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1951-03-01 第10回国会 衆議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月一日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 坪内 八郎君 理事 原   彪君       岡村利右衞門君   片岡伊三郎君       黒澤富次郎君    玉置 信一君       畠山 鶴吉君    前田 正男君       滿尾 君亮君    山崎 岩男君       山口シヅエ君    寺崎  覺君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      石田  正君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    壺井 玄剛君         経済安定事務官         (物価庁第三部         長)      川上 為治君  委員外出席者         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 二月二十八日  委員黒澤富次郎辞任につき、その補欠として  中島守利君が議長の指名委員に選任された。 三月一日  委員中島守利君及び川上貫一辞任につき、そ  の補欠として黒澤富次郎君及び江崎一治君が議  長の指名委員に選任された。 二月二十六日  三陸鉄道敷設促進に関する陳情書  (第二六一号)  を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  海事代理士法案内閣提出第三八号)  自動車燃料に関する件     ―――――――――――――
  2. 前田郁

    前田委員長 これより会議開きます。  自動車燃料に関する件につき、滿尾委員より発言を求められております。これを許します。滿尾君。
  3. 滿尾君亮

    滿尾委員 政府は近く行われる関税改訂について、御審議の最中であると承るのでありますが、そのうち原油並びに石油製品に関する関税が、今回設定せられるやに仄聞いたしておるのであります。承るところによりますと綿花等無税である。しかるに国民生活に最も重要な原料品である石油は、なぜ差別待遇を受けるか。国民生活をささえる上において重要な原料品であることについては、まつたく同じ価値を持つと考えられるべき性格のものであると考えるのでありますが、何ゆえに石油製品について関税おかけになろうというお考えであるか。またどの程度関税おかけになるのか。またこれは現在並びに近き将来におけるわが石油需要供給、ことに内外の供給力のバランスから見てどういうことに相なりまするか。ごくアウト・ラインの御説明をお願いしたい。
  4. 石田正

    石田政府委員 御質問技術的なこまかい点については、鉱山局長さん、その他通産省の方がお見えになつておりますので、そちらから御答弁をいただくことにいたしまして、関税率あらましの点について申し上げたいと思います。綿花石油とは同じように原料品であるのに、なぜ石油に課税するかという意味の御質問かと思うのでありますが、この点につきましては、消費という点、それから素材的なものであるという点につきましては、お話通りであろうと思うのであります。ただ国内生産という点から参りますと、綿花につきましてはほとんど生産がないと言つてよろしいと思うのであります。これに反しまして、日本におきましては石油はある程度生産があるわけでございます。そこで石油採掘保護ということでございますが、これも考えなければならぬというふうに考えるわけでございます。それでは一体それが保護に値するか、値せぬかという問題でありますが、詳しいことはあとで御説明願うことといたしまして、大蔵省としても通産省原局と同じような見解をとりまして、石油資源開発に大切であるので、これは関税によつて保護するのが適当であるという結論に達したわけであります。なお関税保護という点だけから申しまして、これを間税だけにしわ寄せすると申しますか、その点からいいますと、相当の率を盛らなければならぬという点があるわけであります。しかしまた他面、これはお話もございましたように、原料的な意味も多分にございますので、あまり高い税率であるというわけにも行かない。そこらを勘案いたしまして、原油、重油につきましては一〇%、製品ガソリンのごときにつきましては二〇%という率を盛つておるわけでございます。なおガソリンの二〇%につきましては、これは原油採掘とはまた別でありまして、できるだけ原油の形で入れて、日本において精製いたしたい、そしてそのときの精製業者立場保護を若干考えて、マージンを考えたい、大体こういう経緯に相なつておる次第でございます。
  5. 滿尾君亮

    滿尾委員 ただいまのお話を伺いまして、さらにお尋ねいたしたいのであります。まずわが国石油資源保護するというお考えから、この関税を設定したのだというような第一の御答弁でありますが、私はこれについて多少疑念を持つております。どういう意味で持つておるかというと、一体わが国石油資源を、どの程度にお考えになつておるか。現在並びに今後多少増加するであろう採掘量をもつてして、何年くらい持つであろうかということについて、大体どういうふうにお考えになつておるか、そのお見通しを伺いたい。もしかりにX年持つ。そのX年というものが十年であるか、二十年であるか知りませんが、二十年後になつてその年限がエクスパイアした時分に、保護関税をおやめになるということは、当然予想せられるのでありますが、そのことはどういうふうにお考えつておるか。将来そういう事情の変更があつたときに、わが国関税率をかえることは、ただちにその面において外国の報復的な処置を招くおそれはないかどうかということを、私お伺いしたい。もう一つ見地は、これはおそらくは帝石保護に堕するのだろうと思う。私の察知するところによむますと、わが国石油会社の九〇%以上は帝国石油関係だろうと見ておるのでありますが、この帝石保護ということも、私は別に本質的に反対する意見はないのであります。それもけつこう一つ考え方ではあります。しかし考えてみると、このあと何年しか持たないような貧弱な石油資源を、この際わが国があわてて掘り盡すような御政策をとられることが、わが国国民経済立場からはたして妥当であるかどうか、私は非常に疑問に思います。わが国国民経済が、国際貸借において非常に支拂い超過になつて、たとえば一円でもいいから海外支拂いを節約しなければならぬような事情であれば、これは相当考えなければならぬと思いまするが、幸か不幸か最近の情勢は、むしろこの調子で行けば受取り超過になるような形勢に向きつつあるのではないかと考える。これは非常な幸運です。かような貿易状態におきましては、重要なわが国石油資源は、将来に留保しておく方がほんとうではないか。むしろ布石が私経済的な見地に立つてむやみに開発して、その貯蔵年限といいますか、早く掘り盡してしまうのを、国家政策としてはこれか抑制した方がいい。将来わが国の行く手にどういう重大な変化が起らぬとも限らぬということを考えてみますと、この貴重なる、また一面においては量の少い石油資源を、あわてて大急ぎで掘り盡すようなばかな政策はないと思う。従つて私はむしろ帝石に、一年間のお前の採掘石油量はこれだけだと制限したらいいと思う。そうして長くわが国資源を保存することこそ、ほんとう政策ではないか。それをあべこべにあなた方は、採算はなるべく合うようにして、なるべくもうかるようにして、もつと掘らして、早く日本石油をなくしてしまうということに努力することは、愚の骨頂だと私は考える。ここら辺につきまして従来の政府のお考え方は、一方的な見地からのみお考えになつているのではないかと、非常に残念に思うのであります。それから石油国民経済的重要性についてのお考えが足りない。ただいま原料であり、消耗品であり、素材であるというような点で、綿花と同一の性格を持つているというお話であるが、そのお話は少し認識不足ではないかと思う。私ども原油並びに石油製品というものは、動力の源泉として考えている。なるほど繊維製品というものは大事なもので、人間は裸でいるわけにいかない。従つて繊維製品は絶対に生活必要品に違いないのでありますが、しかし繊維製品というものは、一面から言えば、つまり純粋な消耗的性格を持つている。もちろん貿易上における一つの重要なウエートはあります。しかし国民消費的角度から言えば、これは結局消耗品にすぎない。ところが石油は單なる消耗品ではない。石油を消耗するということは、それによつて仕事をするのであつて生産事業の根底になつている。つまり自動車や船の動力源としてわれわれは考えている。世の中には不幸にして、電力石油石炭と、この三つしか動力源はない。だから石油を單なる消耗品というような意識をもつて考えになることは、非常な認識不足でありまして、私は石炭電力石油、この三つはわが国民経済ほんとうに動かす動力の源であつて動力に対する認識なくして国民経済政策は成り立ち得ないと思う。これらの点につきまして、政府の方は非常な認識の錯誤に陷つておられるきらいがあると思う。かような意味で、ぜひ御反省をいただきたいと考える次第であります。  なお精製品輸入に関しまして、一概に保護関税が悪いとは申しませんが、少くとも原油については、絶対に無税にしなければならぬ。精製品につきましては、お話通りわが国製油事業というものは、国民経済一つの柱になつていると思いますから、これにある程度の考慮を拂われることは必要であると一応考える。従つて精製品輸入ということは、わが国立場としてあまりやりたくない。できれば原油輸入して、わが国民の頭と労力によつて、これを国内製品化することが望ましいと思いますから、私もその面につきましては、あながち全面的に御当局のお考え間違つているとのみ申しません。その点については、相当彈力を持つて考えなければなりませんが、少くとも原油については、ただいまの御答弁では不満に感ずる次第でありますから、鉱山局長なり安本の方から、需給数字につきまして、簡單な御答弁をいただきたい。
  6. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいま石油資源政策について御意見を拜聽したのでありますが、私ども実は若干異なつ見解を持つておるわけであります。と申しますのは、日本石油は昔から少い少いというように、一口にいわれておるのであります。世界的に石油資源というものは非常に注目されているのでありますが、終戰後イギリスアメリカ技術者もずいぶん参りまして、日本資源についても化学的にいろいろ検討が行われたのであります。ただいままで大体日本石油資源に対する価値として認められておりますものは、資源理蔵量は約千四百万キロないし千六百万キロというのが、專門家の判断というふうに私ども了解しているわけであります。ところで今お話の中に、ごくわずかの期間でなくなるものは、温存しておいた方がよいではないかというようなお考えがあつたのであります。私どもは、千四百万キロというのは相当数字でありますし、これはほかの資源の例から申しましても、一応今推定されるものはその程度でございますが、まだまだ技術進歩調査進歩ということから、発展性があるというふうに考えておるわけでありまして、これはほかの金属類の歴史の推移が、そういうことを明らかに教えているのであります。そういたしますと、そういう資源開発のもとになりまする企業を、一本立ちできる完全なものに考えたい。そうして今考えられておる千四百万キロ、それがさらにふえて行き、また生産量も、今の国内需要全部は満し得ないにしても、国内需要に対しまする供給力をもつと高めるということを考えることが、日本国民経済上健全な政策ではないか、私はそういうふうに思つておるわけであります。先ほどもお話がございましたように、われわれは消費財として考えておるわけではありませんので、動力源として重要でありますからこそ、石油産業を健全に育てることが、賢明な政策じやないかと考えておるわけであります。それでは石油産業をどの辺まで育てようと考えておるかということであります。私ども一応ただいま目標といたしておりますところは、年間生産規模五十万キロで、確定鉱量をその約十五年分といたしまして、七百五十万キロの生産考えておるわけであります。実は終戰後アメリカイギリス技術者に、日本石油鉱業発展のために、親切な指導をしてもらつたわけであります。世界的にも相当有名な技術者をわざわざよこして、戰争以来立ち遅れておりました石油鉱業に関する資源の探査なり、あるいは開発技術指導ということが、相当熱心に行われたわけでありまして、その後非常に順調な経過をたどつておるわけであります。終戰の年はともかくとして、昭和二十一年当時は、生産におきまして十九万キロ、確定埋蔵量百五十万キロというレベルにすぎなかつたのでありますが、爾来順調に成熟いたしまして、昨年におきましては生産は三十二万キロ、確定埋蔵量が約五百八十万キロというレベルまで回復しておるわけであります。目ぼしいものといたしまして、御承知のように秋田県の八橋油田も活溌に活動するように相なつておるわけであります。それからただいま非常に嘱目されておるものとして、北海道の天北地区における石油資源開発ということがあるわけであります。さらに地質的な問題といたしまして、まだ確率性は増しておりませんが、関東地区石油資源地帶として、地質構造一つの望みを嘱する地帶であるといわれております。今申し上げました関東地区云々ということは、推定埋蔵量には全然入つていない数字でございますが、さような数字から申しまして、将来性も相当あるし、また終戰後健全に育つて来ておるし、われわれが当面の目標として考えておりまする五十万キロ、十五箇年の確定埋蔵量というところに達する時期も、そう遠くないと私ども考えておるわけであります。そこに至る過渡期においては、政府におきまして保護を與えることが、石油産業それ自体を健全に育てて一本立ちし得ることになりますと同時に、それが結果的には、日本資源がもつと安定した基礎のもとに開発されるということにもなり、それが間接需要者の方面にも利益を及ぼすことになると私どもは見ております。それが石油鉱業の将来性なり、われわれがどういう目標で育てようとしているかのあらましであります。  なおお話のございました需給関係等は、最近の需給状況で申しますると、原油としまして、約二百万キロ程度のものが輸入されておるわけでございます。それに対して三十二万キロというものは、一割五分くらいのものにしか当らぬわけでありまして、その点から言いますと、供給量に対する需給度というものはそう高くはないということが、お話通り言えるかと思うのであります。しかし五十万キロになれば一本立ちし得、それからさらにひとりで歩けて、さらにレベルが上り得る可能性を持つている産業であることに、御注目をお願いしたいと私どもは思うわけであります。そうしてさらにまた石油の国際的の特殊性から考えまして、石油産業がその国にあるか、いなかということが、その国の石油取得につきまして、これは数字に表現し得ないことでございますが、非常に目に見えない利益をもたらす。かりに日本石油資源というものがないと考えました場合に、石油資本の世界的な特殊性から見まして、おそらく高い油を売りつけられる危險が多いということも、あるいは言えるのではないかというふうに私ども見ておるわけであります。そういう点から考えましても、一本立ちできる石油産業日本にあるということが、はかり知れない利益日本国民経済全体にもたらすということを、私ども考えておるわけでございます。さらに戰争中における石油のきゆうくつな状況も、日本は非常に体験したのでありますが、あのときの数字なり、将来のことを考えまして、軍需品としての石油特殊性軍需品中の軍需品という特殊性から考えまして、万一にも石油取得等に困難するということも、これは想像し得ないわけではないのであります。そういうことを考えました場合に、どう考えても日本石油としては、おそらく年間百万キロくらいのものはいるので、その際における四十万なり五十万という数字は、軽視できない大きな比重を占めるというふうに考えておるわけであります。それらの事情から考えまして、今国として少し目をかけますならば、一本立ちできる可能性を持つており、また資源的にそれによつて伸び得る価値を持つておる産業は、現下の状況として十分保護に値する産業ではないか、私どもさような考えのもとに、原油関税一割という政府原案としておきめ願つたような次第でございます。  なおお尋ねのありました中に、消費の方に対して、精製の方はよろしいが、原油の方はいかぬというような御意見があつたのでございますが、これは私ども消費者立場から見ますならば、どちらかと申しますれば、製品関税の方が直接的に響くわけであります。原油関税がつきますれば、もちろんそれが製品に及ぶことは確かでございますが、消費者立場から見ました場合には、製品関税の方がむしろ手取り早く響くべき関税であるというふうにも私ども考えるわけでありまして、製品関税の方はいいと思うが、原油の方はけしからぬというような御趣旨お話つたかのように拜聽したわけでございますが。私どもはその点は消費者立場から考えました場合には、同じ——というよりも、むしろ原油の方が間接になるというくらいに考えておることを、つけ加えて御答弁申し上げます。
  7. 滿尾君亮

    滿尾委員 関税改訂についての見解をひとつ……。
  8. 徳永久次

    徳永政府委員 関税改訂と申しますと、先になつて資源がなくなつたら、関税をやめるかどうかというようなお話つたと記憶いたしますが、そういう御趣旨は、私ども先ほど来申し上げましたように、資源はもつと有望なものでございますので、なくなつたからやめる——なくなつた場合に、もちろんやめるべきであろうと思いますが、そういうことはわれわれ現在予想しておりません。ただ現実問題といたしまして、それよりもむしろ一本立ちできるまでの保護ということを考えておりますので、一本立ちする段階に行きましたならば、この関税はいらないというふうに考えておるわけであります。従つてその点からも、そう十年も三十年も保護関税が必要があるとは、ただいまのところ私どもは認めてないわけであります。  それからなおお尋ねの中に、今原油関税を課しておつたならば、日本資源がなくなつたときに、報復関税がありはしないかというような御意見がございましたが、私ども日本石油精製業と外資とのつながりというふうなものから見ましても、またその保護というものが十分に合理的な理由を持つております限りにおきまして、さようなことは一、二そういう御意見を民間の人から聞いたことはありますが、そういう気配、懸念というものは、私ども毛頭感じておりません。
  9. 滿尾君亮

    滿尾委員 ただいまの御説明で、大体当局のお考えはわかつたのでありますが、わが国石油生産がゼロになつた場合に、石油取得について非常に困難がある。だから、ある程度生産があることは非常に強みであるということはよく了承いたしました。私もさようなこともあるかと思うのであります。なお私が原油関税はいかぬといつたような、原油のことをやかましく私の今申し上げている立場は、決して消費者立場だけ考え言つてるのじやない。全体を総合してこの立場考えておりますから、單なる消費者代表としての意見としてお聞きになるのは適当でない。それからわが国石油資源をかわいがつてやる、その採掘業者を健全な基礎に置きたいという気持につきましては、私も了承することで、それについては毛頭異存はない。お互いにこれは方法論の問題である。しからばこの保護関税をかけることだけが、この業者保護する唯一の方法であるかどうか。他にこれを保護する方法はないものであろうか。なぜ保護関税の線に政府は決定的に追い込まれたのであるか、この事情を承りたい。  それからまた帝石という会社の現在の実情から見まして、政府がかように保護しなければ帝石が成り立つて行かないのかどうか、その点の分析をお願いいたしたい。われわれの了承しているところでは、帝石は、株こそ安いが、りつぱに現在自立して行ける会社だと思つている。この上になぜ一体国家は、このたつた一社の会社を、かように手厚く保護しなければならぬのか、この点について非常に疑問を持つのでありますか、どの程度保護を與えなければ、会社が成り立たぬという御認識を持つておるのであるか、これをお漏らし願いたい。また保護する方法が、関税でなくちやならぬのだということが、われわれには非常に疑問に感ぜられる。また私の考えでは、先ほど申し上げたようなぐあいで、どうしてもこの重要な資源は、将来にとつておいた方がよいように思う。もちろん急速の必要が起つて、さあ戰争になつた、石油がない、あわてて国内開発しなければならぬという点において、少しあわを食う点がありますけれども、それは国家費用負担においてでも、資源調査を十分にしておかれて、いつでも拡充できる態勢を整えておけば、むしろこの際安い外国原油を入れて、日本石油は将来の急に備えておく方がよほど得だ、これがほんとう国策的見地である。これを合せて五十万キロ掘つて——なるほど埋蔵量というものは、学者の研究によつて漸次見直されて行く、そういう傾向のあることは私もよく了承いたします。しかしいずれにしても、かりに千六百万キロが五千万キロになつたところで、日本石油資源は義理にも豊富とは言われないと私は思う。今後十年後ぐらいの石油わが国内需要をどういうふうに見ておられるのか。従つて鉱山局長の言われた五十万キロの生産をあげたときに、その五十万キロのわが石油事業相対的比率をどんなふうに踏んでおられるか、私はその点について非常に疑問を持つのでありますが、これらの諸点についての御答弁をお願いしたい。
  10. 石田正

    石田政府委員 御質問の前段の方の、なぜ関税にやるのかという点について、私の方から御説明申し上げます。これは申すまでもないことでございますが、関税といいますのは、ひとり日本の国だけの問題ではございませんで、対外関係を伴うものでございます。いろいろな見方がございますけれども日本という国は国際経済の中へ入りまして、国際経済をだんだん振興するということによつて行かなければならぬということが、まず考えられるかと思うのであります。そこで国際経済をまつたく自由なものにしてしまうのに対しまして、国内産業保護という点からしまして、一この調整弁を設けるというか、そういう意味において関税というものが考えらる。従いましてこの関税は、ひとり日本の方から見てよくわかるばかりでなく、外国から見ましてもよくわかるということを、われわれはまず第一に考えるのであります。それからまた関税というものは、相当長い期間考えまして、率を考えなければならぬのでありまして、お互い外国商社日本商社とが取引するのでありまして、始終かわつて来るということでは困ります。ある期間考えて事を考えなければならぬ性質のものであろうかと考えるのであります。そこで今の関税率は、一体どのくらいが適当であろうかという問題になりますと、そのときどきでいろいろ事情が違いますが、大体大局的な平常状態考えますると、日本石油採掘状況等から考えまして、アメリカその他石油の主産国の生産状況と比較いたしました場合に、相当開きがあるということが前提とされるのであります。この点につきましては、いろいろ見解もございます、状況も違いましようが、大体二五%とか三〇%という開きを設けてもらわなければ、日本石油資源の育成はできないという見方もあるわけであります。しかしこれに対しましては、われわれの方といたしましては、その生産の方と、また需要の方とをいろいろ考えまして、生産の方から見ましていかに二五%、三〇%が適当であつても、そういうわけにも行かぬということで、一〇%の関税率というものは、決して高い関税率ではございませんが、最低に近い率でやつていただきたい。またそれで足りない分は、現にやつておるのでありまするが、この新しい試掘その他によりまして、できるだけ補うことによりまして、経過いたしたい。なおこれも先ほど鉱山局長お話がありましたようなぐあいに、どうしても二五%とか、三〇%というマージンが長く続くということならば、考えなければならぬのでありますが、幸いにして通産省がお考えになつておりますような、増産計画が遂行せられるならば、そのマージンが減つて行くということも考えられるので、大蔵省といたしましては、それに大いに期待いたしておる次第でございます。なお国内のいろいろな施策によつて、助成しておればいいではないかという点もございますが、日本にとりましては、そういう見方も成り立つわけでありますが、御承知のようにGAII、ITOの思想からいいますと、なるたけ国内産業保護というものは、隠れたる補助金によらないで、なるたけ関税にしわ寄せをやつておけというような潮流もあるわけでございますが、それらのことを考えまして、大蔵省といたしましては一〇%という最低率で、しかもなるべく早くこの補助金の方はまずなくすようにして、さらに関税の方もなくすようにやりたい。そのためには、やはりこの段階において相当保護をしておくことが必要ではないかと考えておる次第でございます。
  11. 徳永久次

    徳永政府委員 今大蔵省から御答弁がございましたように、保護方法のよしあしにつきましては、私ども関税というものは、これは消費に及ぼす影響ということも考えまして、ある限度にとどめなければいけませんが、そういう意味で一割という数字が出たわけであります。政策方法といたしましては、一つの健全な政策であるというふうに見ておるわけであります。あわせて試掘奨励金というようなやり方でやりたいと思います。先ほどさらに将来の需要等を、どの程度に見ておるかというお尋ねがあつたわけであります。これは現在統制になつておりまするので、正確な数字が把握できないわけでありますが、私どもが一応の目標考えておりまする数字は、年間消費レベルというものを三百五十万、あるいはそれより少し上というふうに持つて行きたい。そうしてこれは日本の国力にも影響はありますが、それだけのものを全部買うだけの為替資金があるかどうかということも、先になれば問題になろうかと思いますけれども、今では消費者にもたいへんきゆうくつな思いをかけておりますし、もつとふやしたいという、そのふやす目標を、せめてそれぐらいまで持つ行きたいというふうに考えて、努力しておるわけであります。ただいま原油精製工場におきまする処理量は、太平洋岸におきまして日産三万三千バーレル程度に達しておるわけであります。せめてこれを近い将来に四万か少し上というくらいまでにはしたいということで、関係方面にもしばしば懇請しておるわけであります。ある程度どもとして希望を持ち得るような推移、経過をたどりつつあるわけであります。まだ四万でも不十分でありまして、四万から四万五千、あるいはそれ以上というぐらいになりますれば、消費者の需要にほとんど自由にこたえ得るというふうになりはしないかと思います。それをわれわれの目標として努力いたしておるわけであります。
  12. 滿尾君亮

    滿尾委員 ただいまの政府委員答弁では、私がなぜこの際日本の製油業者保護するにあたつて関税方法へ逃げ込まねばならぬかということについて、ちつとも納得ができない。ただお話の筋で、その方が国際的に通りがよいということだけはよくわかりました。それ以外の点は私はちつとも納得しない。考えてみますと、なぜ一体帝石がこれほど手厚い保護を受けなければならない現在の実情にあるかということについても、ちつともお触れにならない。私の考えるところでは、今度の関税は従価税になつております。しかるに近き将来のことを考えてみますと、タンカーの運賃はうんと上る、従つて輸入原油の原価というものは、ここしばらくの間はじやんじやん上るのではないかと実は思つておるわけであります。これは国際的な形勢から見て必至の情勢である。従つて原油の値段というものはしばしば御改訂になつて、お上げになるだろうということは必至だと思う。そのたびに、従価税は一〇%でありまするが、じやんじやん上る。ところが帝石国内生産するのに、太平洋あるいはインド洋のタンカーの運賃が上つたところで、何ら関係がないのに、どんどん手厚い保護の率が増して行く、こういうばかなことが一体あろうか。ことに九対一の消費の率でありますが、これは九を犠牲にして一を手厚くする。私は直接帝石ほんとうに困つているなら、その病源に対してメスを加えて、国家保護して行つたらよい、日本のあらゆる生産コストを高くするようなばかな経済政策はない、かように考える。由来わが国の官僚は、非常な秀才をもつて構成せられているのに、きようのお話を聞いていると、きわめて簡單な算術をとり違えているようにしか拜聽できないので、実に奇々怪々だと私は考える。これは非常におかしな現象です。一体タンカー運賃の上るということを、あなた方は御考慮になつておられて、この一〇%をおきめになつたか、この帝石に対する保護というものは、一体どの程度までやれば滿足するのであるか、その目途というものを一ぺんお示しを願いたい。私は帝石保護することが悪いとは決して考えておらぬ。日本の採油業者も、これはある程度めんどうを見るべきだと思う。ことに新しい資源開発なんかについては、国家はじやんじやん国家の費用で研究して、帝石に知らしてやればけつこうだとさえ思つている。しかるに今回のこの御措置によつて、近き将来にわれわれが予見するところの、わが国民経済に及ぼす影響というものはたいへんなものである。これはきわめて簡單な算術を無視したお話で、この程度にじやんじやん原油が上るのに、簡單にテン・パーセントをやつてしまう。国内の多少の諸物価の高騰はございましようけれども、これでは帝石はあまり保護され過ぎはしないか、かようなことを心配しておるのでありますが、御説明いただきたい。
  13. 石田正

    石田政府委員 従価税をどうして採用するかという点でございますが、これは現在の関税定率というものからお話申し上げた方がいいかと思うのであります。実は現在の関税定率法というものは……。
  14. 滿尾君亮

    滿尾委員 ちよつとはき違えておるようでありますが、私の御質問申し上げる要点はそうではない。関税の御説明はいただかぬでも、現在の見通しとして、タンカーの運賃はどんどん上りますよ。従つて原油の値段を上げざるを得ないじやありませんか。そうするとテン・パーセントの関税の絶対額が大きくなる。それだけに帝石保護というものは非常に厚くなる。それまで見通してテン・パーセントをおきめになりましたか、こういうことを伺つておる。
  15. 徳永久次

    徳永政府委員 お答え申し上げます。昨年の暮れあたりから、タンカー運賃が非常にぐんぐん上つて来ておるということは、私どもも承知いたしておることであります。しかしながらこれがどの程度続くかということは、非常に私ども疑問を持つておるわけであります。ことに石油タンカーにつきましては、国際的に自由に手に入るタンカーは、量も限られておるものですから、その関係からよけいに上る事情もあるようでございます。一方過去の数字考えてみました場合に、一昨々年の五月でございましたか、一年半くらいの間に、石油の価格は非常に変化しておるわけであります。最初のころは九千三百円くらいいたしておつたのですが、それから六千四、五百円にドロツプしまして、その数字がずつと昨年の暮れごろまで続いておつた。それから暮れになりまして、タンカーの値上りによつて輸入価格がぐつと上つて来たという経過をたどつておるわけであります。  一方関税考えます場合には、目先の数字ということを考えるわけにも参りませんので、このタンカーの値上りによる輸入原油価格の高い條件というものが、今後三年なり五年なり続くということがはつきり言えるものでしたら、今の高い価格を頭に置いて、個々の適否ということを考えられるわけでありますが、これは私として予想もつかないことでございます。しかしきわめて常識的に考えまして、既往の一年半の間において、非常な変化があつたということも考えまして、関税が若干の継続性を持つたものということのもとに、目先としてはあるいは問題があるかもしれませんが、目先の一時的な変化というものは、一応考慮外に置かざるを得ないのじやないかというふうに考えておるわけであります。
  16. 滿尾君亮

    滿尾委員 政府委員の御答弁は、いずれも非常に隔靴掻痒の感がありまして、肯綮に触れない。私は非常に不満足の意を表せざるを得ないのを残念に思います。逆に申せば、帝石がなぜ補助金をもらわなければやつて行けないかということを、今度はお伺いしたい。私どもの了承しておるところでは、帝石はそんなに悪い会社ではなく、現在においてもちやんとやつて行ける。それにさらにどろぼうに追銭と言つては語弊があるが、非常に厚いものをやらなければならぬということもわからない。それから関税の根本理念につきまして、大蔵省の政府委員の方のお考えは、私は甘いと思う。国民経済をささえる重要な原料につきましては、わが国民経済性格からいたしまして、どうしてもこれは無税で入れるのがあたりまえです。鉄鉱石であるとか、綿とか、ゴムあるいは石油、これらの数個の大事な原料品は、最も安く日本に供給するのが必要である。従つて無税で入れるのは、私は国民の常識だと思う。この差引勘定を大きく取違えて、言を左右にせられて糊塗せられることは、私には国民の耳目をだまそうとしておられるとしか思えない。安本はわが国民経済の大綱を察知しておられるのでありますが、かように見やすい算術に対して安本もまた御賛成になつておられるのか、一ぺんお聞きしておきたい。
  17. 川上為治

    川上政府委員 私、安本の総合的なことをやつておりませんので、ただ物価庁の第三部長として御説明申し上げます。  いろいろお話がありましたように、最近におきましてはタンカーの運賃も相当つておりますし、また原油のF ○Bにおきましても、若干でありますが上つておりまして、昨年の十二月十三日に改訂されました石油の価格は早晩、少くとも四月あるいは五月には改訂されなければならぬような状態になつております。従つてどもとしましては、この際さらに上る要素がありますことを、非常に心配しておるわけでありまして、この際関税をかけることは、非常に困つたものであるというふうに、私は物価庁として考えております。しかしながら国際的ないろいろの面から、どうしてもかけなければらなぬということでありますれば、これはやむを得ないのでありまして、その際当然その分だけは、現在の価格に対して引上げをしなければならぬということは、明らかであると私の方では考えております。
  18. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 私は滿尾委員の御質問に関連いたしまして、ごく簡單に当局の所見を伺つておきたいと思います。  先ほど徳永政府委員の御答弁の中に、確定埋蔵量五百八十万キロとして、将来五十万キロの生産目標のもとに、国策として国内製油の面に力を入れるという御答弁があり、北海道天北地帶においても、石油採掘の仕事をしておるというお話のように承つたのでございます。私の仄聞するところによりますと、天北の天塩町に目下掘鑿中のものは、四千メーターを目ざして掘進中のところ、四千メーターのところで石油が出なくなつたということで、これが停止された。さらに八百メーターばかり掘らなければ、目標地帶に達せないということで、非常に騒いでおるというようなことを聞いたのでありますが、この天北の石油掘鑿の将来の見通しをお伺いいたしたい。同時にまた今日政府が力を入れておりまする日本の採油の現況につきまして、次のデーターを適当の機会に出していただきたい。それは今日日本のどこどこにおいて石油採掘の事業を、何という会社によつてやらしておるか、帝石のほかにもまだあつたはずでございます。その採油業に対しての国の助成はどういう程度になつておりますか。こういう面について詳細なデーターを出していただくよう希望いたしておきます。
  19. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいまお尋ねのございました北海道の天北地区の採油試掘の現況でございます。今お尋ねの中に四千メーターを目標にしたというようなお話がございましたが、数字が若干違つておりまして、二千二、三百メーターを目標にいたしたのであります。一年半以上かかりまして、実は最近ほぼ目標地点まで行つたのであります。目標地点まで行きましたが、油兆と申しまして、油の出る気配はございますが、自噴して出るというだけの有望な成果を收めていないわけでございます。このために一億数千万円の金を要したわけでございますが、遺憾ながら一口で申しますれば、失敗に終つたというふうに見ざるを得ないかと思うわけでございます。しかしながらこの試掘と申しますのは、非常に危險の多い仕事でございまして、アメリカにおきましての記録によりましても、試掘井で当りまする率は、七本に一本というのがこれまでの統計で示しておるわけでございます。一方北海道の天北地区におきまする石油資源状況につきましては、地質調査上は非常に有望視されておるわけでございまして、私どもこれに一億数千万円ほどの金をかけた事業ではありましたが、これが失敗に終つたからといつて、希望を失うということはいたしておるわけではありません。また会社も、今掘りました井戸の北側の方に、さらに二本ぐらいおろしてみたいという計画を持つておるわけでございます。どの地点を選びますか、これは日本石油学界の権威者を集めまして、研究いたしてもらうつもりでおりますが、今後の試掘の継続によりまして、私どもとしてはまだ希望を十分につないでおるということだけを申し上げて、御了承いただきたいと思うのであります。  それから石油鉱業に対しまする奬励助成なり、生産状況なりの資料の御注文がありますが、これは後刻印刷物にいたしまして、お届けいたしたいと思います。
  20. 滿尾君亮

    滿尾委員 いろいろ質疑を重ねまして、大体盡きたのでありますが、最後に一言、帝石の方は補助金で完全に保護せられるので、その結果を勘案せられまして、帝石の方の事情をどういうふうにお考えになつておるか、この点についてはまだ一言も御答弁がない。これほどの手厚い保護をやつておきながら、政府はわずかに一〇%じやないかとおつしやられますけれども、私どもの見るところでは、この世界の経済情勢からして、運賃だけでもうんと上る。おそらく原油の価格というものも、外国において若干上る傾向に向つておる。従つて運賃も上り、原油も上るから、輸入原油というものが上る。従つて国内原油というものもそれだけ上る。その影響は全部帝石に及ぶ、かような見通しを私は持つておる。ところが政府委員は、どうもその点はわからぬじやないかという御答弁である。いずれにしても帝石というものは、かようにまで厚く保護してやらなければ、会社が成り立たぬのであるかどうか。その点について帝石の現状、近き将来について、どういうふうにお考えになつておるか、お話を伺いたい。
  21. 徳永久次

    徳永政府委員 帝石の現在の原油の販売価格は、ただいまマル公がございまして、八千四百五十円で押えられているわけでございます。そのもとにおきまして、どの程度保護を受け、そうしてまた経営上どの程度状況に相なつておるかということでありますが、ごくわかりやすく申しますと、昨年度、本年度の石油に対しまする国の地質調査及び試堀の助成金というものは、全体で一億三千万円ほどであります。このうち天然ガス二千万円ほど行つております。従いまして石油関係に行きましたものは、一億千万円ほど行つておるわけです。この一億一千万円のうち、帝石へいかほど行つているかという数字は、まだ全般が完了いたしておりませんので、はつきりした数字はわかりませんが、生産の割合から見まして、一億見当行くであろうということは、大ざつぱに推測し得るわけであります。それから実は帝石に対しまする助成は、それだけではないのでございまして、現在これは臨時過渡期の措置でございますが、輸入の重油のうち、アメリカの軍の油として非常に安いものが入つて参りますので、それは本質的にはほかの重油と同じ使用価値のあるものでございますが、値段が非常に安いというものでございます。それをほかの重油並に売らしてもらうということによりまして、差益が相当出て参ります。その差益を国産原油生産者へわけるということに相なつているのであります。これは政府として長続きし得る本質的な運命を持つておりませんから、目先そういうものがございましたので、助成の一環としてやつてもらつておるわけであります。その金額が、大ざつぱに申しまして、正確な数字は記憶しておりませんが、ほぼ四億円くらいになろう。これは全石油生産者に行きますが、先ほどの試掘奬励金のときと同じでありまして、大部分が帝石に行くということが、数字的な関係から想像できるわけであります。そうしますと、かれこれ約五億円くらいのものが、特別の助成の形で保護されているということが言えると思います。ところで経営面から見ました場合に、どういう收支バランスを示しているかということでありますが、昨年の九月か十月かの決算に出ております数字は、表面十億円の資本金に対しまして、二億四千万円の利益を計上いたしております。その数字と国の助成のバランスを考えていただきますならば、二億四千万円、二割四分の利益率ということであります。一見世間並の利益率を上げているじやないかというふうにも言えるかと思うわけでありますが、しかしその背後に見のがしてならないのは、国の探鉱、試掘奬励金が一億見当行き、それから価格調整によりまして約四億が行つている。それによつてその程度しか利益を上げ得ない状況にあるということが一つ、それからもう一つ注目していただきたい問題は、石油がまだ一本立ちしていないという状況は、経営面におきまする経費のうちの、探鉱、試掘にまわし得ている仕事の量のバランスであります。これは石油に限らず、地下資源開発産業の特有のものでありますが、産業の性質といたしまして、ほかの製造工業でありますれば、原料を食わして、それを加工するというのが仕事でございます。地下産業は、常につかんでいるものを食つて行く。食うだけの仕事をしておりますれば、山はそれで運命が縮んでしまうわけでありますから、常に次の食う材料を探さなければならないという、ほかの産業にない特殊の運命を必然的に持つているわけであります。それに投じまする総経費の中における経費の割合の理想的な形というものは、どの程度に見るかということでございますが、アメリカ等の産業事情から見まして、その割合を全体の五割というふうに見るのが、健全な目標と見られておるわけであります。ところが帝石の前期の決算に表われておりまする仕事ぶりというものを、過去のものから比べますれば、地質調査及び試掘に投じまする金というものは漸増をいたしておりまするが、ただいまのところ到達しておる目標は、わずかに三割でございます。五割の理想に対して、三割程度しか行つていないというのが現状でございます。せめてこれを四割くらいにはしたいというのを、目先の目標にいたしておるわけでございます。それも先ほど申しましたことく、国からの試掘奬励金ももらい、さらに間接に価格プールによりまする助成の恩惠を受けても、三割程度しかそういう積極面の資源探査の面に金をまわし得ない実情にあるわけであります。これは先ほどもたまたま御質問ございましたように、天北なら天北の探査を見ましても、結局一本井戸を掘りますだけに、結果的に見ますれば、帝石自身としては一億二千万円に捨て金になつたわけであります。そういう非常に危險の高い、捨て金を次々と投じて行かなければ、仕事の永続性を保ち得ないという産業であります。私の最初申し上げました五十万キロ・ベースで、十五箇年の確定埋蔵量をつかむということは、そのレベルまで来ました場合には、価格面におきまして国際的な競争力もでき得るであろうし、その中から健全経営として、資源開発の方にまわし得る金も出て来るようになるであろうということをいわれておるわけです。採油だけがひとりふとるわけではありませんが、採油がふとりますれば、採油の面で実際の生産がふえますれば、実際の掘る方の面は経費がそうふえなくて、規模が大きくなればもうけがよけいになるわけです。その余力を開発の方にまわし得る。それによつて今の三割というものがだんだん上つて行く。それが石油鉱業——これはひとり石油鉱業に限りませんが、鉱業の特殊性でございます。現状はそれほどの政府の手厚い保護があるにもかかわらず、まだ一本立ちできる段階に至つておらないというのが現状でございます。
  22. 滿尾君亮

    滿尾委員 帝石の御説明を伺いましたが、ただいまの御説明のうちで、帝石の決算がもし一年決算であれば、御説明通りでありまするが、普通の会社並に半期決算であれば、二割四分の利益率は、常識に従えば四割八分の利益になる。半期に二割四分の利益をあげれば、年四割八分の利益と見なければならないと思うのであります。お話によりますと、帝石は試掘に対して一億円の助成金をもらい、価格のプールの面で四億円もらつておる。現にそういう助成の方法があるなら、何もこれは関税をかける必要はない。帝石に対して、石油資源開発の使命にかんがみて、国家がこれを助成することは、何らだれにもはばかるところはない。正に堂々として政府はお出しになつたらよかろう。関税の方式によると、一対九の国民経済においては、いたずらにコストを高められなければならない。その犠牲の方が大きい。差引勘定でどうしてもそろばんの合わないところが出て来る。お役人のそろばんではどうしてこれがつじつまが合うのか、私にはどうしても理解できない。従つてここでいくら論議を重ねましても、これはのれんに腕押しで、まことに要領を得ないので、はなはだ残念でありまするが、本日はこれで私の質問を打切りまして、以上の質疑によつて明瞭になりましたところに基き、私は一つの動議を委員の皆さんにお諮り申し上げたいと思います。  ただいま政府委員と私との応答によりまして、大体石油関税並びにわが国の製油業の現況というものが明らかになりましたので、私はこの際、原油並びに石油製品は、動力源として、機械も動かしますが、当運輸委員会は船と自動車という面からいたしまして、最も縁故が深いのでありまて、この石油関税並びに将来の価格の影響というものを、まつたく無視することはできませんから、この問題につきましてひとつ希望的決議をいたしたいということを、皆さんにお諮り申し上げたいのであります。案を一応読んでみます。  原油並びに石油製品に対する輸入関税については、同品が主要なる動力源一つとして、わが国の経済全般に対し甚大な影響を及ぼす関係と、同品の需要に対する内外供給の実勢が一対九の比なるにかんがみ、綿花その他の原料品と同じく無税とすることが適切と認められるから、政府においてはこれについて愼重に考慮せられんことを望む。
  23. 前田郁

    前田委員長 ただいまの滿尾君の動議に御異議はございませんか。
  24. 原彪

    ○原(彪)委員 ただいまのは決議でありますか。政府に対する申入れでありますか。
  25. 滿尾君亮

    滿尾委員 内容は当委員会の希望を表明したものでありますが、形式は決議としていいのじやないか。その点につきまして、字句も相当愼重を期して考えたつもりであります。
  26. 原彪

    ○原(彪)委員 滿尾委員の御趣旨はごもつともで、私も大賛成でありまするけれども、当委員会においてたびたび決議がなされるということにつきまして、たとえばこの前の国鉄の機構改革に対する決議についても、いまだその実行を見ないような現状であります。もしこの決議がされまして、実行されない場合におきましては、当委員会の権威にもかかわることでございますので、私はその決議を重大視しておるわけです。でございますから、決議される以上は、これはもちろん委員長にも責任がありますし、当委員全部の共同責任になりますので、決議なら決議で、実行し得るような、迫力のあるものにしていただきたい、こういうのが私の趣旨です。滿尾委員の御趣旨には賛成でありますが、その点委員長においておはからい願いたいと思います。
  27. 滿尾君亮

    滿尾委員 今、原委員からお言葉がありましたが、これは内容を読んでいただけば、そうかたく申しておりませんし、委員会としては、そういう縁の深い原料品でありますから、これを黙視しておるわけに行かない。従つてこれに対して委員会はこう考えるということを——実体においては申入れは申入れでありますが、皆さんの総意で申入れるというので、決議というわくを頂戴するのが適当だと私は思う。こうせよという決議でないのでありまして、十分考慮してくれという意味なのでありますから、おさしつかえはないように思うのでございます。また私個人の考えでは、当委員会の御賛成をいただきますならば、私は参議院の運輸委員会においても、同調していただきたいということを、一応お諮りしてみたいという気持を持つているわけです。これは運輸委員会としては、参議院、衆議院ともにまことに重大な問題でございますから、無関心たることを得ない。だからどうしてもこういう意思表示をいたしたい、こういう意味であります。
  28. 前田郁

    前田委員長 皆さんにお諮りいたしたいと思いますが、ただいまの滿尾君の動議に対して、その趣旨に対しては御賛成のようでございますが、ただ決議にするか、希望申入れにするかという点だけの差異のようですが、どうでしよう。一応ここで希望の申入れをするということにしていただきたいて、政府がこれに対していろいろ御研究になると思いますから、その上でまたあらためてやるということにしたらどうでしようか。
  29. 滿尾君亮

    滿尾委員 それはどうも腰の弱いことになりましたな。ぜひ決議にしてくださいよ。これは遠慮することはないでしよう。
  30. 前田郁

    前田委員長 一応決議にする場合には、各派の理事にお諮りいたしまして、そして本委員会で皆さんの御承認を得るということが、大体の慣習になつておるわけですが、きよう突如として出たので、まだ理事会にも諮らないで実はやつたわけです。一応希望の申入れをするということで御承認願いたいと思いますが、いかがでしようか。
  31. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 これはかくすべしという決議ではなく、希望申入れの決議であるから、非常に彈力性があるように思うので、一応採決しておいたらどうかと思います。
  32. 前田郁

    前田委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  33. 前田郁

    前田委員長 速記を始めて。  ただいまの動議の取扱いについては、次会に正式にきめたいと思います。     —————————————
  34. 前田郁

    前田委員長 次に海事代理士法案を議題として、審議を進めます。  質疑の通告があります。坪内八郎君。
  35. 坪内八郎

    ○坪内委員 二、三点お尋ねいたしたいと思います。この法案の対象となる業務に従事する者は、全国で百三、四十名程度だというようなことを聞いておるが、こういつた少い者に対して、單独でこの法律を出すということは、どういうようなことであるのか、そういう点についてお伺いをいたしたい。
  36. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 お答えいたします。仰せの通りたいへん数は少うございますが、利用する一般の公衆の数は非常にたくさんあるのでございまして、弁理士法でありますとか、公証人法でありますとか、やはり数の少いのにかかわらず、特別の法律をもつてある程度の規制をいたしておる趣旨と同様でございます。
  37. 坪内八郎

    ○坪内委員 そこで第一條の末尾のところに、「及び相談に応ずることを業とする。」ということがうたわれてあるわけでありますが、そうなりますと、弁護士法に抵触はしないかというようなことを感ずるのでありますが、この点はどうですか。
  38. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 弁護士は弁護士法によりまして、付随的にいろいろほかの法律に関する手続をすることについては、当然やつてよろしいという規定になつておりますので、弁護士も当然本法による海事代理士の仕事をやり得るわけでありまして、両方並行してやり得るわけでございます。なお「相談」応ずる」という言葉の中には、法律上の鑑定等の弁護士でなければできない仕事につきましては、できないことに海事代理士法としてなつておりますから、その点は全然重複しないと考えます。
  39. 坪内八郎

    ○坪内委員 この「相談に応ずる」という点は、鑑定や調査をしないということなんですか。
  40. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 その通りでございます。
  41. 坪内八郎

    ○坪内委員 そこで弁護士法によつて弁護士は、弁理士なりあるいは税務代理士の業務ができるように相なつておるが、こういつた海事代理士の業務を行うということになりますと、この海事代理士は試験制度であるので、従つて弁護士の人も試験を受けるということになりますか。
  42. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 弁護士は弁護士法によりまして、試験を受けてなるのでございまして、一旦弁護士になりました以上は、弁護士法による付随業務といたしまして、海事代理士法にきめられております中で、弁護士の仕事に付随いたします仕事は当然やり得るのでありまして、海事代理士法による試験は受ける必要がないということになります。
  43. 坪内八郎

    ○坪内委員 そういたしますと、弁護士の試験は別として、この海事代理士の試験は、專門的な知識を試験するということになつておるのでありますが、その專門的な知識の学力の程度はどの程度でありますか。たとえば新制高校とか大学とかいうものの、どの程度を試験するのでありますか、その点をお尋ねいたします。
  44. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 これは学力でもつて、大学程度でなければならぬとか、中学校程度でなければならぬとかいうことは考えていないのでありまして、海事法令はたとえば、この法律の別表に十ばかり並べてございますが、こういう法令の内容を十分承知しておりますならば、学校卒業程度のいかんにかかわらず、試験に合格し得るわけでございます。実際上どの程度の学力が必要かと申しますならば、やはり高等学校卒業程度の学力がないと、消化しにくいのではなかろうか。というふうに感じておるわけでございます。
  45. 坪内八郎

    ○坪内委員 その点は大体了承いたしましたが、そこでちよつと前の質問に逆もどりいたしまして、弁護士は海事代理士の業務ができるというお話でありました。弁護士法によれば、弁護士は弁理士なりあるいは税務代理士の業務ができるように相なつてつて、海事代理士のことは弁護士法にうたつてないのであるが、海事代理士法のどこで、弁護士がそういう業務ができるようになつておるのか、あるいは弁護士の職務を何か圧迫するような関係はないのかどうか、この二点をお尋ねいたします。
  46. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 御説の通りでございますが、海事代理士法によりますと、第十七條の第一項に但書がございまして、「但し、他の法令に別段の定がある場合は、この限りでない。」こう書いてございます。この意味は弁護士法で申しますと、弁護士法の第三條の第一項に、「その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」と書いてございます、この條項をさしておるのでございまして、この両者の規定によつて、弁理士法、税務代理士法による仕事を行うことができるということを弁護士法に書いてございますが、そのような表現を使わなくとも、ただいま御説明申しました二つの項によりまして明確になるという解釈と、立法技術によりまして、ようにきめた次第でございます。
  47. 前田郁

    前田委員長 それではほかに御質問ございませんか。——なければ本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもりてお知らせいたします。     午後零時二分散会