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砂間委員 今進められている単独講和の問題についてでありますが、ああいう形で進められている単独講和というものは、
法律上、條約上から
考えても、非合法でかつ無効なものではないかというふうに私どもには
考えられるわけであります。
まず第一点といたしまして、
日本は一九四五年九月二日のあの降伏文書で連合国に降伏しておる。その連合国は米・英・ソ・中というこの四大国であることは降伏文書にはつきり書いてあるわけであります。ところがその連合国に対して降伏したにもかかわらず、その中の特定の一、二の国だけと條約を結ぶということになりますと、これは降伏文書にも違反することになるし、また
日本が無條件で受諾したポツダム宣言にも違反するつまり
日本政府は條約違反を犯す、
法律違反をあえてする、こういうふうなことになるわけでありまして、これは国際法上の解釈からしても、そういう単独講和條約というものは無効になりはしないかということであります。
それから第ニ点といたしましては、中国を
代表する
政府として
アメリカのダレス氏が
考えていることは、台湾の国民
政府であるというふうなことが新聞で伝えられております。これは今の
並木君の
質問にもあ
つたことでありますが、條約
局長の御
説明によりますと、国際法上の解釈としては、これは解決不可能な問題であるということでありました。しかしながら、法理上の解釈はともかくとして、現在
中共を
代表している正統
政府は中華人民共和国であります。この
中共政府が中国四億五千万の人民を
代表している実際上の
政府でありまして、蒋介石政権というのは、これはもう台湾へ亡命しているただ名ばかりの
政府にすぎない。かりに国民
政府が対日講和條約に調印するということになれば、これは何ら実体のない幽霊のような亡命政権が調印したということになりまして、
日本との戦争によ
つて最も大きな被害を受けた中国の四億五千万の人民は
代表されていない。それとは依然として交戦
状態が続くということになりますと、これはま
つたく無
意味なものになりはしないか。ことに昨年十二月四日の
中共の周恩来外交部長の声明の中には、第一にこの点をはつきり言
つているわけであります。「
日本帝国主義は、一九三一年九月十八日対中国武力侵略を開始、わが国土の広大な
地域を荒廃せしめ、中国人民の生命財産に莫大な損害を與えた。」中を省略いたしまして「
従つて当然中華人民共和国は対日講和條約の準備、起草、締結に参加せねばならない。ここに私は、わが中央人民
政府は中華人民唯一の合法
政府であり、この
政府が対日講和の準備、起草、締結に参加すべきであることを厳粛に宣言するものである。反動的国民党残存分子は中国人民を
代表すべき
権限は絶対に持たず、
従つて対日講和準備のためのいかなる討議、会議にも加わる
資格ない。われわれは、対日講和の
内容やその結果がいかなるものであれ、すべてそれは中華人民共和国が参加せざる限り不法かつ無効なものであるとみなす。」中国の実際上の
政府は、中華人民共和国の参加しない対日講和條約は、不法から無効なるのであるということをはつきり宣言しているわけであります。それからまた、中国とソビエトを除外した対日講和ということになりますと、これに参加しない中ソの二大隣国は、依然として
日本と交戦
状態にあるわけであります。そうして降伏文書あるいはポツダム宣言によ
つて、
日本を占領管理する連合国の有力な一員であるわけでありますから、かりに米英とだけ講和條約が結ばれた場合には、中国やソビエトは参加しておらないのですから、中国やソビエトはいつでも
日本に進駐して来て、
日本を占領、管理するという大義名分が立つわけであります。そうしますと、これは中国やソビエトが
日本に進駐して来る来ないは別といたしましても、
日本の八千万国民といたしますと、いつ占領、管理にや
つて来るかもわからぬという非常に不安な
状態に置かれるわけであります。
日本国民の頭上にはこの二つの未解決の首かせが残
つているというようなことになります。しかもそれは依然として戦争
状態を継続している。こういうかつこうになるわけでありますから、これでは講和にならない。こういうふうな点からいたしまして、単独講和條約というものがかりに締結されたとしても、それは
法律的に
考えても、また実際上から
考えても、真に平和を確立し、そして国際間の戦争の跡始末をつけるということにならない、妙ちきりんなものになると思うのです。しかもそういうふうなことを
日本政府みずから進んで、好んで推し進められて行
つているということにつきましては、私どもは国民の一員としてどうしても納得が行かないのであります。これらの点について
政府はどういうふうに
考えておられるかを第一にお尋ねしたい。
なお
吉田総理は、ソビエトを中国が対日講和を妨害しているというような、ま
つたく根も葉もない逆宣伝を言うておるのであります。先般ソビエトから、対日講和草案が
ワシントン政府、
関係国に送られたというような新聞報道もありましたが、あの新聞報道の一部分を見ましても、私どもがダレスの
アメリカ案と、そうしてソビエトの案の
内容を比較してみた場合に、どつちが
日本国民にと
つて利益であるかということは、一目してはつきりしておる。ダレスの
考えている
アメリカ案は、
日本に軍事基地を設定する、それから
アメリカの軍隊を駐屯させる、さらにその上再軍備というふうなことをいわれておるのでありますが、しかも
貿易や
日本の産業の自立というふうな点につきましては、名目上はともあれ、実際上は非常な制限を加えておる。ことに中国
貿易の禁止等は、
日本の
経済自立にと
つて致命的な打撃になると思うのでありますが、全面講和ができさえすれば、それらの障害は一切なくな
つてしまうわけであります。事実またソ連のごときは、すでに一九四七年の十二月
ロンドンの外相会議におきましても、
日本との講和のための四大国外相会議を開けというふうな提案をや
つておるのでありまして、最近
アメリカが講和問題をかつぎ出したそれ以前から、最も熱心に対日講和の問題について、その解決を一日も早くしたいということを言うておるのでありまして、妨害した事実はどこにもない。(「
内容が悪い」と呼ぶ者あり)
内容の点からいえば、これは両案を比較してみれば国民には明らかな
通り、ソビエトの案がはるかにいい。また全面講和、特にソビエトと中国を含めたところのこの四大国との全面講和ができさえすれば、もう国民としましては、からつとした気持になりますし、どこの国も攻めて来ることもない。そうすれば再軍備をする必要もなければ、また軍事基地を設定する必要もないわけでありまして、こういう全面講和を何で
日本政府は振り捨てて、そうしてしやにむにダレスの単独講和の方へ
日本を引きず
つて行こうとするのか、私どもははなはだ了解に苦しむのでありますが、それらの條約上の解釈の点、また実際問題からしても講和にならないというふうな点について、
政府はどういうふうに
考えておられるか、ひとつ詳しい御見解を承りたいと思います。