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吉田国務大臣 講和の時期、
方法というお尋ねでありますが、
講和の時期は、米英ともになるべく早く
講和をしたいということでありますから、つまり相当短かい期間でも
つてできるものであろうと思います。しかしながらいついつかというようなことの言いにくいことは、御想像の
通りであろうと思いますが、しかし相手のあることでありますから、できると思
つたことができないこともありますし、早くできると思
つてもおそくなることもあります。おそくなると思
つても早くなることもありますし、かりに今日は非常に早くなるだろうと思
つても、国際の情勢でも
つてどうなるかわかりません。一九四七年でありますか、第一次
吉田内閣がやめるときには、その年の秋にはできるだろうというような話をされてお
つたのが、それが今日に至
つたようなわけでありますから、時期については楽観、悲観ともに許されないと思います。まず将来の客観情勢もしくは連合国の間の関係によることと御承知願いたいと思います。
そこで
方法ということは、全面
講和か多数
講和かということでございましようが、これも客観情勢によることであり、連合国の意向によることであ
つて、米国の今日の
考え方は、一応全面
講和で各連合国に当
つてみて、そしてなるべく早く対
日講和を結ぼうという二とにあるようであります。さてそれができなか
つた場合にどうなるかというようなことは、これも将来の客観情勢によることでありますから、何とも今
お答えができません。
また
国際情勢の見通しが違うじやないかということですが、私としては見通しは違わぬつもりであります。私の言
つていることは、第三次世界
戰争がそうたやすく勃発するものではないということです。
国際情勢はその後どうであるかというと、
考え方によ
つては切迫しております。またその切迫した形勢が一応治まるというのも、これはそのときどきの形勢によることお
つて、たとえば朝鮮において動乱が生じた。そしてそれが昨年の十一月ごろでありましたか、クリスマスまでには片づくと
考えられてお
つたのであります。しかしながら突如として
中共が
参加した。そこで形勢が逼迫した。その形勢逼迫が、今日はまたいくらか
中共軍の出方が鈍
つて来た。そこで形勢は緩和せられたというようなわけで、始終客観情勢は、あるいは切迫したような様相を與え、また緩和したような様相を與えますか、今日一般的に1私は
新聞雑誌等によ
つて承知した以外の知識はないのでありますが、たとえば朝鮮において動乱が起
つた。そしてその動乱に対して連合国が、なるべく第三次
戰争の発端にならないようにと
考えて、小さな事件から大きな事件にならないように、朝鮮動乱については
国連としては適当な処置をと
つて、なるべく小さく治めるつもりでお
つたが、治まらなか
つた結果、あるいは朝鮮から連合軍は追い拂われて、
日本までにもただちに災いが及ぶかというような
状態に
なつた。そういう
状態にな
つてみると、たとえばヨーロツパ
方面は、問題は極東ではないではないか、すなわち問題はヨーロツパではないか、ヨーロツパの方がもつと危險であるから、あまり極東に力を費してもら
つては困るというような
感じが出たのが、
国連における十二月前後の話であろうと思いますが、それが今日はさらに緩和されて、
中共の進出は鈍
つて来た。さてどうなるかというのが今の
状態でありましよう。
それから国際の情勢は始終かわるのでありますが、あるいは楽観に傾き、あるいは悲観に傾くのであるが、しかしながら、大体の方向としては、
戰争勃発までには行かないと見ている人の方が多いと思います。たとえば
アメリカあたりではことしの六月にはとか、あるいはユーゴスラビアあたりではこの麦のできるころ、すなわち四月、五月の間に
ソビエトが出て来るだろうとか、いろいろな観測はありますけれども、これによ
つて世界大
戰争を勃発せしむるような計画的なことはするはずがない、むしろ偶然の結果から勃発することはあり得ると思いますけれども、計画的にこの際第三次世界
戰争を起そうという気持を持
つている国は一国もないはずだと思います。つまり大体論としては第三次
戰争は容易に起らない。起らないが、その以前において神経戰の苛烈なることは、これは現在
日本ばかりではありません。ヨーロツパにおいても、何か
アメリカからすればヨーロツパは今にも
ソビエトあるいは
共産主義陣営のために滅ぼされやしないか、あるいは降参しやしないかとまで極端に
アメリカ等で
考えている向きがありますし、またヨーロツパからいえば、
国連軍はその初めの予定を越えて、あるいは満洲まで行
つてしまうのではないが、あるいは満洲に入
つてさらに北支那に入る、あるいはその他へ入
つて、第三次
戰争がこの
方面から起りやしないかというので、
国連に対するあるいは朝鮮における
国連軍に対するヨーロツパにおける心配の種にな
つておるというのが、現在の
状態であろうと思います。また私は現在朝鮮において
中共軍が出て来て、そして苛烈なる
戰争をしても、
アメリカ、
国連軍は朝鮮から追い拂われるというようなことは断じてないと
考えておるのですが、現在のところは私の見方の方が正しいと思います。
中共軍に対する
アメリカ軍の、
国連軍の與えた損害は非常に厖大な損害であ
つて、そのために
中共軍の進出が鈍
つたということは事実であろうと思いますし、さらに流行病が起り、チフスが起り、非常な損害であるということも、決してうわさではないだろうと思う。というのは現に三十八度線のところを出入しておるような
状態でありまして、初めの北朝鮮における戰況とはまるきり今日は違
つておる。それはどういうわけであるかといえば、損害かあまりに大きか
つたことであろうと思います。さて将来はどうか、雪解けにでもな
つて、そうして朝鮮の道路も何もない——道路はこわされてしま
つた、鉄道もこわされてしま
つたという
現状において、そして
国連軍は飛行機なりジープなりあるいはその他の輸送機関を持
つており、一方は牛車で運ぶというようないくさをしておりますから、雪解けになればなるほど、暖かくなればなるほど、
中共軍の進出の勢いは鈍るべきはずだと思います。ゆえにその朝鮮における戰況から
考えてみて、とまに一喜一憂することはありますが、大体において朝鮮
方面から第三次世界
戰争が起るとも
考えられない。すなわちわれわれとしては第三次
戰争に対してそう神経を悩ますべきものではない。のみならず、神経を悩ますということは、かえ
つて神経職にかかることである。むしろわれわれとしては神経戰の方が戒むべきものであると思います。これはごく私の想像論でありますけれども、
日本の
立場は非常に危險であるといわれておりますが、しかしそれはむしろヨーロツパの方がより危險であろうと思います。
再
軍備については、しばしば申す
通り。
賠償問題については、これはまだいろいろ
議論があ
つて、賠償を取立てたいという国もあります。しかしながら賠償を取立てようとしてどうする、これは
講和條約のときにな
つて各国の要望がはつきりいたすわけで、これに対するわれわれの方便は、将来のことになりますからして、ここに申し上げにくいのであります。
戰犯については、戰犯、追放ともに
講和條約のときにはつきりいたすと思います。
講和條約によ
つて決定せられることと思います。追放も
講和條約後においてはまずないと思います。
スターリンの
声明に対しては、外国の
政府の
声明でありますからして、私としては批評を差控えます。
さて
国民の精神高揚の
方法はいかんということでありますが、われわれの心配いたしておることは、
敗戰の結果、
日本の
国民の精神において相当の打撃を生じ、また空白を生じたということは事実であります。これをどうして直すかということは教育の問題でもありますし、
一つは
国民生活の安定ということでもあろうと思います。まず物質的に申せば、
国民生活の安定をはか
つて、復興といいますか、
日本の
国民の
生活水準を高くすることに努めることが、また飜
つて国民の精神を高揚することにもなるでありましよう。あとは教育の問題でありますから、これは触れません。