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政府委員(
賀来才二郎君) 今度の八月以来行われました
レッド・
パージは、
日本の
経済再建という
立場から見まして
産業経済の安全と安定を維持することが最も必要である。さような
立場から申しますると本年一月コミンフオルムの批判に屈しまして以後の
共産党の現地の
企業におるような諸君の行動というものを
考えて見ますれば、
企業防衛の
立場から、或いは
企業内におきまする
労働秩序の維持、確立という
建前からいたしまして、どうしても
企業外に出てもらわなければならない、
産業防衛の
立場から止むを得ない
措置として
経営者側の自覚と背任において行われて参
つたものでございます。
労働省といたしましては、この
レッド。
パージを如何なる
方法でどういう
程度にやるべきであるというような
建前で、
企業者を指導するというような
立場をとるべきではないと
考えてお
つたのでありますけれ
ども、併しながらこの
レッド・
パージの
やり方が
程度を越しまして
只今申しましたような範囲を逸脱るようなことがありますと、
却つて逆の結果を来す慮れもありますし、特に
只今上條委員から御
指摘のありましたごとく、
労働組合運動を萎醸沈滞させるような結果も出る喋れもありますし、或いは
労働組合を
御用化する結果毒来す虜れもあると
考えましたので、
労働組合運動が民主的な健全な
組合運動として発達するように、助長する
立場にあります
労働行政の
立場にある者に対しまして、かようなことが行われないように
十分注意をするようにという
考え方から、今次の
レッド・
パージが行われますに際しましては、常時
やり方に
注意をいたして参
つたような次第でございます。
その
一つの
措置といたしまして、先ほど御
指摘のありましたように、
労政局長通牒という形を以ちまして、各
地方の
知事に対しまして
注意をいたしますとともに、
中央におきましては
労働省みずから業者、
域いは
組合と密接な
連絡を保ちつや
つて参りました結果とも思いますが、大体最近に至りまして一段落を告げました。その総数は、
基幹産業におきまして約一万八百数十名という状態で終りました。
レッド・
パージの行われました業種の総
従業員に対しまして比率は〇・四%という
程度で
終つたのであります。さように
注意をいたして参
つておりましたところ、
只今上條委員の御
指摘の
東邦レーヨンの鱒島
工場におきまする問題が出て参りまして、
組合から我々に対しまして
実情の陳情がございました。そこで我々といたしましては
使用者側に来てもらいまして、事実を一々聴取いたしたのであります。いずれが確実に真実であるかどうかということにつきましては、いずれもう少しあとで申しますような
方法をとらなければ確定的には申上げられませんけれ
ども、我々の
調査をいたしたところでは、大体
上條委員の御
指摘のような状況が事実に近いのではないかというふうに
考えたのであります。と申しますのは
会社側では
組合の申しますことについて、そうでないという
資料の
提出をいたしませんのでありまして、いずれ又
労働省といたしまして
法律上の根拠に基いて
資料の
提供を要求されるならば、それは
提出しなければならないと思いまするが、そういう権限もお持もでないと思うというふうな
態度を以ちまして
資料の
提供をやらないのであります。
で我々
労働省といたしましては、
只今申しましたような
考え方からいたしまして、
経営者に対しまして、少くとも
委員長、
連合会長及び
支部長、
只今支部長が
徳島県の
労働委員をや
つておるのでありますが、この二人については取りあえず
取消にしてもらうべきではないか。そうしてなお
組合とよく
話合いをしてできるだけ我々の
通牒の
趣旨にも副うようにや
つてもちいたいということを、数度に亙
つて勧告をいたしたので、あります。併し
経営者側は
只今申しましたように
反対資料の
提出もいたしませんのみならず、現に
徳島の
工場の
組合は
経営者側と
話合をつけて、この九名の
馘首に対しましては
組合は了承をしたという
態度をと
つているからというので、
経営者側は我々の
勧告に応じようといたしません。更に実状を調べて見ますると、或いは
組合を
御用化するという面につきましてもいろいろ
措置をと
つているのではないかという疑いも持
つたのでありまするが、
労働省自体としてこれに強権を以て
措置せしめる気持はございませんので、止むを得ず
会社側が
勧告を聞きませんので、
中労委、
地労委とも
連絡をいたしまして、
組合側とも
話合をいたしまして、
目下組合側及び
馘首をされました本人といたしまして、
地労委及び
中労委に
組合法第七條によりまする
不当労働行為の提訴をいたしたと聞いているのであります。なお
組合といたしまして
事情によりましては裁判所に対しまして
身分保全の
仮処分の訴えをやるのではないかということも聞いているわけであります。
只今御
指摘のように
地労委、
中労委の
取扱は、従来の実績から見ますると非常に時間がかかる例が多か
つたのでありますが、今回度の場合は事柄の性質にも鑑みまして、
徳日県の
地労委は速かにこの
処置を
決定いたしたいということを言
つているようでございます。繰返して申しますならば、我々は全体としての行過ぎにつきましては
十分注意をいたして参りましたし、特に
組合運動の
萎靡沈滞或いは
御用化の防止ということについてや
つて参りました。おおむねこの効果は挙げ得たと思
つておりますが、
最後に至りましてかようなことが起りましたことは非常に遺憾に
考えているのでありますが、
労働省自体としての
処置のことは非常にむずかしいので目下
地労委、
中労委を通じまして、或いは裁判所の
処置によりまして、この問題が解決されんことを期待をいたしているような次第でございます。
次に第二点の御
質問でございまするが、御
指摘のように特にこの
東邦レーヨンがとりましたように、先ず数名を
馘首いたしましれ、これに反対をする者は
同調者とみなし、更に
馘首をするであろうというふうな
態度をとりますと、
組合運動といたしましてはやはり非常に影響を受ける虞れがあるのであります。特にそういう点に
関連いたしまして先ほど申しましたように我々といたしましては、
組合運動がこのような
態度によ
つて萎靡沈帶し或いは
御用化することを極度に警戒をいたして参
つたのであります。今後今度行われましたような
レツド・パージというふうな形のものが再度繰返されるということがありましては、非常に我々といたしましても、これを防止しなければならない。それがためには今後
経営者自体にありましても、かような
破壊的分子が
工場内に再び出て参らないように十分労務管理をや
つてもらいたいと
考えておりまするし、
労働組合自体といたしましてもかような
破壊的分子が出ましたならば、
経営者の手によ
つてこれを排除するというのでなしに、民主的に、
組合員みずからがかような
破壊的分子を排除するというふうな
態度に出るような、高度の民主化を図
つて貰いたい。かようなことを我々といたしましては念願をいたしておるのでありまして、
労働省といたしましては
御用化を防止する、又
組合運動が
萎靡沈滞することのないようにという線は、従来からもずつとや
つて参
つておる線でございましてさようなことが再び今度のような
レッド・
パージの行われかたによ
つて行われないように今後一層
注意いたしまして、それがためにはあらゆる
方法を以て
措置して行きたい。かように
考えておるわけでございます。
第三点は、成るほど御
指摘の
通り非常にこの点は最も市々な問題でありまして、今日まで一万数百名の者が出ておりまするが、先ほど私から申しましたようにこれを行われまする間、常時我々といたしましては
経営者、
組合と密接な
連絡を保
つて参りまして、最小限度に止まるように又あの我々の涌牒の
趣旨に反するようなことが行われないように十分努力をして参
つたのでございますから、今日
追放されました一万数百名の中には、さような切り杉の者というものは余りない。極めて例外的なものであろうと思
つております。と申しますのはこの行われまする途中におきまして一々
注意をして参
つたようなこともございますので、目下のところまだ具体的にどれだけの者が切り過ぎにな
つておるというふうな問題、紛争を余り聞いていないのであります。併しながらこの
レッド・
パージ自体の大きな目的はこれによりまして今後さようなことが再び起らないように、又今度
追放された諸君におきましてもみずから
反省をいたしまして、再び真の
産業人として
破壊性を一擁して、真の
産業人として社会に再度復帰されるようになることができ得ましたならば、今度の
追放の効果の
一つとして喜ばなければならないと
考えておるようなわけでありまして、若しさような者が出て参りました場合には、この
人々に対しましては我々といたしましても再度社会に復帰して
日本の復興のために盡力をして貰えるように十分努力をしなければならないと
考えておりますし、社会におきましてもこの方向に向いまして努力されんことを期待いたしておるような次第でございます。