○
鈴木(清)
参考人 それでは申し上げます。地元の方々からも御
希望、御陳情がありますが、補償その他の点にまでまだ話が行
つておりません。第一の問題は車庫用地の問題でございます。これを地元の方は、あそこはいわゆる文化人の住まわれる閑静な土地であるから、車庫をほかに持
つて行
つてくれという
お話がございました。しかしながらこれは私の方といたしますと、
池袋、
神田間におきましてはあの
通り横断道路が一本しかない、またあれだけの場所をとれるところはないのであります。また持
つて行こうとすれば、
池袋の外に持
つて行かなければならない。これは先ほど
西武さんの言われたように、まだ
免許権を得ておりません。もらうまで
相当の期間がかかると思いますし、あの
池袋駅を横断して向うへ行くのには、かなり行かなければなりませんから、十億以上の金がいみと思います。これ以上の金をわが国の金融市場で
調達することは困難でありますから、ぜひあそこに置かせてもらいたいということを御了承願うように、地元に
お話しております。しかしながら私の方といたしましては、地元の御要求もありますので、初めは付属地までも入れて八千坪の予定でありましたが、五千坪くらいに縮小したい、これは客車運用上の不便はありますが、そのように縮小したいと
考えております。
それから次には本郷三丁目附近でありますが、これはもう少し路下掘りを多くしてくれという
お話でありましたので、初めのうちよりは路下掘りを多くするように技術的に研究しております。またその線路の上の家屋を移転させないで、
工事をしてもらいたいという
お話でありますが、この
工事をやりますにあた
つて、われわれは六十人ばかりの土木
関係の専門の方、学界及び官庁
関係、請負業者等の方に、
地下鉄工事というものは非常にむつかしいものですから、
工事の
方法をいろいろ諮問して伺
つております。この中で、特に本郷の家を移す際において、どうしたらいいだろうかということについての一つの
方法は、その近くの空地に家屋を移す、一つの
方法は、動かして、それからまたもどす、一つの
方法は、家屋をそのままにして押えてやる、この三つの
方法がありますが、この三つの
方法その他について特別
委員会をつく
つて研究していただいております。この
方法が確定いたしましたら、なるべく地元の方に御迷惑のないような
方法をとりたいと思
つております。
それから一番問題になるのは地上線であります。これは地元の御要求は地下でや
つてもらいたいということでありまして、地元の申されることは私もよくわかるのでありますが、これは技術的及び
経済的になかなか困難な問題でありまして、われわれも愼重に考究したのでありますが、全線を地下にいたしますと、本郷三丁目のあたりを百階段ぐらい下げなくちやならない。そうして春日町を地下にして、それから茗荷谷にまわるのでありますが、そういうことをいたしますと百階段ぐらい下げ、後楽園のところを非常に深くしなければならず、
厖大な
資金をこれに要します。それではとてもこの線路はキブ・アツプしなければならない。次に
考えましたのは、春日町をともかく高架で渡
つてそれから行く
方法でありますが、ここから地下にくぐろうとしますと、後楽園のところを非常に深くして、なおあの安藤坂を三十分で下
つて、それから三十分で上らなければならないのであります。三十分の勾配というと、電車区間においても運輸上かなりの安全率を落すことになります。その上両方が三十分の勾配でありますから、集水区域が非常に集まりまして、この安藤坂の低地に向
つて水が集中されるのであります。これは前の
地下鉄のときにも、水のためにはずいぶん悩まされたものでありますが、
工事上こういう工法は技術的に非常に困難な、技術常識に反する主導だというので、われわれは地下線には御迷惑でもできない、こういうふうに
考えております。また
資金的に見ますと、四十八億三千万円のうち四十一億七千万円が実際の
工事費で、三億六千万円は
建設途中の間の利子です。こういう
厖大なものでありまして、この
厖大な
資金を
調達することは、並たいていのことではないのであります。先ほど
地下鉄の
建設に対して、いかに苦心して
工事が
完成されたかという過去の歴史を申し上げたのでありますが、この金を
調達することはなかなかだと思います。それでもともかくこういう
法律を
改正していただけば、今の営業状態から見ますと、これだけの収支はできると思います。こういう
工事の技術士の問題から、戦災復興院の
計画委員会でも、技師の方があすこを地上線となさ
つたと思うのであります。なお地下線にするために
資金の
調達がかりにできたといたしましても、収支
関係から、これはとてもペイしないのであります。ペイしないことよりも、それによ
つて起るのは、
資金が
調達できないということ、もう一つは、前途の
新宿線その他における
地下鉄建設に、非常な暗影を投ずるということであります。簡単にお語いたしますれば、この新線によ
つてわれわれが得ます収入の五八%は、利子に拂われるのであります。現在線は先ほど申しました
通りわずかに千九百五十万円でありますから、他は
交通債券で、やはり借金でありますが、その借金はどのくらいかというと、収入の五%にすぎないのであります。それを今度だけの、いわゆる地上線を使
つたものですら、利子だけで収入の五八%は飛んでしまう。それでも今の
営団がよいからこれでやつとやれるのでありまして、しかも六分の
配当がやつと辛うじてできるのであります。それからもう一つお
考えくださればわかるのは、新線で五億七千ばかりの収入がありますが、その中で利子に三億三千六百万円ばかり沸う、税金に八千万円佛う、それで第一期の
見返り資金の返済が千万円ある。それを沸うとあと一億三千万円しか残りません。今の旧線で収入がありますが、その方でこれに対応するものを見ますと、一億三千万円に対応するものは八億ぐらいあります。キロが倍ありますから、四億と見てよい。四億と一億二千万円とがちようど対応する数字であります。その一億二千万円でも
つてや
つて行こうということは、
営団としては新線が入ることは、ウイスキーに水がさされることであります。だから今までは四億であ
つたものを一億二千万円でやるのですから、かなりの水であります。しかし
営団は営利
会社ではない、これは市民のためにやるのだと私も言い、
営団の従事員もやはりやりましようというわけでや
つておるのです。そういうわけでありますから、ここにたとい
資金が
調達できましても、技術的困難を冒して無理やりにやりましても
——むろん不可能なことではありません。今の文明では不可能なことではないが、非常に困難だ。またできてから後のことにおいても、非常に運転の安全率は低下する。それを無理にやりましても、かりに五億かかると四千万円の利子であります。四千万円の利子は俘かびつこない。すると
預金部から、この新線を
建設するための金を貸してくれるかどうか疑問です。いわんや
民間の金融業者から、そういう
赤字状態において十億以上の金を借りて
資金の
調達ができるかどうか、むずかしいと思う。そういうわけで、文京区の方々のおつしやることは私もよくうなずかれるのでありますが、まことに遺憾でありますが、この地上線を地下線にすることは、技術的、
経済的
見地からがまんを願いたい。しかしながら、先ほど
前田さんからお尋ねの補償の問題も、まだ交渉してはおりませんが、私は御迷惑をかけておるのでありますから、立ちのき及び引沸う方に対する補償には、誠意をも
つて当るつもりであります。それからこの地上になるために起る弊害は、できるだけ除去しなければならぬことについては、私たちも沿線の方のお気持はよくわかりますから、できるだけいたします。そうして沿線の方々に御迷惑をかける点について、何というか筋の通
つた理由で何らかの償いと申しますか、お見舞いと申しますか、そういういい
方法はないか。これはまだ案はできておりませんが、公共事業が、直接に
関係ないものにそういうことをするのは、よほどの理由がないと、われわれの方は半分は役所みたいなものですから、なかなかむずかしいのでありますが、そういう筋の通
つたいい理由はないものかということで、今研究させております。そうして何かと御迷惑をかける点はよく了承しておりますが、私は
地下鉄全般が早くできて、そうしてこの
地下鉄がうまく行けば、次の
新宿線もでき、他の
地下鉄もできる。こう思います。ところがこれが蹉跌いたしますれば、前申した
通りまた長い年月
東京においてはなかなかできるものではないと思う。そうかとい
つて、沿線の方に御迷惑をかけることは、私としても非常に相済まないと思いますが、できるだけのことはいたしたい、こう
考えております。