○
松田政府委員 それでは私からごく輪郭と申しますか、
電気事業の最近の
情勢につきまして
お話を申上げまして、なお足りません点その他は、
経済安定本部の方から
お話を願いたいと思います。
御
承知のように
電気事業再
編成の問題は、過去三年間もみにもんだ問題でございますが、昨年の暮れに
ポツダム政令によりまして
電気事業再
編成令が公布施行されました。これによりまして、
電気事業再
編成の
根本方針が決定されました。その
方針に基きまして去る五月一日に
発電、
送電及び配属を一貫した各
独立の
電気事業会社が、
全国九
地域に設立を見ました。これと同時に従来の
日本発送電会社及び各
配電会社は解散をしたのであります。新
会社になりまして、その最もねらいといたしますところは、従来
日本発送電が
全国を一貫して
発電及び
送電の仕事を行い、それから各
配電会社が、それぞれ
日本発送電から受けました
馬力を各
事業者の方に
配電しておるという
関係を、ただいま申しましたように九
地域において縦に一貫いたしました。言いかえればそれぞれの
地区における
一つの
電気事業会社が、
発電から
配電に至るまで一貫して経営することによ
つて、いかにしてその
地区の
需要に合う
発電計画を立てるか。それからまたそれぞれ各
地域ごとに競争いたしまして、自主的にこの
需要者に対する
サービスの
改善をいかにして行くかというような点を、従来のようなあまり競争のない
状態に置かずに、そういう点に各
電気事業者が、それぞれの
創意くふうを凝らして、
電気事業の発達、これに伴う
サービスの
改善というものに力を注ぐというところが、そのねらいでありますことは今さらに申し上げるまでもないところであります。しからば新
会社が発足せられ、時あたかも
日米経済協力に関する
マーケット声明が発せられた今日におきまして、わが国の
自立経済というものを、一刻も早く確立するということは、ますますその
緊要度が増したのでありますが、この
自立経済を達成いたしますためには、どうしてもそのもとといたしまして、あらゆる
産業の基礎であり、また
動力源でありますところの
電力の
開発、言いかえれば
電力の
供給を、豊富かつ円滑にするということが何よりも大事なことでありまして、そういう
意味で各新
会社といたしましても、今後における
電源の
開発を、どういうぐあいにして参るかということにつきましては、現在いろいろな
計画を立てまして
検討中であります。また
公益事業委員会としましても、
経済安定本部と十分緊密な
連絡をとりまして、大体の今後の行き方を
考えておるのであります。御
承知のごとく終戦後しばらくの間は別といたしまして、二十四
年度から五
年度にかけまして、特に
朝鮮事変の勃発以来というものは、非常な
電力需要増にな
つて参つております。一例を申し上げますならば、一昨年の暮れにおきましては、大体
全国におきまして五百二十万キロワットくらいの
電力需要でございましたのが、昨年の暮れには、六百四十万キロワットというように激増いたしまして、百二十万キロワット、パーセンテージにいたしますと、一八%くらいの
増加を来しておるのであります。今後の
電源開発というものをどの
程度いたして参るかということについては、
経済安定本部におかれまして、いわゆる
経済自立審議会におかれましても、今後の
需要をどの
程度増加して行くと見るのが適当であるかどいうことにつきましては、いろいろ御
検討にな
つておりまして、一応毎年の
需要増を三・六%
程度を見ておられる
計画があるわけであります。しかしながら最近の
情勢は一〇%から今申しましたように、極端な場合には一八%くらいまでも上
つて参つておるのでありますから、その間の
調整をどういうぐあいに
考えるか。言いかえればどの
程度の
需要増を見て参るかということが非常に重大な問題でありまして、
公益事業委員会としましても、一応三・六%の線についても
検討をいたしますと同時に、大体年間一〇%くらいの増を来す場合には、どういう結果になるかというような点もいろいろ
検討をいたしております。この
需要が毎年一〇%くらいずつ
増加いたしました場合に、将来五箇年くらいの
計画で、
昭和三十
年度くらいにおいてこれに追いつくためには、毎年どれくらいの
資金がいるかというようなことにつきましても、いろいろ
検討いたしたのでありますが、かりに一〇%増の
需用を一応まかなうといたしましても、
電源開発のためには、大体年々六百億ないし七百億円の
資金が必要なのであります。またかりにその
程度でありましても、結局
昭和三十
年度におきましては、まだ三〇%近くの
電力が
不足するという
傾向にもあるのでありまして、この辺がこの
需用増に対する
計画というものに対しまして、絶えず
資金並びに
資材の面から、これをどういうぐあいに
調整して行くことが必要であるかということが問題にな
つて参るのであります。ただいまその理想と現実というものをかみ合せまして、一応の
公益事業委員会の案といたしましては、まず
資金計画を申しますと、あとでちよつと
電気料金等の問題について、ある
程度触れさせていただきますが、その場合に、結局
電気事業の再
評価をいたさなければならない時期にな
つておるのであります。その再
評価によりまして、
償却しなければならない
償却費とか、あるいは他の
金融機関等からの借入金あるいは
社債の募集、その他
見返り資金等を
考慮に入れまして大体六百億
程度の
資金計画を本
年度組んでおるのでありまするが、このうち約二百五十億につきましては、
発送、
変電等の
改良工事、あるいは
配電拡充の
工事というようなことを
考えております。特にこのうちには、いわゆる
電力の
ロスというものが非常に多いのでございまして、これが戦前は二〇%からせいぜい二四、五%くらいでございましたのが、戦時中から戦後にかけまして、
資材の
不足その他の
関係で、
送電線その他の修理が十分参りませんでしたような
関係もございまして、その他
壇用という言葉を使
つておりますが、盗用せられる
分等をも含めますと、現在におきましては、
電力のそういう
ロスが大体三〇%近くもあるのであります。この
ロスを極力減退して参るというために、本
年度約二百五十億円のうちで、八十八億円くらいを見ておるのでありますが、そうい
つた今の
送電線等の
改良工事も含めまして二百五十億、それから今後における
電源の
開発工事につきましてはい従来からの
継続工事と、それから本
年度に入りまして新しく
計画いたします
新規工事等を含めまして、三百五十億というものを
考えております。その大部分というものは、
見返り資金によ
つてまかなわれることになると思
つておりますが、そういうことで一応本
年度六百億というものを想定いたしておりますが、
電気事業会社等の
考えは、これをまだまだ上まわ
つたような
計画をいろいろ
検討しておるようでありますが、何分にも今申しましたような
資金の面からいたしまして、どの
程度におちつくかということは、今後の研究の結果にまたざるを得ないと思
つておるのであります。しからばこの六百億のうち
電源開発のために充てられる三百五十億によりまして、今後どういうような
電力の
増加が
考えられるかと申しますと、二十七
年度、二十八
年度等において、新たにどの
程度の
新規工事が予定せられるかということは別にいたしまして、今申しました
資金で、従来の
継続工事と二十六
年度における
新規工事とを今後において
継続して進めて行くという前提をとりますと、
昭和三十
年度におきまして約百三十五万キロワットばかりの増量ができるのでありますが、それにいたしましてもやはり当時の
需用を予想いたします場合に、三割
程度の
電力の
不足を来たすのではないか、かような
考えをいたしておるのであります。
従つてこの問題につきましては、今後
電気事業の
実態を十分
健全化いたしまして、あるいは
社債をさらに募集する
方法を講ずるとか、将来は増資の道を
考えるとか、あるいはさらには
外資導入の道も開くように努めるというようなことが、今後における
電気事業会社の最も大きな使命であると
考えておるのであります。ころい
つた電気事業会社の
経理の
健全化をはか
つて参りますことが、結局今後における
資金調達に役立ち、言いかえれば
電源開発に力を注いで行ける理由であるのでありますが、御
承知のごとく今日の
電気事業会社と申しますものは、いわゆる
資産再
評価法による再
評価を、
電気事業再
編成令によりまして新
会社ができますまでは、
法律の上で禁ぜられてお
つたのであります。言いかえればそういう
禁止の道がなければ、他の
事業会社と同様に、もつと早くから再
評価の
方法を
考えまして、特に
電力のような
固定資産の非常に多い
事業におきましては、これに必要な
減価償却を前々からいたしまして、少くとも現状の施設をそのまま持続して行くということを、
考慮しなければならない問題だ
つたのでありますが、先ほど申しましたような法令上の
禁止規定もございまして、結局新
会社ができるまでは再
評価を行うことができなか
つたのであります。そこで今度五月一日を期しまして、新
会社が発足せられると同時に、この再
評価の問題が、各
会社とも非常な
関心事にな
つて参りました。もつともその時期をいつにするか、あるいはどの
程度再
評価するかということにつきましては、これはそれぞれの新
会社の
首脳部の
考えによ
つて行わるべき問題でございますが、かりにこの
九つの
会社の全体の現在の
資産を
帳簿価格で表示いたしますと、約三百三十億にな
つておるのであります。これを再
評価法によ
つて許される
最高限度まで再
評価をいたしますと、約三千八百億円になるのであります。倍率は十一・五倍ということになるのであります。ところがこれに対する
償却を、しからばどの
程度やれるかと申しますと、
定率法によりますと、約二百四十億
程度の
償却ができることになるのであますが、これが現在再
評価を行わない場合におきましては、わずか二十億から、二十四、五億
程度しか
償却ができない。言いかえれば従来
日発及び旧
配電会社の総
収入が、総計二十五
年度等は八百億ほどございましたが、そのうちでわずかに二十億前後のものしか
償却をしていない。言いかえればみすみす
資本の食いつぶしをや
つて参つたというような
状態でございまして、この点をどうしても、健全な新
会社の
経理状態を達成いたしますためには、再
評価法によりまして、どの
程度再
評価をいたし、どの
程度償却するかということは、これは先ほど申しましたような
意味で新
会社の判断すべきところでありますが、いずれにいたしましても、この再
評価をいたしまして、
償却を相当見積りましで、いわゆる
自己資産の蓄積というものに振り向けねばならぬということが、
一つの大きな問題なのであります。この問題が最近特にこの
電気料金の
値上げの問題として、いろいろ問題にな
つております
本質の、一番大きな点だと
考えているのであります。そのほか
修繕費等につきましても、最近のように鉄鋼でありますとか、
セメントでありますとかいうような、
資材の非常な値上りというような点からいたしまして、
修繕費等の金額が相当上昇する
見通し、それからまた
石炭費などにつきましても、たとえば二十五
年度におきましては四百九十万
程度の
石炭をたいておりますが、先ほど申しましたように、年々激増いたします
需要に対処いたしますためには、やはり
石炭を相当たかなければならぬのであります。今日のようないわゆる
豊水期に近いときにおきましても、
相当量の
石炭をたいているのであります。二十六
年度の
計画につきましては、六百二十万トンくらいの
石炭をたかざるを得ぬのじやないかというような
見通しであります。またこれに対する
石炭の単価というものが、御
承知のように従来は一トン三千三百円でありましたものが、最近の
傾向では四千百円、さらにそれを上まわるというような
状況にもな
つて参つておりまして、その
石炭費の
増加の問題、あるいは
人件費の問題、これは御
承知のように本年初めに中労委の裁定によりまして、
電力事業の
従業員の方々の
賃金ベースというものが、従来八千五百円
ベースでありましたのが、一万二百円
ベースに上
つているというようないろいろな点がございまして、ここに
電気料金の値上のやむを得ないという
本質があるわけであります。しかしながらこの
電気料金の問題につきましては、
公共事業令によりますれば、あくまでこれは
電気事業会社の方でそれぞれ必要とする
料金の
改訂を
委員会に申請いたしまして、
委員会といたしましては、それを
公聴会等にかけまして、
十分需要者側の意向を反映するようにいたしまして、適正なところに結論しなければならぬのであります。
従つて世間で七割何分とかいろいろな話は出ておりますけれども、そういうことはいまだ何ら決定したものではないのであります。新
会社がいずれ、最近の
情勢では
電気料金の
改訂の申請が出て来るとは思
つておりますが、その際に今申し上げましたような観点だけは
中心に置きまして、
電気事業者並びに
消費者の間の
利害関係の
調整というものを、いわゆるレギユラトリー・ボデー、
公益事業委員会としては
考えて参らなければならぬと
考えておりますが、そうい
つた電気料金の問題を、先ほど申しました
意味で、新
会社の
経理実態を健全にして行く。言いかえれば、
世間ややもいたしますと、この
電気料金の
値上げによりまして、いかにも
電源開発工事をその
料金収入によ
つて行おうというような
考え方ではないかという疑いを持
つて見られているようでありますが、あくまでもこの
料金の
改訂の
中心というものは、新
会社の
経理内容を
健全化いたしまして、先ほど申しましたような
資本の食いつぶしにならないように、そういう点を
健全化いたすことが
中心になるのでありまして、それによ
つて第二段の策として
資金の
調達を容易にして、そしてその上で
電源の
開発をや
つて参りたい。こういうようなねらいにあるのであります。
以上が新
会社が発足いたしまして、特に新
会社といたしまして、その性格上今後の
電源開発の問題、あるいは特に最近に問題とな
つております
電気料金等の問題につきましての一応のアウト・ラインでございますが、なおその他の点につきまして、言い足らざるところその他は、御質問に応じまして、お答えできる範囲でお答えいたしたいと思
つております。