○
森山委員 この問題はすでに先般の
委員会で論じ盡されておる。こういうびつこの
専売、すなわち
製造と販売は
民営にして、
耕作だけは
専売制度に残すということは、成り立ち得ない愚論であるということは、先般の
委員会で
検討し盡しましたので、私としてはもうここにことさらにつけ加える必要はないと思います。ただいま生
産局長からも同趣旨の御
答弁があ
つたので確信を得ました。また私が
タバコ民営問題のために接触いたしたある外国人は、
タバコ専売は、
製造販売のみならず、
耕作面をも含めて全部
民営にしなければならない。
耕作面のみを
専売に残すことに興味を持つ業者はないだろうということを言われております。でありますから、こういうびつこの
専売は絶対に成り立ち得ない。
従つて伝えられる十二日の
タバコ民営の
可否の
結論は、三項目ともこれまたわれわれの断じてとるべからざるものであると
考えるものであります。
耕作者の方々の御
意見については、後ほど伺えると思いますので、最後に総括的に私の
意見を述べ、
当局の見解を承れば幸いだと思います。
タバコ民営問題の
経過につきましては、先般の
委員会において私がその
経過を述べましたので、この際その後における
タバコ民営に関するところの国会の論議の
状況を振り返
つてみたいと思います。すなわち昨年の十一月三十日の第九臨時国会における
予算総会におきまして、民主党の中曽根康弘氏は、吉田総理に対して、
タバコを
民営にする点についてどうかと
質問いたしましたところ、方針としては
民営に移したい。能率的に計画的にやる方がよい。但し具体的には
協議会の
答申を待つというお話でありました。また一月二十九日の衆議院本
会議の国務大臣の演説に対する
質疑において、同じく民主党の早稻田柳右エ門氏から、わが党は
国家財政の見地からも、
全国六十万の
タバコ耕作農家の
立場からも、
民営に対して絶対に
反対する。本日たまたま
臨時専売制度協議会をや
つておられると聞くが、はつきり
民営打切りの
結論を出して、その
結論を天下に声明して、
耕作者に安心を與えてもらいたいという
質問をいたしましたところ、池田
大蔵大臣から、目下これを
検討中であるというお答えがありました。さらに一月三十一日の参議院本
会議におきまして、同じく民主党の油井賢太郎氏が吉田総理に対して、
全国六十万の
耕作者が非常に心配しておるが、何とかしてこの
民営に移す点について
考えてもらいたいという点に関して、総理は、
政府としては
民営に移したいと思うが、利害関係のある国民の
意向もよく承知の上で、愼重に
審議したいというふうに言われて、参議院の
答弁においては、総理の御見解も多少色がついて来たというように私ども
考えておるわけであります。しかしながら本
委員会におきまして、
民営問題をこのように取上げることにつきましては、
委員長初め
與党諸君の個人的な
立場は別として、それぞれ
與党の
立場としてお苦しい
状況にあることについてはお察しもし、またそれだけに、われわれにこれだけ言わしていただくということにつきましては、深く敬意を表しておるのでありますが、ともかく
民営問題のその後の
経過は、こういうふうな
状況で今日の
段階に立ち
至つておるのであります。
そこ
一体何ゆえにこういう
民営問題が起きでたのかということを
考えますと、
一つには先般私が
経済安定委員会において
質疑いたしましたように、安くてうまい
タバコが吸えるという、俗耳に入りやすい
言葉で国民の関心を買うということが、
一つの理由であつたと思います。しかしながらこのようなことは
国家財政の
立場から見ましても、また外貨節約の見地から見ましても、あるいは六十万
耕作者の生活権擁護の
立場からいたしましても、断じて行えないのであります。さらにもう
一つの
民営論の根拠は、やはり自由
経済へのあこがれ、ノスタルジアというものがその基底にあるのであろうというふうに
考えるものであります。しかしながら私が
先ほど申しましたように、民主主義のもとにおいては、国民生活と思想が遊離しないということがまつたく大事なことだと思います。一九二〇年の初期におきましては、米国民の大部分は、米国を発達せしめるものは
自由企業であるというような哲学を持
つておりました。しかしながら一九三〇年に至りまして、ルーズヴエルト大統領を中心に、天然資源の開発促進に関する限りは、国民全体のためになるように、利己的ならざる連邦
政府によ
つて、これが開発をすることが正しいという思想を抱く人が、
相当に出て来たことが伝えられています。アメリカにおけるところの資本主義の発達というものにおいても、従来の資本主義とは形がかわつたものが出て参
つたのでございます。これはアメリカの現実に立脚したからこういうものが生れて参つたと思います。
日本の現実の
経済というものに立脚いたしました場合に、われわれは自由
経済主義的な
考え方が先行して、そうしてこの現実を忘れて、むしろ
経済の流れとしては、
公共企業体から
民営に移すということは、時代に対する逆行ではあるまいかと
考えます。そうしてこのような自由主義的な思想というものもその根底にあるわけでございますが、さらにこの
民営論に火をつけたものは、他の要因ではなかろうか。それは申すまでもなく資本家の欲望であります。
タバコ事業を
民営に移すことによ
つて、この企業の経営に当りたいところの人たちの
事業意欲というものが、何と申しましても
民営論の推進力であつたと申してさしつかえないと思います。すでに昨年においては数人の外国人が
日本に渡来いたしました。そのある者は、実に詳細に具体的な
民営の見解をわれわれに残しております。その
資料も私の手先にございますが、各般の関係からこの際は発表を差控えます。しかしいずれにいたしましても、現在の
専売公社がどうな
つているか。
民営にするためには、どういうふうに分割しなければならないか、また分割するためには税法はどういうふうに改正しなければならないか、あるいは
益金はどういうようにしてもらいたいというような、微に入り、細をうがつたところの
考え方が、すでに示されている
段階にな
つている。そうしてかかる外国人の来朝は、はたして外国人が自主的に参つたものか、あるいは
日本人の方から積極的に呼びかけて来てもら
つたのか、いずれか存じませんが どちらにしても
日本人の中に外国人と組んでこういうことをやろうとする人があるわけでございます。われわれは従来の英米
タバコ・トラストが、世界各地の市場においてなし来つたところのこと、そうして世界市場において彼らの活曜した国では、その土着資本にいかなる結果をもたらしたかということを、今あらためて反省しなければならぬと思うのであります。私はこの際
タバコ民意に対しては絶対
反対をせざるを得ません。ただ
一つ特に
秋山総裁に対して私の
意見を申し述べ、
質疑を終りたいと思います。
私は
先ほど来
タバコ事業民営に対して
反対をいたしました。しかしながらそれは決して現在の
専売公社が最もいい能率を上げ、そうしてこれが最善のものであるということを申しているのではございません。現在の
専売公社については、まだ改めなければならない点があると思います。工員の
生産意欲を増強するため、これについての高能率、高賃金という
考え方も織り込んで行かなければならないのではあるまいか。そのためには現在の
公社の経理制度、あるいは
財政法上の制約というものに、新たな
改善を加えなければならないのではあるまいか、あるいは現在は
専売公社というものにな
つておりますけれども、実態はか
つての
専売局時代の官僚臭ふんぷんたるものもあるということも、これまた事実であろうと思うのでございます。私は戦後
日本において新しく、企業形態としてとられましたところの、この
公共企業体に大きな望みをかけておりますがゆえに、この新しい
企業体について、
秋山総裁の練達なる手腕によ
つて、これが
改善をなされんことを切にお願いいたしたいと思います。そうして私はこの際、次の
言葉を
総裁に贈るものであります。それはリリエンタールの著「TVA——民主主義は前進する」の末尾に掲げられている
言葉であります。すなわち「物質的の
仕事はやれるだろう。民主主義的にやれなければ、非民主主義的の方法でもやれるだろう。わずかばかりの巨大な
民間会社が一国の資源を支配するようなやり方でも、おそらくやれるだろう。また政治家が従党を組んでもやれるだろうし、あるいはまた民衆自身が
責任をとることを断つた場合、いつでもそれにと
つてかわろうとするような連中、またはそういつた連中が幾つか提携したものでもやれるだろう。しかし口先のうまい
中央集権主義者、実業界の名士、皮肉な政治家といつた連中、つまり民衆自身にはや
つて行く能力がないと信じている連中は、すべて資源の開発を握
つて、それから利益をしぼりとり、やがてはそれで人間の生活までも支配しようとして一生懸命にな
つているのだろう。そういつたことは非常に危險だ。だれしも押し寄せて来る嵐の危險を軽視することはできないし、また民主主義の前途に横たわる不安の日に気がつかないものはない。しかしそういつた危險は避けられないことはない。われわれが一市民として日常生活の上に、民主主義の伝統が與える力を用いるように心がけさえすれば、こういつた内輪からの攻撃を撃退し、それを完全に打破ることができる。こういつた試練と闘争を経て、民主主義は再び元気をとりもどし、立ち上ることができるのである。」そういう
言葉がございます。私は
公共企業体という
日本企業制度におけるところの新しいフロンテイアを、ぜひとも
秋山総裁において切り開かれて行くということを切にお願いいたしまして、私は
質疑を打切ります。