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1951-05-12 第10回国会 衆議院 建設委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十二日(土曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長代理理事 内海安吉君    理事 鈴木 仙八君 理事 田中 角榮君    理事 村瀬 宣親君       逢澤  寛君    淺利 三朗君       今村 忠助君    宇田  恒君       高田 弥市君    西村 英一君       増田 連也君    佐々木更三君       玉井 祐吉君  委員外出席者         建 設 技 官         (住宅局建築指         導課長)    内藤 亮一君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 三月三十一日  委員小平久雄辞任につき、その補欠として畠  山鶴吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員畠山鶴吉辞任につき、その補欠として小  平久雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十一日  建築士法の一部を改正する法律案淺利三朗君  外九名提出衆法第五〇号) 四月二日  北海道下災害復旧費全額国庫負担に関する請  願(高倉定助紹介)(第一六九八号)  下江戸部落地内の那珂川改修工事計画変更等に  関する請願石野久男紹介)(第一六九九  号)  庶民住宅充実に関する請願松岡駒吉紹介)  (第一七五五号)  府県道新庄鶴岡線黒渕地内の防災復旧工事施  行の請願志田義信君外一名紹介)(第一七五  六号)  今井、境両橋間の吉井川右岸堤防築設の請願  (大村清一紹介)(第一七五七号)  南谷村地内小鴨川堤防築設の請願稻田直道  君紹介)(第一七七〇号)  県道上徳山下蚊屋間改修工事施行請願(逢  澤寛紹介)(第一八〇三号)  稻荷橋架替の請願(逢澤寛紹介)(第一八〇  四号)  平井賀切牛間道路改修工事施行請願(小澤  佐重喜紹介)(第一八〇六号) 同月十三日  東仁連改修に伴う損失補償に関する請願(池  田峯雄紹介)(第一八一九号)  国道十号線中横川、軽井沢間を観光道路として  改修工事施行請願井出一太郎君外一名紹  介)(第一八三四号)  赤坂橋永久橋に架替の請願倉石忠雄君紹  介)(第一八六四号)  木次、生山間府県道改修工事施行請願(山本  利壽紹介)(第一九五三号)  県道廣浜線国道編入請願中川俊思君紹  介)(第一九六七号)  建設公共事業予算増額に関する請願藤枝泉介  君紹介)(第一九七三号) の審査を本委員会に付託された。 三月三十一日  国道改修促進に関する陳情書  (第四八〇号)  国、県道の新設、改修促進等に関する陳情書  (第四九一号)  北海道災害復旧事業費国庫負担に関する陳情  書(第四  九七号)  海岸法急速成立に関する陳情書  (第五〇四号)  地盤変動復旧に関する陳情書  (第五〇五号)  裏日本国道改修促進に関する陳情書  (第五三七号)  道路特別維持費全額国庫負担陳情書  (第五三九号)  土地区画整理事業に対する助成金交付陳情書  (第五四四号) 四月六日  道路改修費に関する陳情書  (第五四七号)  清水、直江津間中部日本横断国道改修工事に関  する陳情書(第  五四八号)  世田谷区の道路改修に関する陳情書  (第五四九号) 五月四日  府県道松本高山線国道編入に関する陳情書  (第六五四号)  住宅金融公庫法予算増額に関する陳情書  (第六七八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  建築士法の一部を改正する法律案淺利三朗君  外九名提出衆法第五〇号)     ―――――――――――――
  2. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 これより会議を開きます。  議事に入るに先だちまして、この際委員諸君にお諮りいたします。本日議題と相なります建築士法の一部を改正する法律案に関しましては、かねてより本委員会において小委員会を設置して審議しておつたのでありますが、さき理事会において、議員提出の形式にて提案する旨決定いたしておつたのであります。委員会といたしましては、この際この理事会決定を承認いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 御異議なしと認めまして、さように決します。  それでは昨日付託になりました建築士法の一部を改正する法律案淺利三朗君外九名提出衆法第五〇号を議題といたします。この際提案理由説明を求めます。淺利三朗君。
  4. 淺利三朗

    淺利委員 かねて建築士法の一部改正に関する法律案の起草につきまして、小委員会を設置せられまして、不肖私がその小委員長として、委員諸氏の熱心なる審議によりまして、前後数回にわたつて審議検討をいたしたのであります。その結果成案を得ましたのが、本日提案いたしました改正法律案であります。なお、この問題につきましては、すでに理事会決定に基きまして、小委員長ほか小委員の連名によりまして、議員提案といたしたのであります。つきましては、この成案を得ました法律案について、提案者を代表いたしまして、提案理由を御説明申し上げます。  さきの第七国会において成立いたしました建築士法第三條の規定によりまして、建築物用途規模構造等により、特に建築物としての質を確保する必要のあるものについては、建築士でなければその設計または工事監理をしてはならないという規定になつておりまして、その建築物種類及び範囲は別に法律で定めることとなつております。この趣旨によりまして、建築士法の第三條を改正し、かつ第三條の二を加えまして、建築士でなければ設計または工事監理できない建築物種類規定いたしました。これが今次改正案の要点でありまして、これに伴つて用語意義報告義務その他若干の付随的改正と、條文整理を行うとともに、附則によつて建築基準法の一部に必要な改正を加えたのであります。以下逐條的に御説明申し上げます。  まず第二條は、用語意義でありまして、設計工事監理定義に、それぞれ「その者の責任において」と加えました。これは単なる補助的な立場でこれらの業務に携わる者は含まないということを明らかにいたしたのであります。これとともに、新たに今次の改正案において用いられました「大規模修繕」、「大規模の模様替」「延べ面積」、「高さ」、「軒の高さ」及び「階数」の六つ用語意義を、それぞれ建築基準法定義を援用して規定いたしました。  次に、第三條を改正いたしまして、第一項において、一級建築士でなければ設計工事監理できない建築物につきまして、第一号は学校病院劇場映画館等用途の上から、第二号は鉄筋コンクリート鉄骨造等構造の上から、第三号は規模基準として規定いたしました。これは用途上、構造上、または規模の上から見て、その建築には相当高度の技術的能力を必要とするものでありまして、一級建築士設計工事監理を要すると認められるものであります。第二項は、第一項各号の建築物増築、改築、大規模修繕、大規模の模様がえ等をする場合におきましては、その工事部分についてのみ第一項の規定を適用することを明らかにしてあります。  第三條の二は、第三條と同様な規定方法によりまして一級または二級建築士でなければ設計工事監理できない建築物規定いたしたのであります。特に第三項におきまして、都道府県土地状況により必要と認める場合には、一定の区域または建築物用途を限り、條例でこの條の面積に関する規定を増減できるように委任いたしております。これは二級建築士知事の免許を受けるものであることと、さらに地方の特殊事情によつて特例を設ける必要がある場合のことを認め、特にこの規定を設けたのであります。  次に、第十條に一項を加えてありますが、これは建築大臣または知事が出頭を求めた参考人に対して、その日当旅費等を支給するという規定でありまして、現在の建築士法にこの規定がありませんために、日当旅費等の支給に疑義を生じますので、明確にいたしたのであります。  第二十六條は、建築士事務所に対する知事監督権に関する規定でありますが、この改正に伴い、新たに第三條または第三條の二の規定に違反した場合の監督権を加えたのであります。第四号は建築士事務所を管理する二級建築士、第五号は建築士事務所に属する二級建築士、第六号は建築士事務所に属する建築士でない者が違反した場合であります。  第二十六條の二は、同様に、知事建築士事務所に対しまして、この法律施行について必要な報告を求めることができる規定であります。これは建築士事務所に対する都道府県知事の行う監督上必要な規定であります。  第三十五條は、罰則の規定でありまして、この改正に伴いまして、第三條または第三條の二の規定に違反して建築物設計または工事監理をした者の場合を、新たに第三号に追加規定したのであります。  次は、附則についてであります。施行期日を特に明年四月一日といたしましたのは、建築士その他一般建築主に対しまして、この改正による新しい規定を周知せしめるとともに、これに対して十分の準備期間を持ち得るようにいたしたいと考えたためであります。  附則の第二項は、建築士法改正に伴いまして、建築基準法の一部を改正いたしましたものであります。まず建築基準法五條の次に、第五條の二を加えたのでありますが、この第五條の二の第一項は、さきに御説明いたしました第三條及び第三條の二に規定する用途構造規模建築物工事は、それぞれ第三條または第三條の二に規定する建築士設計によらなければすることができない旨を、また第二項は、建築主は、これらの工事をする場合においては、建築士である工事監理者を定めなければならない旨を規定したものであります。これは第三條及び第三條の二の規定が、建築士その他の設計者工事監理者を規制するものでありますが、これと関連して第三條及び第三條の二に規定した種類建築物の質の最低基準を確保するために、これを建築物の規制の面から、建築主工事施工者に対して規定したものであります。その他はこの改正に付随したものであります。  なお、審議の過程におきまして問題がありましたことは、建築士法第二十一條におきましては、建築士設計及び工事監理を行うほか、付随的に建築物調査または鑑定及び建築に関する法令または條例に基く手続の代理等業務を行うことができるという規定がありまして、土地家屋調査士法二條土地家屋調査士業務は当然できるのでありますが、土地家屋調査士法第十九條におきまして、調査士でない者は調査士業務ができないこととなつております。従いまして、建築士に対しても、土地家屋調査士資格を与える必要があり、この改正法律案において土地家屋調査士法の一部を改正せんとする意見があつたのでありますが、本件は直接当委員会の所管にあらずして、法務委員会における審査の必要がありますので、法務委員会と交渉いたしました結果、法務委員会においてこの点は考慮したい旨でありましたので、この土地家屋調査士法改正は削除いたしたのであります。もちろん法務委員会においてこの規定をみずから進んで改正いたさない場合には、あるいは議員立法等におきまして、さらにその改正を考慮するということを保留しておいた次第であります。  以上をもちまして、簡単でありまするが、提案理由説明を終ります。  なお、本案は各党を代表した方々の愼重審議の結果ではありますが、本委員会においても、これを愼重審議の上、すみやかに本案に御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  5. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 これより質疑に入ります。ただいま建設省より内藤指導課長も出席されております。当局に対する質疑もあわせていたします。質疑の通告があります。順次これを許します。佐々木更三君。
  6. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 この法律改正につきましては、建築物の質の向上と、安全の保障のために、大体において了解をするものでありますけれども、若干の疑義の点について御質問申し上げたいと思うのであります。  それは、第二條の第四項に対する改正の点でございますが、従来なかつた「その者の責任において」という字句を特に挿入しておるようでございますが、「その者の責任」というのは一体だれをさして、どういう必要によつて、こういう字句を挿入しなければならないのか、法律の適用の煩瑣を避ける意味において、こういうような字句がなくて済むものならば、ことさらに挿入する必要もなかろうかと思うのでございますが、特にこの字句を入れた理由について御説明をお願いしたいと思います。
  7. 淺利三朗

    淺利委員 これは、さきにも一応説明申し上げましたが、建築士仕事の上においては、補助的の立場においていろいろ設計の実施に当るという者があります。そういう意味からいたしまして、この責任者として設計をする場合を考慮いたしまして、補助的立場にある者は含まないという意味から、「その者の責任において」という字句を入れて、その意義を明確にしたという趣旨にすぎないのであります。
  8. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 その点はよくわかりましたが、次に第三條で、建築物設計及び監理に対して一定制限を設けておるようでありますが、そのうちで、一で学校病院等の大建築物延面積を五百平方メートルに制限し、三におきましては、一千平方メートルという一つ基準を設けておるのでありますが、こういう数字の根拠は一体どういうところから来ておりまするか、少しこの制限が厳重でないかという疑いを持つのでございますが、この点について御説明を願います。
  9. 淺利三朗

    淺利委員  一体一級建築士、二級建築士設計または工事監理をする範囲規定するにあたつて、いかなる点において一線を画するかということは、なかなか用意ならぬものでありますが、大体今日までの建築の態様から見て、この程度のものが一級建築士技術を要するということで、こういう標準を設けたのであります。もちろん五百平方メートルとか、あるいは千平方メートルということは、各人の考え方によつていろいろあると思いますけれども、しかし今日の現状から見まして、この程度に一線を画する方がいいという認定のもとに規定いたしたのでありますが、なおこれに対しまして、今日までの実質上の取扱いとか、あるいはまた建築現状についての説朗が必要でありますれば、この衝に当つておられる建設当局の方も来ておられまするから、必要に応じて当局から説明していただくことにいたします。
  10. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 この基準制限というものは、その結果においては二級建築士をかなり制限することになると思いますので、一級建築士の場合と二級建築士の場合との公平が期されなければならないし、かつまた建築する者の便宜をはかるという建前をとらなければならぬと思うのでございますけれども、建設省当局に何かこれに対しまする特別の見解がございますなら、ひとつ承りたいと思います。
  11. 内藤亮一

    内藤説明員 現在建築基準法におきましては、木造建物は、ここに千平方メートルと書いてございますが、千平方メートルを坪数に直しますと、約三百坪になりますが、三百坪を越えますと防火壁がいる。防火壁自身鉄筋コンクリートでやりますので、相当大きな構造であり、相当高度の技術を要するものである。防火壁がいるかいらないかという境が、ちようど千平方メートルになつております。また一号に、学校とか、病院劇場映画館等、いろいろ用途が書いてございますが、学校で申しますと、五百平方メートルになると、六つ教室でございます。いなかの分教場で、二、三教室だとか、四教窒くらいやる場合は、これにはあてはまりません。また映画館は五百平方メートルとなつておりますが、普通映画館は、建築基準法によりまして、客席の床面積が二百平方メートルを越えますと、もうすでに鉄筋コンクリートでつくらなければならないということに現在なつております。普通の映画館では五百平方メートルにまで達しません。相当大きな都会の、県庁の所在地のような都市の映画館になりますと、五百平方メートルを趣えまして、大体鉄筋コンクリートになるのであります。定員で申しますと、約七、八百人以上、満員の場合は千人以上の観客席を持つような劇場映画館が五百平方メートルを越えるものであります。これも普通の映画館は、一級でなくても二級の建築士でもいいというようなことが説明できるのではないかと思つております。  また第二号に、高さ十三メートル、または軒の高さが九メートルということが書いてございますが、これも建築基準法では、高さ十三メートルまたは軒の高さが九メートルを越えるものは木造でやつてはいけないということも書いてございます。階数でいいますと、大体三階建以上ということになるわけであります。鉄筋コンクリートで三階建というようなことになりますと、相当な技術が必要になつて来ますので、これは鉄筋コンクリートでも、れんが造でも小さな建物になりますと、普通の経験だけでもできるのじやないかと思つております。以上をもつて説明を終ります。
  12. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 次に、第三條の二の改正でございますが、第三條の二の一項は、これは前條第一項の学校病院劇場、こういう公共的建築物増築部分のようでございます。これは問題ございませんが、第二の一般住宅に適用されると思われる「延べ面積が百五十平方メートルをこえ、又は階数が三以上の建築物」これ以上のものは、一級もしくは二級建築士でなければ、これを設計し、または監理することはできない。こういう制限規定があるわけでございますが、これは第三項において、都道府県土地状況によつては、別個の緩和規定がありまするけれども、少しこの制限は厳格に過ぎはしないかという危慎の念を持つのであります。すなわち延べ面積が百五十平方メートルでありますと、大体四十五坪相当の家と思うのでありますが、都会においては、四十五坪という建坪は相当なものでありまするけれども、農村に参りますると、四十五坪という建物はざらにありまするので、どうしても農村のように一級、二級の建築士不足なところでは、不便を感ずるばかりでなしに、そういうものの設計監理ができないということになりますると、一般の大工さんではできないという結果になりまするので、非常に負担が過重になる、こう思うのでございます。第三項に緩和規定はございまするけれども、しかしこの規定があるということは、必要以上の厳格さによつて、これらの住宅建築する者に対して過重な負担をかけるということにおいて、この規定をもつと緩和する必要がある。たとえば、これを一般住宅については、六十坪以上とか、八十坪以上とか、こういうふうに、もう少しこの規定緩和する必要がある。そうして建築する当事者の負担を軽減する必要がある。こう思いまするが、提案者におきまして、これを修正する御意思はございませんでしようか。
  13. 淺利三朗

    淺利委員 この問題は、一方において建築士資格にも関係する問題であります。建築士資格におきましては、七年でありましたか、ある程度経験者は二級建築士試験を受けることができることになつております。従つて四十五坪以上の建築をなし得るような技能ある者は、大体試験の上において、そういう人はとり得るという見地から一方は見られるのであります。もう一つは、現在の実情から申しましても、庶民住宅は大体十八坪を限度とする。またそれ以外にも、住宅金融公庫などで金を貸してやる場合は、三十坪が限度になつております。でありまするから、大体この百五十平方メートルという限度を置きましても、多くの場合においては二級建築士でない者でもやり得るということが、現状においては認められるのであります。もちろん、都会以外の場合においては、今佐々木委員の御懸念のようなことがあるのでありまして、その点を緩和するために、第三項において、土地状況によつて云々という除外規定を設けて、都道府県知事條例をもつて制限緩和をなし得る道を開いておるのであります。都会地等におきましては、今申し上げました今日の事情から見ますれば、この程度で適当であろう、こう認めたのであります。もちろん、自由にするという意味から言えば、御趣旨はわかりますが、一方においては、建築物の質の確保という点から見ますれば、今日においては、何分にも建築基準を考え、一定技術を有する者でなければ家屋濫造等を防止できないという見地から、この程度が適当である、こういう認定のもとにこの規定を設けたのであります。
  14. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 何かの四十五坪の制限は、都会においても少し厳格過ぎるという感じがなおするのでございますが、しかし、都道府県において、必要があれば別に定めることができるのでありまするから、それらの良識に信頼いたしまして、一応その点は了解いたします。  次にお聞きいたしたいことは、附則の点でございますが、この法律昭和二十七年五月一日から施行するのでありまするから、来年の四月一日から施行されることになるのであります。さきにも申しました通り、建築物の質の向上、安全の保障、こういう建前からこの法律をつくるのでありまして、われわれもそれを了解するものでございますけれども、建築士の数のいかんがやがて住宅建築する者の負担いかん決定することになると思うのであります。すなわち建築士の数が相当需要量に満つれば、正当なる報酬で仕事をするでありましようが、建築士の数が必要以下に不足であれば、そこに費用の不当なる負担ということがあるのでありまして、従つて適量建築士の数ということが問題になると思うのでございます。そこで現在建設省におきまして、建築士考査試験と申しましようか、こういうものがなされておるということを聞くのでございまするが、昭和二十七年の四月一日において、一級、二級の建築士の数が大体どの程度になる見込みであるか、できますならば現在どのくらいあつて、これは来年の四月までにはどのくらいの数になるという数字がありましたら、お示し願いたいのであります。  それから、現在この法律施行に照応いたしまして、建築士考査試験が行われておるようでございまするが、むろん学理を尊重しなければならないことについては異論はございませんけれども、しかし建築においては、その経験というものが非常に大事であろうと考えるのであります。従つてその試験いかんによりまして、従来の既得権が不当に侵害されて、一級建築士として当然なれる者もなれない。二級建築士にさえもなれない。しかし実際は腕があるという人が相当出て来る懸念があるのであります。現在のこれらの建築士考査試験がどの程度に行われて、これらの既得権が尊重される状態にあるかどうか、あると言われればそれまででございまするが、できるだけ従来の建築士の持つておる既得権と申しまするか、そういうものを尊重する建前において、この建築士考査試験をやつていただきたい。こう考えますので、それらの状況についてひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  15. 内藤亮一

    内藤説明員 御質問は、現在建築士選考がどうなつているか。来年の四月一日ころには、どれくらいの建築士ができるかというような点が第一点だと思うのであります。第一回の一級建築士選考申込みは、昨年の十二月に行つたわけでありますが、約二万二千四百人の申込みがあつたわけであります。その結果、書類で過去の経歴、過去に設計いたしましたり、あるいは工事監理いたしましたところの建築物の名称とか規模、そういうような過去の実務の経験を、いろいろ書類に書いていただきまして、それによつて考査はなくて合格いたしましたのが、約一万四千六百ございます。あとの約七千数百の方に考査を受けていただいて、その結果、また欠席者も約千人ございまして、約四千三百人が合格いたしたわけであります。考査方法は単なる試験の結果だけを重要視するのでなくて、さらに申請者の過去の実歴、今お話もございましたように、既得権を十分尊重するような方法で、選考委員選考いたしました。その点は十分考えまして、結局において合計で一万九千人の建築士が合格をいたしたわけであります。第二回は、四月一日から四月三十日まで、また申込みがございまして、現在の各県からの報告では、約六千五百人の申込みがあつたわけでございます。これは間もなく選考委員会におきまして、選考を始めるわけでございますが、見込みといたしましては、少くとも四千人は合格になるだろう。そういたしますと、二万三千人が一級建築士の免許を受ける資格ができるわけでございます。この秋に第一回の試験をいたしますが、これによつて、また若干一級建築士の免許を受ける資格者を生ずるわけであります。合計いたしまして、二万四千人が資格者になるであろうと思います。そのうちで建設大臣あてに免許の申請をいたしておる者は、現在三千人でございます。今月中には三千人は免許になるわけでございます。御承知のように、建築士法附則第一項によりまして、七月一日から建築士の免許を受けていない者は、建築士と称し得なくなるわけであります。引続いて六月にも免許申請がございます。まただんだん毎月免許申請も出て参ると思いますので、見込みといたしましては、来年の四月一日現在では、少くも一万五、六千人から二万人くらいの一級建築士が登録されると思います。二級の方は各都道府県知事選考なり、考査なり、あるいは免許ということになつておりますが、現在、各府県からの報告によりますと、約五万人が選考の申請をいたしております。見込みといたしましては、うち四万人が二級建築士の免許の資格を得るようになると思います。そういうふうにいたしまして、来年の四月一日には、二級建築士の方は、三万人は各都道府県知事の免許を受けるようになると思うわけであります。  一方、現在全国の建築状況を見ますと、毎年平均約五十万戸建築されております。年によつて多少違いますが、過去五年間平均いたしますと、五十万戸であります。五十万戸のうち、平均一戸当りの坪数は十七、入坪でございますから、大半は百五十平方メートル以下、四十五坪に至らないものであります。推定といたしましては、一級建築士あるいは二級建築士設計とか工事監理の必要な建物は、この五十万戸のうちのせいぜい一割くらいだという推定でございます。一割と申しますと、約五万戸でございます。一級、二級を合せまして、約五万人の建築士がおるわけでありますが、該当する建築物は五万戸というわけでございます。しかしながらこの五万人の建築士が、全部が他人の求めに応じて報酬を得て、建築士事務所を開くとは限らないのであります。官庁に勤めておる者、あるいは大きな造船所とか鉄工所、その他会社の建物だけ設計しておる者もありまして、他人の求めに応じない建築士もあるわけであります。建築士事務所を開きますのは、今申し上げました一級、二級合せまして五万人免許を受けた者のうちの、また二割くらいではないかと推定されるわけであります。そういたしますと、建築士事務所を開きますのが全国で約一万、大体、そんなような数字になるのではないかと予想されるわけであります。
  16. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 重ねてこの考査におきましては、既得権をできるだけ尊重してくださるように要望いたします。  最後に、この建築基準法の一部改正の第五條の二のうちの第二項でございます。これは提案者にお伺いいたしますが、この建築物監理者を定めなければならない。その監理者は前の條文従つて当然これは一級建築士、またその種類によつては二級建築士ということになるのでございますが、これまた農村のごときところにおきまして、工事監理者が必ずこの建築士でなければならないということは、非常な不便と過重な負担をしなければならないという結果になると思うのであります。そこで公共性を持つた住宅は別でございますが、一般居宅のごとき建築に対しましては、特に農村のごとき地帯におきましては、建築士である工事監理者を定めなければならないということがないようにすることができないかどうか。つまり農村のごときものについては、むしろ工事監理者というものはいらないではないか、そう不便を感じないではないかと考えるのでございますが、提案者は、この建築基準法の第五條の二の二項の改正は、あくまで必要とお考えになるかどうか、この点ひとつ御説明願います。
  17. 淺利三朗

    淺利委員 ただいまの御質問はごもつともな御懸念でありますが、この建築士によらねばならぬということの制限が、すでに建築士法の第三條の二の第三項によつて土地状況によつて必要と認める場合においては緩和されております。自然農村等における問題は、條例によつて緩和することができると恵うのであります。また現在におきましては、工事請負人の方において建築士を持つておれば、工事を請負わした者に同時に監理をさしてもさしつかえないというような道があるのでありますから、それほどまでの御懸念はないと、こういうふうに私どもは考えまして、この程度に、この規定を設けたのであります。
  18. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 次に西村英一君。
  19. 西村英一

    ○西村(英)委員 佐々木さんからいろいろお尋ねがありましたので、大体は盡きておると思うのですが、佐々木さんの一番初めのお尋ねの「その者の責任において、」これはどういうわけかということに対する提案者の答弁といたしまして、ちよつと不足いたしておるのじやないか。これは、この法律をあとで見ます人が、どうして「その者の責任において、」というような文句をつけ加えただろうかと、非常に疑問を持つと思うのです。記録に残す意味で、もう少しそこのところを詳しくお話願いたい。私の理解しておる範囲では、第二十六條第一項に次の三号を加えるという、つまり四、五、六の事項を加えまするときに、建築士事務所に勤めておる一級建築士並びに二級建築士か、いろいろ設計及び工事監理をする。しかし、その一級建築士ないし二級建築士が、二六時中工事監理をするわけではないんだから、その場合に補助者を使うことがあるだろう。ところが、その補助者を使うということについて、いろいろ議論があつたために「その者の責任において、」というようなことが問題になつたのですが、補助者を使つてやることはかまわないのだ、但し設計にしても、工事監理にしても、責任者責任をもつてやることをさすのだということのために、初めの設計工事監理定義の中にそれを入れておこう、こういうふうに理解いたしておるのであります。従いまして、提案者の方で、もう少し「その者の責任において、」という字句をつけ加えた意味を、はつきり記録に残しておかないと、あとで法律を読む方が、おそらく疑問を起すと思うのです。その辺をもう少し丁寧に御説明を願います。
  20. 淺利三朗

    淺利委員 西村委員は、小委員として一緒に御研究になつておりますから御承知だと思いますが、その点はお話の通りであります。第二十六條で、建築士事務所において、二級建築士が、一級建築士の事務所に所属する者として、一級建築士でなければならぬことを、二級建築士だけでやるという場合は、違反になるという規定があるのでありますが、そういう場合からいいまして、建築士が補助員を使つてやる、しかしながら最終的には、自分が補助員に手伝わして、設計しあるいは監理する場合においても、みずからがその責任において、その設計に目を通してその適否を明らかにするとか、あるいは工事監理の場合においても、自分の責任においてやるというような意味においてこれを使つたのでありまして、今西村委員の言われた通りであります。説明が少し足らなかつたかしれませんが、要するに、補助員等を含まないという意味から、一級建築士あるいは二級建築士がその責任においてという文字をつけたことは、今御説明の通りであります。
  21. 西村英一

    ○西村(英)委員 第二の点は、これも佐々木さんからお話がありまして、それに対して、説明員の方から、一級建築士並びに二級建築士の現在の採用状況につきましてお話があつたのですが、佐々木さんの御意見は、現在の既得権を擁護せよ、こういうことを申されて、私どもこの点については同感でございます。但し、私が特にこの法律を運用される政府の方々に申したいのは、今の御説明を聞きましても、一級建築士なり二級建築士について、申し込んだ人と、考査に通つた方の、数字的なお話がありましたが、建築物の質を上げるために、建築士資格検定というものが行われるのであるから、現在の既得権を重んずる、生活権を擁護して行くということについては異存がありませんけれども、今後の運営につきましては、それのみを念頭にいたしておつたのでは、せつかくの資格試験も何にもならぬと思うのです。元来この法案でも、一番の欠陷は、一級建築士は国家試験をやつておるが、二級建築士は府県にまかしておるのです。これを、二級建築士もやはり国家試験にして、質の向上をはかるためには、試験を十分厳格なものにしなければならぬと思う。厳格な試験にするということは、何も建築士の方を痛めつけるわけじやありませんが、十分建築士資格を守るとともに、また十分実力のある者を採用して行くということに行かないと、せつかくこういう制度をつくりましても、何にもならぬと私は思うのであります。そこは建築士の数と、建築士にどういうことをやらせるかという條件の問題にからむわけでありますが、たとえば一級建築士にいたしましても、二級建築士にいたしましても、非常に試験はむずかしくする。しかし、やることには非常に制限を置いて、さぜんも申しましたように、百五十平米以下の建物とかいうものは、資格がなくてもやれるようにする。あるいは三十平米のコンクリートの建物等にも資格がいるようになつて工事監理者もつけなければならぬというふうになつておるが、そういうものは、資格がなくてもだれでもやれるようにするというふうに、資格とその條件とを、将来に向つてもう少し考える必要があるのじやないかと思うのであります。しかし、この法が施行せられましてどういうふうになるかはまだわかりませんが、佐々木さんの言われる既得権を重んずるということにつきましては、現在の方たちにはいいと思いますが、将来に向つてこれを運用される方々は、やはりこれを生かして行かれるには、相当に試験方法なりを考えて行かなければ、せつかく建築士の制度がありましても、何にもならぬ。こういうことになろうかと思うのであります。なおその点につきましても、これもさいぜん佐々木さんからお話がありましたが、附則の、建築主は、非常に小さい農村等におきまして建物をつくる場合にも、建築監理者をつけねばならぬというようなことは、これも私はどうかと思うのであります。しかし、現在のシステムがそういうふうになつておるから、こういうことになるのであります。その点は、今後ともこの法の運用者において、十分な考慮をせられんことを希望するものであります。その他の点につきましては、私は異存はない次第であります。なお、何か私の意見につきまして、実際政府の方で、私の建築士に対する考え方が、はなはだ間違つておるかどうかということにつきまして、もし御意見がありますれば承つておきたい。
  22. 内藤亮一

    内藤説明員 ただいま西村先生からお話がありまして、一方佐々木先生からもお話がありまして、この建築士法を運用いたしますところの政府の考え方でありますが、特にこの選考、これは非常にむずかしいのでありまして、単なる試験一方でも、必ずしも既得権というものが試験の成績に現われて来ない。といつて、あまり甘くいたしますと、ただいまのようなごもつともな御意見に反するような運用になるわけであります。その点を非常に苦慮いたしておるわけでおります。こまかい問題になりますが、考査の場合でも、単なる最近の択一法のような、ああいう問題ばかりでなく、簡単な製図も入れましたり、できるだけ過去の経験がわかるような方法を取入れまして、さきほど申し上げましたような結果になつておるわけであります。そこで、この秋に第一回の試験がありまして、年々一回ずつ試験があるわけでありますが、今後だんだん程度の高い本格的な試験をやつて行きたいというふうに考えておるわけであります。それから選考となりますと、既得権の保護ということも頭に置きますと、多少甘くなるきらいが出て参るわけであります。その欠陷を補いますために、各府県ではすでに何々県建築士会という団体を設けるというような議も自主的に起つておるようなわけであります。建設省といたしましては、そういうような団体には自発的に講習会なんかをやつていただきまして、新しい鉄筋コンクートその他の科学技術をさらにみがいてもらうというふうに指導して行きたい。日本建築学会でも、建築士に合格した人に、あるいは今後建築士を希望する人に、新しい議義録を編纂する計画もあるようでございます。過去の経験にあわせまして、新しい知識をできるだけ吸収してもらいまして、そうして建築士法の目的に合うように建築士の団体が動くというように、十分建設省といたしましてもわれわれ努力いたして行きたい、かように思つておるわけでございます。御説は十分政府の者といたしまして承つて、これを実際の今後の運用に取入れて行きたい、かように考える次第でございます。
  23. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 佐々木、西村両委員から御熱心に、建築士既得権の保護、あるいは建築制限緩和、その他この法の運営についての十分な考慮というような質問があつたようでありますが、この点はごもつともと思います。当局におきましても十分御留意を願いたいと思います。  ほかに御質問はありませんか。——御質問がなければ、これにて質疑を終了いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 御異議なしと認めます。よつて質疑は終了いたしました。  なお、本日討論、さらに採決に入りたいと考えましたが、これは次会に譲ることにいたします。次会は来る十五日、来週火曜日午後一時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時五分散会