○伊藤(繁)
政府委員 五一三号の
批難事項は
補助金の交付に
当り処置等を得ないものということでございます。本件は
昭和二十二年度、二十三年度におきまして、
北海道炭礦汽船株式
会社に対し、自家用火力発電所動員費
補助の二千大十七万余円を交付いたしましたが、これが実績に比して
過払いであるという
批難であります。二十二、二十三年度におきましては非常に電力が
不足いたしましたので、炭塵汽船の持
つております自家用火力発電所を動員させまして、それに対しまして1火力発電でございますので、
購入電力料よりも著しく経費がよけいかかりますので、その分を国家の
補助金から見るという
制度をと
つたのでございます。その場合に、その当該火力発電所の動員経費を査定いたしまして、それと
購入電力料との差額を
補助金として交付するという建前に
なつておりますが、この場合におきまして
会社側が申告いたしました経費は、実際に符合いたしておりませんで、あるいは火力発電経費として計上すべからざるものを計上し、あるいは期間計算をして
——これは一月から三月までと記憶いたしますが
——三箇月間の経費を
補助する建前でございますから、その消耗器具類につきましては、三箇月の経費を
補助すべきものでありますが、
会社側が期間計算をせずに入れて来たものを、実地
調査をせずに認めて、その結果百三十八万円ほどが
過払いに
なつたという
批難でございます。この点は、当時炭礦汽船
会社が極端に金繰りが苦しくありまして、できるだけ早く
補助金を交付したいという方針で、本省といたしましては、札幌商工局の方に認証の手続を依頼いたしましたが、札幌商工局の方でも、時期的に実査するひまがありませんでしたので、書類審査のみで申達した結果、かような過誤を生じた次第でございます。過払金につきましては、二十四年の十二月十九日に全額返納をいたさせて、今日においては問題は残
つておりませんが、当時の責任者に対しましては、それぞれ戒告及び
注意を与えております。
それから五一四号は、官有物に対する
処置当を得ないものという
批難事項でございます。これは終戰後、当時軍需省航空兵器総局が官有で持
つておりました機械を商工省に引継いだのでございますが、これは兵器等製造
事業特別助成法で、国が軍需品品工場に貸し付けた機械類及び元第一軍需工廠で調達した機械類を、商工省が軍需省から引継いだのでございますが、これにつきまして
昭和二十年九月と二十一年の三月に、機械類所在の
会社にあらためて
保管させましたが、その台数は二万九百四十七台と当該
会社から
報告があるのでございます。しかるにその機械につきまして、この
会計検査がありました当時、三年を経過いたしましても、まだその
会社側の
報告台数とその後の
事故あるいは現在台数等を実地
検査してはつきり確認しておらないのは、その
処置がはなはだ緩慢である。現に
会計検査院の
検査によりましても、その当時の
報告による引継
保管数と現在台数との間には、食い違いがあるのではないか、これは非常に
事務の怠慢である、こういう
批難事項であります。これに対しましては、御承知のように終戰直後の
事情におきまして、軍需省が
保管しております機械類に関する
帳簿一切が、当時全部滅失しておりまして、何台われわれが引き継いだかということが、はつきり確認ができなか
つたのでございます。またその間終戰直前の混乱
状態で、戰災の機械台数も不明瞭でございました。また
会社側におきましても、やはり同様の
状態におきまして、混乱の際で書類を紛失した、あるいはこの機械は
全国各地に散在いたしておりますし、またこれを把握すべき官庁機構も非常に弱体であつたというようなことで、かように
整理が遅れたのでございます。その後商工省といたしましては調達賠償部及び通産局にある程度の
予算を計上いたしまして、とれの把握に努めた結果、現在におきましては、その機械台数も数的に把握し、大部分実地
調査も進んでおる
状態でございます。
それから五一五号の
批難事項でございますが、これは御承知のように、工業用アルコールは、一般アルコールと違いまして、低廉で売渡しをいたしておるわけでございます。
従つてこれが横流れするのを防ぎますために、工業用アルコールに売り渡します場合には、商工省の官吏が立ち会い、また変性という物理的な変化を加えることに立ち会い、また最終用途としては工業用に使つたという使用済証明書を出させることにいたしておるのであります。しかるに
会計検査院の
批難によりますと、札幌外五商工局で調べたところ、八十七件、九百七十キロリツトルにつきましては、変性の場所、日時を指定せず、
政府職員立会いの手続を怠り、変性済み証明書等を作成しないという事例もあ
つたので、必ずしも不正とかそういう問題ではございませんが、売り渡したアルコールが、はたして工業用に確実に使われたものであるかどうかという認定が困難に
なつて来た、これははなはだ
事務の疎漏ではないか。なお一般定価で一応売り渡したもので爾後に工業用に供した場合には、変性済み及び使用済み証明雲によ
つて、特別定価との差額を
あとから交付することに
なつておりますが、これにつきましても、大阪商工局で二十九件について、変性済みあるいは使用済み事実を確認する資料がないということで、同じような性質の
事項でございます。これにつきましては、事実は
会計検査院の
報告通りでございまして、今日におきましてその事実の確認が困難に
なつたことは、はなはだ遺憾とするところでございます。人手の
不足あるいは
事務のふなれ等が
事故の
原因でございまして、これにつきましては、何とも抗弁の申しようがないわけであります。今後担当官を訓練いたしまして取締りを
嚴重に励行し、こういうあやまちを犯さないようにするつもりでございます。なお当時の札幌外五商工
局長に対しては、訓告処分を与えてございます。
それから五一六号、アルコール賠償金の支払に
当り過払を生じたもの、この事案は、東京商工局で二十三年の四月から六月までの間に、三楽酒造株式
会社川崎工場から、三回にわた
つて收納したアルコール大十二キロリツトルの
代金として二百六十五万円を支出しております。この
支払い代今立につきましては、
批難事項の書類にもございますように、二十二年産のほしかんしよを主原料にして生産されたアルコールとして、該当賠償
価格キロリツトル
当り四万二千三百八十八円で算定したものであるが、
会計検査院が実地
調査したところが、そのうちに二十一年産のほしかんしよを主原料にしたアルコールが含まれてお
つて、そのときの賠償
価格は、二十二年産のほしかんしよを主原料にしたものよりも低いのでありますから、五十三万円ほど
過払いに
なつておるのではないかという
批難事項でございます。御承知の
通り当時のアルコール
価格は、原料の年産の差によ
つて、買い上げた收納
価格をかえておりましたので、こういう問題が起るのでありますが、これも事実は
会計検査院の
報告通りでございまして、遺憾とするところでございます。工場監督を十分嚴密にいたしておりますれば、原料の受払いからいたしまして、かような事実ははつきりつかめたと考えるのでありまして、これはわれわれの行政の十分行き届かなかつたことが
原因であると考えております。今後十分
注意をいたします。なお
過払いに
なつておる分五十三万円につきましては、二十四年の十一月二十五日に、これを全部完納せしめております。
それから五一七号は、アルコールを
帳簿外に
処理したものという
批難事項であります。これは東京通産商産業局千葉、石岡両アルコール工場で、二十二年の四月から二十四年の九月までに、工場で生産したアルコールのうち、その合計額二十七キロリツトルを、物品
会計官吏に引渡さずに
帳簿外で
処理しで、これを
無償あるいは低廉な
価格で
職員に配給し、あるいは外部にこれを交付しておつた、こういう
批難事項でございます。これは当時の
事情が終戰後の特殊
事情でございまして、当時極度にアルコールの生産が減退しておりましたので、生産を回復するために、また当時国民生活が非常に苦しくて、ある程度工場の特別配給というものが、一種の慣例のように
なつておりました情勢におきまして、増産奨励用として工場
職員に配給をし、あるいは
資材が、当時やはり
需給状態がはなはだ逼迫しておりましたので、
資材購入のための一種のバーター用に使つたということは事実でございます。しかし事実は
会計検査院の
報告の
通りでございまして、成規の手続をとらなかつたことは、はなはだ遺憾とするところでございます。現在におきましては、かかる事態は全然ございません。また当時の責任者に対しましても、それぞれ訓告及び
注意を与えております。
五一八号は、糖蜜の管理はなはだしく当を得ないものというのでございまして、東京通商産業局千葉アルコール工場で、アルコール製造原料として
保管中の糖蜜在庫量について、
昭和二十四年九月、
会計検査院において実施
調査いたしましたところ、出納簿の残高は五百八十トンに
なつておりましたのに、
現品を
調査いたしましたところ、五百十四トンばかりしかない。
従つて六十五トンの
不足を生じており、しかもその
現品には水が加えられておつたということでございます。糖蜜は御承知のように水あめ状の半流動体でございまして、これを
輸送いたします際には蒸気を送人するというような、非常に特殊の操作を必要とするのでございます。またアルコール原料としては、全然使用されました経験がございませんでしたために、計量の設備、あるいはその取抜い方について不完全でありまして、随時工程別にその重量を把握して行くということに欠けておつたことが
原因でございます。また貯槽の底にも損傷がございまして、ここからも
相当量が流出したのではないかと考えられるのでありますが、事実は
会計検査院の
報告の
通りでありまして、はなはだ潰憾とするところであります。今後計量器、貯槽設備等につきまして十分整備いたしまして、かようなことのないように努力したいと思います。なお当時の責任者に対しましては、それぞれ減給、戒告の処分をしております。