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加賀山説明員 昨月二十四日の、時刻は午後一時四十二分ころと
推定されるのでございますが、櫻木町駅
構内におきまして、
電車火災事故を惹起いたしまして、
国鉄電車始ま
つて以来の重大な結果を招来いたしましたことは、まことに申訳ない次第でありまして、このために遭難された
方々並びにその御家族の
方々、ひいては
国民各位に非常な御不安をおかけしたということにつきまして、まことに何ともおわび申し上げる言葉もない次第であります。本
委員会におかれましても、たいへんな御心痛を煩わしましたことにつきましては、この
機会に深くおわびを申し上げさしていただきたいと思います。
ただいま
大臣御
発言の
通り、
事故の発生の
原因につきましては、目下直接
関係者に当
つて聞きただすことが十分でございません
関係上、
推定も入
つておる次第でありまして、最後のところは、まだ今後さらに
糾明をするところが多々ございますが、明らかなことは、これは不可抗力ではないということでございまして、
従つて国鉄の全
責任であるということを、私どもといたしましてははつきり
承知いたし、その
責任を痛感している次第でございます。何といたしましても、この
事故が起りました以上は、ただちに遭難された
方々の救護、
弔意に万全を期するということでございまして、私みずから、並びに職員を動員いたしまして、これに
誠心誠意当
つておる次第でございます。
五月七日はふた七日にあたりまして、
鶴見の総持寺におきまして
合同慰霊祭を営ませていただき、遺族の
自宅にも、私が時間のあります限りみずからお線香を上げさしていただいておりますが、なお今後の
慰藉の
方法といたしまして、担当の者をつかわして、きわめて遠方以外のお方につきましては、今日までにその御
家庭の御
状況に
ついて、大体において
調査を完了いたしております。これから一々の御
家庭につきまして、
慰藉の
具体的方法を講ずるという
段階にありますことを、御
報告申し上げたいと存じます。
なおこのために負傷されました
方々は、
横浜並びに
東京市内の
病院にお入り願いまして、あらゆる手を盡して、御治癒が一日も早いことを念願いたしております。ただいまのところ二十名の方が入院をされておりまして、他は
自宅において御療養をされておる方も残
つておるわけであります。
病院の方につきましては、お見舞もそのときどきに申し上げておりますと同時に、何と申しましてもこれは専門医の治療が第一でございますので、十二分の手を盡していただくことを各
病院にお願いし、もちろんその間の
費用全般は、われわれの方で負担をいたしますと同時に、なおその後の
状態に応じまして慰問の
方法を講ずるということにいたしておるわけでございますが、何といたしましてもこれらのことにつきましては、心を込めてするということが最もかんじんのことであると存じまして、単に金銭、経済的万両のみならず、各般の
事情も伺いまして、手を盡し、御援助
できるところは御援助して参りたいと念願をいたしておる次第でございます。
次に
事故の今後の
対策を立てます上に、何といたしましても最も大切なことは、その
真因をつかむということでございますが、この
真因につきましては、この直接の
原因とまたこのよ
つて来たる
原因が那辺にあるかということも、十分検討しなければならないところでございます。
直接の
原因につきましては、
先ほども申しましたように、その当時の
関係者がまだ
手元におりませんので、まだ一部不完全なまま
推定を下しておるという点もあるわけでございまして、これらの点に関しましては、今後十分に
調査をいたしまして、修正、追加を要する点も出て参ろうかと考えられるのであります。ただいままでわれわれの手に入
つております範囲におきましては、当日は午前中から
横浜、
桜木町駅間におきまして、
上り線の
架線碍子の取替
作業を実施してお
つた次第でございます。この
作業は、
電流を通しながら古くな
つた碍子をとりかえて行く
作業でございまして、熟練をも
つてすればさようにむずかしい
作業とは言えないのでございますが、
電流を通したままやるというところに困難もあるわけでございます。これは午前中の
作業は無事に終了いたしたのでございますが、午後続けてその
作業を始めまして、
桜木町寄りの
工事にとりかか
つたわけでございます。この末尾の方の横に長い
図面をごらんいただきたいと思うのでございますが、四号から九
号柱という柱の位置が示してございます。当時四号、五号、六号の三本で
工事をしてお
つたのでありますが、事の起りは、この四号の
工事中誤
つてメツセンジヤー・ワイヤー、これは御
承知と存じますが、
電車線路におきましては、上に
パンタグラフが伝わ
つて電流を受ける
トロリー・
ワイヤーと、その上にそれをつ
つている
メツセンジヤー・ワイヤーの二本があるわけでございますが、この二本とも
電流が通じているわけであります、この
メッセンジャー・
ワイヤーをアースさせまして、そのために
メッセンジャー・
ワイヤーが切断して、それによ
つてつられている
トロリー線がゆるんだ。これがまず直接の最初の
事故の
原因に相な
つております。これは
上り線でございましたので、
下り線には
関係がないようでございますが、この
図面でごらんいただくとわかります、ごとく、左の方に交叉している線がございまして、続けて
桜木町駅の
プラットホームに入
つておるわけでございます。この
電車は
下り線からこの
交叉点を渡りまして、
上り線の方の
プラットホーム——下が
海側で、上が
山側にな
つておりますが、
山側の
プラットホームに入るという予定に相な
つてお
つたのでございます。この
渡り線のところで、
渡り線と
上り線との間に高さの差を生じて、
パンタグラフがその高低の差のすき間へ
すり板をつつ込みまして、そこで
架線を切るという
事故を起したというふうに
推定されるのであります。当時この
工事をしておりましたのは、八名の
電力工手でございまして、上に上
つている人と下にいる人がおるのでございますが、
電力工手長が下にお
つてこれらの
工事を監視をしていたわけでございます。
電力工手長は、この
状態では
電車を運転することは危険と感じた。これも
推定が入
つております。その
架線が垂下した
程度がどの
程度であ
つたかということについては、いまだつまびらかにされておりませんが、ただちに
電車をとめるために、付近にある
信号扱所におもむきました。この左の下部の方に
信号扱所がありまして、ここで
電車を振りわける仕事をや
つているわけでありますが、そこへ
下り線一二七一
B電車が
渡り線を渡
つて進行して来たために、
電車をとめることが間に合わず、その
電車の
最前部の
パンタグラフが
上り線の
トロリー線にひつかかりまして、
トロリー線が切断した。そこで流れておりました
電流が切断した線を
通り、
電車のある
部分にアースをいたしまして、
屋根の
木部等の
可燃物に引火をしまして燃え広が
つた、かように考えられるわけであります。
従つてこの
事故は、
モーターからスパークを起してそれが燃えたというのではなくして、
架線が切れて、そこから
電流が流れて
屋根から燃えたということが、
特徴に相な
つているわけであります。
被害を大きくしたのは、きわめて火の
まわりが早か
つたということに起因するのでありますが、その
原因はなお
糾明を要する点が多くございまして、その後入手しました
写真等の資料によりますと、ますますその火の
まわりが早か
つたということが実証されるのであります。きわめて早くて、
運転士が
非常制動をかけて、
パンタグラフをおろして
うしろが向いたら、もう一面の火と煙だ
つたと言
つておりますが、実際それに近い
状態であ
つたように
推定されるわけであります。かかる場合に、
電流が通じたことが非常に高熱を与えて
焼失を早くしたわけでありますので、こうい
つた事故電流が流れます場合には、
電力を送
つておりまするところの
変電所におきまして、自動的に
高速度遮断器というのが働いて、
電流が切れる装置がしてあるわけであります。この
場所はたまたま
横浜と
鶴見の二つの
変電区から
併列給電、つまり両方から
電流を送
つている所でございまして、近くの
横浜の方は自動的にとまりましたが、
鶴見の方はまだ自動的にはとまらない。三分ないし五分の間は
電流が流れてお
つたというふうに
推定されるわけであります。この
電流をただちに遮断
できなか
つたことが、
火勢を強めることに相な
つた、かように
推定をいたしております。また
場所が
高架橋上でございまして、前方から約十メートルの強風があお
つてお
つた。また
運転士台の近くにございますベンチレーターが明いておりまして、……ここから風が吹き込み、一層風をあおりつけた。それからこれにはこの
車両に限りませんが、
車両の内部は、外部と違いまして
木造部分を多く使用しております。これは
不燃性ではございません。それがために非常に強い
火勢によ
つて早く火がまわ
つた、かように
推定を下しておるのでございますが、
先ほども申しましたように、この点につきましてはなお
実験等を行いまして、さらにその
状況を
糾明いたしたい、かように存じております。それと今回の
事故によりまして、六三型
電車が非常に批判されたようでございますが、これは戦時中おもにつくりまして、ただいまは七百両ございます。主として
電動車、
モーター付の
電車に相な
つております。当時
資材難等の
関係から、
資材等を
できるだけ軽易にいたしまして、車体も比較的軽く
できておる。また窓は、当時
窓ガラスが割れることにかんがみまして、三段にして割りにくくな
つておるというの一が
特徴でございます。六三型が例の
三鷹事件で批判されました当時には、
電動機の
部分に簡易な取扱いがしてございまして、使
つております電線がチューブに入
つていないというようなことがございまして、これらがああいう場合にシヨートし、スパークを起すというようなことがあ
つたけわでございます。この最も重要な運転機器に関します
部分は、その後改善を加えまして、ほとんどそれらの点については標準の
電車と異ならないものにな
つておるのでございますが、窓の三段式と、それから
屋根に天井が張
つてない。この
電車は最近におきまして関西の方からこちらへ転入したものでございまして、天井が張
つてあ
つたことがその後明らかにされたのですが、多くの場合、天井に肋骨のようなものが見えておるのでございまして、天井が張
つてないということが
特徴に相な
つております。これらのことから、今後におきましては、いわゆる施設の面、人の動き方並びにその心構えの点、この二点について十分に
対策を講じて参りませんと、真の
対策に相ならないと存ずるのでございます。施設の点につきましては、ただちに
できますものと、今後多少の予算、
時日を要するものとあるわけでございますが、今回の
事故にかんがみまして、万一の場合が起きても、お客様の安全を期するという立場から、その
対策をや
つておりますし、さらに今後、たとえば窓の問題についても、なお続いて検討して参りたい、かように存じております。火災にな
つてからではすでにおそいのでありまして、問題はまず火災に至らしめない。今回の場合のごときは、
電車の運転を安全サイドにとめる。あるいはこの
原因が、
工事をや
つてお
つて、その
工事がしくじ
つたというようなことから起きておりますので、
工事をやる時間の選定でございますとか、
工事のやり方もよく検討する必要があるわけであります。なおこうい
つた場合に、
先ほど申しましたように
電車、列車を安全サイドにとめるという考え方、従来はどちらかと申しますと線路保安設備等を中心として信号機がございまして、運転をいたします者は、信号が青でありますならば、少しでも先へ進むということを訓練いたしておりまして、結局列車、
電車の運転の正確と円滑を期するというのが、従来の訓練と相な
つております。そしてその正確が、列車、
電車の運転の安全を期する最も大事な要素に相なるわけでございますが、今回の場合等を考えますと、単に進めるだけが能ではなくて、多少
電車を遅らし、疑問はあ
つても、ちよつと危険を感じたらとめるというような事柄が、きわめて大切な問題であるとも考えられるのであります。従来もかような考え方を持
つて来てはおりますが、それらの事柄に徹底を欠いておりはしなか
つたか、さような点につきまして十分な反省もし、今後の
対策を十分講じなければならない、かように存じておるのであります。
設備の点におきましては、すでに新聞等で御
承知かとも存じますが、ドアがあかなか
つたということが、非常に重大な結果を生んだ大きな
原因にな
つたことにかんがみまして、いざという場合にはドアをあけられる
状態に置く。これはとりあえず腰かけ下の非常コックを操作していただくということを表示いたしまして、お客様の御協力を願
つたわけでございますが、改造を施しまして、腰かけの下というようなことではなくて、もつと手の届きやすいところで、しかも平常はいじれないというようなものにしておき、非常の場合には、たとえばガラス等でおお
つて、それを割
つてさえいただけば扱えるようになるというふうにして行きたいのであります。この六三型につきましては、両方にドアが四つずつございますので、これがあいてくれさえすれば、脱出をされる場合には窓等よりもずつと早く行くのではないかというふうに考えております。また横須賀線、湘南
電車等は
通り拔け式にな
つておるのでございますが、この近くの
電車はドアはございますが、内開きにな
つておる。そのために役をなさなか
つたというようなことにかんがみて、横須賀線あるいは湘南
電車と同じように、ほろをつけて中を貫通
できるようにするというふうに改造をいたすことに決定して、着手いたした次第であります。その他ブザーをつけて、お客様等から運転手なり車掌なりに、非常の場合
連絡願えるようにいたしますとか、また車体の下にもドアを一ぺんに操作するコックがあるのでございますが、このコックが片側についておるのを両側につけまして、いざという場合には外にいれば、だれでもそれを扱
つてドアがあく
状態に置くというような改良を加えて参りたい、かように存じておる次第であります。
それから
モーター・カーの特に
パンタグラフの下部の絶縁をさらに厳重にいたしますとか、
電動車につきましては天井を鉄板で張り、また車体を
不燃性の金属等によ
つてつくるとい
つた方法を、今後のものについては考えて行かなければならない、かように考えております。これはもちろん経費その他
車両の重量等のみから考えますと、もちろん得策ではないわけでございますが、こういう
事故が出たといたしますれば、そういうことは言
つていられない、かように存じておる次第であります。
なお遠方の
高速度遮断器が働かなか
つたということも、非常に重要な問題でございまして、これは従来とも技術的に研究を続けて参
つてお
つたのでございますが、技術的になかなか困難面もありますために、解決をいたさないで今日まで来たのであります。これらの点につきましても、さらに精一ぱいの研究をいたしまして、何か最も適切なる
方法を講ずることにいたしたい、かように考えて、研究が推進いたしておる現状でございます。
なお従事員の訓練の問題といたしまして、さらに列車防護についての万全を期するためには、あらゆることを犠牲にしてやる。さらに万一
事故が発生するというようなあぶない
状態を感じたときには、
責任者が果断な措置をその場でとる。なお車輌やほかのことに目をくれて、乗客の救助をおろそかにするようなことがあ
つてはたいへんなことに相なりますので、これらの点につきまして、従来ももちろんそうい
つた心構えをも
つて進んで来ておるはずでございますが、今回のとうとい教訓にかんがみまして、断固この点を徹底いたしまして、訓練をいたして参りたい。なおこのことが起きまして、
国鉄全体に自省の念が高まりまして、上からでなく、ほんとうに現場の従事員から、お互いの手で絶対に
事故を阻止しようとする運動が広く、また心から叫ばれて起きて参
つたということを、御
報告申し上げたいと思うのであります。これがやはり
国有鉄道といたしましては、設備の問題ももちろんございます。技術的な問題ももちろんございますが、何よりもかんじんなことであるように、私どもとして痛感をいたしておる次第であります。
以上はまことに緊急の措置として、今日までの
原因の
糾明から得た結果から、さつそく考えて着手をいたしたことでございますが、
先ほども申し上げましたごとく、この
事故に限らず、あらゆる
事故、特に重大
事故をを絶対に防止いたしますためには、さらに深く深く検討いたしまして、や
つて行かなければならぬ問題が多くあるように考えておる次第でありまして、目下それらの問題の
糾明と、その解決に鋭意努力を傾注いたしておる次第でございます。重ねて今回の
事故に関しまして、皆様方の深い御心痛を煩わしましたことに対しまして、おわびを申し上げる次第でございます。