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1951-02-05 第10回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月五日(月曜日)     午後二時七分開議  出席委員    委員長代理理事 三宅 則義君    理事 金光 義邦君 理事 渕  通義君    理事 八百板 正君       大上  司君    高塩 三郎君       田中不破三君    山口六郎次君       畠山 重勇君    井之口政雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  吉田 晴二君         国税庁長官   高橋  衞君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      忠  佐市君         会計検査院事務         官         (検査第一局         長)      小林 義男君         会計検査院事務         官         (検査第四局         長)      小峰 保榮君         專  門  員 大久保忠文君         專  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計歳入歳出決算昭和二  十三年度特別会計歳入歳出決算  理事会申合せ事項報告に関する件     —————————————
  2. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 これより本日の決算委員会を開会いたします。  委員長はやむを得ぬ事情のため御出席になれませんので、理事の私が委員長職務代行の委託を受けましたから、私が委員長代理を行います。何とぞよろしくお願いいたします。  この際、一昨三日、決算委員会理事会を開きまして協議決定いたしました事項につきまして、御説明いたしたいと存じます。去る二日の委員会の席上、大蔵省政府委員中、当日審議予定所管に属し、当該説明に当るべき関係政府委員の御出席なきため、議事の進行に支障を来し、散会のやむなきに至つた事実は、すでに御承知通りであります。委員長及び理事の間で協議の結果、右は国会法第七十一條の趣旨にもどるばかりでなく、国会及び本委員会を軽視するものと認められましたので、将来このようなことのないよう、大蔵当局に対し、議長から嚴重に適当な措置をとられたいとの要望書議長あて提出することに、理事会決定を見た次第でございます。よつて委員長は、同日ただちに事務総長を通じて議長へ提出し、議長から大蔵大臣に通告したのでございます。右御報告いたします。  この際政府の発言を許します。
  3. 忠佐市

    忠説明員 先日の会議の際におきましては、連絡が徹底いたしませんために、出席が遅れましたり、それから局長の御出席が、他の委員会と重なりまして、不可能になつたような事情がございまして、はなはだ申訳ない次第でございます。本日も主税局長が、再評価審議会を開催することに、すでに予定がございまして、その会議の主催をいたす関係がございましたので、とりあえず私代理として出席させていただきました次第でございますが、向うの会議の済み次第、こちらにお伺いいたす予定になつておりますので、あしからず御了承願いたいと思います。
  4. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 ただいま忠調査課長からお話になりましたが、さらに本委員会におきましては、主税局長平田敬一郎君並びに国税庁長官高橋衛君、両君の御出席を求めておりますから、御出席なさることと存じます。  なお大蔵当局委員長からお願いいたしますが、なるべく委員会には都合をつけられまして、早く御出席願つて審議の便をはかられんことを特にこの際申し上げておきます。     —————————————
  5. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 ただいまから、昭和二十三年度一般会計歳入歳出決算昭和二十三年度特別会計歳入歳出決算を議題とし、審議を進めます。  まず検査報告書五十ページ、大蔵省所管一般会計歳入番号六〇ないし二三五、取扱の過誤に因り租税徴收過不足をきたしたもの——事項に関し、当局より一括して説明を願います。忠調査課長
  6. 忠佐市

    忠説明員 会計検査院より御指摘に相なりました六〇号ないし二三五号の問題につきましては、お手元に参つております政府説明書に記載いたしておりまする通り会計検査院指摘通り徴税上の不手ぎわでありまして、はなはだこの点は申訳ないと存じております。従いまして会計検査院より御指摘のありました事項につきましては、ただちに徴税を是正する措置を講じまして、昭和二十二年度、二十三年度及び二十四年度にわたりまして、この問題をそれぞれ適当な徴税に引きもどすというような行政措置を講じた次第でございます。  内容といたしましては、法令の解釈上疑義がありまして、大蔵省会計検査院との間に見解の相違を来したというような案件は、一件もございません。徴税上相当の注意を拂い、熟練いたしました職員がその衝に当りましたならば、おそらくその過誤は防ぎ得たであろうと思われる案件が、ほとんど全部でございます。かような状況に立ち至りました理由といたしましては、一つは、終戰後租税收入によつて国家の財政を立て直す必要が非常に大きくなりまして、納税者の数も相当増大するというような税制の改正がございました。それに伴いますところの税務職員の手不足が叫ばれまして、採用いたしました職員が、いずれも年少の経験に浅い職員でございまして、それがために職務の能率が非常に劣り、あるいは判断が、少くとも円満な常識を備えた年配者のそれの及びもつかなかつたという点でございます。これが第一点だと思います。  それからもう一点は、徴收費が割合に少うございまして、円滑な事務運営が阻害されたという点が第二点でありうと思います。  それからもう一つの点は、当時労働攻勢が非常にはげしくなつて参りまと、官公庁労働運動といたしましても、画期的な発展を遂げた時代でありまして、職員の統率上非常に苦労をいたした時代でございます。このような関係がございまして、秩序立ちました現在におきますならば、相当防ぎ得たような事態が、その当時の混乱に伴いまして非常に増大いたしておるのではないか、私どもさように考えておる次第であります。しかし過去の弁解はいくら申し上げましても元にもどりません。従いまして、その後税務行政改善につきましては、まず昭和二十四年七月に国税庁大蔵省の外局として独立せしめ、これによりまして、行政運営全国的に、統一的に指導する体制が整いまして、その後税務行政運営に関する各般の改善施策を着々立案し、実行いたしておるような次第でございまして、その後は、昭和二十三年に見られましたような欠陷は、ほとんどその根源が失われておるように考えられる次第であります。  以上の通りでございまして、会計検査院から御指摘になりましたことについては、非常に責任を感じておるような次第でございます。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 ただいま大蔵主税局忠課長から説明がありましたが、次に本事項に関しまして会計検査院側説明を承りたいと思います。
  8. 小林義男

    小林会計検査院説明員 本件に関しましては、前会大体概要の御説明を申し上げたわけでございますが、なおここで申し上げますか。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 簡單でよろしゆうございます。
  10. 小林義男

    小林会計検査院説明員 ここに掲げてありまする六〇から二三五までの問題は、租税徴收過不足を来したものでありまして、いずれも是正されております。こういうふうに問題が出ますのは、各税間の連絡調査税務署間の資料の通報、各種課税資料の活用のことにつきまして、まだ十分でないという結果でございまして、なお将来改善の余地があると考えられる次第でございます。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 今会計検査院の御説明がありましたが、あと国税庁長官が参りますから、来ましたら国税庁長官にも御質問を許します。質疑はありませんか。
  12. 井之口政雄

    井之口委員 ただいま会計検査院の方は「過不足」と言われましたけれども、「過」の方はほとんどなくて「不足」ばかりが出ておるようであります。この不足の額が、会計検査院ちよつと調べただけでもこうした厖大なものに及んでおるというのを見ますと、まつたく驚き入つたものであります。これに対する政府側説明は、その当時労働攻勢が強かつたために、こういう現象になつたというようなことも言つておられたようであるが、しかしあの時分は、むしろ民主主義気風が非常に盛んでありまして、こうした大口納税者に対しては、むしろ税務署における勤務員方々は、これをとることに熱心であり、かえつて署長の方が、むしろそういうふうなものはとらない方針で、民主的な運動を押えた傾向が、あの時分に見られております。これは大阪国税局においても、当時の組合長なんかの声明を見てもわかるところでありまして、これをその時分運動に帰するということに対しては、どうも当らぬと思う。むしろこれは監督の不行届きで、こうした五十万円以上の不足分、またはそれに近いような不足分の、大口徴税政府において粗漏にしたという結論になりはせぬかと思う次第であります。不足分でさえこれくらいあるとすれば、いわんや徴税漏れの点などにつきましては、幾らあるかわからぬということが、われわれは推察されるのでありますが、会計検査院の方において、徴税漏れの点に対するところのお調べはあつたのでございましようかどうか。そういうふうなものが一つもこの検査の中に出ていないということを、ふしぎに考える次第であります。
  13. 小林義男

    小林会計検査院説明員 ただいまの御質問でございまするが、会計検査院は、租税歳入済み決算になりまして、一応確定したと当局者の方でなされていますものについて、実地検査なり、書面検査なりをしておるわけであります。それで実地検査は、大体全国税務署の半分くらいを一年間に実施しております。そういうことでありまして、その間会計検査院において資料を用意し、その資料決定内容と対査する、あるいは税務署ですでに決定されましたその書面についてなお検査を続けて、その結果徴收不足があるというもの、場合によりましては、このしまいの方にありまするように徴收過になつておるものもあります。そこでこのほかにまだ非常にたくさん徴收していない、脱漏しているものがありはせぬか、こういう点の御質問がおもだつたと存じまするが、そういうふうにして検査いたしました結果のものは、すべてここへ載せてあるのでございまして、われわれの検査の足りないところがもしありとすれば別でありまするが、検査の結果を全部ここに掲げてあるわけであります。
  14. 井之口政雄

    井之口委員 こうした徴税脱漏をやつた係官に対して、大体どういう処置がとられておりますか。
  15. 忠佐市

    忠説明員 会計検査院指摘事項につきましては、昭和二十三年度分につきましては、国税庁発足後、国税庁長官から国税局長に嚴達を下しまして、その国税局長当該税務署長及び関係官に対して嚴重戒告を発しておる次第でございます。なおこのような戒告勤務成績に影響いたしまして、その税務職員の将来の昇任等につきまして、影響を及ぼす、まあこういうような行政的な措置を講じておるような次第でございます。
  16. 井之口政雄

    井之口委員 それでは納税者とからまる不正事件というものは、これらに列挙されておりまする中には起つておりませんですか。  それからこれらの徴收不足に対して、即刻これは徴收になつておりますか、あるいはそれを徴收する場合の滯納金というふうなものはどうなつているのか。
  17. 忠佐市

    忠説明員 第一の点は、このような徴收不足について、不正事件のようなものがないかどうかというお尋ね考えられますが、この案件に関しましては、私ども聞いておりません次第でございます。  それから徴收上の措置でございますが、徴收不足の点につきましては、更正決定、あるいは納税告知等をいたしまして、政府の債権として当該金額を納むべしという徴税令書納税者に出しております。但し、その徴税令書を発しました税額が、全部入つておるというわけには参りませんで、一部滯納となつてつておるものがございます。その金額につきましては、ただいま手元資料がございませんですが、以上のような経過をとつておりまして、滯納につきましては、できるだけ早く国庫に收入済みになるように努力をいたしておる次第でございます。
  18. 井之口政雄

    井之口委員 確実なところでなくても、概算何割ぐらい徴收になつておりますか。  それからそういうものを遅れて納付しているのですから、それに対する追徴税のようなものといつておるのですか。
  19. 忠佐市

    忠説明員 後段のお尋ねの利子に相当いたします加算税、これはもちろんそれぞれ徴收の手続を進めております。それでどの程度收入いたしたかということにつきましては、まだ確たる数字は持つておりませんし、概算といたしましてもちよつと推定困難でございまするので、いずれ調査いたしまして御報告申し上げたいと考えます。
  20. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 ただいま国税庁長官を呼んでおりまするから、来ましたらば、国税庁長官からも説明をさせます。国税庁長官が来ましたらまた繰返して説明させますが、国税庁長官が参りますまで、次の報告書六十三ページ、批難番号二三六ないし二七四及び昭和二十二年度決算検査報告書七十ページ、批難番号一八九ないし一九二、源泉徴收所得税等の未拂込に対する徴收処置当を得ないもの——事項に関しまして当局から一括御説明を願います。
  21. 忠佐市

    忠説明員 この問題につきましても、説明書に書き上げてありまする通り会計検査院指摘のごとく、法律で定まりました納期に納むべき源泉徴收所得税などが、その法定の期限までに納まらなかつた事件でございまして、いずれも前の徴收過不足を来したものと同様に、あと納税令書を交付いたしまして、追徴の方法を講じておりますが、この方は大体において收納済みとなつておるという状況でございます。  なおこのような事態が発生いたしましたおもなる理由といたしましては、その当時の企業方面における金繰りの困難からいたしまして、給與支拂いまするが税引き支拂う、その際に金融機関等よりいたしまする金繰り税引き額といたしまして、税の分は金融機関の融資を仰ぐことができない、こういうような事情もございまして、若干遅れておつた、それを税務当局といたしますれば、法規に反する措置であるということで、強行に徴税を進めるべきであつたと思いまするが、やはり先ほども申し上げましたような社会経済上の非常な困難性が、それを行政的に躊躇せしめたという事情が現われているのかと思います。このような関係も、経済の秩序が回復するに伴いまして、現在はそのような傾向がなくなつております。大体の事情を申し上げますれば、以上のように考えられる次第でございます。
  22. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 右、本事項に関する会計検査院側の御意見を聽取いたします。小林会計検査院第一局長
  23. 小林義男

    小林会計検査院説明員 源泉徴收所得税につきましては、当時金融事情等もありまして、納付が遅滯する傾向にございました。これに対しては、所得税法規定するところに従いまして、徴收義務者から、すなわち会社等から遅滯なく徴收すべきものでありまするのに、税務署におきまする事務整理が不十分などのため、遅延しているものがあるのでありまして、こういうものに対しては、処理の促進をする必要があると考えるわけであります。
  24. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 質疑はございませんか。
  25. 田中不破三

    田中(不)委員 先ほどの案件といい、ただいまの案件といい、いずれも徴税関係処置がよろしきを得ていないという多数の案件が出て来ておるわけであります。先ほど忠調査課長からもお話のありました通り、これには、もとよりいろいろの原因があつたようであります。人不足だとか、教育訓練が十分でなかつたとか、あるいはつけ加えられたのには、労働攻勢といいますか、そういうものもありましたろうししますが、現実の問額として、実際に徴收額決定される、そのこと自体が、そういうふうないろいろな点もありましたろうが、その時の実情から見て、非常に無理が行つてつたのではないか。従つて、もとより法規上をいいまするか、あるいは検査院でお調べなつたりした結果、成規のといいますか、ごく嚴格に解したならば、これこれの額を徴收しなければならないというふうな考えが出ましたものの、実際はそのときのそれぞれの営業状態なり、あるいはその他の点から見て、非常な無理な決定をしておられたのではないかという疑念を持つわけであります。これは過般各税務署お尋ねしましたときの模様を聞きましても、そのときに非常に、つまり一般側からいいますると、徴税攻勢といいますか、税金攻勢といいますか、この気風にあおられた結果、税務署としての考え方が非常に嚴格といいますか、峻烈になり過ぎておつたという点があつて、一方にはその考えに対抗して、おのずから納税を怠るということがあたりまえのような風潮をかもし出しておつたのではないかということが、考えられるのでありますが、この点について調査課長なり、あるいは検査院の第一局長なりが実際にお調べなつたときに、どういう考えを持つておられたかということを、お伺いしたいのであります。ことに近畿地方つまり京阪神付近を見ますると、御承知のように非常に予想を越えるような滯納額を示しております。それで……。
  26. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 国税庁長官高橋衛君がお出席になられましたから、もう一度わかりやすく御説明願いまして、長官から答弁いたさせます。
  27. 田中不破三

    田中(不)委員 もう一度繰り返しますが、税金徴收につきまして、非常なる不足を生じておるという多数の案件であります。これにつきまして、私の今まで申し上げましたことを、ごく概略申し上げまするならば、そのときの情勢から見て、これは徴税側の方に、それを決定するのに非常な無理があつたのではないか。つまりその当時はいわゆる税金攻勢というものの風潮が起りかけておつたときといいますか、大分熾烈になつたときであります。従つて納税者の方におきましては、その徴税風潮にむしろ反抗するような気持で滯納をしておつた。それが当然のことであるというふうに考えられた結果の滯納が、一般民間に非常に多かつたではないか、こういうことが考えられるのであります。これは過般各税務署をたずねましたときに、それぞれ税務当局なり、あるいは一般事業者なりから伺つたのであります。従つて今かりにここに載つておりまするものが、成規の計算から行つて、これこれの額を納めなくてはならないのだ、従つてこれこれの徴收不足になつているとは申しますものの、あまりに規定嚴格にたよりすぎた結果、そういうふうな納税額をもつど多くしなくちやならぬというふうな考え方で、勢い不足分が生じているのではないかというふうな点がうかがわれたようであります。しかしこれは規則に従つての御査定でありますから、事実上は無理がなかつた、実際の規定上からは、当然であつたかもしれませんが、しかし滯納風潮というものは、そういう点から起つて来ているのではないかということを、まず第一にお伺いしたい。
  28. 高橋衞

    高橋政府委員 ただいまの御質問は、現在非常に厖大滯納が累積して参つておるのでありますが、その滯納を生じた原因が、実際その人の所得なり、または課税標準決定にあたりまして、その決定の仕方が当を得ていなかつたといろ点に、原因があるのじやないかという御質問つたと存じますが、御指摘のような点は、過去特に終戰直後におきましては相当あつたと、率直に申し上げざるを得ないかと思うのであります。御承知通りに、終戰後一般経済界も非常に混乱しておりまするし、また終戰前と比較いたしまして、申告所得税のみにつきましても、一挙に十八倍かの納税人員がふえておるような状況であります。従つて税務当局といたしましては、急速に税務職員を充足いたしたのでありますけれども、その当時の官吏給與の水準が非常に低いというふうな状況からいたしまして、やむを得ず、ほんとうに適任であるという人を嚴重に選考して入れるというような余裕を持ち得なかつたのであります。従いまして、現在の年齢構成におきましても、なおかつ、いまだに平均年齢が二十五歳であるというふうな状況によつておわかりになります通りに、私どもとしては、その点について十分な調査をなし得なかつた。また特に、その当時インフレを阻止するために、非常に急速に税收をあげなければならぬという絶対的な要請もありました関係上、そういうふうな十分でない調査であつたにもかかわらず、一方において徴收は非常に急速を要したというふうな関係もございまして、多数の滯納の件数の中には、そういうふうな理由によるものも、ある程度あろうかと考えておるのであります。その後、滯納整理につきましては、一件々々につきまして、その滯納の起つた事情なり、またはその後のその人の資力状態なり、いろいろと調査をいたしまして、逐次整理を進めて参つたのでありますが、しかしながら、何分にもその当時にできました滯納税額が、非常に厖大であるということ、並びに税務官吏の充実ということ、または教育訓練という面も、なかなか一日にしてならないというふうな事柄もございまして、また一方におきましては、その当時年々実は税法根本的な改正があつたのでありまして、税務官吏すら、その税法について十分に通曉するということが楽ではないというふうな状況にありました関係からいたしまして、なお今日千億に近いところの滯納を残しておるような実情であります。しかしながら今後におきましては、ちようど昭和二十五年度から税法改正になりまして、相当減税にも相なりましたし、また一方対象であるところの経済状態も、大体安定の状況になつて参りました。税務官吏側におきましても、年一年と訓練を積んで参りましたし、また二十五年度からは、取引高税の廃止とか、その他の事柄によりまして、ある程度余裕も生じて参りましたので、今後は根本はやはり賦課の適正ということにあるのでありまするから、賦課の適正のためには、どうしても調査を十分に充実するということが根本に相なるのであります。またその充実された調査に基きまして、十分に納税者の御理解を得て、納得して申告をしていただく。反面からいいまするならば、今までのように大量の更正決定をするということではなしに、ほとんど大部分の人については、ぜひひとつ税務署が是認できるところのりつぱな申告を出していただくという方向に進みたいと考えまして、今年度におきましては、申告時期も一箇月延ばしまするし、またその他各種方策も講じまして、たとえば所得税確定申告書等につきましても、今までとは全然趣を異にしました。簡單に申し上げますならば、法律條文を羅列したような申告書でなしに、どなたがお読みになつても、その字句によつて大体おわかりになれるというふうな簡易な申告書に様式を改めました。そういうふうなこと、並びに申告についてのいろいろな指導について十分に配慮するということによりまして、今年度は何とかしてりつぱな申告が出るというふうにいたしたいと、ただいま非常な努力を傾注している次第であります。また過去の滯納によるものにつきましては、昨年来一部実験的にやつて参りましたが——ちよつと外国語使つてはなはだ恐縮でありますけれども、インターナル・コントロール・システムという新しい方式を採用して参りました。すでに全国にわたつて三十二の税務署に実験的に行つておりますが、これを新年度からは全国的に適用いたしまして、そうして個々納税者個々事件について一々事情を十分にお聞ききして、滯納者の分類をいたしまして、ほんとうに気の毒な方々等につきましては、これを別な法律的な規定によつて——これは別途に提案をいたしまして御審議をお願いしたいと考えておる問題でありますが、そういうふうな方法によつて根本的な解決方策を講じて行きたい。しかしながらこの滯納の問題は、たとえば一時に棒引きするというようなことをいたしますると、正直に納めた方との間に、非常に不公平な問題が生じますので、そういういいかげんな切捨て方は絶対に避けて、どこまでも着実に、実情を十分にながめながら、具体的な、ほんとうに適正な解決の方向に向つて、相当時間をかけて努力して行きたい、そういうふうに考えている次第であります。
  29. 田中不破三

    田中(不)委員 賦課の適正化、それから徴税方法の緩和といいますか、そういう点についてだんだんに考慮をめぐらしていただいておることにつきましては、まことにけつこうなことでありまして、過般の大蔵大臣の演説、あるいはその他各場所における談話等によつてうかがい知るのでありまして、そういうことによりまして、今後は大分よくなるかと思いますが、今までの例を見ますると、どうも徴税について御当局のやられることが少し手きびし過ぎる、これは一般的にそういうふうな考えを持つておるのであります。一例をあげますれば、ある事業会社を一齊に検査するというふうなときに、もちろん何らの前ぶれがあるわけではない、しかもその検査について行かれる方々は、一体どこに行くかわからない、隊長さんというか、団長さんというか、一人だけ知つておられる。その事業会社に行つてつてもまだわからない、これはどこに来たかというので、その事業会社の事務員に、これはどこだと聞くと、これはどこどこの会社であるというので、初めてわかつた、ついて来られた方がだれ一人として知らなかつた。そうしてついて来られた方あるいはその班長さんというものが事務員に向つて、君たちはぼくたちがここへ来るのを知つてつたかと一々尋ねて、知らないと言つたので、非常に満足されたということであります。そうしてそれぞれ婦人のハンドバツク、またポケツトなどを一々こまかに点検したり、机からは離れさせないというような案件があつたように聞いておるのであります。もちろんこれも御当局徴税に対する熱烈なる決意から、あるいはやむを得ないかとも思いますけれども、しかしそういうようなことは、いかにも国民全体に対して思想的におもしろくない。われわれがいなかに帰りましても、いなかに珍しく洋服を着て行きますと、そらまた税務官吏が来たのではないかということで、その村の出はずれに待つておる連中が伝える。うつかりするとなぐられるかもしれないという考えをわれわれ持ちながら各戸にあいさつまわりするということが、現実にあります。そういうようなわけで、徴税の熱心なのはまことにけつこうでありますが——それでもそういう不足が残つておるではないかと、逆におつしやるかもしれませんが、そういうふうに緩急よろしきを得なければいかぬ。あまり極端なやり方というものは、かえつて税金に対する国民の反感をそそる、従つて先ほどもちつと触れましたように、滯納するのはあたりまえだという大きな気持で、おれも滯納しておる、おれも滯納しておるということを事業会社で言つておる人があるわけであります。そういうことでは、これは国民の大きな義務を果すというところまで参らないわけでありますから、この点については、十分の御注意を願いたいと思うのであります。先ほども長官お話で、だんだんに緩和されておるとは言いましたものの、今申しましたような事例が出ております。この点について、今後どういうふうにお考えになつておりますか、伺いたい。
  30. 高橋衞

    高橋政府委員 税務行政全般につきまして、私どもは特に口をつくして税務官吏に訓示しておりますことは、何とかして善良な正直な納税者を見つけ出して、そういう人を尊重するように努力しなければならぬ。そうしてそういう層を育成し、多くして行き、納税者政府との間の相互信頼を高める、そういうことによつてなごやかな円滑な税務行政をやつて行きたいということを常に申しております。しかしながら同時に、いかに真に民主主義の進んだ国におきましても、犯罪者は必ず存在しておるのであります。しかして、犯罪者に対してはその信頼にそむくものとして、最も的確な執行を行わなければ、税の公正は保たれないものと考えるのであります。ただいま田中委員のお示しになりました事件は、おそらく査察に関する問題であると考えるのであります。査察関係の問題につきましては、査察は元来が当該の納税者を犯罪容疑者として捜査をする性質のものであります。過去一箇年におきして、大体全国で約一千件査察をしておるかと思うのであります。全体の納税義務者の数は、申告納税義務者につきましても二十四年度におきましては八百万人を越えておるのであります。また法人につきましては二十四、五万を越えておるのであります。そういうふうな多数の納税者のうち、わずかに一千件が査察の対象となつたものであります。しかしながら御指摘のように、従来は査察をやるにいたしましても、その査察について、どつちかと申しますと、十分に準備が足りなかつたというふうな点もございました。従つて着手した後において、その案件が相当長引く。たとえば途中において、これはそれほど惡質のものでないという場合におきましても、なかなか結末をつけ得ないというふうな事例もあつたのであります。そういうふうな点は、私ども非常に遺憾とするところでありますので、昨年以来この方針を相当変更いたしまして、事前に十分に資料を收集し、準備をいたしまして、着手したならば、すみやかにこれを解決し、結論を出す、しかして途中におきましても、これが査察に値しないという事件である場合におきましては、これは調査課にすぐ移管するというふうにいたすようにいたしたのであります。反面において、調査課または税務署において調査する事件においても、調査の途中において、これが脱税事件である、相当に惡質なものであるということが判明いたしました場合においては、その場において査察に引継ぐというふうにいたしたい、そう考えておるのであります。そういうふうなことにいたしまして、現実に脱税している方について、そういう強行手段をとられることは、これはやむを得ない事柄であると考えます。しかしながら、誤つてそういうふうな査察を受ける、しかしてまたそのためにいろいろ御迷惑を及ぼすということは、でき得る限りこれを避けるという方向にぜひ持つて行きたいと考えております。
  31. 田中不破三

    田中(不)委員 今お話通りでありまして、非常に長引く、帳簿はそのまま使用することができない。それぞれの事業会社は日々時々活動をいたしておりますが、これが依然として、使用することができない、事業活動ができないという例があるわけでありまして、この点について、今できるだけ事前調査を十分にして、査察が済めば、ただちに事業活動ができるようにしようというお考えはごもつともでありまして、ぜひそういうふうに長官の御意思通りに、管下の職員が活動するようにやつてもらわなくてはならないのであります。相当に日数がたちまちまして、全国に支店を持つておるとか、あるいは大きな販路を持つておるとかいうところの事業会社が、そそのまま帳簿の記入も何もできないというふうなことでは、これはかえつて徴税の熱心さが、逆に日本の生産活動を阻害するという点が出て来るわけでありますから、この点については今長官の話されました通りに、十分意思が徹底するように、つまり準備を十分にして、ほんとうに、査察が終ればそのまますぐ活動が開始されるというふうなことに、進んでいただきたいと思つておるのであります。  なお一方、これもやはり徴税関係で、やはり徴税から来まするところの差押えというふうなものについても、十分に考慮をしてもらわなくてはならない。いろいろとつまらぬ例を出しても、しようがないのでありますけれども、ごく小さな小学校の子供が勉強しておる机までが差押えられる。二間なり一間なりのごく小さなうちで勉強しておる、そこには家財道具もほとんどないものだから、そういう今申しましたようなことが、熱心さのあまり勢いやれる。これはやはりどうも人情という点から見まして、まことに度を越しておるのではないか。もちろん納税義務を怠つている点から、その対象としていろいろの家財道具を持つて行かれるという点については、やむを得ないのであります。また税務署におかれましても、それぞれ差押え物品の件名を紙に書いて外へ張られる。そのとき書いておられる様子は、まことに気の毒だという表情をしながら書いておられる方も多数見受けますが、一方には今申しましたように、板を打ちつけただけのささやかな八つ、九つの子供の勉強机までを押えて行くというのでは、少し度が過ぎているのではないが。それが税收にほとんど役立たないという点も考えてみますると、度の過ぎた徴税方式というものについては、さらに反省をするものがあるのじやないか。この点についても今後十分の御処置を願いたいと思うのでありますが、長官の御意見はいかがであります。
  32. 高橋衞

    高橋政府委員 差押えをいたします際に、いかなる物品をするかという問題につきましては、そういうふうな品物については、できるだけあとの順位にまわすようにという指示をしておるわけであります。しかして、私どもいろいろ監督いたして行きます上において、実際を見てみますると、実は今までの傾向といたしまして——もちろんただいま田中委員の御指摘になりましたようなケースもあるのでありますが、逆に相当たくさん商品がある、しかしながら、商品を差押えることは、その人の営業にさしつかえるということから、むしろ家財道具の方がその人に気の毒じやないというふうな、また滯納しておられる方も、そういうふうなことを特に希望されるということから、自然家財に重点が移つて行くというふうな傾向も相当顯著であります。しかしながら、これは差押え、公売等の方法によつて滯納整理をして行くという面から見ますると、いささか邪道になりますので、今後は商品その他、つまり家財道具のようなこまかいものを押えるということじやなしに、たとえばある程度その人の営業にさしつかえがありましても、商品その他のものを差押える。そうしてすみやかに換価をして、滯納整理を実効あらしめるという方向に行きたいと考えております。調査してみますと、そういうふうな滯納者の中には、過去一年の間に商品の数量が非常に大きくなり、店の設備が拡充された、工場の設備がよくなつたという例が多々あるのであります。それらは、要するに滯納した税金を金融にまわして、その営業の規模の拡大をはかつている、そう見ざるを得ないのでありまして、これらの方々が、私どもの眼から見れば最も惡質な滯納者である、そう断ぜざるを得ない。従つてそういうふうな方々につきましては、家財道具を押えるという方向じやなしに、むしろ商品を主として押えて行くという方向にぜひ行きたいという考えでもつて、そういうふうな指示をただいまいたしておるところであります。
  33. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 それではひとつ国税庁長官に申し上げておきます。去る二日の日に決算委員会を開催いたしましたが、連絡不十分のために国税庁長官の御出席がなかつたのでありまして、本日わざわざ御出席くださいました。しかし三時に所用があるということですから、また次の七日に御出席願うことにいたします。その前に先ほども忠課長にも申し上げたことでありますが、本委員会決算委員会でありまして、予算と決算とは相関連をいたしまする重大問題でありまるからして、予算が通つてしまえば、あとは野となれ山となれというような観点では、非常にいけないのでありまして、予算が通つたあと、執行をうまくやつておるかどうかということは、本決算委員会においてこれを審議するわけでありますからして、どうか今後とも各政府委員の方にお願い申し上げておきまするが、ぜひ万障繰合せられて御出席を願い、どうか委員質問には適切に、また親切に御答弁を願いたいと思います。特に委員長から申し上げておきまするが、この滯納ということにつきましては、全国民が非常に心配をいたしておるところであります。この滯納に対しましての処理状況、今後の方針等につきまして、国税庁長官から本委員会を通じて全国民に明快に説明せられんことを希望いたします。
  34. 高橋衞

    高橋政府委員 滯納の総額は、昭和二十四年度から二十五年度に繰越しました金額が、総税額で千二百五十八億円と相なつておるのであります。そのうち今日までに処理を終了いたしましたものが六百六十六億円ということに相なつております。ところがそのほかに、新しい年度の分として、新しく滯納になりましたものが相当金額ありまするので、それらのものと差引いたしまして、十二月末現在の滯納税額は九百九十六億円ということに相なつております。件数は十二月末におきまして七百七十万件という件数に相なつております。この滯納のうちには、二十二年度、二十三年度ころからの繰越しのものも相当金額が入つておるのでありますが、こら過年度分のものにつきましては、いま一応既往の実情もよく振り返つてみまして、そうしてほんとう実情に適合したところの滯納整理を推進して行きたいと、こう考えておるのであります。言いかえますれば、この滯納者のうちをいろいろ分類いたしまして、たとえば先ほどちよつと申し上げましたように、相当に所得があり、納税すべき資金があるにもかかわらず、その資金を金融にまわしまして、営業の規模の拡張をするとか、またはその他のことに使つておるというような種類の方、またはなるほど二十三、二十四年度におきましては相当状況がよかつた、ところが二十四年後半から相当に景気がデフレぎみになつてつたというようなことからいたしまして、いわば経済構造が相当に変化して来たということからして、ある種の業種につきましては、所得はあつたけれども二十五年度においては非常に困つておるというふうな状態の方、または滯納者の中で行方不明の方も相当あるのであります。そういうふうないろいろな区分に詳細に分類さいたしまして、そうしてほんとうに惡質な方から順次これを整理して行くという方針をとつておるのであります。そうしてまた、その所得の決定については何ら異存はないけれども、今日非常に困つておるというような方につきましては、差押えをしながら、事実上は分納をして行つていただくというふうな処置をいたしておるのであります。しかしながら、何分にも過去の累積した滯納が非常に厖大でありまするために、現在の陣容をもつてして、これを一時に整理するというようなことは、とうてい不可能な実情にあります。先般のシヤウプの第二次勧告におきましては、昭和二十五年中に全部整理せよ、おそくとも昭和二十五年度中に整理をすることが望ましいという勧告をしておるのでありますが、そういうふうなことは、いかに方法考えてみましても、とうてい不可能であるという結論を出したのであります。しかしながら、これを何とかして整理しなければいかぬということを考えまして、相当の期間をかけて、逐次これを整理して行くという建前をとつたのであります。その方法として、今後とろうとしております方針は、先ほどお話いたしましたインターナル・コントロール・システムというような方法によりまして一件一件詳細に調べ、十分に納税者お話も伺つて、そうして資力のあるもの、または怠つておるものにつきましては相当嚴格徴收処分をして行くということによつて、ここ一、二年の間には少くとも常態に、ほとんど滯納の目立たない程度こ復したいという計画をもつて進んで参つておるのであります。昨年から今年度に繰越しました滯納金額は、先ほど御説明申し上げました通り千二百五十八億円でありますが、今後の予想はなかなか困難でありますけれども、私どもは今年度から来年度に繰延べをするところの滯納は、それよりも少くとも二百億円程度は少くなるようにという期待を持つて、ただいま努力しております。
  35. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 もう一つだけ委員長から申し上げておきます。ただいま高橋国税庁長官が、勇猛果敢にその整理をするということで、まことにけつこうなことであります。ただ私どもの憂うることは、二十二年と三年とにおきましては、税務官吏が、先ほどお話になりました通り経験が足らなかつたり、あるいは熟練でなかつたという意味合いにおいて、非常に高くきめ過ぎたといううらみもあるということは、私も了承しておりますし、また田中委員も御指摘なつ通りであります。こういうようなものに対しましては、政府といたしましては加算税、追徴税はとらぬということを、高橋長官から通告されたわけでありますが、本委員会高橋長官が紳士的にお話になりました点については、どうそ部下の各官庁に至りますまで、今答弁せられたような事柄を示されまして、円滑なる解決をはかられたいということを、特に委員長から要望いたす次第であります。  あと質疑もあることでありますから、簡單にお答え願いたいと思います。こういうふうな事柄は直接各部下の職員に伝えられたいと思いますが、それを伝える用意を持つておられるか、長官の御用意のほどを伺います。
  36. 高橋衞

    高橋政府委員 先般第九国会委員会におきまして、私が追徴税加算税について御答弁をいたしましたことについて、ただいま委員長から申されましたことは正確を欠くように思いますので、あらためて御答弁申し上げておきたいと思います。追徴税につきましては、昭和二十四年の三月三十一日までに終了する事業年度のものについてであります。これについては惡質なものでない限りは追徴税を免除して行きたいということを申し上げたのであります。
  37. 井之口政雄

    井之口委員 法人だけですか。
  38. 高橋衞

    高橋政府委員 個人についても……。個人につきましては、昭和二十三年度分までであります。しかして加算税については、これを免除する規定法律上ありません。従つて税務官吏がそれを免除するという権限がないのであむます。その点はひとつ御了承願いたいと思います。  それから、ただいま申し上げましたような従来の基本方針につきましては、昨年夏以来屡次に十分各機関に徹底するように通牒なり訓示なりを出しておりますので、その点も御了承願います。
  39. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 それでは委員長からさらに申し上げます。今の国税庁長官の御発言によりまして、この委員会並びに大蔵委員会等において応答なされました事柄は、部下の各職員にも徹底するように伝達するという御答弁でありました。これはぜひ実行せられたいと思います。われわれも、ときによりますと、税務署もしくは国税庁に対しまして調査いたしたいと思いますから、その徹底を期せられたいということを申し上げておきます。これは全国民の要望でありますから、ぜひ実行に移されんことをここに重ねて要望いたします。
  40. 井之口政雄

    井之口委員 ただいま追徴税についても免除するということが出ておるようですが、第五回国会以来、私は五十万円以上の滯納者に対する全国的な調査を要求しておるのであります。それだのに、今日に至るまでそれを一つも出してくださらない。せんだつて国政調査調査団員として大阪国税局に参りましたが、向うの方ではできておる。また広島でもできておる。それであるのに、全国的な分を今日まで依然として出してくださらないというのは、どういうわけであるか、この点をお聞きしてみたいと思います。  それから第二番目に、ごく零細なるところの滯納者に対して、異議申請が出て折衝中であるにもかかわらず、実に無理やりな強制執行が行われているところを、われわれはしばしば見るのであります。さつき委員の方からもその点が申されましたが、たとえば八百屋のようなところでは、差押えてすぐ見ている前でその品物を売り拂うというようなことが、東京の深川でも起つておる。全国において、こうした納税悲劇は至るところに起つておるのでありまするが、その事実をわれわれが調べて大々的に持ち込んだ場合には、それに対して政府の方においては、その不当な取扱いをした者を処罰するなり何なり、徹底的にそういうことがないようにする意思があるかどうか、まずこの二つだけお聞きしたいと思います。
  41. 高橋衞

    高橋政府委員 政府といたしましては、委員会から御要求になつ資料につきましては、必ず提出しておるつもりであります。ただいま井之口委員お話の点は、私実は記憶してないのでありますが、これはたしか大蔵委員会の方から御要求がありまして、提出したと考えておるのであります。  第二の点につきましては、もちろんそういうような苛酷なと申しますか、行き過ぎた徴收の強制をすることは、できるだけ避けたいというふうに考えておるのであります。ただ魚屋さん、八百屋さん、菓子屋さんとかいうふうな業態の方々につきましては、実は差押えるべき物品がすぐ腐るものが多いのであります。こういう場合において、昔から国税徴收法上、その場で本人の承諾を得て処分してよろしいという建前に相なつておるのであります。しかしながら、本人の承諾なしに無理やりにそういうことを強行することは、もちろん避けることにいたしたいと考えております。法律の建前といたしましては、もちろん本人の承諾を要する問題ではないのであります。しかしてそれらの滯納整理にあたりまして、相当な非難があるというような場合におきましては、正当な官吏の職権の行使という部分と、はたしてそれが妥当な措置であつたかどうかという点の見きわめという問題につきましては、限界の判断が非常にむずかしい問題でありまするから、具体的に調査してみました上で、はたしてそれが不当であるということであれば、もちろんその官吏に対して適当な処分をすることにやぶさかなものではないのでございます。
  42. 井之口政雄

    井之口委員 ついでですからちよつと伺いたい。源泉徴收所得税の未拂込みに対する徴收処置ですが、この中を見ますと、約二億四千万円というものが給與に対する未拡込みになつております。給與に対する未拂込みとして見ますれば、一応これは会社が労働者並びにいろいろの従業員から徴收したものを納めないということになるので、現実の納税者は納めているのですが、その納めているものを、納税義務者が政府に納めていないのだから、途中において取込んでおるわけだ。それが二億にも達しておるということを、われわれはここで発見するのであります。しかも、この中に今の通産大臣横尾さんの会社の播磨造船も入つておる。四千三百万円、播磨造船外五名としてありますが、相当の額を労働者からとつておきながら、出さなかつたということが出ておる。こういうことは、資本家の方に対しては徴税の手心をしておいて、貧しい小さな所得しかない者にきつい徴税方法をやつているのではなかろうか。いわんやこれを二十五年度にみんな整理するというようなことになつた場合に、こういう方針がとられるとすれば、小さい者には非常にきつく当り、大きい者が相当見のがされることになりはせぬか。これも会計検査院から指摘された分がこれであつて、それを漏れている分は幾らあるかわからないということを、われわれは危惧するのでありますが、どうでしようか。
  43. 高橋衞

    高橋政府委員 昭和二十二年、二十三年は、各会社とも労働争議が相当はなはだしかつた時代であつたのであります。従つて会社の経理が十分に許さないという場合であつても、相当給與を引上げたというふうな事態が多かつたと思うのであります。そういう場合に、会社側が窮余の措置としてとつた方法がこの方法なのであります。すなわち当然税を拂つて給與を拂うべきであるにもかかわらず、税抜きで給與だけを拂つて税金あとまわしにするというようなことが行われたのであります。それらのものが累積してこういうふうな数字になつておるわけであります。決して大きな者をゆるがせにして、小さな者をいじめるという建前から、こういう結果が出ておるのではないのであります。
  44. 三宅則義

    三宅(則)委員長代理 それではちよつと申し上げますが、長官は所用がありまするから、七日の午後一時に、高橋国税庁長官並びに主税局長平田敬一郎両君の出席を要求することにいたしまして、税に関する質疑は本日はこの程度にいたします。  次に、報告書六十七ページ、批難番号二七五ないし三〇八、国有財産の貸付料及び売渡代金の收納処置当を得ないもの——事項に関しまして、当局から一応御説明を伺います。
  45. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 それでは二七五号以下の問題につきまして、概括的に御説明をいたします。  国有財産の貸付料または売拂代金というものは、前納を建前としておるものでありますが、何分にも終戰後の非常な混乱の時期におきまして、厖大な国有財産を一括して政府が引受けたのであります。     〔三宅委員長代理退席、渕委員長代理着席〕 従つてこれが管理につきましては、相当一時に仕事がふえたわけでございます。これらにつきまして、厖大な管理の人員を用意し、十分な経費を使用して管理するということも、一つ方法であるかと思うのでありますが、当時の混乱せる社会情勢から申しまして、また国民生活の安定、あるいは当時の産業経済の復興、教育文化の振興というような緊急施策に即応するために、まずその財産の転活用者にこれを管理させて、同時に貸し付けるといういわゆる一石二鳥の手を打つたわけでございます。これを全般的に見ました場合、そのことが有効であつたということは、われわれも間違いないと思うのでありますが、ただそういうようにいたしまして、財産の管理を転活用者にさせたというために、そこに不拂の際のいろいろな支障が起り、また貸付料の決定に澁滯を来した。つまり国有財産の維持保全という面から非常に全力を傾注しましたために、財政收入の方に多少の不利をこうむつたという結果が起りまして、会計検査院から御指摘のような点が多々あるということは、非常に遺憾と考える次第であります。これにつきましては、その後いろいろと整理を重ねて参つておりますが、何分にも最初の事情がそういう事情でありますので、これが整理期間には相当の時日を要しでおる次第であります。なお最近においても、極力この納入については督促をいたしますが、しかしこれは税のように国税徴收法というようなもので差押え処分をして徴收するという性質のものではないのでありますから、一々これは裁判の判決によりまして徴收するわけでありますが、非常に惡質なものに対しましては、法務府へ取立て方を提訴するという方法を講じまして、処置を進めておるわけであります。一応概活的な御説明を申し上げました。
  46. 渕通義

    ○渕委員長代理 本事項に対し、検査院の意見をお願いいたします。会計検査院小峰第四局長
  47. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 国有財産の検査の結果につきまして、概略御報告申し上げます。  国有財産の現況につきましては、私からは省略いたしますが、会計検査院といたしましても、従来国有財産の検査は、比較的十分には行き届いていなかつたといううらみもあつたのであります。しかしながら、終戰後の旧軍用財産の処理ということは非常に大きな問題でございますし、財政上にも影響するところが大きいわけでありますが、ことに二十三年度におきましては、政府も国有財産を処分して大いに財政收入をあげるということを一つの政策としていた状況でございます。会計検査院といたしましても、従来とかわりまして、国有財産処理の検査ということに一つの大きな重点を置くに至つたわけであります。二十三年度の検査報告に掲げました不当事項、これは六十七ページの末から以下に大分たくさんございます。国有財産に関係する案件を含めますと、ざつと七十件ばかりになつておるのであります。従来は年に十件内外というような実情つたのでありますが、二十三年度になりまして、検査報告で非常にたくさん不当事項が出たわけであります。分類いたしますと、大体において国有財産の貸付料、売渡代金の收納措置が著しく惡いというものがここにたくさんあげてございます。それから国有財産の売渡価格と使用料が低過ぎるというものも相当件数ございます。それからおしまいの方に社寺国有境内地の管理が当を得ないというものもあります。そのほかに財産税收入金特別会計に関するもの等もありまして、結局全体で約七十件がここにあげられたわけであります。  概略の御説明はそのくらいにいたしまして、この表についております收納処置当を得ないものに関連いたしまして御説明いたしますが、財務局における貸付料とか売拂代金の徴收決定済額の收納状況を見ますると、徴收決定済額が二十六億一千五百万円余りになつております。すなわちそれだけ徴收決定をいたしましたが、それに対する收納未済が七億八千八百余万円で、約三〇%というものが徴收決定の中から代金が入らないという実情になつております。今申し上げましたのは徴收決定済額でありまして、そのほかに、実際は国有財産を渡してしまつておる、あるいは貸して使わせておるというのに、代金なり使用料なりが徴收決定の運びに至つていないというものが九千七百余万円もあるという状況であつたのであります。先ほど管財局長からもお話がありましたが、国有財産の貸付料とか売拂代金というものは、税金とは違いまして、物を渡した対価としてとるものであります。また貸付料も同じような性質のものであります。ことに貸付料などは毎年定期に納めさせる、あるいは前納させることを建前としておるのでありますが、そういう建前になつておるにかかわらず、今のような收納未済が非常に多い。またはなはだしいのは徴收決定さえしていないというものもある。こういう状況で、私どもとしては遺憾に考えておる次第であります。この收納未済なり徴收決定未済を会計検査の結果発見いたしまして、当局に直していただいたという案件の中で、大きいもの、すなわち売拂いは一件百万円以上、貸付は一件五十万円以上というものを並べましたのがこの表であります。六十八ページから六十九ページ、七十ページとなつております二七五号以下のものは、貸付料の一件五十万円以上のものを並べたわけであります。これは件数も大分ありまして二十六件、金額にいたしまして七千三十四万円となつております。それから七十一ページの終りから次のページにかけて並べました三〇一号以下は、ものを渡してしまつたが、売渡代金の收納処置が当を得ないというのであります。これは貸付料とは性質も若干異なりますので、百万円以上のものをあげてありまして、大きいものだけで八件、千四百八十七万円ということになつております。  個々案件につきましては、御質問がありましたらお答えすることにいたしまして、一応これで概括的の説明を終ることにいたします。
  48. 渕通義

    ○渕委員長代理 本件に関し質疑を許します。
  49. 田中不破三

    田中(不)委員 国有財産全般のことについてお尋ねしたいのでありますが、ここにあげておりますのは、大体終戰直後関係のものが多いようにも思われます。これは終戰直後の混乱期といいますか、手続の非常に遅れがちな時、あるいは処理の方針のきまりにくかつた時の案件で、いろいろとこういうふうな未收納分も相当あるかとも想像できますが、いずれにいたしましても、この国有財産は全国にわたつて相当に厖大なものを国として持つておる。しかもその用途を見まして、今どういう言葉を使つておりまするか、昔のいわゆる雑種財産式のもの、つまり公共の用とか公の財産になつていないもの、その分類に入らないものというようなもので、国としていらないものを相当になくさんに長年の間にかかえ込んでおられる。しかも国として直接それは必要ではない。しかも一方にはそのために、その付近の市町村の活動、あるいは事業人の活動から見て必要なものを、ただ国の財産であるというので手がつけられないというかつこうになつているものが、相当にありはしないかと思います。もちろんこれは一般の会計に属するもの以外に、あるいは公共団体その他国の所管になつているものがたくさんあるわけでありますが、こういう方面のものについて、日本もちようど戰争以後から新発足したわけでありますから、国の財産の総ざらいをする、そうしていらないものは処分をする。もちろんやつておられるようでありますが、総ざらいをして、そしてその地方の公共団体といいますか、あるいは事業者といいますか、そういうふうなこれを活用しようという方面に思い切つて、昔の言葉でいいますれば拂下げでありますが、とかく国有財産というものは非常に愼重にやられがちであつて、その持つている方面から見ますると、将来何かの計画のときにこれが役に立つのではないか。しかもうつかり処分をすると、今度会計検査院の話になりますが、これの必要が起きたときに、会計検査院から、この必要なものをなぜ売り拂つたかというようなお小言をちようだいしがちなものですから、万全の策をとつて依然として手持ちをしておられる。しかもそれが国家的の役に立つていないというのでは、どうもいけないのであります。これは土地の点がおもなようでありますが、その他の国有財産につきましても、できるだけ早急に日本全国にわたつて処分をして行きたい、こういうふうなお考えをお持ちになりますかどうか。もつとも過般来国有財産の売拂いについては、相当熱意を示されておられたようでありますが、今度は土地その他をむだに遊ばしておかない、日本の国のために役に立てる、活用するという点から、これを売拂い、拂下げをするというふうなお考えはないか、お伺いしたい。
  50. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいま田中委員からのお話の点は、実はわれわれもかねてからそういうふうに考えております。国有財産というものの措置につきましては、財政收入の点も考えるべきでありますが、また一方国民経済的な観点から、なるべくこれを一般の国民の手によつて運営して行くというような方向に持つて行くべきだという観点から、非常にその措置を急いでおるわけでありますが、何分にも従来までの関係を見てみますと、日本経済の全体が、終戰によりまして非常に小さくなつて来た。従つて、戰争中に持つておりました厖大な施設というものは、当時の状況では、一時に経済が縮小したために不必要になつたというのが、実情つたと思うのであります。その関係上、われわれの方で、むしろ使つもらいたいというくらいになりましても、なかなか希望のとろがない。あるいはまたもう一つ非常な障害となりましたものは、その厖大な軍事施設について、いわゆる賠償指定の網がかぶさりまして、司令部方面の許可がないと、その賠償指定のものについては使えない、あるいは売拂いができないというような関係があるわけであります。現在におきましても、この賠償指定の問題は、なおある程度継続しておりまして、使用は許しても売拂いはできないというような状況も、あることはあるのでありますが、最近においては、漸次司令部の方も了解いたしまして、だんだん緩和の趨勢にはあるのであります。また一方、特にこの朝鮮事変以来、各工場施設等の拡張がやや楽になりまして、従来まで眠つておりました施設につきましても、民間側の要望も割合に聞くわけであります。われわれといたしましては、これは非常にいい機会であるから、とにかく早くこの処理をするようにということで、各財務局にはこの旨をよく伝えております。財務局でもこの点については相当熱意を持つて現在進んでおるわけであります。ただ何分にもその厖大な施設になりますと、企業の方でも相当愼重な態度をとられますので、まだその点実際の処理の面につきましては、顯著なものはございません。しかし一応この貸付形式になつておるものにつきましては、最近相当見込みのあるものがございます。たとえば現在話を聞いておりますところでは、愛知県の鳥居松の工廠に苫小牧製紙の工場ができる、あるいは鈴鹿の工廠にある紡績会社の話があるとか、豊川工廠にもある紡績会社の話があるとか、あるいはまた従来ほとんど顧みられなかつた山口の光工廠あたりにも、紡績会社の拡張の話があるというぐあいで、割合にそういう方面の順調な進展が見られるように考えております。
  51. 田中不破三

    田中(不)委員 そこで遊んでおる土地について拂下げなり貸付をして、国民として活用して行くということでやつていただくとしましても、これが実際の手続になりますと、御承知のように数年を要するものが出て来ます。これは、ことに現在は、なおさら年数がかかるのではないかと思います。従来でも土地の貸付、土地の拂下げについては、年数が非常に長くかかつてつたように思います。これらの点について、管財局で大いにそういうふうに国民の用に役立てようという場合に、はたして実際的の処理としてそう迅速にできるかどうか、せつかくそれぞれの用途があつて活用しようとしても、二年とか三年とかかかるようでは、これはまた実情に即さないのでありますが、そういう点がはたして迅速に行くものかどうか。今の機構なり今の人数なり、今の処置の仕方という点から見て、一体可能かどうかということをお聞きしたい。
  52. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、われわれとしては、十分早くやるように考えております。また実際の例を見ましても、普通の案件でありますれば、数年を要するようなものは、そうないのであります。非常に金額の大きなものについては、財務局限りではできませんので、大蔵省にも連絡するということで多少の時間的問題が起りますが、ただ問題になりますのは、やはり先ほど申し上げました賠償指定のものにつきましては、一々これを関係方面に提出して、向うの許可を受けなければならぬという関係がございます。また中にはやはり関係各省の意見を聞いてやらなければならぬ関係もあります。たとえば、われわれの扱つておる事例で非常に長くかかると思つて心配しておりますのは、石油の工場などについては、通産省の方の意見がはつきりきまりませんと、なかなかきまらぬのであります。特にまた関係方面が相当の発言権を持つておる。これらについてはどうも従来から見て参りますと、なかなか関係方面も、また通産省の方も意見がきまらぬ。施設に対する希望者は、相当数あるように見えるのですが、そういうような点で相当長くかかつておるものもあるのであります。普通の案件のものにつきましては、現在の状況でそう長くもかからないように考えております。
  53. 田中不破三

    田中(不)委員 実は相当年数のかかつておるのがあるわけであります。もちろん価格の査定とかその他の点について大分年数を要されるのだろうと思いますが、その点は実例について見ていただきますと、あるいはそういうような案件にぶつかるかとも思います。この点は迅速にしていただいた方がよろしいかと考えるのであります。  そこで、今度は価格の査定の問題でありますが、実際問題として価格の査定は非常にむずかしいようであります。ある土地を売り拂うとか貸しつけるという場合に、土地台帳のようなものを調べられたり、また実際の売拂いの実例を参照にされたり、あるいは土地の賃貸価格を調べられたりというように、綿密にやつておられるようでありますが、しかし時には、ごくまれに、その附近が経済的に見て高くなりそうにないものが、たまたま非常に高く売られた、一方は高く買つたというふうなことがあると、勢いそれがじやまをいたしまして、たとえば五十坪、百坪程度の土地の例が、二千坪、三千坪の例にも、ときに持つて来られて、管財局の方ではお弱りになり、検査院の方では、こういう例があるじやないか、それなのにこんなに安く売り拂うとはどういうことかというような御意見の相違の出る事例を、ときに見受けるのであります。これは検査院の側の立場からしますれば、またごもつともなことで、その辺の土地台帳その他賃貸価格などというものをにらみますし、一方そういうふうな相当経済的な活動から見て、低いものについての案件が、たまたま値段が高かつたというふうな例で、それでもつて二千坪あるいは五千坪なりの土地の批判をされるという点も、どうも少し時宜に適していないのじやないかという気もするものがあるのであります。それでこの価格の査定でありますが、しかも実際に東京の本省なり検査院でのお話のときには、期間がうんとたつております。ことに管財局で価格を御決定になるときは、実はその資料は、さつきも申しましたように、一年も二年も前に現地でそれぞれ値段がきめられたものであります。その後だんだんに値が上つて行く。一年なり一年半なり後で管財局が見られると、少し低いようになる。ことに検査院が見られると、まことにけしからぬじやないかという問題が出て来ます。しかしこれはどちらも無理のない話でありますが、そういうわけで実際に価格を現地で決定して契約をする時と、それからそれが決済になる時と、またそれを検査院がお調べになる時と、というふうに、いろいろと年数といいますか、日にちのずれがある。そういう関係からここに問題に上つているものもあるようであります。それでこの価格の決定はなかなかむずかしいことには相違ありません。こういう点については十分に各関係者間、つまり検査院なり、あるいは管財局関係、あるいは現地の方と十分に連絡をとられてなされば、批難事項というふうな問題として、あるいは不当なりというふうな問題としてここに出ないと思います。この点について従来の経過を見ますと、ややその辺が拔けておるようであります。各人が自分の立場でかつてにやつておられると思う。その結果は、われわれの方にまわつて来ますと、まことに不当なようにも思う。しかしよく聞いてみると、不当でないようにも思われるという点があります。価格の決定については、なかなかむずかしいことがあります。そういうような点で、実際に契約するときの実情をみんなでもつてきちんとにらまれて、かくなるがゆえにこの通りの値段で妥当なんだといつて、累をあとに残さないように、こういう方法をとられるのが必要じやないか、こういうふうに感じたわけであります。その点どういうお考えを持つておられますか、お伺いいたします。
  54. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまお話の価格の点につきましては、非常にわれわれもごもつともだと思うのでありまして、これは見ようによりますと、非常に安いものもあり、高いものもある。ことに売買実例等について見ますと、とにかくこの土地がほしいというようなことになれば、幾らの値段を出してもそれを買うというような場合がありますし、また片一方から申しますれば、縁故関係でどうしても従来の事情からやむを得なかつたというような極端な場合には、非常に安い値段が出る。こういう売買実例というものは、とるものではないというふうに、われわれは考えておるのであります。実際の現地に当りますとその辺の価格の処理はむずかしいように思うのであります。それで二十三年度の報告の中にも、実はいろいろと検査院の方から報告が出ているわけでありますが、われわれといたしましても、実は今になつて考えてみますと、検査院の方に対しているいう御説明するのに、あるいは多少その点が足りなかつたのじやないかというふうな気もいたしますので、そういう点で、あるいは報告の件数が少し多かつたのではないかという感もございます。二十四年度につきましては、十分検査院の方に御説明をして、こういう点についてはよく御了解を願つて、家地についてもよく見ていただくという方向に持つてつた方がいいじやないか。関係方面に、よくそういう問題のあるところについては、十分なる御説明をして、了解していただくというようなことをしてはどうかというふうに考えております。
  55. 井之口政雄

    井之口委員 この貸付料の收納処置当を得ないものの中を見てみますと、またここに例の通産大臣の播磨造船所が出て来ております。約一千九百万の未收納、そのうち二百万円ぐらいしか納めていないということがここに出て来ている。これは品物を借りたものであつて、借りたものに対する料金である。それだのにこういうものでさえも通産大臣が経営しておるところの播磨造船が納めていない。さつきは従業員の勤労所得税をなかなか納めないし、今度はまたこれを納めない。だからここには外二名とかなんとかなつておりますが、一体播磨造船ではどれくらいの額になつているか。さらにここに麻生鉱業のものが約百万円、しかもまだ今日納まつておらぬ。これは例の麻生代議士、吉田総理大臣の婿さんですか、あの方の経営されている会社じやないですか、違いますか、これは二九四号であります。
  56. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 二九四号の麻生鉱業というのは、多分麻生代議士の経営されているものと思いますが、ちよつとはつきりしませんので調査してみます。
  57. 井之口政雄

    井之口委員 それも百万円か納めていない。
  58. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 二九一号麻造船所の点は、これは播磨造船所の広島鉄道局関係、外二名というのは、広島鉄道局三尼ケ崎製鉄という会社で、同じ地区にいる事業者であります。
  59. 井之口政雄

    井之口委員 播磨造船だけで幾らですか。
  60. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 播磨造船所は七百五十四万円まだ滯納しております。
  61. 井之口政雄

    井之口委員 三菱重工業も大分くせが惡い。二九八、それから二八九、二八二、それから二八五、ここであがつておるだけでも四件ありますが、こういうところに対して、貸付料を安く貸し付けた上に、この金を徴收さえもしないというのは、まつた政府のこういう資本家に対するところのお目こぼし主義を現わしたものと思われる。二八五号のごときは、百五十万円からのものに対して、まだ一文も納まつていない。二十二年の十月から二十四年の三月までの貸金に対して、一文も納めていない。この間この徴收を、どうしてこういう怠りがちなことが起るのか、これに対して政府においては返事がありますか。
  62. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 二八五号の三菱重工業神戸造船所に対する貸付は、これはあそこにありますドツクでございます。このドツクの貸付料というものは、非常に異例なものでありまして、このドツクを一体どのくらいに価格を見るか。これは非常に古いドツクでありまして、非常に損傷したものを向うで修繕して使つておりますが、幾らに評定するかということが、非常にむずかしい問題であつたわけであります。そういうわけで、なかなか三菱重工業の方でも納得が行かなかつたというような事情もあるのであります。これは全額すでに納めております。
  63. 井之口政雄

    井之口委員 ただいま評価が非常にむずかしいと言いますが、会計検査院の方では、評価に対してどういうお考えですか。
  64. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 今の神戸のドツクでありますが、これは終戰大分前に貸しつぱなしとでも申しますか、たしかそんな関係で、会計検査院検査する少し前までは、どつちのものということが実は判然としなかつたというふうに私は聞いております。あるいは終戰当時の処分の中には、こんなものも間々あるようでありますし、検査院調べさせまして、徴收というこつにきまつたというふうに、これはしつかりした記憶でないので恐縮でございますが、たしかそういうようなこともあまりはつきりしていなかつたんじやないかと思いますが、これは後ほど調べまして、もし違いましたら後刻訂正いたします。それからドツクはあまりほかに例がありませんので、確かに評価という点になりますと、むずかしいかと思います。
  65. 井之口政雄

    井之口委員 麻生鉱業の分は、内容はどうなつておりますか。これに対して貸付料の点は、会計検査院の方では妥当と思われますか。
  66. 小峰保榮

    ○小峰説明員 これは小倉の造兵廠の機械器具でありまして、鉱山に使うものを貸したものと思いますが、使用料の基本になります評価の点、これは当時の例から見ましても、妥当な金額だということで、許しているわけであります。
  67. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 これは二十四年六月徴收決定済みとしてありますが、二十四年十月二十六日納入済みになつております。
  68. 渕通義

    ○渕委員長代理 他に質疑はありませんか。——では質疑を打切りまして次に移ります。  次に報告書七十二ページの批難事項三〇九、国有財産の使用料が低価に失したもの——本件に関し説明を願います。吉田管財局長
  69. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 この三〇九号は、元呉の第十一海軍航空廠の施設であつたわけでありますが、これを川南工業会社広製作所に使用させたわけであります。ところが、この分の使用料が、先ほどからいろいろ問題になりましたようでありますが、非常に安くないかということでございます。これについては、その会社の使用しております建物、土地の中に、相当全地域にスクラツプその他不要品が山積しておる。それからまた建物については賠償指定物件が非常に入つておりましたために、いろいろな制限がある。それからまた使わせております機械そのものも、いわゆる賠償指定物件でありますから、手入れもその会社の方で負担しなければならぬ、そういうようないろいろな事情がありますし、また作業時間なんかも短縮されるというので、いろいろいわゆる機能を全般に発揮できないために、特別に普通の場合よりも三九%減じて使用料をきめた、こういうことになつているわけであります。その点が問題になつていると思います。
  70. 渕通義

    ○渕委員長代理 本件に関し検査院の意見を願います。会計検査院小峰第四局長
  71. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 三〇九号の今の件でありますが、これは今管財局長からお話がありましたように、呉の元の第十一海軍工廠、これの土地一万三千坪余り、建物二千六百坪余り、機械二百八十二台、これを川南工業に貸しているわけであります。この貸付料でありますが、大蔵省でおきめになりました成規の使用料の五五%引きで貸しているのは安過ぎる、こういうのが骨子になつております。これは今も御説明がありましたように、中に賠償指定物件がありましたり、スクラツプもあるというような状況であることは確かであります。しかしながら、そういう部分は全部貸付契約から除きまして、貸しているところは実際に会社が使つているところだけを貸している、こういうのが実情であります。実際会社が使つておりますのは、たとえば土地で申しますと二万一千三百二十二坪ありますが、そのうち貸付契約の対象にしているのは一万三千五百六十七坪であります。二万一千坪のうち一万三千坪だけ貸付契約の対象にしているが、会社は実際二万一千坪使つているのであります。しかしながら、これは現在になりますと、スクラツプはないと思いますが、当時はスクラツプもございました、それから賠償関係の施設もある、こういうような関係で、一応使つているわくの中には入つておりますが、しかしそれは料金をとる契約の対象にはしていない。実際に会社が必要な土地、先ほど申し上げました土地なり建物なり機械、こういうものを契約の対象にしているのであります。私どもから見ますと、大蔵省でおきあになりました基準の貸付料をおとりになつて、一向にさしつかえないのじやないか、さらにそれを五五%引き、半分以下に減らしてしまうというのは、どうもいろいろな御説明を伺つても、私どもとしては実は納得できない、こういうような点が出たわけであります。  それから立ちましたついでに、先ほどちよつと田中さんから御質問ございましたのですが、御質問というあれでもないようなので、私立ちませんでしたが、この案件なんかもその一つであります。十分な説明をしないで、会計検査院がここにたくさん並べたのじやないか、こういうことを言われましたが、こういうことはおそらくございません。私どもとしては、できるだけ資料も集めますし、言い分も聞きますし、田中さんも元のあれで御承知かと思いますが、審理とか紹介とか文書とかの回答往復もいたします、実地検査もいたします。まあそうした上でここに載せますので、決して説明が不十分——まあ、たまにはあるかと思いますが、そういうものは決して多くない。今年国有財産の案件が非常にたくさん載つたということは、処分が非常に多かつたということで、これは政府の方針としてたくさん御処分になつた。ここにあげられましたのは、処分された全体から見ますと、ほんとうに九牛の一毛であります。大分部私どもとしても文句を言う筋がなくて、そのまま通つているものであります。全体の約七十と申しましたが、これは国有財産の処分に比べますれば、非常に微微たるものであります。昨年昭和二十二年度までは、私どもの力も及びません。二十三年度、二十四年度も引続き相当数の件数が上つておりますが、私どもの方といたしましては、お聞きする分は十分に伺つた上でやつておりますから、どうぞ……。
  72. 田中不破三

    田中(不)委員 今の検査院からのお話でありますが、実は私の言いましたのは、事前に非常にあぶない案件について、先ほど申しました事例のように、ある特定の非常に高く売れた土地があつた、しかしこういうふうな大きな土地については適用できないのだというふうな問題の起るようなものについて、事前によくお話をなされたかどうか。管財局から検査院の御意見もよく聞かれるというふうにしたらどうか。この出て来た案件について、十分な説明が足りなかつたのではないかというふうな意味ではなくて、その売拂いというふうなものについて、とかく問題が起る。しかも非常にむずかしいように思われる案件については、事前によく打合せをされて、これで社会的に見て妥当かどうかというふうなことをお話し願つたらどうか、こういうふうに申したのであります。
  73. 井之口政雄

    井之口委員 川南工業の件は現地をわれわれ視察したのでありますが、なるほどこれは会計検査院のおつしやることが妥当だと思う。これは半分しか借りていないのを全部借りているようなことを言う、だからこんなに安くなつているのだ。残りのところはたくさんスクラツクが置いてあるからというのが、向うの理由であつたのでありますが、今会計検査院の言う通りに、土地の半分しか借りていない。それだけに單価が非常に安いという会計検査院の主張でありますから、現地をわれわれ見てみて、なるほどそうだと思つた次第であります。
  74. 渕通義

    ○渕委員長代理 次に移ります。七十三ページ、批難番号三一〇から三一四、国有財産の売渡し価格が低価に失したもの——事項に関し一括説明を求めます。吉田管財局長
  75. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 三一〇から三一四の案件でございますが、これはいずれも国有財産の売渡し価格が低かつたのではないかという批難でございます。そのうち特に全般的な問題につきましては、先ほどすでに御説明申し上げましたので、具体的な事件について御説明いたしますが、この場合におきましても、実は一つ問題になりますのは、土地の売拂い価格というものは、いろいろな要素を勘案して決定いたしますので、たとえば相続税の課税標準価格であるとか、財産税の課税標準価格、あるいは土地の賃貸価格、先ほども問題になりました売買実例であるとか、あるいは精通者の意見というものを勘案するわけであります。その場合土地の賃貸価格を一体どう見るかというようなことに、非常に問題があるわけで、たとえばこれを三十級に見るとか、二十六級に見るとか、二十七級に見るとか、そこらが非常に問題があると思うのであります。さらにまた検査院の御批難の中に、勧業銀行の指数を採用して、いろいろと数字が出ておるわけでありますが、その場合勧業銀行の指数というものは、全国百四十の都市の平均指数というものが出ておるわけであります。その指数というものは、なるほど全体の一応の趨勢を見る上においては、非常にけつこうなものでありますが、各都市については、必ずしもごの平均指数がそのまま適用さるべきものではないのでありまして、その都市都市の状況によつて、その都市々々の事情によつてつて来るはずのものであります。できれば、その都市の指数というものがわかれば、その都市の指数でやるのが当然である。その点に、全般的に見て一つの問題があるように思うのであります。  なお具体的に申し上げますと、三一〇号の姫路の問題でありますが、これは売渡し先は姫路市であります。それで今これは競馬場になつておるかと思うのでありますが、当時これが農地の間にありまして、ほかに利用の方法もない。それでこれを姫路市といたしましては、随意契約で買いたかつたのでありましようが、そういうわけにも行かないというので、結局入札にしたわけであります。入札にしてみましたところが、姫路市が一番入札価格が高かつたので、これに落ちたわけでありますが、周囲を見ましても、田畑の状態でありますし、非常に濕地であるというような状態でありまして、他に転用すれば田畑、農地にするくらいで、姫路市は、むしろこれを農地に認定したいというようなことも言つて来たわけでありますが、そういう事情でありますので、これが農地になれば、あるいはもつと安い価格になる。この状態になつたので、一応これまでの価格になつたように思うのであります。  それから三一一は若松の問題であります。これは若松市内の最南端にありましては、北は旧軍用地、西は若松城跡に、南は七尺の掘を経てたんぼに接するという広大な一田地で、非常に起伏の多い広大な面積であります。五万坪ばかりあります。非常な濕地帶でありますので、これも二十七級と評定して価格を算定したわけであります。これらの土地は、いずれも多少低目であるかもしれませんが、当時の事情においては、大体においてやむを得なかつたというふうに考えております。  三一二の都城についても、大体同じような状態でありまして、これは歩兵二十三連隊及び陸軍病院の土地でありまして、防空壕跡、間引建物の基礎が残つてつたり、あるいは非常な濕地でありますので、整地に非常に費用を要する。大部分このあたりは畑地でありまして、宅地としてはそれほどの利用価値もないというような関係で、こういう評定が出ておりまして、先ほどもお話いたしましたように、大蔵省としてはこの基準価格そのものに対して異論があるというような状態であります。  それから三一三号は、秋田の練兵場跡であります。これは市街地の非常にいいところにあるのだそうでありますが、東と南側は高さ二メートル程度の築堤があり、西側は相当高い生がきになつており、それから北側は一メートルないし二メートル程度のコンクリートへいがあるというような現状であります。この評定については、付近の民有地の賃貸等級を考え——一番いい隣が五十六級でありますが、周囲の方を見ますと、三十九級というようなところもあります、全体としてひつくるめては五十一級というところに見たわけであります。そういうふうに見て参りますと、大体ここにあります三百十五円程度の評価になるわけであります。  それから三一四号は、これは元戰時中の陸軍が強制買收した土地でありまして、上陸訓練演習場となつてつたものであります。それを宮崎県の水産業会が買いもどしをする。おそらく付近の土地の人の考えとしては、ただで返してもらいたいということであつたと思うのでありますが、私どもの方としては、そういうことはできませんので、できるだけの値段を出したわけであります。多少低めにあるとは思いますが、当時の事情としてはやむを得ないことと思います。
  76. 渕通義

    ○渕委員長代理 本件に関し検査院の意見を伺います。
  77. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 三一〇から三一四まで、ざつと御説明申し上げます。  この三一〇、三一一、三一二は、姫路と若松とそれに都城と、場所は点々と飛んでおりますが、要するところ旧陸軍用地、連隊なり練兵場なり、こういうものを処分した案件であります。姫路は競馬場でありまして、若松は市営住宅と総合運動場、それから都城は繊維会社の工場でありますが、こういうものに売つたわけであります。その値段は、この表でごらんになりましても、坪十五円から最高三十円、あめ玉何箇にもつかぬ値段でございます。こういう値段で、これまた相当に地域的によくないところも、一部にはあるようではありますが、大体当局者がやれ濕地だとか、やれ何だとか御指摘になつておるところを調べましても、そこにはかつて糧秣倉庫が立つてつたというようなこともございまして、どうもそうひどいところはないようであります。そこで私ども、坪五十円にも満たぬというのは、あまりひどいではないかというので、いろいろな面から検討いたしまして、特に安い案件を並べ立てたわけでありますが、この三つの案件につきまして、先ほどちよつと管財局長からもお話が出ましたので御参考までに申し上げますが、これは相続税をとるときの標準になる相続税課税標準から申しましても、また一般の市価から見ましても非常に安いのでありす。私どもも、この程度で売られては、実は少し安過ぎるのではなかろうかと思つている値段でございます。その値段が姫路では、計算いたしますと百四円とか九十二円になつております。それから若松のは百四円でありますが、都城のは百二十円、九十六円、こういうふうになつております。それに比べましても、今申し上げた値段は、決して市中の売買値段ではないのでありまして、市中の売買値は相続税の課税標準よりは、まず原則として相当高いというのが実情であります。ごくまれにはこれより安いものもありますが、原則として高いと言えると思います。それに比べても何分の一にもなつておらぬ、こういう状況でございます。  それから勧銀の全国市街地価格平均指数をここへ出しましたことを、当局は非常に不満としておられるようでありますが、御承知のように昔から土地の評価の場合には、勧銀の評価というものが日本では一番権威のあるものだ、こういうことになつております。戰争でその辺は相当怪しくはなつておりますが、ともかくも勧銀の評価というものに対しては、私どもは一応の敬意を拂うのであります。あとで出て参ります三一四の土々呂などは、これは個別的に勧銀の評価をお願いした案件ですが、なかなか個別鑑定ということはむずかしいのでありまして、大体の傾向を見て指数を使うということは、これは当局者がおやりになつておるのでありまして、勧銀指数は、はつきり資料に書いてあるのもありますし、物価指数としてこの勧銀の指数をおとりになつて土地を売つたり買つたりなさつている実例は、もう会計検査院に対する証拠書類に山のごとくにあるのであります。こういうものを、しいて使つておらぬとおつしやるのが、実は私は不思議なのであります。もちろんこの通りの計算で出した値段でお売りになつてはおりません、これを一応の基準として計算をした上に、いろいろな要素をお入れになつております。しかしそのいろいろな要素が——相続税の課税標準もありますし、いろいろなものもありますが、結局精通者の意見がこうだというので、せつかく計算をされたのががたがたにくずれてしまう、何のために計算をしたのかわからない。計算して百円になつたのが、精通者が四十円だと言うから四十円で売るのだ、こういうふうな方法をおとりになつております。そこに私どもは若干の疑問を持つのでありますが、精通者というのは、これは精通者と書いてあるだけで、私どもにはわからない場合が多いのであります。買う場合もそうでありますが、この三つの案件につきまして非常に安過ぎるという例になるかと思いますが、売買実例都城の件について、その後に売りました土地のすぐそばであります。これは公務員宿舎というのがこのごろたくさん立つております、役人の入る国営宿舎であります。その用地を買收されておる例がありますが、これはお売りになつた財務局が買收されたのであります。これは電波庁関係の公務員宿舎でありまして、それを私どもが見ますと、地級が同じくらいの土地だと思うのでありますが、坪百九十円くらいで買收されておるのであります。お売りになつた値段は十八円と二十二円であります。この十八円と二十二円は、売るときは地積も二万坪余りでありましたから、相当地積の大きいことがものを言うと思います。なかなかそういい値段では売れないと思いますし、また時期も違う。百九十円というのを、かりに売りましたときの時期に引直してみますと、百六十四円になります。百六十四円だつたのがその後百九十円に上つたということになる。時期を同じく引直して換算しますと、百四十円ぐらいにつく土地であります。それを十八円なり、二十円なりで同じ財務局がお売りになつておるのであります。ここでも私どもは非常な疑問を持つのでありますが、その実例はあとの実例でありますから、本件を売るときに、当局者がなぜこの実例を見なかつたのかということで文句を言うわけには参りませんが、一応この売拂い値段が少し安過ぎたのではなかろうか、こういう資料にはなるのじやないかと思います。この三件についてはこれで終ります。  それから秋田の土地の案件について申し上げます。実は土地の売拂い値段というのは、先ほど申し上げましたように、非常にむずかしいのであります。幾らが正しいかということは、なかなか出て来ないのであります。前の三件につきましても、幾らが正しいかと言われますと、実は相当困る面もありますが、ともかくもその価格が安過ぎる、こういうので、前は三つ並べたのであります。秋田の土地は、大体ここに出ておりますが、赤十字社、秋田県、秋田市の使うのはここでは問題にしておりません。前の二百八十円、三百十五円、それから百六十円、これを取上げて問題にしているわけであります。秋田は御承知かと思いますが、駅の前に連隊が大きな用地を構えておつたのであります。そのために、これはどこでも、自然にほうつておきますと、駅の前というのは、その市の一番にぎやかな、地価の高い所になるのであります。ところが、そういう繁華になるべき運命を持つた土地が、軍用地になつておりまして、町の中心は連隊を離れて北の方にあるのであります。それで非常に不自然な状態にあつたわけでありますが、それが終戰によつて開放された。その土地は、ほうつておけばいい値になるのぱ明らかであります。ところが、いろいろな関係もあつたと思いますが、非常に大きな面積を、ここにございますように学校用地とか病院とかに御処分になつて、残つた土地が実は一番いい所だつたのであります。駅のすぐまん前であります。それが初めの三行に出ております約三千七百坪ばかりの土地でございます。これは百六十円、二百八十円ないし三百十五円で売つた。特に安いのは、先ほどお話がありましたように、いろいろながけみたいな所がありましたし、コンクリートの工作物があつたりしまして、整地費を引いております。そういうものを引かないでも三百十円前後でございます。秋田でもおそらく一番繁華な商店街になるだろうと予想されるのが約三千坪、これを二十二年の末から話がありまして、実際の契約を結んだのは一月であります。これを三百円足らずで売つてしまうというのは安いのじやないか、ところが尺度が一体幾らがいいかということになりますと、これも実はむずかしい。私ども資料の集め方がまずかつたせいもございますが、ここに書いてあるところには、一つ一つ今になつて検討してみますと、ぐあいが惡いところも非常にございます。大勢から見ますと非常に安過ぎた、これを裏書きする資料が、実はあとでわかつたのであります。これを批難するときにはわからなかつたのでありますが、二十三年の売買実例があるのであります。これが約半年前であります。その売拂つた時にば、これは火災保險の会社が買つたのでありまして、地積はこんなに三千坪などという大きなものじやありません。これが六十級の土地でありまして、ここの隣の土地は五十六級という評定がしてありますが、それより少しいいのであります。そこを坪当り千四百四十円で火災保險が買つた、こういう例があとでわかつたのであります。すなわち地位は少しよろしいのであります。それから時期も違うのであります。地位をここの五十六級に直し、時期をずらして、この千四百四十円と同じ計算でもし買つたとすれば、千八百三十六円になるであります。それを三百円前後の値段で売つてしまつた、こういうことになるのでありまして、私どもは実はこの売買実例は最近になつてつたのでありますが、本件の批難は、それを一々つつついて参りますと、この案件はどれでもそうでありますが、書いてあるごとくに、反対しようとすると、土地の批難というのは幾らでも反対できるのであります。ここに書いてあることも、つつついて参りますと、いろいろなぼろが出て参りますが、大局からごらん願いますと、今のような資料も出て参りましたので、私どもは三百円前後というのは少し安過ぎたのではないかという考えは現在もかわつておりません。  それからもう一つ、これも公務員宿舎の買收実例であります。公務員宿舎の用地としてもつとずつと町のはずれの方を買收したのであります。本件の批難に引合いに出している近所の土地は五十六級でありまして、賃貸価格は三円六十銭であります。公務員宿舎として買收いたしましたところは三十七級で坪五十銭、結局賃貸価格が六分の一程度の悪い土地でありますが、それを政府は千円で買收しておるのであります。それを買いましたのは二十五年三月であります。時期もずつとおそくなつておりますから、一概にこれも比較にはならないのでありますが、等級を五十六級に直し、それから時期をずつと前にずらせて計算いたしますと、これが千七百五十円になるのであります。時期をずつと前へずらせまして、等級を直しました仮定の計算でありますから、一概にこれで買えとか売れということは言つておりません。しかしながら、三百円前後の売拂い値段が高かつたか安かつたかという、一つの判定の資料にはなるのであります。この資料で計算してみますと、千七百五十円になる。政府が買收した公務員宿舎の千円という土地から逆算するなら、そうなります。それから実際に本件の土地を売り拂う半年ばかり前の秋田の民間の売買実例というものを引直してみますと、千八百三十六円、千七百五十円と千八百三十六円で、偶然の符合かもしれませんが、そうえらい差がないのであります。この前の資料あとの実例、こういうのを寄せて参りますと、こういう結果が出て参ります。これを三百円見当で処分なさつたわけであります。それに対して政府は、いやちつとも安くないのだ、こう言つておられるのでありますが、どうも私どもは、まだこの点に異存を持つておりますし、この批難は、何べんも申し上げております通り、書き方がまことにまずいのでありますが、全体としては、私どもの批難は間違いなかつたのではないか、こう考えておる次第であります。  それから三一四であります。これは岩壁つきの土地であります。御承知かと思いますが、宮崎県の延岡のはずれの土々呂でありますが、ここには元曉部隊いいました船舶工兵部隊がありました。船舶工兵ですから、いろいろ船の施設を持つておるわけでありますが、これが終戰によつて開放されたわけです。私ども検査に参りましたときに、岸壁をつけないで、土地の値段だけで売つているのを見つけまして、それがこの案件の発端になつた次第であります。その点を調べますと、土地の値段だけとしては少し安い、いわんや岸壁をつけた値段としては著しく安いというので、特に延岡の市役所、それから勧銀の鑑定をお願いをしたのでありますが、その結果によりますと、検査に参りました者の見方が正しいのであります。それを熊本財務局では坪当り三十六円、総額二十六万五千円で売り拂ておるりのであります。勧銀は岸壁と土地とを別々に評価いたしました。土地は二十九万九千円、財務局が岩壁つきでお売りになつた二十六万五千円よりも、土地だけでも高いのであります。それから岸壁は別に三十六万円、こういう評価をして回答をくだすつたのであります。その結果ここにあげたのでありますが、先ほど当局から連隊ができますときに寄付と強制買收によつたものだ、こういうお話がありました。これも私ども調べがとつてございます。これは昭和八年に三千四百坪、地元民が寄付したのであります。それから十六年に五百坪ばかり軍が買收いたしまして、四千坪ばかりのところに、さらに軍が三千四、五百坪埋立てしたのであります。その埋立てをしたところに実は岸壁をつくつた、その埋立てたところを大体売つたようであります。そうして土地は全体ですが、岸壁はあとからつくつたものでございますから、その辺も御了察の上で御判断願いたいと思います。
  78. 田中不破三

    田中(不)委員 ここの問題は別としまして、全体的についてちよつとお尋ねしたいのですが、先ほどもちよつと私が申しましたように、今の管財局の方のお話と、それから検査院お話、これがこういうふうに少し相違ができて来ております関係は、そこにつまり手続を運ばれて行かれる上の時間的といいますか、日数的といいますが、年数的のずれが出て来ている、それが災いしておるのではないか、先ほどちよつとお話いたしましたが、それがあつたのではないか。一例をとつてお伺いするといいのですが、たとえば三一二の都城でありますが、これについてちよつとお伺いしたいのです。これは二十三年の十一月です。  この二十三年の十一月と申しますのは、つまり管財局で決裁を済まされて、台帳に登録された時だろうと思う。ところが売手と買手との話合いというものは、それよりも数箇月といいますか、一年といいますか、一年半といいますか、前にやつているはずです。そして話がついて初めて稟申が出て来る。そうするとこの二十三年、二十二年というころは、たいへんな価格の変動期であります。従つて二十二年のころに話された値段で稟申が出て来る、その手続が非常に遅れる。決裁が遅れて来るという関係で、登録は二十三年の十一月になる。検査院の方ではそれを基準にして——もちろん事前の話合いの当時のことも、御調査になりましようが、たとえば相続税の課税標準価格であるとか、あるいはそのときの勧銀の見積り価格であるとか、その他の関係のいろいろな標準にとられる価格というものは、おのずから二十三年十一月に近い価格になつてしまうのではないか。話は実は二十二年の何月かにもう始まつて、これがきまつているのです。だから話が安い時代から進んでおつて、二十二年ごろなら二十二年ごろの何月かに話がきまる、それが書類にされる、そうしてそれが一年なり、あるいは二年か知りませんが、かかる、そういうふうな時期的なずれのために、今のような高い安いの問題が複雑になつて来るのではないか。もちろん、その当時のことも検査院としては調べますから、それだけとは言いませんが、それが非常に災いしておるのではないかという気がするのであります。その点はどうなつているのでしよう。先ほど第四局長のおつしやいました相続税の関係のものも、これはいつの時の価格であるか、こういうことをお尋ねしたいのです。
  79. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 私も実はこの案件の期目的なあれをはつきり調べておりませんが、たしかこの話の起つたのは、一年ほど前になつておるように聞いております。つまり二十二年の十一月前にこの話が起つたように聞いておるのでありますが、おそらくそのときに財務局の方としては、多少値段が低いのじやないか、もう少し上げて買つてもらつたらどうかと、いろいろと会社の方に交渉しておるその間に、だんだん日がたつてしまつた。しかしそうかといつて、今度はほかに高く売れるかというと、どうにも買手がない。ほうつておけば、そのままでいつまでもほうつておかれまして、あるいはそこがまたほかに利用されるというようなこともあつたかもしれませんが、この土地については、これも周囲の状況から見ますと、どういうことになるかわからないのでありますが、この場合は終戰直後からの一時使用のものであつたそうでありまして、その間、向うとしてはすでに入つている、その立場としては非常に強いようであります。それじやお前、そんな安ければ出て行つてしまえというわけにも、相手は企業でありますから、なかなかできないという事情もあつたと思うのであります。とにかくそういうわけで約一年ぐらいの間かかつたということは、事務的には非常にまずいことで申訳ないのでありますが、そういう点に今のお話のような点が見られるような感じがいたします。
  80. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 田中さんの御質問、これはおつしやいます通り、二十二年の初めごろから申請が出まして、二十三年の初めに拂下願が出まして、二十三年の十一月にきまつたわけであります。一年近いものがたつておりますが、評価は二十二年末にやつておりまして、その値段で拂い下げたわけであります。大体私どもが計算いたします指数も、その間は実は動いていないのであります。これは非常に実情に合わないのでありますが、きまつたときに、あるところで指数が上りまして、ある指数を使うということは、非常に不合理であります。実際はこうなつてつたわけであります。それをこういうふうにきめておる。拂下願が出た時と、売拂いの時とあまりかわつておりません、同じ指数でできるわけです。きめたこのころは、大体合理的のものである。実際こうなりますから、この辺になつたら非常に安いのであります。私どもの計算はこの辺でやつております。二月、三月たちますと、この指数が上るのであります。われわれの方の計算は、遠慮してやつたということになるのでありますが、かりにここの近所で——大蔵省は非常におそかつたのでありますが、この辺で御決定になりましても、やはり私どもはこういうことになるわけであります。勧銀の指数を基準にしてやつておるのでありますから、この指数をとることがいいか惡いかということについては、御意見があると思いますが、指数をとりますと、今のような不合理な結果が出るのですが、都城の分については、むしろ甘いという結論が出ておるのであります。従いまして、かりに申請後三月なり四月なりで御決定になりましても、この値段でありますし、私どもも同じだ。本件につきましてはこういう案件でありますから、どうぞ……。
  81. 井之口政雄

    井之口委員 この姫路のあれですが、私どもは国政調査で現地を視察して参りました。ここの元北城練兵場約二万六千坪ですか、これなどは農地としてりつぱに使用のできるものです。水も出て来ますし、農地法によつてやれば、相当りつばな農地として農民に開放のできる土地だつたと思うのですが、これは農地委員会か何かで問題にならなかつたのですか。売渡しが二十四年の三月になつておりますが、農地問題として、その土地が係争の地になつたことはなかつたか。これはもし係争がなかつたにいたしましても、農地として開放せらるべきところだと観察いたしました。しかしそれを売り渡すにしても、二十五円とか三十円というのは、実際ばかげて安い。なおこれが姫路市に売りつけられるのだから、国から地方団体へ移されるのだから、表面上考えれば、同じところから同じところに売られるのだから、国民全体にとつては損得もないよぎに思われるけれども、これが基準となつて、そのほか熊本市、都城等でもやはり同じようなことが起つている。都城の場合は私企業の日本繊維がこれを買うておりますが、姫路の場合はこれを競馬場にこしらえて、そうして馬を走らせてばくちをやつているというのだから、まつたくこうした国民の大きな財産を、売値も安いが、それをばくちに売つてしまつて、これでもつて自治団体が寺銭をとつているというようなやり方、こんなことはまつたく植民地的な現われなんです。しかも政府としては、会計検査院の安いという指摘に対しても恐れ入つていない。恐れ入らない場合は、一体どうなんです、これに対して今から追徴ができるのか、どうなんですか。
  82. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 恐れ入らないということは、よくわかりませんが、政府としてはやむを得なかつた。ただこれが非常に不当であるということになればどうなるかというお話でありますが、これはやはり契約としては有効に成立しているものであつて、そこに詐欺とか、何か特別の無効取消しの原因がなければ、取消すことはできなかろうと思います。従つて、その契約当事者の責任というものはあるかと思うのです。ただ姫路の場合は、先ほど申しましたように、入札でやつておりますので、それ以上に札を入れた人もなかつたようなわけであります。そういう点については、いま一応御考慮をお願いしたいというふうに考えるわけであります。
  83. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 ただいまの点でありますが、政府検査院と対立した場合には、今のところ何ともできないのでありまして、これはここでこういうふうにお互いにいろいろ言い合つておることで、皆さんに御判断をお願いするよりほかに、何ともしかたがないのであります。  それから、元ほど農地にしたらという点でありますが、相当部分を農地にしております。十一万坪ほど農地に転換しております。この競馬場にしたところが、どうして残されたか、いきさつを存じませんが、競馬場よりも相当多い部分が、農地になつております。  それから、入札だからという、先ほど冒頭の説明でも政府から話があつたのでありますが、今もまた重ねてお話があつたので、先ほどは控えておりましたが、私の方の考えを申し上げておきます。入札ということは、重々承知しております。ところが、実は入札前に姫路市がかつてに競馬場をつくり出したのであります。この処分につきましては、私どもに随意契約で売りたいがというお話があつたのであります。競馬場にするものを、いくら公共団体だからというて、随意契約という会計法のあれを持つて行くのはまずかろうじやないかというて、その承認をお断りしたのであります。そうした結果の入札であります。その結果がどうなるか、これは形式的には、たしか三名ほど札が入つております。しかし、もう競馬場の工事計画ができておるところであります。そういうところを形式的に入札をおやりになつたところで、よい値に売れるわけはないのでありまして、その辺は、入札とは言いながら一般の入札とは違う、これはひとつお考えおき願いたいと思います。
  84. 田中不破三

    田中(不)委員 さつきお尋ねしたことに第四局長から御答弁がなかつたのですが、先ほどのお話のときに、相続税の標準価格から、たとえば都城を百何円とか言つておられましたが、あれはいつのであつたか、ちよつと知りたいのですが……。
  85. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 これは正式の売拂いの時期の計算でありまして、二十三年十一月でございます。これは先ほど田中さんからもお話がございましたが、申込みの時期というものは、実はわからないのが普通であります。話合いが出まして、たいがい話合いのまま進んで参りますので、そういうのをかりに標準にいたしまして、売拂い価格を決定するということは、これは非常に不正を奬励するような結果になるので、非常な勢いで物価が上りますときに、どこで話がついた、ここで話がついた、その間が一年ぐらいしか違わぬというようなときには、やはり外形に現われる正式の契約の時、こういうのを押えないと、もう二年前から話がありますとか、あるいは一年前から話をしておりましたというので、値段をきめられても、実は困るわけであります。これは政府大蔵省も、嚴重にここでやれ、正式にはつきり証拠に残る時期にやれ、こういう御方針をとつておられまして、私どもとしても、情状を見る場合には、前から話があるのだし、一時使用の場合なんかは、いわばこれは地上権に近いものが実際問題として起きてしまう。そうすると、安くなるのはしかたがないのだ、こういうことは検査の上ではいろいろ書かれておりますが、形式的な時期ということになりますと、そういうことにはかまわずに、実際の契約の時期、こういうことに押えることは、実際問題としてはないのであります。
  86. 田中不破三

    田中(不)委員 先ほどのむし返しになりますが、管財局長はあまり年数というか、相当長くかかる手続というものは、そうないのだとおつしやいまするが、現実はここに現われるわけです。それで今第四局長の言われました相続税の課税価格が二十三年の十一月ということにわかりましたが、二十二年当時の価格というものはもつと安かつたはずであります。それが先ほど申しましたように、期間的のずれがそういう問題を起す。ですから、そうでなくてさえこういう財産は愼重にやるものですから、おのずから手続が長くなる。これをもつとお早めになれば、今のような問題も、おのずからもう小し限界が狹められて来るということになります。また先ほどお話しましたように、特にそういうふうな価格の変動期であり、異例に属するようなといいますか、なかなか判断のむずかしいようなことにつきましては、事前にお互いに連絡をとつておりますと、これはよく運ぶのではないか。今の競馬場の入札の問題にしましても、お話なつたようでありますが、これなども、じつくりと御相談になつておきめになつたならば、形だけは入札だが実際は随意契約だつたという形が、残らなくても済む。どうも財産を扱いますときに、いつもそういうふうな実情と大分かけ離れたところで、お互いに決定されがちになつているようであります。それが先ほど私が申しましたように、十分にお互いが連絡をとつておかれたらよいだろう。それでこういうふうに、大蔵省考え方はこうだ、会計検査院考え方はこうだ、その処置はわれわれにまかすというのでは、これは将来いつまでたつても片づかない問題で、なかなか骨が折れる。こういうふうに案件がたくさん出て来ておりますが、事前に大体見当がつきますから、むずかしい問題については、こういうことのないように、お互いによく連絡をとつてつていただくと、われわれの仕事がまことにしやすくなりますので、お願いしておきます。
  87. 井之口政雄

    井之口委員 これは競馬場は、姫路市が競馬協会に貸すのですか、どうなるのですか。
  88. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 これは姫路市が市営するものであると思います。
  89. 井之口政雄

    井之口委員 建物も姫路市が建てるのですか。
  90. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 経営を姫路市がやつて、土地はもちろん姫路市が所有しておりますが、他に転売することは——入札でございますから、できるわけですが、おそらくこれは姫路市が市営でやつていると思います。
  91. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 これは土地を買つて県に寄付する、そうして建物は県でやるのではないだろうか、こういう御質問でございますか。
  92. 井之口政雄

    井之口委員 競馬協会といかなる関係にあるか……。
  93. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 競馬協会が経営主になるのではないかと思います。その辺、もし何でしたら、よく調べますが、今私の聞きましたところでは……。
  94. 井之口政雄

    井之口委員 こういうことは全国に行われておるのであります。農地が取上げられて、そうして競馬協会などからいろいろな賄賂が出て、それでもつて農地を買收するというようなことをやつて、農民いじめのようなことが、全国であちこちに出て来ております。この点も、はたして姫路市がこの土地を将来どんなふうに使つて行くか、これについては、政府は何らの監督権もなくなる。
  95. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまの姫路市の問題でありますが、これは先ほど検査院の方からもお話がありましたが、とにかく姫路市が競馬場をやろうとした、それに対して大蔵省としては、工事を嚴重に中止するように命令して、工事を中止させまして入札させたわけであります。ですから、そこの場合に、なるほどそういうふうになつておれば、だれも入札しないじやないかと思つておりますが、とにかく入札にしてあるのですから、それが非常に安い価格ならば入札に参加されたらよい、そこをほかの有用な事業に使えばよいわけであります。これは全国に起つておる競馬場問題だと思いますが、先ほど申しましたように、会計検査院とも十分連絡して入札をしたわけでございます。それ以上のことは、これは財産管理の方としては、どうもやむを得ないのではないか、こう思うのであります。
  96. 渕通義

    ○渕委員長代理 次に七十七ページ、批難番号三一五号、船舶の売渡価格が著しく低価に失したもの、及び七十八ページ、批難番号三一六号、損害賠償求償額が低価に失したもの——これを一括説明を伺います。
  97. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 三一五号は、船舶の売渡し価格が著しく低価に失したものということで、検査院としてはこれは艦船の売拂い価格であるから、船価指数によつてつたらどうか、こういう点ではないかと思うのでありますが、これについて大蔵省といたしましては、軍用船につきましては、第一にこれは旧軍用船であるがために、これが性能、構造等は、相当に不適当なものが多い。従つて一般船舶について見ますと、非常に稼働力が低くなつておる。それから第二には、これが終戰後数年経過しておりますし、また戰時中非常に苛酷な使用をしておりますし、終戰後混乱して非常に保管が悪い。それで実際使用します場合には、大修理を要する。そういう関係で、普通の船舶としては使えない。それから第三には、これを運航する場合には、やはり運輸省、それから関係方面の改造許可がいる。またその燃料の受配について、当時は非常にやかましかつた。そういうような関係から、船舶の経済価値が非常に低下しておる。それでその船価指数というのを普通の新造船の船価指数でやつたのでは、これはどうもぐあいが惡い。そこで各船舶の特殊性によりまして、各軍用船の艦種ごとにそのパーセンテージを出しまして、一般の船価指数に対しまして大体三割程度、従つて昭和二十三年の九月までは五倍から九倍、昭和二十三年十月以降昭和二十四年九月までは四倍から十五倍、昭和二十四年十月以降は十倍から四十倍としたわけでございます。  三一六号は、損害賠償求償額が非常に低いというわけでございますが、これは先ほど申し上げました船価指数の問題であります。なおこの求償額保險価格が百八十七万五千円であるのに、百二十万円しか求償しなかつたのはおかしいということについて、当時大修理費百万円を投じてありますから、全体としては二百二十万円かかつておるわけであります。そのうち百八十七万五千円の保險価格でありますが、修理費の方にもある程度まわさなければならぬので、求償額は百二十万円にしたという経過でございます。
  98. 渕通義

    ○渕委員長代理 次に検査院の意見を伺います。小峰第四局長
  99. 小峰保榮

    ○小峰会計検査院説明員 三一五の、船の売拂い価格が安過ぎたという案件でありますが、これは管財局長からお話がありました、会計検査院の意見がいろいろ書いてございますが、当局が日銀の調査によりますと、機械類一般の物価指数を基準にして船を売るならば——船の値上り指数というものがないなら、しかたがありません、世の中で船と機械を同じように取扱つているならやむを得ませんが、世の中では機械と船とは全然別なものとして扱つておる、値段も別なものが立つております。指数も運輸省で、新造船の指数をちやんと統計をとつてこしらえておるわけであります。もちろん先ほどお話がありましたように、これは軍用財産であります。長い間修繕しないというようなものもありますから、一概に新造船の指数をそのまま適用しろというのは、無理だろうと思います。そんなことは、私ども考えておりません。まだ機械の値上り、しかもその機械の値上りが、ここにございますが、十六年を基準とすると、二十一年九・九、二十二年は二三であるのを参酌して、倍率を二十三年九月までの売渡分に対しては、五倍から九倍程度、十月以降はようやく四倍から十五倍程度としたのであります。機械の値上りもまた低くしておる。この点に私どもとしては異議があるわけであります。  それからまたもう一点は二十一年度にきめて、それからさらに二十三年九月までこの価格を放任して置いた、この点も異議があるのであります。この時期は、御承知のように非常に物価変動がはげしかつた時期であります。一年半もほうつておけば、値段が非常に古い値段になつてしまうということは明らかであります。世の中の実情に合わないことになつてしまう。それを長い間ほうつておいた、この点も私どもとしては異議があるわけであります。この裏のページの一行目の船価指数で計算した場合に比べて、約一億四千万円、こうなつておりますが、これは、かりに船価指数で計算すればこうなるというのでありまして、これだけ高く売れということは、実際問題として無理だつたろうと思いますが、かりに半分ぐらいとして、七千万円も六千万円も違うのでありますが、なお二億八千三百万円という売値が何割か高く売れたということは事実だろうと思うのであります。  それから先ほど、非常に性能が惡い、こういうお話でございましたが、これは軍艦ではありません。この中には軍艦は一隻も入つておりません。御承知のように、軍艦は兵器としてこわしてしまいましたので、入つておりません。軍艦以外の船舶であります。ただ陸海軍が使つていたというだけで、民間の船とそう違わないのであります。もちろんごく少数は特殊なものがございますが、大部分は民間の船とそう違うものではないのでありまして、ただ長く修繕をしないとか、ほつたらかしにしておいたというので、性能の低下ということは相当あるとは思いますけれども、軍用船だからといつて、まるきり民間の船とは違うのだ、民間には使いものにならぬのだという性質のものではありません。  それから三一六号であります。これは熊本財務局で国有木造船を三菱重工に貸していたのでありますが、三菱重工が傍系会社の丸菱商会に転貸いたしまして運行している間に、火事を起して燒いたという案件であります。木造船は、危險が非常に多いものですから、保險価格が低いのでありますが、百八十万ありますが、百八十万円ほど保險をかけておりました。この船は、保險会社の評価によりますと、大体三百六十万円半分ぐらいしか保險の対象にしない。それでこれが燒けてしまつた。船主が取得した金が、百五十万六千円保險金の中からあつたわけであります。その金を借主が取得しているのに、国は会計検査院に見つかるまでほうつておいたという案件であります。これを見つけて、検査院で、なぜ求償しないのか、検査院は三百六十万円という求償を基準にして考慮したらどうかという腹を持つております。そこで船の価値は三百六十万円ということであります。三百六十万円を基準にして、その通りはとれないかもしれませんが、少くとも三百六十万円を基準にして考慮すべきじやないであろうかということを、この案の腹の中には持つておるのであります。取り方を見ておりますと、百五十万円、借主が修繕費を拂つたからといつて三十万円ばかり引きまして、百二十万円とつた。ここにも実は異議があるのであります少し取り方が少いじやないか。燒けてしまつたのは、責任は借主の方にあるのであつて、国かその責任を負うべき理由はないのじやないか。三百六十万円というのも、これは少し強過ぎますが、一応もう少し弁償させたらいいじやないかということを腹の中に持ちまして、この案に書いてあります百二十万円は、どうも少いのではないかと考えております。
  100. 渕通義

    ○渕委員長代理 大分時間も経過いたしましたので、本件に関する質疑は留保し、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会