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1951-03-24 第10回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十四日(土曜日)     午後零時十六分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 玉置 信一君 理事 坂口 主税君       青柳 一郎君    門脇勝太郎君       菊池 義郎君    北川 定務君       佐々木盛雄君    庄司 一郎君       高橋 權六君    玉置  實君       奈良 治二君    福田 喜東君       堤 ツルヨ君    今野 武雄君       林  百郎君  委員外出席者         外務事務官         (管理局借入金         審査室長)   池田千嘉太君         参  考  人         (四国在外公館         等借入金緊急措         置促進連合会委         員長)     頓宮  寛君         参  考  人         (四国在外公館         等借入金緊急措         置促進連合会幹         事長)     中北  繁君     ————————————— 三月二十四日  委員細田榮藏君、近藤鶴代君及び高田富之君辞  任につき、その補欠として奈良治二君、高橋權  六君及び林百郎君が議長の指名で委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  海外胞引揚に関する日ソ親善協会外団体の  国際連合総会に対する要請問題に関する件  在外公館借入金に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  日程に上りまして海外胞引揚に関する日ソ親善協会外団体国際連合総会に対する要請問題に関する件を議題といたしたいと思います。  本委員会といたしまして、未帰還胞引揚げの問題が国際情勢の変化とともに困難な段階に入りまして以来、中共地区個別引揚げによる少数引揚げ以外遅々として解決に近づかず、なお三十数万の同胞が異境の地に残留せられこれに対する解決に多くの困難が予想せられていたときに、戰時捕虜問題が第五回国際連合総会において討議せられ、広く国際的に解決せらるべき段階に運ばれるに至つた。この好機に際して、海外胞引揚げに関する日ソ親善協会外団体国連総会に対する要請が提出せられましたので、本委員会においては、これに重大なる関心払つて、先般来参考人より事情並びに意見を聽取する等鋭意調査いたしました結果、大体その全貌が明らかになつたと思うのであります。本日はさらに本問題に対しまして協議を進めたいと思います。玉置信一君。
  3. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいま議題となりました海外胞引揚げに関する日ソ親善協会外団体国際連合総会に対する要請問題につきましては、ただいま委員長よりの御発言にもありましたごとく、当委員会におきましては、参考人の出頭を求めてあらゆる角度から慎重調査いたしました結果、私は大体次に申し述べる点が明らかになつたと考えるのであります。すなわちこの要請問題は、單に国内の問題でなく、その性質上対外問題でありますので、この際この海外胞引揚げに関する日ソ親善協会外団体国際連合戸総会に対する要請問題に関しまして、未帰還胞引揚げ促進についての関係筋に対する懇請をいたしたいと思います。よつてここにその動議を提出いたします。関係筋に対する懇請案文を朗読いたします。    未帰還胞引揚促進に関する    懇請  終戰以来、わが国はポツダム宣言を忠実に履行し、且つ、連合国諸国好意によつて着々として民主的国家再建の実を挙げ、講和の機も漸く熟し、国際社会への復帰の日近きにある今日、多くの困難を含んだ未帰還同胞引揚の問題が新しき段階に近づきつつあろことを認め、これに対処し、われわれは未帰還胞引揚促進のために一層の努力を傾注することを誓うと共に、本問題解決のために五年有余にわたつて與えられた連合国軍司令部の積極的な御好意に対し、ここに深く感謝する次第である。  一九五〇年四月二十一日のタス通信を通じてのソ連政府引揚完了発表にかかわらず、なお今日三十有余万名の日本人ソ連並びソ連勢力下地域に未帰還のまま不明の状態に置かれている事実は、われわれ国民最大痛心事であつて、われわれはタス通信報道を不可解なものと認め、残留者調査並びにその引揚促進に鋭意努力をいたしているのであるが、さきに第五回国際連合総会において、戰時捕虜問題が人道上の見地より討議され、国際的平和的に解決するための措置が取られることとなり、われわれはこれに対して絶大の期待をかけて注目していたのである。  しかるに、この国際連合総会における討議に際し、日本帰還者同盟日ソ親善協会及び民主主義擁護同盟の在日三団体より同総会に対し、この討議の焦点をそらすべき「日本人抑留者の問題は問題の性質からして国際連合総会に提出さるべきものでなく、一九四六年十二月十九日の『ソ連地区引揚に関する米ソ協定』に基き実施せらるべきものである」、又在ソ抑留日本人の数字については「ソ同盟政府発表を正確なものとして確信せざるを得ない」との趣旨引揚問題に関する懇請状が提出されたのである。本委員会においてはこのことに対し重大なる関心を払い調査したのであるが、斯る懇請は事実を曲げ、われわれ日本国民特に留守家族の血涙の叫びを裏切る行為であつて、われわれはこの千載一遇の好機に斯くの如き懇請状がわが国内より提出されたことについては、海外帰還同胞引揚促進を阻害するのみならず、国際間の平和と親善を害する恐れあるものと認め、誠に遺憾に堪えない次第である。  われわれはここに連合国軍司令部配慮によつて委員会のこの趣旨国際連合に伝達されることを請い願うと共に、今後国際連合の強力なる捕虜問題の平和的解決のための措置に信頼して、未帰還同胞引揚の問題が一日も速かに解決することを祈念し、且つ、本問題解決のための連合国軍司令部の御援助と御配慮とをここに衷心より懇請する次第である。
  4. 若林義孝

    若林委員長 ただいま玉置信一君より関係筋に対する未帰還胞引揚促進に関する懇請動議が出されました。これを討論に付するのでありますが、この際都合により暫時休憩いたします     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時十四分開議
  5. 若林義孝

    若林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  玉置信一君の動議について、討論に付します。討論通告順にこれを許します。林百郎君。
  6. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党を代表しまして、この懇請を総司令部を通じて、国際連合に提出することについては反対の意を表明するものであります。  第一の理由は、この懇請の内容の中にあります「一九五〇年四月二十一日のタス通信を通じてのソ連政府引揚完了発表にかかわらず、なお今日三十有余万名の日本人ソ連並びソ連勢力下地域に残留せしめられている事実は、われわれ国民最大痛心事であつて、」云々の点であります。この点でございますが、この点はその後「ソ連勢力下地域に未帰還のまま、不明の状態に置かれている事実は、われわれ国民最大痛心事であつて、われわれはタス通信報道を不可解なものと認め、」云々とかえてあるのであります。このことにつきましては、三十有余万の未帰還者がまだソ同盟に残つておるということに対する確固たる、客観的に何人をも納得せしめるような根拠なくして、少くとも連合国の一国の正式な政府発表に対してこういう断定を下す、三十余万残つているということを事実としてこれを断定するということは、これは少くとも連合国の一国に対する誹謗であり、今や日本の国が一日も早く全面講和を締結したいという国際的な情勢のもとにおいては、日本の国の将来を誤るものであると思い、この点を第一に反対理由としたいのであります。  第二といたしましては、この日本帰還者同盟日ソ親善協会民主主義擁護同盟国連総会になした懇請でありますが、このことは、日本の民主的な諸団体がどういう行為をすることも、これは自由でありまして、これに対して国会あれこれ批判をし、これにブレーキをかけるような行動を一々するということは、国会の本来の立場からしてなすべきことでもないし、またこうしたことが逆に引揚げ問題を反動的に利用しようとする団体をそそのかすことになりまして、少くとも国権の最高機関としての国会、しかも引揚げ問題について最高権威を持つべき当引揚委員会において、こうした民間の民主的な諸団体行為についてかれこれ批判をし、これに対して非難をするような態度に出ることは好ましくない。これは国会の本来の使命からしてなすべきことでないというように考えるのであります。この点が反対の第二点であります。  第三としましては、この三団体のなした行為が不当であるといいますけれども、われわれは目下連合国の間には敗戰国としての立場にあり、正当な外交関係が結んでないのであります。その際われわれが頼るべきことは、この連合国連合国との間にある引揚げ問題についての米ソ協定、これを忠実に実行してもらうということ、また連合国の一国の政府発表を真摯な態度をもつてこれを信頼し、これにこたえるということが、敗戰国日本として現在われわれのなすべき当然の行為だと思うのであります。そういう意味で、われわれはこの三団体国連総会懇請したことについては、何らそれが出過ぎたことだとか、あるいは国際的に違法な行為だといつて非難をなすべき点はないと思うのであります。この点から申しまして、この三団体がなした行為が、別に国際法上あるいは国内法非難すべき点がない、敗戰の現状としてはかかる懇請をするのは当然であり、またこういう行動よりほかに引揚げ問題についてなすべき方法はないと考えるのでありますから、この三団体行為非難する本懇請については、賛成することができないのであります。それからかりに懇請を出すにいたしましても、この三団体の問題について、当委員会では愼重な審議がなされたのであります。従つて委員会結論としてこの懇請連合国最高司令官に伝達するとするならば、本委員会におけるこの問題の一切の討論に関する速記録を添附しまして、公平にそれぞれの立場の人がそれぞれの立場から明らかにした点を添えて出すのが公平だと思うのであります。ところが、相手方の三団体弁明は何ら添付することなくして、何か一方的と考えられるような結論をつくつて、これを最高司令官懇請し、国際連合に持ち出すということについては、当委員会権威にかけても、少くとも公平を欠くという点で、技術的にもこれに賛成することができないのであります。  最後に私たちが最も憂える点は、こうしたことから、この意図が結果的には反ソ、反共の宣伝の一環としてこれが利用されることになる。そうして日本の国に再びかつて軍国主義や極端なる愛国主義、シヨーヴイニズムを復活することになり、われわれポツダム宣言に上つて命ぜられているところの、日本民族を誤つた世界征服の挙に出さした軍国主義を徹底的に打砕かなければならないという、あのポツダム宣言の精神にかえつて反する結果をもたらすことになると思うのであります。こういう立場からしまして、私どもはかかる懇請連合国最高司令官を通じて国際連合に伝達するということについては、断固反対するものであります。
  7. 若林義孝

    若林委員長 これにて討論は終局いたしました。  次に本動議を採決に付します。本動議賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立
  8. 若林義孝

    若林委員長 起立多数。よつて玉置君提出の動議は可決せられ、引揚促進に関し、本委員会の決議として、その案文通り関係筋懇請するに決しました。なおこの伝達方については、委員長に御一任を願います。     —————————————
  9. 玉置實

    玉置(實)委員 私はこの機会ちよつと委員長並びに委員各位お願いがあるのであります。在外公館等借入金返済の問題でありまするが、大体外務省方面の資料によりますると、約二十一万件の確認書発行の希望に対しまして、現在の進行状態は大体四万件内外のようであります。しかもこの確認書を渡しました四万件内外の中におきましては、中支方面儲備券を中心といたしました確認書発行は一通もないというような、まことに貧弱な状況であります。幸いに中支方面におきますこの点に関しまして非常に詳しい情報を持つておられます方々四国地方から見えておられますので、この際委員各位の御了承を得まして、ごく簡単に中支方面在外公館等借入金の模様につきまして、参考人として御弁明をお聞きとり願いたいと存する次第でございます。
  10. 若林義孝

    若林委員長 ただいま玉置實君より動議として出されました、参考人招致に関する件についてお諮りいたします。在外公館等借入金の問題につきまして、意見を聞くために参考人として四国在外公館等借入金緊急措置促進連合会委員長頓宮寛君、同幹事長中北繁君、両君を招致するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」、」呼ぶ者あり〕
  11. 若林義孝

    若林委員長 御異議なきものと認め、頓宮中北両君を本委員会参考人として決定いたします。  ただいま参考人として指名いたしました両君が見えておりますので、それではさつそく参考人より意見を伺うことにいたします。参考人各位委員長より御注意を甲しておきますが、御発言はただいま議題となりました範囲にのみとどまるのであります。なお委員からの質問の場合は、その要点のみを御答弁願いたいと思うのであります。御発言の際は委員長の許しを受けて御発言を願います。  参考人の御紹介をいたしますが、右手にすわつておられますのが四国在外公館等借入金緊急措置促進連合会委員長である頓宮寛君であります。左の方が中北繁君であります。  では御発言を願いますが、御自分の御身分その他を御紹介の上、御発言を願いたいと思います。頓宮寛君。
  12. 頓宮寛

    頓宮参考人 私ども両人は、今回四国四県の在外公館等借入金緊急措置促進連合会代表者として参りました。これに関する歴史的及び技術的、そのほかいろいろな方面に関する件は、同行者中北繁氏にお願いして御説明していただきます。
  13. 中北繁

    中北参考人 私はただいま御紹介をいただきました中北でございまして、終戰当時私は元台湾総督府の文教局錬成官を勤めておりまして、昭和二十一年四月に引揚げて参つたものでございます。その後引揚者団体役職員といたしまして、引揚者援護をいたしておりました。高松市役所におきましては、事務委託といたしまして私ども引揚者援護の嘱託に発令をしていただきまして、私は公館等借入金請求事務が起りました際、高松におきまして引揚者各位より、この公館等借入金請求書受理事務をお手伝い申し上げたのであります。その際満洲あるいは朝鮮、中国各地域、南方各方面にわたる方々より、つぶさに借入金を提供せられました前後事情をお聞きいたしまして、この公館等借入金につきましては、急速に政府におかれましては弁償していただかねばならないというつぶさな実情を知ることができました。その後私は四国公館等借入金債権者の要望によりまして、ただいま団体幹事長を勤めておりまして、今回公館等借入金に関しまして請願に参りましたところ、はからずもただいま委員長より、あるいは委員皆様から特別に参考人として発言お許しをいただきましたことを、債権者一同にかわりまして、厚く皆様にお礼を申し上げます。以上をもつて簡単ながらごあいさつといたします。  お許しを得ましたので、公館等借入金返済に関しまして、私はわれわれの平素いろいろ考えておりますことをこの席で述べさせていただきたいと存じますが、釈迦に説法といつたような節が多々あり得ると存じまするけれども政治等に暗い私どものことでございますから、特別をもつてお許しをいただきたいと存する次第でございます。  第一に、私はこの公館等借入金の問題に関連をいたします引揚者の偽らざる心境を皆様にお聞きとりいただきたいと存する次第でございます。国内災害に対しましては、社会的に義捐金が各方面から醵出せられまするし、国におかれましては、追加予算が計上されまして、この救済に努めていただきますことにつきましては、国民の一人といたしまして感謝にたえない次第でございます。ところがこの災害のうち、われわれのこうむりました災害は、国内におけるところの風水害、火災、あるいは地震等災害に比すべくもない災害であつたと私どもは確信する次第でございます。すなわち財産は根こそぎ沒収あるいは掠奪、接收せられまして、のみならず生命を脅かされつつわれわれは一年ないし二年、こうした困窮のどん底に捨子のごとき取扱いを受けて、裸一貫で引揚げ参つたのでございまするので、われわれの受けた災害は、基本的人権が侵害せられようとしている有史以来空前の大災害であると私どもは信じておる次第でございます。しかるにこの大災害につきまして、政府当局に何をしていただいたかということを考えまするとき、遺憾この上もない次第でございます。われわれはもうすでに失うべき何ものもない状態に立ち至つておる次第でございます。たとえば枝という枝、葉という葉はすべて切りとられまして、ちようどごぼう抜きになつた松の木が、その根にくつついておりますどろまでもふるい去られて移されたような状態なつたわけでございまして、これがはたして故国のこの郷土において育つて行くか、生き行くかということを考えまするとき、私どもは非常に無念の涙にくれ果つる次第でございます。ここに至りましてわれわれは、われわれの憲法に認められておりますところの基本的人権を要求しなければならないというような段階に立ち至つた次第でございます。その根本は、まず在外私有財産の返還を要請いたしたいということでございますが、これに先だちまして、公館等借入金につきましては、急速に政府におかれましては弁償していただきたい、こう考えておる次第でございますが、幸いに皆様方の特別なる御配慮によりまして、昨日在外公館等借入金返済準備に関する法律案が通過いたしまして、私どもはこの上ない喜びを感じておる次第でございます。引揚者一同にかわりまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。ところがこの法律案を私どもがよく検討いたしまするとき、在外公館等借入金に関しまして、確認証書の発給されておるもののみについての法律案であるように思うのでございます。しかるに公館等借入金確認証書は、約二十一万件あるのでありまして、ただいま確認を受けたものは、十二月末に約一万九千件、この三月末に発給せられつつあるもの——いまなお末端引揚者の手には渡つておらないのでございまするが、それが約二万件と聞き及んでおる次第でございまして、合計三万九千件でございます。これを四万件といたしましても、なお多数の確認証書が、外務省公館等借入金審査準備委員会におきましてそのままにされているという実情であるのでございます。この確認状態は私はきわめて遺憾である、こう考えている次第でございまするが、中でも中支方面儲備券に属しましては、そのほとんど全部がいまだ確認状態に立ち至つておらないということは、中支方面債権者に対しまして、何がゆえにかかるまま子扱いをせられたのであろうか。審査会当局方々にこれははつきりとお答えを願いたいと存じておる次第でございます。聞くところによりますと、審査会当局におかれましては、二十一万件の確認請求書をイロハの三つに区分いたしまして、イは確認の対象になるべきもの、ロはいまだその域に達せざるもの、ハは大体不確認性質を帯びているものとして整理せられておるということでございます。しかしてこの中支方面儲備券は、ロの部類に入つているということでございまするが、このロの中に入つております確認請求書の整理を急速にお願い申し上げたいと存ずるのでございます。私は昨年十二月の中旬に審査会当局に参りまして、いろいろお願いを申し上げたのでございます、その際中支方面引揚げ主体調査が十分行き届いておらないから確認するに至らないということを、ただいまここに見えております池田事務局長より聽取することができたのでございまするが、その後今回二万件が発給せられながら、中支方面儲備券がなおまま子扱い状態に置かれておるということにつきまして、はなはだ私は遺憾に存する次第でございます。なおこの儲備券関係でもう一つ述べさせていただきたいと思いますことは、調整料付送金小切手確認請求書に関連するものでございまして、私はここに特別に発言お許しいただきましたこの機会に、調整料付送金小切手なるものがどういう事情で起つたかということにつきまして、証拠品を当委員会委員長に提出申し上げたいと存ずるのでございます。それで私ここに持つておりますところの上海地区において発行せられておりました大陸新聞の、二十年八月十七日の新聞の原本を、ここに提出させていただきたいと存じます。この新聞の中に、引揚げには三万円、送金等持帰り金家族送金は六箇月分一括という見出しのもとに、在外公館上海事務所においてこれを新聞発表をなさつておらるる原拠について私は申し上げたいと存ずるのでございます。すなわちこの調整料付送金小切手と申しますのは、戰争の状態が非常に悪化いたしまして、八月十三日に居留民一同内地引揚げなければならないが、引揚げとさつそく衣食に困るだろうから、三万円だけは特別に持ち帰れ、内地金融機関退去証明書を提示することによつて受理する道を聞いてやつたから、元の町内会に通じて提供せよという御勧奨が、在外公館上海事務所において発表せられました。居留民一同は三万円送金を始めたのでございます。当時非常に打撃を受けておりましたときでございましたので、衣類その他家財の一部を売り払つたり、あるいは勤労收入もこれに足しまして、上海方面、特に中支方面地域方々が、苦心さんたんをいたしまして三万円送金を開始したのでございまするが、公館上海事務所におかれましては、特に調整料と称しまして、送金小切手額面の十倍の調整料を払えという條件をつけられたのでございます。すなわち三万円に対しまして三十万円という調整料を取立てたのでございます。しかしなお余剰のある者に対しては、五十倍の調整料を支払え、しからば金額は制限しないというようなことを勧奨せられまして、三万円送金なるものが八月の十三日、つまり終戰よりさかのぼる二日前から実施せられていたのでございます。私がかく申し上げますことは、この新聞報道を基礎として申し上げるのでございまして、調整料付送金小切手を提供した居留民一同は、これ命従うという気持で、三万円内地へ送りたいばかりに、三十万円という驚くべき手押料でもつて提供いたしたのであります。ところがこの調整料付送金小切手がいまなお審査会当局において審査せられないという状態にあるのでございます。この調整料在外公館の費用に使われたということは、おおいも隠しもできない事実があるにかかわらず、公館当局責者任がこれを明らかに認められないためか、いまだ確認せらるるに至らないという状態になつている次第でございます。なお申し上げたいことは、これに関連いたしてたくさんございますが、この証拠品を私は提出させていただきまして、これによつて御検討をいただきたいと存ずる次第でございます。  次に私どもは、二十一万件の請求をしてあるにかかわらず、確認状況は以上述べましたような次第でございまするが、この在外公館等借入金請求をいたしました方々は、全国に約百万人の関係者がおる次第でございます。これらの方々がもう確認証書がいただけるかと一日千秋の思いで待機しているにかかわらず、多数の方々はこの状況がさつぱりわからないのでございます。日夜不安の念に襲われながら、債権者各位は暮しておる次第でございまして、この債権者の中には、もう余命幾ばくもない八十四、五歳を越えたような老人が、この在外公館借入金の弁済をお待ちしている次第でございます。その一端といたしまして、私は四国新聞の最近の記事をここに持つて参しりましたので、これも関係者がいかに困窮しつつあるかということの証拠の一部として提出させていただきたいと存じますすなわち「望みを首相につなぐ、公館等借入金の返還の書面提出」という見出しのもとに、高松引揚者が非常に困つているという記事がここに出ている次第でございます。八十四才の孤独のおじいさんが、九万二千円という公館借入金を奉天において提出しておる次第でございまして、もうあすも知れないようなこのおじいさんが、支払いの一日もすみやかならんことを斬りつつ暮しておることを思うとき、政府におかれては風木の悲しみを体験せざるよう、弁済の時期を早められたい、こういうふうに切にお願い申し上げる次第でございます。  なおこの公館等借入金債権者が病気になりました際にも、医療を受くることがなかなか困難なのであります。社会福祉主事に、この公館等借入金確認が来さえすれば医療ができるのでございますがと申し上げましても、そんな死んだ金が何になるかと、相手にさえなつてくれないのであります。この金が来たらお払い申し上げるから立てかえていただきたいと懇請申し上げても、なかなか現在の確認証書のみをもつてしては聞き入れていただけない。そのために自分の生命を失うということになりつつある次第でございます。  それからもう一つ申し上げたいと存じますことは、上海方面におきまして、公館終戰処理費に非常に悩みまして、居留民から高額の借入金をせられたのであります。その口数がわれわれの団体調査いたしましたところによりますと、三百六十一件あるのでございます。これが一億單位に提供してくれということによりまして、皆さんが一億という大金はございませんので、何人かの方々が持つておる金を集めまして、一人の貸與者の名前で提供申し上げてある次第でございます。これが高額提供者なるがゆえに、頭割をなすべきであるという御意見があるように聞き及んでおるのでありますが、内容はたくさんの人々が出し合つて、合算して提供申し上げた金額でございますから、かかる措置は絶対に避けていただかなければならない、私はこう信ずるのでございます。  以上のような考え方に基きまして、私は当委員会に請願書を提出してある次第でございます。その請願書には次のような措置お願い申し上げたいというふうに述べてある次第でございます。  まず第一は、審査会の現在の委員、幹事のほかに、確認事務の遷延しつつあるところの地域債権者代表を委員、幹事として新たにこれを加え、審査事務の進捗をはかり、確認証書発表は今年六月末に完了していただきたいということ。第二には、弁償は公定換算率と物価指数によつて算出していただきたい。第三番目、弁償は二十六年度中にすみやかに行つていただきたい。第四番目、確認証書を発給したいものに対しては、確認済み確認額の九割程度まですみやかに公定換算率で金融の道を開いていただきたい。その次、不確認確認証書は、その不確認の都度、事由を付して債権者に返戻していただきたい。なお最後に、やむを得ざる事情によつて確認請求漏れになつているものに対しましては、追加受付の措置を講じていただいて、本年六月までに確認していただきたいということを請願申し上げてある次第でございます。  以上ふなれのために申したいこともなかなか申し述べることができませんので、私自身非常に残念に思いまするが、以上をもちまして、参考人としてのお願いといたす次第でございます。
  14. 若林義孝

    若林委員長 参考人中北君に対する質疑があれば発言を許します。
  15. 玉置實

    玉置(實)委員 ただいまの参考人の御説明でありまするが、中支方面は、特に他の地区と多少性格を異にしていると思いますので、適当な機会外務省方面その他関係官庁と十分御連絡をお願いいたしまして、委員長から十分本件に関しまして御検討をお願いいたしたいと思います。
  16. 玉置信一

    玉置(信)委員 私もただいま参考人のお話を聞きまして非常に事重大であり、また意外にも感ずる点がありまして、できることならば本日ここで詳しくさらにつつ込んでお聞きしたいのでありますが、すぐ本会議もありますし、その他いろいろ多忙な仕事もありますので、遺憾ながら本日はそうしたところまでお聞きすることができませんので、ただいま玉置實委員の申されたように、近い時期に政府関係者の臨席を得て、そこで質疑を試みたい、かように思いますが、さようおとりはからいを願いたいと思います。
  17. 今野武雄

    ○今野委員 お伺いしますが、先ほど新聞を基礎にしてというお話でしたけれども、上海でいろいろ問題があつたようですけれども、どういう公館で、またその責任者がどういうものであるかというようなことは、これはわかるのですか。
  18. 中北繁

    中北参考人 この上海方面儲備券関係確認請求に関しましては、二つになるわけでございまして、その第一がほとんど居留民一同が関係がございます。調整料付送金小切手でございます。それにつきましてはただいま委員長証拠品を提出いたしましたから、あれをごらんいただけばはつきりわかると思います。  いま一つは公館の純然たる借上金でございます。これは東京都千代田区神田一ツ橋の内山書店内に内山完造氏という方がおられるのでございますが、この方が委員長になりまして、一億單位に儲備券終戰処理費の費用に充当するから提供してもらいたいという打合せをなさいまして、私がただいま申しましたように、三百六十一件ございまするが、これらの方々に呼びかけて公館の諸費用を調達いたした次第でございます。これに関連いたしまして、最初儲備券で持つて参りました。ところが仮領収書なるものを公館は発行いたしたのでありますが、ところがその後中国が儲備券及び連銀券等につきまして——詳しく申しますると昭和二十年の十一月でございまするが、その仮領収書を持つて来いと坂取上げたわけであります。そうして今度発行いたしました領収書は邦幣になつた次第であります。実質は儲備で取上げて、そうして本物の領収書は邦幣に書きかえた。しかも本物の領収書は持つて帰ることができないだろうというのでまた取上げてしまつた。結局借上金の提供者は番号と年月日を帳面に控えて帰つただけであります。こういうような仕打ちを在外公館は食わしているわけでございまして、こういう点につきましても、私はただいま申し上げました内山完造氏が当時の委員長でございまするから当委員会で御招致いただきまして、詳細にその前後事情を御調査いただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
  19. 今野武雄

    ○今野委員 今お聞きしましてたいへんな問題だと思いますが、委員長に提出された資料を何か複製することができましたら、私たちにも見せていただきたいと思つております。
  20. 若林義孝

    若林委員長 御質疑、御意見の方はありませんか。——それでは御質疑も御意見もないようでありますから、参考人より意見を聽取することはこれをもつて終ります。  この際参考人方々に一言お礼を申し上げます。遠路来ていただきまして、いろいろと在外公館借入金に関して参考となる御意見を披瀝していただき、今後の委員会調査に大いに参考となるもので、その御意見を参考として在外公館借入金の件に努力して行きたいと存じます。  なお委員各位には、今日の参考人発言によりまして、事態ただならぬものを発見せられたことであろうと思うのであります。理事会において皆さん方の御協議の上、この問題を取上げて検討を進めてみたいと思います。     —————————————
  21. 若林義孝

    若林委員長 なおこの際御報告をいたしておきますが、引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案として、各委員諸氏の一年延長の御意見に基きまして、若林、中山、吉川、受田各氏の発議によつて、議長までこの改正法律案を提出いたしておきました。内容は、  引揚同胞対策審議会設置法の一部を次のように改正する。  第七條中「施行の後三年」を「施行の後四年」に改める。  附則、この法律は公布の日から施行する。    理由  国連は本年五月特別委員会を設置し、抑留日独人の送還問題の解決に当ることとなつたが、わが国としてもこれに対応して引揚げ同胞に関する懸案の解決を急ぐ必要があるので、本法の有効期間をさらに延長すべきである、これが本法律案を提出する理由である、ということでありますから、御了承を願いたいと思います。  本日はこの程度で散会いたします。     午後二時散会