の土地収用は、この法律の権限外になりますかどうか、それをお伺いいたします。
  30. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今回のこの新土地収用法におきまして収用する対象といたしましては、第三条に明記しておる範囲内にとどまると思います。従つて今お説のような、アメリカの進駐軍が必要を生じたような場合は、この土地収用法にかけることはできないと思います。
  31. 池田峯雄

    池田(峯)委員 それはおかしいと思います。日本は講和して独立国になるはずなんです。基地を提供する場合に、当然日本国の責任において基地をつくつて、これをアメリカの兵隊さんに貸す、こういうことになるのではないかと思うのであります。そういう場合に当然「国が設置する航空保安施設」とかなんとかいう条項を適用されることになるのではないかと思う。日本人に非常に利害関係の多い問題につきまして、国内法を適用できない、こういうことになりますと、講和を結んでも、依然として講和を結ばないときと同じことになるのですが、この点は非常に重大な問題だと思いますから、政府の側からも答弁を望みます。
  32. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 先ほど御答弁しましたのは、進駐軍自体がそういう軍事基地をほしがる場合に発動するときにおいては、当然収用法にかけることはできない、こういう意味において申し上げたことであります。池田さんの今の御質問のように、講和をして、そして本日の治安を守るためにアメリカの軍隊を進駐させなければならぬ。従つて国の方針として国が土地を提供するというような場合をおさしになるのだろうと思いますが、その場合、やはり国の事業として、予算に伴うてものをつくる場合においては、この第三条の中の、たとえば第十二号に指定しておる「国が設置する航空保安施設」というようなものもありますから、従つてこの収用法は適用できる、こういうふうに考えております。
  33. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その点政府の出席された方からお伺いしたいと思うのですが、講和後そういう問題はどういうことになるという見通しなんですか。たとえばアメリカの兵隊さんが講和後の日本にいて飛行場をつくる場合に、日本の国が飛行場をつくつてアメリカの人に貸すことになるのですか、それともこれだけの区域はアメリカの兵隊さんに貸す、その区域内における建設はアメリカの兵隊さんが独自にどんどんやつて行く、こういうことになるのですか、その辺の見通しをお伺いしたい。これはなかなか重要な問題です。
  34. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長 それは池田君、建設委員会の権限の範囲ではないと思うのですが……。
  35. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういうことになりますと、この問題はそういうことと非常に関係が深いのですから、そういうことに通達しておる政府委員の出席を要求して、その人からとくとお伺いするということを許されますでしようか。
  36. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長 それは結びつければ、何でも結びつかぬようなことはないけれども、結局これは常識の上に立つてやるより方法がないんじやないかというのです。
  37. 池田峯雄

    池田(峯)委員 委員長は常識上どういうふうに考えておりますか。
  38. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長 私はそういう問題は建設委員会で論議すべき問題ではないと思います。
  39. 池田峯雄

    池田(峯)委員 しかし国内法として土地収用一般に関する法律をつくろうとする場合、講和後そういつた軍事施設に土地収用されることは予想されるわけであります。この問題について土地収用法が適用されるかされないか、これは当委員会として当然慎重に考慮しなければならぬ問題だと常識上考えられるべきだと思います。
  40. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長 それは答弁があつたはずですね。岩沢さんから、つまりこちらで日本政府が買収して施設をするという場合にはいこれは適用されるのだ、こういう説明があつたはずですね。
  41. 池田峯雄

    池田(峯)委員 講和後すべて独立国になるのでありますから、アメリカ軍が日本にいて、そのアメリカ軍のための土地収用する場合においては、すべて国がやるんだというようにはつきりしておれば問題はないけれども、講和後一体どういうことになりますか。やはりアメリカの方に一切まかせて工事でもやらせるようになるとすれば、なかなか重大な問題になつて来ると思う。その点を伺つておるのです。
  42. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長 私は別段池田君の御意見を押えようという意思はさらにないんだけれども、どうもこの委員会から遊離したように私は考える。どこか場所をおかえになつてつたらいいのではないか。
  43. 池田峯雄

    池田(峯)委員 委員長としてはそういうことはあまり関心がないようですが、その点疑問は疑問として残しておきます。  次の問題ですが、第五章の第五十二条で、収用委員会委員は知事が議会の同意を得て任命することになつております。しかしながら任期が満了あるいは欠員を生じた場合は、都道府県の議会の同意を得ることなしに都道府県知事が任命することができるようになつております。これはこういう特別の規定を設けることなしに、やはり[都道府県の議会の同意を得て」というところに力を入れまして、例外を設けない方が、むしろ収用委員会委員を公正に選出する意味においてよろしいのではないかというふうに考えるのであります。都道府県会を招集するのは必ずしも困難ではない。どういう場合でも臨時にこれを招集することができるはずでありますから、従つて原則を貫く意味において、第五十二条の四項は削除した方がよろしいのではないかというふうに考えるのでありますが、その点いかがお考えになつておりますか。
  44. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この四項の条文は、ほかの法律でも常に引用している問題でありまして、実際問題といたしまして、開会している間に欠員を生じた場合、またこの収用というものが起つた場合におきましては、ただちに都道府県会の承認得ることができますけれども、議会の閉会中において事件が発生した場合に、わざわざ委員の任命につきまして招集するということはいかがかと存じますので、そういう場合には一応第四項を準用いたしまして、次回の議会の開会のときに承認を得るということは、ほかの一般の法律でもやつておるので、これを適用した方がかえつて経済的になり、あるいは手続において非常に簡易に行くのではないか、こういうふうに考えております。
  45. 池田峯雄

    池田(峯)委員 収用委員会は何人以上の欠員が生じた場合には開けなくなりますか。
  46. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 第六十条の二項で、三人以上出席すればやることができるようになつております。
  47. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういたしますと、三人以上出席すれば委員会を開けるのでありますから、一人や二人の欠員は次の議会まで見送りましても、委員会の機能を発揮する上には問題はないと思う。それから任期は三年でありますから、これを全部都道府県会にかけて改選するという場合には、三年に一ぺんしかこういうことはないはずです。従いましてどうしても都道府県の議会の開会を待つて収用委員会委員の欠員を補充しない限りは、重大な支障を生ずるということは考えられないのであります。その方の支障よりも、むしろ県知事が都道府県議会の同意を得ることが困難なので、議会が開会していないときに自分の腹心の者を任命する。そうしてその間に収用委員会を開催して決定してしまう。同意を得るのは収用委員会の決定後の都道府県議会において承認を得ればよろしい。その場合に同意を得られなければ罷免されてしまう。ところが、もう収用委員会で決定してしまつたのだから、それで所期の目的は達してしまつたということも考えられる。こういう弊害の方がむしろ大きいのじやないかと考えられますので、これは当然削除すべきであると思いますが、いかがですか。
  48. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 五十二条におきまして、収用委員会は組織として七人をもつて構成することに相なつておりまして、この収用委員会の構成を常に完備するということが一番必要であろうと思うのです。従つて委員の欠員の場合におきまして、県議会がないような場合は、四項を適用しなければならぬ。しかし知事がかりに休会中に任命いたしましても、第五項が働きまして、もし議会が承認しない場合には、委員としての資格は消滅するということになるのでありまして、必ずしも四項そのものがすぐ委員の資格を確認することには相ならぬと思います。
  49. 池田峯雄

    池田(峯)委員 収用委員会が決定裁決をいたしました場合に、その裁決はやはり有効なんですか。
  50. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 有効です。
  51. 池田峯雄

    池田(峯)委員 都道府県の議会で承認を得られず、その委員並びに予備委員を罷免しなければならないような事態になつたにもかかわらず、その二日か三日前に裁決をした、その裁決が有効だということは、矛盾もはなはだしいと思うのであります。でありますから、そういう意味で罷免されたならば、当然それ以前にした裁決も無効であるべきだと考えられるのであります。従いましてどうしても四項は削除すべきだと私は考えおるのであります。
  52. 澁江操一

    ○澁江政府委員 第五十二条第四項、第五項を設けましたゆえんは、そういう応急の処置の場合に必要だということで設けたのでありまして、応急の処置をとつておきながら、あとでその委員の資格を失わせ、委員会の決定は事後において無効だということであれば、応急の処置に対する目的を達成するということは意味のないことであります。さようなことであればその際あわてて委員会を開く必要もない、事後の場合に、開会のときに承認することになろうと考えております。
  53. 池田峯雄

    池田(峯)委員 論争になりますからこのくらいでやめておきます。とにかくその後において都道府県議会の承認が得られなくて罷免された━━罷免されるからには悪いから罷免されたに違いない。その者が臨時雇の場合にはその決定は有効だ、こういうばかな話は一般を納得させるには困難なことと思うのであります。  次に第六十二条であります。「収用委員会の審理は、公開しなければならない。但し、収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。」これは一体だれが認めるのですか。「公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。」、従つて公開をしなければならないという原則はこれで大幅に削られてしまう。だから名目だけになつてしまう。「公開しなければならない。」とうたつておきながら、この但書ではこれをくつがえしてしまつておると理解してさしつかえないでしようか。
  54. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 第六十二条の「公開しなければならない。」というのは、今度の土地収用法における改正の一つの大きなポイントでありまして、あくまでも公開主義でやらねばならないと私は考えておるのです。しかしながら池田さんのお話なつ通りに、常に但書を準用して、公開といいながら羊頭狗肉では、おそらく非公開になるおそれが多分にあるじやないかというお考えでありますけれども、これは収用委員会委員長が認定するのでありまして、その場合において、公益上必要があるときには公開しないというようなことは非常にまれな場合だと私は考えておるのであります。むやみに非公開というようなことは、今度の新土地収用法の精神に非常にもどるものでありまして、あくまでも公開主義で終始したい、こういうように考えております。
  55. 池田峯雄

    池田(峯)委員 それから第六十四条の三項に、「会長は、収用委員会の公正な審理の進行を妨げる者に対しては、退場を命ずることができる。」とあり、また二項には、「会長は、起業者土地所有者及び関係人が述べる意見、申立、審問その他の行為が既に述べた意見又は申立と重複するとき、裁決の申請に係る事件関係がない事項にわたるときその他相当でないと認めるときは、これを制限することができる。」とありますが、こういうことは民主的な運営じやないと思う。なぜそういう事件が起るかといえば、収用委員会に上程される問題が、たとえば小貝川つけかえ工事のような非常に複雑な、そうして政府が一方的に計画をつくつて、これを住民に押しつけるような場合に、この審理が非常に困難になつて来るわけです。現に小貝川の場合におきましては、建設省の役人が来るならば、くわをもつてやつつけてしまう、こういうような気勢を上げて——これは何も共産党が上げておるのじやない。自由党に所属する町長さんが先頭に立つて、町民大会を用いて、この布川町を防衛するためには、われわれは最後の血潮の一滴まで鬪うと言つておる。こういうわけで問題が非常に複雑だ。その複雑な審理をやるのでありますが、それを公正な審理の運営を妨げる者に対しては退場を命ずることができるという規定を置きますと、一方的な意見を押しつける結果になるのではないか。その他、相当でないと認めるときはその発言まで押さえることができる、こういうことになると、収用委員会の審理裁決が公平を欠くような結果になるのではないかと考えますが、いかがでございましようか。
  56. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この二項、三項は、要するに土地収用委員会運用上整理をいたしまして、できるだけ時間を節約するという趣旨も多分に含んでおるのでありまして、重複したことを申し立てろとか、あるいはまた全然事件関係のない事項があるような場合においては、委員長としては当然その事件処理の過程におきまして、多少の制限をするこれはいずれの委員会におきましても、こういつたような係争事件については起り得ることと思いまして、ただこれはほかの法律においてやり得るようなことを例記いたしてあるので、われわれといたしましては、今度の新土地収用法におきましては関係者ができるだけ自分の意見土地収用委員会へ出て述べ合つて、そうしてできるだけ早く短時日に妥協点に到達させることが望ましいことでありますから、こういう点は妨害をするとか、あるいはまた同じことを繰返すとかいうことで、いたずらに時間をかけることは望ましくないので、この二項、三項ができている次第であります。
  57. 池田峯雄

    池田(峯)委員 第六十六条に「収用会員会の裁決及び決定の会議は、公開しない。」という規定がございます。議会や裁判所などにおいても裁決あるいは決定の会議は公開しないということはないのでございます。なぜ一体こういう決定の会議を公開しないのでしよう。これは当然公開でやつて最後まで収用委員会の決定が正しい決定であり、どこへ出しても府仰天地に恥じず、これを内外に問うても正しいという自信をもつて決定をするに違いない。であるからには、この決定は当然公開するのがほんとうで、公開しないのがおかしい。これは一体どういうわけで公開をしないというようにいたしたのでしようか。
  58. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 これは裁判所におきましても、裁決の場合においては非公開でいたします。収用委員会においては事前関係者意見を聴取することなしに、一方的に収用委員会が審議して、それを非公開ですぐ押しつけるということはなく、被収用者の意見を十分尊重し、また関係者意見を十分徴した上で、納得行くだけの判定の資料を得た上において裁決をするのでありますから、あらためてこれを公開して、委員会の内部の裁決の際の甲論乙駁までも公開することはないと思うのであります。
  59. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その問題もいろいろな問題が残されていると思うのですが、次に移つて七十二条ですが、「収用する土地に対しては、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。」とありますが、収用する土地の中で農地の場合は近傍類地の取引価格というようなものは公には存在しないのであります。従つて農地に対してはどういう点を基準として求めるのか伺いたい。     〔委員長退席、内海委員長代理着席〕
  60. 澁江操一

    ○澁江政府委員 ただいま御質問になりましたように、農地の価格につきましては、お話通り必ずしも取引価格と申しますか、市場価格と申しますか、そういつたようなものは実はございません。従いまして従前の方法といたしましては、現在でもやつていると思いますが、昨年の二月末で賃貸価格の四十八倍という一応の法定価格を基準として算定するという方法をとつてつたのであります。しかしこれはそういう法定価格の制度がありました場合、あるいは取引市場が非常に制限されておつた場合として考えているわけであります。しかし今後におきましてやはり農地の取引価格というものもある程度出て参る場合があると思いますし、またかりになかつた場合におきましては、先ほど申し上げましたような、一応の法定価格を基準として価格等を参酌してきめて行くという手段をとるよりほかに方法はないと存じております。もつともこれは農地の地価という問題だけでは、農地の取引補償というものは解決されず、それ以外に離作料といつたような問題が当然付随して参ります。これらにつきましては、ごらんになりますとおわかり願えると思いますが、八十八条だつたと思いますが、離作料その他の補償をなし得る道を開いておりますので、こうしたことによつて農地の収用に対する補償の道を十分活用して行きたいというふうに考えている次第であります。
  61. 池田峯雄

    池田(峯)委員 とにかく資本主義社会においては土地というものには価格がある。ところが政府のきめた賃貸価格の四十八倍というのは、農地改革当時、日本から侵略主義の基礎となつた地主制度をなくそうという法令が出まして、その法令のために地主は実際不満足だけれども、賃貸価格の四十八倍という値段で国家に売渡さなければならないような状態になつたのです。従つて資本主義社会において当然起つて来る土地の価格というものと大分違うのではないか。地方税法においてもこの賃貸価格の四十八倍にさらに二十五・五倍をかけまして、固定資産税の徴収をしているわけであります。これはおそらく一千倍になつているはずであります。ですから、賃貸価格の四十八倍というと、農地をとられる者は非常に安い値段である。離作料の方で多少考慮してくれるということはありましようけれども、一体土地の価格はどうするのか、特に農地の価格はどうするのかということは重大でありますので、当然この法律において農地については賃貸価格の何倍でやるのだということを明記すべきだと思うのでありますが、これが明記されていない。その理由はどこにあるか伺いたい。
  62. 澁江操一

    ○澁江政府委員 農地の価格につきまして、御説のようにでき得べくんばこれは一つの価格の基準となるものを設定したいということは一応考えていたのでありますが、現在の状況においてもある程度農地の取引が全然ないというわけではございません。そういつたような場合にはそれのみによるというわけではございませんが、一応それを参酌してきめる場合も考えられるわけでありますし、なおこの表現といたしましては、農地だけの問題ではなく、宅地その他のこともあわせて考えておりますので、彼此あわせ考えまして、取引価格等を考慮して相当な価格ということにいたしているのであります。
  63. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういたしますと、賃貸価格の何十倍というようなことでなく、とにかく公には認められておらぬけれども、実際には農地のやみ売りというような問題もある。そういう農地のやみ売りの取引価格を考慮してきめるのだというように了解してよろしゆうございますか。
  64. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 やみ売りという言葉ちよつと困るのですが、実例を申し上げてみますと、今も局長がお話になりましたようなことで、現実にその付近において売買の実績があればそれを基準にするというようなことにしておるのであります。しかし今立法にはなつておりますけれども、現在の土地収用法におきましては、こういう調停とか何とかいうことはありませんけれども、実際土地を買収する場合においては、お互いに起業者側と被収用者側とからその委員を出しまして、そしてその家屋の移転費は、わら家はどのくらい、トタン張りのものはどうとか、あるいは瓦ぶきのものはどのくらいのものであるとか、あるいは農地はどのくらいの価格が適正であるとかいうようなことを、一応付近の実例なり、あるいはいろいろな事情を参酌して大体価格をきめて、それで被収用者が納得する、また収用者が納得するというような価格をもつてすべて進行しておるような状態でありますから、今後におきましても、やはりそういつたことにおいてお互いに協調して収用を進めることになるだろうと思います。そこで今池田さんのお話のような御心配は、相当調停段階において含まれて解決するのではないかと考えております。
  65. 池田峯雄

    池田(峯)委員 調停の場合を引用されましたけれども、とにかくお役人さんがやる仕事なのです。お役人さんというのは、やみ価格などというものは問題にしないのです。特にこれは裁判所へ持つて行くとそうなんです。裁判所でやみ価格が何ぼだからといつたつて、全然取上げてくれません。そういうわけで、とにかく土地収用法というものが私有財産を保護するという建前からつくられたとするならば、農民にとつて命にもかえがたい農地を収用する場合、その農地の価格の基準というものがこの法律の中で多少なりとも明確にされておらないとすると、農民は非常な不安を持つことになるのでありますから、当然ここでは農民に対して農地を収用する場合に、その収用に対してはこういう基準なんだということを明言してもらいたいと私は思うのです。  さらにまた七十三条の中でも、土地使用の損失補償というのがあります。この場合の小作料というような問題もあると思うのです。この小作料というのも、今の小作料は非常に安い小作料です。そういう場合、今度は小作料の方は一体どの程度にきめるのか、これも相当な価格を持つているということになると、この安い小作料を不当に高く買収することもできるのではないか、従つて地主に対しては非常に有利な決定をやり、小作人の方から収用する場合にはただ同様に使用権を接収してしまう、いろいろ不公平な問題が出て来るのです。従つて土地を借りている者に対しては一体どうするか、貸している者に対しては一体どうするか、それから自作しておる者に対しては一体どうするか、ここのところを明確にしていただきたいと思うのであります。提案者の御説明をお願いいたします。
  66. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今の池田さんのは、農地の買収価格をこの際規定した方がよいのだというお話であります。一応ごもつともでありますけれども、かえつてそのために苦しくなるのではないかと私は考えておりますので、土地収用する場合においては、かえつて運用においてやつた方が妙味があるのではないか、こう考えております。実際における場合は、やはりそういう運用の妙を発揮しまして、お互いに納得した価格によつてこれを運営しておるのでありますから、今はつきり価格ということを土地収用法でうたうことはいかがかと考えておるのであります。
  67. 池田峯雄

    池田(峯)委員 運用の妙ということを言われましたけれども、さらに運用の妙味を発揮させる意味においても、最低これ以下に下つてはならないということを法律で規定しても、何ら運用の妙を妨げるものではないと思う。ですから最低をきめていただきたい。
  68. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 そのために条文におきまして、「近傍類地の取引価格」とかいうようなことを一応例示的に出しておるので、それをいかに運用するかということは、調停委員なりあるいは審査委員会メンバーによつてこれを考慮する、こういうように私は考えております。
  69. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その点も大分問題があると思います。  その次に進みたいと思うのですが、第八十二条の三項で、「土地所有者又は関係人土地を指定しないで、又は起業者の所有に属しない土地を指定して第一項の規定による要求をした場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、起業者に対して替地の提供を勧告することができる。」こういうことになつております。そこで、起業者の所有に属しない土地を指定して、あの土地と取りかえたい、こういう要求をした場合に、替地の提供を勧告することができる、こういうことになつております。従つて関係人を甲とし、それから起業者を乙とした場合に、甲は乙に対して全然関係のない丙の土地を替地として要求することができるわけであります。しからばこの丙の人はいかなる方法によつてその損失を補償してもらうことができるのでありますか、この点をお伺いしたい。
  70. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 その場合において、もし丙が替地のことを承諾すれば、普通の土地売買法によつてこれを処理する、こういうことになつております。
  71. 池田峯雄

    池田(峯)委員 承諾しない場合にはどうにもしようがないということになるのでありますか。
  72. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 そういうことです。
  73. 池田峯雄

    池田(峯)委員 それから第八章の第一節の調停の問題ですが、その調停起業者の方からだけ提起することができるのでありまして、関係人の方から、あるいは土地所有者の方から提起することができないようになつておりますが、これはどういうわけですか。
  74. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この百八条の本文の末項にあります通りに、「土地所有者及び関係人の同意を得て」調停をするのであつて、一方的にこれをやるのではないのであります。
  75. 池田峯雄

    池田(峯)委員 土地所有者及び関係人が、その起業者の同意のあるなしにかかわらずに調停を提起することのできる道も開いた方が、場合によつて関係人に有利な道が出て来るのではないかと考えるのでありますが、そういう場合は予想されないのでありますか。
  76. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 調停でありますから、やはり一方的に調停するということは、結果においては非常にまずいものになるのではないかと私は考えております。従つてこの調停の場合においては、双方から十分なる意見を申し立てて、円満なる妥結に持つて行くというのが一つの方法ではないかと思うのです。
  77. 池田峯雄

    池田(峯)委員 ですから、土地所有者あるいはそういつた関係人の方では、起業者の方が調停を提起しないと調停というものが開かれないといつた場合に、起業者の方ではもう調停は必要ないと考えておりましても、土地所有者関係人の方でむしろ調停をやつてもらいたい、こういう要望がある場合も予想されるのではないかと思いますが、そういう場合の道も当然開いておくべきではなかろうか、起業者の方の提起ばかりでなく、関係人の方からの提起も認める、こういう場合には、起業者は必ずこの調停に出て行かなければならない、こういうふうにしておいた方が、やはり双方公平になるのではないかと思いますが、どうですか。
  78. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この調停という趣旨から考えますと、今本文に書いていないから、関係人の方からこれでは調停の提起はできないではないかというお説でありますが、実際の問題としてわれわれ今度の法におきましては、第一段階として調停をしてもらいたいという趣旨でありますから、やはりそういうような場合におきましては、内部的の話合いにおきまして、起業者の方でもし調停考えがなくても、関係者の方から起業者の方に申し出て、ここで収用委員会の方に持ち出す前に、調停をしてお互いに円満に解決しようじやないかという話合いで、調停委員会が成立するのだろうと私は考えております。
  79. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その次に問題になつて来るのは、百二十九条で「都道府県知事がした事業の認定に対して利害関係を有する者が当該事業の認定について不服があるときは、第二十大条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から二週間以内に建設大臣に訴願することができる。」とあります。次に今度は百二十二条で、建設大臣に対する場合でありますが、その場合には「建設大臣の違法の裁決の取消又は変更を求める訴は、」こういうふうになつております。しかしながら建設大臣の認定にもあやまちがないとは限らない。建設大臣の認定に不服がないとも限らない。たとえば先ほど申しました小貝川の工事のようなものであります。これは建設省が直轄でやつておるはずです。ところがこの国の事業は何べんか計画が変更され、地元民が反対すると次の計画、反対するとまた次の計画、こうして一番弱いものが最後の案を押しつけられる、こういうことで建設大臣のやることが必ずしも正しいということにはならない。従つて建設大臣の裁決の取消又は変更を求める訴は、」そういうことにすべきであつて、この「違法の」というのはとるべきなのです。建設大臣の違法の裁決、違法でない場合はだめです。そうじやなくて、「建設大臣の裁決の取消又は変更を求める訴は、」とし「違法の」の三字を当然とるべきだと思うのであります。その方がやはり民主的だと思うのですが、この点いかがでありましよう。
  80. 澁江操一

    ○澁江政府委員 私どもの考えておりますことは、建設大臣事業認定、その他の処分に対しまして不服を申し立てる、こういう場合におきましては行政事件特例法という規定が一般的にございまして、これを活用いたしまして、その道において解決してもらいたいと考えておるのでございます。
  81. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その場合は、たとえば事業の計画や、その遂行の過程がどうしても地元として納得行かないからそれについてもつと愼重に考えてもらいたい。そしてその計画を他に変更してもらいたいというようなことにあてはまらないでしよう。ですから、たとえば小貝川つけかえ工事の問題で、第一案、第二案、第三案というものがあつた。一案も二案も地元の猛烈な反対でだめになつて最後の建設省の案は、これはいわゆる建設大臣がたいへんほらを吹いておりますが、小貝川と利根川との併流、背割堤と申しましようか、そういうやり方、布川の町民はこれに対しては町が大半つぶされるから困る、こう言つております。こういう布川の背割堤の計画を建設大臣が認定した場合に、布川の町民はその計画に対して不服を申し立てることも、あるいは取消し、または変更を求めることもできないことになるのでありますが、この点をどこで救済いたしますか。
  82. 澁江操一

    ○澁江政府委員 行政事件特例法の運用といたしましては、これは一般の原則に従いまして、やはりそうした違法の処分に対してだけ手続を許す、こういうことになつておるのであります。これは行政事件特例法の適用ということを考える以上は、そういう方法をとるほかにしようがない、かように存じております。
  83. 池田峯雄

    池田(峯)委員 ですから、この行政事件特例法では違法の場合にやれるのですから、百三十二条では「建設大臣の裁決の取消又は変更を」というふうに、「違法の」という三字をとつた方がよろしいのではないか、こういうふうに私は考えておるわけです。
  84. 澁江操一

    ○澁江政府委員  「建設大臣の違法の裁決の取消又は変更を求める訴」、これもやはり裁判所の取扱いになるわけでありまして、裁判上の基本原則から申しまして、やはり違法の法律が適用しておるか、違反であるか、こういう問題に限定するのは、これは当然ではないかというふうに考えております。
  85. 池田峯雄

    池田(峯)委員 わかりました。そういたしますと百三十二条はこの通りにいたしまして、やはり百二十九条と同じように、都道府県知事及び建設大臣がした事業の認定に対して、不服を申し出る人間が建設大臣になつておりますから、建設大臣がした事業の認定に対しては、何か別の機関に訴願する道が開かれねばなりません。建設大臣の方は相当権限を持つてやれることになるのでありますが、この訴願の道は国の事業の場合には開かれておらないのですか、この点どういうふうになつておりますか。
  86. 澁江操一

    ○澁江政府委員 事業認定は御承知のごとく、御説明申し上げたと思いますが、やはり一つのこれは行政処分でありまして、それの最終的な責任はやはり国務大臣が持つ、これはいたし方がないことであり、当然であると思います。しからばそれに対する救済方法、これは今の行政制度、あるいは司法制度の上から行きまして裁判機関が取締る、こういう方法に持つて行かれることになるだろうと考えております。
  87. 池田峯雄

    池田(峯)委員 そういたしますと、また百三十二条の「違法の」というのはとつた方が民主的だというふうに考えるのであります。どうしてもここのところは納得行きません。  それから百三十七条で、今度は職務上の秘密というのがありますね。土地収用法に関する限り、職務上の秘密というのは国家の重大なる機密ということにはあまりならないと思うのでありまして、収用委員会委員が職務上知り得た秘密を他に漏らしてもいいと思う。私は漏らした方がむしろ収用委員会というものの委員が公衆の利益を代表してやつたものであるかどうかということがはつきりすると思うのです。やはり収用委員会というものはガラス張りの中でやらなければならないのでありまして、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならぬということになりますと、何でも第三者に対して発表することができなくなつてしまう。収用委員会というものの秘密主義をますます助長するような結果になる。ですから「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。」これはしかも罰則があります。こういうことはよした方がよろしいと思うのです。これはどういうわけですか。
  88. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 これは行政を行う場合においては、常に公務員はこういつた束縛を受けておるのでありまして、従つて収用委員会も一つの行政のことを取扱つておる関係上、こういう条項を置いたわけでございます。
  89. 池田峯雄

    池田(峯)委員 収用委員会委員に対して、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないということをここに別につくらなくても、ほかに何か規制する法律はありませんか。
  90. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この職務上知り得た秘密を漏らしてはならないということは、国家公務員法に規定してあるのでありますが、この収用委員の方々は結局地方の特別公務員として取扱つておる関係上、これを準用しただけであります。
  91. 池田峯雄

    池田(峯)委員 われわれ国会議員も特別職ですが、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならぬというようなことで縛られておりませんね。それと同じように収用委員会委員も、何もそういうことに縛られるわけはないと思うのですが、その点はどうですか。
  92. 澁江操一

    ○澁江政府委員 ただいま提案者から御説明申し上げましたように、収用委員会の性格そのものは、事業の認定なり収用上の裁決をするという一つの行政機関としての役割を果しておるのであります。その意味において、それを構成している委員に対しては、公務員と同様の秘密を守る義務を一応規定する、こういうことです。国会議員との比較の問題は、これはすでに憲法上にも保障されておる問題で、それとこれとはいささか違うと考えます。
  93. 池田峯雄

    池田(峯)委員 その間の経緯はわかりましたが、しかし収用委員会委員あるいは予備委員というようなものは、一般と非常に密接な関係を持つておるものであつて、この収用委員の各人が不正なことをやつたり、あるいは不公平なことをやつたりした場合には、当然その中の一員である者が、盛り上る正義観からその不正を他に漏らす、そういうことによつて大衆の輿論を喚起する。そして他の都道府県会において罷免させた方が事務の公正な遂行の上にあずかつて力があると思うわけなのです。ですからやはり収用委員会委員に対して職務上知り得た秘密を漏らしてはならないというような規定を特別に設ける必要はない。農地委員にしても何にしても、みなこういう秘密をどんどん他に暴露することが必要である。これをやらなければだめだ、それでなければ収用委員会の公正な運営はできないと私は考える。これもやはり見解の相違でありますから、それがまた反対の論拠になつて来るわけでありますので、これだけにしておきたいと思います。  最後にやはり罰則の問題でありますが、百四十四条に「実地調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。」こういう罰金の恫喝条文が載つております。収用委員会というものがほんとうに公平に行われ、土地所有者関係人に対する補償が十分に行われますならば、何も実地調査を拒んだり妨げたり、または忌避したりという者はないはずなのであります。ところがこういう罰則を設けているということは、やはり土地所有者関係人に対して相当強圧をもつてつて来る、こういうことが予想されるからこそ、本法がこういう罰則を設けたのではないかと思うのであります。ほんとうに納得ずくで行われるならば、少くとも百四十四条のこういう罰則は必要ないと思います。この点いかがでございますか。
  94. 澁江操一

    ○澁江政府委員 行政機関のいろいろの調査権に基きまする処分をいたします場合におきまして、それに対しては、やはり同様な罰則規定ないしはこれ以上の重い罰則規定が実はあります。それらを参酌いたしまして、その規定をいたしたわけであります。
  95. 池田峯雄

    池田(峯)委員 答弁になつておりません。提案者として、一国会議員として、住民の利益を守るという建前から立法したとすれば、当然こういつたような罰則は除いた方がよろしい、但しこれは政府となれ合いで出したとすれば、この罰則は設けなければならぬことになつて来る。国会議員として出す場合には、そういうことは盛るはずはなかつたと思うのであります。
  96. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今池田さんからのお話でありますが、これは結局審査委員会においていろいろの材料を収集する場合において、しかも今度の収用法というものは私権の擁護、特に被収用者に対する非常な尊重をするという建前で運営して行くのであります、その場合において、そういう材料を収集するのに故意に実地調査を妨げるとか、あるいは材料の提出を拒否するというようなことは、かえつて自分自身で首を絞めるような結果になつて、ますますこの委員会の事業の遂行を妨げるというようなことが起り得ると思うのであります。従つてこういつたような制裁を設けて、ほんとうに虚心坦懐にすべての材料を提供し、また実地調査の面では喜んで現地において自分の利害得失を陳情するというチヤンスを与えるようにすべきであると思うのであります。従つてそういつたような好意をもつて行う者に対して妨げるということに対しましては、多少制裁はせられてしかるべきではないか、さように考えております。
  97. 池田峯雄

    池田(峯)委員 これで終ります。
  98. 内海安吉

    内海委員長代理 次に村瀬宣親君。
  99. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は質問を行います前に、本日各委員から出された問題で、まだ解決されておらない点を申し述べたいと思うのであります。それは先ほど西村委員からお尋ねになつて西村委員自身も承服されがたいと言いながら次に進まれた問題でありますが、第三条であります。第三条の規定は「土地を收用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、左の各号の一に該当するものに関する事業でなければならない。」ときわめて明確に書き下してあるのでありますが、普通の立法技術といたしましては、他の法令によるもののほかはとか、何とかいう文字が入るわけでありますが、これははつきりと「左の各号の一に該当するものに関する事業でなければならない。」と書き下してあるところから見ますと、これにすべての場合が盛られてあると解釈するのが至当であると思いますが、さようでありますか。
  100. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 これは提案の際において御説明申し上げました通り、現行法におきましては、たとえば道路と河川というような漠然とした表現の仕方で従つてその範疇に属するものは、道路道路法による道路であるか、あるいは私道でも道路なるがゆえにこういうものを收用法に書き得るのかといつたような、いわゆる行政官庁の自由裁量の範囲が非常に広いのであつて従つて私権を侵害することが非常に大きくなつて来る関係上、今回は道路とか河川とかいうようなものにつきまして、道路道路法に定める道路とか、あるい河川法によるものとかいう限定をしたということは、私はこの私権を尊重するという点に重点を置いたのでございます。
  101. 村瀬宣親

    村瀬委員 こういうふうに書き下したのは今の御答弁でけつこうなのでありますが、土地を收用し、または使用することができるのは、ここに書いた三十三号の場合に限るというふうにとれる文章なのでありますが、そういう意味でお書きになつたのでありますが。一号から三十三号まで書いてありますが……。
  102. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 一から三十幾つまで書いておるのは、結局基本法でありますので、従つてほかの法律によつて收用できるような、たとえば都市計画法によつて收用し得るようなものとか、あるいはまた昨日問題になりましたような、鉱業法によつて鉱区の收用ができるといつたようなものについては書いていないのです。
  103. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういたしますと、この書き方は一見いたしまして、土地を收用しまたは使用することができるすべての場合を書いたというふうに提案理由説明にもあつたと思うのでありますが、ここに書いた以外にもいろいろ土地を收用する場合があるといたしますならば、大体どういう場合でありますか、御説明願いたいと思います。
  104. 澁江操一

    ○澁江政府委員 他の法律によりまして收用を認めておる事業のことでございますが、これはただいま提案者が述べられましたような都市計画法あるいは鉱業法、それから不良住宅地区改良法、こういつたような規定がございます。
  105. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういたしますと、普通の立法技術として、そういう場合には他の法令によるもののほかとか何とかいうことで入つておると思いますが、そういうことをことさらにお入れにならなかつた理由を承りたい。  それからもう一つは、先ほどもお尋ねがあつたと思うのでありますが、この第三十二号「国又は地方公共団体が設置する公園緑地広場運動場、墓地、市場その他公共の用に供する施設」というものは、都市計画法その他によつて当然認められておると思うのでありますが、これをことさらにここにお入れなつ理由をも承つておきたいと思います。
  106. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今の三十二号につきましては、先ほど申しました通りに、都市計画法に上つて土地收用ができるということは現われておるのでありますが、この三十二号につきましては、都市計画事業であるということを認定すれば都市計画事業法によつてこれは收用することができますけれども、もし公園とか緑地とか広場というものが都市計画でない場合において、本法を適用いたしまして收用することができる、こういうように私は解釈しておるのです。
  107. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういたしますと、また問題は先ほどのを繰返すことになりますが、放送法というものにはそういう場合の規定もあると思うのであります。そこで私はこの十六号、「放送法による放送事業の用に供する放送設備」というものの内容を伺いたい。つまりこれからは広告専門のような施設、放送場も次々に設立されると思いますが、それらの敷地、その他すべてのものはこの十六号に含まれるのであるかどうか。  続いて十七号にガス工作物というものがあります、これは以前からあつたものでありますけれども、なおその内容等についても。疑義を生じないために、この際御説明を聞いておきたいのであります。
  108. 澁江操一

    ○澁江政府委員 放送法の問題でございますが、放送法の第四十九条をごらん願いますと、「協会の営む放送事業は、土地收用法第二条の土地を收用し、又は使用することのできる事業とし、同法を適用する。」こういうことになつておるのであります。従いましてこの規定と裏表をなしまして、こちらの本法の方に「放送法による放送事業の用に供する放送設備」という字句を入れたわけであります。ただ今御質問の中の都市計画法による都市計画事業、これを全面的になぜ入れなかつたかという問題もあるいは関連してお考えになつておるのじやないかと思います。御承知のように、都市計画法によります都市計画事業の收用の前提となります手続と申しますか、事業認定でございますが、これらにつきましては、都市計画事業として事業決定があることがすなわち事業認定という効果を都市計画法では与えております。この法律による事業認定の手続を別個の手続によりまして事業認定の効果を発生させたい、こういうようなことがございますので、これは本法に対します一つの特例という形になる、そういつたことも考え合せまして、都市計画事業の部分を全面的に書き込んでおらないということであります。  ガス工作物は、公共事業令の第七十六条に出ておりますガス工作物がいかなるものであるかということは、この七十六条をごらん願いますと明らかになつておるところでありますが、御質問の点はどういう点でございますが。
  109. 村瀬宣親

    村瀬委員 あなたがガス工作のところで考えておることをもつとはつきり言つてください。
  110. 澁江操一

    ○澁江政府委員 私どもの考えておりますガス工作物というものの範囲は、この七十六条に書いてございます、「ガスの供給のために施設するガス発生装置、ガス精製装置、ガス溜、導管その他の工作物」こういう法律で規定してある施設をそのまま準用すべきだというふうに考えております。
  111. 村瀬宣親

    村瀬委員 ガスの場合にいろいろな問題が現に起つておりますのは、引込線の接続の個所にいろいろな問題が起るのでありますが、そういう点について、立法者としてこの土地收用でどこまでを対象にしておるかということがはつきりしておれば、御答弁いただきたいと思うのであります。それは末梢の問題でありますが、ともかくこの第三条全般を通じまして、こういう書き方は私は親切でないと思うのであります。これは列挙主義になつておりまして、これが全部收用の対象になるものだというような錯覚を起すような書き方になつておるのであります。このほかにもいろいろ収用することがあるのだというのならば、普通の立法技術としてはこういう書き方はしないと思いますが、提案者が特にこういうふうに、全部収用の場合は網羅してあるのだというような書き方をことさらにとられた理由を伺いたい。
  112. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この列挙主義にいたしましたのは、先ほど申しましたように、結局現行法が非常に漠然としている関係上、できるだけ明確にし、また私権を擁護する、またできるだけ収用対象を縮小するということで、できるだけ列挙の項目を多くしたのであります。しかしながら現在特例法によつて収用し得るような方法があるとすれば、これは避けられたわけであります。
  113. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はこの点まだ完全に了承しがたいのであります。第三条の三十一号に「国又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所」云伝とありますが、われわれの方で起案提案して参議院の方も通過をいたしました官庁営繕法には、庁舎の中に研究所、試験所を含ましめたことにしているのであります。特に庁舎、研究所、試験所を区別することは、前にこちらの法律ができればそれに従つてもよいのでありますが、すでに官庁営繕法は成立を見ているのでありまして、その方に統一するお考えはありませんか。
  114. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 別々にした理由は、今お示しになりましたような研究所とか試験所とかが同じ庁舎の中にあれば問題ないのでありますけれども、大体研究所とか試験所というものは、各地に散在する事例が非常に多い関係上、そのために特に分離して明示したような次第です。
  115. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは当然含ましてよいと思う。ことに官庁営繕方でわれわれ衆議院建設委員会はそういう解釈をとつたのでありますから、当然含ましめて、統一すべきだと考えるのであります。  次に第四条についても、先ほど他の委員からも質問があつたのでありますが、納得の行く御答弁をまだ得ておりません。すなわち「特別な必要がなければ、収用し、又は使用することができない。」というのでありますが、すべて土地収用は特別の必要があるから起るのでありまして特別の必要がない収用が起るということはないのでありますが、これはどういう場合を考えられたのでありますか、具体的に例をあげて御説明願いたい。
  116. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この四条については、先ほど御説明申し上げました通りに、収用委員会において、収用した場合と現在あるものの公共性の余地と、どちらが公共性が強いかということを勘案して、これを採用すべきものか、あるいは採用すべからざるものであるかということを認定するものと思うのであります。その例としては、先ほど申し上げました通りに、たとえば学校の敷地内において運動場のその端の方を道路が通る場合においては、少しくらい体操場を狭めても大した影響はない。ところが道路の方が非常に必要であるという認定をした場合には、収用を許可するかもしれません。しかしながらこの運動場のどまん中をつつ切つた場合においては、その運動場はほとんど効用を全うすることができない、そういうような場合には、事実問題として収用はしないだろうと私は考えております。
  117. 村瀬宣親

    村瀬委員 時間が延びますから次に行きます。第八条であります。終りから五行のところに「使用貸借若しくは賃貸借による権利云々とあるのでありますが、この第八条に言うている「使用貸借若しくは賃貸借」というものの説明をしていただきたい。
  118. 澁江操一

    ○澁江政府委員 ここにうたつてございます「使用貸借若しくは賃貸借による権利、」これは民法上の規定による使用貸借あるいは賃貸借というものを考えておるわけでございます。
  119. 村瀬宣親

    村瀬委員 どうも木で鼻をくくつたような御答弁でありますが、それならばその次へ行つてそのときに聞くことにいたします。  第七十二条に参りまして「収用する土地に対しては、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。」とあります。相当な価格というところに私は必ず将来問題が生ずると思うのであります。それから同時にこれと相呼応いたしまして、八十八条へ参りますと、終りの方に、「その他土地収用し、又は使用することによつて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。」とあります。この「通常受ける損失」というのと、七十二条の「相当な価格」というものとの内容を提案者並びに政府はどのようにお考えになつているか私は伺いたいのであります。これは本法律案に対する運用上、最も重要な問題が次々に起つて参ると思うのでありまして、たとえば四国の銅山川ダム建設問題などで非常な問題が起つているのであります。事業損失、企業損失というようなものの内容をこの七十二条、八十八条ではどのように含ませているものであるか、先ほど池田委員から農地の問題がありましたが、たとえば先祖伝来の墓地が水中に沒するような場合に対しまして、この七十二条、八十八条はどういう効能を発揮するものであるか、詳細な御答弁を願いたいのであります。
  120. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 七十二条については、さきに池田委員質問に対して一応は御説明申し上げたのでありますが、要するにこの土地の価格に対しましてはもしその付近に実際の取引価格があれば、これを基準にして相当の価格を算定するという方向に持つて行くのでありまして、委員会が特定の価格云々というようなことは毛頭考えていないと思うのであります。  それから八十八条の「通常受ける損失」は、上に列挙しておりますところに離作料あるいは営業上の損失、あるいは建物の移転というような、土地収用あるいは物の収用によつても当然生ずるこの損失というものを、全部補償することを明記いたしたのでありまして、その算定の基準というものは、その場所、その物によつて相当違いがあるだろうと思いますから、ここではつきりそのお答えをすることはできない、物々によつて十分考慮しなければならないということになるとわれわれは思います。
  121. 村瀬宣親

    村瀬委員 この点は、私は本法律案審議のかなめであると思うのであります。提案理由説明にあたりましても、憲法二十九条の本質に向つて非常に飛躍的な大改善をした、こういう御説明であつたのでありますが、この立法の精神が単に形式的な部面だけにとどまつておるか、補償というものの本質まで掘り下げているのであるかどうかということを、この際明らかにしていただくことがこの法律案を運営する場合にやはり便利があると思いますので、もう一度私はお尋ねをせざるを得ないのであります。いわゆる収用による財産権の完全保障という点からこの法案はつくられたものであるか、生活権の保障までしたいという観点よりこの法案をおつくりになつたのであるか。先ほど申しました企業損失、事業損失にまでも、またただいま申し上げた先祖伝来の墓に対する一つの崇敬の念をも、この法律によつて補償したいというお気持でおつくりになつたものであるか、提案者の良心的な、詳細なお考えを承つておきたいのであります。
  122. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 御説の通りに、今回の新法は、いわゆる完全保障ということを目途にいたしているのでありますが、御趣旨のような、墓場のような先祖伝来のものを失うという精神的な補償は、この限界外にあります。従つてこの精神的な苦痛に対する慰安料と申しますか、そういつたものは全然考慮いたしませんけれども、実際上において現実に受ける損害に対しては、できる限り被収用者側に対して十分な補償をするという方針でこの新法は立案せられた次第であります。
  123. 村瀬宣親

    村瀬委員 精神的なものまでは考えていないという御答弁でありますが、しからば一村こぞつて水中に没するためにどこかに移りかわらねばならないという場合に、この収用法によつてどこまでその損失が救済されるものであるか、いわゆるその土地の価格は、その近隣の土地と、それからただいま御答弁がありました離作料その他については、金銭に換算された至当なものということが先ほどから御答弁されているのでありますけれども、もつと財産権の完全保障と生活権の保障という点にまで思いをいたされているかどうか、単に表面上の形式的な金銭に換算し得る程度、何事も金銭に換算されますけれども、ただ官僚的な、形式的な金銭換算というのみにとどまつているのであるか、もう一度提案者の趣旨を伺いたいと思います。
  124. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 ただいまの村瀬委員からの御指摘はごもつともなことで、ダムをつくる場合において、ある一部落が水中に没するというような場合においては、こういつた問題はたびたび生ずるのであります。現行法においては、そういつた補償の限度というものが非常にあいまいであつた関係上、今回は先ほど申しました通りに完全保障という線に沿つて、今御指摘になりましたような、水底に没するようなところに対しては、一村こぞつてよその部落あるいは土地に安住の地を求めなければならぬことに相なると思います。その場合においては、やはりその起業者は、その安住の地を保障してやるだけの費用と、またある一面においては生活権の保障というところまで、今回の収用法においては考える必要があると考えております。
  125. 村瀬宣親

    村瀬委員 ほぼ満足に近い御答弁を得られたのでありますが、引続きまして具体例として、私は九十三条の内容を伺つてみたいのであります。これには道路その他の工作物を新築し、改築、増築し、もしくは修繕し、または盛土もしくは切土をする必要があると認められるときはとありますが、例をあげますと、かつて一ノ関の堤防をずつとニメートルばかり上げましたために、その収用にかからない土地の営業権が脅かされた例があるのであります。そういう場合に、この収用しまたは使用する土地以外の土地に関する補償の限度は、どの点までこの第九十三条はお考えになつているのでありますか。自分の土地には関係なかつたが、そこに大きな橋をかけたために勾配がひどくて、ひさしが道より下になつたというような場合が必ず生ずると思うのであります。そういう場合には当然この九十三条を適用し得ると考えてもよいのでありますか。
  126. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この九十三条は新法において初めてつくつたもので、従来土地収用が起つた、または収用でなくても工事をした場合において、常にトラブルが起つた一つの原因であつたのであります。従つて今回の新法におきましては、こういつたようなトラブルを除くために、今御指示になりました例を申しますれば、従来道路が平坦であつたところが、取付けの関係上盛土をしなければならない。そうすると沿道の人はまるきり道路の下に来たようなもので、非常に出入りが不便であるというような場合においては、この土地収用地以外の関係人の申立によりまして、これを盛土するか、あるいは取付け道路をつくるというような場合においてはその費用を施工者が負担する、こういう規定なのであります。ここで提案者として、この九十三条を適用する場合において限界をどこに置くかということが非常に問題になると思いますが、これはやはり当事者間において十分話合いをして、そして補償をするという原則は認めているのでありますけれども、従つてある程度まで行けばそれで納得するか、あるいは納得しないというようなことが相当起るのであります。従つて盛土した場合において、非常な利益を受けるような場合においては限度は制限されるけれども、全然その利益を受けずに非常に困るという場合においては、その限度というものがかえつて非常に困つて来る事態が生ずるかもしれませんが、現在の収用法から見れば、少くとも収用地以外の人がこれだけの迷惑をこうむることを補償するということは、非常な進歩だろうと私は考えております。
  127. 村瀬宣親

    村瀬委員 大いに進歩でありまして、こういう条項が挿入されたことは、私は非常に敬意を表するのであります。ただ運用の限界をどこにとどめるかという点をお尋ねしたのでありますが、提案者自身運用はむずかしいという御答弁でありますから、それでは次へ進むことにいたします。  第百二十二条と第百二十三条と新たに設けられまして、緊急施行する事業のための土地使用に関する規定を設けられたのでありますが、これは従来実際にやつておられましたものと、この二箇条を新たに挿入いたしましたためにどのような取扱い上の差異が生じたのでありますか。この法律案が成立いたしましたときに、またいろいろと運用について問題も生ずると思うので、従来はこれはなかつたけれども、こういう方法でやつてつた、これができたためにこういう利便があるという点を簡潔に御説明願いたいと思うのであります。
  128. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 旧法によりますと、十五条に、天災事変に際し急施を要する場合においてはということが書いてあるのでありますが、今回の場合におきましては、百二十二条、百二十三条はやはり新しい法律できめたのでありまして、要約いたしますと、こういうような緊急な、また非常災害の場合において土地収用なりあるいは使用をする場合においては、起業者はある一定の担保を提供してそして仕事を遂行して行く、あるいはまた公共の利益に著しく支障を来すおそれがある場合におきましても、やはりある一定の担保を提供いたしまして仕事をする。しかしながらただ単に起業者の一方的な認定によりまして担保を提供して仕事をするのではなくて、その間にはやはり土地収用委員会裁定して、この事業がはたして緊急性を帯びておるかどうかということの認定と、それからもし認定をいたしました場合におきましては、しからばどれだけの担保を要するかということまで、この委員会が十分に真実にやつて、初めて私権の侵害ということに相なると考えます。
  129. 村瀬宣親

    村瀬委員 第百二十三条でありまするが、第四項に「起業者は、第一項の場合において、土地所有者及び関係人の請求があるときは、自己の見積つた損失補償額を払い渡さなければならない。」とあるのでありますが、この自己の見積つた損失補償額というのはどういう場合であり、また自己はかつてに見積ると思うのでありますが、その間運営上支障がないかどうかということを伺いたい。
  130. 澁江操一

    ○澁江政府委員 第四項の問題でありますが、これは一見起業者が自分の見積つた損失補償額を払い渡すということでありまして、はなはだ起業者にかつてであつて、被使用者にはぐあいが悪いのじやないかという問題がおそらく考えられると思いますが、前提といたしまして、第一項におきまして、起業者は一応担保を提供して土地使用することになつております。これはもちろん経済上の一般原則からいいますれば、一定期間使用して、使用した後においてこの使用料を払うという建前に立つて考えられるわけでありますが、事前にある程度担保をとつて、それに対して、さらに見積つた損失補償額が考えられるならばこれを払い渡す、こういうふうに規定いたしてあるのでありまして、結論から申しまして、これは被使用者側のある程度の保護を考えて規定したと考えていただきたいと思います。
  131. 村瀬宣親

    村瀬委員 次は第百三十二条であります。百三十二条については先ほどから大分質疑が出たようでありますが、私はその御答弁に承服いたしがたい点があるのであります。先ほどから問題になりました違法の裁決の取消しであり事が、そう裁決に違法がたびたび行われるわけはないと思うのであります。まさか建設大臣がそんなに違法なことばかりする気づかいはないのでありますから、一体どういう場合を想定して百三十二条ができたのでありますか。
  132. 澁江操一

    ○澁江政府委員 これは先ほど池田委員からの御質問の際にも申し上げたことでありますが、なおつけ加えて申しますと、現行の収用法におきましても八十一条をごらん願えればおわかりになると思いますが、違法の裁決によつて権利を傷害せられた場合についてはこれを行政裁判所に訴えることができる、これと同様の趣意をもちまして、私ども一応違法の裁決処分に対しては訴訟法上の手続として取上げる、こういうことに考えた次第であります。この処分自体に違法性のないものについては、裁判上の問題とすることは不可能であります。そういつたような趣旨でございます。
  133. 村瀬宣親

    村瀬委員 それは答弁になりませんよ。建設大臣が違法なことをするという前提のもとに、そんな条文をつくる必要はありません。ことに前にあつたからというのでは、私の質問の答弁になりません。違法なことを建設大臣がするような土地収用法つたら、信用のできぬことになる。そんなことをしないと思えばこそ、われわれはこの土地収用法を審議しておる。最後の場合になつて建設大臣が違法な裁決をやるらしいと提案者みずから考えておられるような土地収用法は、われわれは審議することはできません。これはもつとはつきりした理由がなければ、こういう条文ができ上つて来るはずはないと思います。こういう場合を想定したと、納得の行く御答弁ができませんか。
  134. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この百三十二条は建設大臣の違法の裁決があつた場合を想定しておるので、これは事実ないのだ、こういうおしかりを受けたわけであります。これは実際においてもつともだろうと思いますけれども、しかしながらいろいろの材料とか、あるいは資料によりまして判断したもののその資料が不的確だということが事後においてわかつて、これが被収用者側に対して非常に不当であつたということが自己反省においてわかるとすれば、また受ける側においても、資料の提出が誤つておる、従つてこの判定は誤謬だということがはつきりすれば、こういうことが起つて来るだろうと思うのです。しかし今後におきましては、資料の収集とかあるいはその他の制限については十分念を入れてやりますから、こういう例は非常にレア・ケースとは考えておりますけれども、今申したようなことが万一起つた場合にはそういつたことが起る、それをさしたのでありますから、御了承願いたいと思います。
  135. 村瀬宣親

    村瀬委員 提案者の御答弁に自己反省によつて云々ということがありましたが、これは私は聞き捨てができぬのでありまして、自己反省で建設大臣がこれはしまつたと思うならば、何も裁判をして争うたりせぬでも、これは自分自身で間違つてつたのだ、あの裁決は取消しまたは変更しよう、こういうのが当然です。官僚はとかく今まで、一旦裁決するとなかなかこれをかえぬ、自己反省しても何とかりくつをつけるということでありましたけれども、これは過去の弊害でありまして、今後は自己反省によつてこの点は間違うておつたということがわかれば、何も裁判訴訟まで相手方を導かぬでも、自分で直せばよいというのが当然であります。そこで不当という言葉も今の御答弁にありましたけれども、不当であるかどうかということは収用された者が判定するのであつて、違法とはつきりきまつておれば、建設大臣は自己反省で必ず適当な処置をおとりになると思いますから、実際問題として、収用された人が不当と考えた場合にこれは起る問題であつて、それを裁判所が公正に判断するわけでありまするから、その収用された人が非常に非常識な人で、不当でもないのに不当だという場合においては、それはしかたないのじやないかと思うのでありますが、この違法の認定は結局裁判を起す人がやるのでありますから、単にこれは言葉のあやと解釈してよろしゆうございますか。
  136. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 村瀬委員のお説の通りでありまして、もちろんこの訴訟は、被収用者側において建設大臣裁定に対する不服を持つた者があつて初めて生ずるのであります。
  137. 村瀬宣親

    村瀬委員 百三十二条はその点にとどめておきまして、百三十四条との関係に移るのでありますが、この百三十四条は、私は事業を進めて行く上に非常に大事な一箇条であると思うのであります。その土地収用または使用を停止しないでいろいろな争いを続けて行こうというのでありますから、私はこれは非常によいと思うのでありますが、現在区画整理その他で非常に支障を来しておりますのは、裁判所が職権をもつてやりまする代執行の停止処分であります。これは先般も私が建設大臣、法務総裁等に質問をいたしたのでありますが、これが第百三十四条によつて救われるわけでありますが、しかしこれは第百二十三条の場合に限り、損失の補償に関する訴えのときに限つて、「事業の進行及び土地収用又は使用を停止しない。」とあるのでありますが、第百三十二条の場合には、この百三十四条を適用せないというふうにおきめになつたお考えを伺いたいと思います。
  138. 澁江操一

    ○澁江政府委員 損失補償以外の訴えの場合について、それが事業の進行、土地収用使用を停止するかしないか、こういうお尋ねのように伺つたのでありますが、これは先ほど申し上げました、その場合におきましては行政事件訴訟特例法の規定によるわけでありまして、この場合においては「処分の執行を停止しない。」という今の法律の第十条に規定するところに従つて、執行は停止しない、こういうことになります。
  139. 村瀬宣親

    村瀬委員 その場合、代執行の職権をもつて停止処分を受けることは絶対ありませんか。
  140. 高田賢造

    高田説明員 今監理局長から御説明がございましたように、建前は百三十二条の場合は特例法の第十条の第一項の適用がありまして、処分の執行を停止しないのでございます。しかし第二項の場合以下の適用がございまして、第二項の適用があります限りは、裁判所が処分の執行を停止することを命ずることができるのでございます。しかしながら第二項に掲げてございますように、裁判所がその判断で処分の執行停止をいたしますのは、非常に限られた要件でございまして、「処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき」こういう場合にのみ限られておるのでございます。
  141. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういう緊急の必要ありというので、各戦災都市の区画整理では、裁判所が職権をもつて仮処分を続続やつておるのであります。そこで現に支障を来しておるので、私はこの間から法務総裁に対して、どういう救済をするかということを言つておるのであります。そういうことはこれに限り行われないというような御答弁でありましたが、私はそういうことはないと思います。もう一度御答弁願います。
  142. 高田賢造

    高田説明員 この点に関しまする村瀬委員の御意見はまことにごもつともでありまして、かねがね委員会を通じて承つております。改正案立案の際におきましても、むろん御意見の点も考慮に入れたつもりでありまするが、何分特例法全般の問題に相なりまして、むしろ将来特例法の施行の実施の経過を見て、この問題は取上ぐべきであるという特例法関係の方の意見がございまして、かように相成つておるのでございます。
  143. 村瀬宣親

    村瀬委員 幸いにこういう非常に進歩的な法案ができるのでありますから、もし日本の法律に盲点があるとするならば、そういう点はこういう際にひとつ改めておく必要があると思うのであります。いつまでも痛いところにさわらないというような態度で進むということは、私は勇気がないと思うのであります。必ずこの実際の事業をして行こうと思いまするときには、建設大臣が違法の裁決をするかもしれぬと考えましたならば、それは職権による仮処分の制度を置いておかなければなりませんけれども、責任をもつて違法の裁決はめつたにやらぬ、ほとんどやらぬという確信をもつて土地収用に当るとしますならば、これは当然一、二の、行政事務に全然しろうとの裁判官がかつてに、何ら当事者の意見も聞かないで、緊急の場合にこれは職権をもつて処分するのだといつて、仮処分をやつて、それがもう最高裁判所の決定まで、さらに地方裁判所の判決をもつてしても動かすことができない、高等裁判所の判決をもつてしてもくつがえすことができぬというような、そういう絶対不動の処分を、簡単に現在の裁判所はやれることになつておるのでありまするが、これは私は確かに今日の日本の法律の盲点であると思うのであります。従つてそういうことは、建設大臣が断じて違法の裁決はやらぬという信念のもとに進まれるならば、こういう行政事務にしろうとの裁判官に、こんなことまでかつてに職権をもつて切捨てごめんで、ばさばさ仮処分ができるようなことを放任しておくべきではないと思います。この点は私は意見になりましたけれども、この百三十二条の運用にあたつては、必ずこういう問題が生ずるということを、特に私は提案者にお考えおきを願いたいと思うのであります。  終りのところへ来まして、今度は附則でありまするが、「公布の日から起算して一年をこえない期間内において、政令で定める」とありますが、大体施行期日をどのくらいに予定なさつておるのでありますか。
  144. 澁江操一

    ○澁江政府委員 施行期日の問題でありますが、準備その他のことがございますので、一年という期間を置いてございますが、極力早くこれを実施に移すように、施行期日を定めたいというふうに考えておるわけでございます。
  145. 村瀬宣親

    村瀬委員 予定日はわかりませんか大体の腹案はございませんか。
  146. 澁江操一

    ○澁江政府委員 大体六箇月ないし九箇月の準備期間を必要とするというふうに考えておるわけでございます。
  147. 村瀬宣親

    村瀬委員 そこで、全体を通じて私はもう二点だけ伺つて、私の質問を終りたいと思うのであります。この土地収用法運用して行く上にあたりまして、一番実際上の効果を上げまするのは、裁決及び決定を早くするという点であると思うのであります。第六十条によりますると、「収用委員会は、会長及び三人以上の委員の出席」でよいことになつておりまして、その議事は、出席者の過半数をもつて決するということになつております。第六十六条によりますると、裁決及び決定は文書によつて行い、「会長及び会議に加わつた委員は、これに署名捺印しなければならない」とあるのであります。そういたしますると、先ほど小貝川等の実例がたびたびあがりましたが、非常にその関係住民の殺気立つた情勢下におきまして、裁決決定が行われ、そうしてこの署名捺印をしなければならないということになりますると、そういうわずかな末梢的なことで判をおすのも、何ぼ身分は保障されておりましても、なかなか躊躇されるというような場合も考えられるのでありまするが、裁決及び決定を早くする点において、今度の改正された土地収用法では、どういう御考慮が払われておるのでありまするか。
  148. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 その点につきましては、御趣旨の通りにできるだけ早くやりたいということが最も望ましいことでありますけれども、今度の新法におきましては旧法と違いまして、でき得る限りの手を尽して、ほんとうに円満に遂行して行きたいというような考え方から、従来に比べると相当の時日がかかるだろうと思います。しかしながらかかつても、効果におきましては従来のような一方的な裁定でなくて、ほんとうに利害関係者の事情を十分聴取して、そうして委員会において納得の行くような裁定をいたすのでありますから、その時日の遅れたよりも、関係者の方の利益というものは相当大であるということは争われない事実だろうと思います。従いましてでき得る限り委員会におきましては事業の緩急程度におきまして、できるだけすみやかに裁定をすることはもちろんやらなければなりませんけれども、全体として現行法に比べるとこの新法は比較的時間をとるということはやむを得ないのではないかと考えております。
  149. 村瀬宣親

    村瀬委員 期限を区切るというようなことを、立法の過程においてお考えにならなかつたかどうか。裁決及び決定をいつまでにせねばならぬということをお考えにならなかつたかということを最後にお尋ねするのであります。  それからもう一つは、この法律が成立いたしましたときに、現在全国戦災都市で行われております特別都市計画法との関係をどういうふうにお考えになつておるのでありましようか。つまり区画整理の問題でいろいろ困難な問題が各都市に起つておりますが、それとこの土地収用法とは全然関係がないとお考えになるのでありましようか。あるいはこういう利便があつて、特別都市建設法の運用上にも非常に進捗を早める効果があるとお考えになるのでありますか。最後にこの点をお聞きしておきます。
  150. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 現行法と同様に、裁定を二週間以内ということに時間的に制約したらどうか、そういうことを考えなかつたか、こういう御質問だと思いますが、この点は先ほど申しました通りに、収用委員会にかけた中間におきましても、これを調停とかまたは和議の成立というような、できるだけ最後段階に追い込むまでに、双方の調停、融和というものをはかるというようなことで、実際において二週間とか三週間とかあるいは一月というようなことを時間的にきめることを時間的にきめることが不可能だという考えから、時間というものを明示いたすことができなかつたために、こういつたような法文の形式に相なつたのであります。  それから第二点の、特別戦災都市復興の事業につきましての区画整理というような問題についてこの法案考えておつたか、こういうお話でありますけれども、区画整理につきましては特別法でありますけれども、もしそういつたようなトラブルが起れば、新法によつて相当適用できるものというように私は考えております。
  151. 内海安吉

    内海委員長代理 次に瀬戸山三男
  152. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 大分各委員から入念な質疑がありましたから、できるだけ重複しない程度で多少の質疑を行いたいと思います。  大体全体的に見まして、この法案は他の委員からもお話がありましたように、相当進歩したいい法案であると考えております。現行法のきわめて強権的な、取上げるような考え方の法律から、民主的な内容にかわつたということは非常に喜ばしいことであります。そこで先ほども問題になつてつたのでありますが、第三条の規定は、規定の上から見ますれば非常にうまく行つておる。これだけ見ますとうまく行つておるようでありますけれども、ところが先ほど村瀬委員からもお話がありました通りに、これだけで限るというような書き方をしておつて、実はこれだけに限つておらないというのは、立法の技術といたしましては感心したことではないと思います。これはそれだけを申しておきます。  第三条に列挙されてある収用または使用する場合の事業が並べられておりますが、他の場合にお話があつたかもしれませんけれども、現行法をかように改められた理由と、また従つて現行法と第三条の規定とどこがどういうふうに違うかということをお尋ねいたしておきます。
  153. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 現行法におきましては、先ほど申し上げました通りに、道路の方で申しますと、ただ単に道路とかあるいは河川というようなことを漠然と法文に表わしたために、認定する際においては、行政官庁が非常に認定の幅が広いために、従つて私権を侵害する程度が非常に多いという観点から、今回の改正にあたりましては、やはり道路道路法によるとか、あるいは一般自動車道とか、あるいは河川法によるというようなことを明示して、そのわく内のものを収用対象にいたしたので要は結局私権を擁護するという考え方から、できるだけしばつた方がよろしい、こういう点において法的根拠があるものは法的根拠を示すということにいたしたのであります。
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 そうしますと、現行法よりかふえたところと減つたところというのは、具体的にはどういうことになつておりますか。
  155. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 大体一は同じでありまして、末項の「一般公共の用に供する駐車場」というのが従来あまり考えなかつたものなのです。二の従来の河川におきましては、堤防と護岸というようなことが対象になつてつたのでありますが、ダムというようなものをはつきり明示いたしまして、今後に起る問題を、やはりダムの築造に対しては収用できるということをはつきり明示いたしたのであります。それから三、四、五、六、七は従来と同じものを表わしたのでありまして、八の「無軌条電車の用に供する施設」が新たに入つたものなんです。九の「一般路線貨物自動車運送事業の用に供する施設」これも公共的性質を持つておるためにあらためて追加したものでありまして、十六の「放送法による放送事業の用に供する放送設備」、これが新たに入つた項目なのです。それから三十の「国又は地方公共団体建築基準法第四十八条第一項の規定による」、云云、いわゆる庶民住宅の敷地を強制収用できるということが新しく入れた項目なのです。  以上今申し上げたような点が新しく追加されたので、その他は従来の漠然としたものを、法的根拠があるものは法的根拠を示してここに列挙したような次第であります。
  156. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 減つた方はありますか。
  157. 澁江操一

    ○澁江政府委員 減りました分は先ほど申し上げましたように皇室の陵墓、それから神社の建造にかかわる事務、それから国宝その他軍事の用に供する事業、この二つの項目を削除いたしました。
  158. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 軍事に関するもの、神社に関するものは当然でありますが、皇室の陵墓についての規定を除かれたのは何か理由があるのでありますか。
  159. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 この点は実は第三条全体のほかの事業との関連を考えて削除いたしたのでございます。すなわち一号から三十三号にわたりまして基本的に考えておりますことは、公共の用に供する施設ということが主眼をなしております。  皇室の陵墓はそういう意味合いからいたしますと、これは皇室の特殊の目的のための施設でございまして国民感情の上からいえば、もとより一つの重要なる施設であることが間違いないと思いますが、一般公共の用に供するという観点から参りますれば、ここに掲げてある事業と若干性質を異にするということで省いておる次第でございます。
  160. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 大体皇室典範という法律がちやんと国の法律としてあるのであります。しかもそれに皇室の陵墓というものがちやんと書いてある。それを現行法を直さずに、提案者は国民的なものでないというお考えでやられたのかどうかということをはつきりいたしたいためにお尋ねいたしたのであります。
  161. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 皇室陵墓のような場合におきましては、今後におきましてわれわれ日本国民といたしましては、収用云々というよりも、国民感情に訴えて、そして敷地を喜んで提供するという方向に持つて行くのが一番いいのじやないかと考えております。
  162. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 そういうふうなお考えならばきわめてよろしい考えでありますから了承いたします。  それから第三条に関連したことでありますが、御承知の通り電源開発ということが日本の今後の重要な問題であります。ところが電源開発事業については、いつも水利権の問題などで非常に紛争が多くて、なかなか国家的な事業が進捗いたさないというような実情であります。これについて本法ではどういうふうに考えて立案されたか。
  163. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 今度の改正法についての考え方でありますが、現在あるいは将来における日本の電源開発ということについては相当考慮したつもりであります。と申しますのは、すでに御存じの通り電源開発の場合においてトラブルが起りまして、実際の仕事が常に停滞しておるというようなことは、従来の収用法におきましては先ほども申しました通り水の利用というようなこと、しかもこれがはつきりしたことでなくて、収用法を準用するというような、漠然たる非常に力の弱い表現の仕方であつたためと、また起業者収用される方の側におきまして常に収用とかあるいはまたいろいろの点において見解が異なつたために、この収用法をはつきり今日まで適用した例がないほど、この電源開発に要するダムとかあるいはその他の施設に対しては適用していなかつたために、起業者も非常に困つたという事例も多々ある関係上、今回におきましてははつきり電源開発用のダムとかその他の施設に対しては公共性を十分尊重する意味におきまして、いざという場合におきましては、この土地収用法を発動し得るということを明記いたしたのでありますから、今後におきましてはこの電源開発に要するいろいろな施設に対しては、相当起業者なり、あるいはまた関係人との間において相互の話合いが円満に遂行し得るだろうと私は確信しております。
  164. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 電源開発について非常な熱意をもつて立案されたということでありますが、さようなことは一体どこに出ておるのでありますか。第三条の二に、ダム━━水路も入るかもしれませんが、私の不明のいたすところかもしりませんが、それだけしか出ておらぬように思うのであります。発電に関する施設ということになりますれば、いわゆる電源開発の問題について本法が適用されるということになるかもしれませんが、新しく追加されたというようなことで、第九号の道路運送法による自動車道路などというものについては、特に項目をわけて規定されておられる。これももちろん公共性はありますけれども、一つの営利事業であります。発電事業ももちろん一種の営利事業でありますが、先ほども申し上げましたように、日本の産業の生命を左右する国民全体としての最も重大なる事業でありますので、これを特に取上げなかつたのは何か事情があつたかどうかということをお尋ねいたします。さらにそれについては、電源開発、電気事業に対しては、各種の施設に対してこれが当然適用されるというお考えであるかどうか。
  165. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 電源開発というようなものは、御存じの通り総合的な計画によつて初めて目的を達するものでありますので、ここで第二の河川の部類の中にダムというものを今回挿入したのは、従来ダムにつきましては先ほど申し上げました通りに、非常にあいまいな点が多々あつた、この旧法は御存じの通りに明治三十三年に制定されたために、その当時においては現在の発電用のハイ・ダムというものはほとんどなかつた。ただあつたのは水路式でわずか二メートルかあるいは三メートルくらいの床どめ式のものであつた、しかも河川につくつたというようなことで、現在われわれが称しているダムというものはハイ・ダム式のものであるために、そのハイ・ダムをつくるために生ずるいろいろのトラブルというものがほとんど解決できなかつたような関係から挿入したのであります。今回は河川の中にダムを入れまして、少くとも総合的な発電においての最も主要な部分であるダムというものの建設に対しては、ある場合においては土地収用法というものが適用できるという点を明示しておるのであります。それから第十七におきまして、公共事業令による総合計画の一環である電気工作物というものも、いざという場合においては、やはり収用法対象に取上げておるものと、それから第五条におきまして、従来とかく水利権あるいは漁業権というようなものが非常にあいまいで、また水利権の水の使用というようなことも、ただ単に準用するというような、非常に力の弱いような表現の仕方であつたのでありますから、今回ははつきり地上権なりあるいは漁業権利用権というものを土地収用対象にしてよろしいということを明記したので、電源開発に付随して起り得るような事態というものは、この土地収用法によつてはつきり収用し得るということを、われわれは考えておる次第であります。
  166. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 ついでに事業の認定の権限を、建設大臣とそれから都道府県知事にわけておられるのでありますが、かようにされた理由であります。事業の認定はきわめて重要な行政処分であると思います。これを従来建設大臣一本から都道府県知事にわけられたのは、従来の経験から、非常に悪かつたのか、都道府県知事に移管された方がよろしいか、その点をひとつ御説明を願いたいと思います。
  167. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 従来は御承知の通り建設大臣一本で事業の認定をしておつたのでありますけれども、われわれの考えといたしましても、少くとも国の事業については、建設大臣、あるいは二府県にまたがつたようなものに対しては、建設大臣にこれを認定させ、一府県のものについては、今回はその県の知事に国家事務を委任したというような形をとつておるのであります。しかして従来建設大臣でやつたのがどうであるかという批判の上において、これを分離したのでなくして、要は一地方に属するようなものは、一番よく事情を知つているのはその県の知事でありますから、従つて土地収用事業を認定する場合においては、できるだけ早く、また正確なものができるのではないかというようなことを考えて、この二つにわけたのであります。従つてこの認定の場合において、その認定の仕方がいろいろ弊害を招くというようなことが、万々ありませんけれども、起つた場合におきましては、やはり今度の問題におきましては、ごらんの通りに、建設大臣に認定の変更を要求するとかいうような道も開いておりますから、地方の県知事にまかしたために弊害が起るというようなことは、万々ないだろうと考えております。
  168. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 そこで都道府県知事事業の認定を三箇月以内にしないときには、建設大臣にさらに認定をしてもらうという規定があるのでありますが、先ほども各委員からお話がありましたように、今回の法案によりますと、現行法と比較して、非常に収用する場合、一般私権の尊重のために、各種の手続をされるようになる。従つて事業の認定にいたしましても、裁決にいたしましても、相当時日を要することになると思います。非常に遅れるということが予想されておることは、先ほども御議論がありました。そこでこの事業の認定について、知事に対しては三箇月という一応の期限が切られておるのでありますが、建設大臣についてはさようなことが出ておらない、これは建設大臣は怠慢であるとは考えないのでありますが、知事に対して三箇月以内の期限をきめられて、建設大臣は無期限だとされたその理由はどういうところにあるかをお尋ねをしておきます。
  169. 澁江操一

    ○澁江政府委員 お説の通り建設大臣事業の認定の最終期限というものを、法文の上では規定はいたしてございません。ございませんが、理由なくして認定を遷延するということは、これは実際ない、という趣旨は第二十条におきましてごらん願いますとおわかり願えると思いますが、ある程度の要件を備えた場合においては、事業の認定をしなければならないことは当然でございまして、そういつた点を考えまして、建設大臣の手元においては、そういう期限をつけなくても、これは早急解決という方向に努力するということを考えまして、特に期限を設けるような仕組みにいたさなかつたのでございます。
  170. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 急いでおられるようでありますからきわめて簡潔に伺います。今のお話は、二十条で要件が備われば当然事業の認定をしなければならなくなつているから、期限を付さなかつたとおつしやるならば、知事も何も期限を付する必要はないと思う。この点は私は多少不備な点であると思います。それから九十三条の、先ほど問題になりました補償の点でありますが、九十三条の補償は一体いつの価格を標準にして補償されることになつているのか。ほかの場合には、七十一条の「損失は、収用委員会収用又は使用の裁決の時の価格」とあつて、そのときの時価と思いますが、九十三条の場合はあとの問題でありますので、それはいつの時価━━一年たつてからの問題でありますから、いつの価格を標準にして九十三条の補償をされるか、これについては何もそこに明記がないのでありますが、これはどういうふうなお考えでおられるかということを伺いたい。
  171. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 損失補償の起つた時期の価格をもつてこれを補償するつもりなのであります。
  172. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 これは、「事業に係る工事の完了の目から一年を経過した後においては、請求することができない。」とありますが、ここに書いてあるような仕事をするのに一年間のうち、いつ請求するかこれは問題でありますが、請求した後に、さらにたくさんの手続がありますが、一年かかるか、二年かかるかわかりません。たとえばここに書いてあるように、道路をつくつたり、みぞをつくつたり、かき、さくをつくつたりするのに、損失を受けたときの価格では後にできない場合がありはせぬか。これは安くなる場合もあるかもしれませんが、それでは非常に争いが起ると思う。前の場合には、ちやんと収用なり使用なりの裁決を下したときの時価と書いてありますが、この場合においては、そういうことが起つて後に、一年以内に何か請求する、それからまたたくさんの手続をして事がきまるということになるのでありますが、たとえばぎりぎり結着一年目に請求して、一年前の価格で補償されるということでは、これはせつかく民主的にできている法律建前からいうと、私は適切じやないと思う。今のお答えではちよつと満足はできないのでございますが、そういうお考えでやられるのでしようか。これは非常に重要な問題であると思います。
  173. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 第九十三条は、先ほども申し上げました通りに、新しい規定で、少くとも土地収用をやつたために、関係人以外の者の受ける損失を補償するという建前になつておりまして、従つてこの工事を施行したときにおいて当然発生するものとわれわれは予見しております。従つて一年の時日を限つたということは、一年くらいまでに起り得る損失補償というものを当然見込んで、そのときにおいてすべての補償をする、こういうことになりましたので、お説のように一年後においてやつたならばできたものについても、やはり補償すべきものじやないかというのは、ごもつともと思いますけれども、しかしながらどういう原因によつて━━その工事自体によつて発生したものやら、あるいはまたその他の原因によつてこれが発生したものやらわからないようなものが相当あると思います。従つて少くともこの九十三条を発動する場合において、その工事の状況なりあるいは性質によつて、一年間すれば発生し得るようなものを予見して、すべてのものを九十三条を発動して補償するというようなことでありますから、従つてそのときの工事費というものは、時価によつてすべて賠償いたしますから、今御心配になりますような点は、一年後の問題が一番問題であろうと思います。けれどもこの起業者については、あるいは一年、あるいは二年後までも常にこれによつて受ける損害をやるということについては、非常に限界がわからない。さしあたり一年くらいが適当ではないかというので、一年後ときめたような次第です。
  174. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 今の私の質問はそういう意味じやないのであります。これは一年に限られたということは適切だと思います。それをいつまでも、あとから起つて来るものをやるということは事実上できません。すでに損害が起つてつて、その請求は一年以内にしなければならない、これは当然であります。ただ問題は、その損害のいつの時価をもつて見られるかということでありますが、先ほどは損害が発生したときと言われました。それは常識的なことでありますが、前の収用使用のときには、裁決のときの時価ということになつておる。ところが九十三条の場合の補償は両者で、先ほど申し上げた通り、ぎりぎり一年目に請求した。ところがその後両者が協議をし、協議が整わなかつたら、さらに裁決を申請する。そうして同じように一年になるか二年になるかわかりませんが、裁決のあつたときに、少くとも一年半もしくは二年前の損害が発生したときの時価でやられたのでは、この補償の意味がなくなりはせぬかということを私は思し上げておるのであつて、それじやこの九十三条について、補償する額の時期をきめられなかつたのはなぜであるか。
  175. 岩沢忠恭

    岩沢参議院議員 御心配はごもつともであります。われわれといたしましては、やはり土地収用を発動する場合の裁定のあつたときの時価をもつてこれをやる、こういうように考えております。
  176. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 非常に皆さんが急いでおられますので、私も急いでやりますが、どうしても疑義のあるところはただしておきたいと思う。  九十五条であります。これも補償その他に関係するのであります。要点だけ申し上げます。九十五条の第四項、これは収用または使用上の時期で、今度の法律は非常によくできておりますが、替地を供託するということになつておる。替地を供託するというのは私よくわからない。土地を供託するという制度は今日まで私は知らなかつた。今度初めて土地を供託するという制度をここにつくられたのであります。もちろんこれに対しては民法の四百九十五条か何かを準用されるようになつておるのでありますが、土地を供託する制度をひとつ説明していただきたいと思います。
  177. 福原忠男

    ○福原衆議院法制局参事 それでは私からお答え申し上げます。御質問の点はきわめてむずかしい問題でもございまするし、御質問なつた瀬戸山委員はその方の専門家であられるので、いささかおもはゆい点もあるのでありますが、問題がむずかしいところから、少し打ち砕いて御説明申し上げたいと思います。仰せのように、九十五条四項の替地の供託というのは、日本の従来の供託制度からいいますれば、いささか異例のように思います。従来の供託と申しますものは、民法の四百九十五条の規定によりまして、この供託というものが相当無制限にできるように読めるのでございますが、この民法の規定を受けました供託法というものは、明らかに供託の対象たるものを金銭と、有価証券と、その他これら、あらざる物品という表現を使つております。従つて現在の供託所、すなわち法務局あるいは地方法務局にあります供託局の取扱いの物品は、それらの三種類に限つておるように思います。従いましてこのたびここで替地の供託ができるということにつきまして、これをいかように解釈するかといえば、この法案全体を通じまして、供託というものがいかようなものであるかということを解釈せざるを得ないかと思います。といたしますと、その第九十七条の二項にこの供託が民法の四百九十五条の二項及び非訟事件手続法の八十一条と八十二条を準用するとございます。これがこの法律案におきまする替地の供託の性質を明示しておるものと読まざるを得ないと思います。かようにいたしますと、ここにいつております替地の供託というのは、民法でいういわゆる弁済供託でなく、その他の種類のもの、こういわざるを得ないのでございますが、弁済供託でないことは土地収用法対象と申すものでございますので、これは当然かと思いますが、とにかく弁済供託でございませんその他の種類の供託である。そうしてこの供託については、九十七条二項でその性質を明記しておる。その性質を明記するというのは、準用するというところからそれに準ずるものということをいつておるのだ、こう思うのでございます。さらにまた九十七条の二項は、その準用された弁済供託に準ずる性質の供託というものが、手続としては非訟事件手続法八十一条ないし八十二条の規定に従つてなされるという、手続についての規定をも掲げている。こう見ざるを得ないと思います。従つてこの場合の替地の供託というものは、従来例に乏しいかもしれませんが、この法案の上から見ますならば、十分その点を考慮しながら、その性質を説き、さらにまた手続まで規定しておるということがいえるかと存じます。さようでございますので、この替地の供託につきましては、砕いて申しますと、供託所の指定とか、あるいは供託物保管者の選任を地方裁判所がいたしまして、その地方裁判所が選任とか指定をする場合に、当事者を尋問するとかその他の規定がそれぞれ発動されて来る、こう考えております。
  178. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 今の問題は日本の法制史上初めてここにできて来たものであります。裁判所や法務委員会はどういうふうに考えておるかわかりませんが、突然土地収用法土地の供託をするということがひよこつと出て来ておりますので、日本の法制からいうと、これは画期的なものだと思いますが、今の御説明でうまく行くのでありましようから、これ以上は追究いたしません。ただもう一つ、これは昨日からも問題になつておりますが、先ほど提案者から、土地調整委員会から非常に強い要望があつたからこれを挿入したという御答弁でありましたが、土地調整委員会の設置法の規定を見ますると、この土地収用について建設大臣土地調整委員会意見をあらかじめ聞くことが二箇所ほどありますが、きわめて私は不自然なことだと思います。それはきのうからも村瀬委員その他から非常な議論がありましたが、先ほどの御答弁を聞いておりますと、土地調整委員会から強い要望があつたからかようにいたしたと言われますが、要望すれば何でもいれてやるというのは、けつこうでありますが、大体土地調整委員会は、私が説明するまでもなく、これは鉱業または採石業、これについての土地の調整をするのが、主たる目的であります。同法の第三条から第四条にちやんと事務及び権限が書いてあります。詳しく申し上げるとまた怒られますので、簡単に申し上げますが、一体法律をつくるときには、そう簡単にやつては私は困ると思つております。大体第三条には、「委員会は、鉱業又は採石業と一般公益又は農業、林業その他の産業との調整を図るため、左に掲げる事務をつかさどる。一鉱区禁止地域の指定に関すること。二鉱業権又は採石権の設定等に関する異議の裁定に関すること。三鉱業又は採石業のための土地使用又は収用に関する異議の裁定に関すること。」、これだけが土地収用委員会の事務になるわけであります。それから第四条に権限が書いてあります。十五項目にわかれておりますが、土地調整委員会から申出があつたとすれば、権限をひとつふやそうということの考え方から出て来たと思いますが、その根拠は、第四条の十五号の「前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き委員会に属させられた権限」これだけが一つの根拠になつておると思います。従つて今度は土地収用法で、幸いにして諮問機関としての権限が与えられたから、初めて調整委員会がこれにタッチするという関係になるのでありますが、初めからそういう権限は一つも土地調整委員会設置法には出ておらない。それが今度は向うから頼まれたそうでありますが、土地収用法によつて、初めてこの権限が与えられておる。これでは逆なのです。全然向うに権限がないのに、これで与えられておる。しかも各種の機関が、先ほど申し上げましたように、いろいろ複雑な手続を経て、収用使用をする。建設大臣最後の決定をする。それに対して全然無関係調整委員会に、あらかじめ意見を聞かなければならない。その調整委員会意見最後的の決定権があるかどうかということを、昨日村瀬委員が非常に論議された。それに対しては明確な答弁が出ておりません。意見を聞くのだから、常識的に判断すれば、参考意見ということになりますが、そのくらいのものであるならば、何も関係のない委員会につながりを持つ必要は全然ないと思います。少くとも建設大臣については、訴訟のところで非常に問題になつておりますが、最後決定をする建設大臣が、ほんとうにぎりぎりのところに来て、無関係調整委員会の意員を聞くなどということは、行政の簡素化を必要とする際において、実にこつけい千万だと思います。しかしここでかように急いでおられる委員会で、修正するなどということは夢にも考えられませんので、こういう法律をつくられるときには、こういうことを初めから整理してかかるべきものである。いらぬところでつながりをつけて、事務を非常に複雑にする。この土地収用法全般から見ても、事務が非常に複雑になつておると思います。いわゆる私権を尊重することは当然でありますけれども、そのために事務が非常に複雑になる。さらにそのようなものを持つて来て、一枚それに加えるというような状況になる。これはきのうから調整委員会について問題になつておるのも当然であると思います。これに対して、頼まれたからやられたという答弁がありましたから、私はこれに対してお答えをいただくつもりはありませんが、たださつき第三条において全部網羅したと言われたけれども、はずれておるものがたくさんある。鉱業法でも同じであります。鉱業法の百七条には、いわゆる土地収用使用についての規定がある。そこで私は最後に一点、これは提案者でもよろしいのでありますが、政府当局にどういうお考えでおられるかということを伺つておきたいと思います。鉱業法でも、その他の土地改良法でも、放送法でも、全部明治三十三年の現行の土地収用法を適用したり、準用したりしております。先ほども施行期日はどのくらいになるかということに対して、大体六箇月ないし九箇月以内にやりたい。それまでにはこの関係法規を全部整理してこの法律に合うようにしなければ、とてもちぐはぐになるのでありますが、この点はどういうふうな考え方でおられるか。
  179. 澁江操一

    ○澁江政府委員 前段のお尋ねの点に関しましては、先ほど提案者から御説明がございましたので、省略させていただきまして、収用法を準用しておる他の法規との関係でありますが、これにつきましては、収用法施行法という一つの法律を出して、御審議をお願いしておるわけであります。そういつたような経過的な問題、あるいは他の法律との関係等については、それぞれこの施行法案の中に規定をいたしまして、整理することにいたしておるのであります。鉱業法等につきましては、その一部改正施行法案の二十三条にうたつておるような次第であります。
  180. 内海安吉

    内海委員長代理 お諮りいたします。これにて質疑を終了いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 内海安吉

    内海委員長代理 御異議なしと認めます。よつて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告があります。池田峯雄君。
  182. 池田峯雄

    池田(峯)委員 共産党を代表して、簡単に反対の意見を述べておきます。  この土地収用法案は、旧法を民主的にしたという提案理由説明でありますが、実際は民主的な偽装をしただけでありまして、何ら旧法とかわらない法律であります。それは私が提案者質問したところによりましても、たとえば補償の方法等におきましても、農地の価格を賃貸価格の四十八倍という政府委員説明では、まつたく安いのであつて、一反歩七百円くらいで土地収用するのでありまして、こういうことでは旧法と何ら異ならないのであります。収用委員会というのも、七人あるが、三人で決定することができる。しかも県知事がこれらをかつてに、都道府県会の承認がなくても、任命することが場合によつてはできる。こういうようにまつたく民主主義にしたというのは偽装でありまして、本質においては、旧法とまつたく異なるところがない法律であるというふうに考えますので、絶対反対をいたす次第であります。
  183. 内海安吉

    内海委員長代理 これにて討論を終局いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 内海安吉

    内海委員長代理 御異議なしと認めます。よつて討論は終局いたしました。  これより両法案を一括して採決いたします。両法案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  185. 内海安吉

    内海委員長代理 起立多数。よつて法案は原案の通り可決いたしました。  お諮りいたします。両案に関する報告書の作成並びに手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 内海安吉

    内海委員長代理 なければさようにとりはからいます。  今会期中の本委員会の審査はこれにて全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十分散会