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滿尾委員 道路運送法の問題につきまして、個々の
條文につきましては
政府委員より十分お話を伺いましたが、私はこの
法律の第一條に掲げました総括的な立場におきまして、大臣の御所信を伺いたい。
本日は大体五つのことをお尋ね申し上げたいという
考えでございます。第一は、この
道路運送法を運用せられますにあた
つての、大臣の御心境を伺いたい。第二は、第一條のいわゆる公正なる
競争ということに関連してお尋ねを申し上げたい。第三は、同條のいわゆる運送秩序ということについてお尋ねいたしたい。第四は、
道路運送の総合的な発達という見地についてお尋ね申し上げたい。第五に、
道路運送審議会につきましてお尋ね申し上げたい。こういうつもりでございますが、時間が許しませなければ、残りました分を保留いたしまして、できます限り御
答弁を願いたいと思います。
今回の
道路運送法の改正でありますが、実は現行法を施行せられましてから二年余り、その実績にかんがみまして、御提案になりました
法律は幾多
改善の跡が見られて、私
どももその限りにおきましては非常に満足に感ずる次第であります。しかしながら終戦後今日までの運輸
行政の実際のあり方というものを反省してみますると、私はここに幾多の問題があり、それがゆえにわざわざ大臣にお出ましを願
つて、この
法律の改正ができました後におきま更る大臣の御心境を伺いたいわけでございます。
〔大沢
委員長代理退席、坪内
委員長代理着席〕
実は
法律を見ますのに、私は三つの観点から
考えております。
一つは
利用者の立場から、
一つは
関係業者の立場から、
一つはこの
法律の運用に直接関与いたしまする
運輸大臣の部下である
行政機関の立場からの
考え方、か
ように翻
つて見たいと思うのであります。
道路運送法のほんとうのねらいは私が申すまでもなく、
国民一般利用者の立場が最優位を占めるものだと思うのであります。しかしながらこの
法律を実際に運営して参りますうちには、ある面におきましては、
利用者の利害と
業者の利害あるいは
行政機関の立場というものが、いろいろに錯雑いたしまして、常に必ずしも
利用者最優位の原則が、今日まで貫かれて来なか
つたように思うのであります。この
法律が陸運に関する各種の
事業の適正な発達をこいねが
つておる。まことにこれらの
事業は、この
法律によ
つて免許事業とされて、国家の非常な手厚い
保護のもとに、しかし半面におきましてはまた幾多の義務も負わされておるわけであります。何ゆえに国がこれだけの
保護を加えるのであるかということを
考えてみましたときに、結局終局の目標は、
国民一般の福利の増進にある。ところが長年の
運輸省の
行政のあり方を
考えてみますると、いつの間にか直接
業者に関連したる面に、非常に多くの耳目を奪われてしま
つた、こういうきらいをしみじみ感ぜざるを得ない。われわれは
国民の利益を確保するためには、
関係業者を非常に丈夫なものにし、信用の高いものにし、これをりつぱに育成して行かなければならない。しかしながらいつの間にか
業者がその特権に隠れまして、あるいは不当なるインフルエンスを
行政機関の末端にまで及ぼしたという
ような事例がないでもない。ち
ようど神様にもできるのに、神殿を拝むのが建前なのに、いつの間にか神主を一生懸命拝んで、拝殿の方にはしりを向けておる、こういう
ようなきらいさえも私は出て来た
ように思うのです。それでどうしても
一般利用者の立場というものは、組織ぶありません。一人々々の人民がいろいろの角度からいろいろの感想を持つ。しかしながらそれをわざわざ
行政官庁までしりを持ち込んで行くほど勇気のある人も、根気のある人も、
一般庶民にはないわけです。
従つて運輸大臣とせられましては、
国民の声なき声を聞いていただきたい。これが一番大切なことではなかろうか。不幸にして国会の審議においてさえも、団結しておりまする有力なる業界の意見は、きわめて忠実に反映せられるけれ
ども、
一般利用者、庶民の声は十分反映しないきらいがある。このことを大臣はぜひ念願に置かれまして、この
法律の運用に当
つていただきたいとこいねがうものであります。またこの
行政機関は——大臣は非常に
厖大なる組織を全国に持
つておられる。これは多数の
人間の集まりでございまするから、たまに間違いの起りますることはまことにやむを得ない。私も長崎に起り、また方々にあ
つた事件を存じておりますが、これは間違いでありまするから、私はさ
ような間違いを取立てて責める
ようなやぼなことを
考えておるのではない。しかしながらか
ような間違いの場合でなくて、日常の
行政事務の運営にあたりまして、今私が大臣にお願いします
ような気持が、十分浸透していないきらいがある。そして所在のその土地土地のいろいろな事情、ことに業界の利害
関係の反映等によりまして、はなはだ
行政が明朗でない
ような面もときどき見受けられるのであります。それでこの
行政機関に対する人事の問題でありまするが、率直に申しまして、国鉄と
運輸省との人事の問題、この間に運輸当局におかれては非常に御不自由にな
つておられる。もう少しこの
仕事に打
つてつけの人を、国鉄側から引抜くわけに行かないかという感を実に深くする。やはり人にはそれぞれ特徴がありまして、
自動車行政の末端機関といたしましては、かりに少しできが悪いといたしましても、
鉄道プロパーの
仕事には非常に有能な人がある。私が全国拝見いたしましたところによると、現在の
行政機構の末端
機構におきましては、非常にりつぱな勇気のある業績をあげておられる方々もたくさんありますが、また一面人の特長を殺して使
つておる。ま
つたく場違いの人を場違いの場所に使
つておる。その結果は御本人も不幸である。
国民も不幸である。
業者も不幸である。ま
つたく困
つたと思われる
ような節がないでもないのであります。またわれわれの立場から
考えますと、その
ようなことを申しますことは、結局お役所に対しまして、あとのたたりをおそれてだれもほんとうのことを言わない。かく申す私でさえも、今日国
会議員の立場にあり、かつ運輸
行政の裏面に相当通じておりますつもりの私でさえも、本日この言を大臣にあえていたすにつきましては、あとのたたりをおそれまして、実は戦々き
ようき
ようたる気持を持
つております。言いたいことを半分も
よう言わない
一般市民の、その間の事情を十分にお察しな願いまして、この
法律の運用について、大臣におかれましてはそのかじのとり方を間違えない
ようにしていただきたい。個々の
條文の議論なんかは実は大臣に申し上げるのは場違いでありますが、私はこういう
法律運用の御心境につきまして、大臣の御
答弁をいただきたいと思います。