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前田(正)委員 ただいま議題となりました
日本国有鉄道法の一部を改正する
法律案につき、提案者を代表いたしまして、提案の理由並びに要旨を御
説明申し上げます。
日本国有鉄道法は、第三回国会において可決を見、昭和二十四年六月一日から施行せられたのでありますが、この
法律は公務員の労働問題解決を契機として、急遽法制化せられたため、その
内容は必ずしも整備されたものとは言い得ないのであります。今第三回国会において本法審議の際詮議せられました。最も重要な事項をあげますと、従業員に関する事項を除いては、監理
委員会の性格及び総裁との
関係、役員に関する事項、
運輸大臣の
監督権等でありまして、そのうち財務に関しては第四回国会において改正せられたのであります。
公共企業体としての日本国有鉄道は、発足以来約二箇年を経過いたしたのでありますが、その間における実情に徴しまして、国鉄運営上並びに
運輸行政の総合性を期する上にも、適切でないと認められるものがあるのであります。まず監理
委員会であります。本
委員会は国鉄の最高機関として「国鉄の
業務運営を指導統制する権限と
責任を有する」と定められているのでありますが、必ずしも所期の目的を達しているものとは
考えられないのでありまして、むしろ総裁の諮問機関的あるいは監査機関的存在と見るを至当とするようであります。しかも「総裁は監理
委員会に対し
責任を負う」と定められているため、国鉄運営の
責任の所在は明確ではないのであります。ついてはこの際これを廃止して、国鉄運営の
責任体制を確立し、総裁以下役員をして、全
責任をも
つてその創意、くふうによ
つて運営に当らしめることが、国鉄
経営の能率化と健全なる発展を期するゆえんであると思料するのであります。
次に
運輸大臣の
監督権についてであります。日本国有鉄道の公共企業体たる本質にかんがみ、これが自主性はでき得る限り尊重し、これに対する
監督を最小限度にとどめなければならないことはもとよりでありますが、国鉄は国の
事業を
経営、監理しているもので、
監督上の最高
責任は申すまでもなく
運輸大臣にあるのであります。
従つて公共の福祉の確保、他の
運輸機関との総合調整をはかるため、監理
委員会廃止に伴
つて、必要の最小限度において、若干の許認可事項を追加するとともに、命令権の
内容を明確にすべきであると
考えるのであります。
以上のような趣旨に基いて立案いたしましたのが、本改正案でありまして、その要点は次の
通りであります。まず第一に、監理
委員会を廃止したことで、これが本改正案の主眼であります。第二に、役員に関しましては、監理
委員会の廃止に伴い、新たに監事を置き、総裁、副総裁、
理事並びに監事の員数、任免方法、任期等を
規定または改正した点であります。第三には、
運輸大臣の許認可事項といたしまして、
運輸事業の貸渡しまたは借受け及び
運輸事業の
経営の委託または受託、並びに国鉄の基本的な
業務運営組織の
変更の二項を追加し、また
運輸大臣の国鉄に対する命令権の
内容を明らかにいたしまして、国鉄が
運輸大臣の許認可を受ける事項並びに
地方鉄道法または軌道法の
規定により
地方鉄道
業者または軌道
経営者に対し命令、許認可した事項であ
つて、国鉄と関連のある事項を例示したほか、
運賃法の
規定により総裁の定めることができる
運賃料金の
変更を命ずることができるようにいたしましたが、命令権はいわゆる伝家の宝刀で、みだりに発動すべきものでないのでありまして、公共の福祉を増進するため、特に必要と認められる場合に限られるのであります。
なお
運輸大臣に立入り検査権を認め、国鉄から報告を徴するほか、いつにても独自の立場において立入り検査をなし得ることとし、また、監事に対し国鉄の
事業の
経営成績及び財政状態に関し意見を求めることができることといたしまして、双方相ま
つて監督者として国鉄の実情を把握するに遺憾のないようにいたしたのであります。
その他本法施行に伴い、必要な役員の任期の経過
規定並びに
運輸審議会付議事項の追加等、所要の改正をいたしました。
以上
日本国有鉄道法の一部を改正する
法律案の提案理由並びに要旨について申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。