○
安芸政府委員 それでは
国土調査法案に対しまして、今までの経過とそのねら
つていることにつきまして御
説明申し上げたいと思います。
終戦後、私
どもはどうして生きて行こうかということにつきまして、それぞれいろいろな分野で考えられていたのでございますが、その中におきましても、われわれの持
つておりますものを最も有効に
使つて行くということが最も必要ではないか、そう考えて参りますと、私
どもの持
つておるものと申しますと、
土地でございます。この
土地が今までどういうふうに使われており、これをもう少しよく
使つて行けばどうなるだろうかというようなことにつきましては、
民間におきましても考えられておりましたし、また
昭和二十二年だ
つたと思いましたが、
経済安定本部の中に
資源委員会が設けられました際におきましても、そこにおいて最も大きな
課題として考えて参
つたのでございます。その後
民間の
研究をしておられる
方々、それから
委員会において考えておりました方
たちも一緒になりまして、この問題についていろいろデイスカツスして参りました結果、一体
土地を最も有効に
使つて行こうと申しましても、われわれとしてもすでにもう長いこと
使つて来ておるのでありまして、ほとんど
日本では
使つておられないところはないというのが
実態でございますが、しかしもう一度振りかえ
つて、どんなふうに使われているかといいますと、非常にいろいろな点でわからない点が出て来るのであります。たとえば
日本の
地籍を見ましても、百二十何万町歩という、
耕地のおそらく二〇%を越えるような
土地が「その他」というような項目に入
つている状態で、かかる
土地が
一体生産力をどの
程度まで実際あげ得るものか、実際どの
程度のものをつくり出しているのかという点まで深く考えて参りますと、どうも
はつきりしていない点が非常に多いのでございまして、
土地の持
つております
生産力というものについて、もう少し徹底的に
調査し、
研究して行くべきじやないか、その上に初めて最も有効な
利用方策が立てられるのじやないかという考えにな
つて参りまして、
資源委員会におきましては、
調査を実行するようにという勧告を
政府へ申し入れたのであります。
国会におかれましても、その点非常に
関心をお持ちであ
つたと思うのでございますが、第五
国会でございますか、早急に一貫された
土地計画、
土地調査をすべきであるという建議をお出しにな
つたのでございます。私
たちが
土地の
実態を知ることが、今後
土地をどう
使つて行くかという上に大きな問題になるのでございます。なかなか
土地の
実態というものが
はつきりわか
つておりません。
実態と申しましても、これは
土地がどんな
実態であり、どんな
生産力があり、もしそれが何かほかの
原因で阻害しているものがあれば、どんな
原因で阻害しているのかという点まで考えて参りますと、先ほど申しましたように、
日本の
土地は非常にたくさん、古い歴史を持
つて使われており、この
土地をよくして行こうという
努力は、もちろん各
方面でなされておるようであります。たとえば
日本の持
つております
土地について、各
方面で所管されております農林省なり、あるいは水の方におきます建設省、あるいは
電気関係の
方面でも、非常に多くの
研究調査が進められて来ておることは確かなのでございますが、しかしそれが今まで非常に個別に行われて来ていた点、それからそれぞれが自分の所管の
目的のみで
調査が進められて来たという点がございまして、これをほかの方に使うと申しますか、そういう点にな
つて参りますと、必ずしもそのまま有効に使えない。せつかく
調査されておりましても、その間にお互いに連絡が非常に少い、統一されてや
つておらないために、非常に
費用の損失もあると考えられますので、これを一貫した形で
調査をすべきではないかと考えまして、そのまとま
つた形として、
国土の
調査をなすべきであると考えて来たわけなのでございます。
私
どもこういう点に
関心を持ちまして、いろいろ
調査を進めて参りました。たとえば
土地の
生産力を見ておりましても、これは
場所々々によ
つて特殊な性格を持
つておりますし、一様には言えませんが、ある
場所について考えてみますと、毎年々々だんだんと
土地の
生産力が減
つて来ておる所もございます。ある
土地では長い期間にわた
つて詳しく調べてみますと、ある所では比較的、ほかの
條件に煩わされないで、
割合に平均されたような
生産力をあげている所もございますし、またこれはある
理由だと思いますが、ある所ではいいときはいいが、非常に
変動が多い所がある。要するに今後は
日本の持
つております
国内資源をもつと有効に
使つて行こうというふうに考えますと、まずそのために
国土の
総合開発とか、いろいろな問題が起きて来て、早急に開発しなければならないというふうに
一般の声が高ま
つて参りまして、各種の機関もできますし、いろいろ検討を進めております。しかし
日本のように非常に古くから使われ、しかも非常にたくさんの人が住んでおります所きは、なかなかそういうふうな、新しくものを起して行こうというには、いろいろな問題も起きて参りまして、
実態そのものをよく知
つていないと非常に無理が行くということであります。たとえばある
一つの
目的のために開いて行こうといたしましても、そのほかにいろんな
條件がありますので、早急に行かない。そのためにまたマイナスのような
現象もずいぶん起きて来るのでありまして、そのためには全体としてどういうふうに物があるかを、
はつきりとつかんでおくことが、こういうものを進展させて行く上に、非常に必要だと思うのでございます。特に
土地の
生産力、
土地から得ます農
作物が主になりますが、そういうものを見ましても、先ほど申し上げましたように、全体的に見ますれば、ある
地域ではむしろここ数年の
聞逐次生産力が上
つて来ております。
土地の
面積も明治の初めから見れば非常にふえて来ておりますが、ここ十年、二十年の間はほとんど停滞しておりますし、
生産力もだんだん
停滞気味にな
つて、しかもある箇所ではむしろ減
つて来ておる。しかも非常に不安定な
生産をあげておる所もあるわけなのでして、今後
国内の
資源を有効に利用して行く上から考えますと、どうしたら
土地の
生産力を安定さすかということが、最も必要なのじやないかと思うのございます。とにかく
日本の
土地の
生産力を知ろうといたしますためには、もちろん
面積的な
広がりというものも必要であるし、同時にその持
つております
土地の質も知らなければならぬのでございます。その上に私
どもは最も安定された形の
生産力をあげて行くという方向に、これから進んで行かなければならないと考えるのでございまして、もしもこのように、われわれが持
つております
土地の
生産力を安定させて行くということになりますれば、そのためには何が必要か、何を知らなければならないかということをまず考えまして、それに必要な
資料を、全国的に統一された形でこれを調べて行きたいというふうに考えておるのでございます。
それで今回のこの
国土調査と申しますものは、この
資料を収集いたしましてこれを実際に事業化して、具体的に
仕事をして行かれるところへ提供しようと考えておるわけでございます。先ほどある所では
土地の
生産力が減退しているということを申し上げましたが、実例について考えてみますと、たとえばこれは
日本では非常に特殊なものではございますが、北海道とかあるいは
南九州のような
火山灰地帯におきましては、逐年に
収量が減
つておるような
現象もございます。これは一体何が
原因だろうかということを考えますと、もちろん
肥料が減
つて来たということもあるわけであります。しかしああいうふうな非常に粗
粒地の
土地の
構成のところでは、
肥料がどんなふうに作用するかということが問題になるだろうと思うのでございます。どうせそういう所は
畑作が主でありますから、
割合に
燐酸系の
肥料を使うだろうと思います。たとえば
南九州では骨粉なんかを非常にたくさん
使つております。ああいうふうな粗
粒地のところでありますと、表面の土砂が流れるということも考えられます。そういたしますと、そういうところに
使つております
肥料も同時に流されるというようなことで、
肥料の効果が非常に少いと思われるのです。そういうふうな
土壌の
構成、それからそういう
火山灰地帯といたしますと、多少傾斜いたしておりますので、そういう所ではまた表土が流されるというようなことも入
つて参ります。しかし
作物を植えます場合、あるいは
耕作いたします場合に、そういうものを自然に阻止できるような
方法、たとえば
作物の輪作の問題とか、耕やす場合にいたしましても、
耕作の仕方でこれを阻止することができるというふうに考えられて来るのであります。そういう
一つの例もございますし、これは私の方である一河川について調べたわけでございますが、たとえば
利根川水系について調べて見ましても、一番
作物が安定していると申しますが、反当の
収量が多いと同時に、その間の
変動の非常に少いような地点を考えてみますと、
利根川地帯で最も多くの
面積を占めており、しかも水があ
つて非常にいいだろうと考えております
川沿いの部分は、非常に低い
土地でございますが、そういうところは
収量が非常に少くて、しかも非常に
変動が多い。むしろ低いところから中段に上りました幾らか
土地の高い方は、反当
収量も多いし、また
安定度も高いということがわかるのであります。それからまたずつと上流の方に参りまして高くなりますと、全体の
収量が減
つて来る。これは気候的ないろいろなものがあるかと思いますが、そういうような
状況に分類されるのであります。これも調べてみますと、最も低い所、多くの
面積を占めております所は非常に
排水が悪い、これは逐次川床が上
つて来れば自然に
排水が悪くな
つて来る。同時にだんだん大きな堤防をつく
つて参りますと、川が自然に上
つて参ります。そういたしますと
排水が非常な支障を来して来る。そのために
地方的な雨とか、そういうようなものも非常に影響して参りまして、
生産力が非常に不確定になるのであります。こういうふうな問題が起きて参りますので、これに対する処置といたしますれば、
畑作地帯、
水田地帯—同じ
水田地帯でも
低湿地帯、あるいはその
中間地帶ということでいろいろかわ
つては参りますが、その
原因を探
つてみますと、そういうところでは水のはけがいいとか悪いとか、その
土地の使い方という問題に改良し、考えなければならぬ点があるのじやないかと思います。同時にまた
土地が非常に細分されておりますために、
耕作の
方法とかそういう問題がかなり影響して来るのじやないかという点も考えられるのでありまして、要するに
日本の
土地の
生産を安定化させて行くためには、
土地の
広がりを知ると同時に、その
土地の質を知る
—土地の質と申しますのは、
土壌の物理的な
構成と同時に化学的な
構成—さらにこういう所が水が非常にかかりいいとか、
排水に非常に苦しんでおるとか、そういう問題を探り、それを
耕作して行くのに最も都合のよいような
状況をその上につく
つて行くということが考えられるのでありまして、そのために
面積を知り、
土地の
状況、さらにそれにどのような
生産を上げているかということを知ることが必要だと思うのであります。さらにこれが
耕地から
林地の方へ入
つて参りますと、その
中間地帶をどういうふうに
使つて行
つたらよいかという問題も起きて参りますし、
林地自身についても、今後
土地の保全という面と同時に、森林の
生産力をいかにして上げて行くかということも、私
ども考えなければならない重大な
課題でありまして、そういう面を知るのには、今申しましたような基礎的な
資料が必要だと思うのでありまして、そういう面の
調査を進めて行きたいというふうに考えた次第でございます。
大体今申しましたような
趣旨で
国土の
調査をや
つて行きたいと思うのでございます。ところが
国土全体を知る、今申しましたような数字を、
国土全体について
はつきりつかむということは、実際なかなか容易ではないのでございまして、
費用の点から申しましても、非常に
多額な
費用がかかりますので、これを
現実に
実施して行く上におきましては、どういう
方法が一番いいだろうかという点についていいろろ考えたのでございますが、その結論といたしまして、大体御審議をお願いいたしますような
一つの案を私
どもつく
つたわけなんでございます。
大体その
調査の
内容といたしましては、
基本的な
調査、それから
土地分類調査、さらに
水調査、
地籍の
調査というふうに考えたわけであります。そういたしまして国ではこの場合
基本的な
調査を行い、さらにその
土地分類あるいは水につきまして、その
基本になりまする
調査を行います。これは大体考えてみましても、
国内場所々々によ
つて非常に違うとは申しますが、実際は大体において幾つかの同一種類のものに分類することができますので、その所におきましてその全般を調べて行く場合に、
基本になる
調査を国が行いまして、広く
一般にはそれになら
つてや
つて行けるような
方式を考えたわけであります。
それから
地籍の問題でございますが、これは特に実際
土地をどういうふうに
使つて行こうかということにつきまして、
土地の
生産力を安定させ、さらに増加することを実際希望し、
現実に行いたいという
地域につきまして、特にそういう問題はそういう所でや
つていただきたいというふうな
方式に考えております。と申しますのは先ほ
どもちよつと申しましたように、たとえばある
火山地帯で
生産力が落ち、
変動が非常に多いので、これを安定させたいとか、あるいはこれは
現実に申しますと、
土地改良の設定によ
つて土地改良を考えておられますが、さらにある所では
土地の
交換分合を行いまして、
耕作方法からその
生産力を安定させて行こうというふうな
努力がされておりますので、そういう所に全般的な、統一された形での
調査を進めて行き、その上に個別ではなくて、全体と同じような
一つの
基準に
従つた調査を
行つて、その具体的な
土地改良計画をつく
つて、実際の
仕事をして行くものを、むしろ促進させるような
方式をとりたいと考えた次第でございます。それでございますから、大体国で主としてやります
仕事は国の
費用でやりますが、具体化して行こうという点につきましては、これに非常に
関心を持
つておられるところが主体になりますので、これに対しては国としてはこれに援助するというふうな形で進めて行きたいと思うのでございます。こうなりますとあるいは非常に時間がかかるということになりますが、私
どもとしてはなるべくこれが早く全般的に進み得ることを希望するのでございまして、
現実に私
ども見ておりましても、実際に
土地を耕しておられる
方々からの希望が非常に多いのでありまして、これをできるだけ促進させて行きたいと思うのでございます。それそぞれの地区でそういう
計画をお立てになりますと、新しく
地籍も
はつきりして参ります。
土地面積が
はつきりしないために、いろいろな問題が起きていることも聞いておるのでありますが、その問題もそれによ
つてまた自然に解決がついて行くのではないかというふうに思
つておる次第でございます。
以上簡単でございますが、よろしくお願いいたします。