○小峰
会計検査院説明員 三一〇から三一四まで、ざつと御
説明申し上げます。
この三一〇、三一一、三一二は、姫路と若松とそれに都城と、場所は点々と飛んでおりますが、要するところ旧陸軍用地、連隊なり練兵場なり、こういうものを処分した
案件であります。姫路は競馬場でありまして、若松は市営住宅と総合
運動場、それから都城は繊維会社の工場でありますが、こういうものに売
つたわけであります。その値段は、この表でごらんになりましても、坪十五円から最高三十円、あめ玉何箇にもつかぬ値段でございます。こういう値段で、これまた相当に地域的によくないところも、一部にはあるようではありますが、大体
当局者がやれ濕地だとか、やれ何だとか御
指摘にな
つておるところを
調べましても、そこにはか
つて糧秣倉庫が立
つてお
つたというようなこともございまして、どうもそうひどいところはないようであります。そこで私
ども、坪五十円にも満たぬというのは、あまりひどいではないかというので、いろいろな面から検討いたしまして、特に安い
案件を並べ立てたわけでありますが、この三つの
案件につきまして、先ほど
ちよつと
管財局長からも
お話が出ましたので御参考までに申し上げますが、これは相続税をとるときの標準になる相続税
課税標準から申しましても、また
一般の市価から見ましても非常に安いのでありす。私
どもも、この程度で売られては、実は少し安過ぎるのではなかろうかと思
つている値段でございます。その値段が姫路では、計算いたしますと百四円とか九十二円にな
つております。それから若松のは百四円でありますが、都城のは百二十円、九十六円、こういうふうにな
つております。それに比べましても、今申し上げた値段は、決して市中の売買値段ではないのでありまして、市中の売買値は相続税の
課税標準よりは、まず原則として相当高いというのが
実情であります。ごくまれにはこれより安いものもありますが、原則として高いと言えると思います。それに比べても何分の一にもな
つておらぬ、こういう
状況でございます。
それから勧銀の
全国市街地価格平均指数をここへ出しましたことを、
当局は非常に不満としておられるようでありますが、御
承知のように昔から土地の評価の場合には、勧銀の評価というものが日本では一番権威のあるものだ、こういうことにな
つております。戰争でその辺は相当怪しくはな
つておりますが、ともかくも勧銀の評価というものに対しては、私
どもは一応の敬意を拂うのであります。
あとで出て参ります三一四の土々呂などは、これは個別的に勧銀の評価をお願いした
案件ですが、なかなか個別鑑定ということはむずかしいのでありまして、大体の
傾向を見て指数を使うということは、これは
当局者がおやりにな
つておるのでありまして、勧銀指数は、はつきり
資料に書いてあるのもありますし、物価指数としてこの勧銀の指数をおとりにな
つて土地を売
つたり買
つたりなさ
つている実例は、もう
会計検査院に対する証拠書類に山のごとくにあるのであります。こういうものを、しいて
使つておらぬとおつしやるのが、実は私は不思議なのであります。もちろんこの
通りの計算で出した値段でお売りにな
つてはおりません、これを一応の基準として計算をした上に、いろいろな要素をお入れにな
つております。しかしそのいろいろな要素が
——相続税の
課税標準もありますし、いろいろなものもありますが、結局精通者の意見がこうだというので、せつかく計算をされたのががたがたにくずれてしまう、何のために計算をしたのかわからない。計算して百円にな
つたのが、精通者が四十円だと言うから四十円で売るのだ、こういうふうな
方法をおとりにな
つております。そこに私
どもは若干の疑問を持つのでありますが、精通者というのは、これは精通者と書いてあるだけで、私
どもにはわからない場合が多いのであります。買う場合もそうでありますが、この三つの
案件につきまして非常に安過ぎるという例になるかと思いますが、売買実例都城の件について、その後に売りました土地のすぐそばであります。これは公務員宿舎というのがこのごろたくさん立
つております、役人の入る国営宿舎であります。その用地を買收されておる例がありますが、これはお売りに
なつた財務局が買收されたのであります。これは電波庁
関係の公務員宿舎でありまして、それを私
どもが見ますと、地級が同じくらいの土地だと思うのでありますが、坪百九十円くらいで買收されておるのであります。お売りに
なつた値段は十八円と二十二円であります。この十八円と二十二円は、売るときは地積も二万坪余りでありましたから、相当地積の大きいことがものを言うと思います。なかなかそういい値段では売れないと思いますし、また時期も違う。百九十円というのを、かりに売りましたときの時期に引直してみますと、百六十四円になります。百六十四円だ
つたのがその後百九十円に上
つたということになる。時期を同じく引直して換算しますと、百四十円ぐらいにつく土地であります。それを十八円なり、二十円なりで同じ財務局がお売りにな
つておるのであります。ここでも私
どもは非常な疑問を持つのでありますが、その実例は
あとの実例でありますから、本件を売るときに、
当局者がなぜこの実例を見なか
つたのかということで文句を言うわけには参りませんが、一応この売拂い値段が少し安過ぎたのではなかろうか、こういう
資料にはなるのじやないかと思います。この三件についてはこれで終ります。
それから秋田の土地の
案件について申し上げます。実は土地の売拂い値段というのは、先ほど申し上げましたように、非常にむずかしいのであります。幾らが正しいかということは、なかなか出て来ないのであります。前の三件につきましても、幾らが正しいかと言われますと、実は相当困る面もありますが、ともかくもその価格が安過ぎる、こういうので、前は三つ並べたのであります。秋田の土地は、大体ここに出ておりますが、赤十字社、秋田県、秋田市の使うのはここでは問題にしておりません。前の二百八十円、三百十五円、それから百六十円、これを取上げて問題にしているわけであります。秋田は御
承知かと思いますが、駅の前に連隊が大きな用地を構えてお
つたのであります。そのために、これはどこでも、自然にほう
つておきますと、駅の前というのは、その市の一番にぎやかな、地価の高い所になるのであります。ところが、そういう繁華になるべき運命を持
つた土地が、軍用地にな
つておりまして、町の中心は連隊を離れて北の方にあるのであります。それで非常に不自然な状態にあ
つたわけでありますが、それが終戰によ
つて開放された。その土地は、ほう
つておけばいい値になるのぱ明らかであります。ところが、いろいろな
関係もあ
つたと思いますが、非常に大きな面積を、ここにございますように学校用地とか病院とかに御処分にな
つて、残
つた土地が実は一番いい所だ
つたのであります。駅のすぐまん前であります。それが初めの三行に出ております約三千七百坪ばかりの土地でございます。これは百六十円、二百八十円ないし三百十五円で売
つた。特に安いのは、先ほど
お話がありましたように、いろいろながけみたいな所がありましたし、コンクリートの工作物があ
つたりしまして、整地費を引いております。そういうものを引かないでも三百十円前後でございます。秋田でもおそらく一番繁華な商店街になるだろうと予想されるのが約三千坪、これを二十二年の末から話がありまして、実際の契約を結んだのは一月であります。これを三百円足らずで売
つてしまうというのは安いのじやないか、ところが尺度が一体幾らがいいかということになりますと、これも実はむずかしい。私
ども資料の集め方がまずか
つたせいもございますが、ここに書いてあるところには、
一つ一つ今にな
つて検討してみますと、ぐあいが惡いところも非常にございます。大勢から見ますと非常に安過ぎた、これを裏書きする
資料が、実は
あとでわか
つたのであります。これを批難するときにはわからなか
つたのでありますが、二十三年の売買実例があるのであります。これが約半年前であります。その売拂
つた時にば、これは火災保險の会社が買
つたのでありまして、地積はこんなに三千坪などという大きなものじやありません。これが六十級の土地でありまして、ここの隣の土地は五十六級という評定がしてありますが、それより少しいいのであります。そこを坪当り千四百四十円で火災保險が買
つた、こういう例が
あとでわか
つたのであります。すなわち地位は少しよろしいのであります。それから時期も違うのであります。地位をここの五十六級に直し、時期をずらして、この千四百四十円と同じ計算でもし買
つたとすれば、千八百三十六円になるであります。それを三百円前後の値段で売
つてしま
つた、こういうことになるのでありまして、私
どもは実はこの売買実例は最近にな
つて知
つたのでありますが、本件の批難は、それを一々つつついて参りますと、この
案件はどれでもそうでありますが、書いてあるごとくに、反対しようとすると、土地の批難というのは幾らでも反対できるのであります。ここに書いてあることも、つつついて参りますと、いろいろなぼろが出て参りますが、大局からごらん願いますと、今のような
資料も出て参りましたので、私
どもは三百円前後というのは少し安過ぎたのではないかという
考えは現在もかわ
つておりません。
それからもう
一つ、これも公務員宿舎の買收実例であります。公務員宿舎の用地としてもつとずつと町のはずれの方を買收したのであります。本件の批難に引合いに出している近所の土地は五十六級でありまして、賃貸価格は三円六十銭であります。公務員宿舎として買收いたしましたところは三十七級で坪五十銭、結局賃貸価格が六分の一程度の悪い土地でありますが、それを
政府は千円で買收しておるのであります。それを買いましたのは二十五年三月であります。時期もずつとおそくな
つておりますから、一概にこれも比較にはならないのでありますが、等級を五十六級に直し、それから時期をずつと前にずらせて計算いたしますと、これが千七百五十円になるのであります。時期をずつと前へずらせまして、等級を直しました仮定の計算でありますから、一概にこれで買えとか売れということは言
つておりません。しかしながら、三百円前後の売拂い値段が高か
つたか安か
つたかという、
一つの判定の
資料にはなるのであります。この
資料で計算してみますと、千七百五十円になる。
政府が買收した公務員宿舎の千円という土地から逆算するなら、そうなります。それから実際に本件の土地を売り拂う半年ばかり前の秋田の民間の売買実例というものを引直してみますと、千八百三十六円、千七百五十円と千八百三十六円で、偶然の符合かもしれませんが、そうえらい差がないのであります。この前の
資料と
あとの実例、こういうのを寄せて参りますと、こういう結果が出て参ります。これを三百円見当で処分なさ
つたわけであります。それに対して
政府は、いやちつとも安くないのだ、こう言
つておられるのでありますが、どうも私
どもは、まだこの点に異存を持
つておりますし、この批難は、何べんも申し上げております
通り、書き方がまことにまずいのでありますが、全体としては、私
どもの批難は間違いなか
つたのではないか、こう
考えておる次第であります。
それから三一四であります。これは岩壁つきの土地であります。御
承知かと思いますが、宮崎県の延岡のはずれの土々呂でありますが、ここには元曉部隊いいました船舶工兵部隊がありました。船舶工兵ですから、いろいろ船の施設を持
つておるわけでありますが、これが終戰によ
つて開放されたわけです。私
ども検査に参りましたときに、岸壁をつけないで、土地の値段だけで売
つているのを見つけまして、それがこの
案件の発端に
なつた次第であります。その点を
調べますと、土地の値段だけとしては少し安い、いわんや岸壁をつけた値段としては著しく安いというので、特に延岡の市役所、それから勧銀の鑑定をお願いをしたのでありますが、その結果によりますと、
検査に参りました者の見方が正しいのであります。それを熊本財務局では坪当り三十六円、総額二十六万五千円で売り拂ておるりのであります。勧銀は岸壁と土地とを別々に評価いたしました。土地は二十九万九千円、財務局が岩壁つきでお売りに
なつた二十六万五千円よりも、土地だけでも高いのであります。それから岸壁は別に三十六万円、こういう評価をして回答をくだす
つたのであります。その結果ここにあげたのでありますが、先ほど
当局から連隊ができますときに寄付と強制買收によ
つたものだ、こういう
お話がありました。これも私
ども調べがと
つてございます。これは
昭和八年に三千四百坪、地元民が寄付したのであります。それから十六年に五百坪ばかり軍が買收いたしまして、四千坪ばかりのところに、さらに軍が三千四、五百坪埋立てしたのであります。その埋立てをしたところに実は岸壁をつく
つた、その埋立てたところを大体売
つたようであります。そうして土地は全体ですが、岸壁は
あとからつく
つたものでございますから、その辺も御了察の上で御判断願いたいと思います。