○山成
公述人 ただいま御紹介にあずかりました山成豊であります。劈頭に申し上げたいことは私の身分につきまして、今品川ダイハツ会社の
会長という御紹介がありましたが、実は本件につきましては、先般申入書の中へ資格を書くことをつい落しましたので、電話で御紹介がありまして、私の家族がうかつにそういう返事をいたしましたが、その会社はまだ登記も済んでおりませんし、営業もはつきりいたしておりませんので、取消していただきまして、私の身分は参議院に出しておりまするが、
日本小型自動車工業組合の顧問、東京小型
自動車運送事業協同組合の顧問、これが本日
公述いたしまする件についての私の
関係団体でありまするから、さよう御
承知願いたいと存じます。
さて私は、最近東京におきまする小型
運送業界が非常に困惑し、かつ憎みに逢着いたしておりました際に、この御計画が発表されて非常に喜んだ次第でございます。私は今回の
改正にあたりまして、次の二点を織り込んでいただきたいと
考えるのであります。その一つは、小型
運送の
免許申請書を大幅に簡易化していただきたい。第二は、
免許基準につきまして、どうか基準
車両数をはつきりと表わしていただきたい。その基準数は、大都市においては最低五両、
地方におきましては三両、こういう
免許基準をはつきりと表わしていただきたいということが、私の今日お願いする
趣旨でございます。
さて、これにつきまして事情を申し上げますればまず
免許の
申請書が、現在においては非常に複雑でありまして、ここに私は見本を持
つておりまするが、約十四、五ページもかかるような
申請を出さなければならぬ。この
申請の内容につきましてはいろいろな
條項がありまして、たとえば興業費概算書とか、あるいは
運輸收入概算書とかいうような、将来
経営いたしまする上におけるいろいろの
事業の内容を示さなければならぬという規則にな
つておりまして、この
改正法案の第五條第三項の、
運輸省令で定める
事業計画という
規定に基いて書かなければなりませんが、私はこれをきわめて簡易化していただきまして、この
免許申請をいたします場合には、
事業計画の中では
事業の場所と
使用車両数ぐらいを書いて、一ページか二ページぐらいの
申請書で済むようにしていただきたい。と申しますのは、何も紙が惜しいのでも書くのが困るのでもないのでありますが、この
運輸計画とかあるいはその他の計画については、どちらかというと、一つの計画と想像でありますので、これが
審議会といいますか、
道路運送委員会で開かれる
公聴会におきまして、
道路運送審議委員各位からいろいろと質問されまして、
事業者が非常に困るというような事態を起しまして、この
公聴会におきまして、俗に言えばこづきまわされるというようなことがしばく見受けられますので、どうかひとつあまり心配しないように、簡易な
免許申請にしていただきたい、こう
考えまして、ぜひこの
免許申請書の簡易化をお願いする次第であります。
次に第二の
免許基準でありますが、こちらに
運輸省の御当局の方も大分見えておられますが、これにつきましてはたびたび
運輸省にいろいろとお願いもいたしておりますが、率直に東京の実情を申しますことが一番私の説明に当ると存じますので、簡単に実情を説明いたしますと、戦争前には東京には約五千の小型
運送業者がありましたが、戦争中に企業合同ですか、一種の強制合同にあいまして、小型、大型を一つの会社にまとめられた結果、小型
自動車は戦時輸送に適しないということを
理由にされまして、この小型
運送車は全滅いたしました。約五千両の車が全部破棄されまして、戦争直後にはわずかに八十両ほどのものが残つた。登録面では百両ぐらい残
つておりましたが、実際に客の求めに応じ得るものは、約八十両くらいしがなかつたというような実情であります。そこで私はこの小型
自動車がそういうふうなことでは困るというので、
運輸省にいろいろとお願いいたしまして、御協議申し上げた結果、
運輸省においてももつともなりとされまして、
昭和二十二年十二月でしたか、五百両、二十四の会社の設立を許されたのであります。おかげをもちまして、その後非常に繁栄におもむきましたが、私
どもが一番心配いたしましたことは、この五百両の車がどういう
状態にあつたかと申しますと、つまり一方において
既存の
運送会社は廃棄して参りましたが、一方荷主側では、小型
運送を非常に要望しておりましたので、戦争の末期から戦後にかけまして、いわゆる
自家用自動車の無
免許業者といいますか、これが非常にふえまして、当時許可を得た五百台もまさにそのもぐり
運送であ
つたのであります。それらはたいてい一人の人が一合ないし二台、せいぜい三台くらいを持
つてや
つておりまして、それらはすでに店舗も持ち、格納場所も持
つておるというふうに、いわゆる小なりといえ
ども一城のあるじというような人であ
つたのでありまして、これらが自分で独立して商売をした戦争前は、一台でも二台でも許されておりましたので、どうか戦争前同様に自分の
事業とし、また
事業を子孫にも譲れる。そして働く者に幸福感を与え、自分の仕事としてやりたいという強い要望でありましたので、その趣を
運輸省御当局にたびたび申し上げ、嘆願したのでありますが、どうしても
運輸省の御方針は、そういう個人は対象とすることができないというので、結局一区一社という
既存のいわゆる地場
運送と申しましようか、戦争中合同された
運送会社のように地域的にわけまして、一区一社で許すというので、繁華な
土地で、たとえば中央区、千代田区というようなところには二社、また
免許基準も繁華
地区は三十台、それから中野、杉並というようないなかでは十台ベースということで許可されまして、
事業を開始いたしました。ところが私
どもの心配いたしました
通り、この会社はいわゆる烏合の衆とでも申しましようか、きのうまでは知らなかつた人が寄り集ま
つたのでありますから、なかなかほんとうの会社形態には行きかねるというようなことで、つまり率直に言えば会社経費を割勘で出しまして、そうして働いたうちのしかるべきものを自分の手に入れるというような、いわゆる変態性の会社にどうしても流れますので、これは
運送に
経験のある方は御存じでしようが、戦争中に強制統合いたしました、いわゆる統合会社もこういう傾向が多分にありまして、これを
運輸省あるいは業界ではどんぶり勘定と申しまして、始終話題に上つたものであります。この変態
経営は、もちろん商法にも違反し、また
免許業者としての責任の所在というようなことにつきましても、
免許の対象とな
つておる法人組織から見まして大きな違反行為でありますので、
運輸省御当局からもしばしば厳重な戒告を受け、また一種の脱税の原因にもなりますので、税務当局からも相当にとがめられまして、実は非常な困惑をいたしましたが、どうしてもこれは個人に開放されないので、こういうような形で実は三年間や
つて参
つたのであります。ところがその後小型
運送は、幸いにして非常に大きな利用家の方面にその利便が知られまして、五百台でありましたものが、最近では約二千五百台、約三千台までに近いという五、六倍の大きな膨脹をいたしまして、各会社も増車あるいはその他で膨脹いたしまして、三十台で始めました会社が、百台を越すというような成長におもむきました。またそれらの社員も—社員というのは株主でございますが、つまり車を一台、二台出資いたします株主も非常にふえました。最近の統計によりますと、約二千五百両の車、会社数にいたしまして四十六社ございます。そうしてこの四十六社のうちの出資社員の数は約一千名でありまして、これらの社員が寄
つて、四十六社を形成しておるのでありますが、これらの社員の出資いたしております車の数を申しますと、五両以下を持
つております社員が九〇%でありまして、あとの一〇%ほどが約七、八両から十両ほどを持
つておる社員であります。最近の税金攻勢や、あるいは会社内にそういうことに無知の人が次々と大勢集まりましたために、何分にもなれませんので、会社の首脳者も困りまして、いつそのこと解体して、三年以前にお願いしたように独立の企業に開放していただこうというので、いろいろと
運輸省当局にお願いいたしましたが、やはり
運輸省におかれましては、どうしても
免許の対象上、十両以下は困るというお説で、結局最低十両で再編成することを許そうということになりまして、現在ではやむを得ず十両ペースに従いまして、再編成をいたしておるような次第でございますが、この十両ペースにつきましても、法人組織もこの條件にな
つておりますので、いわゆる会社をつくります、この会社をつくりますと、事務員とかすべてにおきまして、どうしても一箇月の経費が十万円を下りません。この十万円をかりに十台であるといたしますと、一台について一万円の経費がかかるというような、非常な
負担の増加になりますし、また今度の再編成からは、いわゆるどんぶり勘定を禁止するという
意味で、車庫をぜひ建てろ、車庫の設備をしろということを強く要求されておりますので、従来は比較的寛大に取扱われました車庫も、今度はぜひつくらなければならぬ、これにもまことに大きな経費がかかるというので、これらの点につきましても、
業者の大きな悩みにな
つております。ただ七、八両なり十両持
つておりますごく少数な
車両主だけはほとんど独立できたので、これらは非常な大きな幸福を得たわけでありますから
けつこうでありますが、いわゆる五両以下—ほとんど約半数の五百名くらいは、一両ないし二両持ちでありますが、この九〇%の
業者たちは、まことに当惑している次第なのであります。これらの事情に基きまして、今度の
改正におきましてはせめて重要都市では五両、
地方では三両というようにおきめを願えば、たいへんありがたいことに存ずるのであります。なおまた私
どもが三年以前に
運輸省にお願いしたときに、
運輸省が三両、四両、五両ではいけないとおつしやる
理由が、つまり少数では信用がない、事故を起した場合の賠償にさしつかえる、また個人では不正のことなどして、
道路運送事業法第
一條の精神に反して、輸送の
秩序とか、あるいは
公共の
福祉に反するようなことが起りやすいからいけないという御説でありますが、この御説は、この三年間の私
どもの
経験によりましてはつきりいたしました。小企業でも決してそういう御心配はない。この三年間にこれだけの小型
運送をや
つておりまして、私も実は小型トラック
協会の
会長といたしまして、三年間親しくこの
事業を見守
つて参りましたが、さようなことは一件もありませんでした。つまり荷主の物をどろぼうするとか、あるいは横領するとか、あるいはまた賠償ができなくて非常に紛糾して、裁判沙汰に
なつたというようなことは、ただの一ぺんも実はありませんでした。もつともこの三年間にわれわれがやりましたのは、表面は会社でありますが、その実は今申しましたような個人
経営でありまして、事故を起しましても、ほとんどその人が責任を負うということが、今
一般の習慣にな
つておりまして、こういうことを公の席で言うのもどうかと思いますが、実際は個人
経営同様であります。その二台、三台あるいは一台を持
つている人
たちが、そういう荷主とか
公共に対して絶対に迷惑を及ぼしておらない。つまり
運輸省で言われましたことはまつたく杞憂であ
つて、実際に当らなかつたということが言えますので、今日におきましては、ぜひその小企業をお許し願
つてよろしいと
考えるのでありまして、
本法改正にあたり、あるいはこれを
條文にお入れになることは困難でありましたならば、実際の
運営において、私の言うことをお取上げ願いまして、せめて重要都市五両、
地方三両というふうになさいましたら、
業者の非常なる幸福であり、また小型連送の大きな発展であろうと存ずるのであります。東京は幸いにして、三年前に
そういつたことから、今日約二千五百両から三千両近くに小型
運送が回復いたしましたが、
地方におきましては、いかんせん、
道路運送委員の
考えというか、当局の
考えというか、これがほとんど解決を見ておりません。ゆえにこれらの
地方では……。