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並木委員 私は第一に
吉田総理大臣に対し、
世界の
危機、
日本自体の
危機について、
首相の
判断に
誤りがあるので、これを修正すべきであるかどうかという点をお尋ねいたします。
首相は今度の
国会でも、第三次
大戦は起らないとの
楽観論を唱えました。しかしここ数日来明らかにされた
マーシャル国防長官などの
証言をめぐ
つて感ずる
危機は、はるかに
首相の感覚より深刻であります。
証言の
一つをと
つてみましても、
ソ連はいつ何どき西欧を侵略するかもしれない。
ソ連との
全面戦争は非常に危険な起り得べきことである、とある。また
長官は、もし
アメリカが今後一年半にわたり、
至世界的紛争を回避できたなら、危地を脱したことになろうという
意見に
同意を與えております。
危機は将来ではなくして、むしろ目前にあることを痛感するのでありますけれども、これでも、これでもなお
首相は今までの
判断に修正を加える必要がないと言われるかどうか。少くとも
首相の
楽観論は、絶対的な根拠があ
つたわけではないということがわか
つて来たのでありまして、
首相がか
つてみずから誇
つたところの多年の
外交官としての経験と勘も、もはや現実には神通力を
失つたのではないかと思うのであります。
世界の
危機に相呼応して、
日本自体の
危機も重大であります。
マーシャル国防長官の別の
証言によればこんなことがあります。
ソ連はウラジオ、大連、旅順、
ハルピンに兵力を集中しているばかりでなく、樺太にも
日本の捕虜を中心とした
部隊を集結している。また
中共空軍の増強をも見のがし得ないものがある。これらの動きは
ソ連の意図を示すに十分であ
つて、もし満州を爆撃するならば、朝鮮はもとより、
日本及び琉球に対する
報復爆撃を予期せねばならない、その場合
日本、ことに北海道の
防衛が重大問題になるし、この事態は
世界戦争を不可避ならしめるものである。
首相は
神経戦にかかるなと言
つていましたけれども、
日本を取巻く
危機について、いまさらのように驚かれておるのではないかと思います。わが
民主党は、芦田前
総裁を初めとして、
首相の
楽観論に警告を発して参
つたのでありますが、明らかに
首相の
判断に
誤りがあ
つたと思いますので、この際
国際情勢、
大戦の
可能性、
日本の直面せる
危機についての
首相の見解を明らかにし、あわせてこれが対策をも披瀝していただきたいのであります。
第二に
首相にお伺いしたいことは、
首相は再
軍備にはあくまで
反対するか
反対するならば
日本の受持つべき
地上部隊は、どうしてつくるつもりであるかという点であります。
首相は再
軍備には
反対だと言われた。私は
首相が
日本の
危機に目をおお
つているのではないかと思います。
講和後の
真空状態をほ
つておいてよいか、
安全保障をいかにして
確保するつもりであるか、五月九日の本
会議の
演説の中で、この点に全然触れなか
つたのは不可解千万であります。
講和條約と同時に、別途
日米防衛協定を結ぶことに
同意を與え、
米軍の
駐留を
希望したのではなか
つたのですか。この
日米防衛協定は、
首相がよく言われる
集団防衛の中に入るのかどうか、そうして
国連憲章にいわゆる地域的とりきめの一種ではないかと思うのですが、その
構想を明らかにしていただきたいのであります。ただ単に他力本願だけでや
つていたのでは、たとい
独立してもほんとうの
独立にはならないと思うのです。
自主自衛の
方法を講じなければいけないと思います。
ダレス氏も、
マツカーサー元帥も、
日米防衛協定の結ばれたあかつきは、
海空軍は
アメリカが受持ち、
地上部隊は
日本が受持つべきであることをほのめかしております。しかるに
首相は再
軍備には
反対だと言われる。それだけではありません。
民主党が再
軍備を唱えるから、濠州やニュージーランドなどが釈然としないのだとばかり、これを
党利党略に悪用しておるのであります。
首相は職を賭しても再
軍備に
反対し続けるかどうか。もつとも
首相は近く隠退するとも伝えられるので、あるいは在職中は
反対だという
意味ならば、一応話の筋は通るのであります。しかしあくまでも
反対するならば、
地上部隊をどうしてつくるつもりであるか。よもやうやむやのうちに
警察予備隊を実際上の
地上部隊に切りかえ、表面上はこれは
軍隊ではないんだということになるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
首相が案外のんびり構えておりますので、この点いささか気がかりであるがゆえに、特に確かめておきたいのであります。われわれは
民族独立のために、
地上部隊を別途に持つべきであり、これが費用は将来不用となるべき
終戦処理費をも
つて充てて、あわせて憲法の改正ということも考慮すべきであると
考えておるのでありますが、これらに対する
首相の決意を伺いたいのであります。
第二にお伺いしたいのは、條約署名前に、條約の内容を
国会に示すべきであるがどうか。これは大量の
追放解除を控えて特に必要と思うのであります。
首相は本
会議での答弁で、條約の
草案は発表しないことにな
つているから、発表しないのだと言われました。なるほど條約
草案はまだ
関係国の間で折衝中でもあり、あるいは今ただちに発表せよということは無理かもしれません。しかし
国会は国権の最高機関であり、先ほど
首相が申されました
通り、
ダレス氏は
征服者対被
征服者の
関係に立
つての條約ではないと言われております。従
つて條約署名までには、必ず條約の内容を
国会に示すべきものであると思うのでありますが、
首相にその意思があるかどうか。私は少くとも
国会の
外務委員会には、必要ならば秘密会でもよろしいから、條約の内容を提示すべきであると思うのですが、この点どうであるか。これをしも行わずして、條約の署名に臨まんとするがごときことあらば、それこそ民主主義の
原則を踏みにじるものであり、
国会軽視、秘密外交と言われても返す言葉がないと思うのであります。ここでお尋ねしておきたいのは、近く
講和前に大量の
追放解除が行われんとしております。その数は十数万に及び、鳩山一郎氏のごとき、いわゆる覚書によるものの解除も含まれると予想されておりますが、その
通りであるかどうかということであります。これらの人々は、今まで
講和について意思表示することを停止されていた気の毒な人々であります。これら有力なかつ多数の人々の
意見を徴する
意味においても、近く総選挙を必要とするものであると同時に、また條約署名から批准までの間に相当の期間がありますから、いかなるはずみで政変が起らないとも限らないのであります。こういうような場合に、国論が大きく割れるようなことがあるならば、ゆゆしい問題に直面するのでありますが、
吉田首相はこのことを考慮しておられるかどうか。こういう場合に備えても、できるだけ條約の内容を
国会に対し明らかにして、万遺憾なきを期すべきであると思いますけれども、
首相の所信を伺いたいのであります。
最後に第四点といたしまして、昨日発表されました
マーカット声明についてお尋ねしたいのでありますが、時間がなくなりましたので、一言だけ申し上げます。
日米経済協力もけつこうでありますけれども、これはよほど
政府が注意して参りませんと、楽観を許さない事態が起るであろうと思うのであります。このことは、昨日私の方の三木幹事長が談話を発表しております。私は、運営をうまくやらなければ飢餓輸出に陷るおそれがあり、しかもこれに加えてインフレのおそれがあり、ひいては
国民生活を
圧迫して、生活水準を低下させることをおそれるものであります。よ
つて日本の物資買付参加には、これに見合う
原料をリンク制により
確保することが絶対に必要であろうと思います。言いかえれば下請制度的でなく、あくまでも委託加工的の制度をとることが必要ではないか。それともう
一つ為替レートのことが問題にな
つておるようでありますけれども、私は現在の一
ドル三百六十円を、三百三十円あるいは三百円
程度に引上げることによ
つて、こういう
国民経済を
圧迫し、悪性インフレに陷るおそれを防止すべきであると思うのでありますが、これらの点に関して
首相のお
考えを聞きたいのであります。
以上四点
首相の明快なる御答弁を要求して私の質問を終ります。