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1951-02-06 第10回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月六日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君    理事 西村 榮一君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    中山 マサ君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       松本 瀧藏君    武藤運十郎君       高田 富之君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家公安委員長 辻  二郎君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 二月一日  委員小川半次辞任につき、その補欠として三  木武夫君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員水田三喜男辞任につき、その補欠として  淺香忠雄君が議長指名委員に選任された。 二月三日  小笠原諸島日本復帰に関する請願(苫米地義  三君紹介)(第三四九号) の審査を本委員会に付託された。 同月五日  海外同胞救出国民運動費国庫負担等陳情書  (第一五七号)  朝鮮人強制送還中止等に関する陳情書  (第一八一号)  海外胞引揚促進等に関する陳情書  (第二〇〇号)  沖繩日本復帰に関する陳情書  (第二〇六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  実は今日外務大臣出席される予定であつたのでありますが、急にさしつかえが起りまして、出席されません。実は外務大臣出席されるだろうと思いまして、定例のあしたを今日に繰上げたのでございますが、そういうわけでございますから、御了承願います。
  3. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、あしたは総理大臣は出て来ますか。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 今の見込みでは、あしたは出られないだろうと思います。それで私どもといたしましては、最近の機会に出ていただくために努力いたしております。
  5. 並木芳雄

    並木委員 最近の機会に出るように努力するという委員長のお気持けつこうでありますが、私ども外務委員会というものは、国会委員会で、考えようによれば吉田総理大臣吉田外務大臣のためだけの委員会でもないのです。しかるに事態関係上、吉田総理大臣外務大臣の御出席を要求する必要があるために、要求しておるので、きようとあした二日あけておくにもかかわらず、出て来ないというような状態でありまして、また今週便々として待つているというのも、これはずいぶん委員会権威に関することであります。この間の時間割を見ると、またこの前と同じように、私などもわずかに割当時間は十分です。この前非難のあつたあの同じ方式が、今度また繰返されるということは残念でありますから、いつそのこと、この次は朝から午後まで、ずつと首相に一日、出てもらうということにして、むしろ来週には必ず出席してもらう。そうしてもらう方が委員会権威にもなるし、われわれとしても準備ができるのではないかと思うのですが、その点について、どうお考えになりますか。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 お述べになりましたお気持は相当ごもつともと思います。ですから私はできるだけ努力をいたします。それでよろしゆうございますか。
  7. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ議事進行に関して、この委員会の運営についてですが、今度の国会が再開されます前に、與党方面からでしようが、公聽会といつたようなものを開いたらどうだという声が出たようでございます。私ども公聽会ということは規則上できないかとも思いますけれども参考人というようなものならば、国会に来てもらつて、ここでいろいろ意見を述べてもらつたりすることができるようになつておるので、趣旨としては私どもはこれに対して双手をあげて賛成なんです。実は前からもそういうことを私どもの方から言つてつたのですけれども事態がまだ熟しておらないのに、あまり国会委員会喧々諤々の議論をされたのでは、吉田外務大臣以下政府の方は困るというような意向があつたと見えて、むしろそれはもみ消されてしまつた。それが今日與党方面から出て来たということは、非常に與党の方でも反省せられた形跡がうかがわれて、けつこうだと思います。ぜひひとつこの機会参考人に来ていただいて、そうして国会を通じて日本国民の意思を代表するようにとりはからつていただきたいと思いますが、その点をお諮り願いたいと思います。
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 その点については理事会でまた相談することにいたします。     〔委員長退席竹尾委員長代理着席
  9. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 それでは国際情勢等に関する質疑を許します。質疑の通告がございます。通告順によつてこれを許します。菊池君。
  10. 菊池義郎

    菊池委員 政務局長にお伺いいたしますが、ダレス特使日本に再武装を強制しないと言われる、また日本希望するならば、講和後にも軍隊日本本土周辺に駐留せしめていいと言つておる。希望するならばというコンデイシヨナル・フレーズがついておる、この意味がさつぱりわからぬ。かつて西ドイツに対しましては十個師団軍備を提唱したところの米国が、日本に対してはそれと打つてかわつたことを言つておる、これは何を意味するか、米国の腹がどうもさつぱりわからぬのであります。日本がもし希望しないならば、軍隊も置かないし、再軍備も必要がないというのでは、日本共産軍に明け渡すのもお前たちのかつてであるというふうにも受取れるのであります。かつてロイヤル長官は不用意のうちに、日本米国にとつて戰略基地として価値なきものであるという口吻を漏らしたことがあります。彼らの西欧防衛第一主義の主張と考え合せてみますと、そこに多くの疑問を生ずる余地があるのではないかと思う。政府のこれに対する判断、すなわち再武裝を強制しないということ、また日本希望するならば、講和後に日本本土周辺軍隊をとどめてもよろしい。この意味に対する政府の御判断をお伺いしたいと思います。
  11. 島津久大

    島津政府委員 ダレスさんの言われておりますことを、事務当局から解釈をいたす立場にないと思いますが、ただ、ただいまの御質問につきましては、大体集団保障というような、こういうような提案は、強制的の性質でないということ、そういうような意味で言われておるのだと思うのであります。
  12. 菊池義郎

    菊池委員 それでは日本からの希望によつて向う軍隊をとどめてもらう場合においては、その軍備経費は一体どちらが持つべきであるか。
  13. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問の点は、そういうようなことは、まだ何も固まつた話はないと想像いたします。
  14. 菊池義郎

    菊池委員 法理的にはどういうふうになりますか。
  15. 島津久大

    島津政府委員 これは法理論では片づく問題ではないと考えます。
  16. 菊池義郎

    菊池委員 日本希望によつて外国軍隊日本にとどめておく場合、つまり講和後のことでありまするから、そういう場合には、経費をどつちが持つかということは、法理によつて、大体どつちかということはわかつているはずですが……。
  17. 島津久大

    島津政府委員 国際法でも、そういうようなことは何もきまつたことはないと思います。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 それからさらにダレスさんは、国連への加盟が考慮されるということを言つておるのでありまするが、どんな方法でもつて考慮せられるのであるか、全面講和でも加盟できるとは限らない。まして多数講和單独講和となると、ソ連拒否権の行使によりまして、絶対に不可能なはずなのでありますが、何か国連に入り得る方法があり得るものかどうか、これに対するお答へを願います。
  19. 島津久大

    島津政府委員 お説の通り、国連に加入することは手続的になかなか困難な問題と考えます。しかし不可能であるとは決して考えておりません。具体的にどういう方法があるかということは、ただいまのところでは申し上げる立場にないのであります。
  20. 菊池義郎

    菊池委員 もし国連に入られるならば、地域的に集団安全保障を求めるほかはないのでありますが、それにしてもわれわれは、米国その他の集団の力を当てにしてはならないと思う。やはり自力自衛が最も安全であると信ずるのでありますが、今日米国を中心とするところの五十余箇国の連合軍が、朝鮮でもつて中共一国のために追いまくられて外交上においても中共のために飜弄せられるというありさまは、実にみじめなものでありまして、どこまで信頼していいかわからぬのでありますが、今日もしわれわれ日本人が立場をかえて米国立場にあつたとしたならば、われわれはただちに原爆をひつさげてクレムリンを襲い、北京を襲つて、一挙に勝敗を決するでありましようが、彼らはただ中共のきげんをとつて躊躇逡巡しておる、小田原評定に明け暮れしておるというありさまである。武器彈薬や、あるいはその他の経費金持国家にたよるといたしましても、戰闘においては、やはり自力にたよるのほかはないと思います。これに対する政府のお考えをお尋ねします。
  21. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問に対しましては、事務当局からはお答えをいたさぬ方が適当だと思います。
  22. 菊池義郎

    菊池委員 地域的の集団あるいは国連からの協力を要求せられる場合に、これは吉田総理言つておることでありますが、国民の総意に沿うて軍備を持つこともあり得るということを言つておられますが、どのくらいの兵力があればよいと政府ではお考えになつておりますか。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の憲法のもとにおきましては、兵力ということを考えたことはございません。
  24. 菊池義郎

    菊池委員 総理は今の憲法を守り拔くと言われ、再軍備はやらぬと言つておられますが、米国輿論調査を見ますと、七五%が日本の再軍備に賛成しております。英国の連邦会議を見ましても、濠州を除きまして、他の国は一定の制限のもとにおいては、日本の再武裝もやむを得ないだろうということに大体なつておる。総理も絶対に軍備を持たないというのではない、国連に協力するための警察軍を要求せられた場合は、講和後にあらためて考慮するという意味のことを言つておられるのであります。これはつまり軍備を持つことを肯定する意味だろうと思うのであります。これを政府はどうお考えになりますか。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 講和会議の後におきまする自衛措置につきましては、政府といたしましては現実に講和会議において條件がきまつた場合に考慮するべきものである、かような根本的な考えを持つております。
  26. 菊池義郎

    菊池委員 琉球と小笠原の帰属に関しまして、米国ソ連との見解が違つております。米国覚書に対するソ連の回答を見ると、かえつてソ連日本に味方をしているような形にあると思いますが、しかしながら法理の上から見ますると、米国見解は誤つてないとわれわれ考えております。しかしあのポツダム宣言は、これらの島々を連合国側でとつてよいようにはなつておりますけれども、とらなければならないという規定ではないのですから、交渉の余地は十分にあるとわれわれは考えておるのであります。たといダレス特使が何と言おうとも、これに縛られてはならないと思うのであります。もしどうしてもアメリカ信託統治にするというのでありますれば、そういう信託統治にしたいという意向は、結局軍事基地をそこに求めたいという考えからでありましようが、それならば島をそのまま信託統治にしなくても、軍事基地だけ提供するということにしまして、そうして島をこつちにとるというように交渉してほしいとわれわれは思うのであります。政府はこれに対してどういう考えを持つておりますか。
  27. 島津久大

    島津政府委員 領土問題につきましては、従来しばしば申し上げましたように、領土問題となつております地域実情に関する資料を関係方面に提出しております。ただ領土問題に関して政府意見を申し上げますことは、この問題が條約の主要な内容にも関係をいたしますので、この際申し上げることは差控えたいと思います。
  28. 菊池義郎

    菊池委員 小笠原諸島でありますが、小笠原諸島軍事基地も何もない私はたびたび行つておるのでありますが、山岳ばかりで、ほんとうに彈丸黒子といつたような小さい地域でございまして、飛行場すらもない、アメリカ兵隊が一人もおらない。そういうところを信託統治にしようというのは、結局これはアメリカ本国人小笠原諸島の地形を知らないからだろうと思う。これは日本政府として何とかしてアメリカ本国に、小笠原軍事基地にならないことを知らしめたならばおそらくこれは日本にとれると考えておるのであります。現在の司令部の幹部の連中も、小笠原があんなところであるということをおそらく知らないのではないかと考えます。兵隊がちよつとも行つておらない。それを彼らは大づかみに考えて、小笠原は地点からいつて軍事基地に適当であると感違いしておるのではないか。この点十分に折衝していただきたいと思います。私の質問はこれで終ります。
  29. 竹尾弌

  30. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はこの機会法務総裁に一言お聞きしておきたいと思うのであります。それは先般たまたま私が動議提案趣旨を弁明、説明いたした関係もございまして、ただいま懲罰委員会におきまして問題となつておりまする共産党議員川上貫一君の、議会内におけるところの言動に関してのことであります。川上貫一君の、二十七日でありまたかの衆議院会議において行いましたところの、いわゆる質問演説なるものの内容をしさいに検討いたしまするときに、これがもし議院外において行われたといたしますと、少くともポツダム政令団体等規正令に違反することはきわめて明白であります。連合国に対し事実に反し、破壊的な、欺瞞的宣伝を行い、連合国に対して不信や怨恨を招く行為ということは、あるいはプレス、コードにおきましてもかたく禁ぜられておるところでありますし、またポツダム政令第三百二十五号の占領目的阻害行為処罰令を見ましても、これがかたく禁ぜられておることは申すまでもございません。さらにこのポツダム政令第三百二十五号におきましては、「この政令において「占領目的に有害な行為」とは、連合国最高司令官日本国政府に対する指令趣旨に反する行為、その指令を施行するために連合国占領軍の軍、軍団又は師団の各司令官の発する命令趣旨に反する行為及びその指令を履行するために日本国政府の発する法令に違反する行為をいう。」と規定されております。従つて日本国政府ポツダム宣言の受諾に伴いて発しましたところの団体等規正令にも、当然このポツダム政令第三百二十五号は適用されるべき筋のものでありますが、団体等規正令の第二條におきましては、「占領軍に対して反抗し、若しくは反対し、又は日本国政府連合国最高司令官の要求に基いて発した命令に対して反抗し、若しくは反対すること。」という禁止條項もあるのでありまして、これらの点から考えますと、川上君の言動が、かりに非常に反米的な、占領軍に対する反抗的な行為であると断定いたしますならば、当然これらの法令適用を受けるべきことは論をまたないのであります。われわれはつらつら考えまするに、先般川上君が院内におきまして行いました言動というものが、もし院外において行われたならば、当然これはこれらの法令適用の対象たるべきものである、われわれはかように考えるわけでありますが、まず法務当局におかれましては、この川上君の言動に対してどのようにお考えになつておるかという点について承つてみたいと思います。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先般衆議院会議において行われました議員川上貫一君の演説内容と同じ内容を持つた演説院外の他の場所において行われましたる場合におきましては、私どもは当然第三百二十五号違反の十分な容疑のあるものと思料いたしております。
  32. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そこで憲法の第五十一條におきましては、議員院内における発言に対して、院外においては責任を持たないという規定があるわけでありますが、追放に関して発せられたいわゆるマツカーサー書簡と、この憲法との関連性の問題でありまするが、私はこのマツカーサー書簡というものは、憲法にも優先すべき性質のものであると考えるわけでありまするが、法務当局はどのようにお考えになつておりますか。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 マツカーサー元帥指令は、ポツダム宣言を受諾いたしましたる降伏條約に直接基礎を持ちましたものでございまして、これは憲法別個の独立のものと考えております。
  34. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そういたしますると、先般川上君の院内で行いました言動が、この追放に関するマツカーサー書簡に、少くとも精神的には抵触するものというようにお考えになつていないか。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 マツカーサー元帥書簡に基いて制定せられましたる団体等規正令趣旨から考えまして、たとい院内におきましても、この種の言論が行われるということは、少くとも好ましからざることであるということは考えております。
  36. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 少くとも好ましからざる言動であることは、共産党を除く議員のほとんど全部がこれを認めるところでありますが、法務当局といたされましては、法規川上君の言動に対して、国法に照し、あるいはこの追放に関するマツカーサー元帥覚書等に照して、これに対してどういうふうな態度でもつて臨もうとお考えになつておるか。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、このポツダム宣言基礎を持ちますところの一連法令、すなわちポツダム政令と通称されておりまするが、この系統の法規運用にあたりましても、でき得る限り憲法と調和できるものは調和せしめ、憲法の範囲内でできるだけ運用をいたして参ることが、今日のわが国実情から見て適当ではないか。法律論といたしましては、憲法以上の力を持つものであるという解釈は当然可能と存じますが、しかしこれが運用にあたりましては、でき得る限り憲法と調和せしめるという用意が必要である、かように考えておるのであります。従いまして、憲法第五十一條によりますると、院内における議員言論、討論、表決等に対しましては、院外において民事上並びに刑事上の責任を問われないという規定がございまするので、これについて刑事上の責任を問うという手段に出る考えは、現在のところないわけでございます。
  38. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 新聞紙の伝えるところによりますると、この追放に関するマツカーサー書簡の精神に反する行為であるから、川上君やあるいは類似の占領軍に反抗する言動をなす人々に対しては、追放令適用するというようなことが伝えられている向きもあるようでありまするが、これらに関してそのようなことをお考えなつたことがあるかどうかということを承りたい。
  39. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題は、政府といたしましては研究をいたしたことはあるわけであります。その研究もなお結論を得るに至つておりません。
  40. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 これはわれわれ国会が自主的に決定すべき性質のものでもありまして、現に懲罰委員会におきまして審議を続けておるわけでありまするが、しかしかりにこのようなことが、議会言論の自由の府であるというだけの理由によりまして、明らかな占領目的違反行為が、今後も継続されるというようなことになりますると、これの及ぼしまするところの国際的なあるいは国内的な悪影響というものも、われわれは非常に憂慮いたしているような次第でありまして、これらの点につきましては、国会とはまたおのずから別個の見地におきまして、法務当局の深甚な考慮を促したいと私は考えるわけであります。  なおもしこれが法務総裁のおつしやるように、院外において行われたとするなれば、当然団体等規正令等にも抵触するとおつしやつてつたわけでありまするが、川上貫一君の質問というものは、これが共産党を代表するということを明らかに言つておられるわけでありまして、單にこれは川上君個人の問題ではなくして、日本共産党全体が連帶して責任を負うべき筋のものであります。さような点を十分御考慮を願いたいと同時に、私はこの機会にもう一度法務総裁に承つておきたいのでありまするが、政府並びに法務当局は、どうも共産主義共産党というものに対する本質を正しく把握されていないのじやないかと私は考えるのであります。今日の世界共産党のとつておりまする共産主義、その根底をなしておりまするものは、申すまでもなくマルクス主義レーニン主義スターリン主義といつた、この一連のどの主義考えてみましても、これがことごとく議会政治否認であり、あるいは憲法の否定であり、暴力革命考えておるということは、きわめて理論的にも明らかなところでありまするし、これはもう世界一般社会通念になつておるわけであります。従つてこのような憲法を破壊し、国法を破壊し、議会政治否認し、暴力革命をやるんだということを明らかにうたい——特に昨年度の二月でありましたか、コミンフオルムの一喝を食らつて日本共産党アメリカ帝国主義の召使いだといつて罵倒されまするや、共産党中央委員会の決議に基いて発表いたしました、いわゆる野坂の自己批判なるものにおきましても、議会政治否認暴力革命ということは、明らかにうたつておるわけであります。このうたつておりますところの共産党というものを、これを合法政党として認めるということ自体、私は政府の根本的な共産党対策の誤りがありはせぬかと考えるわけであります。従つてそういう共産党でありまするから、院内におきましても、先般の川上君のような演説を行いますることは、それは共産党共産主義本質上、当然彼らの任務であります。日本共産党というものを合法政党として認めるというところに、すでに根本的に政府共産党対策の誤謬があるのではないかと私は考えるわけであります。従つてこの共産党に対して、これを法規上、たとえば共産党の解散であるとか、あるいは共産党非合法化といつたふうな具体的な法律上の措置をもつて共産党対策を講ずるということについて御研究をなさつたり、あるいは将来何とかしようというようなお考えがあるかどうか、私はこの際政府の深甚なる考慮を促したいと思うわけでありますが、それらに対する法務当局見解を伺つておきたいと思います。
  41. 大橋武夫

    大橋国務大臣 佐々木君のお述べになりました点は、まことにごもつともでありまして、政府といたしましても、共産党非合法化の問題は一つの大きな問題として取上げ、昨年来愼重に研究をいたしておる次第でございます。
  42. 高田富之

    高田(富)委員 関連して……。ただいま佐々木君から川上議員演説についていろいろお話がありましたが、事実に反しておるとか、破壊的何とかいろいろなことを言いましたけれども、これは今懲罰委員会において審議中でありまして、察するところ、提案者佐々木君は、どうにもこうにもならぬものですから、救いを法務総裁に求めんとしておるのだと思います。この事実はもうすべて明らかになつておるのですから、これは問題といたしません。これに関連して質問いたしたいのであります。ただいまも佐々木君が申しましたように、連合国に対して怨恨を招くような云々というようなことを盛んに言うのでありますが、法務総裁法律的な立場でお伺いいたしたいのでありますが、降伏條項によりまして、日本ポツダム宣言を受諾し、これを誠実に実行することを誓約しております相手方である連合国というのは、おそらくアメリカだけを連合国といつているのではないように私ども考えておりまするが、この点はいかがでありますか。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 連合国と申しますのは、かつてわが国に対しまして連合して相手方として戰つてつたすべての国を合せまして連合国と呼んでおるのだと考えます。
  44. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、ソビエト同盟に対しまして怨恨を招くがごとき言動がありました場合にも、当然これは連合国を誹謗するものとして、当局は嚴重にこれを処断、取締りをしなければならぬと思うのでありますが、この点について法務総裁のお考えをはつきり述べていただきたいと思います。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 連合国に対して怨恨を招くというようなことは、別に法令にも関係ないことであり、そういう文句をもつてうたつて行為を禁止しておる法令はございませんので、そのことはちよつとお答えを申し上げかねます。
  46. 高田富之

    高田(富)委員 それは法律にはなくても、そういうものを出しておる。それから占領目的というお話でありますが、占領軍に対して占領目的を阻害するような行為はいかぬ。占領目的の根本は、ポツダム宣言を嚴正に実施せしめるための監視でありまして、このポツダム宣言を嚴正に履行するという建前から、現政府は、はなはだそういう点においては、むしろまつこうからポ宣言の義務を履行していないのではないかと思われるような諸事実がある場合に、それらの事実をあげまして、そうして政府に対してこういう事実をどう考えるか、これは明らかに占領目的であるポツダム宣言の嚴正履行にそむくものではないかというようなことを質問することが、はたして占領目的違反になると法務総裁はお考えになりますか。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 すべて名目あるいは名義はどういう名義であるにもかかわりませず、その内容におきまして実際上占領目的に違反をし、またそういう意図をもつて行われたる行為は、すべて占領目的違反行為として取扱うべきものであると考えます。
  48. 高田富之

    高田(富)委員 それから先ほども言われたのでありますが、反米的な言論は云々というようなことを言うのでありますが、これは主観的にいろいろの人が、これは反米的であるとか、反ソ的であるとか、いろいろなことを言うわけであります。日本人が世界中のどこの国にもすれかれるようなうまいこと、おべんちやらばかり言つておるわけのものでもありませんから、見る人によりまして、彼の言うことは反米的だ、彼の言うことはどうも反ソ的だということになるわけであります。反米的なということは、かりにそういうふうな印象をある人が持つようなことがあつたといたしましても、これがはたして占領軍に対する反抗ということになるのでありますか、どうですか。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その内容占領軍に対して反抗になりますものは、反米的であろうがなかろうが占領軍に対する反抗と考えられるわけであります。
  50. 高田富之

    高田(富)委員 占領軍最高司令官命令書簡は、憲法と矛盾する場合があるというふうな法務総裁の答えでありますが、憲法規定、また憲法の精神というものはポツダム宣言から出ておるものであつてポツダム宣言を履行しようとする国民の決意が憲法になつておるというふうに解釈されておりますが、この憲法と明らかに抵触するような命令書簡、そういうものが最高司令官から出されたことがありますか、あるとすればどれでありますか、これをお答え願いたい。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法と最高司令官命令との関係でございまするが、これは先ほども申し上げましたる通り、最高司令官命令というものは、国内におきましてはすべての法規に優先して考えて行かなければならないという性質を持つておるわけでありまして、従いまして、日本法令に必ずしも拘束されないことはもとより、憲法の定めたいろいろな手続等についても拘束されない場合があるわけでありまして、このことは、決して最高司令官命令というものが憲法の精神に違反することがあるということではないのでありまして、今あなたもお述べになりましたる通り、最高司令官命令というものは、ポツダム宣言趣旨によりまして、日本におきまする過去の不当なる勢力を破碎いたしまするとともに、将来民主主義憲法を復活強化するための一切の障害を除去しようという民主主義強化という線に沿うて出て来るものでありまするし、また日本憲法もさような趣旨をもつてできておりますものでありますから、両者の根本精神というものは究極において必ず調和一致いたすものであるということを私は確信をいたしております。しかしながら憲法はその精神を鮮明いたしたるばかりでなく、その精神を実現いたしまするための日本の国権の行使について一定の制限、あるいは手続を定めておりまするから、これらの手続あるいは制限等には拘束されない場合が、司令部命令にはあり得るということを申し上げた次第であります。
  52. 高田富之

    高田(富)委員 最後に共産党非合法化の問題について研究中であるということでありますが、現在共産党の掲げておる綱領政策等におきましては、まず第一に、やはりポツダム宣言の嚴正実施を根本とする全面講和の締結ということで邁進しておることは、法務総裁もよく御承知の通りであります。しかもこのわが党の根本的政策主張につきましては、わが国の相当多数の人民がこれを強力に支持しておるばかりでなく、この全面講和相手方であるべき、またこれを拔きにしては日本講和考えられない中華人民共和国におきましては、あの四億数千万の民衆が、わが党の主張こそが日本民族の進むべき唯一の正しい道であるということを認め、そうして今日では單独講和反対の全土にわたるデモンストレーシヨンが起つておることは御承知の通りでありますが、こういうふうにアジアにおきましても、またヨーロッパにおきましても、昨年末の第二回平和擁護大会におきましては、七億の人民を代表する七十数箇国の代表者が、全面講和による占領軍の撤退こそが平和への道であるということを立張しておる。共産党はこの立場に立つておる。この共産党に対して、一片の非合法化法令によつてこれを壊滅しようというがごとき、とほうもない考えを持つならば、必ずや法務総裁の立脚するその反動的な勢力は、それこそが孤立し、それこそが壊滅するであろうということをあなたは一度でもお考えなつたことがありますか。その決意がありますか、これを最後に伺つておきたいと思います。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さようなことは夢にも考えたこといございまん。
  54. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 並木芳雄君。
  55. 並木芳雄

    並木委員 まず法務総裁に私はこの間のダレスさんのお話の中にありました直接的侵略と間接的侵略とについてお尋ねをしたいと思います。直接的侵略と間接的侵略との関係は非常に密接であつて、両者切り離すことはできないと思います。ところでダレスさんは、この集団安全保障というものを日本希望するかどうかということほ、日本の側できめるべきものであつは、これは招待であるというような言葉を使つておられるようです。そこでまず私はお伺いしたいのですが、政府としてはこのダレスさんの発表されました日本安全保障に関する国際連合の精神にのつとる集団安全保障というものの御趣旨に賛成であるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  56. 島津久大

    島津政府委員 先ほどもダレスさんの言われたことについて質問がありまして、これに対して政府としては解釈をしたり、意見を述べる立場にないというお答えを申し上げたのであります。ただいま御質問安全保障、この点に関しましても、具体的にどうこうという意見を申し述べることは差控えたいと思います。ただ全体の考え方としまして、こういうような集団安全保障というような態勢は日本として観迎するところと思います。
  57. 並木芳雄

    並木委員 集団安全保障内容というものがどういうふうになるかということは、今後展開されて来る問題だと思います。そうすると、この中で日本できめるべきものであるということは、その内容いかんによつては、将来国民の意思に問うてきめるような事態が出て来るというふうに了解してよろしゆうございますか。
  58. 島津久大

    島津政府委員 ちよつとただいま御質問をはつきり了解しなかつたのございますが、それらの点につきましては見解を申し述べるのはまだ尚早だと考えます。
  59. 並木芳雄

    並木委員 こういう点は吉田総理大臣にじきじきお尋ねしてもいいと思います。大橋法務総裁に伺いたい。ダレスさんはこういうことを言つておられるのです。八千万の国民はあまりに数が多く、單にすべての共産主義者をとらえようとするだけで守り得られるものではない。監視する必要はあるが、警察国家であるには及ばない。思うに、警察国家はおのずから外国の侵入を一層容易ならしむるような怨恨をつくり出すからである。広範囲な抑圧、貧困、不公正の存在する社会に、共産主義が滲透しないように、かつ発生しないようにすることは不可能である、と言われている点について質問いたします。これはダレス氏としては一般論であるとともに、私は現在の政府のやつていることに対する一つの警告でもあると思うのです。先ほどから共産党非合法化というような論議が行われておりますけれども、総裁は、昨日予算委員会では非合法化ということは考えていないというふに答弁したと聞いております。しかるに今日は佐々木委員質問に答えて、それを考えておられるという御答弁が、私どもとしてはどちらがほんとうであるが、ちよつと了解に苦しむのでありますけれども、このダレス氏の意見というものにおいては、むしろ思想の自由、政治結社の自由という基本的人権は、やはり十分に認めて行くべきではないかということが暗示されているのじやないかと思う。私どももそういう点はおくまで守つて行きたいと思うのです。むしろ総裁としては思想とか、主義、主張、結社、そういうものの取締りに急であつて、現実に取締らなければならないところの武器とか彈薬とか毒薬といつたようなものに対する方が、スローモーシヨンになつておるのじやないかというふうに感ずるのです。先般総裁が車中談で共産党非合法化考えていると言つて、その後これが立消えになつているような状態も、あるいはこういうところから出ているのではないかと思います。この点について大橋法務総裁自体相当心理的動揺を来しているのではないかと思いますが、その辺に対する御信念のほどをまず披瀝していただきたいと思います。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 並木君の言われました言論、思想あるいは表現を彈圧する、制限するというようなことはおもしろくない。この点は私もまつたく同感であります。たとい共産主義の主張をなさろうとも、共産党が單なる思想あるいは言論そのものである場合には、これに対してどうこうということは考えられないのでございますが、しかしながら現在の段階におきましては、やはりこの言論なり思想なりというものが、その行動によつて裏づけられる、しかもその行動を通じて社会に一定の破壊的な影響を與えるという段階になつて来ておるのでありまして、これは單なる言論の自由とか、思想の自由とかいう問題ではなく、社会の公安を保護する観点において考えるべき段階である、かように私はこの問題については考えておるわけであります。しかしてこの問題につきましては、昨年以来研究中であるということを申し上げておりますが、今日もやはり同様でございまして、この間何ら考え方がかわつたということもなく、また動揺をいたしておるわけでもありません。
  61. 並木芳雄

    並木委員 要するに私は本末転倒の向があるのではないか。たとえば今度の「平和のこえ」の取締りに際して、たまたま武器とかダイナマイトですか、そういうものが発見されて押收されたということを聞いてびつくりしたわけなんです。本来ならば、ただいまのお話にもありました通り、こういう形に現われたところのもの、あるいは行動そのもの、そういうものに対する取締りは、これはもう右たると左たるとを問わず、嚴格にやつてもらわなければ、治安の維持はできないのです。こういうものに対して、私は当局において怠慢であつたというそしりを免れないと思います。今度の場合に、押收されたるものの明細あるいはその中で海外から来たものは、どんなものがどのくらいあるかというような点について、発表していただきたいと思います。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一昨日の検挙にあたりまして押收いたしましたるうちに、武器、彈薬があつた。しかしこの武器というのは、日本刀が少しあつた程度でございまして、これは特に共産党が何か非常な非違をたくらんで、それがために特別に入手したかどうか、その点はまだわかつておりません。かようなことは、犯罪の検挙に際しましては、始終あることでございまして、(「始終ある、ダイナマイトが……」と呼ぶ者あり)特別に取立てて非常に多量な武器、彈薬があつたというふうには、私ども考えておらないのでございます。  それからただいま御指摘のダイナマイトでございますが、ダイナマイトは、北海道におきまして、雷管三十本を押收いたしております。この出所はまだ明確でございませんが、これはおそらく鉱山等において用いられるものが、何らかの経路によつて流れたものと思つておりますが、いまだ外国から渡来いたしたものであるというような確証は上つておりません。しかしなお危險物でございますから、今後一層取調べを続行いたしまして、その経緯を明らかにいたしたいと考えております。
  63. 並木芳雄

    並木委員 こういうものは、まだ他にもあるかもしれませんし、あればたいへんな問題ですから、取締りをさらに嚴重にしていただきたいと思います。こういうものの取締りこそ、私は嚴重にやるべきであろうと思うのです。こういう点についても、総裁は、先般来、どうも国内の治安についても、私は楽観に過ぎる点があるのじやないかと思うのですが、現在右たると左たるとを問わず、地下組織というものに対して、総裁はメスを入れておられるかどうか、そういうものの状況について、調査の結果を知らしていただきたいと思います。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 昨年七月七日付の北京人民日報によりますと、日本共産党に対しまして、ソ連共産党あるいは中国共産党の歴史を引用いたしまして、日本共産党もまた強固な地下組織を結成して、合法活動と非合法活動を、分離結合して活動すべきことを勧告いたしておるのでありまして、政府といたしましては、日本共産党がこの勧告に対して、いかなる具体的な動向を示すかということを、目下嚴重に監視をいたしておるのでありますが、いまだ地下組織の有無、その内容等につきまして御報告申し上げる段階には参つておりません。
  65. 並木芳雄

    並木委員 右翼の方はどうですか。
  66. 大橋武夫

    大橋国務大臣 右翼の団体につきましては、届出がありました団体が約三百でございます。これに対しましては、常に監視を怠つておりません。
  67. 並木芳雄

    並木委員 それでは、もう一つか二つで終りますが、私はやはり今の政府の感覚というものが、相当アメリカなどの感覚と比較して、ずれているのではないかと思うのです。この間経済統制の問題にしても、自主的統制というようなことで、大分安本などでも警告を與えられたようにも聞いておるのです。何も神経質になつたり、恐怖心に襲われる必要はございませんけれども、私はもう少し当局としては、やはり政治の責任上、最悪の状態に備えておくことが、国民の安定のためであると思うのであります。吉田首相や大橋法務総裁がここで大丈夫だ大丈夫だと言われれば言われるほど、何だか国民には、それがうわついた調子に響くようにも聞えるのであります。そこでどうしても私は国家非常事態の布告ということを考えなければならぬと思います。その点について、この前総裁から、国家非常事態の布告のあつた場合には、十分これに対処し得る準備ができていると言われましたので、今日はその具体的の準備、手配、それを詳細にお聞きしておきたいと思います。
  68. 辻二郎

    ○辻政府委員 国家非常事態のことについてお答え申し上げます。警察法でただいま定めております国家非常事態は、治安の維持に特に必要と認める場合に限るのでありまして、たとえば大地震があつたとか、あるいは水害、大規模な火災等の場合、あるいは全国的な騒擾事件が起つた、こういう場合に、現在の警察制度をもつては治安を維持し得ないと認められた場合に、国家公安委員会の勧告によりまして、総理大臣が非常事態を布告することになつております。現在の段階におきましては、現在の制度下におきまして、治安の維持が国内的に不安であるとか、收拾すべからざることになるのではないかというような心配はございませんので、国家非常事態の布告をなすべきときではないと国家公安委員会考えております。アメリカ等でいたしております政治的あるいは経済的な国家非常事態とは、警察法で申す国家非常事態は少し意味が違うと私ども解釈いたしております。この国家非常事態の場合にはどういう準備があるかという御質問でありますが、これは現在の国家地方警察及び自治体警察を全部統制いたしまして、総理大臣命令によつて統制下に置きまして、国警長官もしくは管区本部長が指揮をする。まつたく警察技術的な問題でございまして、その準備はできてはおりますが、ここでお答えを申すべきことでないと考えます。
  69. 並木芳雄

    並木委員 その場合に消防はどういうふうになりますか。
  70. 辻二郎

    ○辻政府委員 消防と申しますのは、おそらく消防団の意味だと存じますが、消防団は現在警察が出動いたしました場合に、警察の留守になつたあとの出火の用心であるとか、交通の混乱を防ぐとか、そういうための補助として出動することになつております。
  71. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 山本利壽君。
  72. 山本利壽

    ○山本(利)委員 法務総裁にお尋ねいたしますが、中共軍が朝鮮を解放した後には日本を解放するということは明瞭に申しておることでありますが、その場合に、日本に来るという場合には、現在中共地区で抑留されております日本の捕虜だとか、抑留者を訓練してこれに当てる。そのために目下満州では日本解放軍総司令部というものができていて、すでにその任に当つておるということを、最近日本に来た中国人、特にこの席上で名前を申し上げませんが、そういう人から聞いたのでありますが、こういつたことは当局にも情報が入つておりますか。あるいはこれは單なる神経戰の一部と考えられますか。そこらの点についてお尋ねを申し上げます。
  73. 大橋武夫

    大橋国務大臣 山本君の言われましたような情報は、当局といたしても二、三入手はいたしておりまするが、しかしいまだこれを確認いたす段階には至つておりません。
  74. 山本利壽

    ○山本(利)委員 これは仮定に基く問題のようでありますけれども、万一そういうことがありますと、日本人が日本人を射殺するというような場面も起り得ることでありますから、これに対しての十分な心構えが必要だと考えるのであります。それで日本の治安維持ということは、現在のところ警察予備隊の力にまつところが非常に多いのでありますが、この警察予備隊の配置というものは、大体どういうことを標準にして現在行われておるか。たとえたら産業方面の中心地であるとか、あるいは人口の多い都市を中心としておられるとか、いろいろありましようが、その標準をお伺いして、さらに朝鮮に最も近い山陰方面におきましては、精神的に非常な脅威を感じておりまして、特に島根県のごとく、一衣帶水というような地方におきましては、警審予備隊の配置をお願いしたいという要望も多いのでありますが、これらの点に対してのお考えを承りたいと考えます。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊の創設に際しましては、何分にも七万五千名を收容いたすのでございますから、これを收容いたしまする適当なる宿舎というものを、急速に新築いたすということは困難なる事情もございまして、大体従来からありましたところの施設を借用する、あるいはこれを利用するというような方法によりまして、一応とにかく七万五千名を全国どこかの宿舎に收容いたした次第であります。従いましてこれが配置は二十数箇所にわたつておるのでございまするが、しかしながらこれはただいま申し上げました通り、応急的な宿舎であるものが大部分でございまして、これはできるだけただいまお話のありましたような、いろいろな国内の事情を調査いたしまして、これに適応するように配置をいたすということが理想でございます。目下さような研究をいたしておりまするし、また適当なる宿舎がありました場合には、でき得る限りそういう方針で移動をするという措置をとつておるわけであります。特に御質問になりましたる山陰、島根県等の問題でございまするが、この点につきましても、目下十分に研究をいたしておるのでございます。
  76. 山本利壽

    ○山本(利)委員 さらに警察予備隊に対する訓練の問題でありますが、これは一に米国の指導といいますか、方針によつてやられておると考えるのでありますけれども、この際最も注意しなければならないことは、それがわが国実情にはたして合つているかどうかということが勘案されておるかということを懸念するものであります。戰時中に米国が蒋介石政権を助けて、そして終戰以来これが強化をはかつた米国は中国に対してほんとうに好意で、親切からいろいろなことをして来たのである。ことに軍隊の機械化をはかつたけれども、それが実情に沿うていなかつた、聞くところによると、ある部隊を特に機械化するために、他の軍閥といいますか、部隊の非常な反感を買つた。そして共産軍と戰う場合には、その機械化部隊が困難に陷つている場合に、少しも他の部隊はこれを援助しないで、喜んでその敗戰を見ていた。しかも機械化部隊は、アメリカでは対戰車ということを目標にしてロケット砲その他の訓練をしきりに教えておつたけれども、中国共産党はさつぱり戰車を持つて来なかつたので何の役にも立たなかつたというような実例もある。いろいろな点において、その跛行的な裝備といいますか、訓練というようなことによつて、中国の軍隊というものは、むしろ弱体化したということも聞いておるのであります。なおこの訓練の方法につきましても、一にアメリカの人たちの講義を日本の通訳によつてなさしめる。しかも通訳は軍隊用語というものをさつぱり知らないので、しどろもどろの講義になつてしまつて、聞いておる者の中にはかつて日本軍隊の将校であつた人もおり、あるいは全然軍隊関係のなかつた者もおる。その講義というものはほとんど徹底しない。ある者は幼稚であつてばかにしたような気持で聞いておる。ある者はさつぱりわからない。いろいろな点で、今申しましたのは通訳の力の不十分ということもあります。また講義内容というものが日本に適していないということもあり、それを聞いてまた試験をせられるわけでありますから、現在訓練を受けている者は、ただ試験がパスすればいいといつたような気持でやる場合に、片方のアメリカ側においては誠心誠意やつてくれておることでも、さつぱり効果が現われていないという状況ではないかと私は思考するのであります。  なおもう一つ大事なことは予備隊に対する給與の問題であります。先般の委員会において法務総裁は、給與の点は昨年末に今までの未拂いの分が全部勘定済みになつたから御安心をということでありました。給料の点はそうでありましようけれども、現在訓練を受けておる警察予備隊の各宿舎といいますか、あるいは講習を受けておるそこでの給與状況、食べ物その他についても、はたして十分なる考慮が拂われているかどうかということを私は注意していただきたいと考えるのであります。この点はアメリカ式に申しますと、單にカロリーで計算しておるかもしれない。一日にいかほどのカロリーを與えたなら人間はやつて行けるか、普通日本人が毎日これこれのカロリーをとつておるから、警察予備隊については、さらに何カロリーが加えてあるから十分だというような機械的な考え方ですべてが処理せられるのではないか。けれども実際においては朝もパン、晝もパン、夜はうどんかそうめんというような場合においては、その訓練を受けておる者は辟易して、外に出て食事をしておるわけである。帳面づらでは十分に給與を與えておつても、さつぱりそれではやつて行けない。わずかもらつておるところの給料を持ち出して彼らは食べておる次第であります。故郷に残しておる家族の生活を支持するために送つてやらなければならぬ金を、全部自分たちの東京における、あるいはそれぞれの地におけるその日々の食事のために費さなければならぬ、そういう実情ではないかと私は考える。そういうことを実際にも聞いておるのでありますが、法務総裁あるいは関係官においてそこらのところはいかに注意が拂われておるか、御答弁を承りたいと思います。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お答えを申し上げます。まず第一は訓練の問題でございますが、この警察予備隊が創設せられました当初から、これが指導に当つておられまする連合軍側といたしましては、この新しい警察予備隊に、日本の旧軍隊的な陋習が起るということについては、これは許すべきではない。しかしながらその他の点においては、でき得る限り日本人の実情、また日本実情というものを基礎にして、できるだけ能率的な予備隊をつくるという趣旨で訓練すべきである、こういう根本的な考え方を伺つておるのであります。従いまして、当初から、でき得る限りすみやかに日本人の手によつてこの訓練が行われなければならぬということを言い渡されておつたのでございますが、しかし何分にも七万五千の一般隊員を募集いたしましたけれども、これが幹部になるべき人たちは、この中から漸次試験によつて拔擢をする、あるいは特に幹部要員として別途に募集をするということになりましたので、一般隊員は募集が終つたけれども、幹部はできておらぬという状態が長々続いておつたのであります。それで関係当局といたしましても、早く幹部を日本側で整備をして、そうして日本人みずからの手によつて十分なる訓練の行われることができるようにしてほしい、こういうことの要望を受けておつたのでございますが、しかしながら、なかなかこれが実現に至りません。ただこの期間におきまして、日本側といたしましてはかりの幹部を任命いたし、そしてこのかりの幹部が米軍将校の好意的な指導援助を受けまして、部下を訓練するという状態を続けて参つてつたのであります。この間におきましては、ただいまお述べになりましたことく、時といたしましては米軍の将校が通訳を通じていろいろ指導をするというようなこともあり、あるいは一部の隊員におきましては、われわれは日本人によつて指揮されるのではなく、アメリカ人によつて指揮されるのではないかというような、不安を持つた向きもあつたのでございますが、これはまつた日本側の幹部要員に対する準備が遅れておりましたために、心ならずもさような事態を生じておつたのでありまして、これは日本側の責任でありますとともに、司令部関係当局としても非常に遺憾に考えられておつたところなのであります。その後昨年十二月に至りまして、日本側の幹部も整備することができまして、その後におきましては、日本側の幹部が米軍将校の援助を受けながら、日本人の手によつて部下を指揮訓練する、こういう状態に相なつておるのでございまして、訓練の成績につきましては、米軍関係官としても非常に訓練の進度が良好であるという批評をいただいておるような次第でございます。  次に給與の問題でございますが、山本君のお述べになりました点はまつたく同感でございまして、この給與というものは、單にカロリーが幾らあればよろしいというようなものではなく、やはり日本人の従来の食事についての習慣などを加味いたしまして、十分に日本人の嗜好に適するということが必要であるのであります。従いまして、現在におきましては、主として日本食によるというのが原則と相成なつておるのでありまして、主食といたしましては、一日にいたしまして、米麦を主といたしまして四合七勺という割当をもらつておるわけであります。それからパン食は一週に一食ぐらいの予定でありまして、その他はまつたく米麦による食事をいたしております。調理等につきましても、日本式の調理が主として行われておるような次第であります。この点につきまして、隊員から一般に、現在におきましては、山本君の御心配になつておられるような苦情はないものと考えております。
  78. 山本利壽

    ○山本(利)委員 私の考えに御同感をいただきましたことを感謝いたしますが、今の給與の問題は、実際反駁いたしますと、いろいろ実例があります。現に越中島で訓練を受けておる者等の事情は、ただいま法務総裁のおつしやつたようではないのであります。しかしここでそれを争う意味でありませんが、とかく日本は上の方でお考えになることと、下で行われることが違つておる場合が多いのでありまして、もし今のように行われておるとお考えになりますならば、あるいは中間において商人その他によつて不正が行われておるのではないかと私は疑いを持つわけでありまして、この点については今後十分なる御注意を願いたい、お調べを願いたいということを要望して、今の質問は終ります。  最後に先ほど来領土の問題については、今デリケートであるからあれこれ云々しない方がよかろうという外務当局からのお話でありまして、この点については私も差控えたいと考えますが、ただここに懸念することは、大きく、琉球列島であるとか、あるいは千島列島であるとかいう問題の帰属がどうなるかということのもう一つ前に、あの鹿児島県の大島郡として取扱われておつたところの薩南諸島——奄美大島を含んでおるところの薩南諸島、あるいは千島列島に近い歯舞、色丹、こういうようなものがただ緯度の関係、その他によつて占領軍の行政下に置かれておる。島根県の竹島のごときもそういうのであります。こういうことは本土あるいはその土地に住んでおる人人との間に、やはり外国人の関係を行政的に現わしているので、非常な困難を感じておるのであります。こういう点については、先ほども申し上げました琉球列島とか千島列島とかいう範囲とは別に、特殊な手段が講ぜられなければならぬと思うのであります。万万一それらの大きいところが日本から離れる場合においても、今私が申し上げましたような、従来の都道府県の管轄下にあつたところは、日本の領土に返していただくべきものであると思うのでありますが、この点は特殊な手段が講ぜられておるか。手段という意味は惡い意味でなしに、占領軍当局に向つて、あるいは連合軍当局に向つて、これらの特殊事情及びその他の点についていかなることが行われておるか。ただ大ざつぱに、十ぱ一からげに、日本の手を離れるということは、はなはば困つたことだと考えるので、一応質問するわけであります。
  79. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問、御意見の点は、従来から十分研究いたしておりまして、なおただいまの御意見十分拜聽いたしまして研究いたしたいと存じますが、どういく手を打つておるかということは御容赦願います。
  80. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ではついでにお伺いいたしますが、当局において十分なる手をお打ちになつているそうでありますから、これは先ほど申しました千島列島とか琉球とかいつたものよりは別個に扱われる可能性が十分にあるとお考えになつておりますか。
  81. 島津久大

    島津政府委員 見通しにつきましては、ただいま何とも申し上げる段階にございません。
  82. 山本利壽

    ○山本(利)委員 質問を終ります。
  83. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 黒田寿男君。
  84. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は対日講和條的に関する合衆国の七原則の提案を、冷靜に研究してみたいと考えておりますので、きようはその点からお尋ねしてみたいと思います。研究の問題で、政治的論議を盡すというよりか、七原則の真相を明らかにしたいという意味で申し上げますから、なるべくそういう立場から御回答願いたいと思います。  その前にちよつとお尋ねしてみたいと思いますが、きようの毎日新聞に、政府が三十日ダレス特使に正式な要望書を提出したという報道が、一面にトツプ記事として大きく載つております。それには二十九日の夜急遽外務大臣官邸に白洲次郎氏、井口外務次官、西村條約局長、島津政務局長、その他の方がお集まりになりまして、徹夜で要望書の作成に当り、これを提出した、こういうことが新聞に出ておりますが、これは真実でありましようかどうか、ちよつとお尋ねいたします。
  85. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御指摘の記事、私けさよく読んでおらないのでございますが、多分想像に基く記事と考えられます。
  86. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと私、大新聞の権威のためにも言つておきたいのですが、よくこういうことがあるのでありまして、もしこれが想像の記事だとすれば、毎日新聞ははなはだ無責任な記事を出しておるということになる。しかし私ども毎日新聞の権威のために、そのように信じたくないのですが、出したのですか、出さないのですか、その点を私一応お聞きしてみたいと思います。経過が新聞に書いてあるようなことかどうかわかりませんが、出されたか、出されないか、そのことをちよつとお聞きしておきたいと思います。
  87. 島津久大

    島津政府委員 書類を出したか、出さないかというお尋ねと存じますが、それらの点は、ただいまの話合いにも関連いたしまして、御答弁をいたしかねます。
  88. 黒田寿男

    ○黒田委員 話しかねるという島津局長のお話でありましたが、それ以上この問題を追究してもやむを得ませんのでやめますが、私は、きよう島津局長が現実に他の委員に対しましてお答えになりましたその点と関連いたしますと、どうもこういうものが出されておるらしく思われるのであります。しかしこの要望書の全部にわたることは避けまして、きよう島津局長が御答弁になりましたことは、これはもう現実に目の前で私ども聞いたことでありますから、間違いないと思うので、これに関連して質問してみたいと思います。その範囲に限りたいと思います。  島津局長は、集団安全保障は、日本として歓迎するというような意味のことを言われたと思います。この集団安全保障内容は、もとより普遍的集団保障でありますところの国際連合のことを言われておるのではなかろうと私は考えます。これは私どもの理想でありますけれども、今すぐ間に合うことでありません。七原則において問題にされておりますものを中心として考えます場合には、この集団安全保障というのは、普遍的な集団安全保障である国連のことではなくて、局地的、地域集団安全保障のことであると考えるのでありますが、これはいかがでございましようか。
  89. 島津久大

    島津政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、集団安全保障態勢を具体的に頭に描いて申し上げたのではないのであります。集団的な安全保障というような趣旨に賛成という意味で申し上げたのであります。具体的なことは考えておりません。
  90. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は先ほども申しましたように、研究するつもりで申し上げておるのでありますから、こういう政策を政府が持つておられるということを、一々政治的意味でお尋ねいたしますよりか、多少それを離れても、七原則の解釈上、私ども理論的に明らかにしておかなければならない問題がいろいろありますので、そういう見地からお尋ねするのでありますから、政府もそういう心持でお答え願いたいと思います。それでもう一度しつこいようでございますけれども集団安全保障につしてお聞きいたしますが、ここは全然しろうとの集まりではないのであります。たとえば集団安全保障といえば、いかなる種類のものがあるかというようなことは、国際法上また過去の経験から申しましても、一安の類型というものがあるのでありまして、そう新しい形を想像するということも考えられませんし、またぼんやりと集団安全保障のようなものというような考え方でも、私どもは満足できないのであります。そこで過去の形を見ると、普遍的集団安全保障態勢である国連のほかには、たとえば北大西洋條約とか、また最近よく言葉に上りますが、太平洋條約とか、そういう地域集団安全保障條約か、しからずんばある特定の国との軍事同盟というような形におきまして安全保障を受けるというように、大体種類は限定されておると思います。島津局長が歓迎すると言われましたのは、その中でどういう類型に属するものであるかということをちよつとお聞きしておきたいと思います。
  91. 島津久大

    島津政府委員 できるだけ御研究にお役に立ちたいと思うのでございますが、先ほど申しましたように、ごく漠然と、集団的な安全保障というものはけつこうなものであるという趣旨をお答えしただけでございます。具体的なことは何も私考えずに申し上げたのであります。さよう御了承願います。
  92. 黒田寿男

    ○黒田委員 私どもは真劍に考えておるのであります。これに日本の国の将来の重大問題でありますから、漠然と町の人が床屋で話をしておるというような内容の話は、ここではなすべきことではありません。われわれも国民の代表として出席しておりますし、局長も政府の外交の衝に当るべき権能を持つておられるのでありまして、政府の一員として出席されておるのでありますから、町の人が話をするようなぼんやりしたことでは私は済ませたくないのでございます。そこで執拗でありますけれども、こういうようにお尋ねしてみたい。それでは局長が理想とすると言われましたのは、地域安全保障のごときものでありますか。
  93. 島津久大

    島津政府委員 先ほど私並木委員の御質問に対してお答えをいたしましたときは、ダレス特使の言われたことを解釈したりする立場にないということを前提としたのであります。しかし集団安全保障に対して賛成か、そうじやないかという御質問に対しては、これはけつこうなことだと存じますという趣旨でお答えしたのでございます。日本安全保障に関する形態、そういうようなものはただいまの話合いに出ておりますか、出ておりませんか、一切私は存じないのであります。従いましてきまつた一つの形を頭に置いてお答えをいたしたのではないということを御了解願います。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は先ほども申しましたように、政治問題として、今ダレスさんがお見えになつております。そのダレスさんが、どう言つたかというようなことについての御意見を承つておるのではなくて、対日平和條約に関する合衆国の考えというものが世界の人々の前に提案されておるのであります。それを私ども研究するという立場からお尋ねしておつたのでありますが、どうも焦点がいつもはずされてしまいまして、お答え願えないのであります。そこで今日はその問題についてはこれ以上局長と話合いましても、進めて行くということはできないと思いますから、まだこの問題についてはお尋ねしたいことがありますけれども、この辺でやめておきます。また適当なときに他の政府の代表の方に対しまして、あらためて質問を続けて行きたいと思います。
  95. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと関連して……。私の質問したことに関連しての質問ですから、簡單にお尋ねしますが、島津局長の答弁はあまり用心し過ぎているのではないかと思う。それは例の七原則をごらんになりますと、第四のセキユリテイーというところに、国際連合がこれこれするというように、サツチ・アズという言葉を使つて内容が書いてあります。それを敷衍されてダレスさんが演説をされたのであつて、それに対しては吉田首相も総括的に賛成であるということを国会で答弁しているのです。従つてこの七原則の用語をもう少し具体化してダレスさんが説明されたと思われるのであつて、その前提とするところは、国際連合に日本がたやすく加盟でき、その集団保障ができるものならいざしらず、それがなかなかできないということを前提にしての安全保障である、こういうふうに解釈できるのですが、それをしも島津局長は漠然と取扱う必要はないと思います。その点を黒田さんは指摘されているのです。もしそうだとすると、ただいまの指摘の中にあるように、ある場合には地域的な集団保障となるかもしれない、さらに突き詰めれば、アメリカ日本との双務協定というか、同盟というか、そういう協定になるかもしれないということが暗示されているのです。原文には明らかに「ビトウイーン・ジヤーパニーズ・フアシリテイーズ・アンド・ユーナイテツド・ステーツ・アンド・パーハツプス・アザー・フオーセス」という言葉が入つているのです。つまり「アザー・フオーセス」という言葉が入つている以上は、やはり原則としてアメリカ日本がやるのだ。おそらく場合によればほかの国が入つて来るかもしれない。今の黒田さんのお尋ねに対しては、局長は十分はつきりした答弁ができると思うのですが、いかがでありましようか。それとともに「ジヤーパニーズ・フアシリテイーズ」というのは、外務省の方は施設」というふうに訳しておりますが、この施設はどういうものを含んでいるのか、この機会にお聞きしておきます。
  96. 島津久大

    島津政府委員 前回の委員会におきまして、政務次官から同様の趣旨をお答えいたしたかと思いますが、七原則そのものについては政府として見解を述べない立場をとつております。従つて安全保障にいろいろな形があり、また当然問題になるべき形というものももちろん想像はいたしております。それにつきまして賛否を申し上げることは差控えたいという意味であります。七原則そのものについて見解を申し述べたくないと存じます。
  97. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは集団保障の問題につきましては、きようはこれ以上進めないのでありますが、やはり米国の第四項、これによりますと、はつきり、日本は施設を提供し、アメリカ及びその他の国が軍隊を提供する、こういうことになつております。そうすると、これは日本に外国の軍隊が来て、日本の施設とともに継続的、協力的に安全保障をとる、こういうことだと思うのであります。これは研究でありますから、そのつもりでお聞きを願いたいが、こうなつて参りますと、私はこれは一種の再軍備だと思います。吉田総理は再軍備ということに対しましては、非常な愼重な態度をとられておりまして、国民の大多数がこの総理の態度に対しましては一種の安心感を持つております。しかし日本自身が再軍備をしないと言いましても、外国の軍隊日本に来るということになつて参りますと、これは私は一種の再軍備であると考えます。なぜかと申しますと、大体軍備というものは私どもの常識から考えますならば、対外的な関係のものであります。国内的な治安維持の問題は、警察の力をもつてこれに対処すべきものでありまして、軍隊とは要するに対外的なものという見地から考えられる。こういう対外的なものであるという軍備の特質を考えますときには、日本自身が軍備を持つておりますことと、日本自身は軍備を持つていなくても、外国の軍隊日本に来て日本の安全を保障するということとは、外国から見ればやはり日本が一種の武裝した国である、軍備を持つておるということになる。私はこう思う。たとえば私自身はピストルも持つていない、短刀も持つていないから、自分は非武裝と申しましても、自分と意思を通じた柔道何段という者がついておつてくれて、それがピストルを持つたり、短刀を持つて私と一緒に歩いておるとすれば、それで私は非武裝とは言えない。お前は武裝しておると言われれば、やはりそうだと言わなければならぬ。私は吉田総理が再軍備しないと言われながら、外国の軍隊日本に来るということになれば、これは結局対外的な関係におきましては、日本が再武裝したということになると思う。これは理論的にお尋ねするのです。実際においてそうなるかどうか、これは講和会議のことでありますから、将来のことはわからないと言えばわからないかもしれませんけれども、しかし重大な一項目として出されておるのでありますから、われわれとしてはこれを事前に研究しておかなければならぬ。かりにそういうふうになつて、この第四項が実現されるということになつて来れば、日本憲法規定されておる非武裝に反したことをやるということになると思う。これについて局長の御意見はどうでありましようか。
  98. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御解釈によりますと、日本自体の武裝いかんにかかわらず、外国の軍隊がおれば日本そのものが武裝するのではないかというような御意見と思いまするが、常識的に今まで再軍備が論じられておりましたのは、これは当然日本日本自体の軍隊を持つかどうかという問題であつたと思うのでありまして、新しい御解釈と思うのでございますが、その御解釈についてはこれは御自由でありまして、私、何とも意見を申し上げる必要はないと考えます。
  99. 黒田寿男

    ○黒田委員 私のお尋ねしましたのは、結論としては七原則の第四項が実現されるということになつて来れば、日本武裝したということに外国から解釈せられるということになると思うがどうかという質問であつたのであります。私はそういう解釈をするのでありますが、これに対して理論的に研究して、外国からそう思われるかどうかというそのくらいは、私はここで研究会をやつてもいいのではないかと思うが、どうでございましようか。
  100. 島津久大

    島津政府委員 それは解釈をする外国の立場で異なる問題ではないかと思います。日本自身が日本人の軍隊を持たない以上は、日本軍備を持つていないと解釈すべきだと私は思います。
  101. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは私がたとえば個人の例について申し上げましたと同様に言えることを思いますが、私は島津局長の御見解は常識的ではないと思います。そういうふうに外国が解釈してくれればよろしいけれども、そうは解釈しません。国際情勢というものはそのように簡單なものではありませんから、常識的でないと同時に政治的でもない。私はそういうただ一時のがれの——と申しますと非常に失礼な話でありますけれども、とにかくこの場ではあまり議論はしたくない深入りしたくないというようなことで、ただいまのような御答弁になりますと、私は外務委員会の使命を果すために、非常に支障になると考えるのであります。しかしそういうふうにお考えになるのならば、そういうふうにお考えになると承るよりしかたないと思います。それではこれからあとはもうやめまして、総理大臣に対する質問に残しておきたいと思います。  もう少し時間がありますから、別な問題で御質問したいと思いますが、いかがでしようか。
  102. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 時間の方は非常になくなつたのですが、それではごく簡單に……。
  103. 黒田寿男

    ○黒田委員 これも研究会のつもりでお聞きするのですが、国民信託統治問題ということにつきまして、少しはつきりと政府内容を知らしておく必要があると考えます。中には租借地のようなものででもあるかのごとく解釈しておるような者がありまして、信託統治地域に指定されまして、その期間が何年か過ぎると、あとは日本に返してもらえるのだ、こういうふうに簡單に考えておる人もあるようであります。しかし租借の場合とは違うので、信託統治地域になるということは、日本から領土の関係におきましては、永久に分離されることになるのではなかろうか、こういうように私は考えておる。この点国民に、はつきりと知らしておく必要がありまして、その上でこの信託統治問題というものを国民にも考えさせるべきだと思います。いかがでございましようか。これは私にもお答え願うと同時に、国民にも知らせるという意味で、租借地になつた場合と、信託統治になりました場合との領土の将来における帰属問題はどこに違いがあるか、あるいは違いがないか、こういうことを明らかにしておく必要があると思います。この点お尋ねしてみたいと思います。
  104. 島津久大

    島津政府委員 租借地と信託統治とはもとより性質が違つておりますが、信託統治になれば確定的にどういうようなことになるかということは、場合によりまして信託統治内容が違つておるようであります。問題になつております信託統治が、いかなる形で考えられておるかということは私言明できないのであります。従いまして永久に日本の領土でなくなるということは、必ずしもそうではない場合もあり得るのではないかという考えを持つております。
  105. 黒田寿男

    ○黒田委員 私どもはそこが問題だと思うのです。今私が論じておりますのは、先ほどからたびたび重ねて申しましたように、一般的な理論的な研究という意味質問しておりますので、私もそういう見地から考えて私自身の意見をも述べておりますが、私は具体的に日本の領土の帰属問題といたしましての琉球問題を論じます場合には、やはりその具体的な問題を決定いたします前提といたしましての一つ信託統治問題に対する原則がある。その原則にはずれては具体的な決定もなされないのでありますから、今日私が質問いたしておりますのは、この一般的な見地から信託統治というものの性質につきまして質問をしたのであります。だから球琉問題についてどうなるかということの前に研究すべき問題であるということを御了解の上でお答え願いたいと思います。そこで局長の御答弁では、一度信託統治になりましても、必ずしも日本から永久に領土権が喪失せられるものではなかろう、そういう場合もあるかもわからないというお話でありましたが、そういうところにまだ国民希望を抱いておりまして、もし信託統治になりましても、結局は日本の領土権に復帰するのであろう、こういうような期待を持つております。そこで私はそういうものかどうかということの質問をただいましたのでありますが、私はこう思うのでありまして、ちよつとお聞き願つて御答弁願えればけつこうだと思います。この信託統治にするということそれ自身の目的は、国際連合憲章の規定によりますと、終局は自治または独立に向いまして、その統治地域の住民が漸進的に発達することを促進する、こういうことになつております。終局の目的が自治または独立ということになつておりまして、ただその過程は漸進的ということになつておるのでありまするが、終局の目的がそうでありますから、結局一たび日本から分離されまして、信託統治の領域にされました以上は、その地域の住民が自治または独立に向つて進んで行くように、国際連合としてとりはからうようなことになるのだ、こういうように私ども解釈せざるを得ないのであります。そうなつて来ると、一たび日本から信託統治地域といたしまして、琉球並びに小笠原が分離されますと、もうそのあとに残る琉球の運命は、日本に返ることではなくて、自治または独立である、こういうように考えられるのです。そうなりますと、ちよつと局長の言われましたように楽観的には考えられないのではなかろうかというようにも思われるのであります。これをひとつ研究になつておると思ういますので——これは国民によく知らしめるということで私は申し上げますので、私の解釈が誤つておれば、なおそのことを明らかにしていただけばよろしい、私も国民の一人として疑問を持つておることをお尋ねするのですから、そうしていただけばよろしいのでありますが、これに対して御見解を承りたい。
  106. 島津久大

    島津政府委員 先ほどお答え申し上げましたことは、ちよつと誤解のもとになるようでございますので、期限の点をもう一度申し上げたいと思います。先ほど必ずしも永久に国土から切り離されるものではないかもしれぬというような意味でお答えを申し上げたのでありますが、それはこの国連憲章で永久にというようなことが書いてない、その反対解釈として申し上げましたので、別に可能性とかなんとかいうこととは関係なく御理解願いたいと思います。ただいまの御意見の点は、大体憲章はそういうような趣旨で書かかれていると思うのでありますが、具体的問題につきましては、先ほど来申し上げてますように答弁は差控えたいと思います。
  107. 黒田寿男

    ○黒田委員 なお念のために……。この一般原則のもとで具体的に考えられるということになつて来ると、この一般原則を動かすことができないということになります。局長の言われました具体的というのは、この一般原則と異なつたような取扱いをも、具体的な場合においては、受け得るかもわからない、そういうような希望が必ずしもないことはない、こういう意味でありましようか。少くともこの一般論の上に立つて、私ども信託統治問題というものは研究せざるを得ないのだというように考えざるを得ないのでありますが、念のためにこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  108. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問、ちよつと私よく了解いたしかねるのでございますが、もう一度……。
  109. 黒田寿男

    ○黒田委員 時間がありませんから、なるべく簡單にいたしますが、私ども解釈では一たび信託記統治の地域に指定されました以上は、指定された地域の将来の運命は、国連憲章の原則によりますと、自治または独立に向いまして、漸進的に発達することを促進して行くということになるので、もう一度他の国の支配下に入るというような指さし方をしていないと思うのであります。そこで一般の原則としましては、一たび日本の領土権から分離されまして、信託統治地域なつた以上は、それがもう一度日本に領土権が復帰されるというような見込みは、一般原則からいえばないと解釈するよりほかはないのではなかろうか、こういうように考えるのであります。
  110. 島津久大

    島津政府委員 何と申しますか、原則的の問題と具体的の問題が常にからまつておりますので、お答えするのがなかなかむずかしいのでございますが、先ほど来申しますように、信託統治の原則は憲章に書かれてございますが、実際に行われます場合には、憲章の原則以外に、具体的な場合に信託統治の協定ができる。その協定によつて個々の内容がかわつた場合があり得る、抽象的な原則通りにあらゆる場合が行つていない実例もあるように考えます。従いまして国連憲章の大きな原則に反しない限りは、その場合々々でいろいろ異なつた形態を生じ得ると考えております。
  111. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はただいまの局長のお答えで、局長としてはお答えができておると思います。しかし私はそうではないように思う。局長のお答えは、国連にはこういう原則があるけれども、それと異なる協定も、具体的の場合にはできる可能性があるというようなお話でありましたが、それならば、私は原則を一応立てておく必要はないと思います。原則を立てたのは、その原則に従つて、その原則のもとで、個々の具体的な場合について処理する。独立させるか、自治でとどめるか、何年の統治期間を設けるか、こういういろいろな具体的な場合についての問題がありましようが、しかしそれは原則のもとにおける具体問題である。私は原則としましては、私が考えておりますように、憲章の規定には一定のわくが設けられる、線が引かれておる。これに従わなくてはならぬ。あと具体的というのは、この原則のもとでの具体的、一段低い段階における具体的というふうに考えておりますけれども、しかしこれはここまで参りますれば、意見の相違、解釈の相違であると私は思う。局長は局長の言われたように解釈をしております。ただしかしこの問題はお互いにもつ研究してみたいと思います。今局長の言われましたようなことであるならば、それはそれでまた国民もそう思います。かりに私の解釈のようなことになるといたしますれば、信託統治に対する国民考え方がまたかわつて来るかもしれないと思いますので、これはひとつ研究題目にしておいていただきたいと考えます。なお信託統治の問題について多少重大と思う別個の問題がありますけれども、きようは私があまり時間を使つてもどうかと思いますから、この次の委員会に讓ることにいたしまして、きようは私の質問はこれで終ります。
  112. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 高田富之君。
  113. 高田富之

    高田(富)委員 簡單に一点だけをお聞きしておきたいと思います。この前の委員会でも問題が出たと思いますが、かりに万一政府考えておるような單独講和、多数講和というようなことになつた場合に、講和を締結しないで残つておる国々と日本との関係はどうなるかということで、たしかこの前局長さんでしたか、どなたでしたか、これは降伏文書によつて依然として日本はあの内容を実施すべき義務を持つという答えがあつたと思うのですが、そうしますと、具体的にはそういう場合を想定してみますと、その條約を締結しない残つた国々は、その降伏條項を実施せしめる建前から日本占領軍を出しまして、そうして占領権を行使するというようなことも、法律論的にはあり得るということになるわけなのでありますが、そうすると、講和内容と、それから降伏條項に示されておる義務の内容とが非常に違つて来るというような問題もあるし、非常にこれは不可解な現象が起ると思うのでありますが、もう一度この点をどういうことになるのか、政府見解を聞きたいと思います。
  114. 島津久大

    島津政府委員 前会たしか政務次官からお答え申し上げましたと思いますが、私また重ねて申し上げますのは、正確に私も言葉を覚えておりませんし、前会の答弁で御了承願いたいと思います。
  115. 高田富之

    高田(富)委員 そうすると、前会の答弁では私が今申し上げたようなことなのですが、しかしこれはこういうふうにも考えられるのではないかと思うのです。連合国つまり米、英、ソ、華四国が、日本に対日降伏條項を示し、その中でポツダム宣言を忠実に履行しろ、このポツダム宣言を誠実に履行すれば、やがて全面講和になり、こういうことになるというので、日本の降伏後の進むべき、準拠すべき政策の基準というものが明確にあれで示されておる。ところがこの連合国四箇国が共同宣言を実施するにあたつて、宣言に基いた講和を行うにあたつて連合国内の一部の国とだけ講和を結んでしまつたという事実が出て来ますと、そのこと自体がこの四箇国の共同宣言そのものを破棄したといいますか、無効になつてしまうということになるので、結局ポツダム宣言も何もなかつたような状態に帰つたものとみなされて、そうしてほんとうの交戰状態と同様の状態になる、法律的にはそういうことになるという解釈もあるようですけれども政府はどういうふうに考えておりますか。
  116. 島津久大

    島津政府委員 法理論的と申しますか、りくつとしていろいろ御議論もあると思うのでありますが、政府のお答えとしましては、仮定の問題でございまして、これ以上お答えは差控えたいと思います。
  117. 竹尾弌

    竹尾委員長代理 臨時委員長、まことにふなれで申訳ありません。時間が経過いたしましたから、これにて散会いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時三十四分散会