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1951-02-09 第10回国会 衆議院 経済安定委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月九日(金曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 圖司 安正君    理事 志田 義信君 理事 永井 英修君    理事 竹山祐太郎君 理事 勝間田清一君       岩川 與助君    金光 義邦君       寺本  齋君    渕  通義君       細田 榮藏君    宮原幸三郎君       有田 喜一君    笹山茂太郎君       森山 欽司君    佐々木更三君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    久米 武文君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         外資委員会事務         局長      賀屋 正雄君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       秋山孝之輔君         日本専売公社総         務局長     曽田  壯君         日本専売公社生         産局長     上林 忠次君         日本専売公社製         造局長     坂元 晃佑君         日本専売公社経         理局長     内藤 敏男君         参  考  人         たばこ耕作組合         中央会長   宗像 利吉君         專  門  員 圓地與四松君         專  門  員 菅田清治郎君     —————————————  二月九日  委員中崎敏君辞任につき、その補欠として佐々  木更三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  外資たばこ民営問題に関する件  参考人の選定に関する件     —————————————
  2. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまより会議を開きます。  これより外資たばこ民営に関する件を議題に供し、まず大蔵当局より意見を聽取いたします。西川政務次官
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 タバコ民営問題につきましていろいろと議論がございまするが、先年より臨時専売制度協議会というものをつくりまして、今日まで十回の委員会と、五回の小委員会を開きまして、あらゆる角度から民営に対する検討をいたして参つたのであります。しかして、最近におきましては一月二十九日に開いたのでありますが相当回数も経ておりますし、長期間にわたるので、一日も早く結論を出したらどうだろうかというので、来る十二日に協議会として最後の結論を出していただくこととなりましたが、自由な立場から意見の出て参ることを期待いたしております。その経過の様子を見ておりますと、大体民営論がよいのではないか、根本的にタバコ事業民間のくふうによるのがよいのではないかという意見がございまするが、一方におきまして完全な民営論、たとえば葉タバコ製造並びにタバコ製造を、全部民営にするというふうな完全民営もありまするが、現在の階段におきましては、財政収入に対して千百七十億かの専売益金がありまするが、この金額建前から考えましても、また農家経済考えましても、にわかにこの葉タバコ民営はどうであろかという意見が、強硬に言われております。それでありますから、この十二日には、多分結論といたしましてははつきりしたものは出なくて、両論わたる結論が出るのじやないかということも期待いたしておる次第でございます。協議会経過は簡単でございますが、詳細につきましては監理官より補足して説明いたさせます。
  4. 久米武文

    久米政府委員 臨時専売制度協議会の関係からまず申し上げますると、一昨年八月一日の協議会としての第一回の会合の席上、大蔵大臣から「タバコ民営、の可否について」という諮問事項が出ております。爾後協議会として十回、小委員会として五回、あらゆる毎度から、協議会としては自由な検討を続けて参つて来ているとわれわれは見ております。諮問機関たる協議会としては、独自の立場から自由に問題を検討し、自由に結論を出すというのが協議会建前でございます。われわれの方からは、あらかじめ一定結論というものを予定し、あるいは予測はいたしておりません。協議会構成員、すなわち黒田英男さんを会長といたして、当初ほかに十七名、そのうち佐々木さんがなくなられましたので、現在は黒田会長以下合計十七名、この協議会メムバーの御自由な御意見によつて協議会結論が出る。その結論というものは、今度の月曜日の十二日に大体まとまるのではなかろうかということを、われわれとしては観測いたしておるのでございます。正式の答申を待たなければ協議会としてどういう意見だということは、政府として予測し得ないわけでございます。  一応この段階で御説明はとめまして、さらに御質問に応じまして補足したいと思います。
  5. 圖司安正

    圖司委員長 これより質疑を許します。森山欽司君。
  6. 森山欽司

    森山委員 ただいま西川政務次官並びに久米監理官から、専売制度協議会についてごく簡単な説明がございましたが、疑問のところがあります。西川政務次官の御発言によりますと、民営について結論両論ある、その両論というのは、完全な民営か、あるいは不完全な民営か、すなわち耕作面だけに専売制度を残して、あと民営にするという不完全な民営論であるか、あるいは民営論がいいか、民営論はいけない、反対するという二つ意見か、どちらの両論があるのか、念のためにお伺いしたい。
  7. 西川甚五郎

    西川政府委員 私の先ほど申しましたのは、完全民営が大体今の委員会空気であります。しかしながら葉タバコ耕作の問題につきましては、今日の農家経済あるいは専売制度収入から考えまして、完全な民営は無理ではないかという論が出ていることを申し上げた次第であります。
  8. 久米武文

    久米政府委員 私からさらに今の補足説明をいたしますると、完全民営についても賛否両論がありますし、不完全民営についても賛否両論がある。先ほど西川政務次官から申し上げた通り、大体の空気としてわれわれ事務当局は、單に黒田会長のお手伝いをする意味でもつて協議会に列席いたしているのでございますが、そういうところから感じます大体の空気は、タバコ事業理論上の問題として、その本質論から見れば、企業家創意くふうによつて健全な発達、能率的な運営をはかるという意味から、民営とすることが望ましいのである。理論の問題としては民営の方が望ましいのであるというような意見が多いように感じております。この前にも申し上げました通り政府としては一定結論は予測していない。協議会として自由なお立場から御検討願いまして、御自由に結論を出していただく。この前私も大分森山委員から、政府としては協議会結論をあらかじめ予定するような、あるいは協議会審議に悪影響、インフルエンスを與えるような発言はなるべく避けるようにとの御発言により、私もそのように努力いたしまして、この前のときは答弁をいたしております。合日はさらにもう少し率直に、実際どういう感じを受けているかという御質問もあるように思いますので、少し申し上げた次第でございます。
  9. 渕通義

    渕委員 ただいま西川政務次官のお話を聞いておりますと、完全民営不完全民営——不完全民営の場合においては農家経済のみならず、また国家財政収入の面から推して、不完全民営が強いという意見もあるということですが、そこは少し理論的に合わないのじやないか、と申しますのはタバコ専売で一番もうけているのはどこかということが結論的に出される、今のような不完全民営をすることにおいて、国家財政収入がふえるということであるならば、耕作者を徹底的にいじめるという結論が生れて来るのではないか、でき上つたものを販売する面においてはあまりもうからないが、耕作者のつくつているタバコをば、安く買い上げるということに、大きな圧力が加わつているというように感じられます。この点ははなはだ理論的に矛盾いたしておると思いますが、西川政務次官の訂正を要求したいと思います。
  10. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 西川政府委員協議会意向に籍口して、ほんとうは政府の実際に考えている民営論を言つておられるのだろうと私は思うのであります。今西川政府委員の口調を聞いていると、政府考え方は、タバコ民営にすれば創意くふうがなされる、従つてそこには安くてうまいタバコが供給されるのであるということが、最大の原因のように聞えるのであります。そこで私は責任者たる大蔵当局に聞きたいのでございますが、民間創意くふうでそういうことがなされるものが、現在大蔵省の所管であるところの専売制度でなぜなされないのか、なぜやらないのか、もし民間創意くふうでそれがなされるならば、責任者のあなたが、その点まず現在の専売制度においてこれを実施することが、あなたの責任であろうと思う。そこで私は西川政府委員もしくはここにおでになりますならば、専売公社当局質問したいのでございますが、民間創意くふうで、味がよくて安いタバコができるものが、現在までなぜに大蔵当局並びに専売当局において、そういう措置がなされなかつたのかということが第一点、かりに当局の手落ちによつて、あるいは当局の怠慢によつてそういうことが現在までなされなかつたといたしましても、将来において民間でできるものを、なぜ現在の専売制度においてできないのか、こういうことをひとつ責任当局としての責任ある答弁を、まずお伺いしたいと思うのであります。
  11. 久米武文

    久米政府委員 私は先ほど答弁を途中で中断いたしましたけれども、先ほどお答えいたしましたのは、タバコ事業の性質を基礎とした理論上の問題ということだけを申し上げた。現在の財政経済事情その他諸般の内外事情のもとにおいて、タバコ民営可否がどうかということについては、私としてはまだ答弁をいたしておらないつもりであります。
  12. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 それは政府意向ではなくて、そういう議論があるのだ、こういう御答弁だといたしまするならば、私は一応了承いたしまして、あらためて西川政府委員並びに専売公社当局に御質問申し上げます。そういう議論がなされておつて民営にすれば、創意くふうによつて、味がよくて安いタバコができるという意見協議会にあるようでありまするが、大蔵当局並びに公社当局が、民間でできるものを専売制度でできないはずはないと思う。できるかできないか、そういう当局責任ある考え方責任あるところの将来の運営方式、そういうことについてひとつここで御答弁いただきたいと思います。
  13. 秋山孝之輔

    秋山説明員 ただいまの御質問は、現在の専売公社において、民間企業と同様の成績が得られるかどうかという質問であります。これは得られるとも申し上げられるし、得られないとも申し上げられる。というのは現在の専売機構というものは、必ずしも企業体に適当した組織にはまだなつておらないとも言えるのであります。ただここにむずかしい問題は、自由企業というものには一つ意欲が動いておる。もうけたいというような感じ相当強いということから、官業においてでき得ないことも、民営に移せばでき得ることもあるのであります。現在においては、われわれとしては組織の許す範囲において漸次改善をして、相当成績を上げ得ると私は見ている。ですから民間でできないものをなぜ公共企業体においてできないかということは、多少組織も変改しなければいけないのではないか、こういう考えを持つております。
  14. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 現在の機構を改革すれば、民間企業におけるところの創意くふうと同じような成績を上げ得るという秋山総裁言葉は、私は非常に含蓄のある重厚な答弁だと思います。むろん私たちは現在の公社制度機構をそのままにして上げられるとは思わない。従つて将来、現在の専売制度を持続するとすれば、当然これらの機構とか、運営とか、その他に改善すべきものもあるであろうし、かつ秋山総裁言葉によりますると、民営にすれば、現在の公共企業体よりは、もうけるという意欲がわくだろうということでございます。現実においてはそうであるかもしれませんが、これは公社当局の心構えとしては私は不満であります。民営においてそういう生産意欲が起きるならば、当然公社当局といえども、国民大衆に奉仕する、国家自立経済の上にこれを奉仕する、こういう一つ意欲が、公職を持つている者として起きなければならない。むしろ国の産業及び財政をあずかつておる公社当局公職に携つておる人々こそ、民間人々よりももつと創意くふうをなす意欲があるべきはずだと思います。それが現在起きていないということは事実かもしれないが、私は非常に不満であります。しかし現在はそうであると言うならば、秋山総裁を初めとして、当然これは公職に立つ者は、こういう意欲を今日からでも起してもらわなければならない。そこで私は秋山総裁にお聞きしたいのですが、こういうふうに機構を改革したり、あるいはまた公社の職員の国家奉仕観念を旺盛にする、こういう措置がなされ、当然民営と同じような効果が上げられるとすれば、いまだ協議会結論も出ていない、あるいは議会の結論の出ておらない現在としては、秋山総裁として、現在の販売制度を改革することによつて同じような効果を上げ得るという確信を、当然持つておるはずであります。かつまたそういうことを今日からでも努力しなければならない義務があなたにあると思いますが、この点いかがでございますか。
  15. 秋山孝之輔

    秋山説明員 ただいまの佐々木委員のお言葉はまことに理路整然として、私一言もそれに対して反対意見はないのであります。あるいは言葉の下手なために、まことにわれわれとして不勉強をしておるかのごとく響いたのではないかと思いますが、私はその点においてはまつたく違う観念を持つて仕事に従事しておるのであります。しかし理論はさようでありますけれども、多くの場合において、これは世界至るところ、民間企業とパブリツクの仕事というものについて、どういう差があるかということは、ただいまの委員の方も御承知のはずであります。理論はまことにその通りであります。しかしながらそこに何物かやはり足らぬものがあるはずなんであります。(「プラスつてあるだろう」と呼ぶ者あり)それはプラスもありましよう。マイナスもありましよう。そういうことで私は、前のままでも成績相当に上げ得るけれども、機構その他において改革するなら、まだ上がる、こういう意味のことを申し上げたのであります。
  16. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 関連質問でございますから、あまり長くはいたしません。あとで私独自の質問がありますから、そのときにお聞きいたしますが、一体あなたは公社総裁として民営かあるいは現在の専売制度を持続するか、どちらかに決定しなければならない。その段階において一体公社総裁として、あなたの本心は、専売制を続けるつもりか、それとも民営になつてもしかたがないというお考えでございますか。総裁としてのあなたの決意をお聞きしたいと思います。
  17. 秋山孝之輔

    秋山説明員 私はまだ結論には達しておらないのであります。(「責任上としてどうか」と呼ぶ者あり)責任上でも達しておらないのはいたしかたないと思います。
  18. 森山欽司

    森山委員 大分途中で関連質問がありました。先ほどからの西川政務次官の御答弁では、一体協議会審議状況をあなたはどの程度認識になつておるか。今久米監理官の言うところによれば、そもそも根本的に民営にするかしないかという両論がある。ところがあなたの御説明は、民営論の中に二つつて両論が出るということでありますが、一体協議会の進行をどの程度認識になつておるか、私はまことに疑問だと思う。今の監理官の御説明とあなたの御説明とは完全に食い違つておる。従つて本問題に関するあなたの認識はきわめて浅いものであると私は断定いたします。そこでこの協議会につきまして、栃木県の下野新聞という地元新聞に、次のような記事が出ております。すなわち「臨時専売制度協議会は十二日に第十一回目の会議を開き、いよいよタバコ民営可否に関する最終結論をきめることになつた。一月二十九日に開かれた第十回協議会では、三年越しのタバコ民営問題について何らかの結論を出すことに意見がまとまり、十二日の協議会黒田会長から最終原案を付議することになつたものであるが、協議会としては次の線で答申案をきめるものと見られる。一、原則としてタバコ民営に賛成する。一、しかしわが国経済財政事情から即時民営に移管することは困難である。一、将来の民営形態としては製造販売部門のみを民営にすべきだ。」というような記事が出ております。これはおそらく下野新聞としては、中央に特別のチヤネルを持つておりましても、きわめてこれは小さなものでありますし、かつまた内外タイムス等の各紙にも出ておりますので、これは共同通信等によつて全国にまかれた情報であろうと思います。従つて私は十二日の協議会において、はたしてこの種の結論が出るか出ないかということは、ただちにこれを推測することは困難でありますけれども、このような結論の出た場合には、われわれは重大なる関心を持たなければならないということを申し上げておきたいと思います。従つて私の本日の質疑は、この線に沿つたところを主として重点的にお伺いいたしたいと思います。私は前回の経済安定委員会、すなわち昨年の十二月八日の経済安定委員会においてタバコ民営問題に対して、民営によつてタバコが安くてうまくなるかということに重点を置いて質問いたしたのでございます。もとより安いということは、財政上の益金の現状並びに将来の見通し、及びそれらの益金消費税としてとることの可否ということ、また専売公社の能率というような問題、そういうふうな点から一体安くなるかということをお尋ねし、またうまくなるかということについては、これは外国葉タバコの輸入の問題に関連して外貨の問題、さらにまた全国六十一万の耕作者立場考え、次いで外資導入の問題に入つて行つたのであります。そうしてそのときの結論によりまするならば、これは久米監理官にもこの際あらためて確認しておいていただかなければならぬのでありますが、現在唱えられておる民営論によつて、安くてうまいタバコは吸えないということは、ほぼ結論を得たと確信しております。その意味におきまして、本日は先ほど申し上げましたところの十二日の最終原案なるもの、及び前会の質疑において足りなかつた点について質疑を申し上げるわけです。なお私のごく親しくしておるところの、與党に属しております某議員から、次のような書簡をいただきました。すなわち「来る九日経済安定委員会を開き、タバコ専売事業に関し討議さるるとのことを承つて、私もぜひ出席して委員外発言を求むる覚悟でおりましたが、やむを得ざる用事これあり、欠席いたしますので、左記の点特に質問お願いいたします。  タバコ民営の論拠が、うまく、安いたばこがのめて、千二百億の税金も容易にとれ、かつ外資導入もできて、事業民主化により耕作者にも、販売業者にも、あまり影響がないかのごとくいわれておるが、うまくて安いタバコだけは、民営となつてものめないということは、先日の森山委員質問でほぼ明らかになつたようであるから、さらに次の点の質問を願いたい。一、千二百億の税金がはたして容易にとり得るかどうか、その徴税の方法、現在アメリカ・タバコが流れ込む金額の概算、かつ何ゆえにこのやみタバコを防止できぬか、その原因。二、再生産を伴わぬ、ただ煙と化する葉タバコ外資を入れることの是非並びに日本経済界に及ぼす影響耕作面積が何ほどぐらい減ずるか、その見込反別東北地方関西地方並びに在来種に及ぼす点。三、タバコ専売事業いまだ民主化されておらぬといわれるが、いかがな点か。さらに現公社制度改善の余地なきか。四、官営より民営となりたる場合、販売業者に及ぼす影響、さらに秋山総裁吉田首相を誤らしめたくないという意味が不明である。私も自由党におり、吉田首相をして誤らしめたくないゆえに、民営反対の意思を表示しておるのであるが、秋山総裁も私と同じ意味での誤らしめたくないのか、民営として誤らしめたくないのか、この点もただしたいと思つておる。衣のそでからよろいを見せないように頼む。」というような、與党ではありますが、ごく親しくしております同僚議員からの伝言もあつた次第であります。さらにこの委員会に先立ちまして、外資タバコ民営に関する小委員会調査事項として、約十項目にわたる調査資料を要求し、われわれは最近に至つてほぼその全部に関する資料をいただきました。そこで私の質疑はこの資料に基いていたしたい。  まずこの資料の第一番に、専売益金財政上占める地位というものがございますが、この財政上占める地位ということに関連して私は御質問いたしたい。と申しますことは、伝えられるところによる十二日の最終原案なるものによりますと、わが国経済財政事情から、即時民営に移管することは困難であるとおつしやるのでありますが、一体わが国財政事情なるものが、専売益金に頼らなくていいような事態がいつ来るのであるかということを、私はこの際検討したい。われわれ政治に携わるものといたしまして、国家百年の大計を考えることもとよりでありますけれども、実際においては、せいぜい十年先を見通せばいい方であります。そればかりでなく、現にわれわれの経済安定委員会に先般付議されました経済自立三箇年計画自体すら、一月二十日にこれが成立を見て、二月の初めにはその数字の変更が出て来ておるという状況で、三年先を見通すことすら困難な状況であります。私はそういう意味におきまして、もしも財政事情の大よその見通しが、専売益金に頼らざるを得ない情勢が、少くも十年程度続くということでございまするならば、わが国財政事情から、即時民営に移すことば困難であるという例外的な考えよりも、むしろ反則としてタバコ民営反対すべきではないかと考えます。そういう点から、一体専売益金状態が、過去において、また現在においていかなる状態であり、かつ将来においてどういうことになるか伺いたい。
  19. 久米武文

    久米政府委員 専売益金は最近の財政上きわめて重要な部分を占めておるということは御指摘の通りでありまして、たとえば終戦後の状況を見ましても、昭和二十二年には四百十七億の益金を上げる、二十三年には千一億の益金、二十四年には千百七十八億の益金、二十五年は予算上当初千二百億の益金を予定し、あとで千百二十億に補正しております。二十六年度は千百三十億の益金を見ておる。こういうふうな益金でありまして、二十八年度以降について見ると、一般会計歳入総額中、専売納付益金の占める割合に大体一八%ぐらいにはなつておる。今後何年も先を見通すことは困難でありますけれども、ある程度の年数、この十数パーセントというものは専売益金にたよらざるを得ないであろうということは、想像にかたくないと考えております。
  20. 森山欽司

    森山委員 専売益金一般会計歳入に対して占める割合は、昭和九年から十一年を平均いたしますと約九%、それから租税一般会計について占める割合は大体四〇%でございます。残余のものは、その当時におきましては赤字公債を主といたしまして、それにその他の雑収入が加わつておつたというふうに私は記憶しておる。ところが今後の日本財政は、原則として均衡予算で続けて行くとすれば、税の一般会計に対して占める割合も大きくなり、またそれに対応いたしまして、専売益金一般会計歳入に対して占める割合も大きくならざるを得ないのではないかと考えます、そうしてその税のふえる割合専売益金の方のふえる割合はどうかというと、これは専売益金のふえる割合の方が多少大きくなつておるということは、税に対する比率でほぼわかるわけです。それにいたしましても、戦前、益金の対租税収入比率は大体二割であつたが、現在は大体二割五分です。ですからかりに専売益金が減るとしても、そう減りはしないということは言えるのではないか。そう考えますと、国家財政上、少くも今後当分の間は、専売益金にたよらざるを得ない財政状態に置かれておるということは確実できるのではあるまいか、それが現在における原則ではあるまいかということをあなたにお伺いしたい。
  21. 久米武文

    久米政府委員 ただいま御指摘の通り、ここ約十年くらいの足取りを見ましても、そういうふうな結論になるかと思います。今後専売益金にたよらざるを得ない金額は、多少減ることはありましても、まあ千億程度専売益金をあげなければならないというふうな財政事情であろうということは、大体想像できると思います。もし民営論者の言うごとく民営ということに相なりますれば、この約千億程度専売益金相当するものは、タバコ消費税としてかけるということに相なると思います。
  22. 森山欽司

    森山委員 ただいま監理官が言われたように、今後十年間あるいは当分の間は、とにかく専売益金は千億を切ることはなかろうということであります。これは私は、財政上の通見しとしては誤りない見解であると思う。そして今後の財政事情考えてみますと、たとえば電力の問題これは昭和二十五年度から二十六年度、二十七年度、二十八年度までの経済自立三箇年計画——大体アメリカ、ドイツの例によりますと、毎年発電量は一〇%程度向上する原則でありますが、日本の場合は、国力の関係上、一〇%も増強することはできない。五%弱程度の増強を見込んでおる。しかもなお今年度に要するところの資金は、大体五百億以上であろうと思う。それに対して、見返り資金の充足が百五十億、残りの三百五十億をどうやつて調達していいか政府は困つておる。そうしてこれができなければ、経済自立三箇年計画は瓦解に帰するということが、ちやんと自立経済計画書に書いてある。こういうような意味においても、これは最後の線は財政事情にたよらざるを得ないというように、相当な問題がありましよう。また社会保障制度に関連いたしまして、先般の社会保障制度審議会の勧告案の線に、昭和二十六年度予算が、去ることが遠いものがあるということも、これまた財政当局はよく御存じであろうと思います。そういう意味から言いますと、今後の財政需要というものは、ふえる傾向はあつても減ることは非常に困難だということが言えるのではないか。そう考えますと、この専売益金国家財政がたよらざるを得ないところの重要性は減つて来ないわけであります。それが原則であるとするならば原則として、一体タバコ民営に賛成できるかどうかということは、よほど愼重に考えなければならぬ。例外としてそういう財政事情でなくなるような、たとえば戦前においても、これは一般会計歳入の九%でありましたけれども、国家財政がアメリカのように、さらに低い率程度にしかたよらなくていいというような、きわめて楽な財政状態になる。また他の一般の経済事情も、これは明治以来七十年、八十年かかつて築き上げた国民の富というものを、この太平洋戦争によつて、われわれは一朝にしてすつかり失つてしまつたわけであります。そういうような、戦争によるところのわれわれの損失を取返し、昔以上に、さらに一層の繁栄をするというような経済事情が、一体これから先見込まれるかどうか。一体日本経済復興、再建に今後何年かかると政務次官はお考えですか。
  23. 西川甚五郎

    西川政府委員 ただいま仰せの通り、今日の財政状態から申しましても、また財政均衡予算をとつて参りますためにも、当分専売益金相当額を期待しなければならぬということは事実であります。またどうしてもただいまのところでは、この専売益金の収入にたよらないという経済自立状態が現れて来るまでには、相当年数がかかるのではなかろうかということも事実でありまして、私も同様な意見を持つております。
  24. 森山欽司

    森山委員 しからば原則としてタバコ民営に賛成する、しかしながらわが国財政経済事情から、即時に民営に移すことは困難であるということは、百年の大計とは言いませんが、少くも十年の大計を考えなければならぬところの政治の立場に立つ者といたしまして、むしろ原則と例外が逆ではないか。すなわちタバコ民営に絶対反対すべきものである。それは国の財政経済事情から当然そういう結論が出るべきである。しかしながら、将来何年先のことかわかりませんが——われわれは一日も早くそういう時代が来ることを望む者でありますが、経済財政事情が許すような時期が来たならば、そういうことも考えられることもあろうという程度結論ならば、まだわかる。むしろ原則と例外が逆です、政務次官はそうお考えにならないかどうか。
  25. 西川甚五郎

    西川政府委員 先ほど私たいへん説明がまずくて、間違いを受けた感じがいたしますが、臨時専売制度協議会状態を申しまして、政府はそういうような考えでやつておるということは現在ないのでありまして、協議会結論る待つておる次第であります。ただあのときにこういう話だから違つたというようなことを申し上げまして、たいへん皆さんのお叱りをいただいたわけですが、その結論を待ちまして一応考えてみたいというわけであります。
  26. 森山欽司

    森山委員 それでは問題がちよつと前にもどりますけれども、臨時専売制度協議会に関係しておられる方は実業家とか、政党人あるいは言論界の方というように、各界の方がおられるが、そのうち政党人、代議士は、何党に属しておるかということを伺いたい。
  27. 久米武文

    久米政府委員 現在国会に議席を持つていらつしやる方のうち、参議院の方では黒田英雄さんと高橋龍太郎さんとお二人。それから衆議院の方では、小坂さんは初め民主党でありましたが、途中から自由党にかわられました。それからあとは、自由党の方で川野さん、島村さん、前尾さん、塚田さん、そういう方々がおられます。
  28. 森山欽司

    森山委員 参議院は何党です。
  29. 久米武文

    久米政府委員 黒田さんは自由党です。それから高橋さんは緑風会です。
  30. 森山欽司

    森山委員 そういたしますと、先ほどあなたは協議会のことを御発言になられて、そして多少誘導されるというような御非難を受けたが、私は一向そう思つておりません。しかしこういう顔触れを見ますと、何といつても大体吉田ワン・マン首相の御意向によつて動く方々がはなはだ多いということは、事実であろうと思う。実業界の関係の顔触れをながめましても、そういうにおいがする。ですから、あなた方が誘導しなくても、結論は、先ほど西川政務次官が、間違えられたような結論が出がちな大勢にあるということだけは、ほぼ間違いはないと思う。それから財政上の問題につきましても、実際専売益金はこんなにとれないのじやないかという心配を持つている。この資料タバコの販売の現況等がありますが、二十六年度におけるタバコ製造状況を見ますと、高級タバコをよけいつくつておる、そして安いタバコをようつくつておらぬ。市場においては安いタバコが不足している。高いタバコをなかなか買えないで、生活の苦しい人たちにとつては、私はこれはつらい予算案であるというような感じすら持つている。そういう点から見ましても、どうして政府が高級タバコの方をよけいつくつて、安いタバコの方を少ししか製法しないかというと、結局專売益金をどうしてもよけいとらなければならぬという要求に基いておるということは、事実であろうと思うのですが、いかがでしよう。
  31. 久米武文

    久米政府委員 財政上必要とする專売益金の確保をはかるということは、まず第一の要請でありまして、そういう配慮のもとに、できるだけ実際の需要に応じた販売計画、それに応じた製造計画を立てるのが本筋であろうと思つております。その方針にできるだけ沿いたいという努力をしております。
  32. 森山欽司

    森山委員 予算委員会じやないからこれ以上追究しませんが、あなたの今の御答弁は、非常に苦しい御答弁です。そこで、これは先ほどもお話が出たことでありますが、この專売益金というものは、タバコ事業民営なつた場合においては、税としてとらなければならないと思うのであります。その場合、一体税として專売益金をあますところなくとれるかどうかということを、幸いに主税局長が来ておられますから、率直な御意見をひとつ伺いたい。
  33. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいまのお尋ねはなかなかむずかしい問題でありまして、私どもいろいろ研究いたしておりますが、本日はまだ結論的な御意見を申し上げることは差し控えたいと思います。もともと課税の理想と申しますか、タバコからフルの消費税をとろうという見地から、專売制度は考えられておるわけでありまして、従いまして、タバコから最大限の、しかも最も理想的な消費税を徴收するという考え方をとりますと、これはやはり專売の方がいいという結論に私はなつて来ると思います。またそういうことからスタートされておる。ただ問題は、それだけの見地から專売の問題をきめるわけにも行かない。またその他にいろいろ專売でない利点が相当あると思いますので、そういう点をよく考えてきめなければならないと思います。税としてはたしてどこまでとり得るか、これはなかなかむずかしい問題でございまして、昨年も若干研究してみたのでありますが、もしも他の見地から、民営の方がいいという結論相当有力になりますれば、税の見地からもさらに本格検討を逐げまして、結論を下さなければならないと思います。御承知の通り、酒は今年千七十億見ておりますが、これは專売じやなくて実はそこまで徴收いたしておる。従いまして絶対不可能というわけにも、私は簡單に結論できないと思う。やり方等によつては、あるいはできるかもしれない。ただ問題はいろいろあるようでありまして、一番技術的に問題になりますのは、つまり価格政策で、課税政策を一緒に織込んでやれるところに、專売制度の非常な妙味があるのですが、高級品のタバコ相当高い税金を込めておる、低いのは低くする、その品種なり価格等を、相当政府が総合的に考えて、合理的にきめる、こういう利点がありますが、それが民営になりますと、その辺がどこまで完全に運用できるかどうか、これはひとつ問題だろうと思います。  それからまた葉タバコ等の收納の関係がはたしてうまく行くかどうか。この辺が課税に関連しても相当大きな問題があると思う。従いましてそういうような点につきまして、相当技術的な検討を遂げまして、最後に断定をくだすべきではないか。もちろん相当なところまでなら税金でとれるのじやないかという説も、私は相当有力だと思います。ただしかし、完全に行き得るかどうかということになつて来ますと、そこにまたいろいろ議論が出て来る。従いまして、私は今の段階におきまして、税金だけの見地からこの問題を決定するわけには行かぬのじやないか。考えようによりましては、相当可能性のある課税もできるかもしれない。しかし專売のような完全なようなことは、なかなか行かぬであろうということも考えられると思いますが、その辺のところは全体を考えまして、もう少しよく研究した上で、適当な機会に、もしも必要でございましたならば、結論意見を申し上げたいと思います。
  34. 勝間田清一

    ○勝間田委員 主税局長にちよつとお尋ねいたします。タバコを專売にした理由は、結局は税を確保したいから專売にしておつたのじやないでしようか。その点をひとつ……。
  35. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 專売制度が設けられた理由は、私はおそらくできる限り完全な消費税を、專売の形でとりたい、こういうのが最大の理由じやないかと思います。
  36. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから酒の問題もよく出ますが、従来われわれ予算委員会等において、酒税の脱税防止ということを盛んに言つておつた。これは民営でその中から税を確保して行こうという問題が多いわけであります。私は酒の例はタバコの例と非常に関連して、興味ある問題だと思うのでありますが、一体酒の方の脱税はどのくらい考えられておりますか。
  37. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 現在酒の密造の多いことは、皆様に申し上げるまでもなく、むしろ皆様方の方がよく御存じと思いますが、これは大体御承知の通り一つは酒の正規の生産が大幅に減つている。原料が主として米、麦等の主食とかち合いますので、この原料が実は大幅に消滅を受けて、戰前は大体米四百万石程度使つておりましたのが、ことしで六十万石、麦も戰前五、六十万石使つておりましたのが三十万石、そのように非常に割当が減つておりまして、従つて酒の供給量全体が戰前に比べますと半分、しかも酒税の收入に期待しなければならぬところが大きいのでありますから先般若干下げましたが、それにいたしても相当高率な税率を課税いたしまして、收入を確保せざるを得ない。こういう状況になつておりまして、税收入といたしましては、大分タバコに接近いたしまして、来年度は千七十億円程度見込んでおりますが、それにいたしましても大分基本的にいろいろ無理をいたしております。そういう点も相当あると思いますが、密造等が相当多いことは事実であります。正規の業者の密造は、最近嚴重に調べておりますが、これは量から行きますとそれほどでない。むしろ一般の密造と申しますか、これが相当多いということは、私からあらためて申し上げる必要もないと思います。
  38. 勝間田清一

    ○勝間田委員 酒の値段が非常に高いから酒税の脱税が多い、密造が多いということになつておりますが、結局千七十億という收入を見積つて行かなければならぬ。タバコの方でも一千百二十億ですか、二十六年度の予算はそうなつていると思いますが、そうなりますと、これもかなり政府も努力して下げつつはありますが、しかし相当多額の値段で売らなければ、一千百二十億という税は確保できない。そうなつて参りますと、やはり酒と同じように、ある程度まで專売制度というものを確立しておかなければ財政收入は確保できない。私はこう思うのでありますが、主税局長はどうですか。税の立場からのみです。
  39. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 今申し上げました通り、この点につきましては、一層検討した上で結論を申し上げたい。ごく抽象的に申し上げますと、さつき言つた通りでありますが、ただタバコで一番理想的に最大の消費税をとることが緊要である。また非常に大きな判断の要素ということになりますと專売に越したことはない。これは明らかであります。しかしそれだけのことからだけでは、きめ得られない要素があると思うのでありまして、酒税をどうするか、また消費税民営なつた場合に、どの程度にとり得るかという問題になつて来ますと、今申しましたように、いろいろ検討すべき要素がありますので、本日ここで断定的な御意見を申し上げるのは差控えたいと思います。民営のやり方、形態等によりましても、いろいろまた違つて来るので、そういうこととも関連しまして、どのような税率を盛るか、どういう徴税方法をとるか、そうすれば今のタバコの税収入に比較してどのくらいの税収が入つて来るか、これは相当こまかい具体計画をつくりまして、その上で御意見を申し上げることにいたさないと、かえつて御判断を誤らしめることになると思いますので、その点本日のところは御了承願いたいと思うのであります。
  40. 勝間田清一

    ○勝間田委員 主税局長には、税の立場からだけで聞いておるのでありますが、外国の民営等の問題も、やはり非常に重要だと思うのであります。外国ではどのくらい消費税は確保されておりますか、こういうようなものについての資料はありませんか。
  41. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 必要に応じまして調製して提出してもけつこうだと思います。どこの国でも、税の上では間接税、酒とタバコの税が財源になつております。その全体の歳入の中に占める地位は、その国によつて大分違うようでありまして、貧乏国はどちらかと申しますと、そういう収入がむしろ多いようであります。英米、ことにアメリカのごときは、法人税を入れますと所得税で七割近く税収入をまかなつておりますから、そういう非常によい財源のあるところは、ウエートとしてはこれは非常に少い。しかし額といたしましては相当な額になつておるようでありますが、その辺の資料は必要に応じまして提出してもさしつかえないと思います。それからそういうところにおきましては、概して民営の方が多いと思います。消費税をいろいろな方法でとつております。アメリカなんかにおきましても、徴税技術の点につきましても研究いたしておりますが、そういうふうな点もあわせ考えまして、最後に具体案をつくり上げた上でないと、はたしてどうかということにつきまして、どうもきつぱりと申し上げかねるということを御了承願いたいと思います。
  42. 圖司安正

    圖司委員長 午前の質疑はこの程度にいたしまして、午後は一時半より再開いたします。  ではこれにて休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  43. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまより再開いたします。  この際お諮りいたします。外資タバコ問題に関し耕作者立場より意見を聽取いたす必要がありますので、タバコ耕作組合中央会副会長宗像利吉君を参考人として招致いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めます。それでは宗像利吉君を、本日の委員会参考人として招致いたすことに決定いたします。  この際政府委員より発言を求められております。久米政府委員
  45. 久米武文

    久米政府委員 午前中の説明を補足して、ただ一点だけ、不要な点を申し上げます。  臨時専売制度協議会結論というものは、協議会立場として自由に、あらゆる角度から愼重に検討されて政府に出て来るものと思つております。政府といたしましては、この協議会結論が出ましたならば、これを尊重し、しかもこれを検討する段階におきましては、現在のタバコ耕作者各位のいろいろのお気持、もし民営にしたらタバコ耕作がいかなる影響を受けるかというふうな点につきましても、十分周倒な注意をもつて、愼重な考慮を拂うというつもりでおります。この点だけ特に申し上げておきます。
  46. 圖司安正

    圖司委員長 引続き質疑に入ります。森山欽司君。
  47. 森山欽司

    森山委員 主税局長先ほどの御答弁につきまして、この際確認いたしたいと思います。専売制度をやめて、消費税の形で現在の専売益金に当るものを吸収した場合においては、専売制度ほど完全には吸収できないということが、先ほどの御発言にあつたように思いますが、その点についての御確認を得たいと思います。
  48. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 私先ほど申し上げましたのは、実は一般論として申し上げたわけでございまして、そのような意味におきましては、まさにその通りだと思います。ただ最後にも申し上げましたように、この問題は相当具体的に検討を要する、具体的な案をつくつて、最後でなければほんとうの結論は出ない、従つてその結論がはたしてどうなるかということにつきましては、まだ今この際では申し上げかねると思います。さしあたり日本で今の専売をやめて、民営に移して課税した場合には、今の益金に比べてどうなるかということについては、なおもう少し検討した上でなければ、お答えできかねると思います。
  49. 森山欽司

    森山委員 先ほど主税局長は酒の件について、これは民営でやつているので云々というお話が、ございましたが、この際お伺いしておきたいことは、昨年の終りに酒税法を改正いたしまして、酒の税を大分下げました。ところが下げたにもかかわらず、税収がふえているということは、一つには酒が安くなることによつて購買力がふえて、それだけの収入がよけいになるという面があると思いますが、いま一つは酒税徴収上ある程度の含みがあるからではないか、これはタバコの場合についても、今後同様な含みが見られて来るのではないかという気がいたしますので、参考のためにお聞きいたします。
  50. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 酒については先ほど私も申し上げましたように、とにかく正規の生産と申しますか、正しい原料の割当を受けましてつくつております酒が非常に減つております。従いまして私どもはまだ潜在的な需要力が相当あると実は見ているのであります。値段を下げることによつて需要が相当ふえることは確かでございます。もう一つ先ほど申し上げましたように、密造に大分引かれております。この密造は一面におきましては取締りをやつておりますが、なかなか経済の実勢には抗し切れないで、非常に高い値段のために、密造が非常に多いということでございます。これは値段によりまして相当密造を正規の方へ繰入れることができる。最近の情勢もそのように大分行きつつあるようでございます。これは国民の現実の消費から見ますと、ほんとうの消費でないかもしれませんが、やみの利潤が国庫に入つて来るという要素が相当あるわけであります。酒につきましては私ども今後におきましても、さらに原料事情等もにらみ合せまして、一段と成果をはかりたいと考えております。
  51. 森山欽司

    森山委員 二十五年度の当初に、酒によつてもう少し税がとれるという見通しはなかつたのでしようか。
  52. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 二十五年度の当初におきましては、そのような見通しはなかつたのであります。去年の値下げ以前の状況は、森山委員も御存じと思いますが、できた酒は売れない、密造が横行する、こういう状態でありまして、従つて切開手術をいたしまして値下げして、値下げしてもさつき申しました二つのカバーする面から行きまして税収は減らない、この政策を強行に推し進めてやつているのであります。値下げしない場合におきましては、そんなに収入はふえると思つておりません。やはりそれは相当値段を適正なものにすることによつて、初めて酒税の収入がほんとうに確保されると考えております。
  53. 森山欽司

    森山委員 私は酒の税の問題は多少主税局長と見解を異にするのであります。酒は民営によつておりますから、専売制度ならもつと入るべきものが、それだけ隠れていた面があるのではないか。後にはこれを自然増収といい、あるいは需要の増加というような点があるかとも思いますけれども、消費税というような形でとると逃げる部面がある。反面相当部分が、あれだけ減税したにもかかわらず、八億だけの増収という形になる一つの理由ではないかという見解を持つております。しかしこの際はそれを論ずることはやめまして、そこで私は先ほど来の主税局長のお話によつて、ともかく抽象的に言えば、消費税としてとるよりも、専売制度によつてとつた方が残りくまなく吸収できる、こういう主税局長のお話は確認いたしましたので、他の点に関しては主税局長として、本日の論題外と思います。どうもありがとうございました。  それで私は次の点に入りたいと思います。専売益金の内容を分析いたしますと、一つ消費税に当る部面であり、一つタバコ事業の利潤に当る部面であると思うのであります。そこでタバコ民営なつたといたしますれば、一体専売制度の場合と違つて、どの程度の利潤が上り、従つてその利潤に該当する部面だけは、政府のふところには入らないで、タバコ会社のふところに入つて行くことになります。また民間資本でありますから、政府と違いまして、その自己資本以外の部面については、これは相当の金利を要するのではなかろうかと考えられます。また民間資本であります関係上、これは宣伝等を相当にいたさなければなりません。これは今日のアメリカにおけるタバコ産業の状況等を見てもよくわかると思います。そこで一体アメリカのタバコ産業は、どの程度の利潤をとつておるか、利子としてどの程度のものが計算上計上されているか、あるいは広告費が一体どのくらいかかつているか、それに対して日本専売公社制度のもとにおいては、現状はどうなつておるか。従つて民営になれば、それらのものは明らかに現在の専売公社の場合よりも経費がふえて来ると思うのでありますが、民営になつて経費がふえて来る部面は一体どのくらいになるだろうか。経費と申しましても広い意味でありますが、広い意味の経費がどの程度ふえて来るかということを、この際御説明願いたい。
  54. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほど森山さんから抽象的というようなお話がございましたが、私もそのような意味におきまして御返事申し上げたということを御了承願いたい。
  55. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 アメリカのタバコの利潤、支拡い利子、宣伝費についてお話申し上げます。大蔵省の方からお配りいたしました資料は、一九三九年の資料でありますが、大体利潤として上つてありますものは、販売原価に対しまして三八・七%になつております。それから広告費で出ておりますものは一三%ばかりであります。これは三九年、つまり昭和十四年度の状況であります。その後のことにつきまして、アメリカに参りましたので調べてみましたのですが、一九四一年——戦争の始まつた年につきましては、先方の政府の発表がありましたので、やや前の数字とかわつたところがあります。利益が二九・五%、販売原価に対して約三割の利益になつております。それから広告費が一四・九%、約一割五分、ところが戦争が進行するにつれまして大分タバコ会社も経費を切り詰めておりますので、利潤も減れば、広告料も減らす。戦争の終りました一九四五年、昭和二十年の年には、利潤は一五%、それから広告費が五%、こういうふうに縮んでおります。それからその後のことにつきまして政府等の発表がありませんので、先方の考課状から調査してみますと、大体利潤として載つておりますのは、販売原価に対して二割二分。それから利子関係でございます。利子は結局利潤の中から支拂われることに先方の計算ではなつておりますが、一九四一年の支拂い利子は一%になつております。それから四五年になりまして一・八%、それから一九四九年になりまして利子がさらにふえまして二・一%になつております。この利子がだんだん累増いたして参りましたのは、葉タバコの値段がたいへん高くなりまして、その資金を長期借入金でまかなつておるということのために利子が増加しておるようであります。それから専売公社の広告費でありますが、これはきわめて少いものでありまして、大蔵省の方から差上げてあります資料にもありますように、大体千本あたりの広告費が三十七銭ということになつておりまして、ほとんどパーセントにはなつておりません。大体これだけであります。
  56. 森山欽司

    森山委員 それでは総括いたしますと、専売公社の販売原価に対して、これを民営にした場合、アメリカと同様な形において、利潤とか、利子とか、広告費が加わるとすると、多い場合には原価の五割近く値段が上る。少くとも二割五分程度の原価の値上りを生ずるということになると考えてよろしゆうございますか。
  57. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 日本民営にしました場合に、アメリカと同じように行くかどうかということはちよつと推測いたしかねますが、かりにアメリカと同じようなものになるとすれば、お話の通りであります。
  58. 森山欽司

    森山委員 民営になるとタバコが安くなるということが一つのねらいですが、専売益金の方は一向減らない。さらにもつて来て専売と違つた民営の場合には、利潤、利子、広告費等によつて相当な値上りを生ずる。これはアメリカの例を見てもよくわかることなのであります。そこで伺いたいのは、民営によつてそういう悪い面もあるが、いい面もあるに違いない。そのいい面が自由企業の長所である能率の向上であろうと思う。現在の専売公社民営にすることによつて、もつと能率を上げることができるかどうかということが私は問題になると思う。しかしそれよりも一体過去の専売公社において、どの程度の能率が上つておつたかということを検討いたしたいと思います。聞くところによりますと、戦前においては専売公社のある工場は、中国における英米タバコ、トラストの工場よりも、相当優位な能率を上げておつた。特に品川工場のごときは、アメリカのタバコ工場のよりも、一割がた能率が上つておつたというようなことを私は聞いております。これはおそらく一人当り、一時間当りの製造能率から御検討なつたと思うのでありますが、過去においてどういう実績があつたか。現状はどうなのか、将来はどうなのか、そういうお見通しを承りたい。
  59. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 戦前の日本専売局の工場の方が、相当高能率にありましたことは、お話の通りであります。その当時アメリカの工場よりもよかつたというところまでは参らなかつたと思いますが、たとえば品川工場のごときは、当時の状況としては、アメリカの工場とほぼ匹敵するくらいの一人当りの生産高を示しております。それから中国の英米タバコ会社との比較におきましては、これは仕事のやり方も大分違いますが、先方では、たとえばタバコを包む仕事は、大体手の作業でやつておるというようなこともありまして、われわれの方が能率がよかつたということもお話の通りであります。それから今日の状況はどんなふうになつておるかと申しますと、アメリカにおきましては、戦争中にやはり人手が非常に少かつたということ、それからまた、どうしてもコストを切下げるためには、労務費を節減しなければならぬというような事情から、仕事のやり方を相当大幅に変更いたしております。たとえて申しますと、タバコをつくる仕事の中にタバコの骨を処理する仕事がありますが、それは製造工場ではやらずに、産地の方に持つて行く、乾燥場の方の仕事に移して行くというようなことをいたしまして、なおかつそれらのことにつきましても相当改善を行いましてこれで経費を節約して、現状におきましては——これは大体の数でありますが、具体的に申しますと、先方で十一人ぐらいでやつておる仕事が当方におきましては十七人程度かかる、大体そんなようなことに考えております。  それから将来につきましては、われわれの方としてもだんだん設備を改善いたしまして、さらに能率の改善考えておりまするけれども、たとえば当方で十七人でやる仕事をアメリカのように十一人まで減らすためには、相当他の方面で犠牲を拂わなければならぬ。たとえば機械の使い方でありますが、これはコストの上では減価償却になつて現われて参ります。先方の償却費は大体千トン当り、日本の金に直しまして七円五十銭ぐらいの償却費になつておます。われわれの方で七円五十銭償却するほど大きな設備をすることは、ちよつと考えられませんのと、もう一つは、最近アメリカでは葉タバコの歩どまりを相当犠牲にしてやつておるということでありますが、われわれの方では、そういうようなことをして逆にコストが上るようなことになりますと困る。その辺もにらみ合せてやりますけれども、先方の十一という  数字には、だんだん近寄せて行きたいと考えております。
  60. 森山欽司

    森山委員 そうしますと能率の向上の面にいたしましても、かつて専売局時代においても英米等の国々に比較してあまり遜色のない仕事をやつておつた、現在は敗戦後で、タバコ事業に限らず、他の事業といえどもまだまだ能率が上らない部面もあると思いますが、経済が逐次正常化するについて、相当の能率を上げ得る、こういうように私は今製造局長さんのお話を伺いましたが、いかがでありましようか。
  61. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 その通りだと思います。
  62. 森山欽司

    森山委員 そう考えますと、ことさら民営にしなくても、現在の公社制度のもとにおいても、相当の能率の向上ができるんだという認識を、私はこの際新たにするものでありまして、これを民営にしたからといつて、特に能率が上るというふうな情勢にないと考えるわけであります。もしかりに民営にすることによつて現在の公社制度以上に能率を上げ得るにいたしましても、先ほど来御説明がありましたように、利潤、利子、広告費等によつて、三割も五割も原価が上つてしまつた、その原価を償うに足るほどの能率の向上は、絶対に望み得ないということは、ほぼ確実であろうと思いますが、坂元さんいかがでありましようか。
  63. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 金の勘定としては今お話の通りだと思います。但し現在専売公社が利子を拂わないというようなことは、専売公社が金を使わないためではございませんで、これは政府の金を使つておるために利子を拂わない。それから利潤の計算をしていないということも、経理制度が改まれば利潤計算もやるというようなことで、実態としていかがなことになるかということについては、ちよつと触れかねますが、計算をしていないということはお話の通りであります。それから政府民間二つに境をわけて考えれば、お話の通りだと思います。
  64. 森山欽司

    森山委員 今お話のありましたように、民営になると能率が上つてコストが安くなり、またうまいタバコが吸えるんだというような、俗受けはいたしますけれども、実際は空中楼閣のような論議が横行しておる。そういうような考え方は、この民主主峯の時代にはよほど愼まなければいけない。民主主義においては、国民が抽象の世界にのみ住まず、生活と思想が遊離しないということが大事であろうと思います。そこで私は、この委員会においてこの問題を具体的に取上げて検討する必要があると思いましたので、あえて多少微に入つてお伺いした次第であります。いずれにいたしましても、民営によつて能率の向上あるいはコストの低下というような点については、大なるものを期待し得ないだろうということが、今までのお話によつてほぼ言えるのではないかと考えます。その他これらの点については、いろいろ質疑したい事項もございますが、時間の関係もありますので、次に移りたいと思います。  次の問題といたしましては、タバコ事業民営耕作者の関係がどうなるかということでございます。本日この委員会におきましても、タバコ事業民営問題の行方がいかに相なるかということを、憂慮しておられる全国六十万の葉タバコ耕作者の方々を代表いたしまして、各地の組合長さんが、かたずをのんで傍聴しておられると思うのでありますが、この問題はこれらの方々と密接な関係を有するわれわれ議員にとつても、重大な関心事であります。そこで先ほど私が読み上げました十二日のタバコ民営可否結論の中に、将来民営形態としては製造財売部門のみを民営にすべきである、従つて耕作はこれを専売制度に残すということがいわれておるわけでありますが、一体そういうようなびつこの專売制度というものが成り立ち得るかどうか、まずそういうようなことになつた場合に、耕作者がどうなるか。これは先般の十二月八日の本委員会において、十分詳細に論じ盡したはずでございますけれども、この際あらためて耕作者の代表の方及び専売公社相当の方から、忌憚のない御意見をお伺いいたしたい。
  65. 上林忠次

    ○上林説明員 専売事業民営に移つた際に、葉タバコだけは専売に残すということになりますが、民営のうまみと申しますか、経営をうまくやつて行く、そして利益を上げて行くという点から考えますと、自分のすきな、割安な、しかも使いがつてのいい原料をとつて来て、それを製造して行くことになるのでありまして、もし専売葉タバコを握つておりますと、そうかつては言わさぬ、できただけのタバコは、全部耕作者から専売は買わなくてはならない、残つては困る、そうすきかつてにより買いされては困るので、結局押しつけることになるのじやないかと思うのです。押しつけられた原料で製造をして行くのでは、いいタバコ製品もできないし、自由競争のうまみが出て来ない。そこで自由に買わしてくれということになるのじやないかと思う。そういう点から考えると、葉タバコだけを政府が握つて、あてがいぶちでお前らつくつて行けというような事態は、長くは続かない。それがほんとうの民営の本体ではなかろうか。そうして早晩葉タバコ専売を解体することになると考えるのであります。
  66. 森山欽司

    森山委員 この問題はすでに先般の委員会で論じ盡されておる。こういうびつこの専売、すなわち製造と販売は民営にして、耕作だけは専売制度に残すということは、成り立ち得ない愚論であるということは、先般の委員会検討し盡しましたので、私としてはもうここにことさらにつけ加える必要はないと思います。ただいま生産局長からも同趣旨の御答弁があつたので確信を得ました。また私がタバコ民営問題のために接触いたしたある外国人は、タバコ専売は、製造販売のみならず、耕作面をも含めて全部民営にしなければならない。耕作面のみを専売に残すことに興味を持つ業者はないだろうということを言われております。でありますから、こういうびつこの専売は絶対に成り立ち得ない。従つて伝えられる十二日のタバコ民営可否結論は、三項目ともこれまたわれわれの断じてとるべからざるものであると考えるものであります。耕作者の方々の御意見については、後ほど伺えると思いますので、最後に総括的に私の意見を述べ、当局の見解を承れば幸いだと思います。  タバコ民営問題の経過につきましては、先般の委員会において私がその経過を述べましたので、この際その後におけるタバコ民営に関するところの国会の論議の状況を振り返つてみたいと思います。すなわち昨年の十一月三十日の第九臨時国会における予算総会におきまして、民主党の中曽根康弘氏は、吉田総理に対して、タバコ民営にする点についてどうかと質問いたしましたところ、方針としては民営に移したい。能率的に計画的にやる方がよい。但し具体的には協議会答申を待つというお話でありました。また一月二十九日の衆議院本会議の国務大臣の演説に対する質疑において、同じく民主党の早稻田柳右エ門氏から、わが党は国家財政の見地からも、全国六十万のタバコ耕作農家立場からも、民営に対して絶対に反対する。本日たまたま臨時専売制度協議会をやつておられると聞くが、はつきり民営打切りの結論を出して、その結論を天下に声明して、耕作者に安心を與えてもらいたいという質問をいたしましたところ、池田大蔵大臣から、目下これを検討中であるというお答えがありました。さらに一月三十一日の参議院本会議におきまして、同じく民主党の油井賢太郎氏が吉田総理に対して、全国六十万の耕作者が非常に心配しておるが、何とかしてこの民営に移す点について考えてもらいたいという点に関して、総理は、政府としては民営に移したいと思うが、利害関係のある国民の意向もよく承知の上で、愼重に審議したいというふうに言われて、参議院の答弁においては、総理の御見解も多少色がついて来たというように私ども考えておるわけであります。しかしながら本委員会におきまして、民営問題をこのように取上げることにつきましては、委員長初め與党諸君の個人的な立場は別として、それぞれ與党立場としてお苦しい状況にあることについてはお察しもし、またそれだけに、われわれにこれだけ言わしていただくということにつきましては、深く敬意を表しておるのでありますが、ともかく民営問題のその後の経過は、こういうふうな状況で今日の段階に立ち至つておるのであります。  そこ一体何ゆえにこういう民営問題が起きでたのかということを考えますと、一つには先般私が経済安定委員会において質疑いたしましたように、安くてうまいタバコが吸えるという、俗耳に入りやすい言葉で国民の関心を買うということが、一つの理由であつたと思います。しかしながらこのようなことは国家財政立場から見ましても、また外貨節約の見地から見ましても、あるいは六十万耕作者の生活権擁護の立場からいたしましても、断じて行えないのであります。さらにもう一つ民営論の根拠は、やはり自由経済へのあこがれ、ノスタルジアというものがその基底にあるのであろうというふうに考えるものであります。しかしながら私が先ほど申しましたように、民主主義のもとにおいては、国民生活と思想が遊離しないということがまつたく大事なことだと思います。一九二〇年の初期におきましては、米国民の大部分は、米国を発達せしめるものは自由企業であるというような哲学を持つておりました。しかしながら一九三〇年に至りまして、ルーズヴエルト大統領を中心に、天然資源の開発促進に関する限りは、国民全体のためになるように、利己的ならざる連邦政府によつて、これが開発をすることが正しいという思想を抱く人が、相当に出て来たことが伝えられています。アメリカにおけるところの資本主義の発達というものにおいても、従来の資本主義とは形がかわつたものが出て参つたのでございます。これはアメリカの現実に立脚したからこういうものが生れて参つたと思います。日本の現実の経済というものに立脚いたしました場合に、われわれは自由経済主義的な考え方が先行して、そうしてこの現実を忘れて、むしろ経済の流れとしては、公共企業体から民営に移すということは、時代に対する逆行ではあるまいかと考えます。そうしてこのような自由主義的な思想というものもその根底にあるわけでございますが、さらにこの民営論に火をつけたものは、他の要因ではなかろうか。それは申すまでもなく資本家の欲望であります。タバコ事業民営に移すことによつて、この企業の経営に当りたいところの人たちの事業意欲というものが、何と申しましても民営論の推進力であつたと申してさしつかえないと思います。すでに昨年においては数人の外国人が日本に渡来いたしました。そのある者は、実に詳細に具体的な民営の見解をわれわれに残しております。その資料も私の手先にございますが、各般の関係からこの際は発表を差控えます。しかしいずれにいたしましても、現在の専売公社がどうなつているか。民営にするためには、どういうふうに分割しなければならないか、また分割するためには税法はどういうふうに改正しなければならないか、あるいは益金はどういうようにしてもらいたいというような、微に入り、細をうがつたところの考え方が、すでに示されている段階になつている。そうしてかかる外国人の来朝は、はたして外国人が自主的に参つたものか、あるいは日本人の方から積極的に呼びかけて来てもらつたのか、いずれか存じませんが どちらにしても日本人の中に外国人と組んでこういうことをやろうとする人があるわけでございます。われわれは従来の英米タバコ・トラストが、世界各地の市場においてなし来つたところのこと、そうして世界市場において彼らの活曜した国では、その土着資本にいかなる結果をもたらしたかということを、今あらためて反省しなければならぬと思うのであります。私はこの際タバコ民意に対しては絶対反対をせざるを得ません。ただ一つ特に秋山総裁に対して私の意見を申し述べ、質疑を終りたいと思います。  私は先ほどタバコ事業民営に対して反対をいたしました。しかしながらそれは決して現在の専売公社が最もいい能率を上げ、そうしてこれが最善のものであるということを申しているのではございません。現在の専売公社については、まだ改めなければならない点があると思います。工員の生産意欲を増強するため、これについての高能率、高賃金という考え方も織り込んで行かなければならないのではあるまいか。そのためには現在の公社の経理制度、あるいは財政法上の制約というものに、新たな改善を加えなければならないのではあるまいか、あるいは現在は専売公社というものになつておりますけれども、実態はかつて専売局時代の官僚臭ふんぷんたるものもあるということも、これまた事実であろうと思うのでございます。私は戦後日本において新しく、企業形態としてとられましたところの、この公共企業体に大きな望みをかけておりますがゆえに、この新しい企業体について、秋山総裁の練達なる手腕によつて、これが改善をなされんことを切にお願いいたしたいと思います。そうして私はこの際、次の言葉総裁に贈るものであります。それはリリエンタールの著「TVA——民主主義は前進する」の末尾に掲げられている言葉であります。すなわち「物質的の仕事はやれるだろう。民主主義的にやれなければ、非民主主義的の方法でもやれるだろう。わずかばかりの巨大な民間会社が一国の資源を支配するようなやり方でも、おそらくやれるだろう。また政治家が従党を組んでもやれるだろうし、あるいはまた民衆自身が責任をとることを断つた場合、いつでもそれにとつてかわろうとするような連中、またはそういつた連中が幾つか提携したものでもやれるだろう。しかし口先のうまい中央集権主義者、実業界の名士、皮肉な政治家といつた連中、つまり民衆自身にはやつて行く能力がないと信じている連中は、すべて資源の開発を握つて、それから利益をしぼりとり、やがてはそれで人間の生活までも支配しようとして一生懸命になつているのだろう。そういつたことは非常に危險だ。だれしも押し寄せて来る嵐の危險を軽視することはできないし、また民主主義の前途に横たわる不安の日に気がつかないものはない。しかしそういつた危險は避けられないことはない。われわれが一市民として日常生活の上に、民主主義の伝統が與える力を用いるように心がけさえすれば、こういつた内輪からの攻撃を撃退し、それを完全に打破ることができる。こういつた試練と闘争を経て、民主主義は再び元気をとりもどし、立ち上ることができるのである。」そういう言葉がございます。私は公共企業体という日本企業制度におけるところの新しいフロンテイアを、ぜひとも秋山総裁において切り開かれて行くということを切にお願いいたしまして、私は質疑を打切ります。
  67. 圖司安正

    圖司委員長 志田義信君。
  68. 志田義信

    ○志田委員 午前午後にわたつて長時間の質問がありましたので、私はきわめて簡単に、二、三の点をお尋ね申し上げたい。  一番先にお尋ね申し上げたいことは、このたびはたいへんたくさん資料を提出してくださいましてこれを読む機会を得ましたものですから、その資料のうちの二、三の点をお尋ねするわけですが、大蔵省の出された資料の中で、タバコ耕作の現況及び将来の問題点という中に、タバコ耕作の問題は、やはり農家の現金収入というような点から、きわめて重要である。一般作物に比してやはり安定性を持つていて、従来とも農村経済に強く密着しておるということを言つておるのでありまするが、さらに将来の問題で、タバコ耕作の今後の転換というような問題につきまして、私はひとつお尋ね申し上げておきたいのであります。このタバコ耕作の今後の問題は、いろいろ事業民営の問題の成行き等にも関連するのでありますが、大蔵省としては、積雪寒冷地帯、東北地方の農民生活に重大な影響のあるような、農村経済影響を與えるような今後の耕作につきまして、どういうようなお考えを持つておるか、その点をお尋ね申し上げたいと思います。
  69. 久米武文

    久米政府委員 現在東北の寒冷地等におきましても、タバコ耕作は当該地方の重要な産業として、これを維持発達させなければならないという点はごもつともであろうと思います。あらゆる場合に、タバコ耕作地に急激な変化を與えるような改正というものは、きわめて愼重に、細心の注意をもつて検討しなければならないと考えております。
  70. 志田義信

    ○志田委員 きわめて愼重に御対策を考えてくださるというお話でありますので、仕合せに思うのでありまするが、もしタバコ事業の今後の推移にかんがみまして、転換困難な耕作地ができる、あるいは耕作面積の減少等が起きた場合におきましては、東北の寒冷地帶の農村経済に対する影響は甚大でありまするが、それに対して何か補償その他を考えておられるのかどうかをお尋ね申し上げたい。
  71. 久米武文

    久米政府委員 ただいまお手元に提出いたしておりまする資料のうち、将来の問題点という見出しのもとに書いてある文字は、あるいは多少誤解を招きやすいのではないかという心配もありまするので、資料の補足的な説明も兼ねてお答えいたしまするが、将来の問題点というところには、かりに民営なつた場合というふうな、万一の場合のことの一種の想像で書いておりますので、現在におきましては、この東北地方タバコ耕作についても、専売公社のもとに、実情に即したタバコ産業の維持、発達ということは考えられておると思います。現在においてはそういう方針で心配ないということであります。  それから先の民営の問題のところにつきましては、ちよつとここで述べることはいかがと思います。想像にわたりますから、それは私としては述べたくないと考えます。
  72. 志田義信

    ○志田委員 御承知の通り東北地方の品種は、バーレーと松川の二つでありますが、今後この二つに重点を置いて、東北タバコ耕作面積等を多くしようというお考えがあるかどうか、それをお尋ね申し上げます。
  73. 上林忠次

    ○上林説明員 ただいま東北に分布しております反別を、将来どうするかというお話でありますが、嗜好の変遷に伴う現在の需要を満足させるためには、あの反別を少々いじらなくてはいかぬというような現在の情勢にあるのであります。すなわち嗜好の趨勢は、黄葉種を要求しておるのでありますが、東北地方にできますのは、昔からあります在来種でありまして、時世の要求するところとはいささか逆の方向に進んでいるというような点であります。これをある程度需要の方向に向けて行く、すなわち反別を少し削減するというような方向に向わなくてはいけないと思いますが、何分、東北の方は、ああいうような寒冷地帶で、しかもタバコに依存している地方が多いのでありまして、タバコをとりますと、ただちに農業経済影響するということでありますから、なるべく農業経済を撹乱しないように、養蚕にかかわるとか、あるいは他産業にかわるとか、そのかわりを見つけながら、われわれはこれから一歩退くというようなことになるのではないかと思います。そういうようなぐあいで、急激にやるわけではありませんが、逐次そういうような方向に向つてやらなくてはならぬ。それではどのぐらい反別を動かさなくてはならぬかということになりますが、現在公社で計画しております計画は、大体二十七年にあと千町ばかり、在来種から黄葉種に転換することになるのであります。どこの産地を動かすか、あるいはどこの在来種を黄葉種に転換するかということは、また別の問題でありまして、千町がただちに東北にどうされるというわけではないのであります。東北の農業経営事情から考えまして、なるべく大きな、ほかに対抗する関係作物のない地域からは、なるべくとりたくないという方向に努力しております。またタバコは、在来種とバーレー種ですが、バーレー種は時代の変遷に伴いまして、もう少し脚光を帶びる時代が来るのじやないかという見込みもございまして、われわれの方といたしましてはバーレーの品質の改善在来種にしても品質を改善しまして、なるべく現在の嗜好の需要の方向に、これを向けて行くということに極力努力しつつあるのであります。そういう点から考えますと、先ほど申しました昭和二十七年から、また一千町歩全国在来種を大幅に転換しなければならぬという問題も、ここ一、二年のわれわれの努力によりまして、一千町歩がいくらになりますか、なるべく転換を最小限度に止めたいというような状態でありまして、すぐに東北をどうするかとか、また在来種全体から一千町歩をすぐとるかというような問題は、まだそこまで決定に至つていないのであります。十分事情をしんしやくしながら善処して行きたいと思います。
  74. 志田義信

    ○志田委員 それから資料の中で、「たばこの輸出入に関する外貨及び貿易上の問題」という資料によつて政府の御答弁を求めますが、これによりますと、輸出葉タバコの問題が書いてあるようであります。「ドイツ等に対して相当量輸出せられる見込である。」その四、五行行きましてから、「世界市場における需要が不安定であるので、葉たばこ輸出は将来進展しない」であろうということも書いてありますが、世界市場の中にはエジプトが入つておるかどうか、それをお尋ね申し上げます。またエジプトに対してはどういうお考えを持つておるか、お尋ね申し上げます。
  75. 久米武文

    久米政府委員 今後もドイツに対して相当輸出せられる見込みであるということはこの資料に書いてございます。なおそのちよつとあとの方にございます「世界市場における需要が不安定であるので」というところは、あるいは近視眼的であるかもしれませんが、ここ当分の間の、ごく短いところをとつて、こういう見通しではないかという、一応の観測を述べたつもりでございまして、その中にはエジプトも入つております。エジプトの分だけ切り抜いて見ますれば、二十二年以降ある程度の輸出は出ているということは、これは言えます。六十万キロ輸出になつておりますから……。
  76. 志田義信

    ○志田委員 バーレー種、バーレー種といつて、バーレー種だけがタバコの王様のように、たいへん謳歌されておりますが、在来種の中にも、かなり優良葉が最近出ていることは御承知の通りだと思いますけれども、在来種を技術的に改良して、手数もかかるでありましようけれども、質的にバーレー種をしのぐようなものとするような努力をして、なおしのぎ得るという確信を持たれるか、それとも持つていないかどうか。また持たれるとすれば、それは輸出の面にどういうふうに出して行けるというお考えがあるかどうか、お尋ね申し上げます。
  77. 上林忠次

    ○上林説明員 バーレー種が将来ある程度望みがあると申しますゆえんは、バーレー種の特性といたしまして、香料を吸いやすい性質を持つている。簡単に申しますと、大体四〇%くらいの香料を吸収する。ほかのタバコではこういう芸当ができないのであります。これがバーレー種の特徴であります。たまたま現在の売れ行きの世界の情勢を見ておりますと、アメリカ式のバージニアを使つた、しかもバーレーにいろいろな香料を付しました、味のついたタバコ、これの売れ行きが世界を風靡しておる。将来そういうふうな方向に全体が向いて行くのじやないかということを考えますときに、バーレーが将来性があるということは言えると思います。在来種におきましてはバーレーと大分違いまして、ああいうような薄い味のないタバコでありまして、特別なきつみもなく、用途が現在の製造の要求する方向には向いていないのであります。こういうふうな点で、在来種の将来性というものは、あまり大きくは期待できないのであります。しかしながらこの日本でできまする在来種、しかもこの在来種を黄色種に転換しなくてはならない。最近在来種につきましては、なるべくこれを現在盛んに消費されております。両切タバコの原料として、使いやすいような品種にこれをかえて行くという方向に努力したいと思います。もちろんこれは日本の需要を満たすばかりでなく、海外にも進出しなくてはならぬと考えるのでありますが、海外の市場に出そうとしますと、年々同じ品質の相当まとまつた数量が出て行かなくてはならぬ。現在のところまでは海外市場にそれだけの開拓ができていないのであります。そういうような点で、どこまでこの輸出が進展しますか、まだ見込みはつかないのでありますが、これから輸出の方も開拓しまして、なるべく在来種の用途を拡張したいと考えるのであります。
  78. 志田義信

    ○志田委員 ここの資料の中にも、やはり輸出入に関する中で、今後タバコ製造タバコの輸入は最小限度にすることが望ましいということを書いてありますが、その前に品質の問題で、外国の葉タバコを入れないとうまくない、うまくするためには、やはり外国の葉を入れることが要件のようになつております。その数量も出ておるようでありますが、大蔵当局にちよつとお尋ね申し上げたいのは、今この資料の中にあるような数量の外国葉を、日本に入れなければうまくないとするお考えで立つておりますと、いつまでも日本タバコはまずいという結論が出て来るのであります。先ほど来の私の質疑、及び前、森山委員質疑等を聞いておりますと、技術の改良その他によりましては、日本タバコ相当うまくなる、嗜好の変遷ということを言つておりますけれども、この資料の中におきましても、往年の「あかつき」のようなタバコを出そうというような計画を持つておるということでありますが、この「あかつき」のようなものを出すには、やはり現在輸入されておる外国葉タバコの量をもつてやるお考えなのか、それとも新たにそれだけの量は向うから入れなければできないというのか、その点をひとつお伺いします。
  79. 坂元晃佑

    ○坂元説明員 「あかつき」は外国葉を使いませんでつくりましたタバコでありまして、「あかつき」を製造するにつきましては、外国葉の必要はございません。
  80. 志田義信

    ○志田委員 では最後に一つお尋ね申し上げます。これは販売の方に、タバコの小売人の方に関係するのでありますけれども、今度は御承知の通り、この前久米監理官の御説明にもあつたように、「ひかり」その他のタバコを値下げするというお話でありますが、それだけ收入において減になるだろうと思うのであります。小売業者としましての歩率が、今の歩率は六分かと思つておりますが、この歩率を考えているかどうか。もしこれを考えているとすれば、全国の小売業者のために、ひとつこの機会に、どの程度に引上げる考えでおるか、その点をひとつお伺いしたい。
  81. 久米武文

    久米政府委員 ピースと「ひかり」は四月一日からそれぞれ十円値下げをいたすということは、大蔵大臣からも、予算総会その他でもつて述べている通りでございます。このピース、「ひかり」の十円値下げと呼応いたしまして、小売人の手数料につきましては、値上げをしますピースと「ひかり」に限り、現在の六%という手数料を七%に一%だけ上げようということで、今の予算を組んでございます。公社の方からもつと上げてもらいたいという御要求も私たち伺つております。非常に公社としてはそういう御要求を熱心に主張なさいましたが、今の財政上、予算編成上、さしあたり七%という一%引上げでもつてがまんしていただきたいというふうな趣旨で、二十六年度予算はできております。なお実施は四月一日の値下げの日からでございます。
  82. 志田義信

    ○志田委員 いろいろとありがとうございました。この前は資料もあまりございませんでしたが、今度はたくさん資料をいただきまして、たいへんけつこうでありました。この資料を拜見いたしまして、私は結論をひとつ申し上げておきたいと思います。ほれた目で見ればあばたもえくぼということもあるが、これを見ると大分民営論反対のようにとれる資料がたくさん来ている。ひとつお伺いしたいのは、あなたの方から臨時專売制度協議会に御提出になつている資料と、この資料との間に異なつたものがあるかどうか、その点ひとつお尋ねいたします。同じものを出しているかどうか。
  83. 久米武文

    久米政府委員 大体におきまして同じものであります。ことにたとえば專売公社のやつておりますタバコ製造の原価であるとか、その他客観的に存在しますあらゆる支出の説明というものは、こちらへ提出しました資料と、臨時專売制度協議会に提出いたしました資料との間に、食い違いはないと確信いたしております。ただ今回提出いたしました資料のうち、将来の問題点というのは、特にこちらの委員会から御注文いただきましたので、この分だけ新しく書いてあります。その中にはあるいはいろいろ想像がまじつた部分、多少意見にわたる部分等も含んでおりますので、その点だけが違つている、そういうふうに御了解願いたい。
  84. 圖司安正

    圖司委員長 引続き参考人宗像利吉君より、参考意見を聽取いたします。なお時間の関係もありますので、御意見はできるだけ簡潔にお願いいたします。
  85. 宗像利吉

    ○宗像参考人 私福島の六十年間タバコをつくつております宗像であります。本日の委員会全国六十万の耕作者考えを訴え得る機会を與えていただきまして、感慨の一端を申し述べる機会を得ましたことを感謝する次第であります。  私は六十年タバコ耕作しておりまして、專売法実施前より耕作して、民営時代に耕作の経験があるのであります。明治三十一年以来五十三年間、專売制度が施行されまして今日に至る道程は感慨無量であるのであります。今私が明治三十一年の昔を考えてみますと、その当時の耕作面積は二万五千町歩と覚えております。賠償金はきわめて少くて五百六十万円、そのときの專売益金が、二十九万六千円であつたと承知しているのであります。さらに二十年余もたちました大正十年の專売事業成績は、世界の專売事業中において類例のない高度な成績をあげたということが、その当時の記念誌にはつきりされていることと思うのであります。当時の面積は三万六千町歩で、そのときの賠償金は五千六百万円であつた。その益金が一億二千万円に達したのは大正十年と覚えておるのであります。それが本年におきましては、耕作面積全国で五万二千町歩で、この賠償金の予定が百七十億近くになつていると思うのであります。税金におきまして一千二百億でありまして、その当時のことを考えてみますと、賠償金におきましてとにかく三百倍、税金が千倍になつております。こういう專売制度は、耕作農民保護のためにできた制度にあらずして、明治二十七、八年の戰争以来、国家財政のための税源の制度であると承知しております。爾来五十三年たつた今日におきまして、今日の国家財政中の一割八分を占める收入となり、農民が現金收入において百七十億を取得する産業となつたことは、その間の專売事業制度の徹底と、耕作者の努力によつてなされたことと思うのであります。  私は耕作者の一員として六十年の月日を経ましたが、一昨年の八月でありましたか、葉タバコ民営にするということが世の中に台頭いたしました。そこで全国六十万の耕作者は、そうなりますれば、この五十年間やつて参りましたわれわれの耕作業はいかになるか、農家経済はどんな影響を受けるか、地方の農村経済は非常な混乱を来し、農家経済は破滅する、六十万の耕作者の背後には三百万の家族があるのであるから、こういうことを今やるにあたつては、どうなるかということで、立つてつて署名運動をやり、陳情等もやはり、衆議院、参議院の皆さんにも出したのであります。その後本年になりましても、またこれをどうするかという問題が起つて来た。この場合にあたつて全国六十万の耕作者は、ともかく国家の税源として二十九万六千円より千二百億円までにし、また五百六十万円を百七十億円にするまで発達させて来たにもかかわらず、農家経済を混乱させ、タバコ耕作農家を破滅させ、生活に脅威を與えるようなことを、もしもやるということになりますれば、われわれの生活安定のために大いに努めなければならぬということはよく承知しております。  さらに新聞紙上で、専売制度民営にするにあたつても、葉タバコ専売にしてその他を民営にするということも伺つたのでありますが、かつての七年間の民営時代におきまして、葉タバコ専売事業も横流しのためとうてい維持できなかつたのであります。明治三十七年に初めて専売になつて以来、今日まで変遷をし、日本専売事業の今日をなして、国家財政における大きな財源となつたものが、今ここにそういうことになりますれば、財政面からの財源が果して確保できるか、また農家経済の破滅を救うことができるかというと、でき得ないという私たちの判断で、民営に対してあくまで反対し、われわれは続く限りやる決心を持つておるのであります。  以上全国六十万の耕作者考えを代表して申し上げた次第であります。どうぞ参考とせられまして、十分に御検討あらんことをお願いいたします。
  86. 圖司安正

    圖司委員長 この際お諮りいたします。外資タバコ民営に関する小委員松尾トシ子君が小委員を辞任されましたので、その補欠として佐々木更三君を選任いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めます。それでは佐々木更三君を外資タバコ民営に関する小委員に選任いたします。  なおこの際お諮りいたします。本問題に関する質疑も大体において終了したものと思われますので、本委員会における質疑はこの程度をもつて打切ることといたし、引続き外資タバコ民営に関する小委員会を開会し、本問題に対する取扱いにつき協議いたすことといたします。  では暫時休憩いたします。     午後三時十二分休憩      ————◇—————     午後四時四十五分開議
  88. 圖司安正

    圖司委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  永井委員より発言を求められております。これを許します。永井英修
  89. 永井英修

    ○永井(英)委員 外資タバコ民営に関する件につきましては、小委員会をもちまして種々検討いたしましたが、今日の小委員会におきまして申合せをつくろうということになりまして、自由党案、社会党案、民主党案の三つの申合せ案ができたのであります。これを朗読いたします。自由党の申合せ案はわが国財政経済の現状にかんがみ、外資タバコ民営は時期尚早と考えらる。  民主党の申合せ案はタバコ事業に関する民営及び外資導入は、国家財政並びに外貨費消上はもとより、特に全国六十万の耕作農家の生活を脅かすものであり、これに絶対反対する。  社会党案はわが国自立経済財政及び経済の基礎を危胎ならしめ、かつ全国六十万のタバコ耕作農民の生存を脅かすタバコ事業に関する外資民営反対する。  以上三つの申合せ案が出たのであります。これは本委員会において適当に御処理を願いたいと思います。以上御報告いたします。
  90. 圖司安正

    圖司委員長 永井委員より、本委員会におきましては外資タバコ民営に関する問題につきまして一応委員会としての申合せをするということがございますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めます。  つきましては申合せ事項に関して、自由党、国民民主党、日本社会党の間に、それぞれ三案が出ておるということでございますが、まず自由党の案につきまして志田君より説明を求めます。
  92. 志田義信

    ○志田委員 このタバコ民営及び国営の両説の根拠につきましては、すでにこれを専管いたしておる大蔵省のもとに、臨時専売制度協議会が設立せられまして、すでに十四回の会合をいたしております。しかるにもかかわらずこの協議会におきましても、いまだ最終の決定を見ておらないのでありまして、聞くところによりますると、来る十二日にその最終の答申が行われるやに拜聴いたしておるのであります。しかもこの民営説と国営説の論拠は、いずれもそれぞれ論ずべき諸点があげられておるのでありまして、民営説の論拠を見ますると、自由企業性の原則から、民営は当然であるという項目をあげております。それで国家財政に何ら支障もないという点をあげております。品質の改善、能率の向上が期待される外資導入が容易となる。輸出が期待できる。政府万能の思想は排除すべきであるという六つの論拠をあげております。これに対して国営説の論拠、現在の専売制度を可とする説におきましては、統制を今ただちにはずすべき時期ではない。民営では財政収入の確保ができない。民営になつても品質の改善、価格の引下げ、あるいは生産費の低下は期待できない。耕作者に大きな影響がある。外資導入は適当ではない。輸出に大きな期待はできないという論点をあげて、両方の論拠となつておるのであります。つきまして経済安定委員会におきましても、外資導入に関してタバコ民営を可とするか否とするかという論議につきましては、今日まで数回小委員会を開催いたしまして協議をいたしたのでありますが、ここにわが党といたしましては、わが国財政経済の現状にかんがみまして、外資タバコ民営は今日の段階をもつてしては時期尚早であると考え、申合せをいたした次第であります。  以上自由党の申合せの内容を申し上げまして趣旨の弁明といたします。
  93. 圖司安正

    圖司委員長 次に国民民主党の案につきまして森山欽司君。
  94. 森山欽司

    森山委員 民主党を代表いたしまして、申合案について御説明申し上げます。申合案を読み上げます。  タバコ事業に関する民営及び外資導入は、国家財政並びに外貨費消上はもとより、特に全国六十万の耕作農家の生活を脅かすものであり、これに絶対反対する。以上でございます。  われわれは従来の本委員会において、まず安くてうまいタバコ民営によつて吸うことができるかということを検討したのでございますが、これを裏返して見まするならば、国家財政並びに外貨費消上、特に全国六十万の耕作者の生活権を脅かすものであるかないか、ということを検討することが主眼だつたのでありまして、本日の説明をもつてしましても、タバコ民営論は明らかに国家財政並びに外貨費消上、絶対に行うべからざるものであり、かつ全国六十万耕作農家の生活権を脅かすものであるということは、きわめて明瞭でございます。われわれはこの意味において、かねてよりタバコ民営論に対しては絶対反対の党議を、厳然として確立して参つたのでございます。すでに先般の党大会においても、これを党大会における党議として取上げ、明確なる態度を持しております。また前回の第九臨時国会においても、予算総会でわが党中曽根康弘君は、党を代表してこれに関する質疑をいたしました。また本国会におきましても、衆議院においては早稻田柳右エ門君、参議院においては油井賢太郎君の両氏が、国務大臣の施政方針演説に対する質疑としてこれを行い、わが党の態度はきわめて明確でございます。われわれは国家財政立場、外貨費消上の見地、また全国六十万の耕作者の生活の擁護権に対するわれわれの態度というものを、かくのごとく実行して参りました。しかしながらかかる反対論はわれわれ民主党のみの取上ぐべき問題では決してないと思う。われわれは現在の国家財政、外貨費消上の見地、全国六十万耕作者の身の上に思いをいたしますならば、民主党のみならず、他党といえども同憂の士は相携えて、かかる利権的暴論を絶対に撃滅しなければならないと信じております。そういう意味において、現在野党たる社会党の諸君はもとより、自由党内におきましても同憂具眼の士があることは事実でございます。しかし遺憾ながら、自由党内における具眼の士が、自由党内における少数派であるということも事実であります。ただいま自由党側の申合案といたしまして、財政経済の現状にかんがみて時期尚早であるという言葉をお使いになりました。しかしながらわれわれは、財政経済事情がかわつたならば、これは一体やるのかということについて、はなはだ危惧の念を持つものでございます。先ほど来私の質疑においても取上げましたように、十二日に行われます臨時専売制度協議会の最後の案として伝えられておるものによると、原則としてタバコ民営に賛成する、しかしわが国経済財政事情から、即時民営に移すことは困難であるという結論と、自由党の言辞とが、あまりにも相違しておらぬことに対して、われわれは一驚せざるを得ない。このような申合案を出すことは、国家財政、外貨費消上のみならず、全国六十万の耕作者が、安んじて耕作することは絶対にできないとわれわれは信じております。われわれはかかる意味におきまして、自由党の案に同調することができないとときに、絶対反対の意思表示をこの際いたしたいと思います。與党内の某議員が、秋山総裁の前委員会における御発言に対して、衣のそでからよろいを見せないように頼むと言われた言葉があるのでありますが、私はそのままその言葉を自由党に返上いたしまして、私の趣旨弁明にかえる次第でございます。
  95. 圖司安正

    圖司委員長 次に日本社会党の案について、佐々木更三君の説明を求めます。
  96. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、左の申合せを本委員会満場一致でいたしたいと思うものであります。申合せを読み上げます。   わが国自立経済財政及び経済の基礎を危殆ならしめ、かつ全国六十万のタバコ耕作農民の生存を脅かすタバコ専業に関する外資民営反対する。 まずタバコ事業民営にすることが是か非かということを考えるには、今日のタバコ専売制度が持つておる日本財政経済に占むる、きわめて根幹的な重大意義を認識する必要があると思うのであります。ことにわが国自立経済を論議する場合におきまして、タバコ専売事業を除外しては、ほとんど私は日本自立経済が危殆に瀕するということを確信するものであります。タバコ完全民営にする場合はもとより、葉タバコ専売制度にいたしました場合におきましても、ここに大蔵省当局資料が示すように、外資導入の方針としては、工場の設備、製造の技術、原料葉タバコ、こういうものが予定されておるのであります。そういう場合におきまして、微弱である日本経済の現情勢から見ましたならば、おそらく国際資本の厖大なる威力を持つところの外資のもとにおいて、タバコ事業が外国資本に隷属しなければならない運命に置かれることは明らかであろうと思うのであります。たとい葉タバコ専売制度にいたしましても、それは暫定的な全面的タバコ民営の煙幕にしかすぎないと私は思うのであります。少くとも国際的にトラスト化しておる外国資本の威力からいたしますると、暫定的に、日本葉タバコがかりに専売制度になりましても、やがては耕作反別の減少その他において、日本葉タバコがほとんど成り立たないほどに、外国の葉タバコから圧迫を受けることは当然であります。これらの状態から見まして、このタバコ民営による外資導入が、財政的には三分の一を占めるところの税収入にいかに関係し、全国六十万の耕作農民の生存権を脅かすものであるかということが、この点でも私は明瞭になると思うのであります。そこで今回のタバコ民営の問題は、單なるこういう観点からばかりではなく、これは明らかに外国と日本における商業資本家の個人的利潤追求の欲望の現われであることは言うまでもありません。今日の専売制度を瓦壊せしめて、個人的な利益の上にタバコ民営をやろうとすることは、あまりに明らかでございます。こういう日本自立経済の上において、きわめて重要であるところのタバコ専売制度を民営にすることにつきましては、専売制度のいかんにかかわらず、全面的に反対せざるを得ないわけであります。今今日本が狭い国土の上で自立経済をやらなければならない場合において、ことに資本において小さいところの、保護助成をしなければならない六十万耕作農民が、こういう外国資本の脅威あもとに、やがて追い詰められて亡びて行こうとする姿を見ますときにおきまして、われわれは議会の名において、この六十万耕作農民の生活を守るということが、議会の絶対の使命でなければならぬ。こういう建前からわが日本社会党は、あくまでこれに反対して行こうと思います。従つてわが社会党は、こういう観点に立ちまして、このタバコ民営反対する場合におきましても、党派を超越して、民主党はもとより、多数を持つておりますところの自由党にも同調してもらいたいと考え、わが社会党といたしましては、できるだけ共通の申合せ事項をやりたいと考えまして、先ほど社会党はこれらの三党の意見をとりまとめて、わが国現下の財政経済の諸事情にかんがみ、タバコ事業に関する外資民営は適当ではない。こういう言葉において三党の妥協点を見つけることにおいて、本委員会は六十万耕作農民の意思をここに一致せる姿において、これを実現せしめたいと努力いたしましたけれども、遺憾ながら自由党の同調するところとならず、私たちは独自にこういう案を出さなければならないということを、全国六十万耕作農民に対して、まことに遺憾とする次第であります。従つて自由党の諸君はそういう申合案で、現段階では時期尚早だとおつしやいますけれども、もしほんとうに自由党の諸君がこのタバコ民営反対をなさるという常々の言動からいたしますならば、当然私たちのこういう妥協案に賛成できないはずがないと思うのでございます。その点におきましては、今後委員会がさらにもつと決定的な意見をここでとりまとめなければならない場合におきましては、自由党の諸君もどうぞ党議をまとめて、われわれとともにこのタバコ民営反対の決議ができますように、何分の御協力をお願い申し上げまして、社会党の趣旨弁明にいたします。
  97. 圖司安正

    圖司委員長 申合せの案文は三案あります。まず自由党案についておはかりいたします。  自由党案について御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 圖司安正

    圖司委員長 異議なしと認めます。よつて申合せは自由党案に決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五分散会