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並木委員 私は
ユネスコ憲章を受諾するにあたりまして、
天野文部大臣に
二つの点を確かめておきたいと思うのです。その
一つは、
ユネスコというものは実際の効果をもたらしておるものであるかどうか、こういう点であります。それから他の
一つは、ただいま
北澤委員からもちよつと触れられましたが、
ユネスコ加入後の
国内態勢についてでございます。
まず私はこの
ユネスコの実効について、
国民の間で相当疑問が持たれるのじやないかという点を
指摘したいのでございます。それは、
ユネスコ憲章の
前文の
宣言のところの冒頭に「
戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和の
とりでを築かなければならない。」とこう書いてあります。これはまことにもつともだと思います。それから次に「
相互の
風習と
生活を知らないことは、
人類の
歴史を通じて
世界の諸
人民の間に
疑惑と
不信をおこした共通の原因であり、この
疑惑と
不信のために、諸
人民の不一致があまりにもしばしば
戦争と
なつた。」こう書いてあります。これも私はもつともであろうと思います。ですから観念的には何ら異論をさしはさむ余地はないと思うのでありますけれ
ども、さて
現実の
世界を見ますと、なかなかこのような
理想通りに行
つておらないので、むしろ非常な
隔たりがあると思う。いわゆる鉄の
カーテンの向う側の
風習と
生活は、私
たち日本人には知ることができない、また知らされておらない。しかも終戦以来
国際情勢は悪化してこそおれ、決して好転しておりません。年頭の書簡には
マツカーサー元帥も、
日本の
憲法の
理想は、
現実の前に
自己保存の法則に道を譲らなければならないだろうということを述べられておりますし、つい最近は、
マーシヤル国防長官がこういうことを証言されております。われわれが定義を下しているような
民主主義と
共産主義国家間の
闘争は永続的なものである。それはすでに五箇年以上を経過したが、さらに今後も長く続くであろう。私はこの
世界的闘争を迅速かつ決定的に解決しようと思うならば、第三次
大戦に訴える以外に道はないと思う。こういうように証言されておるのであります。また他の証言でしたか、
アメリカは中共と戦
つておるのではない、
共産主義と戦
つておるのだというような点もあつたかと私は記憶しております。そうすると
戦争をなくすことが
ユネスコの
目的であり、心の中に平和の
とりでをつくろうということが
宣言にうたわれておりますけれ
ども、それが実際にできないのじやないかという少くとも疑問が起るのであります。ですから私
ども鉄の
カーテンのあちら側の
風習と
生活を知る機会から、すますま遠ざか
つておる今日、
文部大臣としてはどういうふうにして、この
ユネスコの
目的を達する確信があられるか、それを知りたいのであります。要するにこの
現実と
理想との矛盾を、
文部大臣としては、いかなる所信をも
つて日本国民に訴えて行くか、これはもつと掘り下げれば、
共産主義と
民主主義とは
永遠に相いれないものであるのかどうかという
根本問題にもな
つて行くと思いますので、この際こういう点を明確にしていただきたいと思います。